先ず、主に、図1〜図3を用いて本実施例の構成を説明する。尚、図1及び図2は、本実施例のセット状態(撮影待機状態)を被写体側から見て示した平面図であるが、図1は、主にシャッタ羽根の開閉駆動機構を説明するために、シャッタの左側の約半分を示したものであり、図2は、図1に示されている開閉駆動機構の係止解除機構を示したものである。そして、本来であれば、図2に示されている各構成部材は、図1に示された開閉駆動機構の被写体側に、重ねて取り付けられているものであるが、そのようにして図示すると図面が見にくくなるため、二つに分けて示したものである。また、図3は、図2に記載されている係止解除機構の一部を拡大し、部分的に断面で示した側面図である。
図1において、シャッタ地板1は、その略中央部に長方形を横長にした撮影光路用の開口部1aを形成している。また、シャッタ地板1の背面側には、所定の間隔を空けて、中間板2と補助地板3が順に取り付けられ、シャッタ地板1と中間板2との間に後述の先羽根の羽根室を構成し、中間板2と補助地板3との間に後述の後羽根の羽根室を構成している。そして、それらの中間板2と補助地板3にも、開口部1aと重なるところに類似の形状の開口部2a,3aが形成されているが、露光開口は、開口部1aによって規制されるようになっている。また、開口部1aの左側の上下位置には、円弧状をした二つの長孔1b,1cが形成されており、それらの上端部には、平面形状が略C字状をしたゴム製の緩衝部材4,5が取り付けられている。
開口部1aの左側におけるシャッタ地板1の被写体側は2階建てになっていて、1階と2階の間には一部に中2階が設けられている。即ち、シャッタ地板1の被写体側の面に立設された軸1d,1e,1fには、シャッタ地板1との間に所定の間隔を空けて上地板6が取り付けられている。その上地板6は、図1においては輪郭だけが一点鎖線で示されているが、図2においては実際の形状が示されている。また、図2に示されているように、上地板6の被写体側の面に立設された軸6a,6bには、上地板6との間に所定の間隔を空けてカバー板7が取り付けられているが、そのカバー板7は、図3にだけ示されている。
シャッタ地板1の被写体側の面には、明示されていない二つの軸が立設されていて、それらの軸の先端面には、シャッタ地板1との間にも、上地板6との間にも所定の間隔を空けるようにして、小さな棚板8が、二つのビス9,10によって取り付けられている。そして、この棚板8には、上地板6側に折り曲げた折曲部8aが設けられているほか、軸8bが立設されている。更に、シャッタ地板1の被写体側の面には、図1に示されているように、上記の軸1d,1e,1fのほかに、軸1g,1h,1i,1jが立設されているが、それらのうち、軸1g,1hは、シャッタ地板1の背面側、即ち固体撮像素子側にも細い軸を立設させた構成をしている。また、シャッタ地板1の背面側には、軸1k,1mも立設されている。
そして、シャッタ地板1の被写体側において、上記の軸1gには、先羽根用駆動部材11が回転可能に取り付けられていて、図示していない先羽根用駆動ばねによって、反時計方向へ回転するように付勢されており、図1の状態から反時計方向へ回転させられたとき、その一部が、シャッタ地板1と棚板8との間に入り込む配置構成になっている。この先羽根用駆動部材11は、先端に被係止部11aを有しており、被写体側の面にはローラ11bを回転可能に取り付け、背面側には駆動ピン11cを設けている。そして、その駆動ピン11cは、シャッタ地板1の長孔1bを貫通して、羽根室内で先羽根に連結されているが、その先羽根の構成については後述する。
また、シャッタ地板1の被写体側において、上記の軸1hには、後羽根用駆動部材12が回転可能に取り付けられており、図示していない後羽根用駆動ばねによって、反時計方向へ回転するように付勢されている。この後羽根用駆動部材12は、被係止部12aを有しており、被写体側の面にはローラ12bを回転可能に取り付け、背面側には駆動ピン12cを設けている。そして、その駆動ピン12cは、シャッタ地板1の長孔1cを貫通して、羽根室内で後羽根に連結されているが、その後羽根の構成については後述する。
