JP4698887B2 - デジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、デジタルカメラ用のフォーカルプレンシャッタに関する。
【0002】
【従来の技術】
デジタルカメラに採用されるフォーカルプレンシャッタには、フィルム使用のカメラに採用されているフォーカルプレンシャッタと同様に、夫々の羽根室内に配置されていて先羽根(群)及び後羽根(群)と称されている二つのシャッタ羽根を備えており、撮影時には、それらを所定の時間間隔で順に作動させ、それらによって形成されるスリットにより、長方形をした撮像面の一方の長辺から他方の長辺に向けて、連続的に露光していくようにしたタイプのものと、シャッタ羽根を一つしか備えておらず、通常は撮像面を被写体光にさらしておき、撮影が終了するときだけ一時的に撮像面を覆うようにしたタイプのものとが知られている。
【0003】
また、いずれのタイプのものであっても、夫々のシャッタ羽根は、通常、シャッタ地板に対して各々の一端を回転可能に取り付けられている複数のアームと、それらに枢支されている短冊状の少なくとも1枚の羽根とによって、平行四辺形のリンク機構の応用機構として構成されており、また、各アームと羽根との枢支構成は、アームと羽根とに形成されている孔に対して、リベット部品である連結軸の先端を、アーム側から挿入して羽根に対してかしめている。そして、そのかしめ部は、羽根の摺動面から突き出ないようにされているが、連結軸の頭部は、アームから突き出るように構成されている。
【0004】
ところで、このような構成をしたシャッタ羽根は、外見上は、所定の平面上を規則的に作動して、所定の位置で何の問題もなく停止しているように見えるが、実際には、そのときどきによって作動方向とは異なる方向への複雑な動きを伴いながら作動しており、また、停止時には、強烈な衝撃を受け、アームや羽根が一時的に変形させられる。そのため、そのような作動を繰り返していると、シャッタ羽根を構成している部材間の摩擦によって、また、上記の連結軸の頭部とシャッタ地板との間のように、シャッタ羽根を構成している部材と羽根室を構成している部材との間の摩擦によって、部材相互の表面が削られて微粉末となり、CCD等の撮像装置の表面に付着してしまうことがある。
【0005】
更に、クイックリターン式ミラーを備えた一眼レフカメラの場合には、ミラーの作動によって、構成部材の摺接面や当接面から、上記のシャッタ羽根の場合と同様に、微粉末を発生させてしまうし、レンズ交換式カメラの場合には、レンズ交換時に外部からゴミが進入してしまうこともある。そして、そのような微粉末やゴミは、上記したシャッタ羽根を一つしか備えていないシャッタの場合であれば勿論のこと、先羽根(群)と後羽根(群)とを備えたシャッタの場合にも、多かれ少なかれ撮像装置の表面に飛来し、付着してしまうものもある。
【0006】
このようにして発生した微粉末や外部から進入したゴミは、撮像装置の表面に一旦付着してしまうと、その直後に撮影した影像だけではなく、それ以後に撮影する全ての像の一部に、影のようなものを発生させる原因となってしまう。そこで、このような現象が発生しないようにするために、シャッタ羽根にワイパー手段を取り付け、シャッタ羽根が作動するたびに、そのワイパー手段が撮像装置の表面を全面的且つ確実に拭くようにし、そこに付着している微粉末やゴミを完全に拭き払ってしまうようにした構成が本件出願人から提案されている(特開2002−156685号)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように、シャッタ羽根が作動する際に、常に、ワイパー手段が確実に撮像装置の表面を拭くように構成すると、露光作動時においても、そのような機能を発揮し摩擦力を発生させることになるため、シャッタ羽根を高速で作動させたい場合には、必ずしも有利とは言えない。また、先羽根(群)と後羽根(群)とを備えたシャッタの場合には、ワイパー手段は、撮像装置側に配置されたシャッタ羽根(群)にだけ設けられることになるから、露光作動時における先羽根(群)の作動速度と後羽根(群)の作動速度との調整(露光時間の調整)が極めて面倒になる。