JP4017750B2 - カメラ用フォーカルプレンシャッタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、撮影に際して、先羽根群と後羽根群とを同一方向へ順次作動させ、その二つの羽根群のスリット形成羽根によって形成されたスリットにより感光面の露光を行うようにしたカメラ用のフォーカルプレンシャッタに関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平9−138439号公報などで知られているように、最近のフォーカルプレンシャッタの構成は、所定の間隔を空けて地板に立設されている二つの軸に、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材を摺動可能に嵌合しており、撮影に際しては、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材が、先羽根用駆動ばねと後羽根用駆動ばねの付勢力によって所定のタイミングで回転を開始し、先羽根群と後羽根群に露光走行を行わせるようにしている。
【0003】
そして、言うまでもないことであるが、これらの駆動部材や羽根群は、如何なる条件の下にあっても、スムーズに作動し且つ安定した作動が得られことを要求されている。そのため、製作するに当たっては種々の工夫が行われているが、その一つとして、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材の回転が好適に行えるようにするために、地板に立設された軸の摺接面に溝を形成し、そこに潤滑油を蓄えることにより、駆動部材との摺接面に常に油膜を形成し、摺動性を良好にすることが知られている。また、その場合の潤滑油としては、液体の油を用いることもあれば、グリースなどの半固体の油を用いることもある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようにして摺接面に形成された油膜は、常温の場合には所期の機能を発揮するが、高温や低温の環境下においては、その潤滑性に変化が生じてしまう。それでも、高温の環境下においては、各羽根群の走行速度に多少の影響が出るにしても、致命的なものとはならないが、低温の環境下においては、グリースなどの半固体の油を用いた場合でも油膜の潤滑機能が低下し、駆動部材が一旦回転を開始してしまった後における摺動性については問題ないものの、回転の開始作動がスムーズに行われず、所期のタイミングよりも遅れてしまうことがある。
【0005】
そこで、このような低温下での現象が、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材の両方に、同時に同程度に発生したり、後羽根用駆動部材のみに発生したり、先羽根用駆動部材よりも後羽根用駆動部材の方に大きく発生したりするのであれば、適正露光ではないにしても一応撮影は可能であるが、先羽根用駆動部材のみに発生したり、後羽根用駆動部材よりも先羽根用駆動部材の方に大きく発生した場合には、先羽根群と後羽根群によるスリットが形成されず、シャッタは作動したが感光面に対する露光が行われないということになってしまう。このようなことは、シャッタにとって致命的である。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材が、地板に立設されている夫々の軸に回転可能に嵌合されていて、各駆動部材と各軸との摺接面に潤滑油の油膜を形成するようにしたフォーカルプレンシャッタにおいて、余程のことでもない限り、低温下においても感光面に対する露光だけは行われるようにしたカメラ用のフォーカルプレンシャッタを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材が、地板に所定の間隔を空けて立設されている第1の軸と第2の軸に摺動可能に嵌合されており、撮影に際しては、先羽根用駆動ばねと後羽根用駆動ばねの付勢力によって所定のタイミングで回転を開始し、先羽根群と後羽根群に露光走行を行わせるようにしたカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいて、夫々の前記駆動部材と前記軸との少なくとも一方の摺接面には、摺動性を良好に維持する油を蓄えるための油溜め部が形成されており、しかも、後羽根用駆動部材と第2の軸との摺接面積の方が、先羽根用駆動部材と第1の軸との摺接面積よりも大きく形成されているようにする。