シャッタ地板1の軸1jには、セット部材13が回転可能に取り付けられており、図示していない復帰ばねによって、時計方向へ回転するように付勢されている。そして、このセット部材13は、被押動部13aを有しており、シャッタ地板1側の面には、上記の先羽根用駆動部材11のローラ11bに接触し得るローラ13bと、上記の後羽根用駆動部材12のローラ12bに接触し得るローラ13cとが取り付けられている。
また、棚板8の軸8bには、セット操作部材14が回転可能に取り付けられている。このセット操作部材14は、円弧状の長孔14aを形成していて、シャッタ地板1側の面には二つのローラ14b,14cを取り付けており、上地板6側の面には押動ピン14dを有しているほかローラ14eを取り付けている。そして、このセット操作部材14自体は、ばねによって回転力を付与されていない。そのため、図1においては、このセット操作部材14は、セット部材13を付勢している復帰ばねの力により、ローラ14cが被押動部13aに押されて反時計方向へ回転させられるのを、棚板8の折曲部8aによって阻止されている状態になっている。
シャッタ地板1の軸1iには、先羽根用係止部材15が回転可能に取り付けられていて、図示していないばねによって、反時計方向へ回転するように付勢されている。この先羽根用係止部材15は、シャッタ地板1側に折り曲げた係止部15aを有しているが、図1においては、この係止部15aが、先羽根用駆動部材11の被係止部11aを係止し、先羽根用駆動部材11の反時計方向への回転を阻止している。また、この先羽根用係止部材15は、上地板6側に折り曲げた折曲部の左端に、さらに上地板6側に突出させた被押動部15bを有していて、その被押動部15bを、セット操作部材14の長孔14aと、上地板6に形成された円形の孔6c(図2参照)を貫通させ、先端を、上地板6とカバー板7の間に配置させている。
また、シャッタ地板1の軸1fには、後羽根用係止部材16が回転可能に取り付けられていて、図示していないばねによって、反時計方向へ回転するように付勢されている。この後羽根用係止部材16は、シャッタ地板1側に折り曲げた係止部16aと、上地板6側に折り曲げた形状の被押動部16bを有している。そして、係止部16aは、図1において、後羽根用駆動部材12の被係止部12aを係止し、後羽根用駆動部材12の反時計方向への回転を阻止している。また、被押動部16bは、図2に示すように、上地板6に形成されている糸巻き形状の孔6dを貫通し、上地板6とカバー板7の間に突き出ている。
図2に示されているように、上地板6は、上下一直線となるように形成された二つの折曲部6e,6fを有していて、それらの折曲部6e,6fを境にして段違いになっており、右側の面は、左側の面よりもシャッタ地板1側となっている。また、図面上では分かりにくいが、略中央部であって主に左側の面となるようにして、比較的大きな開口部が形成されている。この上地板6には、二つの電磁石17,18がビス19,20によって取り付けられているが、それらの電磁石17,18は、U字形をした鉄芯部材17a,18aと、コイル17b,18bを巻回したボビン17c,18cとからなっており、ボビン17c,18cは、鉄芯部材17a,18aの一方の脚部に嵌装され、上地板6側の一部を上記の開口部に挿入している。更に、この上地板6には、軸6g,6hが立設されているほか、長手方向の一端を開放した円弧状の長孔6iと、カバー板7側への折り曲げ形状をしたストッパ部6jが形成されている。
上地板6に立設されていてカバー板7を取り付けている上記の軸6a,6bには、先羽根用解除部材21と後羽根用解除部材22が回転可能に取り付けられており、各々図示していない解除ばねの付勢力によって、先羽根用解除部材21は反時計方向へ、後羽根用解除部材22は時計方向へ回転するように付勢されている。そして、先羽根用解除部材21は、先羽根用係止部材15の被押動部15bを押す押動部21aを有しているほか、先端に形成された折曲部には鉄片部材23を取り付けている。また、後羽根用解除部材22は、後羽根用係止部材16の被押動部16bを押す押動部22aを有しているほか、先端に形成された折曲部には鉄片部材24を取り付けている。そして、それらの鉄片部材23,24は、それらが取り付けられている折曲部の右側に突き出した被押動部23a,24aを有している。