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、撮像装置の被写体側の面に付着した微粉末やゴミなどを除去するためにワイパー手段を設けているシャッタ羽根が、露光作動時には高速で作動し得るようにしたデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタは、各々の略中央部に被写体光路用の開口部を有していて一方を被写体側に配置し他方を撮像装置側に配置して両者の間に羽根室を形成している二つの板部材と、前記羽根室内に配置されていて前記開口部を開閉するシャッタ羽根と、前記撮像装置の受光面を拭くために前記シャッタ羽根に取り付けられていワイパー手段と、前記羽根室外において前記二つの板部材のうちの一つに対し回転可能に取り付けられていてその取り付けられている板部材と略平行になるように形成された張出部と前記羽根室内で前記シャッタ羽根に連結された駆動ピンとを有している駆動部材と、前記駆動部材から見て前記駆動部材が取り付けられている板部材とは反対側において前記駆動部材の回転軸の周りに嵌装されたコイルばねであって撮影時において前記シャッタ羽根を作動させるために前記駆動部材を回転させる駆動ばねと、突起部を有していて前記羽根室外において前記駆動部材が取り付けられている板部材に対し回転可能に取り付けられておりセット作動時には初期段階において該突起部が前記張出部を押して前記駆動部材を前記回転軸の軸方向へ変位させ前記駆動ピンと前記シャッタ羽根との連結部を前記撮像装置側に移動させることによって前記ワイパー手段を前記二つの板部材のうち前記撮像装置側に配置された板部材に接触させその後前記駆動部材を前記駆動ばねの付勢力に抗して回転させることによって前記ワイパー手段に前記撮像装置の受光面を拭かせるセット部材と、を備えているようにする。
【0010】
また、本発明のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいては、前記駆動部材が筒部を有していて、該筒部を、前記二つの板部材のうち被写体側に配置された板部材の軸に回転可能に嵌合させ、該板部材とは反対側において該筒部の周りには前記駆動ばねが嵌装され、該軸には、該板部材と前記駆動部材との間において、前記駆動部材を該軸の軸方向へのみ付勢するコイルばねが嵌装されているようにしてもよい。
【0011】
また、本発明のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいては、前記二つの板部材のうち前記撮像装置側に配置されている板部材は、前記開口部の周辺部近傍から前記開口部に向けて斜めに形成されている傾斜部を設けていて、前記開口部の形成縁においてその羽根室側の面が前記撮像装置の受光面と略同じになるように構成されているようにすると、前記ワイパー手段が開口部の縁に引っかからず、シャッタ羽根の作動が円滑に行われる。
【0012】
また、本発明のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいては、前記シャッタ羽根が、前記開口部を開いているときには重畳状態となり前記開口部を閉じているときには展開状態となる複数枚の羽根を有していて、前記ワイパー手段は、最も前記撮像装置側に配置された羽根の前記撮像装置側の面に取り付けられているようにすると、シャッタの小型化が可能になる。
【0013】
また、本発明のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいては、前記二つの板部材のうち被写体側に配置されている板部材と、その板部材よりも被写体側に配置されたもう一つの板部材と、によって形成されている羽根室内に、もう一つのシャッタ羽根が配置されていて、二つのシャッタ羽根によって形成されるスリットにより、撮影が行われるように構成しても差し支えない。
【0014】