また、上記の目的を達成するために、本発明は、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材が、地板に所定の間隔を空けて立設されている第1の軸と第2の軸に摺動可能に嵌合されており、撮影に際しては、先羽根用駆動ばねと後羽根用駆動ばねの付勢力によって所定のタイミングで回転を開始し、先羽根群と後羽根群に露光走行を行わせるようにしたカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいて、夫々の前記駆動部材と前記軸との少なくとも一方の摺接面には、摺動性を良好に維持する油を蓄えるための油溜め部が形成されており、しかも、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材は、第1の軸と第2の軸の立設位置近傍領域においても前記地板に対して摺動するように構成されており、後羽根用駆動部材と前記地板との摺接面積の方が、先羽根用駆動部材と前記地板との摺接面積よりも大きく形成されているようにする。
更に、上記の目的を達成するために、本発明は、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材が、地板に所定の間隔を空けて立設されている第1の軸と第2の軸に摺動可能に嵌合されており、撮影に際しては、先羽根用駆動ばねと後羽根用駆動ばねの付勢力によって所定のタイミングで回転を開始し、先羽根群と後羽根群に露光走行を行わせるようにしたカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいて、夫々の前記駆動部材と前記軸との少なくとも一方の摺接面には、摺動性を良好に維持する油を蓄えるための油溜め部が形成されており、しかも、第1の軸と第2の軸が、前記地板に一体化された第1の取付部材と第2の取付部材に取り付けられていて、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材は、それらの取付部材に対しても摺動するように構成されており、後羽根用駆動部材と第2の取付部材との摺接面積の方が、先羽根用駆動部材と第1の取付部材との摺接面積よりも大きく形成されているようにする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明する。尚、図1及び図2は第1実施例を示したものであって、図1は露光作動終了直前の状態を示した平面図であり、図2は図1の右方向から視た要部の断面図である。また、図1は第2実施例にも適用されるものであって、図3は図2と同様にして視た第2実施例の要部の断面図である。従って、これらの図面においては、共通の部材,部位には同じ符号を付けてある。
【0009】
〔第1実施例〕
最初に、第1実施例の構成を説明するが、先ず、シャッタユニットの全体構成を説明しておく。図1は被写体側から視たものである。従って、図2においては左側が被写体側ということになる。また、先羽根群と後羽根群の羽根室は、シャッタ地板,中間板,補助地板と称する3枚の板状の部材によって形成されているが、中間板の図示は省略されている。そして、一番被写体側のシャッタ地板1と中間板との間が先羽根群の羽根室であり、中間板と補助地板2との間が後羽根群の羽根室となっている。
【0010】
また、図1は、シャッタユニットを被写体側から視て、左半分を示したものであり、シャッタ地板1は、その略中央部に開口部1aを形成している。また、図1において、シャッタ地板1の背面側には、上記したように順に中間板と補助地板2が取り付けられているが、それらにも、開口部1aの形状と類似の形状をした開口部が形成されていて、それらの三つの開口部を重ね合わせることによって、長方形の露光開口が形成されるようになっている。本実施例の説明においては、便宜上、その露光開口の形状が開口部1aの形状と同じであるということで説明することにする。
【0011】