上地板6に立設されている軸6gには種々の部材が取り付けられているが、それらの取付け構成は、図2と図3を用いて説明する。図3に示すように、軸6gは、フランジ部6kを境にして上地板6側の軸部とカバー板7側の軸部とを有している。そこで先ず、カバー板7側の軸部に取り付けられている部材の構成を説明する。カバー板7側の軸部には、管軸部材25が回転可能に取り付けられている。そして、その管軸部材25には、ホールド部材26が回転可能に取り付けられ、ホールド補助部材27が固定されていいて、両者の間にはワッシャ28を介在させている。
また、ホールド部材26とホールド補助部材27との間には、連結ばね29が掛けられていて、図2において、ホールド部材26を時計方向へ回転させ、ホールド補助部材27を反時計方向へ回転させるように付勢しているが、図2においては、この連結ばね29の図示が省略されている。連結ばね29は、ねじりコイルばねであって、コイル部が管軸部材25に嵌装されており、一方の腕部をホールド部材26の軸26aに掛け、他方の腕部をホールド補助部材27のばね掛け部27a(図2参照)に掛けている。そして、この連結ばね29が、ホールド部材26とホールド補助部材27を相対的に回転させる付勢力は、ホールド部材26の当接部26bとホールド補助部材27の折曲部27bとが当接することによって失われるようになっている。
また、図3に示されているように、軸6gの周囲に、離反ばね30が緩く嵌装されている。この離反ばね30は、ねじりコイルばねであって、図2では図示を省略されているが、一方の腕部を上地板6の縁に掛け、他方の腕部をホールド補助部材27の折曲部27b(図2参照)の右側に掛けていて、ホールド補助部材27を反時計方向へ回転させるように付勢している。そのため、ホールド部材26は、離反ばね30の付勢力によってホールド補助部材27が反時計方向へ回転させられると、当接部26bを折曲部27bに押されることよって反時計方向へ回転させられるようになっている。そして、このホールド部材26は、上地板6側に押動ピン26cを有している。また、ホールド補助部材27は、上記の折曲部27bよりも先端側が、上地板6の背面側に配置されており、上地板6の左側に位置した先端には折曲部が設けられていて、その一部が上地板6よりもカバー板7側に延伸して被係止部27cとなっている。そして、このホールド補助部材27は、セット時に、その上地板6の背面側に配置された部位が上記したセット操作部材14のローラ14eに押され、時計方向へ回転させられるようになっている。
ホールド部材26の先端には、軸26dが立設されていて、そこに、押圧部材31が回転可能に取り付けられいている。そして、この押圧部材31に設けられた二つの押圧片31a,31bは、上記の先羽根用解除部材21と後羽根用解除部材22に取り付けられた鉄片部材23,24の被押動部23a,24aを押し、電磁石17,18の鉄芯部材17a,18aに対して鉄片部材23,24を押し付けるためのものである。
次に、軸6gに取り付けられている部材のうち、図3に示されているように、フランジ部6kを境にして上地板6側の軸部に取り付けられている部材の構成を説明する。先ず、その軸部には、ブレーキ部材32を回転可能に取り付けている。その後、摩擦付与部材としての板ばね33を、その中央部に形成された孔を嵌合させて取り付けており、最後に、上地板6との間にはワッシャ34を取り付けている。そのため、ブレーキ部材32は、通常は、板ばね33により付与された摩擦によって、停止状態を維持されているが、強い力が加わると、その摩擦に打ち勝って回転させられるようになっている。また、このブレーキ部材32の平面形状は、図2に示されているように、先端の右側が、曲面となるように形成されている。そして、このブレーキ部材32は、その長さ方向の両側を被押動部としていて、図2において、ホールド部材26の押動ピン26cに押されると反時計方向へ回転させられ、セット操作部材14の押動ピン14d(図1参照)に押されると時計方向へ回転させられるようになっている。
上地板6の上記の軸6hには、先羽根用解除部材21やホールド部材26よりもカバー板7側に配置されているレリーズ部材35が回転可能に取り付けられており、図示していないばねによって反時計方向へ回転するように付勢されているが、図2に示された状態においては、図示していないストッパによって、その回転が阻止されている。そして、このレリーズ部材35には、上記のホールド補助部材27の被係止部27cを係止するための係止部35aと、折り曲げ形状をしていて上地板6の右側に突き出している操作部35bとが設けられている。
