JP4390926B2 - カメラ用フォーカルプレンシャッタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、撮影に際して、先羽根群と後羽根群とを同一方向へ順次作動させ、その二つの羽根群のスリット形成羽根によって形成されたスリットにより、フィルム等の結像面を露光するようにしたカメラ用のフォーカルプレンシャッタに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近のフォーカルプレンシャッタは、撮影に際して、各羽根群を可成りの高速で作動させ、露光作動終了時においては、羽根群やその駆動部材をストッパに当接させて停止させるようにしている。そのため、停止時においては、何らかの対策を講じておかないと、各羽根群がバウンドし、先羽根群の場合には、露光開口の一部を再度一時的に覆い、後羽根群の場合には、露光開口の一部を再度一時的に開くことによって、露光むらを生じさせてしまうことになる。また、その停止時における衝撃によって羽根群が破壊されてしまうこともある。そのため、従来から、各羽根群やそれらの各駆動部材に対しては、種々の制動手段や緩衝手段を設けるようにし、そのような露光むらや破壊を防止するようにしていた。
【0003】
本発明は、それらのうち、先羽根用駆動部材と後先羽根用駆動部材の作動を制動し、且つ最後にはそれらの駆動部材を係止してしまうことによってバウンドを阻止し、それによって、上記した各羽根群のバウンドが抑制されるようにした構成に関するものである。そして、後羽根用駆動部材に対してだけではあるが、そのようにした従来の構成の一例が、特開昭58−196527号公報に記載されている。即ち、その構成は、後羽根用駆動レバー(後羽根用駆動部材)230,330に対して採用されており、制動は、摩擦板237によって摩擦力を付与されているブレーキレバー235で行い、バウンドの阻止は、バネ240によって回転力が付与されているバウンド防止レバー239,339のフック部239a,339aで行うようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近では、一眼レフカメラといえども、極端に小型化され且つ廉価になってきているため、フォーカルプレンシャッタに対しても、益々の小型化と低コスト化が要求されている。そして、それに応えるためには、部品点数の削減と、各構成部材の機能的な配置が必要になる。また、最近ではカメラの電動化が進み、種々の制御に電池電源が用いられ、電池の消耗度が大きくなってきていることなどもあって、シャッタのセットトルクを極力小さくて済むようにすることが要求されている。
【0005】
そこで、これらの観点から、上記の公報に記載の構成を見てみると、単に部品点数が多いということだけにとどまらず、それらの部品を機能的に関係付けなければならないため取付け作業が面倒であって極めて問題である。また、上記の公報の実施例においては、このような構成を後羽根用駆動レバー(後羽根用駆動部材)230,330に対してだけ採用しているが、先羽根用駆動レバー(先羽根用駆動部材)202に対して採用しようとすると、基板(シャッタ地板)201の面積を広げなくてはならず、小型化どころか大型化を招いてしまうことになる。更に、上記の公報に記載の構成の場合には、セット作動に際して、連動ピン(駆動ピン)230a,330aが、バウンド防止レバー239,339を回転させなければならないため、セットトルクの点で問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材との両方の制動とバウンド阻止とを行えるようにした、極めて部品点数が少なくコンパクトに配置でき、しかもシャッタのセットトルクに殆ど影響を与えることのないカメラ用フォーカルプレンシャッタを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタは、シャッタ地板に回転可能に取り付けられており被操作部を設けている第1腕部と夫々が係止部を設けている第2腕部及び第3腕部とを有していてそれらの三つの腕部のうち第2腕部と第3腕部の両方か少なくとも第1腕部かが回転方向へ可撓性を有しているブレーキ手段と、露光作動の終了段階において前記ブレーキ手段の可撓性を利用して前記第2腕部の係止部を押してから該係止部によって係止され得る係合部を設けた先羽根用駆動部材と、露光作動の終了段階において前記ブレーキ手段の可撓性を利用して前記第3腕部の係止部を押してから該係止部によって係止され得る係合部を設けた後羽根用駆動部材と、初期位置においてのみ前記被操作部を操作し前記二つの係止部を前記二つの係合部の作動軌跡内に強制的に臨ませる操作部を有していてセット時には初期位置から作動して前記各駆動部材をセット位置に作動させ前記各駆動部材の露光作動開始前には初期位置へ復帰させられているセット部材とを備えているようにする。
