JP3789166B2 - フォーカルプレンシャッタ - Google Patents

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JP3789166B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、撮影に際し、先羽根群と後羽根群とを同一方向へ順次走行させ、それらによって形成されるスリットによってフィルムを露光するようにしたカメラ用のフォーカルプレンシャッタに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近のフォーカルプレンシャッタは、先羽根群と後羽根群が、各々の駆動部材によって作動されるが、それらの駆動部材の作動開始時機は、夫々に用意された電磁石を介して制御されるようになっている。そして、駆動部材に対する電磁石の用い方には、大きく分けて二つのタイプがあり、その一方は実開昭61−11139号公報等で知られているものであって、一般には係止タイプと言われているものであり、他方は実開昭62−22636号公報等で知られており、一般にはダイレクトタイプと言われているものである。
【0003】
このうち、係止タイプは、古くから実施されているものであり、セット位置においては、駆動部材を係止レバーで係止しておくようにしたものである。そのため、駆動部材をセット位置にセットした後、セット部材を直ちに初期位置に復帰させても、駆動部材を露光作動時まで確実にセット位置に保持しておけるので、撮影に際し、セット部材を初期位置に復帰させるための時間を見込まずに済み、シャッターチャンスを逸する虞を少なくできるという利点がある。また、撮影に際して電磁石に通電したとき、強力な駆動ばねの力に抗して駆動部材を磁気的に保持する必要がなく、係止レバーによる駆動部材の係止を解除するために設けられた所謂鉄片レバーを吸着するだけでよいため、電磁石による保持力を大きくしなくて済むという利点もある。
【0004】
しかしながら、その反面、上記した係止レバーや鉄片レバーのほかに、セット部材のセット操作に連動して鉄片レバーを電磁石による吸着可能位置に移動させ、露光作動に先立って鉄片レバーが電磁石に吸着された後、該鉄片レバーの作動域から退くようにした所謂ホールドレバー等が必要となり、しかも、これらの各レバーには夫々ばねが掛けられていることもあって、部品点数が多く、構造が複雑になってしまうほか、製作時において各部品間の作動調整等が面倒になり、シャッタのコンパクト化,低コスト化にとって大変不利な点を有している。
【0005】
これに対して、ダイレクトタイプは、駆動部材に取り付けられた鉄片部材を電磁石によって吸着するようにしたものである。そのため、セット部材は、駆動部材をセット位置にセットした後、直ぐには初期位置に復帰させることができず、露光作動に先立って駆動部材が電磁石によって磁気的に保持された後、羽根群の露光走行に先立って初期位置に復帰させることになる。しかしながら、このようにしてレリーズ後に復帰作動のための時間が必要になるとはいえ、このような時間は、ミラーアップに要する時間や自動焦点調節等に要する時間に並行させることができるので、最近では殆ど問題視されなくなっている。このようなことから、ダイレクトタイプのシャッタは、係止タイプのように上記した各種のレバー等が不要となり、スペース的且つコスト的に極めて有利であるため、最近では、このタイプのシャッタが増えている。本発明は、このようなダイレクトタイプタイプのフォーカルプレンシャッタに関するものである。
【0006】
ところで、このようなダイレクトタイプタイプのシャッタは、駆動ばねの強い力に抗して、電磁石によって駆動部材を磁気的に吸着・保持させるものであるため、露光作動に先立って電磁石に通電されるときには、駆動部材に取り付けられた鉄片部材の被吸着面が、電磁石の吸着面に対し適正な接触状態(密接状態)にあることが要求される。そのため、実際には、駆動部材がセット部材によってセットされたとき、部品加工上の誤差や組立加工上の誤差が多少あったとしても、そのことに影響されることなく、上記した適正な接触状態が得られるように工夫がなされている。
【0007】
