JP4024991B2 - 電解処理装置及びその電場状態制御方法 - Google Patents

電解処理装置及びその電場状態制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被処理部材の表面にめっきやエッチング等を施す電解処理装置に関し、特に電解処理装置及びその電場状態制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電解処理、特に電解めっきは、金属膜の形成方法として広く利用されている。近年例えば銅の多層配線用の電解銅めっきや、バンプ形成用の電解金メッキなど、半導体産業などでもその有効性(安価、孔埋め特性など)が注目され利用されつつある。
【0003】
一方、LSI用の半導体基板や液晶基板は、年々大面積となる傾向にありそれに伴う弊害も生じてきた。即ち被処理基板表面に電解めっきを施すには、図19に示すように、被処理基板(以下単に「基板」という)Wの表面に導電層を形成し、基板Wの外周近傍の導電層上に陰極電位を与えるための接点81を接触し、一方基板Wに対向する位置に陽極83を設置して陽極83と基板W間にめっき液85を満たし、前記陽極83と接点81間に直流電源87によって電流を流すことで基板Wの導電層上にめっきを行う。
【0004】
しかしながら大面積の基板Wの場合、基板Wの外周近傍の接点81から基板W中央までの導電層の電気抵抗が大きくなり、基板W面内で電位差が生じ、ひいては各部のめっき速度に差が生じてしまう。即ち図19には代表的な電解めっきの等価回路が示されているが、回路中には様々な抵抗成分が存在する。
R1 電源87−陽極83間の電源線抵抗及び各種接触抵抗
R2 陽極83における分極抵抗
R3 めっき液85抵抗
R4 陰極(基板Wのめっき表面)における分極抵抗
R5 導電層の抵抗
R6 接点81−電源87間の電源線抵抗及び各種接触抵抗
【0005】
図19から明らかなように、抵抗R5が他の電気抵抗R1〜R4及びR6に比して大きくなると、抵抗R5の両端に生じる電位差が大きくなり、それに伴うめっき電流の差が生じ、接点81から遠い位置ではめっき膜成長速度が低下してしまい、導電層の膜厚が薄いと抵抗R5が更に大きくなってこの現象が顕著に表れてしまう。さらにこの事実は、基板Wの面内で電流密度が異なることを意味し、めっきの特性自体(めっき膜の抵抗率、純度、埋込特性など)が面内で均一とならない。
【0006】
なお基板Wが陽極になる電解エッチングにおいても電流方向が反対となるだけで同様の問題が生じる。例えば大口径のウエハプロセスではウエハ中央部のエッチング速度が周縁部に比して遅くなる。
【0007】
以上の問題回避の方法としては導電層の厚さを厚くしたり電気導電率を小さくすることが考えられる。しかしながら基板Wはめっき以外の製造工程でも様々な制約を受けるばかりでなく、例えば微細パターン上にスパッタ法で厚い導電層を形成するとパターン内部にボイドが発生し易くなってしまうため、容易に導電層の厚みを厚くしたり導電層の膜種を変更することはできない。
【0008】
そしてこの欠点を防止するため、本願発明者は図20に示すように、陽極38と被処理基板Wの間にめっき液10の電気伝導率よりも小さい電気伝導率の高抵抗構造体4を設置する発明をした。即ちこのように構成すると同図に示すような等価回路となるが、前記図19に示す等価回路に比べて高抵抗構造体4によって抵抗Rpが追加される。そして抵抗Rpが大きな値となった場合、(R2+R3+Rp+R4)/(R2+R3+Rp+R4+R5)は1に近づき、抵抗R5、即ち導電層の抵抗成分の影響を受けにくくなる。
【0009】
しかしながら上記高抵抗構造体4としてその全体が均一組成で単純形状(例えば円板等)のものを用いただけでは、必ずしも十分なめっき膜厚の面内分布の制御が望めない場合もあった。