最後に、各々の羽根室内に配置されている先羽根と後羽根の構成を説明する。先ず、先羽根は、図1に示されているように、シャッタ地板1の背面側に立設された二つの軸1g,1kに枢着されている二つのアーム36,37と、それらの先端に向けて順に枢支された4枚の羽根38,39,40,41とで構成されていて、羽根41をスリット形成羽根としている。また、アーム36に形成された周知の孔に、先羽根用駆動部材11の駆動ピン11cを嵌合させている。他方、後羽根は、先羽根を裏返したようにして配置されており、シャッタ地板1の背面側に立設されている二つの軸1h,1mに枢着された二つのアーム42,43と、それらの先端に向けて順に枢支された4枚の羽根44,45,46,47とで構成されていて、羽根47をスリット形成羽根としている。また、アーム42に形成された周知の孔に、後羽根用駆動部材12の駆動ピン12cを嵌合させている。
次に、本実施例の作動を説明する。図1及び図2は、本実施例のセット状態を示している。図1に示されているように、このとき、セット部材13は、図示していない復帰ばねの付勢力によって時計方向へ回転し、上記したようにローラ14cを押すことによってセット操作部材14を反時計方向へ回転させ、セット操作部材14を棚板8の折曲部8aに当接させている。セット部材13とセット操作部材14にとっては、この状態の位置が初期位置である。そして、このセット状態においては、セット部材13のローラ13b,13cは、先羽根用駆動部材11と後羽根用駆動部材12の各ローラ11b,12bの作動範囲外に位置している。
また、このセット状態において、先羽根用駆動部材11は、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して、被係止部11aを先羽根用係止部材15の係止部15aに係止され、後羽根用駆動部材12は、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して、被係止部12aを後羽根用係止部材16の係止部16aによって係止されている。それにより、先羽根用駆動部材11の駆動ピン11cに連結されている先羽根は、4枚の羽根38〜41を展開状態にして開口部1aを覆っている状態を維持され、後羽根用駆動部材12の駆動ピン12cに連結されている後羽根は、4枚の羽根44〜47を重畳状態にして開口部1aの下方位置に格納された状態を維持されている。
また、このとき、図2に示すように、ホールド補助部材27は、その被係止部27cをレリーズ部材35の係止部35aに係止されている。そのため、図3に示すように、管軸部材28に緩く嵌装されていて、一端を上地板6に掛け、他端をホールド補助部材27のばね掛け部27aに掛けている離反ばね30は、緊張されている。そして、このとき、ホールド部材26に取り付けられた押圧部材31は、その押圧片31a,31bが、先羽根用解除部材21と後羽根用解除部材22に取り付けられている鉄片部材23,24の被押動部23a,24aを押し、電磁石17,18の鉄芯部材17a,18aに押し付けている。また、この状態においては、ホールド補助部材27の折曲部27bは、ホールド部材26の当接部26bから離れている。そのため、一端をホールド部材26の軸26aに掛け、他端をホールド補助部材27のばね掛け部27aに掛けている連結ばね29も緊張されている。更に、このとき、ホールド部材26の押動ピン26cとブレーキ部材32は離れていて、ブレーキ部材32は、セット操作部材14に設けられた押動ピン14dの作動軌跡内には臨んでいない。
このようなセット状態において、カメラのレリーズボタンを押すと、最初に先羽根が開口部1aの開き作動を開始し、所定時間後に後羽根が閉じ作動を開始して、通常の昼光撮影の場合には、先羽根のスリット形成羽根41と後羽根のスリット形成羽根47によってスリットを形成し、固体撮像素子の撮像面を連続的に露光していくことになるが、以下においては、説明の便宜上、先羽根が開口部1aを全開にしてから後羽根が開口部1aを閉じ始める場合で説明することにする。