その一例が、特開平3−231723号公報に記載されている。この例によれば、駆動部材(駆動レバー)と鉄片部材(アーマチャ)の間に、ばね(吸収バネ)を介在させている。このばねは、セット部材(チャージレバー)が駆動部材をセット位置に作動させたとき、鉄片部材の被吸着面が電磁石(ヨーク)の吸着面に適正に接触した後、圧縮されるようになっており、その圧縮量によって、個々のシャッタごとの違いや先羽根側と後羽根側との違いを吸収し、セット作動が支障なく行えるようにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、ダイレクトタイプタイプのシャッタは、係止タイプのシャッタに比較して、スペース的且つコスト的には極めて有利であるが、駆動ばねの強い力に抗して駆動部材を磁気的に保持する必要があるため、消費電力という点では問題が残っている。そのため、駆動部材の吸着保持を確実に行えるものであって出来るだけ少ない消費電力で済むようにした改善策の出現が望まれている。しかしながら、その改善策を考える場合には、電磁石による吸着力を、駆動ばねの付勢力に勝る最小限の値となるように設定しさえすれば良いというわけにはいかない。
【0009】
即ち、上記した特開平3−231723号公報に記載されたもにおいては、露光作動に先立ってセット部材を初期位置に復帰させると、その復帰の初期過程においてセット部材が駆動部材の押圧を解除したときに、駆動部材は、鉄片部材と駆動部材の間で圧縮されていたばねと、駆動ばねとの合成力によって僅かに回転され、鉄片部材に衝突して、電磁石から離反する力を与えることになる。従って、鉄片部材に対する電磁石の吸着力は、上記の当接によって生じる衝撃力に対して充分耐え得る力を有していなければならなくなる。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタにおいて、レリーズ後、セット部材が初期位置へ復帰するに際し、該セット部材による押圧が解けることによって駆動部材が露光作動開始位置へ僅かに作動したとき、その作動によって鉄片部材に当接する力が該鉄片部材を電磁石から離反させないようにしたカメラ用のフォーカルプレンシャッタを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明におけるカメラ用のフォーカルプレンシャッタは、被押動部を有していて駆動ばねに付勢されて羽根群に露光走行を行わせる駆動部材と、電磁石の吸着面に吸着され得る被吸着面を有していてセット状態になるときには相対位置関係を変え得るようにして前記駆動部材に取り付けられた鉄片部材と、前記被押動部に係接し得る押動部を有しておりセット時に該押動部が前記被押動部を押して前記駆動ばねに抗して前記駆動部材を作動させレリーズ後における前記電磁石へ通電後には羽根群の露光走行に先立って初期位置へ復帰するようにしたセット部材と、被係止部と押圧部を有していてセット時に前記セット部材に押動され該押動部を前記鉄片部材の作動軌跡内に移動させセット状態においては前記被吸着面が前記吸着面に接する方向に前記鉄片部材を押圧させることとし羽根群の露光走行時には前記鉄片部材の作動軌跡外へ退避させている押圧部材と、前記被係止部に係合する係止部を有し前記セット部材の初期位置への復帰に際し前記押動部が少なくとも前記被押動部から離れるまでは該係止部によって前記押圧部材を前記鉄片部材の押圧状態で係止しておきその後該セット部材により該押圧部材の係止解除を行わされる係止部材とを備えているようにする。
【0012】
また、本発明におけるカメラ用のフォーカルプレンシャッタにおいては、好ましくは、前記セット部材により前記吸着面と前記被吸着面が接してから前記押圧部材が前記の押圧を開始するようにする。
また、本発明におけるカメラ用のフォーカルプレンシャッタにおいては、好ましくは、前記被押動部が、前記駆動部材に取り付けられた遥動部材に設けられ、前記駆動ばねが該遥動部材を介して前記駆動部材を付勢しているようにする
た、本発明におけるカメラ用のフォーカルプレンシャッタにおいては、好ましくは、前記押圧部材は、ばねによって、前記押圧部が前記鉄片部材の作動軌跡外へ退避する方向へ付勢されており、また前記係止部材は、該ばねによって前記係止部が前記被係止部と係合する方向へ付勢されており、前記セット部材が該ばねに抗して前記係止部材を作動させることによって、前記押圧部材の係止を解除するようにする。