即ち上記高抵抗構造体4を用いてもめっき膜厚を完全に均一化しにくい部分(例えば基板Wの外周近傍部分)も均一化するように制御したいような場合や、逆にめっき膜厚を基板W表面の各部それぞれで異なるように制御したいような場合があり、このような場合は単に高抵抗構造体4を介在させるだけでは十分ではなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、積極的に電場状態を制御することで、目的とする膜厚の面内分布となるように制御することができる電解処理装置及びその電場状態制御方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため本発明にかかる電解処理装置における電場状態制御方法は、陽極と陰極の一方の電極との接点を持つ被処理基板と、該被処理基板に対峙させた他方の電極との間に満たした電解液の少なくとも一部に、該電解液の電気伝導率より小さい電気伝導率の板状の高抵抗構造体を設け、前記他方の電極と高抵抗構造体とを保持部材に保持するとともに、この保持部材と高抵抗構造体とによって他方の電極全体を被覆し、バンド状であって幅の長さが異なる絶縁性部材の内の所望の幅の長さの絶縁性部材を前記高抵抗構造体の外周側面にこの外周側面を囲んで遮蔽するように設置することによって、前記高抵抗構造体の外周側面の前記絶縁性部材による遮蔽面積を所望の面積に調整して、被処理基板表面の電場を制御することを特徴とする。このように被処理基板表面の電場の状態が所望の状態になるように積極的に制御すれば、被処理基板の電解処理による処理状態を目的とする面内分布の処理状態とすることができる。電解処理がめっき処理の場合は、被処理基板上に形成されるめっき膜厚の均一化を図ったり、被処理基板上のめっき膜厚に任意に分布を持たせたりすることができる。
【0015】
また本発明は、被処理基板及び/又は被処理基板に対峙する電極を回転することを特徴とする。また前記被処理基板は、この被処理基板の前記電解液によって処理される面を上向きにしたフェイスアップ方式で電解処理が行われることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、陽極と陰極の一方の電極との接点を持つ被処理基板と、該被処理基板に対峙させた他方の電極との間に電解液を満たして被処理基板の電解処理を行う電解処理装置において、前記電解液の少なくとも一部に、該電解液の電気伝導率より小さい電気伝導率の板状の高抵抗構造体を設け、前記他方の電極と高抵抗構造体とを保持する保持部材を設置するとともに、この保持部材と高抵抗構造体とによって他方の電極全体を被覆し、バンド状の絶縁性部材を前記高抵抗構造体の外周側面にこの外周側面を囲んで遮蔽するように設置することによって、被処理基板表面の電場を制御することを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記電解処理装置は、前記被処理基板の前記電解液によって処理される面を上向きにして電解処理を行うフェイスアップ構造の電解処理装置であることを特徴とする。
【0021】
ところで上記高抵抗構造体4としては、アルミナ製多孔質セラミックスや、炭化シリコンセラミックスがあげられる。また塩化ビニールを繊維状に束ね、これを互いに溶着させたものを用いて形成したもの、またポリビニルアルコールなどの発泡体やテフロン(商標名)などの繊維を織布や不織布の様態に整形したものを用いて高抵抗構造体を構成してもよい。更に、これらや導体と絶縁体、或いは導体同士を組み合わせた複合体でもよい。また2枚の隔膜の間に、他の種類の電解液をはさんだ構造物で高抵抗構造体を構成することも可能である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
〔電場状態制御手段として絶縁性部材を用いた実施形態〕
図1は本発明の一実施形態を適用した電解めっき装置の概略構成図である。同図に示す電解めっき装置は、いわゆるフェイスアップ方式を採用した電解めっき装置であり、被処理基板(以下単に「基板」という)Wは上向きに基板載置台30上に載置されている。基板Wの周辺はリング状に形成されたリップシール34の先端が当接してシールされ、その内側にめっき液10が充填されている。また基板W表面のリップシール34の外方には、基板W表面の導電層に接触して基板Wに陰極電位を印加する接点36が設置されている。
【0023】
基板Wの上方には所定の隙間を介して円板状の高抵抗構造体4と円板状の陽極38とが保持部材32に保持されて設置されている。ここで陽極38には厚み方向に貫通する多数の細孔39が設けられ、陽極38の上には前記各細孔39にめっき液を分配して供給するめっき液導入管41が設置されている。
【0024】
一方高抵抗構造体4はこの実施形態では多孔質セラミックス板(例えば気孔率20%、平均ポア径50μmで厚さが10mmのSiC製)40の内部にめっき液10を含有させることで構成されている。また陽極38は保持部材32と多孔質セラミックス板40によって完全に被覆された構造となっている。
