JP4026730B2 - 積層した樹脂層を有する金属管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のブレーキ配管、燃料配管またはその他の配管として特に車体のアンダーフロアー下部に配設される管径16mm以下の比較的細径からなる金属管に係り、より詳しくは走行中における耐飛石性と耐泥水性を具備し、かつ優れた耐食性を有する金属管に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の下部に配設されるブレーキ配管、燃料配管等には、走行中における耐飛石性と耐泥水性をもたせるために、外周に樹脂層を形成した樹脂被覆金属管が提案されている。例えば、予め外周面にポリフッ化ビニリデンやポリフッ化ビニルをコーティングし、さらにその上に熱収縮性チューブを被着したものや、表面処理を施した金属管の外周面にPA11あるいPA12のようなポリアミド系樹脂を押出し成形したもの等が知られている。しかしながら、従来の樹脂被覆金属管の場合は、耐飛石性や耐泥水性が十分に得られず、耐食性が劣るという問題があった。
【0003】
そこで、このような点を改善するため、予め表面処理を施した金属管の外周面に、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等からなる樹脂層を形成し、その上に耐飛石性や耐泥水性を有するポリエチレン樹脂層、ポリプロピレン樹脂層等を施した積層被覆層を有する積層被覆金属管が開発されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した積層被覆金属管は、耐飛石性や耐泥水性を損なうことなく優れた耐食性を有するものであるが、スプール、フレアー、バルジ等の端末加工時に、金属管の積層被覆層の最外層をはぎ取る必要がある。この際に切断刃により内層を損傷したり、締付けナット等を組込んで輸送し、保管し、あるいは組立てる際に他の部品と干渉したり、床等と衝突したり、あるいは曲げ加工の際に疵、亀裂、クラック等が発生したりして、金属管の外周面を損傷し、耐久性を劣化させるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような問題を解決したものであって、厚膜状の最外層と2層の内層とにより3層の被覆層を積層させることによって、耐飛石性や耐泥水性を損なうことなく優れた耐食性を有するとともに、端末加工の際の最外層のはぎ取り時に使用する切断刃による損傷や、輸送、保管、あるいは組立て時や曲げ加工時における金属管の損傷を防止して耐久性を高め、さらに前記した損傷、疵、亀裂、クラック等の発生を目視により容易に確認できる積層した樹脂層を有する金属管の提供を目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る積層した樹脂層を有する金属管は、金属管外周面に施された表面処理層に密着する押出し成形し得る薄膜状の第1樹脂層の上に、該第1樹脂層と同様な押出し成形し得る薄膜状の第2樹脂層を有し、さらに前記第2樹脂層の上に該第2樹脂層と剥離可能に密着し得る押出し成形し得る厚膜状の第3樹脂層を積層したことを特徴とするものである。また、前記第1と第2の樹脂層は相互に接着したり、前記第1の樹脂層が第2の樹脂層より高い明度の色彩を有するごとく前記第1の樹脂層と第2の樹脂層に異なる色彩を付したり、前記第1の樹脂層に蛍光顔料を含ませたりするものである。
【0007】
本発明において、金属管の外面被覆層を、厚膜状の最外層と2層の内層との3層を積層して構成したのは、耐飛石性や耐泥水性を損なうことなく優れた耐食性を得るためと、内層を2層で構成することにより、端末加工の際の最外層のはぎ取り時に使用する切断刃による損傷や、輸送、保管、あるいは組立て時や曲げ加工時における金属管の損傷を防止して耐久性を高めるためであり、また内層が2層の場合には、樹脂層に異なる色彩を付して第1の樹脂層と第2の樹脂層を色彩で区別できる上、第1の樹脂層に蛍光顔料を加えると内層に生じた損傷、疵、亀裂、クラック等の発生を目視により容易に確認が可能となるからである。
【0008】