更に、本発明のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいては、前記ワイパー手段が、帯状をしていて、前記シャッタ羽根の開閉作動方向と直交する直線に沿って取り付けられているか又は該直線に対して所定の傾きを有する円弧状又は直線状の山型となるようにして取り付けられているようにすると、撮像装置の表面から除去した微粉末の処理が好適となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明するが、それらの実施例は、いずれも、フィルムを使用するカメラに用いられているフォーカルプレンシャッタと同様に、先羽根と後羽根との二つのシャッタ羽根を備えていて、それらのシャッタ羽根は、いずれも、複数のアームに対して複数枚の羽根を枢支した構成のフォーカルプレンシャッタである。そして、図1〜図10は第1実施例を示したものであって、図11は第2実施例を示したものである。尚、実施例間において、共通する部材,部位には同じ符号を付けてある。また、構成の説明にあたっては、被写体側を表面側と称し、撮像素子側を背面側と称することにする。
【0016】
先ず、図1〜図3及び図6を用いて第1実施例の構成を説明する。本実施例のシャッタ地板1(図1においては一点鎖線で図示)は、その略中央部に、長方形を横長にした開口部1aを形成している。また、シャッタ地板1の背面側に立設された軸1b,1c,1d,1eには、所定の間隔を空けて、中間板2と補助地板3が順に取り付けられ、シャッタ地板1と中間板2との間に先羽根の羽根室を形成し、中間板2と補助地板3との間に後羽根の羽根室を形成している。そして、中間板2と補助地板3は、シャッタ地板1と略同じ外形をしていて、それらにも、長方形を横長にした開口部2a,3aが形成されているが、開口部2aは開口部1aと同じ大きさであり、開口部3aはそれらより小さく、且つCCD等の撮像素子を備えた撮像装置4の受光面より若干大きくなっている。
【0017】
また、図2から分かるように、補助地板3は、開口部3aの周辺部近傍に傾斜部3bを有しており、開口部3aの形成縁においては、その羽根室側の面が撮像装置4の被写体側の面と略同じになるように構成されている。尚、図1においては、各羽根室内の構成を分かりやすくするために、シャッタ地板1の独自の外形形状部分を一点鎖線で示し、中間板2は左側の約半分を破断して示してある。
【0018】
シャッタ地板1には、円弧状の長孔1f,1gが形成されており、また、表面側と背面側の両方に共通の軸1h,1iと、背面側だけの軸1j,1kが立設されている。また、シャッタ地板1の表面側には、開口部1aの左側の領域にシャッタ制御機構5が取り付けられているが、図2においてはブロックとして一点鎖線で示してある。そして、そのシャッタ制御機構5のうち、本実施例において重要な構成となる駆動機構(駆動部材,セット部材など)については、図3及び図6を用いて具体的に後述する。
【0019】
次に、シャッタ地板1の背面側に取り付けられている先羽根と後羽根の構成を説明するが、既に述べたように、本実施例においては、先羽根も後羽根も、複数枚の羽根を有している。そこで、先ず、先羽根は、シャッタ地板1の背面側の軸1h,1jに回転可能に取り付けられた二つのアーム6,7と、それらの先端に向けて順に枢支された4枚の羽根8,9,10,11とで構成されている。そして、最先端に枢支され且つ最もシャッタ地板1側に配置された羽根11がスリット形成羽根であり、アーム6には、長孔6aが形成されている。
【0020】
他方、後羽根は、構成が先羽根と全く同じであるが、先羽根を裏返した状態で配置されている。即ち、この後羽根は、シャッタ地板1の背面側の軸1i,1kに回転可能に取り付けられた二つのアーム12,13と、それらの先端に向けて順に枢支された4枚の羽根14,15,16,17とで構成されていて、最先端に枢支され且つ最も補助地板3側に配置された羽根17がスリット形成羽根となっている。そして、そのスリット形成羽根17の補助地板3側の面には、斜線で示すように、植毛材,多孔質材などの収縮性・弾力性のある材料で製作されたワイパー部材17aが、スリット形成縁に沿って直線的に取り付けられている。また、アーム12には、長孔12aが形成されている。
【0021】