更に、図1の表面側であって開口部1aの左側には、図2に示すような取付板3が、所定の間隔を空けてシャッタ地板1に取り付けられており、その取付板3には、シャッタ地板1側に、図示していない先羽根用電磁石と後羽根用電磁石が取り付けられ、被写体側には、図示していないプリント配線板が取り付けられている。そのほか、この取付板3には、後述するラチェット車を係止するラチェット爪なども設けられているが、それらの部材,部位の構成については周知であり、且つ本発明を説明する上で特に必要がないと考え、図示を省略してある。
【0012】
ところで、図1に示すように、シャッタ地板1には、円弧状をした二つの長孔1b,1cが形成されており、軸1d,1e,1f,1g,1hが立設されている。そして、これらの軸のうち軸1e,1gはシャッタ地板1の背面側にのみ立設され、軸1hはシャッタ地板1の表面側にのみ立設されている。また、軸1d,1fは、図2に示すように、シャッタ地板1を貫通し、表面側にも背面側にも立設した状態で、基部1d1 ,1f1 をシャッタ地板1に、かしめ加工によって取り付けている。また、本実施例においては、軸1d,1fの先端部1d2 ,1f2 は、取付板3の孔に嵌合しているだけであるが、周知の構成のようにして、被写体側の端面にねじ孔を設け、そこにビスをねじ込んで、取付板3を螺着するようにしても差し支えない。
【0013】
このような、軸1d,1fには、シャッタ地板1の表面側において、先羽根用駆動部材4と後羽根用駆動部材5が回転可能に取りつけられている。これらの駆動部材4,5は、軸1d,1fに嵌合させられている金属製の筒部4a,5aのほか、合成樹脂で一体的に成形されている被押動部4b,5bと、取付部4c,5cと、駆動ピン4d,5dとを備えており、筒部4a,5aと合成樹脂部とは、筒部4a,5aと金属製の座金4e,5eをかしめることによって一体化されている。また、軸1d,1fには、油溜め用の溝1d3 ,1d4 ,1f3 ,1f4 ,1f5 ,1f6 が、夫々周面にリング状に形成されており、そこに溜められた油が、摺接面に流れて油膜を形成することにより、軸1d,1fに対する先羽根用駆動部材4と後羽根用駆動部材5の摺動性を良好に保つようにしている。更に、図2から明らかなように、軸1d,1fの周面の形状は、先羽根用駆動部材4と軸1dとの摺接面積よりも,後羽根用駆動部材5と軸1fとの摺接面積の方が大きくなるように形成されている。
【0014】
また、先羽根用駆動部材4と後羽根用駆動部材5の取付部4c,5cには、上記した図示していない先羽根用電磁石と後羽根用電磁石に吸着される鉄片部材6,7が取り付けられている。更に、各駆動部材4,5の駆動ピン4d,5dは、長孔1b,1cを貫通してそれらの先端部をシャッタ地板1の背面側に突き出している。そして、これらの駆動ピン4d,5dは、根元部の断面形状が円形をし、先端部の断面形状が小判型をしていて、その根元部が、図1において長孔1b,1cの上方の端面に当接し得るようになっている。
【0015】
軸1d,1eには、更に支承部1d5 ,1f7 が形成さえれていて、夫々ラチェット車8,9が回転可能に取り付けられている。また、各駆動部材4,5の筒部4a,5aの周りには、先羽根用駆動ばね10と後羽根用駆動ばね11が巻回されている。そして、各駆動ばね10,11の一端は、各ラチェット車8,9の溝8a,9aに掛けられ、他端は、明示されていないが取付部4c,5cの一部に掛けられている。従って、製作時において、これらの駆動ばね10,11の付勢力を調整する場合には、ラチェット車8,9を回転させて行い、取付板3に設けられた図示していないラチェット爪によって回転止めを行うようになっている。尚、各駆動ばね10,11は、ラチェット車8,9を取付板3の方に、また、各駆動部材4,5をシャッタ地板1の方へも付勢している。
【0016】
また、シャッタ地板1の表面側において、軸1hには、セット部材12が回転可能に取り付けられている。このセット部材12には、軸1hに嵌合している筒部12aと、押動部12b,12cと、被押動部12dが形成されている。そして、図示していないばねによって時計方向へ回転するように付勢されているが、図1においては、その回転を、図示していないストッパによって阻止されている状態が示されている。以下、セット部材12については、この位置を初期位置と称することにする。