更に、本発明におけるカメラ用のフォーカルプレンシャッタにおいては、好ましくは、前記押圧部材が前記鉄片部材を押圧する面と、前記押圧部材が前記鉄片部材によって押圧される面のうち、少なくとも一方の面の形状が、他方の面に対して凸状の球面又は円弧面となるようにする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1乃至図9に示した実施例で説明する。図1は、本実施例の平面図であって、先羽根群と後羽根群による露光走行の完了状態を示している。図2は、本実施例における各羽根群の支持構成を説明するための平面図である。図3乃至図9は、夫々本実施例の平面図であって、図1の状態からの作動状態を説明するためのものである。尚、図10(a),(b)は、本実施例中に示した鉄片部材の変形例を説明するための図面であり、また、図11(a),(b)は、本発明を適用することのできる公知のシャッタ構成の一部を示した説明図である。
【0014】
先ず、主に図1及び図2を用いて本実施例の構成を説明する。尚、図1は、他の図4乃至図9と同様にして一部の構成を断面で示しており、また図2は、図1においてシャッタ地板1の表面側(カメラのレンズ側)に取り付けられている各部品を取り外した状態を示している。更に、図1においては先羽根群の駆動・制御構成のみを示しているが、シャッタである以上、後羽根群の駆動・制御構成も当然設けられていて、しかも本発明は後羽根群の駆動・制御構成にも適用できるものであるが、先羽根群の駆動・制御構成について詳しく説明すれば、後羽根群の駆動・制御構成については詳しく言及しなくても当業者であれば充分そのことを理解できる内容であるため、図面が複雑化することもあって、後羽根群の駆動・制御構成についての図示が省略されている。このことは、図3乃至図9についても同様である。
【0015】
シャッタ地板1は露光用の開口部1aのほかに、二つの円弧状の孔1b,1cと孔1dを有している。そして、円弧状の孔1b,1cの下方端には、ブチルゴム等の弾性材料からなる周知の緩衝部材2,3が嵌め込まれている。また、シャッタ地板1の表面側には、軸1e,1f,1g,1h,1i,1j,1k,1m,1nが立設されており、軸1eには合成樹脂製の先羽根駆動部材4が回転可能に取り付けられ、軸1fには同じようにして図示していない後羽根駆動部材が取り付けられている。そして、先羽根駆動部材4には、軸1eに回転可能に嵌合する円筒部4a,駆動ピン4b,取付部4c,被押動部4dが一体成形にて設けられている。このうち、駆動ピン4bは、孔1bを貫通し、周知のようにシャッタ地板1の背面側で先羽根群の主アーム5に形成された孔5aに嵌合している。図示していない後羽根駆動部材も、同じようにして円筒部,駆動ピン,取付部,被押動部を有していて、駆動ピンは孔1cを貫通し後羽根群の主アーム6に形成された孔6aに嵌合している。
【0016】
また、取付部4cには、鉄片部材7が取り付けられている。この鉄片部材7は、後で説明する電磁石に吸着される鉄片7aと鉄片軸7bとで構成され、鉄片軸7bは取付部4cに形成された孔に緩く嵌合している。そして、鉄片7aは図面の垂直方向に長い形状をしていて、その略中間位置で鉄片軸7bの一方の端部と一体化されている。鉄片軸7bの他方の端部7b1 は、鍔状になっていて、鉄片部材7が取付部4cから抜け落ちないようになっている。そして、この鉄片部材7は、取付部4cに内蔵された押さえばね8によって図1において上方へ付勢されている。更に、被押動部4dの端縁はカム形状に形成されている。これらの構成は、図示していない後羽根駆動部材についても略同じである。
【0017】
先羽根駆動部材4の円筒部4aには、周知のように駆動ばね9が緩く巻装されており、夫々一端を軸1jに、また他端を取付部4cに掛け、駆動部材4を時計方向へ回転させるように付勢している。図示していない後羽根駆動部材にも同様にして時計方向へ付勢する別の駆動ばねが掛けられている。軸1kは、そのばね掛け用の軸であり、上記した軸1jに相当するものである。また、軸1gには合成樹脂製のセット部材10が回転可能に取り付けられている。そして、このセット部材10には、軸1gに回転可能に嵌合する円筒部10a、二つの押動部10b,10c、表面側の突起部10d、背面側の突起部10e及びピン10fが、一体成形にて設けられており、更に、背面側には斜面部を境にして大径部と小径部とを有するカム部10gが形成されている。
【0018】
このうち、押動部10bは先羽根駆動部材4の被押動部4dに、また押動部10cは後羽根駆動部材の被押動部に、夫々接触し得るようになっており、夫々の端縁はカム形状に形成されている。また、突起部10dは、カメラ本体側の部材によって操作されるためのものである。更に、突起部10eは、シャッタ地板1の孔1dに嵌入し、セット部材10の回転が、図面上、孔1dの上下端で規制されるようになっている。そして、このセット部材10は、軸1mと突起部10dに掛けたばね11によって、反時計方向へ回転するように付勢されているが、図1においてはその反時計方向への回転を孔1dの下端で規制されている。