次に、図3及び図6を用いてシャッタの駆動機構を説明するが、図6においては中間板2の図示が省略されている。上記したように、シャッタ地板1の軸1h,1iはシャッタ地板1の表面側にも立設されている。また、シャッタ地板1の表面側には軸1mが立設されている。そして、それらの軸1h,1i,1mの先端には、支持板18とプリント配線板19が重ねて取り付けられており、図3においては、そのプリント配線板19の外形を二点鎖線で示してある。また、この支持板18とプリント配線板19は、軸1mに対しては、それらの孔を嵌合させているだけであるが、軸1h,1iに対しては、それらの先端にビス止めされている。このような取付け方は周知であるが、図6にはビス20によって軸1iに取り付けられた状態が示されている。
【0022】
上記の軸1hには先羽根用駆動部材21が回転可能に取り付けられている。そして、この先羽根用駆動部材21には、駆動ピン21aとローラ21bが設けられていて、背面側に設けられている駆動ピン21aは、シャッタ地板1の長孔1fを貫通し、アーム6の長孔6aに嵌合している。また、この先羽根用駆動部材21には先羽根用電磁石に吸着される鉄片部材が取り付けられている。更に、この先羽根用駆動部材21は先羽根用駆動ばねによって反時計方向へ回転するように付勢されている。しかし、それらの電磁石,鉄片部材,駆動ばねの構成は周知であり、且つ本発明とは直接関係のない構成であるため、その図示と詳細な説明を省略する。
【0023】
また、上記の軸1iには後羽根用駆動部材22が回転可能に取り付けられている。そして、後羽根用駆動部材22の背面側に設けられた駆動ピン22aは、シャッタ地板1の長孔1gを貫通し、アーム12の長孔12aに嵌合している。また、この後羽根用駆動部材22の背面側には、被押動部22bが設けられ、その先端には径方向へ張り出すようにして張出部22cが形成されている。更に、後羽根用駆動部材22の表面側には、図6に示されているように、取付部22dが設けられており、そこに、図示していない周知の後羽根用電磁石に吸着される鉄片部材24が取り付けられている。そして、この取付部22dと鉄片部材24は、先羽根用駆動部材21の場合と同様に、図3においては省略されている。
【0024】
図6において、軸1iは、シャッタ地板1の表面側においては、支持板18側の先端が最小径となっており、そこにラチェット部材25が回転可能に取り付けられている。このラチェット部材25の形状は周知であって、外周にラチェット歯25aが形成されており、支持板18に設けられた図示していないラチェット爪に噛合して、一方方向への回転を係止されるようになっている。また、軸1iに嵌合している後羽根用駆動部材22の筒部の周囲には、コイルばねである後羽根用駆動ばね26が緩く嵌装されており、一端を後羽根用駆動部材22のばね掛け部(図示せず)に掛け、他端をラチェット部材25の中空部内でばね掛け部(図示せず)に掛けることによって、図3において後羽根用駆動部材22を反時計方向に付勢している。そして、上記した先羽根用駆動部材21の方にも、図示していないが、このような構成が採用されている。
【0025】
本実施例の後羽根用駆動部材22は、周知の後羽根用駆動部材と異なる構成をしている。その一つは、上記のように、被押動部22bの先端に張出部22cが形成されていることである。二つ目は、図6から分かるように、駆動ピン22aに二つのフランジ部22eが形成されていて、それらの間にアーム12を挟持していることである。そのため、駆動ピン22aが、図6において上方へ移動した場合には、アーム12も上方へ引き上げられる構成となっている。更に、三つ目は、後羽根用駆動部材22の背面側に筒部22fが形成されていて、その内部において、コイルばね27が、軸1iに緩く嵌装されていることである。しかし、このコイルばね27は、フリーな状態で嵌装されており、ばね掛け部には掛けられていない。
【0026】
シャッタ地板1の軸1mには、セット部材23が回転可能に取り付けられている。図3に示されているように、このセット部材23は、周知のセット部材と同様に、押動部23a,23bと被押動部23cとを有しているが、押動部23bの背面側に突起部23dを有している点で周知のセット部材とは異なっている。この突起部23dの具体的な形状は、図3を下側から見た場合に、舳先を左側に向けた(図6においては舳先が右側を向いている)舟形をしていて、左側の約半分が傾斜面23d1になっている。