【0017】
次に、図1においてはシャッタ地板1の背面側に取り付けられている先羽根群と後羽根群について簡単に説明する。周知のように、これらの先羽根群と後羽根群は、夫々二つのアームと、それらに枢支されている複数枚の羽根によって構成されている。先ず、先羽根群は、二つのアーム13,14の一端が、シャッタ地板1の背面側において、軸1d,1eに枢着されている。そして、それらの他端に向けて、順次、複数枚の羽根が連結軸(リベット軸)を介して枢支されているが、図1においては、それらの羽根のうち、最先端に枢支されているスリット形成羽根15のみが示されている。また、アーム13には長孔13aが形成されていて、そこに上記した駆動ピン4dの先端部が嵌合している。
【0018】
また、後羽根群も、二つのアーム16,17の一端が、シャッタ地板1の背面側において、軸1f,1gに枢着されている。そして、それらの他端に向けて、順次、複数枚の羽根が連結軸を介して枢支されているが、図1においては、先羽根群の場合と同様に、最先端に枢支されているスリット形成羽根18のみが示されている。また、アーム16には長孔16aが形成されていて、そこに上記した駆動ピン5dの先端部が嵌合している。
【0019】
このような先羽根群と後羽根群の構成のうち、軸1d,1fに対するアーム13,16の具体的な枢着構成が図2に示されている。即ち、アーム13,16の一端には、かしめ加工によってスリーブ19,20が取り付けられており、それらを軸1d,1fの小径部1d6 ,1f8 に嵌合させている。そして、それらの小径部1d6 ,1f8 にも、油溜め用の溝1d7 ,1f9 が形成されている。先羽根群と後羽根群の他方のアーム14,17の場合にも、実際には、このようにスリーブを介して軸1e,1gに枢着されている。
【0020】
次に、本実施例の作動を説明する。既に説明したように図1は露光作動が終了する直前の状態を示している。そのため、先羽根群は、駆動ピン4dが長孔1bの上方端面に当接して停止し、複数枚の羽根はスリット形成羽根15も含めて重畳状態となり開口部1aの上方位置に格納されている。他方、後羽根群は、複数枚の羽根を展開させつつ上方へ作動中であり、スリット形成羽根18のスリット形成縁が開口部1aの上辺に達する寸前の状態にある。従って、後羽根群の露光走行は、スリット形成羽根18のスリット形成縁が開口部1aの上辺に達した後、作動ピン5dが長孔1cの上方端面に当接することによって終了する。
【0021】
このようにして、露光作動が終了した後、セット作動が行われる。そのセット作動は、図1において、図示していないカメラ本体側の部材が、セット部材12の被押動部12dを押し、初期位置にあるセット部材12を、図示していないばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させることによって行われる。この回転において、セット部材12は、先ず、押動部12bによって先羽根用駆動部材4の被押動部4bを押し、先羽根用駆動部材4を先羽根用駆動ばね10の付勢力に抗して時計方向へ回転させる。それによって、作動ピン4dがアーム13を時計方向へ回転させ、重畳状態にある先羽根群の複数枚の羽根を展開させながら、スリット形成羽根15を先頭にして下方へ作動させる。
【0022】
そして、このセット作動開始直後に、スリット形成羽根15が所定量だけ後羽根群のスリット形成羽根18に重なった段階で、今度は、セット部材12の押動部12cが後羽根用駆動部材5の被押動部5bを押す。そのため、後羽根用駆動部材5は後羽根用駆動ばね11の付勢力に抗して時計方向へ回転を開始し、作動ピン5dによってアーム16を時計方向へ回転させ、展開して開口部1aを覆っていた後羽根群の複数枚の羽根を下方へ作動させ、重畳させていく。このようにして先羽根群と後羽根群の羽根が共に下方へ作動してゆき、先羽根群の複数枚の羽根が展開状態となって開口部1aを覆い、後羽根群の複数枚の羽根が重畳状態となって開口部1aの下方位置に格納された段階になると、セット部材12の回転が停止される。そして、このとき、鉄片部材6,7が、図示していない先羽根用電磁石と後羽根用電磁石に接触した状態となる。
【0023】