また、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいては、前記ブレーキ手段が合成樹脂製の部材であって、前記三つの腕部が一体成形されているようにすると、部品点数が最小限で済み、シャッタ全体の構成がコンパクトになる。
更に、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいては、前記第1腕部が、前記ブレーキ手段に取り付けられたばね部材の自由端で構成され、前記第2腕部と第3腕部とは可撓性を有していないように構成すると、上記のように三つの腕部を一体成形で製作する場合よりは部品点数が増えるが、成形加工の困難性が無くなり、且つ従来例の場合よりはシャッタ全体をコンパクトに構成することが可能となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図1〜図5に示した第1実施例と図6に示した第2実施例によって説明する。尚、これらの図面は、何れもカメラに組み込まれた状態において被写体側から視た場合の略左半分だけを示した平面図であって、図1は露光作動を終了した直後の状態を示したものであり、図2はセット作動開始直後の状態を示したものであり、図3はセット作動の完了状態を示したものであり、図4は露光作動に先立ってセット部材が初期位置へ復帰した状態を示したものであり、図5は露光作動の終了直前の状態を示したものである。また、図6は第2実施例の、露光作動を終了した直後の状態を示したものであり、第1実施例の場合と同じ部材、部位には同じ符号を付けてある。また、構成の説明においては、被写体側を表面側と称し、フィルム面側を背面側と称することにする。
【0009】
[第1実施例]
先ず、図1を用いて、本実施例の構成を説明する。シャッタ地板1には、その略中央部に長方形を横長にした開口部1aが形成されているが、図1においてはその左側の一部が示されている。また、周知のように、シャッタ地板1の背面側には、所定の間隔を空けて、図示していない中間板と補助地板が取り付けられており、シャッタ地板1と中間板との間に先羽根群の羽根室を形成し、中間板と補助地板との間に後羽根群の羽根室を形成している。更に、中間板と補助地板にも、開口部1aと類似の開口部が形成されていて、通常は、それらの開口部を重ね合わせて露光開口を規制するようにしているが、本実施例においては、開口部1aの形状が露光開口を規制しているものとする。
【0010】
その開口部1aの左側には、円弧状の二つの長孔1b,1cが形成されている。通常は、それらの長孔1b,1cの下方端面に、周知の緩衝部材が取り付けられていることが多い。本発明は、そのような緩衝部材を取り付けているものに対しても、取り付けていないものに対しても適用することが可能であるが、本実施例の場合には、取り付けられていない場合で説明する。また、シャッタ地板1の表面側には、軸1d,1e,1f,1gが立設されていて、背面側には軸1h,1i,1j,1kが立設されている。また、シャッタ地板1の表面側には、ストッパ1mが設けられている。
【0011】
上記の軸1dには、先羽根用駆動部材2が回転可能に取り付けられている。この先羽根用駆動部材2は、合成樹脂製であって、被押動部2aと、駆動ピン2bと、取付部2cと、係合部2dとを有していて、図示していない周知の先羽根用駆動ばねによって時計方向へ回転するように付勢されている。また、駆動ピン2bと係合部2dは、先羽根用駆動部材2の背面側に設けられているが、駆動ピン2bは、シャッタ地板1の長孔1bを貫通していて、その断面形状は、根元部がD型であって先端部が小判型をしており、その根元部は、長孔1bの下端部に当接するようになっている。
【0012】
また、先羽根用駆動部材2の取付部2cは表面側に大きく隆起していて、その内部には、鉄片部材が圧縮ばねに付勢された状態で取り付けられているが、その鉄片部材の形状と取付け構成は、特開平10−161181号公報等によって周知であるため、図示を省略している。そして、その鉄片部材は、露光作動開始直前の状態(後述する図4の状態)においては、図示していない先羽根用電磁石に吸着保持され、先羽根用駆動部材2が先羽根用駆動ばねの付勢力によって時計方向へ回転できないようにするためのものであるが、図1の状態においては、上記圧縮ばねの付勢力によって、その被吸着部を、取付部2cから右上方に最大限に突き出した状態となっている。
【0013】