【0019】
周知であるため図示を省略しているが、シャッタ地板1には、該地板と略平行になるようにして取付板(上板とも称されることがある)が固定されている。この取付板には、一点鎖線で示すように、電磁石12が周知の適宜な方法で取り付けられている。そして、この電磁石12は、略U字形をしていて二つの磁極部(図1においてはシャッタ地板1に対して二つの磁極部が垂直方向に配列されるようにして取り付けられている)を有する鉄芯部材12aと、そのうちの一つの磁極部に嵌装されたコイルボビン12bとで構成されており、夫々の磁極部の先端面(図において右下方の端面)が鉄片部材7を吸着するための吸着面となっている。言うまでもなく、上記した取付板には、同様な構成のもう一つの電磁石が後羽根駆動部材の鉄片部材に対応するために取り付けられている。
【0020】
シャッタ地板1の軸1hには、押圧部材13が回転可能に取り付けられている。その押圧部材13には、弾性(ばね性)を有する折曲部13aが設けられ、その先端に押圧部13bを形成している。更に、押圧部材13には、セット部材10のピン10fと摺接する三つの端面13c,13d,13eが形成され、また背面方向への折曲部13fが設けられている。そして、この押圧部材13には、ばね14が掛けられており、反時計方向への回転は折曲部13aが軸1nに当接することによって規制されるようになっている。また、シャッタ地板1の軸1iには、フック部材15が回転可能に取り付けられている。そして、このフック部材15は、一方の腕部にはフック部15aを、他方の腕部には当接部15bを形成しており、上記したばね14の一端によって押され、反時計方向へ回転するように付勢されている。
【0021】
次に、本実施例の作動を説明する。図1及び図2は、先羽根群と後羽根群による露光走行の完了状態を示している。従って、この状態においては、先羽根群を構成する4枚の羽根は重畳されて開口部1aの下方位置に格納され、後羽根群を構成する4枚の羽根は展開されて開口部1aを覆っている。また、ばね14によって、押圧部材13は折曲部13aを軸1nに当接させられ、フック部材15は当接部15bをカム部10gの大径部に当接させられている。撮影が行われ、このような露光走行の完了状態になると、フィルムの巻き上げに連動してシャッタのセット作動が行われる。そして、そのセット作動は、カメラ本体側の部材が突起部10dを押し、ばね11の力に抗してセット部材10を時計方向へ回転することによって行われる。
【0022】
セット部材10は、その時計方向への回転によって、先ず、押動部10bが被押動部4dを押して、先羽根駆動部材4を反時計方向へ回転させる。そして、先羽根群のスリット形成羽根が後羽根群のスリット形成羽根と所定量だけ重合した後、押動部10cが後羽根駆動部材の被押動部を押して該駆動部材を反時計方向へ回転させ、以後、両駆動部材を同時に回転させて、先羽根群を展開させ、後羽根群を重畳させていく。その後、セット部材10のピン10fが押圧部材13の端面13cに接触することになる。端面13cの形状は、この接触時におけるピン10fの移動方向に対して斜めになるように形成されているため、この接触後においては、ピン10fが端面13cを摺動し、押圧部材13を時計方向へ回転させることになる。その開始位置が図3に示されており、このときフック部材15の当接部15bは未だカム部10gの大径部に接触している。尚、この図3は、鉄片部材7の取付け構成部を断面せずに示している。
【0023】
この図3からも分かるように、先羽根駆動部材4に被押動部4dが形成されている付近の形状は、その一部が厚さ方向に2段になっており、該被押動部4dはシャッタ地板1側の段に形成されている。このような状態からセット部材14を更に回転させた状態が図4に示されている。この状態は、ピン10fが端面13cとの摺接から端面13dとの摺接に移ろうとしている瞬間であり、フック部材15の当接部15bは既にカム部10gの大径部から離れた状態にある。そのため、フック部材15は、ばね14によって僅かに反時計方向へ回転された状態となっているが、フック部15aが押圧部材13の折曲部13fの端面に当接し、それ以上の回転を阻止された状態にある。
【0024】
