JP6400976B2 - 印刷物保護フィルム用基材 - Google Patents

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Description

本発明は、写真や紙類などの印刷物の上に貼り付けて、該印刷物を保護するために使用される印刷物保護フィルムの基材に関し、特に、印刷物の退色を防止し、かつ印刷物保護フィルム自体の変色もない印刷物保護フィルム用基材に関する。
印刷物の上に印刷物保護フィルムを貼り合わせることは、一般的にラミネート加工と称される。ラミネート加工を施すと、印刷面に艶や耐水性、高級感などを付与することができる。また、特殊な表面形状を有する保護フィルムを用いれば、マット感やシボ感を印刷面に付与することもできる。
このような印刷物保護フィルムは、基材と粘着層、場合によっては、表面層や意匠層を有してなり、印刷物の退色を防止するために、これら基材や粘着層などに、耐候性を高める光安定剤や紫外線吸収剤などが添加されることが多い。
ポリオレフィン系樹脂製の基材は、添加剤の保持能力が低く、光安定剤や紫外線吸収剤などの添加量が多くなりやすいので、製品品質の低下やコスト的な問題があった。そのうえ、ポリオレフィン系樹脂は、硬度を自由に変えることができないので、局面追従性を必要とする用途には不向きである。
これに対し、特許文献1に記載するような塩化ビニル系樹脂製の基材であれば、無色透明で、硬度も自由に変えることができ、しかも、色々な機能をポリオレフィン系樹脂に比べ少ない添加量によって発揮させやすい。
ところが、無色透明の塩化ビニル系樹脂に光安定剤や紫外線吸収剤を添加すると、基材(フィルム)の製膜(加熱成形)中ないし製膜後に、フィルム自体の色相が黄色味を帯びてしまう問題があった。
一方、耐候性の向上を目的として、ブタンテトラカルボン酸を有するヒンダードアミンを配合した塩化ビニル系樹脂製の成形品が提案されている(特許文献2参照)。
しかし、特許文献2の成形品の用途は、雨樋や窓枠などの建材や自動車の内部部品であって、透明性については検討していないうえ、加熱成形中ないし成形直後に起こる(すなわち、光に晒される前に生じてしまう)成形品自体の黄変を防止できるものではなかった。
特開2002−326314号公報 特開平6−145450号公報
本発明は、以上の諸点を考慮し、透明性に優れ、印刷物の退色などの経時劣化を防ぐことができ、しかも、塩化ビニル系樹脂製でありながらフィルム自体の変色(特に黄変)をも防止できる、印刷物を保護するためのフィルム用基材を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討を重ねた結果、塩化ビニル系樹脂が、配合される添加剤やフィルムの製膜(加熱成形)時の環境などによって黄変しやすくなることに着目し、
無限に存在する光安定剤や紫外線吸収剤の中から、ブタンテトラカルボン酸を有するヒンダードアミンとベンゾフェノン系化合物とを選定し、これらを共に塩化ビニル系樹脂中に配合すれば、それぞれの耐候性能を相殺することなく、むしろ経時での色相変化をより確実に抑えることができ、しかも、製膜(加熱成形)中ないし製膜直後に起こる(すなわち、光に晒される前に生じてしまう)フィルム自体の黄変を引き起こさないことを見出した。
本発明は、このような知見の下でなし得たものであり、以下を要旨とする。
(1)印刷物を保護するためのフィルム用基材であって、
塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、10〜30重量部の可塑剤と、
光安定剤として、ブタンテトラカルボン酸を有するヒンダードアミン、
紫外線吸収剤として、ベンゾフェノン系化合物
とを含んでなり(ただし、グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタアクリレートのホモポリマー及び/又はコポリマーを含む場合を除く)、かつJIS K7105に準じて測定される全光線透過率が80%以上であることを特徴とする印刷物保護フィルム用基材。
(2)さらに、エポキシ化大豆油とバリウム−亜鉛系化合物を含むことを特徴とする前記(1)に記載の印刷物保護フィルム用基材。
(3)サンシャインウェザーメーターにより、ブラックパネル温度63℃、60分当たり12分の水噴射の条件下、2000時間経過した後の色相変化ΔE値が1.0以下であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の印刷物保護フィルム用基材。
本発明の印刷物保護フィルム用基材は、成形性(製膜性)や透明性に優れるうえ、製膜(加熱成形)中ないし製膜直後に懸念される基材自体の黄変を引き起こさない。また、本発明の基材を用いた保護フィルムにてラミネート加工された印刷物は、経時使用に伴う色やけ、退色などの色相変化が生じにくいので、耐候性に非常に優れたものである。
このため、長期に亘って紫外線などの光に晒される印刷物を保護するフィルムの基材用途として最適である。
本発明は、印刷物を保護するためのフィルム用の基材であって、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、10〜30重量部の可塑剤を含む。
10重量部未満だと、製膜(成形)が困難になり、良好な基材が得られにくく、30重量部を超えると、コシがなくなり、印刷物保護フィルムに用いる基材としては不適であり、好ましくは15〜25重量部である。
可塑剤としては、通常の塩化ビニル系樹脂に使用されている化合物が使用でき、具体的にはフタル酸ジオクチル(DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジウンデシルフタレート(DUP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)などに代表されるフタル酸エステル系、トリオクチルトリメリテート(TOTM)などに代表されるトリメリット酸エステル系、ジオクチルアジペート(DOA)、ジオクチルセバケート(DOS)、ジオクチルアゼレート(DOZ)などに代表される脂肪酸エステル系、ポリプロピレンアジペートなどに代表されるポリエステル系などの可塑剤を使用することができる。