次に、露光作動について説明する。カメラのレリーズボタンが押されると、最初に、上記した図示していない二つの電磁石に通電され、鉄片部材6,7が吸着される。その後、カメラ本体側の部材がセット部材12の被押動部12dから退いていくので、セット部材12は、図示していないばねの付勢力によって、図1に示した初期位置へ復帰する。しかし、先羽根用駆動部材4と後羽根用駆動部材5は、鉄片部材6,7が各電磁石に吸着されているので露光作動を開始せず、開口部1aは、未だ先羽根群によって覆われたままである。
【0024】
このようにして、セット部材12が初期位置に復帰した後、最初に、先羽根用電磁石への通電が断たれ、所定時間経過後には、後羽根用電磁石への通電が断たれることになる。そこで、先ず、先羽根用電磁石への通電が断たれると、電磁石による保持力が失われ、先羽根用駆動部材4は、先羽根用駆動ばね10の付勢力によって反時計方向へ回転され、駆動ピン4dによってアーム13を反時計方向へ回転させることによって、先羽根群の複数枚の羽根を、それらの重なりを大きくさせつつ上方へ走行させ、スリット形成羽根15によって開口部1aを開かせていく。
【0025】
次に、後羽根用電磁石への通電が断たれると、先羽根用駆動部材4と同様にして、後羽根用駆動部材5が、後羽根用駆動ばね11の付勢力によって反時計方向へ回転され、駆動ピン5dによってアーム16を反時計方向へ回転させることになる。それによって、後羽根群の複数枚の羽根は、それらの重なりを小さくさせつつ上方へ走行し、スリット形成羽根18によって開口部1aを覆っていく。そのため、以後は、先羽根群のスリット形成羽根15と後羽根群のスリット形成羽根18によって形成されるスリットにより、フィルムの感光面が露光されていくことになる。そして、駆動ピン4dが長孔1bの上方端面に当接することによって先羽根用駆動部材4の回転が停止し、後羽根用駆動部材5の駆動ピン5dが未だ長孔1cの上方端面に当接せず、スリット形成羽根18が、未だ完全に開口部1aを覆っていない状態が図1に示した状態ということになる。
【0026】
ところで、このような露光作動は、撮影環境が、例えば−50°Cというような低温下においては、適正に行われない場合が発生する。その主な要因は、各駆動部材4,5の筒部4a,5aと軸1d,1fとの摺接面に形成された油膜が、所期の潤滑性能を発揮しなくなることにある。しかも、それは、カメラを暫くそのような低温下に置いておいた後で使用する場合に顕著となる。また、このような現象は、先羽根用駆動部材4側と後羽根用駆動部材5側の両方に、同時に同程度に発生するとは限らない。
【0027】
そのため、上記したように、スリット形成羽根15,18によって形成されたスリットにより露光を行うに際し、例えば先羽根用駆動部材4側の潤滑性能だけが大きく劣化している場合には、本来、後羽根用駆動部材5よりも先に露光作動を開始していなければならない先羽根用駆動部材4が、後羽根用駆動部材5よりも後に作動を開始してしまうことがある。従って、そのような場合には、適正露光が得られなくなるだけではなく、場合によってはスリット形成羽根15,18によってスリットが形成されず、2枚の羽根が、それらの一部を重ね合わせたまま作動してしまう可能性がある。
【0028】
しかしながら、本実施例は、そのような条件下においても、少なくともスリット形成羽根15,18は、それらの一部を重ね合わせて作動することがなく、スリットだけは形成され得るように工夫をしている。即ち、本来であれば、部品の共通化を図る意味からも、軸1dと軸1fは共通部品とすることが好ましい。しかし、本実施例においては、軸1dの周面に形成されている、筒部4aに対する摺接部の面積が、軸1fの周面に形成されている、筒部5aに対する摺接部の面積よりも小さくなるように配慮されている。
【0029】
このことは、摺接面に形成される油膜面積が、軸1fよりも軸1dの方が小さいということである。従って、上記のような低温による影響が同じように及んだ場合には、摺接面積の小さい先羽根駆動部材4の方が作動を開始し易くなる。そのため、そのような低温による影響が先羽根駆動部材4のみ発生したとしても、後羽根駆動部材5の摺接面積と同じ面積の場合よりは、早く作動を開始でき、スリット形成羽根15,18によってスリットが形成されないというような事態は殆ど回避することが可能になる。