最下層の内層を構成する第1樹脂層と第2樹脂層の厚みは全体として20〜200μmであり、最外層の第3樹脂層は前記2層の樹脂層からなる最下層全体の厚みより厚く形成され、100〜2000μmである。また、第1樹脂層と第2樹脂層は接着した方が相互に密着して好ましいが、必ずしも接着することが必須要件ではない。また、第1樹脂層と第2樹脂層に異なる色彩を付すのは、前記したごとく第1樹脂層と第2樹脂層を容易に確認できるようにするためであり、その場合第1樹脂層の明度を第2樹脂層のそれより高くすることが一層好ましい。さらに、第1の樹脂層に蛍光顔料を含ませるのは、ブラックライト等により第2樹脂層に生じた疵や、亀裂、クラック等を容易に確認できるようにするためである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において使用される金属管は、電縫管、セミシームレス管、シームレス管、および予め銅合金のめっき膜を有するフープを管状に成形して一重または多重に巻いて造管された溶接管あるいは鑞付け管からなる金属管であり、管径16mm程度以下の外径を有するものである。そしてその外周面にSn、Zn、Pb、Alまたはこれら基合金の電気めっき法や溶融めっき法により形成されためっき膜や、所望に応じて該めっき膜の表面に黄色クロメートやオリーブ・クロメートなどのクロメート被膜などの表面処理を施したものである。
【0010】
なお、前記表面処理層に単層のエポキシ系樹脂およびポリアミド系樹脂あるいはシランカップリング剤およびチタンカップリング剤等をプライマー層としてコーティングして形成しておくこともできる。
【0011】
次に、前記表面処理層またはプライマー層の上には、PA6、PA11、PA12等のポリアミド系樹脂からなる第1樹脂層と第2樹脂層が、それぞれ押出し成形により最下層全体の層厚20〜200μmとなるように形成される。この2層からなる最下層の層厚が20μm未満では耐食性が乏しく、一方200μmを超えると規格化されている従来の締付けナットを使用することができなくなるからである。また、第1樹脂層と第2樹脂層を積層させる場合に、第1層の樹脂と第2層の樹脂とに相溶性がある場合は、第1層の外表面と第2層の内表面の両層を接触させるよう押出し被覆装置のダイ本体から流出する溶融樹脂の温度を検知し、第1層の融点以下の温度で第2層を押出し成形して両層を積層被覆することができる。一方、第1層の樹脂と第2層の樹脂とが相溶性がない場合は、第1層の樹脂の融点以上の温度で該第1層の上に第2層を押出し成形することもできる。さらに、第1樹脂層と第2樹脂層を容易に確認できるようにするため、例えば第1樹脂層には黄色の顔料を、第2樹脂層には黒色の顔料をそれぞれ加える。
【0012】
さらに、前記2層からなる最下層の上すなわち第2樹脂層の上に耐飛石性を有する樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレンあるいは前記したポリアミド系樹脂を層厚100μm〜2000μmとなるよう押出し成形により被着積層して第3樹脂層を形成する。その際、第2樹脂層と第3樹脂層とは、第3樹脂層を剥離可能にするため非接着とする。この第3樹脂層の層厚を前記範囲に規定したのは、100μm未満では十分な耐飛石性が得られず、一方2000μmを超える層厚としても耐飛石性や耐泥水性および耐食性の向上に差がなく、かえって曲げ加工を施した時に積層被覆層にクラックや皺などが発生する可能性があるからである。
【0013】
なお上記例示した樹脂の融点は当業者にはよく知られているが、例えばポリエチレンは130〜137℃、ポリプロピレンは168〜175℃、またポリアミド系樹脂のうちPA6は210〜220℃、PA11は191〜194℃、PA12は160〜209℃である。
【0014】
【実施例】
実施例1
材質SPCCの両面に膜厚3〜4μmの銅めっき層を有する帯鋼材を使用して外径4.76mm、肉厚0.7mm、長さ2mに成形した二重巻鋼管を準備した。この二重巻鋼管の外周面に、硫酸亜鉛を主成分とし有機添加剤を添加した酸性電解液を使用して温度50℃、電流密度10A/dm2で6分間通電して平均膜厚13μmの亜鉛のめっき膜を形成し、この亜鉛めっき膜の表面にクロメート処理を施した後、プライマーとしてエポキシ系樹脂をコーティングして加熱、乾燥した鋼管の外周面に、ポリアミド系樹脂としてPA12を使用して押出し被覆装置を用いて層厚50μmとなるよう第1樹脂層を押出し成形し、次いでこの第1樹脂層の上に該第1樹脂層と同じポリアミド系樹脂としてPA12を使用して層厚20μmの第2樹脂層を押出し成形して積層させ、さらにこのポリアミド系樹脂層からなる第2樹脂層の上に押出し被覆装置を用いて層厚2mmとなるようポリアミド系樹脂と相溶性のないポリプロピレンを押出し成形して第3樹脂層を積層被覆した。
【0015】