【0027】
そして、セット部材23が反時計方向へ回転されてその舳先が張出部22cに接触してからは、コイルばね27を圧縮して、後羽根用駆動部材22をシャッタ地板1側へ移動させるようになっている。図6は、そのようにして後羽根用駆動部材22をシャッタ地板1側へ移動させた状態を示している。尚、図3においては、セット部材23は、図示していない復帰ばねの付勢力によって時計方向へ回転され、図示していないストッパによって停止させられた状態となっている。セット部材23については、以後、この位置を初期位置ということにする。
【0028】
次に、本実施例の作動を説明する。図1〜図3は、露光作動終了直後の状態を示したものである。そのため、撮像装置4の受光面は、後羽根の4枚の羽根14〜17によって覆われており、先羽根の4枚の羽根8〜11は重畳されて上方位置に格納状態となっている。また、本実施例の場合には、この状態は、カメラの不使用時における電源オフの状態と同じである。従って、電源オフの状態においては、被写体光が遮断され、撮像素子の光電変換性能の劣化が抑制されるようになっている。
【0029】
そこで、前回の撮影が終了したときか、カメラの使用に際して電源がオンにされた場合には、図3において、図示していないカメラ本体側の部材が、セット部材23の被押動部23cを押し、図示していない復帰ばねの付勢力に抗して、セット部材23を反時計方向へ回転させる。そのため、先羽根用駆動部材21は、セット部材23の押動部23aによってローラ21bを押され、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して時計方向へ回転させられ、その駆動ピン21aによってアーム6を時計方向へ回転させる。その結果、先羽根の4枚の羽根8〜11は相互の重なり量を小さくしつつ下方へ作動を開始する。
【0030】
先羽根用駆動部材21が回転を開始した後に、今度は、後羽根用駆動部材22が、その被押動部22bをセット部材23の押動部23bによって押され、後羽根用駆動ばね26(図6参照)の付勢力に抗して時計方向へ回転させられることになるが、セット部材23の押動部23bが被押動部22bに当接する前に、セット部材23の突起部23dがコイルばね27(図6参照)を圧縮して後羽根用駆動部材22をシャッタ地板1側へ移動させているため、後羽根用駆動部材22が図4の状態から時計方向へ回転を開始するときには、その駆動ピン22aがアーム12を補助地板3側へ寄せ、同時に4枚の羽根14〜17も寄せて、ワイパー部材17aを補助地板3に接触させている。
【0031】
このようにして、後羽根用駆動部材22が時計方向へ回転を開始させられると、その駆動ピン22aがアーム12を時計方向へ回転させるので、後羽根の4枚の羽根14〜17は相互の重なり量を大きくしつつ下方へ作動を開始するが、このとき、スリット形成羽根17に取り付けられているワイパー部材17aは、補助地板3側に寄せられているので、撮像装置4の被写体側の面を拭き、付着していた微粉末を取り除いていく。図5及び図6は、そのようにして行われているセット作動の途中の状態を示したものである。
【0032】
その後、セット作動の最終段階になると、ワイパー部材17aは、撮像装置4の被写体側の面から離れ、その全面が補助地板3の羽根室側の面に接するようになるが、このとき、図2及び図6からも分かるように、ワイパー部材17aの作動範囲において、補助地板3の開口部3aの周辺部近傍には開口部3aに向けて斜めに形成された傾斜部3bが設けられていて、開口部3aの縁では、その羽根室側の面が撮像装置4の被写体側の面と略同じになっており、しかも、両者間の隙間が僅かしか空いていないことから、ワイパー部材17aは開口部3aの縁に引っかかることなく円滑に作動する。
【0033】
その後、先羽根の4枚の羽根8〜11が展開状態となって撮像装置4の前面を覆い、後羽根の4枚の羽根14〜17が重畳されて開口部1aの下方位置に格納されると、セット部材23の回転が停止させられてセット状態となる。その状態が図7に示されているが、このとき既に、セット部材23の突起部23dは、後羽根用駆動部材22の張出部22cとの接触を断っており、後羽根用駆動部材22は、コイルばね27の付勢力によって、図10に示すように上方へ移動した状態となっている。