シャッタ地板1の軸1eには、合成樹脂製の後羽根用駆動部材3が回転可能に取り付けられている。この後羽根用駆動部材3は、被押動部3aと、駆動ピン3bと、取付部3cと、係合部3dとを有していて、図示していない周知の後羽根用駆動ばねによって時計方向へ回転するように付勢されている。そして、駆動ピン3bは、先羽根用駆動部材2の駆動ピン2bと略同じようにして形成されており、長孔1cを貫通していて、その根元部が長孔1cの下端部に当接するようになっている。
【0014】
また、取付部3cも先羽根用駆動部材2の取付部2cと略同じ形状をしていて、その内部には、図示していない後羽根用電磁石に吸着される鉄片部材が圧縮ばねに付勢された状態で取り付けられているが、その取付け構成も、上記した特開平10−161181号公報等によって周知であるため、図示を省略している。そして、その鉄片部材の場合にも、図1の状態においては、圧縮ばねの付勢力によって、その被吸着部を、取付部3cから右上方に最大限に突き出した状態となっている。
【0015】
シャッタ地板1の軸1fには、合成樹脂製のセット部材4が回転可能に取り付けられている。このセット部材4は、図示していないばねによって、反時計方向へ回転するように付勢されているが、図1においては、図示していないストッパに当接して停止されている状態が示されている。本明細書においては、このようなセット部材4の位置を初期位置と称することにする。そして、このセット部材4には、その周辺部に、先羽根用駆動部材2の被押動部2aを押す押動部4aと、後羽根用駆動部材3の被押動部3aを押す押動部4bと、被押動部4cとが形成されている。また、背面部には、図1において複数の×印を付けた部位が肉厚となっていて、軸1fの近傍位置に、カム面を有する操作部4dが形成されている。
【0016】
シャッタ地板1の軸1gには、合成樹脂製のブレーキ部材5が、回転可能に取り付けられており、セット部材4の背面が、軸1gからの抜け止めの役目をしている。そして、ブレーキ部材5は、三つの腕部5a,5b,5cを有していて、腕部5aの先端には、セット部材4の操作部4dに接触する被操作部5a′が形成されており、腕部5bの先端には、先羽根用駆動部材2の係合部2dに接触する係止部5b′が形成されており、腕部5cの先端には、後羽根用駆動部材3の係合部3dに接触する係止部5c′が形成されている。そして、本実施例の場合には、腕部5aは可撓性を有していないが、腕部5b,5cは、図1において、時計方向へ回転する方向に可撓性を有している。
【0017】
次に、シャッタ地板1の背面側に配置されている先羽根群と後羽根群の構成について説明する。先ず、先羽根群は、シャッタ地板1の軸1h,1iに対して回転可能に取り付けられた二つのアーム6,7と、それらの先端部に向けて順に枢支された複数枚の羽根で構成されているが、それらの羽根の枢支構成は周知であるため、アーム6,7の先端部に枢支されたスリット形成羽根8のみを示してある。そして、アーム6に形成された孔には先羽根用駆動部材2の駆動ピン2bが嵌合していて、アーム6は先羽根用駆動部材2と一緒に回転するようになっている。
【0018】
また、後羽根群の構成は、実質的に先羽根群を裏返しにして配置した構成をしており、シャッタ地板1の軸1j,1kに対して回転可能に取り付けられた二つのアーム9,10と、それらの先端部に向けて順に枢支された複数枚の羽根で構成されているが、図1においては、アーム9,10の先端部に枢支されたスリット形成羽根11のみを示してある。そして、アーム9に形成された孔には後羽根用駆動部材3の駆動ピン3bが嵌合していて、アーム9は後羽根用駆動部材3と一緒に回転するようになっている。
【0019】
次に、図2〜図5も加え、本実施例の作動を説明する。図1は、露光作動終了直後の状態を示している。従って、先羽根用駆動部材2の駆動ピン2bは、長孔1bの下端部に当接しており、先羽根群の複数枚の羽根は重畳されて開口部1aの下方位置に格納されている。また、後羽根用駆動部材3の駆動ピン3bは、長孔1cの下端部に当接しており、後羽根群の複数枚の羽根は展開されて、開口部1aを覆っている。更に、この状態においては、セット部材4が初期位置にあるので、ブレーキ部材5は、操作部4dによって反時計方向へ回転させられており、腕部5bがストッパ1mに接触し、先羽根用駆動部材2の係合部2dの作動軌跡内に、係止部5b′を臨ませ、後羽根用駆動部材3の係合部3dの作動軌跡内に、係止部5c′を臨ませている。
【0020】