【0030】
〔第2実施例〕
次に、図3を用いて第2実施例を説明するが、本実施例の構成は、上記した第1実施例の構成と殆ど同じであるから、図3においては、図2に示した構成と同じ部材,同じ部材には同じ符号を付け、それらについての説明を省略する。また、図1は本実施例においても適用される。更に、本実施例のセット作動及び露光作動は、実質的に第1実施例の場合と同じであるから、それらの作動についても重複を避けるために省略する。
【0031】
そこで、先ず、第1実施例とは異なる構成について説明する。本実施例は、軸1d,1fの形状と、シャッタ地板1に対する立設の仕方が異なっている。即ち、本実施例においては、軸1d,1fを、かしめ加工によって直接シャッタ地板1に取り付けてはいない。シャッタ地板1には、フランジ部21a,22aを有する管状の取付部材21,22が、かしめ加工によって取り付けられていて、それらに、軸1d,1fが圧入されている。そのため、本実施例においては、各駆動部材4,5の筒部4a,5aは、軸1d,1fとだけではなく、フランジ部21a,22aとも摺接することになる。
【0032】
また、本実施例における軸1dには、新たに油溜め用の溝1d8 が形成されているが、軸1fには第1実施例のような油溜め用の溝1f4 が形成されていない。そのため、先羽根用駆動部材4の筒部4aと軸1dとの摺接面積は、後羽根用駆動部材5の筒部5aと軸1fとの摺接面積と同じになっている。また、第1実施例においては、溝1d4 ,1f6 が、夫々軸1d,1fのみによって形成されていたが、本実施例においては、フランジ部21a,22aとの間に形成されている。更に、先羽根用駆動部材4の筒部4aとフランジ部21aとの摺接面積は、後羽根用駆動部材5の筒部5aとフランジ部22aとの摺接面積よりも小さくなるように構成されている。
【0033】
本実施例は、このように構成されているから、各駆動部材4,5の筒部4a,5aと軸1d,1fとの摺接面積が同じであっても、筒部4a,5aとフランジ部21a,22aとの摺接面積が異なるので、油膜の形成される全体の摺接面積は先羽根用駆動部材4側の方が小さくなり、第1実施例の場合と同様な効果を得ることが可能である。
【0034】
尚、本発明は、上記の各実施例の構成に限定されるものではない。例えば、第1実施例の図2において、筒部4a,5aの右側端面をシャッタ地板1に摺接させるようにしてもよい。その場合、シャッタ地板1と筒部4aとの摺接面積が、筒部5aとの摺接面積よりも小さくなるようにしてもよい。また、そのようにしてシャッタ地板1との摺接面積を異なるようにした場合には、筒部4a,5aと軸1d,1fとの摺接面積を同じにしても差し支えない。
【0035】
また、第2実施例においては、筒部4a,5aと軸1d,1fとの摺接面積を同じにしているが、第1実施例のように、筒部4aと軸1dとの摺接面積を,筒部5aと軸1fとの摺接面積より小さくするようにしてもよい。また、そのようにした場合には、筒部4a,5aとフランジ部21a,22aとの摺接面積を同じにしても差し支えない。
【0036】
更に、上記の各実施例においては、軸1d,1fをシャッタ地板1に立設させているが、特開平9−127574号公報に記載されているように、軸1d,1fが補助地板2に立設されている場合にも、本発明は実施することが可能である。
【0037】
【発明の効果】
上記のように、本発明によれば、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材が、地板に立設されている夫々の軸に回転可能に嵌合されていて、各駆動部材と軸との摺接面に潤滑油の油膜を形成するようにしたフォーカルプレンシャッタにおいて、先羽根用駆動部材の摺接面積を、後羽根用駆動部材の摺接面積よりも小さくしているので、低温下において潤滑性能が劣化するようなことがあっても、余程のことでもない限り、少なくとも感光面に対する露光だけは行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】露光作動終了直前の状態を示した平面図であって、第1実施例と第2実施例の両方に適用される。
【図2】図1の右方向から視た第1実施例の要部の断面図である。