他方、この図4の状態は、先羽根駆動部材4に取り付けられた鉄片部材7の被吸着面が、電磁石12の吸着面に接触した瞬間の状態となっている。このとき、図示していない後羽根駆動部材に取り付けられた鉄片部材の被吸着面は、未だ、もう一つの電磁石の吸着面に接触していない。セット部材10は、この図4の状態から尚も回転を続けるが、ピン10fが端面13dに摺接している間は、押動部材13は図4の状態を保っており、フック部材15も同様に図4の状態を保っている。しかしながら、この間に、図示していない後羽根駆動部材が押動部10cによって回転され、後羽根駆動部材に取り付けられた鉄片部材の被吸着面をもう一つの電磁石の吸着面に接触させる。
【0025】
周知のように、各駆動部材に設けられている鉄片部材の被吸着面が、各電磁石の吸着面に正に接触した状態となるようにして、各駆動部材の回転を止めるようにすることは、製作上、不可能と言っても過言ではない。そこで、予め定めた基準位置よりも、セット部材10を更に回転させ、各駆動部材を僅かに反時計方向へ回転させるようにする。このようにして、セット部材10によるセット作動を完了した状態が、図5に示されている。
【0026】
ところで、基準位置以降、このようにセット部材10を回転させる場合には、鉄片部材の被吸着面が各電磁石の吸着面に接触し、駆動部材の回転が停止した後も、セット部材10が作動できるような構成が必要になる。本実施例においては、その役目を、押さえばね8が果たしている。そのため、図5においては、押さえばね8が圧縮されており、取付部4cと、鉄片軸7bの端部7b1 との間に間隙が生じている。このような間隙は、程度の差こそあれ後羽根駆動部材についても同じように生じている。
【0027】
他方、図4の状態から図5の状態に移る過程において、セット部材10のピン10fは、押圧部材13の端面13eと摺接することになる。そのため、押圧部材13は更に時計方向へ回転される。この回転により、押圧部13bが鉄片軸7bの端部7b1 に接触し、折曲部13fとフック部15aとの接触が解けるため、フック部材15は回転可能となり、ばね14によって当接部15bがカム部10gの小径部に当接するまで反時計方向へ回転する。それによって、フック部15aは、折曲部13fの作動軌跡内に入ることになる。
【0028】
また、押圧部材13は、押圧部13bが端部7b1 に接触した後も回転したので、折曲部13aはその弾性に抗して撓まされ(撓み量が分かるように押圧部13bの仮想位置を一点鎖線で示してある)、その弾力によって鉄片部材7を鉄芯部材12aに押しつける。そして、このときの押圧方向は、鉄芯部材12aの吸着面に対して略直交する方向となるように設定されている。このようにして、図5の状態が得られている。そして、この図5の状態においては、既に、先羽根群が展開状態となって開口部1aを覆っており、後羽根群は重畳されて開口部1aの上方位置に格納されている。
【0029】
このような図5の状態において、カメラのシャッタボタンが押されると、先ず、電磁石12に通電され、鉄片部材7が鉄芯部材12aに磁気的に吸着保持される。同時に、もう一つの電磁石にも通電され、後羽根駆動部材の鉄片部材が吸着保持されることは言うまでもない。その後、カメラ本体側の部材による突起部10dへの押圧が解かれると、セット部材10はばね11の力によって直ちに追従し、反時計方向へ回転する。その回転によって、先ず、ピン10fが端面13eを逆方向へ摺動するので、押圧部材13はばね14の力によって僅かに反時計方向へ回転され、折曲部13fがフック部15aに係止されることによって停止する。その状態が図6に示されている。この状態においては、取付部4cと、鉄片軸7bの端部7b1 との間の間隙には変化がない。
【0030】
このあと、先ず、セット部材10の押動部10cが、後羽根駆動部材の被押動部から離れ、次に、押動部10bが先羽根駆動部材4の被押動部4dから離れる。その離れた直後の状態が図7に示されている。このとき、鉄片軸7bの端部7b1 と、取付部4cとの間の間隙は全くなく、両者は接触状態にある。即ち、この状態は、駆動部材4が、図6の状態から押さえばね8と駆動ばね9によって時計方向へ回転され、取付部4cが端部7b1 に当接した直後の状態である。他方、ピン10fは、押圧部材13から完全に離れた状態となっている。
【0031】