【0034】
撮影を行なう場合には、カメラのレリーズボタンを押す。そうすると、先ず、図示していない先羽根用電磁石と後羽根用電磁石に通電されて、先羽根用駆動部材21に設けられた図示していない鉄片部材と、後羽根用駆動部材22に設けられた鉄片部材24とが、夫々吸着保持される。その後、カメラ本体側の部材がセット部材23の被押動部23cから退いていくことによって、セット部材23は、図示していない復帰ばねの付勢力によって時計方向へ回転され、初期位置へ復帰する。図8においては、そのようにして初期位置へ復帰した状態が実線で示されている。また、復帰の途中が二点鎖線で示されているが、この図から分かるように、セット部材23が復帰するときには、突起部23dの斜面部23d1が後羽根用駆動部材22の張出部22cに対向するので、突起部23dが張出部22cに接触することなく、初期位置へ復帰できるようになっている。
【0035】
このようにして、セット部材23が初期位置へ復帰すると、先羽根用電磁石に対する通電が断たれるため、先羽根用駆動部材21は、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられ、その駆動ピン21aによってアーム6を反時計方向へ回転させる。そのため、先羽根の4枚の羽根8〜11は、相互の重なり量を大きくしつつ上方へ作動していく。他方、先羽根用電磁石の通電が断たれてから所定時間後には、後羽根用電磁石に対する通電が断たれる。そのため、鉄片部材24に対する保持力が失われ、後羽根用駆動部材22が後羽根用駆動ばね26の付勢力によって反時計方向へ回転させられ、その駆動ピン22aによってアーム12を反時計方向へ回転させる。そのため、後羽根の4枚の羽根14〜17は、相互の重なり量を小さくしつつ上方へ作動していく。
【0036】
その結果、撮像装置4の撮像面が、先羽根のスリット形成羽根11と後羽根のスリット形成羽根17によって形成されるスリットにより、連続的に露光させていくことになるが、その露光作動の途中の状態が図9に示されている。このとき、後羽根用駆動部材22は、図10に示すように、コイルばね27によって上方へ移動された状態を維持しているため、駆動ピン22aによってアーム12も上方へ引き上げられている。そのため、スリット形成羽根17は、ワイパー部材17aが撮像装置4に強制的に接触させられないため、スムーズに作動していく。そして、その後、先羽根用駆動部材21が図示していないストッパによって停止され、続いて、後羽根用駆動部材22も図示していないストッパによって停止され、図1及び図2に示された状態となる。
【0037】
尚、上記においては、図1の状態がカメラの不使用時における電源オフの状態と同じであると説明したが、先羽根と後羽根とが両方ともセット位置にある状態を、カメラの不使用時における電源オフ状態としても差し支えない。また、上記の実施例は、光学ファインダを備えたカメラに適用した場合を想定して説明したが、電子ファインダを採用するカメラの場合には、セット時には、後羽根のみをセット位置へ作動させ、カメラのレリーズによって先羽根をセット位置へ作動させて撮像装置4を覆い、その後に、上記のような露光作動を行わせるようにしても差し支えない。
【0038】
次に、図11を用いて第2実施例を説明する。本実施例は、第1実施例における直線状をしたワイパー部材17aの代わりに、円弧状の山型をしたワイパー部材17bを、後羽根のスリット形成羽根17に取り付けたものであり、ワイパー部材17bの材料は、第1実施例におけるワイパー部材17aの場合と同じである。また、図11は、上記の図9と同じに、露光作動の途中の状態を示したものである。
【0039】
このような本実施例のワイパー部材17bによれば、微粉末が比較的多く拭い集められた場合に、露光作動中に両側へ振り分けられて落下するので、撮像装置の表面を傷つけたりする可能性が少なくなり、且つ落下途中で撮像装置4の表面に再度付着する可能性も少なくなる。従って、円弧状ではなく直線状の山型(切妻式の屋根型)にしても同じである。また、本実施例のワイパー部材17bは、このようになっているが、本発明のワイパー手段は、第1実施例のワイパー部材17aや本実施例のワイパー部材17bの態様に限定されず、本実施例のワイパー部材17bを逆向き(凸面を下向き)にして取り付けるなど、種々の態様が考えられる。尚、本実施例のその他の構成と作動は、第1実施例の場合と全く同じであるから、それらについての説明は省略する。