得られた積層被覆金属管を長さ250mmに切断して、そのうちの5本の試料について飛石試験を行い、耐飛石性を調べた。その結果、予め表面処理を施した金属管の外周面に、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等からなる樹脂層を形成し、その上に耐飛石性や耐泥水性を有するポリエチレン樹脂層、ポリプロピレン樹脂層等を施した2層の被覆層を有する従来の積層被覆金属管と同程度の耐飛石性が得られた。また、被覆層が2層のみで構成された従来の積層被覆金属管の場合は、端末加工の際の最外層のはぎ取り時に使用する切断刃による損傷や、輸送、保管あるいは組立て時や曲げ加工時に金属管を損傷し易いのに対し、2層の内層と1層の外層とからなる本発明の積層被覆金属管の場合は、内層が2層で構成されているので切断刃による損傷や輸送、保管あるいは組立て時や曲げ加工時における損傷を回避できるという点でも優れている。
【0016】
実施例2
実施例1と同様にして形成された二重巻鋼管の外周面に実施例1と同様に亜鉛めっき膜を形成した後、その表面にクロメート処理を施し、ついでシランカップリング剤をコーティングし、加熱、乾燥した鋼管の外周面に、黄色顔料を添加したポリアミド系樹脂PA11を使用して押出し被覆装置を用いて層厚20μmとなるよう第1樹脂層を押出し成形し、続いてこの第1樹脂層の上に黒色顔料を添加した該第1樹脂層と同じポリアミド系樹脂としてPA11を使用して層厚30μmの第2樹脂層を押出し成形して積層させ、さらにこの第2樹脂層の上に層厚200μmとなるようポリアミド系樹脂と相溶性のないポリプロピレンを押出し成形して第3樹脂層を積層被覆した。
【0017】
得られた積層被覆金属管を実施例1と同様に250mmに切断して、そのうちの5本の試料について実施例1と同様の飛石試験を行い、耐飛石性を調べた結果、実施例1と同様の効果が得られた。また、第1樹脂層と第2樹脂層にそれぞれ黄色と黒色の顔料を加えたことにより、端末加工の際の最外層のはぎ取り時に第1樹脂層と第2樹脂層を明確に区別でき、各層の疵や損傷の有無を容易に確認できる金属管が得られた。
【0018】
実施例3
実施例1と同様にして形成された二重巻鋼管の外周面に亜鉛−ニッケル合金めっき膜を形成した後、その表面にクロメート処理を施し、ついでチタネートカップリング剤をコーティングし、加熱、乾燥した鋼管の外周面に、白色蛍光顔料を添加したポリアミド系樹脂PA12を使用して押出し被覆装置を用いて層厚30μmとなるよう第1樹脂層を押出し成形し、続いてこの第1樹脂層の上に黒色顔料を添加した該第1樹脂層と同じポリアミド系樹脂としてPA11を使用して層厚30μmの第2樹脂層を押出し成形して積層させ、さらにこの第2樹脂層の上に層厚1mmとなるようポリアミド系樹脂と相溶性のないポリプロピレンを押出し成形して第3樹脂層を積層被覆した。
【0019】
得られた積層被覆金属管を実施例1と同様に250mmに切断して、そのうちの5本の試料について実施例1と同様の飛石試験を行い、耐飛石性を調べた結果、実施例1と同様の効果が得られた。また、第1樹脂層に白色蛍光顔料を加えたことにより、蛍光顔料とブラックライトの照射により第2樹脂層の疵や損傷の有無をより一層明確に確認できる金属管が得られた。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したごとく、本発明の積層した樹脂層を有する金属管は、2層からなる内層の第1樹脂層に第2樹脂層より高い明度の色彩を付したことにより、端末加工の際の最外層のはぎ取り時に使用する切断刃による損傷や、輸送、保管あるいは組立て時や曲げ加工時における金属管の損傷、疵、亀裂、クラック等の発生を目視により容易に確認できるという優れた効果を奏し、また厚みが100〜2000μmの厚膜状の最外層と、厚みが全体として20〜200μmの前記2層の内層とにより積層被覆層を形成したことにより、前記した切断刃による損傷や輸送、保管あるいは組立て時や曲げ加工時における金属管の損傷を防止できるので高耐久性を有し、さらに耐飛石性や耐泥水性を損なうことなく優れた耐食性を有するという、優れた効果を奏する。
Claims (2)
- 金属管外周面に施された表面処理層に密着する押出し成形し得る薄膜状の第1樹脂層の上に、該第1樹脂層と同様な押出し成形し得る薄膜状の第2樹脂層を有し、かつ第1樹脂層は第2樹脂層より高い明度の色彩を有し、第1樹脂層と第2樹脂層の厚みは全体として20〜200μmであり、さらに前記第2樹脂層の上に該第2樹脂層と剥離可能に密着し得る押出し成形し得る厚みが100〜2000μmの厚膜状の第3樹脂層を積層させてなることを特徴とする積層した樹脂層を有する金属管。
- 前記第1の樹脂層には蛍光顔料が含まれていることを特徴とする請求項1記載の積層した樹脂層を有する金属管。
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