このように、取付部4cが端部7b1 に当接したとき、その衝撃力によって、鉄片部材7に対し、電磁石12から離反する力が大きく働くが、押圧部材13がフック部材15によって係止されており、且つ鉄片部材7は折曲部13aの弾性によって押されているので、鉄片部材7は電磁石12から離反するようなことはない。また、万が一、離反するようなことがあっても、上記の構成から、それは僅かであり且つ瞬間的なものであって、直ちに図7の状態となる。このことから分かるように、電磁石12の吸着力は、上記のような衝撃力に対して確実に耐え得る程には必要なく、衝撃力が加わらない場合における駆動ばね9の離反力にのみ耐え得る範囲で良いことになる。従って、本実施例によれば、消費電力を節約することができ、且つ駆動部材4を所定の作動開始時機まで確実に保持しておくことが可能となる。
【0032】
セット部材10が図7の状態から更に回転すると、カム部10gが小径部と大径部との間の斜面部でフック部材15の当接部15bを押し、フック部材15を時計方向へ回転させる。その結果、フック部15aによる折曲部13fの係止が解除される。それによって押圧部材13が反時計方向へ回転を始めた状態が図8に示されている。この状態においては、既に押圧部13bが鉄片部材7から離反しているが、駆動ばね9による力を受けながらも鉄片部材7は電磁石によって適正に吸着され、駆動部材4は確実に露光走行開始の初期位置に保持されている。その後、押圧部材13は、折曲部13aが軸1nに当接することによって停止し、セット部材10も初期位置へ復帰して停止する。その状態が図9に示されている。
【0033】
その後、制御回路からの信号によって先羽根用の電磁石12に対する通電が断たれると、先羽根駆動部材4は強力な駆動ばね9の駆動力によって急速に時計方向へ回転する。そのため、展開して開口部1aを覆っていた先羽根群は、駆動ピン4bによって作動され、羽根相互の重なりを深めつつ開口部1aを開放し、下方に走行していく。そして、最後に、駆動ピン4bが緩衝部材2に衝突することによって、先羽根群が開口部1a内へバウンドするのが防止され、停止する。このようにして先羽根駆動部材4が露光走行を開始してから所定時間経過すると、後羽根用の電磁石に対する通電が断たれる。その結果、後羽根駆動部材は時計方向へ回転され、開口部1aの上方位置に格納されていた後羽根群が展開して開口部1aを閉じていく。そして、最後に、駆動ピンが緩衝部材3に衝突することによって、後羽根群のバウンドが防止され、停止する。図1は、このときの状態を示している。
【0034】
尚、実施例においては、押圧部13bの形状が、鉄片部材7側に凸状をした円弧面として形成されているが、平面であっても構わない。但し、力の集中という点から、また露光作動に先立って退避をスムーズに行えるようにする点(押圧部はカメラの不使用中、長期間、鉄片部材と接触状態にあるため、環境条件によっては接着性を帯びることがある)から、円弧面か球面とすることが好ましい。その場合、円弧面や球面を押圧部材に直接形成する必要はなく、別部品として製作し押圧部材に一体化するようにしても差し支えない。
【0035】
図10は、上記した鉄片部材7の変形例を説明するためのものである。この図10においては、特に混乱を生じる虞もないので各部品,部位には上記の実施例に用いたものをそのまま用いている。この図に示すように、鉄片部材7の鉄片7aと、電磁石12の鉄芯部材12aの形状は、上記の実施例と同じである。異なるのは、鉄片軸7bの端部7b1 の形状にある。上記の実施例においては、押圧部材13の押圧部13bに押される面が平面であるが、図10の場合には、吸着部の中心線L上に中心点を有する球面となっている。この面は円弧面であってもそれなりの意味を持つ。このような面とすることによって、押圧部13bの形状に関して上記した効果と同じ効果が得られるほか、鉄芯部材12a,鉄片部材7,押圧部材13の接触関係に多少のずれが生じてもスムーズに接触させることが可能となる。
【0036】
次に、本発明が、同じダイレクトタイプではあるが、駆動部材と鉄片部材との間に、押さえばね8を介在させていないシャッタにも適用できることを説明する。図11(a)は、特開平4−62529号公報に記載された第9図と実質的に同じである。この構成のシャッタについては上記の公報に詳しく記載されているが、ここで簡単に説明をしておく。但し、用語と符号の用い方については独自の使い方をする。
【0037】