【0040】
尚、上記の各実施例においては、先羽根と後羽根が各々4枚の羽根を備えているが、本発明は、羽根の枚数に制限がなく、各々1枚であっても差し支えない。また、上記の各実施例においては、シャッタ地板1と中間板2との間に先羽根の羽根室を形成し、中間板2と補助地板3との間に後羽根の羽根室を形成しているが、シャッタの構成によっては、シャッタ地板1と中間板2との間に後羽根の羽根室を形成し、中間板2と補助地板3との間に先羽根の羽根室を形成したものもある。従って、そのような構成をしている場合には、上記のワイパー部材は、先羽根のスリット形成羽根に取り付けられることになる。更に、デジタルカメラ用のフォーカルプレンシャッタとしては、シャッタ羽根を一つしか備えていないものも知られているが、本発明は、そのようなシャッタにも適用することが可能である。
【0041】
また、上記の各実施例は、図2に示すように、シャッタ制御機構5を、シャッタ地板1の表面側に取り付けるものとして説明した。しかしながら、デジタルカメラの場合は、補助地板3の背面側にロールフィルムを配置しなくて済むため、そのようなシャッタ制御機構5をその背面側に取り付けることが可能である。また、そのように構成すると、光軸に沿った撮像装置4の厚さ分だけ、カメラ全体の厚さを薄くする余地が生まれ、また、それだけカメラの設計に自由度が増すということにもなるが、本発明も、そのように構成することが可能である。そして、そのようにした場合には、後羽根用駆動部材22を、図10において、逆さまにして補助地板3に取り付けることになるため、上記の実施例におけるコイルばね27は不要となり、セット作動時には、セット部材23によって、後羽根用駆動ばね26を圧縮しながら、後羽根用駆動部材22を図10の下方へ移動させるようになる。
【0042】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、シャッタ羽根がセット作動するときだけ、ワイパー手段が撮像装置の表面を積極的に拭くことで微粉末を好適に除去するようにし、撮影時に露光作動するときには、意図してその機能を果たさなくてもよいように構成したから、シャッタ羽根の作動速度を低下させなくて済むという特徴を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】主に、先羽根と後羽根の露光作動終了直後の状態を示す被写体側か視た第1実施例の平面図である。
【図2】図1の中央縦断面図である。
【図3】図1の状態における駆動機構を示した平面図である。
【図4】駆動機構が図3の状態からセット作動を開始した直後の状態を示した平面図である。
【図5】駆動機構が図4の状態よりも更にセット作動を行った状態を示した平面図である。
【図6】セット作動の終盤における第1実施例の要部を、一部断面で示した側面図である。
【図7】第1実施例における駆動機構のセット完了状態を示した平面図である。
【図8】カメラのレリーズ後であって各駆動部材が露光作動を開始する直前に、セット部材が図7に示したセット位置から初期位置へ復帰した状態を示す平面図である。
【図9】先羽根と後羽根が露光作動を行っている途中の状態を示した第1実施例の平面図である。
【図10】図9と同じ状態における第1実施例の要部を、一部断面で示した側面図である。
【図11】図9と同じ状態における第2実施例の平面図である。
【符号の説明】
1 シャッタ地板
1a,2a,3a 開口部
1b,1c,1d,1e,1h,1i,1j,1k,1m 軸
1f,1g,6a,12a 長孔
2 中間板
3 補助地板
3b 傾斜部
4 撮像装置
5 シャッタ制御機構
6,7,12,13 アーム
8,9,10,11,14,15,16,17 羽根
17a,17b ワイパー部材
18 支持板
19 プリント配線板
20 ビス