本発明では、上記可塑剤の助剤として、エポキシ化大豆油を添加することもできる。エポキシ化大豆油の添加量は、製膜性の向上なども考慮すると、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1〜10重量部程度とすればよい。
エポキシ化大豆油は、後述のバリウム−亜鉛系熱安定剤との併用により、製膜時などの熱による塩化ビニル系樹脂の黄変現象をより一層防止することができる。
塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルモノマーの単独重合体、塩化ビニルモノマーと、酢酸ビニルモノマー、アクリロニトリルモノマーなどの塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体、及びこれら重合体の後塩素化物を使用することができる。
上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、小さすぎると、得られる保護フィルムの耐傷性に劣り、大きすぎれば、厚さ300μm以下のフィルムに成形する際の製膜性が低下するので、800〜1400程度が好ましい。
本発明の印刷物保護フィルム用基材は、光安定剤として、ブタンテトラカルボン酸を有するヒンダードアミンを含む。ブタンテトラカルボン酸を有さないヒンダードアミン系の光安定剤では、印刷物保護フィルム用の基材として要求される十分な耐候性が得られないことがある。
ブタンテトラカルボン酸を有するヒンダードアミンとしては、例えば、下記の一般式(I)で表される化合物や、一般式(II)で表される化合物などが挙げられるが、これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
上記のようなブタンテトラカルボン酸を有するヒンダードアミンの中でも、分子量が小さい化合物ではブリードアウトしやすい傾向があるので、分子量が1500以上の化合物が好ましく、さらに好ましくは一般式(II)に示す化合物である。
また、ブタンテトラカルボン酸を有するヒンダードアミンの添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、0.01〜0.5重量部程度が好ましく、より好ましくは0.1〜0.3重量部である。
本発明の印刷物保護フィルム用基材は、紫外線吸収剤として、ベンゾフェノン系化合物を含む。例えば、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤では、製膜時や製膜後に黄変が見られたり、十分な耐候性が得られないことがある。
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2,4−ジーヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノン)−ブタン等が挙げられるが、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。
上記ベンゾフェノン系化合物の中でも、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン等の分子量が300以上の化合物であると紫外線の捕捉容量が大きいため好ましい。
また、ベンゾフェノン系化合物の添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、0.05〜1.5重量部程度が好ましく、より好ましくは0.5〜1.0重量部である。
本発明では、前記したようなブタンテトラカルボン酸を有するヒンダードアミンとベンゾフェノン系化合物とを共に塩化ビニル系樹脂に配合することで、製膜(加熱成形)中ないし製膜直後に基材自体の黄変を引き起こすことがないうえ、従来品に比べ耐候性が飛躍的に向上したものとすることができる。
このようなヒンダードアミン系光安定剤とベンゾフェノン系紫外線吸収剤とを組み合わせた基材を用いれば、製膜(加熱成形)時の黄変が引き起こされないうえ、しかも、印刷物に貼着した後に紫外線などの光に長期に亘って晒されても、色やけ、退色などの色相変化が生じない印刷物保護フィルムの提供が可能となる。
本発明では、熱安定剤として、バリウム−亜鉛系化合物を使用することが好ましい。カルシウム−亜鉛系やハイドロタルサイト系の安定剤では、製膜性に劣ることがある。
バリウム−亜鉛系化合物は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、3〜5重量部程度添加すればよいが、特に、前述の可塑剤の助剤であるエポキシ化大豆油と組み合わせて用いると、本発明の基材の製膜(成形加工)時における動的・静的熱安定性を高め、光に晒される前の黄変の発生を確実に抑える上で好適である。
本発明の基材には、上記可塑剤、助剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤のほかに、必要に応じて、本発明の特性(透明性や製膜性、耐候性など)を損なわない範囲において、無機充填剤、顔料(着色剤)、酸化防止剤、難燃剤、滑剤などの各種添加剤を適宜添加することができる。
本発明の基材は、押出成形、カレンダー成形、インフレーション成形等の公知の手段によってフィルム状に加工することができる。
得られる基材の厚みについては、用途によって異なるが、60〜300μm程度が好ましく、より好ましくは60〜100μmである。
本発明の基材は、JIS K7105に準じて測定される全光線透過率が80%以上である。