このような図1に示した状態においてセット作動が開始されると、図示していないカメラ本体側の部材がセット部材4の被押動部4cを押し、セット部材4に時計方向への回転を行わせる。それによって、先ず、セット部材4の操作部4dがブレーキ部材5の被操作部5a′から離れ、ブレーキ部材5は所定の角度内で自由に回転し得るようになる。次に、セット部材4は、押動部4aが被押動部2aを押すことによって、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して先羽根用駆動部材2を反時計方向へ回転させ始めるが、その段階においては、未だ、セット部材4の押動部4bが後羽根用駆動部材3の被押動部3aに接触していないため、先羽根群の羽根のみが上方へ移動していくことになる。
【0021】
また、このとき、先羽根用駆動部材2の係合部2dがブレーキ部材5の係止部5b′を押すことになるが、上記したように既にブレーキ部材5は所定の角度範囲内で自由に回転し得るようになっているので、ブレーキ部材5は、係止部5b′のカム面の作用によって好適に時計方向へ回転させられることになり、特にそのためにセットトルクを大きくしなければならないという程の力は必要としない。
【0022】
その後、先羽根群のスリット形成羽根8と、後羽根群のスリット形成羽根11との重なり量が所定量に達すると、セット部材4の押動部4bが後羽根用駆動部材3の被押動部3aに接触する。その状態が図2に示されている。そして、この図2に示された状態以後は、後羽根用駆動部材3も、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して、反時計方向へ回転を開始し、後羽根群の羽根を上方へ移動させていくので、二つの羽根群は、スリット形成羽根8,11同士の重なりを大きく変えることなく上方へ移動し、先羽根群の場合は羽根相互の重なりを小さくしてゆき、後羽根群の場合は羽根相互の重なりを大きくしてゆく。
【0023】
そして、駆動部材2,3の取付部2c,3cに夫々取り付けられている上記の図示していない各鉄片部材が、両方とも夫々の電磁石に接触させられた段階になると、カメラ本体側の部材によって回転されていたセット部材4の回転が停止され、シャッタのセット作動が終了する。図3は、そのようにして行われたセット作動の完了状態を示しているが、この状態においては、先羽根群の複数枚の羽根は展開状態となって開口部1aを覆っており、後羽根群の複数枚の羽根は重畳状態となって開口部1aの上方位置に格納されている。また、セット部材4は、次の撮影が行われるまで、この状態を維持される。
【0024】
次の撮影に際して、カメラのレリーズボタンが押されると、先ず、図示していない上記の各電磁石に通電され、駆動部材2,3の取付部2c,3cに取り付けられた上記の図示していない各鉄片部材が吸着保持される。次に、カメラ本体側の図示していない部材が、セット部材4の被押動部4cから退くので、セット部材4は、図示していないばねの付勢力によって、初期位置へ向けて反時計方向へ回転される。
【0025】
そして、その初期位置への復帰に際し、セット部材4の操作部4dが、ブレーキ部材5の被操作部5a′を押すので、ブレーキ部材5は反時計方向へ回転され、腕部5bをストッパ1mに接触させて停止され、一方の係止部5b′を先羽根用駆動部材2の係合部2dの作動軌跡内に臨ませ、他方の係止部5c′を後羽根用駆動部材3の係合部3dの作動軌跡内に臨ませる。その状態が図4に示された状態である。本実施例の場合には、この状態において、腕部5bが極めて僅かに撓まされているようにしているが、仮に、このとき、腕部5bとストッパ1mとの間が僅かに離れ得る状態にしても、それらの係止部5b′,5c′が上記の係合部2d,3dの作動軌跡(図4における一点鎖線)内に必ず臨んでいるように構成されていれば、特に問題はない。
【0026】
このようにして図4に示された状態が得られた後、最初に先羽根用電磁石に対する通電が断たれ、所定時間後に後羽根用電磁石に対する通電が断たれる。それによって、先羽根用駆動部材2と後羽根用駆動部材3が、図示していない各駆動ばねの付勢力によって相次いで急速に時計方向へ回転させられ、二つのスリット形成羽根8,11によって形成されたスリットにより露光が行なわれていく。そして、先羽根用駆動部材2は、その露光作動の終了段階になると、係合部2dがブレーキ部材5の係止部5b′を押し、腕部5bを撓ませながら制動を受けることになる。また、その直後には、後羽根用駆動部材3の係合部3dがブレーキ部材5の係止部5c′を押し、腕部5cを撓ませることによって制動を受けることになる。尚、図5においては、各係止部5b′,5c′が各係合部2d,3dによって押される前の状態が一点鎖線で示されている。
【0027】