シャッタ地板に立設された軸Aには、後羽根駆動部材Bが回転可能に取り付けられている。駆動部材Bには孔B1 と折曲部B2 が形成され、またシャッタ地板の背部に配置された後羽根群を作動させるための曲げ部(駆動ピン)B3 が形成されている。この駆動部材Bの背面に立設された軸B4 には揺動部材Cが回転可能に取り付けられている。揺動部材Cには背面側にローラーC1 が取り付けられ、また折曲部C2 は孔B1 から駆動部材Bの表面側に突き出ている。そして、ローラーC1 はシャッタ地板に形成された長孔Dに挿入されている。駆動ばねEはシャッタ地板に立設された軸Fと折曲部C2 に掛けられ、直接的には揺動部材Cに付勢力を与えている。また、上記の折曲部B2 には軸Gが固定され、そこに鉄片部材Hが取り付けられている。この鉄片部材Hの被吸着面は左上方の端面である。
【0038】
この図11(a)は、シャッタのセット状態を示している。従って、この状態においては、鉄片部材Hの被吸着面が図示していない電磁石の吸着面に接していることになる。また、駆動部材Bは、図示していないセット部材がローラーC1 を押すことにより、揺動部材Cを介して反時計方向へ回転され、鉄片部材Hの被吸着面が図示していない電磁石の吸着面に接した状態で、その回転を停止された状態にある。セット部材は駆動部材Bが停止した後も僅かに回転し、駆動部材Bと揺動部材Cとの相対位置を変えて図の状態になっている。このことから分かるように、このシャッタの構成は、上記の実施例における押さえばね11の機能を、揺動部材Cを備えることによって駆動ばねEが果たしているといえる。そして、このシャッタは、ダイレクトタイプであるから、シャッタがレリーズされるまで、セット部材によってこの状態が保たれることになる。
【0039】
ところで、このようなシャッタは、出願人によって実施され、既に公知である。その実施に当たって、上記の公報に記載の発明とは関係がないため該公報には詳細な記載がないものの、以下のような構成が採用されている。その点を図11(b)によって説明する。用いられている符号は図11(a)と共通である。即ち、図11(a)に示された鉄片部材Hは、図11(b)に示されたような形状をして、軸Gに回転可能に取り付けられている。従って、折曲部B2 から更に折り曲げられた二つの折曲部B5 ,B6 が鉄片部材Hの回転止めの役目をしている。
【0040】
このように、鉄片部材Hを軸Gに固定せず、回転可能にしている理由は、鉄片部材Hが回転できると、組立上に誤差があっても、被吸着面を電磁石の吸着面に対して適正に接触させることができるからである。しかし、単に、回転可能にしただけでは回転方向への位置調整は可能であってもその他の方向、例えば回転方向と直交する方向への調整は不可能である。そのため、実際の実施品では、鉄片部材Hが軸Gに対し、どちらの方向へも変位可能にするために、鉄片部材Hの孔の径と軸Gの径との間に0.1mm程度の大きな間隙Sを与えている。
【0041】
このように、間隙Sが大きいと、電磁石による保持力が小さい場合には、既に説明したと同じように問題が発生する。即ち、シャッタレリーズによって電磁石に通電し、ローラーC1 からセット部材が退避したとき、駆動ばねEによって揺動部材Cが反時計方向へ回転し、折曲部C2 が孔B1 の縁に当たってからは駆動部材Bが時計方向へ僅かに回転し、軸Gが鉄片部材Hの孔の内壁(それまで電磁石の方へ押していた壁とは反対側の壁)に当接し、鉄片部材Hに衝撃力を与えることになる。このような衝撃力による影響は、セット部材が退避する後まで、鉄片部材Hを電磁石方向へ押圧しているようにした押圧部材を設けることによって防ぐことができる。従って、本発明は、このようなシャッタにも適用することが可能である。
【0042】
尚、この説明からも分かるように、本発明においては、必要に応じて、各押動部や各被押動部としてローラーを用いるようにしても構わない。また、上記した実施例や、この図11で説明したもののほかにも、鉄片部材の被吸着面を電磁石の吸着面に適正に接触できるようにするために、セット操作時におけるセット部材と駆動部材との干渉を吸収できるようにする構成が知られている。本発明は、そのような構成であって、鉄片部材が駆動部材に対して相対的に移動可能に取り付けられているものに対して全て有効に適用することができるものである。
【0043】
【発明の効果】
上記のように、本発明によれば、ダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタにおいて、露光走行に先立ってセット部材が初期位置へ復帰するに際し、該セット部材による押圧が解けることによって駆動部材が露光作動開始位置に僅かに作動したとき、その作動によって鉄片部材に当接する力が鉄片部材を電磁石から離反させることのないようにしたものであるから、駆動部材の走行のタイミングを適正に維持でき、且つそれによって消費電力を節約することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の平面図であって、各羽根群の露光走行完了状態を示している。