【図3】図1の右方向から視た第2実施例の要部の断面図である。
【符号の説明】
1 シャッタ地板
1a 開口部
1b,1c,13a,16a 長孔
1d,1e,1f,1g,1h 軸
1d1 ,1f1 基部
1d2 ,1f2 先端部
1d3 ,1d4 ,1d7 ,1d8 ,1f3 ,1f4 ,1f5 ,1f6 ,1f9 ,8a,9a 溝
1d5 ,1f7 支承部
1d6 ,1f8 小径部
2 補助地板
3 取付板
4 先羽根用駆動部材
4a,5a,12a 筒部
4b,5b,12d 被押動部
4c,5c 取付部
4d,5d 駆動ピン
4e,5e 座金
5 後羽根用駆動部材
6,7 鉄片部材
8,9 ラチェット車
10 先羽根用駆動ばね
11 後羽根用駆動ばね
12 セット部材
12b,12c 押動部
13,14,16,17 アーム
15,18 スリット形成羽根
19,20 スリーブ
21,22 取付部材
21a,22a フランジ部
Claims (3)
- 先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材が、地板に所定の間隔を空けて立設されている第1の軸と第2の軸に摺動可能に嵌合されており、撮影に際しては、先羽根用駆動ばねと後羽根用駆動ばねの付勢力によって所定のタイミングで回転を開始し、先羽根群と後羽根群に露光走行を行わせるようにしたフォーカルプレンシャッタにおいて、夫々の前記駆動部材と前記軸との少なくとも一方の摺接面には、摺動性を良好に維持する油を蓄えるための油溜め部が形成されており、しかも、後羽根用駆動部材と第2の軸との摺接面積の方が、先羽根用駆動部材と第1の軸との摺接面積よりも大きく形成されていることを特徴とするカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
- 先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材が、地板に所定の間隔を空けて立設されている第1の軸と第2の軸に摺動可能に嵌合されており、撮影に際しては、先羽根用駆動ばねと後羽根用駆動ばねの付勢力によって所定のタイミングで回転を開始し、先羽根群と後羽根群に露光走行を行わせるようにしたフォーカルプレンシャッタにおいて、夫々の前記駆動部材と前記軸との少なくとも一方の摺接面には、摺動性を良好に維持する油を蓄えるための油溜め部が形成されており、しかも、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材は、第1の軸と第2の軸の立設位置近傍領域においても前記地板に対して摺動するように構成されていて、後羽根用駆動部材と前記地板との摺接面積の方が、先羽根用駆動部材と前記地板との摺接面積よりも大きく形成されていることを特徴とするカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
- 先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材が、地板に所定の間隔を空けて立設されている第1の軸と第2の軸に摺動可能に嵌合されており、撮影に際しては、先羽根用駆動ばねと後羽根用駆動ばねの付勢力によって所定のタイミングで回転を開始し、先羽根群と後羽根群に露光走行を行わせるようにしたフォーカルプレンシャッタにおいて、夫々の前記駆動部材と前記軸との少なくとも一方の摺接面には、摺動性を良好に維持する油を蓄えるための油溜め部が形成されており、しかも、第1の軸と第2の軸が、前記地板に一体化された第1の取付部材と第2の取付部材に取り付けられていて、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材は、それらの取付部材に対しても摺動するように構成されており、後羽根用駆動部材と第2の取付部材との摺接面積の方が、先羽根用駆動部材と第1の取付部材との摺接面積よりも大きく形成されていることを特徴とするカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
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