JP4018759B2 - 農業用塩化ビニル系樹脂フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、農業用塩化ビニル系樹脂フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、トンネルやハウス等の農業用施設の被覆材として、安価で、透明性が良く、保温性や強度にも優れる上、フィルム化が容易等の理由から、ポリ塩化ビニルに代表される塩化ビニル系樹脂からなる農業用フィルムが広く使用されている。
【0003】
この塩化ビニル系樹脂からなる農業用フィルム(以下、農業用塩化ビニル系樹脂フィルムと記す)は、一般に塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等の可塑剤、安定剤、防滴剤、防霧剤(含フッ素化合物)等の添加剤を所定量配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を、カレンダー法等の手段にてフィルム化したものである。
また、農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを製造する際の耐熱性やフィルムの耐候性を向上させるために、上記の塩化ビニル系樹脂組成物に、ビスフェノールAを骨格とするエポキシ樹脂が添加されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のビスフェノールAを骨格とするエポキシ樹脂を配合した塩化ビニル系樹脂組成物は、フィルム化する際の耐熱性には優れるものの、いわゆるフィッシュアイが発生し易いという問題があり、特に、フィルム化の作業が長時間連続して行われる場合に、このフィッシュアイの発生がより多くなる傾向にあった。
【0005】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、上記のビスフェノールAを骨格とするエポキシ樹脂に代えて、特定のエポキシ化ポリブタジエンを使用することにより、上記のフィッシュアイの発生を抑止するとともに、得られる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの防塵性ならびに耐候性がより向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、可塑剤としてジ−2−エチルヘキシルフタレートを使用し、エポキシ当量100〜300のエポキシ化ポリブタジエンを0.1〜5.0重量部添加した塩化ビニル系樹脂組成物をフィルム化してなることを特徴とするものである。
なお、本発明でいうエポキシ当量とは、下記数1に示す式で求められるものである。
【数1】
【0007】
本発明における塩化ビニル系樹脂としては、従来の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムと同様、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルとエチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイン酸、フマール酸、アクリロニトリル、アルキルビニルエーテル等との共重合体、あるいはこれらの樹脂の混合物が使用できる。
【0008】
上記の塩化ビニル系樹脂には、必要に応じて、可塑剤、防滴剤、含フッ素化合物、安定剤、滑剤または粘着防止剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、無機質充填剤などの各種添加剤が添加される。
【0009】
上記の可塑剤として具体的には、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジラウリルフタレート、ジデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジトリデシルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;ジオクチルアジペート、ジトリノニルアジペート、ジイソデシルアジペート等のアジピン酸エステル系可塑剤;ポリエステル系可塑剤;セバチン酸エステル系可塑剤;トリメリット酸エステル系可塑剤;エポキシ化大豆油等のエポキシ系可塑剤などから選ばれる一種以上が使用きる。
また、可塑剤の添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、30〜70重量部程度である。
【0010】
上記の防滴剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸・二塩基酸エステル、ソルビトール脂肪酸・二塩基酸エステル、ジグリセリン脂肪酸・二塩基酸エステル等の多価アルコールと脂肪酸とのエステルや多価アルコールと脂肪酸および二塩基酸とのエステル、あるいはこれらにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加された化合物などが挙げられ、具体的には、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンステアレート・エチレンオキサイド2モル付加物、ソルビタンステアレート・プロピレンオキサイド3モル付加物、ソルビトールステアレート、ソルビトールステアレート・エチレンオキサイド3モル付加物、ジグリセリンパルミテート・エチレンオキサイド2モル付加物、ソルビタンステアレートアジペート・エチレンオキサイド3モル付加物、ソルビトールステアレートアジペート・エチレンオキサイド2モル付加物、ジグリセリンパルミテートセバケート・プロピレンオキサイド3モル付加物、ソルビトールパルミテートアジペート・エチレンオキサイド3モル付加物等が挙げられる。
上記防滴剤は、一種または二種以上を組み合わせて使用することができる。
また、上記の防滴剤の添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、0.5〜6.0重量部程度である。
【0011】
上記の含フッ素化合物は、一分子中に含フッ素基と水酸基またはアルキレンオキサイド基の少なくとも一種を有する化合物である。
含フッ素基としては、パーフルオロアルキル基〔Cn F2n+1基〕、パーフルオロアルコキシ基〔Cn F2n+1O基〕、ポリフルオロアルキル基〔Hm Cn F2n+1-m基〕、パーフルオロアルケニル基〔Cn F2n-1基〕、ポリフルオロアルケニル基〔Hm Cn F2n-1-m基〕、パーフルオロアルキレン基〔Cn F2n基〕等が挙げられ(但し、式中のmは1〜3、nは3〜20の整数)、アルキレンオキサイド基としては、(C2 H4 O)n 、(C3 H6 O)n 等が挙げられる(但し、式中のnは1〜30の整数)。
【0012】