そこで先ず、カメラのレリーズボタンを押すと、図2に示されている二つの電磁石17,18のコイル17b,18bに対し、電流が供給される。そのため、先羽根用解除部材21に取り付けられている鉄片部材23と、後羽根用解除部材22に取り付けられている鉄片部材24が、電磁石17,18の鉄芯部材17a,18aに吸着保持される。その後、カメラ本体側の部材によってレリーズ部材35の操作部35bが図2の下方へ押されると、レリーズ部材35は、図示していないばねの付勢力に抗して時計方向へ回転し、係止部35aによる被係止部27cの係止を解除する。そのため、ホールド補助部材27は、ホールド部材26との間に掛けられている連結ばね29の付勢力と、上地板6との間に掛けられている離反ばね30の付勢力とによって反時計方向へ回転させられる。そして、ホールド補助レバー27の折曲部27bがホールド部材26の当接部26bに当接すると、連結ばね29による付勢力が失われるので、その後は、ホールド部材26とホールド補助部材27の両方が、離反ばね30の付勢力だけによって反時計方向へ回転させられるようになり、ホールド部材26に取り付けられている押圧部材31の押圧片31a,31bが鉄片部材23,24の被押動部23a,24aから離れて行く。
そして、その後、ホールド部材26の押動ピン26cがブレーキ部材32に当接してからは、ホールド部材26は、板ばね33によって摩擦を付与されているブレーキ部材32を押し、反時計方向へ回転させながら回転していくことになる。そのため、ホールド部材26とホールド補助部材27の回転は制動されることになり、その後、押圧部材31が、上地板6のストッパ部6jに当接したときには、ホールド部材26のバウンドが好適に抑制されて早期に静止状態が得られる。図4は、そのようにして、ホールド部材26が静止した状態を示したものである。そして、このとき、ブレーキ部材32の先端は、セット操作部材14に設けられた押動ピン14dの作動軌跡内には臨んでいる。また、このときには、レリーズ部材35の操作部35bに対するカメラ本体側の部材の押圧力も解かれており、レリーズ部材35は図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転し、その係止部35aがホールド補助部材27の被係止部27cに当接している。
このように、本実施例の場合には、ホールド部材26のバウンドが抑制されて、早期に静止状態が得られるので、従来の場合よりも早く先羽根用電磁石17のコイル17bに対する通電を断つことができるようになっている。そして、露光制御回路からの信号によってコイル17bに対する通電が断たれると、図示していないばねの付勢力によって、先羽根用解除部材21が反時計方向へ回転させられ、押動部21aが先羽根用係止部材15の被押動部15bを押すことによって、図示していないばねの付勢力に抗して先羽根用係止部材15を時計方向へ回転させる。それによって、先羽根用係止部材15の係止部15aは、先羽根用駆動部材11の被係止部11aの係止を解くことになる。
このようにして、先羽根用係止部材15による係止を解かれると、先羽根用駆動部材11は、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力によって、図1の状態から急速に反時計方向へ回転させられる。そのため、先羽根の4枚の羽根38〜41は、隣接する羽根同士の重なりを大きくしつつ開口部1aの上方へ作動し、開口部1aの下方から開口部1aを開放していく。そして、開口部1aが全開になると、その直後に、先羽根用駆動部材11は、その駆動ピン11cが、長孔1bの上端に取り付けられた緩衝部材4に当接して停止させられ、先羽根の4枚の羽根38〜41は、重畳されて開口部1aの上方位置で格納状態になる。
先羽根が開口部1aを全開にすると、続いて、後羽根用の電磁石18のコイル18bに対する通電が断たれる。それによって、後羽根用解除部材22が、図示していないばねの付勢力によって時計方向へ回転させられ、その押動部22aによって、後羽根用係止部材16の被押動部16bを押す。そのため、後羽根用係止部材16は、図示していないばねの付勢力に抗して時計方向へ回転させられ、その係止部16aが、後羽根用駆動部材12の被係止部12aの係止を解く。図5は、そのようにして、後羽根用解除部材22が、後羽根用係止部材16を時計方向へ回転させ、停止した状態を示したものである。