【0025】
そして本実施形態においては、多孔質セラミックス板(多孔質物質)40の外周側面にこれを囲むようにバンド状の絶縁性部材50を巻きつけている。この絶縁性部材50の材質としては、例えばフッ素ゴムのような伸縮性材料を用いる。
【0026】
そしてめっき液導入管41から陽極38の細孔39を通して多孔質セラミックス板40に加圧供給されためっき液は、多孔質の多孔質セラミックス板40内に浸透してその内部をめっき液で満たすと共に、その下面から吐出して基板Wと多孔質セラミックス板40の間の空間をめっき液10で満たす。なおめっき液10の導入はリップシール34と多孔質セラミックス板40の端面との隙間から行ってもよい。この場合はめっき液導入管41や陽極38の細孔39は不要である。
【0027】
そして陽極38と基板W間に所定の電圧を印加して直流電流を流すと、基板Wの導電層の表面全体にめっき(例えば銅めっき)が行われていく。本実施形態によれば、陽極38と基板Wの間に多孔質セラミックス板40を介在しているので、前述のように基板W表面の接点36からの距離の相違による各部の抵抗値の違いによる影響を受けにくく、基板Wの導電層の表面全体に略均一なめっき(例えば銅めっき)が行われていく。
【0028】
しかしながら接点36に近い外周部近傍部分はそれでも電流密度が高くなり、めっき膜厚は他の部分に比べて厚くなる傾向にある。
【0029】
そこで本実施形態においては、多孔質セラミックス板40の外周側面に絶縁性部材50を巻き付けることで、図1に点線で示すように、基板Wの外周部近傍に電流が集中するのを阻害してその電流密度を低下させ、基板Wの他の部分に向かう電流密度と略同じになるようにしたのである。
【0030】
図2は上記方法を用いて基板Wに銅めっきを行った際の基板Wの外周部分近傍の銅めっきの膜厚を測定した結果を示す図である。同図に示すように、絶縁性部材50の幅L(図1参照)を変更することで、基板Wの外周部近傍の銅めっきの膜厚が変化することがわかる。即ち幅Lが長くなればなるほど、基板Wの外周部近傍の電流密度が低くなってめっき膜厚が薄くなる。そこで絶縁性部材50の幅Lを所望のもの(例えばL=4mm)にすることで、基板Wの外周部近傍のめっき膜厚を他の部分と同一にすることができる。このように絶縁性部材50は幅Lの長さにより多孔質セラミックス板40の外周側面の遮蔽面積を調整するものであるが、絶縁性部材50の遮蔽面積の調整は幅Lのみならず、遮蔽物自体に孔をあけて遮蔽面積を調整してもよい。
【0031】
なお本発明は必ずしも基板Wの外周部近傍のめっき膜厚を他の部分と同一のめっき膜厚にする場合だけに利用するものではなく、例えば基板Wの外周部近傍のめっき膜厚を他の部分よりも厚くしたいような場合は絶縁性部材50の幅Lを小さくすれば良いし、逆の場合は大きくすれば良い。即ち本実施形態によれば、基板Wの外周部近傍のめっき膜厚を自由に所望のものに制御することができる。
【0032】
図3は参考例を示す図である。このにおいて前記図1に示す実施形態と相違する点は、バンド状の絶縁性部材50を取り付ける代りに、多孔質セラミックス板40の外周に可動式で筒状の絶縁性部材50−2を設置した点である。この絶縁性部材50−2は絶縁性部材保持具51の下端に設けられている。絶縁性部材保持具51は図示しない上下動駆動機構によって上下動自在に構成されている。このように構成すれば、絶縁性部材50−2の位置を上下動させることによって多孔質セラミックス板40に対して可動して多孔質セラミックス板40の外周側面の露出面積を調節することにより、基板Wの外周部近傍の電流密度を任意に制御することができ、図1に示す実施形態と同様に基板Wの外周部近傍のめっき膜厚を任意に調整することができる。
【0033】
図4は他の参考例を示す図である。このにおいて前記図1に示す実施形態と相違する点は、バンド状の絶縁性部材50を取り付ける代りに、多孔質セラミックス板40の外周側面自体に絶縁材料を塗布又は浸透させることで、絶縁性部材50−3を設けた点である。例えば多孔質セラミックス板40の外周側面に、絶縁材料としてガラスや樹脂またはシリコンなどを浸透させる。浸透幅及び浸透深さ分布を調節することにより、基板Wの外周部近傍の電流密度を任意に制御することができ、図1に示す実施形態と同様に基板Wの外周部近傍のめっき膜厚を任意に調整することができる。さらに母材(例えばSiC)の一部を酸化することで電流密度を制御することも可能である。