含フッ素化合物として具体的には、化3の(1)〜(13)に示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、含フッ素化合物の添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し0.01〜1.0重量部、更に好ましくは0.05〜0.5重量部程度である。
【0013】
【化3】
【0014】
安定剤としては、金属石鹸、有機ホスファイト系安定剤などの通常使用される安定剤を使用することができる。
金属石鹸としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、リシノール酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、オクトイン酸亜鉛などが挙げられる。
有機ホスファイト系安定剤としては、ジフェニルデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト等が挙げられる。
上記安定剤は、一種または二種以上を組み合わせて使用することができる。
また、安定剤の添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、0.5〜10重量部、更に好ましくは1〜5重量部程度である。
【0015】
滑剤または粘着防止剤としては、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸系滑剤;ステアリン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸アミド系滑剤;ブチルパルミテート、ブチルステアレート等のエステル系滑剤;バリウムイソデシルホスフェート、カルシウムオクタデシルホスフェート等の有機リン酸金属塩系滑剤;ポリエチレンワックス;流動パラフィンなどが挙げられる。
上記の滑剤または粘着防止剤は、一種または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
紫外線吸収剤としては、一般に使用されているベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤が挙げられる。
上記の紫外線吸収剤は、一種または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
無機質充填剤としては、炭酸マグネシウム、マグネシウム珪酸塩、酸化珪素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト類等が挙げられる。
上記の無機質充填剤は、粒径が20μm以下のものが好ましい。
【0018】
本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、従来より使用されているビスフェノールAを骨格とするエポキシ樹脂に代えて、エポキシ化ポリブタジエンを使用したものである。
このエポキシ化ポリブタジエンとしては、エポキシ当量が100〜300のものが使用できる。エポキシ化ポリブタジエンのエポキシ当量が高すぎても、逆に低すぎても、得られた農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの防塵性および耐候性、特に耐候性が充分に向上しない。
【0019】
上記のエポキシ化ポリブタジエンの添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、0.1〜5.0重量部、好ましくは、0.5〜3.0重量部である。
エポキシ化ポリブタジエンの添加量が多すぎると得られる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの防塵性を損ない、添加量が少なすぎると得られる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの耐候性が充分に向上しない。
【0020】
なお、本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、ビスフェノールAを骨格とするエポキシ樹脂に代えて、エポキシ化ポリブタジエンを使用することによって、フィッシュアイの発生を抑止するとともに、得られる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの耐候性や防塵性を更に向上させるものであるが、この効果を阻害しない程度であれば、従来から使用されているビスフェノールAを骨格とするエポキシ樹脂を併用することも可能である。
【0021】
本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムにおいては、上記のエポキシ化ポリブタジエンに加えて、化4または化5に示す一般式で表される有機リン系化合物を添加するのが望ましい。
【化4】
【化5】
【0022】
上記の有機リン系化合物としては、化4に示す一般式で表される一種以上の化合物、化5に示す一般式で表される一種以上の化合物、あるいは化4に示す一般式で表される一種以上の化合物と化5に示す一般式で表される一種以上の化合物の混合物のいずれであってもよい。
この有機リン系化合物を併用して添加することにより、得られる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの耐候性および防塵性が更に向上する。
【0023】
上記の有機リン系化合物の添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、0.01〜5.0重量部、好ましくは0.1〜4.0重量部である。
有機リン系化合物の添加量が少なすぎると、耐候性および防塵性の向上が充分なく、添加量が多すぎると、コスト高となるばかりでなく、添加した有機リン系化合物のブルーム等によって、得られた農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの透明性を損なうことがある。
【0024】
更に、本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムにおいては、耐候性をより向上させるために、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン単位を有するヒンダードアミン系光安定剤を添加するのが望ましい。
このヒンダードアミン系光安定剤としては、分子量が800〜2000程度のものが好ましい。
また、上記ヒンダードアミン系光安定剤の添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、0.01〜0.3重量部である。ヒンダードアミン系光安定剤の添加量が少なすぎると耐候性に向上が充分でなく、添加量が多すぎると、コスト高となるばかりでなく、ブルーム等によって得られた農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの透明性を損なうことがある。
