JP3887468B2 - カメラ用フォーカルプレンシャッタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、撮影に際し、先羽根群と後羽根群とを同一方向へ順次作動させ、両羽根群のスリット形成羽根によって形成されたスリットによりフィルムを露光するようにしたカメラ用のフォーカルプレンシャッタに関する。
【0002】
【従来の技術】
カメラの小型化及び高性能化に伴い、フォーカルプレンシャッタに対しても小型化と高速化が要求されている。周知のように、この種のシャッタにおいて小型化を図るためには、各羽根群の羽根の枚数を多くするのが効果的であり、また、高速化を図るためには、各羽根群の重量を減じるのが効果的である。しかし、小型化を図るべく羽根の枚数を増やすと、展開状態(露光開口を覆っている状態)における羽根同志の重なり面の数が増えることから、羽根群全体の重量が大きくなって、高速化の要求には逆行してしまうことになる。従って、小型化と高速化の両方を満足させるためには、各羽根群の重量を減じることが共通の課題となってくる。
【0003】
そこで、そのような課題を解決するためには、羽根の平面積を小さくするか、羽根の厚さを薄くするのが最も簡単である。しかし、羽根の面積を小さくすると、展開状態における羽根同志の重なり面積が少なくなって、その重合部からの漏光が問題になる。他方、羽根の厚さを余り薄くすると、羽根の平面性を確保するのが難しくなり、その上、カメラの不使用時における振動によって展開状態にある羽根が撓み易くなるので、やはり、羽根の重合部からの漏光が問題になる。しかも、最近においては高感度フィルムが好んで使用されるようになってきたので、このような漏光に対する対策が益々重要になっている。
【0004】
そのような漏光対策に好適な機能を備えているフォーカルプレンシャッタが、実用新案登録第2505410号公報に開示されている。この従来例の場合には、先羽根群は先羽根用駆動部材(上記公報においては先駆動部材。以下、括弧内の記載は同じ趣旨。)に連結されているが、後羽根群は、後羽根用駆動部材(第2後駆動部材)に連結されておらず、後羽根用作動部材(第1後駆動部材)に連結されており、その後羽根用作動部材(第1後駆動部材)は、露光作動時にのみ、後羽根用駆動部材(第2後駆動部材)によって作動させられるようになっている。
【0005】
そして、撮影終了直後に、フィルムの巻き上げに連動して各駆動部材(先駆動部材と第2後駆動部材)が、初期位置から作動するセット部材(チャージ部材)によってセット作動をさせられると、先羽根群はセット位置へ作動するが、後羽根群は、後羽根用作動部材(第1後駆動部材)が自己の作動習性に抗して、当初は係止部材(保持部材)に係止され、次にはセット部材(チャージ部材)に係止されることによって、セット位置へは作動しないようになっている。従って、カメラの不使用時には、露光開口を、先羽根群と後羽根群とによって二重に覆っていることになり、上記のような漏光の心配がなくなる。そこで、このようなタイプのシャッタを、通常は二重遮光式のシャッタと称している。
【0006】
そして、次の撮影が行われるとき、レリーズの初期段階において、先ず、セット部材(チャージ部材)が初期位置へ復帰することによって、後羽根用作動部材(第1後駆動部材)に対する係止が解け、後羽根群は後羽根用作動部材(第1後駆動部材)と共に露光開口から退き、露光作動開始位置に達する。その後に、先羽根用駆動部材(先駆動部材)と後羽根用駆動部材(第2後駆動部材)は、順次、釈放され、先羽根群は先羽根用駆動部材(先駆動部材)によって、直接、露光作動を行わされ、後羽根群は、後羽根用作動部材(第1後駆動部材)が後羽根用駆動部材(第2後駆動部材)に作動させられることによって露光作動を行わされるようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のように、カメラの不使用時には、露光開口を先羽根群と後羽根群とによって覆っている二重遮光式のフォーカルプレンシャッタの改良に関するものである。
【0008】
ところで、このようなフォーカルプレンシャッタは、遮光機能は優れているものの、後羽根群に複雑な作動を行わせるため、構造が複雑になって、コストの点では問題がある。即ち、上記の従来例において、後羽根群の駆動部材を、後羽根用駆動部材と後羽根用作動部材に分離していることは止むを得ないとしても、セット時に後羽根用作動部材を係止しておくために、セット部材と係止部材の両方を関与させているため、部品点数が増えてしまうという問題点がある。また、セット作動時に、セット部材が後羽根用作動部材の係止位置に達した後、先羽根用駆動部材によって、係止部材による後羽根用作動部材の係止を解除するようにしておるので、セット部材と後羽根用作動部材との間、係止部材と後羽根用作動部材との間、係止部材と先羽根用駆動部材との間に、夫々所定の関係が得られるようにしなければならず、組立作業が面倒になるという問題点がある。