そして、先羽根群の複数枚の羽根が重畳され、スリット形成羽根8が開口部1aの下方位置に完全に退いた段階になると、先羽根用駆動部材2の駆動ピン2bが長孔1bの下端に当接する。従って、先羽根用駆動部材2は、その当接の反動によって反時計方向へバウンドしようとするが、そのときには、既に、ブレーキ部材5の係止部5b′が、腕部5bの復元力によって係合部2dの作動軌跡内に臨んでいるため、そのバウンドは阻止され、停止させられる。従って、アーム6を介して先羽根用駆動部材2に連結されているスリット形成羽根8は、そのバウンドを抑制されることになり、周知の緩衝手段などの助けを借りることによって、再度、一時的に開口部1aの一部を覆ってしまうことがない。
【0028】
他方、その直後において、後羽根群の複数枚の羽根が展開され、開口部1aを完全に覆った段階になると、後羽根用駆動部材3の駆動ピン3bが長孔1cの下端に当接する。従って、後羽根用駆動部材3は、その当接の反動によって反時計方向へバウンドしようとするが、そのときには、既に、ブレーキ部材5の係止部5c′が、腕部5cの復元力によって係合部3dの作動軌跡内に臨んでいるため、そのバウンドは阻止され、停止させられる。そのため、アーム9を介して後羽根用駆動部材3に連結されているスリット形成羽根11は、そのバウンドを抑制され、周知の緩衝手段などの助けを借りることによって、再度、一時的に開口部1aの一部を開いてしまうことがない。このようにして、露光作動の終了した状態が、図1に示された状態である。
【0029】
尚、上記のように、本実施例においては、ブレーキ部材5の腕部5aは可撓性を有しておらず、他の二つの腕部5b,5cにだけ可撓性を付与している。この構成は、ブレーキ部材5を合成樹脂製とする場合の理想的な構成ではあるが、本発明は、このような構成に限定されるものではない。即ち、シャッタの仕様によっては、腕部5aにだけ可撓性を付与するようにしてもよいし、腕部5a,5b又は腕部5a,5cに可撓性を付与するようにしてもよい。更に、余り好ましいとはいえなくなるが、三つの腕部5a,5b,5cに可撓性を付与するようにしても差し支えない。
【0030】
[第2実施例]
次に、図6を用いて第2実施例を説明する。本実施例の構成は、第1実施例のブレーキ部材5に代わって、ねじりコイルばね12を取り付けたブレーキ部材13を備えている。即ち、本実施例のブレーキ部材13は、金属製か、剛性を有する合成樹脂製となっており、二つの腕部13a,13bは、第1実施例の腕部5b,5cと同じ形状をしていて、先端部に係止部13a′,13b′を有しているが、第1実施例の腕部5b,5cのように可撓性は有していない。また、このブレーキ部材13には、セット部材4側にばね掛け部13cが設けられている。
【0031】
更に、軸1gには、ねじりコイルばね12が巻回されており、その一方の腕部の先端に形成されたフック12aを、ブレーキ部材13の腕部13bに掛け、他方の腕部をブレーキ部材13のばね掛け部13cに掛けている。そして、その他方の腕部の先端部を被操作部12bとし、セット部材4の操作部4dに接触させるようにしている。この構成からも分かるように、本実施例におけるブレーキ手段は、二つの部品から成るものの、第1実施例のブレーキ部材5の腕部5aに可撓性を付与し、腕部5b,5cに可撓性を付与しないようにした場合と同じになる。
【0032】
このことから、本実施例の場合には、ブレーキ部材13にねじりコイルばね12を取り付けているが、ブレーキ部材13に、ばね掛け部13cに類するもう一つのばね掛け部を設け、軸1gに巻回した帯状の板ばねをそれらに掛けるようにし、ばね掛け部13cに掛けた方の一端部を、セット部材4の操作部4dに接触させる被操作部としても差し支えない。また、単に、細長い板ばねの一端をブレーキ部材13に取り付け、他方の自由端を被操作部とするだけでもよい。更には、ブレーキ部材13を、金属製の薄い板材で製作し、その一部を折り曲げることによって、可撓性を有する被操作部としても差し支えない。そして、このようにした場合には、第1実施例におけるブレーキ部材5に比べて、一つの腕部に対する可撓性だけを考慮すればよいので、設計は容易となる。
【0033】
このように、本実施例の構成は、第1実施例のブレーキ部材5が、ねじりコイルばね12を取り付けたブレーキ部材13に置き換えられただけであるから、本実施例の作動は、第1実施例の場合と殆ど同じようにして行なわれ、特に異なる点としては、露光作動時において、ブレーキ部材13の係止部13a′,13b′が各駆動部材2,3の係合部2d,3dによって押されたとき、腕部13a,13bが撓むのではなく、所定のタイミングで、その都度、ねじりコイルばね12が撓まされる点だけである。従って、本実施例の詳細な作動説明は省略する。尚、後羽根用駆動部材3が制動されるときに、ブレーキ部材13の係止部13a′が、先羽根用駆動部材2の係合部2dの軌跡外へ一時的に動かされることになるが、そのときには、既に先羽根用駆動部材2は、係止部13a′によって一旦バウンドを係止された後であるから、特に支障はない。
【0034】