後羽根用駆動部材12は、後羽根用係止部材16による係止を解かれると、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力によって、図1の位置から急速に反時計方向へ回転させられる。そのため、後羽根の4枚の羽根44〜47は、隣接する羽根同士の重なりを小さくしつつ開口部1a内へ作動し、開口部1aの下方から開口部1aを閉鎖していく。そして、開口部1aが完全に閉鎖すると、その直後に、後羽根用駆動部材12は、その駆動ピン12cが、長孔1cの上端に取り付けられた緩衝部材5に当接して停止させられる。図6は、このようにして、先羽根と後羽根による露光作動が終了し、後羽根の4枚の羽根44〜47が展開状態となって開口部1aを閉鎖している状態を示したものである。
撮影が終了すると、次にセット作動が行われる。その場合、本実施例においては、セット操作部材14が、図示していないカメラ本体側の部材によってローラ14aを押され、時計方向へ回転させられる。そのため、一方では、セット操作部材14のローラ14eによって、ホールド補助部材27が図5において時計方向へ回転させられ、他方では、セット操作部材14のローラ14cによって、セット部材13が、被押動部13aを押され、図示していない復帰ばねの付勢力に抗して、図6において反時計方向へ回転させられるほか、セット操作部材14の押動ピン14dによって、ブレーキ部材32が図5において時計方向へ回転させられる。そして、それらの回転は、実際には略並行して行わされるが、説明の都合上、ホールド補助部材27の回転から順に説明することにする。
先ず、上記のように、図6に示された状態において、セット操作部材14が時計方向へ回転させられると、ローラ14eが、図5の状態にあるホールド補助部材27を押して時計方向へ回転させる場合を説明する。ホールド補助部材27が時計方向へ回転させられると、このときには、離反ばね30の付勢力よりも連結ばね29の付勢力の方が大きいため、ホールド補助部材27は、当接部26bと折曲部27bとを接触させたまま、ホールド部材26を伴って、離反ばね30の付勢力に抗して回転させられる。
この時計方向の回転中、ホールド補助部材27は、その被係止部27cが、レリーズ部材35の係止部35aの左端面と摺接するが、ホールド部材26の方は、押圧部材31によって、先羽根用解除部材21と後羽根用解除部材22に取り付けられている鉄片部材23,24の被押動部23a,24aを押し、先羽根用解除部材21を、図示していないばねの付勢力に抗して時計方向へ回転させ、後羽根用解除部材22を、図示していないばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させていく。また、それに伴い、それらの解除部材21,22の押動部21a,22aによって押されていた力が解かれていくため、先羽根用係止部材15と後羽根用係止部材16も、夫々の図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられていく。そして、その後、先羽根用解除部材21と後羽根用解除部材22に取り付けられている鉄片部材23,24は、電磁石17,18の鉄芯部材17a,18aに対して、図2に示したような接触状態になる。
そして、その状態になったときには、既に、二つの解除部材21,22の押動部21a,22aと二つの係止部材15,16の被押動部15b,16bとの接触は解かれており、二つの係止部材15,16の回転は、各々の被押動部15b,16bが上地板6の孔6c,6dの左側の縁に当接して、停止させられている。このような状態からホールド補助部材27は、さらに時計方向へ回転させられる。そうすると、ホールド部材26の方は、鉄片部材23,24が鉄芯部材17a,18aに接触したことによって、それ以上回転することができなくなっているので、ホールド補助部材27の折曲部27bがホールド部材26の当接部26bから離れてゆき、離反ばね30のほかに連結ばね29も緊張させていく。