【0034】
〔シール部材を用いた
図5は図1に示すと同様の構造の電解めっき装置の多孔質セラミックス板40の外周部近傍部分を示す要部概略図である。但しこの電解めっき装置には図1に示す絶縁性部材50は記載されていない。この電解めっき装置においては保持部材32と多孔質セラミックス板40の間の隙間がシールされていないので、矢印で示すようにこの隙間部分を通して陽極38からめっき液が流れ出し、電流の通路が生じる。この電流通路は多孔質セラミックス板40の内部を通らない通路なので抵抗値が低く、従って電流密度が高くなって基板Wの外周部近傍のめっき膜厚を薄くしようとする制御ができなくなる恐れがある。
【0035】
そこでこのにおいては、図6に示すように前記多孔質セラミックス板40と保持部材32の間にシール部材60を設けることで、この部分からのめっき液の漏れを防止して基板Wの外周部近傍のめっき膜厚を薄く制御できるようにしている。
【0036】
なおこのにおけるシール部材60は断面逆L字状であり、また絶縁物によって構成されるので、図1に示す絶縁性部材としての作用も併せて持っている。またシール部材60は、図6(b)にその断面を示すように、保持部材32と多孔質セラミックス板40の下面とが接する部分をシールする環状のシール部材部601と、図1に示すバンド状の絶縁性部材50と同様の機能を発揮する絶縁性部材部603とを、別部品として各々取り付けることで構成しても良い。
【0037】
なおこのシール部材60は、図1以外の各にも適用できることは言うまでもない。即ち高抵抗構造体4の外周側面と保持部材32の間からのめっき液の漏れを防止するシール部材60を他の各種に係る電場制御手段と併用することで、さらに効果的な電場制御が行える。
【0038】
〔電場状態制御手段として陽極と基板との間の電流密度を高くしようとする部分に高抵抗構造体が介在しない部分を設ける
図7はこの例を適用した電解めっき装置の概略構成図である。同図においては図1に示す実施形態と相違して高抵抗構造体4の外周に絶縁性部材50を取り付けないで、その代わりに高抵抗構造体4自体の形状自体を変更することでめっき膜厚の制御を行っている。
【0039】
図8(a)〜(d)は図7に示す電解めっき装置に用いる高抵抗構造体4の平面図である。即ちこのにおける高抵抗構造体4は、例えば多孔質セラミックス板40であり、同図(a)に示すように多孔質セラミックス板40の外周形状を多角形にしたり、同図(b)に示すように所定の間隔毎にスリット65を設けたり、同図(c)に示すように波型(又は歯車型)にしたりしている。これに対して陽極38と基板Wは一点鎖線で示すように円形なので、基板Wの外周付近には多孔質セラミックス板40を介在しないでめっき液10だけを介在して陽極38と対向する部分が生じることとなり、多孔質セラミックス板40が介在する部分に比べて陽極38と基板W間の電気抵抗が低下し、基板Wの外周部の電流密度が高くなる。従ってこれらの例の場合は、基板Wの外周付近のめっき膜厚を、中央付近のめっき膜厚に比べて厚くしたいような場合に利用できる。
【0040】
また基板Wの中央部分など、基板Wの外周部分以外の他の部分のめっき膜厚を厚く制御しようとする場合は、図8(d)のように多孔質セラミックス板40の内部に穴66を設けることで陽極38と基板Wとの間に多孔質セラミックス板40が介在しない部分を設けるようにすれば良い。
【0041】
なお図7に示す電解めっき装置において基板Wを回転することで、基板W全面に渡って均一な膜厚のめっきが行える。基板Wの回転に代えて、又は基板Wの回転と共に、保持部材32側を回転させても良い。なお基板W及び/又は保持部材32を回転させることは、図7に限られるものではない。
【0042】
〔電場状態制御手段として高抵抗構造体の厚みに分布を持たせた
図9はこの例を適用した電解めっき装置の概略構成図である。同図に示す電解めっき装置においては、高抵抗構造体4の厚みに二次元的分布を持たせ、これによって基板W表面における電流密度分布が所望のものとなるように制御し、めっき膜厚を制御している。即ちこのにおいては高抵抗構造体4は例えば多孔質セラミックス板40であり、多孔質セラミックス板40を円形であって中心部の厚みが周辺部の厚みよりも薄くなるように構成している。このように構成すれば、中央部における陽極38と基板W間の抵抗値を周辺部の抵抗値よりも低くできるので、前述したように中心に近いほど薄くなる傾向のめっき膜厚を均一になるように制御することができる。