尚、周知であるが、フォーカルプレンシャッタには、露光作動開始直前の状態において、各駆動部材を露光作動開始位置に保持する方法として、電磁石によって直接保持させるようにしたダイレクトタイプと、係止部材によって保持しておくようにした係止タイプとが知られている。そして、上記の各実施例においては、それらのうちのダイレクトタイプのシャッタの場合で説明したが、本発明は、係止タイプのものにも適用することが可能である。更に、上記の二つのタイプの違いに関係なく、二重遮光方式と称されているシャッタも周知である。本発明は、そのようなシャッタにも適用することが可能であるが、その場合には、後羽根群と連結した後羽根用作動部材が、露光作動時においてのみ、後羽根用駆動部材によって一緒に作動させられるようになっているため、ブレーキ手段が、その後羽根用作動部材を制動し係止するようにしたものも本発明に含まれる。
【0035】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、少ない部品点数によって、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材との両方の制動とバウンド阻止とを行なえるので、シャッタ地板上にコンパクトに配置することができ、シャッタの小型化,低コスト化の観点から最適の構成である。しかも、従来の構成においては、バウンドを阻止する力が、セットトルクを大きくさせる要因となっていたが、本発明の構成によれば、そのような要因を問題とする必要性は全くない。
【図面の簡単な説明】
【図1】被写体側から視た第1実施例の平面図であって、露光作動を終了した直後の状態を示したものである。
【図2】図1と同じようにして視た第1実施例の平面図であって、セット作動開始直後の状態を示したものである。
【図3】図1と同じようにして視た第1実施例の平面図であって、セット作動の完了状態を示したものである。
【図4】図1と同じようにして視た第1実施例の平面図であって、露光作動に先立ってセット部材が初期位置へ復帰した状態を示したものである。
【図5】図1と同じようにして視た第1実施例の平面図であって、露光作動の終了直前の状態を示したものである。
【図6】被写体側から視た第2実施例の平面図であって、露光作動を終了した直後の状態を示したものである。
【符号の説明】
1 シャッタ地板
1a 開口部
1b,1c 長孔
1d,1e,1f,1g,1h,1i,1j,1k 軸
1m ストッパ
2 先羽根用駆動部材
2a,3a,4c 被押動部
2b,3b 駆動ピン
2c,3c 取付部
2d,3d 係合部
3 後羽根用駆動部材
4 セット部材
4a,4b 押動部
4d 操作部
5,13 ブレーキ部材
5a,5b,5c,13a,13b 腕部
5a′,12b 被操作部
5b′,5c′,13a′,13b′ 係止部
6,7,9,10 アーム
8,11 スリット形成羽根
12 ねじりコイルばね
12a フック
13c ばね掛け部
Claims (3)
- シャッタ地板に回転可能に取り付けられており被操作部を設けている第1腕部と夫々が係止部を設けている第2腕部及び第3腕部とを有していてそれらの三つの腕部のうち第2腕部と第3腕部の両方か少なくとも第1腕部かが回転方向へ可撓性を有しているブレーキ手段と、露光作動の終了段階において前記ブレーキ手段の可撓性を利用して前記第2腕部の係止部を押してから該係止部によって係止され得る係合部を設けた先羽根用駆動部材と、露光作動の終了段階において前記ブレーキ手段の可撓性を利用して前記第3腕部の係止部を押してから該係止部によって係止され得る係合部を設けた後羽根用駆動部材と、初期位置においてのみ前記被操作部を操作し前記二つの係止部を前記二つの係合部の作動軌跡内に強制的に臨ませる操作部を有していてセット時には初期位置から作動して前記各駆動部材をセット位置に作動させ前記各駆動部材の露光作動開始前には初期位置へ復帰させられているセット部材とを備えていることを特徴とするカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
- 前記ブレーキ手段が合成樹脂製の部材であって、前記三つの腕部が一体成形されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
- 前記第1腕部が、前記ブレーキ手段に取り付けられたばね部材の自由端で構成され、前記第2腕部と第3腕部とは可撓性を有していないことを特徴とする請求項1に記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
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