そして、その直後には、ホールド補助部材27の被係止部27cとレリーズ部材35の係止部35aとの摺接関係が解かれるので、レリーズ部材35は、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ僅かに回転し、図示していないストッパに当接することによって、ホールド補助部材27の係止可能状態になる。ところが、実際には、セット操作部材14によってホールド補助部材27はさらに回転させられるので、レリーズ部材35は、直ちにホールド補助部材27の被係止部27cを係止することなく、後述するように、セット操作部材14がセット操作を終了して反時計方向へ復動するとき、その係止部34aによって係止することになる。
次に、図6の状態から、カメラ本体側の部材によって、セット操作部材14が時計方向へ回転させられると、セット操作部材14のローラ14cが、セット部材13の被押動部
13aを押し、セット部材13を、図示していない復帰ばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させた場合を説明する。セット部材13は、反時計方向へ回転させられると、ローラ13b,13cによって、先羽根用駆動部材11と後羽根用駆動部材12のローラ11b,12bを順に押し、それらの駆動部材11,12を、図示していない各々の駆動ばねの付勢力に抗して、時計方向へ回転させることになる。
そして先ず、先羽根用駆動部材11が時計方向へ回転させられると、開口部1aの上方位置に格納されていた先羽根の4枚の羽根38〜41が、隣接する羽根同士の重なり量を小さくしつつ下方へ作動させられていく。その後、先羽根のスリット形成羽根41と後羽根のスリット形成羽根47の重なりが所定量に達すると、後羽根用駆動部材12も時計方向へ回転を開始させられるようになる。そのため、後羽根の4枚の羽根44〜47は、その時点から隣接する羽根同士の重なり量を大きくしつつ下方へ作動させられる。そして、それ以後は、先羽根と後羽根は、スリット形成羽根同士の重なり量を好適に保ちながら作動を続けていくことになる。
このようにして、セット作動が行われてゆき、先羽根の4枚の羽根38〜41が展開状態となって開口部1aを覆い、後羽根の4枚の羽根44〜47が重畳状態となって開口部1aの下方位置に達した段階になると、先羽根用駆動部材11の被係止部11aが先羽根用係止部材15の係止部15aに接触して、先羽根用係止部材15を、図示していないばねの付勢力に抗して僅かに時計方向へ回転させ始める。そして、先羽根用駆動部材11がなおも回転を続けることによってそれらの接触が解かれると、先羽根用係止部材15は、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられ、係止部15aによる被係止部11aの係止可能状態になる。
他方、その係止可能状態になる直前には、既に、後羽根用駆動部材12の被係止部12aも後羽根用係止部材16の係止部16aに接触していて、後羽根用係止部材16を、図示していないばねの付勢力に抗して僅かに時計方向へ回転させ始めている。そのため、この状態から後羽根用駆動部材12がなおも反時計方向へ回転させられると、被係止部12aと係止部16aとの接触が解かれることになって、後羽根用係止部材16は、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられ、係止部16aによる被係止部12aの係止可能状態になる。図7は、そのようにして、後羽根用駆動部材12の方も、後羽根用係止部材16によって係止可能になった状態を示したものであるが、このときには、先羽根用駆動部材11も後羽根用駆動部材12も、先羽根用係止部材15と後羽根用係止部材16に係止されていないので、各駆動部材11,12の被係止部11a,12aと各係止部材16,16の係止部15a,16aとは離れている。
最後に、図6の状態から、カメラ本体側の部材によって、セット操作部材14が時計方向へ回転させられると、セット操作部材14の押動ピン14dが、図5の位置にあるブレーキ部材32の先端を押し、ブレーキ部材32を時計方向へ回転させる場合を説明する。本実施例の場合には、図5からも分かるように、セット操作部材14の回転軸である軸8bと、ブレーキ部材32の回転軸である軸6gとは同軸上に配置されていない。また、押動ピン14dによって押されるブレーキ部材32の部位は、その平面形状が曲線に形成されている。そのため、ブレーキ部材32は、時計方向へ回転させられると、僅かに回転させられたところで、その先端が押動ピン14dの作動軌跡外へ逃がされ、停止することになる。そして、その後も、セット操作部材14は時計方向へ回転し、上記のようなセット操作を行うことになる。