【0043】
図10は多孔質セラミックス板40が均一厚みのものと、図9に示すような分布厚みのものとを用いて基板W上にめっきを行った際のめっき膜厚の測定値を比較して示す図である。同図からわかるように図9の多孔質セラミックス板40を用いた方が、基板W上のめっき膜厚の均一化が図れることがわかる。なお図11に示すように図9に示す多孔質セラミックス板40を逆向き構造にして設置しても、図9の場合と同様の効果が得られる。
【0044】
同様に図12に示すように多孔質セラミックス板40の中央の厚みの方を周辺部の厚みよりも厚くすることによって周辺部のめっき膜厚の方を中央部よりも厚くするようにしても良いし、図13に示すように多孔質セラミックス板40に貫通孔67を設けることで貫通孔67を設けた部分のめっき膜厚を他の部分に比べて厚くするようにしても良い。また図14に示すように多孔質セラミックス板40の外周角部を面取り形状とすることでその厚みを薄くして他の部分よりも電気抵抗を低下させて基板Wの外周近傍のめっき膜厚を他の部分よりも厚くするようにしても良い。要は高抵抗構造体4の厚み(厚み=0も含める)に分布を持たせることで各部のめっき膜厚を所望のものに制御するのであれば良い。
【0045】
〔電場状態制御手段として多孔質物質の気孔構造に分布を持たせた
図15はこの例を適用した電解めっき装置の概略構成図である。同図に示す電解めっき装置においては、高抵抗構造体4として気孔構造が二次元分布又は三次元分布を持つ多孔質物質(例えばポーラスセラミックス)40を用いている。多孔質物質40は気孔の径や数、配列状態などによってその内部に保持するめっき液の量や保持状態が異なり、これによって抵抗値が相違する。そこでこの実施形態においては、中央付近の気孔構造C1を外周付近の気孔構造C2と異ならせ、中央付近の気孔構造C1の方が低抵抗になるようにしている。このように構成すれば、中央付近の電流密度が増大してその部分のめっきが形成されやすくなる。もちろん逆に外周付近の気孔構造C2の方が低抵抗となるように構成して外周付近のめっき膜厚を厚くするようにすることもできる。また三種類以上の気孔構造を用いて、より複雑なめっき膜厚の制御を行っても良い。
【0046】
気孔構造に分布を与える方法としては、図15に示すように多孔質物質40の一体成形時に分布を与える方法や、図16(a),(b)に示すように、多孔質物質40の内の気孔構造の異なる部分C1,C2を別々に成形し、その後組み立てによって一体化する方法などがある。
【0047】
気孔構造の要素としては、気孔径(例えば50〜400μmの範囲で径を異ならせる)、連続気孔率(気泡同士がつながっている度合い…つながっている方が抵抗値が小さくなる)、屈曲率(つながっている気孔の厚み方向の曲がり具合…曲がりが少ない方が抵抗値は小さくなる)などがある。
【0048】
気孔構造を異ならせるには、例えばその材質自体を異ならせても良い(例えば樹脂系材料とセラミックス系材料など)。また多孔質物質40の気孔率の分布を制御する手段として、多孔質物質40(ここではポーラスセラミックス)の表面若しくは内部の少なくとも一部を封孔処理する(樹脂やシラノール系の塗布型絶縁膜を使用する、母材のSiCを一部酸化するなど)方法もある。また、面一様に封孔処理を施した後に一部の封孔部を開孔して、面内の気孔分布を変える方法もある。
【0049】
また多孔質物質40の材料としては、図17に示すような異方性構造材料もある。即ち図17(a)に示す方向性多孔質構造材料や、図17(b)に示す繊維型多孔質構造材料などである。これら異方性構造材料を構成する材質としては樹脂、セラミックなどがある。これら異方性構造材料は特定方向に気孔がつながっていて特定方向に電流が流れ易くなっており(別の方向には電流が流れにくくなっている)、電流密度の制御性が向上できる。そして多孔質物質40の中央付近の気孔構造C1と外周付近の気孔構造C2とをこの異方性構造材料を用いて異ならせることで基板W表面に印加される電流密度分布を所望のものにするようにすることができる。
【0050】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【0051】