21 先羽根用駆動部材
21a,22a 駆動ピン
21b ローラ
22 後羽根用駆動部材
22b,23c 被押動部
22c 張出部
22d 取付部
22e フランジ部
22f 筒部
23 セット部材
23a,23b 押動部
23d 突起部
23d1 傾斜面
24 鉄片部材
25 ラチェット部材
25a ラチェット歯
26 後羽根用駆動ばね
27 コイルばね

Claims (6)

  1. 各々の略中央部に被写体光路用の開口部を有していて一方を被写体側に配置し他方を撮像装置側に配置して両者の間に羽根室を形成している二つの板部材と、前記羽根室内に配置されていて前記開口部を開閉するシャッタ羽根と、前記撮像装置の受光面を拭くために前記シャッタ羽根に取り付けられていワイパー手段と、前記羽根室外において前記二つの板部材のうちの一つに対し回転可能に取り付けられていてその取り付けられている板部材と略平行になるように形成された張出部と前記羽根室内で前記シャッタ羽根に連結された駆動ピンとを有している駆動部材と、前記駆動部材から見て前記駆動部材が取り付けられている板部材とは反対側において前記駆動部材の回転軸の周りに嵌装されたコイルばねであって撮影時において前記シャッタ羽根を作動させるために前記駆動部材を回転させる駆動ばねと、突起部を有していて前記羽根室外において前記駆動部材が取り付けられている板部材に対し回転可能に取り付けられておりセット作動時には初期段階において該突起部が前記張出部を押して前記駆動部材を前記回転軸の軸方向へ変位させ前記駆動ピンと前記シャッタ羽根との連結部を前記撮像装置側に移動させることによって前記ワイパー手段を前記二つの板部材のうち前記撮像装置側に配置された板部材に接触させその後前記駆動部材を前記駆動ばねの付勢力に抗して回転させることによって前記ワイパー手段に前記撮像装置の受光面を拭かせるセット部材と、を備えていることを特徴とするデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
  2. 前記駆動部材が筒部を有していて、該筒部を、前記二つの板部材のうち被写体側に配置された板部材の軸に回転可能に嵌合させ、該板部材とは反対側において該筒部の周りには前記駆動ばねが嵌装され、該軸には、該板部材と前記駆動部材との間において、前記駆動部材を該軸の軸方向へのみ付勢するコイルばねが嵌装されていることを特徴とする請求項1に記載のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
  3. 前記二つの板部材のうち前記撮像装置側に配置されている板部材は、前記開口部の周辺部近傍から前記開口部に向けて斜めに形成されている傾斜部を設けていて、前記開口部の形成縁においてその羽根室側の面が前記撮像装置の受光面と略同じになるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
  4. 前記シャッタ羽根が、前記開口部を開いているときには重畳状態となり前記開口部を閉じているときには展開状態となる複数枚の羽根を有していて、前記ワイパー手段は、最も前記撮像装置側に配置された羽根の前記撮像装置側の面に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
  5. 前記二つの板部材のうち被写体側に配置されている板部材と、その板部材よりも被写体側に配置されたもう一つの板部材とによって形成されている羽根室内に、もう一つのシャッタ羽根が配置されていて、二つのシャッタ羽根によって形成されるスリットにより、撮影が行われるようにしたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
  6. 前記ワイパー手段が、帯状をしていて、前記シャッタ羽根の開閉作動方向と直交する直線に沿って取り付けられているか又は該直線に対して所定の傾きを有する円弧状又は直線状の山型となるようにして取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
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