【図2】本実施例における各羽根群の支持構成を説明するための平面図である。
【図3】実施例の平面図であって、セット時における先側押圧部材の移動開始状態を示している。
【図4】実施例の平面図であって、セット時において鉄片部材が電磁石に接触したときの状態を示している。
【図5】実施例の平面図であって、セット部材のセット作動完了状態を示している。
【図6】実施例の平面図であって、セット部材の復帰作動の開始直後の状態を示している。
【図7】実施例の平面図であって、先羽根駆動部材が露光走行の初期位置にある状態を示している。
【図8】実施例の平面図であって、押圧部材の押圧部が鉄片部材から離れた直後の状態を示している。
【図9】実施例の平面図であって、セット部材が初期位置へ復帰したときの状態を示している。
【図10】実施例中に示した鉄片部材の変形例を説明するための図面であって、図10(a)は平面図、図10(b)は図10(a)の底面図である。
【図11】本発明を適用することができる公知のシャッタ構成を説明するための図面であって、図11(a)は平面図、図11(b)は図11(a)の要部斜視図である。
【符号の説明】
1 シャッタ地板
4 先羽根駆動部材
4b 駆動ピン
4c 取付部
4d 被押動部
7 鉄片部材
7a 鉄片
7b 鉄片軸
7b1 端部
8 押さえばね
9 駆動ばね
10 セット部材
10b,10c 押動部
10d,10e 突起部
10f ピン
10g カム部
12 電磁石
12a 鉄芯部材
13 押圧部材
13a,13f 折曲部
13b 押圧部
13c,13d,13e 端面
15 フック部材
15a フック部
15b 当接部

Claims (5)

  1. 被押動部を有していて駆動ばねに付勢されて羽根群に露光走行を行わせる駆動部材と、電磁石の吸着面に吸着され得る被吸着面を有していてセット状態になるときには相対位置関係を変え得るようにして前記駆動部材に取り付けられた鉄片部材と、前記被押動部に係接し得る押動部を有しておりセット時に該押動部が前記被押動部を押して前記駆動ばねに抗して前記駆動部材を作動させレリーズ後における前記電磁石へ通電後には羽根群の露光走行に先立って初期位置へ復帰するようにしたセット部材と、被係止部と押圧部を有していてセット時に前記セット部材に押動され該押動部を前記鉄片部材の作動軌跡内に移動させセット状態においては前記被吸着面が前記吸着面に接する方向に前記鉄片部材を押圧させることとし羽根群の露光走行時には前記鉄片部材の作動軌跡外へ退避させている押圧部材と、前記被係止部に係合する係止部を有し前記セット部材の初期位置への復帰に際し前記押動部が少なくとも前記被押動部から離れるまでは該係止部によって前記押圧部材を前記鉄片部材の押圧状態で係止しておきその後該セット部材により該押圧部材の係止解除を行わされる係止部材とを備えていることを特徴とするフォーカルプレンシャッタ。
  2. 前記セット部材により前記吸着面と前記被吸着面が接してから前記押圧部材が前記の押圧を開始するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のフォーカルプレンシャッタ。
  3. 前記被押動部が、前記駆動部材に取り付けられた遥動部材に設けられ、前記駆動ばねが該遥動部材を介して前記駆動部材を付勢していることを特徴とする請求項1に記載のフォーカルプレンシャッタ。
  4. 前記押圧部材は、ばねによって、前記押圧部が前記鉄片部材の作動軌跡外へ退避する方向へ付勢されており、また前記係止部材は、該ばねによって前記係止部が前記被係止部と係合する方向へ付勢されており、前記セット部材が該ばねに抗して前記係止部材を作動させることによって、前記押圧部材の係止を解除するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のフォーカルプレンシャッタ。
  5. 前記押圧部材が前記鉄片部材を押圧する面と、前記押圧部材が前記鉄片部材によって押圧される面のうち、少なくとも一方の面の形状が、他方の面に対して凸状の球面又は円弧面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のフォーカルプレンシャッタ。
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