全光線透過率が80%未満のものでは、透明性に劣り、写真や紙類などの印刷物が視認しづらくなる虞があり、印刷物保護フィルムの基材として適さないことがある。
なお、上記所望の全光線透過率を得るために支障とならない範囲であれば、本発明の基材の表面(粘着層が形成されていない面)に、目的や用途などに応じて、マット感やシボ感を施してもよい。また、本発明の基材は、表面層や意匠層を有する多層構造としてもよい。
また、本発明の基材は、サンシャインウェザーメーターにおいて、ブラックパネル温度63℃、60分当たり12分の水噴射の条件下、2000時間経過した後の色相変化ΔE値が1.0以下であることが好ましく、より好ましくは0.5以下である。
上記条件下の促進試験における色相変化ΔE値が、1.0より高いものでは、例えば、5〜7年以上に亘って屋外で掲示される印刷物の保護フィルムなどに用いた場合に、変色が起こりやすくなる。
以上のような本発明の基材に、粘着層を積層することで、印刷物保護フィルムとすることができる。
粘着層としては、本発明の特性(透明性や製膜性、耐候性など)を損なわないものであれば、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤などから構成される。
実施例1〜7、比較例1〜4
表1に記載の配合処方にて、カレンダー成形により印刷物保護フィルム用基材として厚さ80μmのフィルムを得た。
なお、表1における各成分の数値は重量部である。
〔使用原料〕
・塩化ビニル系樹脂:重合度1000のポリ塩化ビニル(塩化ビニルのホモポリマー)
・可塑剤:フタル酸ジオクチル
・光安定剤1:一般式(II)で表されるブタンテトラカルボン酸を有するヒンダードアミン(分子量2000)
・光安定剤2:一般式(I)で表されるブタンテトラカルボン酸を有するヒンダードアミン(分子量847)
・光安定剤3:ブタンテトラカルボン酸を有さないヒンダードアミン≪ビス(1−ウンデカノキシ−2,6,6,−テトラメチルピペラジン−4−イル)カルボネート(分子量681)≫
・紫外線吸収剤1:2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン(分子量326)
・紫外線吸収剤2:2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(分子量228)
・紫外線吸収剤3:2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(分子量323)
・熱安定剤1:バリウム−亜鉛系化合物
・熱安定剤2:カルシウム−亜鉛系化合物
・熱安定剤3:ハイドロタルサイト
上記実施例1〜7および比較例1〜4で得られたフィルムにつき、各特性を下記の評価方法で評価し、この結果を表1に併せて示す。
透明性
カレンダー成形後の各フィルムについて、JIS K7105に準じて全光線透過率を測定し、全光線透過率が80%以上である場合を「○」、80%未満である場合を「×」とした。
製膜性
カレンダー成形における製膜性を評価し、長時間安定してフィルムが得られる場合を「○」、長時間の製膜において、フィルムに若干の変色やヤケが生じる場合を「△」、フィルムの製膜自体が困難な場合を「×」とした。
耐候性(色相変化ΔE)
縦50mm×横50mmの評価サンプルを作成し、色彩色度計(ミノルタカメラ社製 商品名"CR−200B")を用い、JIS K7373:2006に準じて、サンプル表面の初期E値を測定した。
次いで、各サンプルに、スガ試験機の"300サンシャインウェザーメーター"を使用して、ブラックパネル温度63℃±3℃、60分当たり12分の水噴射の条件下、2000時間経過した後のサンプル表面のE値を、初期E値と同様に測定し、初期E値との差をΔE値として求め、ΔE値が1.0未満を「○」、1.0以上2.0未満を「△」2.0以上を「×」と評価した。なお、このΔE値は、色の変化具合を数字化したものであり、値が小さい方が、色の変化(黄変)が少ないことを示す。
なお、比較例4のフィルムは、透明性や製膜性、耐候性については問題無いものの、コシに劣り、印刷物保護フィルム用途には向かないものであった。
本発明の基材は、基材自体の変色がなく、優れた透明性を有しながら、耐候性なども兼ね備えているので、印刷物を保護するためのフィルム用途に非常に有効である。
このような本発明の基材を用いた印刷物保護フィルムによってラミネートされた印刷物は、例えば、屋内や屋外での各種広告、表示、看板などとして好適に使用され得る。

Claims (3)

  1. 印刷物を保護するためのフィルム用基材であって、
    塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、10〜30重量部の可塑剤と、
    光安定剤として、ブタンテトラカルボン酸を有するヒンダードアミン、
    紫外線吸収剤として、ベンゾフェノン系化合物
    とを含んでなり(ただし、グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタアクリレートのホモポリマー及び/又はコポリマーを含む場合を除く)、かつJIS K7105に準じて測定される全光線透過率が80%以上であることを特徴とする印刷物保護フィルム用基材。
  2. さらに、エポキシ化大豆油とバリウム−亜鉛系化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の印刷物保護フィルム用基材。
  3. サンシャインウェザーメーターにより、ブラックパネル温度63℃、60分当たり12分の水噴射の条件下、2000時間経過した後の色相変化ΔE値が1.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷物保護フィルム用基材。
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