例えば上記実施形態では本発明を、いわゆるフェイスアップ方式の電解めっき装置に適用した例を示したが、図18に示すようないわゆるフェイスダウン方式の電解めっき装置にも適用可能である。即ちこの電解めっき装置は、めっき液10を保持するカップ状のめっき槽12を具備し、このめっき槽12の底部に円板形状の陽極14を設置し、その上に円板状の高抵抗構造体24を設置し、めっき槽12の周囲にこのめっき槽12の上部からオーバーフローしためっき液10を回収するめっき液受け16を配置し、さらにめっき槽12の上部に設置したリップシール18の上に基板Wを載せ、基板Wの下面外周に接点20を接触させて構成されている。
【0052】
そして陽極14の中央に設けた貫通孔14aと高抵抗構造体24の中央に設けた小孔24aを介してめっき液を循環させながら、陽極14と基板W間に電圧を印加して電流を流せば、基板Wの下面上にめっき層が形成されていく。
【0053】
そして前記実施形態やその他の例のように、高抵抗構造体24の外周に絶縁性部材を設けたり、厚みを変えたり、気孔構造を変えたりすることで、基板W上に形成されるめっき膜厚の分布を所望の分布にすることができる。
【0054】
図21は密閉式の電解めっき装置を示す図である。即ちこの電解めっき装置は、箱型のめっき槽150を有し、このめっき槽150の一方の開口端は、陽極板152で閉塞され、他方の開口端は、基板Wをめっき槽150側に保持した蓋体154で開閉自在に閉塞されるようになっている。基板Wと陽極板152の間には、高抵抗構造体176として2枚のメッシュ162a,162bによって保持された2枚の隔膜160a,160bによって挟まれた高抵抗電解液室168を区画形成したものが設置されている。
【00055】
そしてめっき室164にめっき液170を、電解液室166に電解液(めっき液)172をそれぞれ導入し、循環させながら陽極板152と基板W間に電圧を印加して電流を流せば、基板Wにめっき層が形成されていく。
【0056】
そして、高抵抗構造体176の面上に絶縁性部材を設けたり、メッシュ162a,162bの面を加工して高抵抗電解液室168の厚み等の形状を変えることで、基板W上に形成されるめっき膜厚の分布を所望の分布にすることができる。
【0057】
なお隔膜160a,160bの種類としては、強酸性カチオン交換膜、例えばトクヤマ製CMSやデュポン社製N−350などを使用するのが一般的であるが、カチオンの選択性を変える、あるいはアニオン交換膜、ノニオン交換膜としてもよい。高抵抗電解液室168中の電解質としては(50〜200g/l)H2SO4が一般的であるが、任意の濃度を選択したり、電解質は硫酸として限定されるものではないのは当然である。
【0058】
また本発明は更に他の各種構造の電解めっき装置(フェイスアップ、フェイスダウンの何れの方式をも含む)にも適用できることは言うまでもない。さらに上記実施形態では本発明を電解めっき装置に適用した例を示したが、その代わりに基板を陽極にして行う電解エッチング装置に適用してもよい。
【0059】
また上記実施形態においては、被処理基板として円形のものを用い、電界分布も全て同心円状のものを示したが、被処理基板は円形以外の各種形状のものであってもよいし、また電界分布も必要に応じて非同心円状のものであってもよい。例えば被処理基板としてLCDなどの板状(円形以外の形状を含む)のものを用いても良いし、また陰極接点36はリング状ではなく、一方向から被処理基板に接触するものであっても良い。また陰極接点36は被処理基板の外周以外の位置に接触させても良い。
【0060】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明によれば、被処理部材表面の電場の状態が所望の状態になるように積極的に制御したので、被処理部材の電解処理による処理状態を目的とする面内分布の処理状態とすることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を適用した電解めっき装置の概略構成図である。
【図2】基板Wに銅めっきを行った際の基板Wの外周部分近傍の銅めっきの膜厚測定結果を示す図である。
【図3】 電解めっき装置の概略構成図である。
【図4】 電解めっき装置の概略構成図である。
【図5】電解めっき装置の多孔質セラミックス板40の外周部近傍部分を示す要部概略図である。
【図6】 電解めっき装置の概略構成図である。