このようにして、セット操作部材14が、図7に示された位置まで回転させられると、図示していないカメラ本体側の部材によって与えられていた回転力が喪失される。そのため、セット部材13は、図示していない復帰ばねの付勢力によって時計方向へ回転し得るようになり、その被押動部13aがローラ14cを押して、セット操作部材14を反時計方向へ回転させていく。そして、後羽根用駆動部材12が、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力によって追従し、その被係止部12aが後羽根用係止部材16の係止部16aによって係止されると、セット部材13のローラ13cが後羽根用駆動部材12のローラ12bから離れてゆき、続いて、先羽根用駆動部材11が、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力によって追従し、その被係止部11aが先羽根用係止部材15の係止部15aによって係止されると、セット部材13のローラ13bも先羽根用駆動部材11のローラ11bから離れてゆく。
また、セット操作部材14が、上記のように図7の位置から反時計方向へ回転させられていくと、そのローラ14eがホールド補助部材27の押圧力を解いていく。そのため、ホールド補助部材27は、連結ばね29の付勢力と離反ばね30の付勢力とによって追従し、その被係止部27cがレリーズ部材35の係止部35aによって係止される。しかしながら、その係止状態においては、ホールド補助部材27の折曲部27bは、未だホールド部材26の当接部26bに接触していない。更に、セット操作部材14が、上記のように図7の位置から反時計方向へ回転させられていくと、押動ピン14dが上地板6の長孔6iから出て行くことになるが、このときには、ブレーキ部材32の先端が押動ピン14dの作動軌跡外にあるため、ブレーキ部材32は回転させられない。そして、その後、セット操作部材14が棚板8の折曲部8aに当接すると、セット部材13とセット操作部材14の回転が停止する。図1及び図2は、そのようにしてセット作動が完了した状態を示したものであり、この状態が次の撮影の待機状態である。
尚、本実施例の場合には、本発明を、銀塩フィルムカメラにもデジタルカメラにも採用することのできる二つのシャッタ羽根(先羽根と後羽根)を備えたフォーカルプレンシャッタとして構成したものである。しかしながら、本実施例の構成部材のうち、アーム36,37と羽根38〜41とからなる先羽根と、先羽根用駆動部材11と、先羽根用係止部材15と、先羽根用解除部材22と、先羽根用の電磁石17とを取り外した構成にすれば、デジタルカメラにだけ採用することの可能な一つのシャッタ羽根を備えたフォーカルプレンシャッタとすることができる。また、本実施例の場合には、一つのシャッタ羽根が4枚の羽根を備えているが、羽根の枚数は、1枚だけであってもよいし、4枚以外の複数枚であっても構わない。
また、本実施例の場合には、カメラ本体側の部材との連動関係があって、セット部材13とセット操作部材14を別部材として構成しているが、特にシャッタ羽根を一つだけ備えたフォーカルプレンシャッタとする場合などには、それらを一つの部材として構成することも可能である。また、本実施例の場合には、ホールド部材26とホールド補助部材27とを別部材として構成しているが、部品加工や組立加工の精度をよくすれば、それらを一つの部材として構成することも可能である。また、本実施例の場合には、ホールド部材26のストッパを、上地板6に形成した折り曲げ状のストッパ部6jとしているが、このようなストッパ部を、カバー板7側に設けるようにしても構わないし、別部材として、上地板6やカバー板7などに取り付けるようにしても構わない。更に、本実施例の場合には、摩擦付与部材として金属製の板ばね33を採用することを前提にしているが、それを合成樹脂製にしたり、繊維材料を採用した他の摩擦板にしたりしても構わない。