【0025】
上記の塩化ビニル系樹脂組成物は、カレンダー法、押出法、インフレーション法等の公知の手段にてフィルム化され、本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムが得られる。
フィルム化するときの温度等の加工条件は、従来の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの場合と同様でよい。
【0026】
本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、従来の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムと同様に、展張した際に外側となる面に、溶剤型、水系型あるいは紫外線硬化型の塗料による防塵性被膜を形成してもよい。
溶剤型塗料としては、例えばアクリル樹脂系、塩化ビニル樹脂系、セルロース樹脂系、フッ素樹脂系、ポリアミド樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン樹脂系などが挙げられる。
水系型塗料としては、例えばアクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系など挙げられる。
紫外線硬化型塗料としては、例えばアクリル樹脂系、アクリル変性ウレタン樹脂系、アクリル変性エポキシ樹脂系、メルカプト誘導体系、エポキシ樹脂系等が挙げられる。
【0027】
また、本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、展張した際に内側となる面に、防滴性を付与することを目的とする被膜、例えば上記の溶剤型、水系型、あるいは紫外線硬化型の塗料にコロイダルシリカなどを添加して得た塗料による被膜などを形成してもよい。
【0028】
【実施例】
以下、具体的な実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0029】
〔実施例1〜9〕
表1に示す配合からなる塩化ビニル系樹脂組成物を、それぞれ8インチのテストロールにて175℃で20分間混練りした後、厚さ0.1mmのフィルムを分出しした。
得られたフィルムについて、フィッシュアイの発生度合い、防塵性、耐候性を下記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0030】
(1)フィッシュアイの発生度合い
得られたフィルムを目視により観察し、フィッシュアイの発生度合いを下記基準を目安にして五段階評価した。
〔評価基準〕
5・・・フィッシュアイの発生が全くない。
4・・・フィッシュアイの発生が殆ど見られない。
3・・・フィッシュアイが僅かに発生している。
2・・・フィッシュアイの発生がやや多く見られる。
1・・・フィッシュアイの発生が極めて多い。
(2)防塵性の評価
南側に面し、傾斜角度45°に設置した窓枠状に暴露台にフィルムを設置し、6ケ月後の汚れ状態を目視により観察して、下記基準を目安にして五段階評価した。
〔評価基準〕
5・・・汚れの付着が殆ど見られない。
4・・・僅かに汚れが付着している。
3・・・汚れの付着が見られる。
2・・・汚れの付着が顕著に見られる。
1・・・汚れの付着が極めて多い。
(3)耐候性
間口が1.5m、高さ1mのパイプハウスに得られたフィルムを展張し、12ケ月後のフィルムの状態を目視により観察し、下記基準を目安にして五段階評価した。
〔評価基準〕
5・・・展張前と殆ど変わらず。
4・・・破れの発生はないが、僅かに褐変している。
3・・・僅かに破れが発生し、褐変が見られる。
2・・・褐変が著しく、破れの発生も多く見られる。
1・・・褐変が全面に亘り、破れの発生が極めて多い。
【0031】
【表1】
【0032】
〔比較例1〜11〕
表2に示す配合からなる塩化ビニル系樹脂組成物から、実施例と同様にしてフィルムを得た。
得られたフィルムについて、実施例と同様にして、フィッシュアイの発生度合い、防塵性、耐候性を評価した。結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
以上の結果より、本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、従来より使用されているビスフェノールAを骨格とするエポキシ樹脂を添加した農業用塩化ビニル系樹脂フィルムよりも、フィッシュアイの発生度合い、防塵性、耐候性のいずれにおいても優れていることがわかる。
また、有機リン系化合物、ヒンダードアミン系光安定剤を併用して添加することによって、防塵性、耐候性が更に向上する。
【0035】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、フィルム化時のフィッシュアイの発生が極めて少ないばかりでなく、従来の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムに比し、防塵性および耐候性にも優れるものである。
このように、本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、製造時の不良発生の頻度が低く、また長期間にわたっての展張が可能であるため、農家の負担減および省資源に著しく寄与するものである。
【0036】
また、有機リン系化合物、ヒンダードアミン系光安定剤を併用して使用することにより、防塵性および耐候性の更なる向上が見られ、より長期間にわたって展張可能な農業用塩化ビニル系樹脂フィルムが得られるものである。
Claims (3)
- 塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、可塑剤としてジ−2−エチルヘキシルフタレートを使用し、エポキシ当量100〜300のエポキシ化ポリブタジエンを0.1〜5.0重量部添加した塩化ビニル系樹脂組成物をフィルム化してなる農業用塩化ビニル系樹脂フィルム。
- 2,2,6,6−テトラメチルピペリジン単位を有するヒンダードアミン系光安定剤を、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し0.01〜0.3重量部添加してなる請求項1または2記載の農業用塩化ビニル系樹脂フィルム。
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- 1996-05-22 JP JP15033396A patent/JP4018759B2/ja not_active Expired - Lifetime
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