【図7】 電解めっき装置の概略構成図である。
【図8】図8(a)〜(d)は図7の電解めっき装置に用いる高抵抗構造体4の平面図である。
【図9】 電解めっき装置の概略構成図である。
【図10】多孔質セラミックス板40が均一厚みのものと、図9に示すような分布厚みのものとを用いて基板W上にめっきを行った際のめっき膜厚の測定結果を示す図である。
【図11】 電解めっき装置の概略構成図である。
【図12】 電解めっき装置の概略構成図である。
【図13】 電解めっき装置の概略構成図である。
【図14】 電解めっき装置の概略構成図である。
【図15】 電解めっき装置の概略構成図である。
【図16】 電解めっき装置の概略構成図である。
【図17】図17(a),(b)は異方性構造材料の一例を示す図である。
【図18】フェイスダウン方式の電解めっき装置を示す図である。
【図19】従来の電解めっき装置を示す図である。
【図20】本発明に用いる電解めっき装置の基本構成を示す図である。
【図21】密閉式の電解めっき装置を示す図である。
【符号の説明】
W 被処理基板
10 めっき液(電解液)
30 基板載置台
32 保持部材
34 リップシール
36 接点
38 陽極
39 細孔
4 高抵抗構造体
40 多孔質セラミックス板(多孔質物質)
41 めっき液導入管
50 絶縁性部材
50−2 絶縁性部材
51 絶縁性部材保持具
50−3 絶縁性部材
60 シール部材
65 スリット
67貫通孔
C1,C2 気孔構造
12 めっき槽
14 陽極
14a 貫通孔
16 めっき液受け
18 リップシール
20 接点
24 高抵抗構造体
24a 小孔
176 高抵抗構造体
150 めっき槽
152 陽極板
154 蓋体
160a,160b 隔膜
162a,162b メッシュ
164 めっき室
166 電解液室
168 高抵抗電解液室
170 めっき液
172 電解液(めっき液)

Claims (6)

  1. 陽極と陰極の一方の電極との接点を持つ被処理基板と、該被処理基板に対峙させた他方の電極との間に満たした電解液の少なくとも一部に、該電解液の電気伝導率より小さい電気伝導率の板状の高抵抗構造体を設け、
    前記他方の電極と高抵抗構造体とを保持部材に保持するとともに、この保持部材と高抵抗構造体とによって他方の電極全体を被覆し、
    バンド状であって幅の長さが異なる絶縁性部材の内の所望の幅の長さの絶縁性部材を前記高抵抗構造体の外周側面にこの外周側面を囲んで遮蔽するように設置することによって、前記高抵抗構造体の外周側面の前記絶縁性部材による遮蔽面積を所望の面積に調整して、被処理基板表面の電場を制御することを特徴とする電解処理装置の電場状態制御方法。
  2. 被処理基板及び/又は被処理基板に対峙する電極を回転することを特徴とする請求項1記載の電解処理装置の電場状態制御方法。
  3. 前記被処理基板は、この被処理基板の前記電解液によって処理される面を上向きにしたフェイスアップ方式で電解処理が行われることを特徴とする請求項1又は2記載の電解処理装置の電場状態制御方法。
  4. 陽極と陰極の一方の電極との接点を持つ被処理基板と、該被処理基板に対峙させた他方の電極との間に電解液を満たして被処理基板の電解処理を行う電解処理装置において、
    前記電解液の少なくとも一部に、該電解液の電気伝導率より小さい電気伝導率の板状の高抵抗構造体を設け、
    前記他方の電極と高抵抗構造体とを保持する保持部材を設置するとともに、この保持部材と高抵抗構造体とによって他方の電極全体を被覆し、
    バンド状の絶縁性部材を前記高抵抗構造体の外周側面にこの外周側面を囲んで遮蔽するように設置することによって、被処理基板表面の電場を制御することを特徴とする電解処理装置。
  5. 前記電解処理装置は、前記被処理基板の前記電解液によって処理される面を上向きにして電解処理を行うフェイスアップ構造の電解処理装置であることを特徴とする請求項4記載の電解処理装置。
  6. 前記高抵抗構造体は、アルミナ製多孔質セラミックス、又は炭化シリコンセラミックス、又は塩化ビニールを繊維状に束ねて互いに溶着させたもの、又は発泡体、又は繊維を織布や不織布の様態に整形したもの、を用いて構成されていることを特徴とする請求項4又は5記載の電解処理装置。
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