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、上記した係止部材のような特別な部材をを設けることなく、低コストで二重遮光機能が得られるようにしたカメラ用フォーカルプレンシャッタを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタは、各々が主アームを含む二つのアームによって複数枚の羽根を枢支しており該主アームの往復回動によって露光用開口の開閉作動を行う先羽根群及び後羽根群と、先羽根群の主アームに連結されていて該主アームと同軸心上で往復回動が可能であり露光作動時には先羽根用駆動ばねによって回動される先羽根用駆動部材と、後羽根群の主アームに連結されていて該主アームと同軸心上で往復回動が可能な後羽根用作動部材と、後羽根群と後羽根用作動部材とをセット方向に作動させる付勢ばねと、後羽根群の主アームと同軸心上で往復回動が可能であって露光作動時に後羽根用駆動ばねによって回動され後羽根用作動部材を押動し回動させる後羽根用駆動部材と、セット時に初期位置から作動して先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材とを前記各駆動ばねに抗してセット位置へ回動させる前に係合部によって前記付勢ばねによる後羽根用作動部材の回動を阻止し先羽根用駆動部材の露光作動の直前に初期位置へ復帰することによって後羽根用作動部材と後羽根群のセット位置への作動を可能にするセット部材とを備えているようにする。
また、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいては、好ましくは、前記セット部材は往復回動が可能であって、該セット部材には、後羽根用駆動部材を押してセット位置へ作動させる押動部と、後羽根用作動部材のセット方向への回動を阻止する前記の係合部とが、セット部材の回動軸の略同じ径方向位置において、該回動軸の軸方向に二段に形成されていて、且つ該係合部が該押動部よりもセット作動方向に張り出して形成されているようにする。
更に、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいては、好ましくは、前記後羽根群の主アームと後羽根用作動部材とが一体的に構成されているようにする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図1〜図5に示した実施例によって説明する。尚、図1〜図3の平面図は、図1が露光作動終了直後の状態を示し、図2がセット状態を示し、図3が露光作動開始直前の状態を示したものである。また、図4は主な部材の平面図であって、図4(a)は後羽根用駆動部材、図4(b)は後羽根用作動部材、図4(c)はセット部材を示したものである。更に、図5は後羽根用駆動部材と後羽根用作動部材の軸支構成を示した断面図である。
【0012】
先ず、本実施例の構成から説明する。シャッタ地板1の略中央部には、周知のようにして開口部1aが形成されている。但し、開口部1aから右側の構成は、本発明にとっては特に重要ではないので、図示を省略してある。また、図示していないが、周知のようにして、シャッタ地板1の背面側(カメラ内においてはフィルム側)には、順に中間板と補助地板が取り付けられていて、シャッタ地板1と中間板の間には先羽根群の羽根室が、中間板と補助地板の間には後羽根群の羽根室が形成されている。更に、中間板と補助地板にも、開口部1aと類似の形状をした開口部が形成されていて、それらの三つの開口部を重ね合わせることにより、光軸を中心にした長方形の露光開口が形成されている。尚、補助地板については、その一部を図5に示し、符号2を付けてある。
【0013】
シャッタ地板1には、円弧状をした三つの孔1b,1c,1dが形成されており、それらのうち円弧状をした二つの孔1b,1cの下端縁には、平面形状がC字状をしていてゴム等の弾力性のある材料で製作された周知の緩衝部材3,4が取り付けられている。また、シャッタ地板1には、軸1e,1f,1g,1h,1iが立設されている。これらの軸のうち、軸1e,1f,1gはシャッタ地板1の表面側に立設され、軸1h,1iは背面側に立設されている。但し、軸1e,1fはシャッタ地板1を貫通して立設されており、背面側にも軸部を有している。そのことは、図5に示した軸1fの形状によって理解される。また、図示していないが、シャッタ地板1の表面側には、軸1e,1f,1gの先端には、シャッタ地板1と平行になるようにして、周知の支持板とプリント配線板が取り付けられている。
【0014】
シャッタ地板1の背面側に配置されている先羽根群は、二つのアーム5,6と2枚の羽根7,8で構成されており、アーム5,6は軸1e,1hに回転可能に取り付けられている。また、羽根7,8は、アーム5,6の異なる長さ位置に枢支されており、先端部に枢支された羽根7がスリット形成羽根となっている。更に、アーム5,6のうちアーム5が、後述する先羽根用駆動部材と連結する主アームであって、そのために長孔5aが形成されている。他方、後羽根群は、二つのアーム9,10と3枚の羽根11,12,13で構成されており、アーム9,10は、軸1f,1iに回転可能に取り付けられ、それらの異なる長さ位置に羽根11,12,13を枢支している。そして、羽根11がスリット形成羽根となっている。また、アーム9が、後述する後羽根用作動部材と連結する主アームであって、長孔9aが形成されている。
【0015】
シャッタ地板1の表面側において、軸1eには先羽根用駆動部材14が回転可能に取り付けられており、図示していないが、周知のようにして先羽根用駆動ばねによって時計方向へ回転するように付勢されている。この先羽根用駆動部材14は合成樹脂製であって、作動ピン14a,被押動部14b,取付部14cが設けられている。このうち、作動ピン14aは、シャッタ地板1に形成されている円弧状の孔1bを貫通し、アーム5の長孔5aに嵌合している。そして、この嵌合関係がガタつかず、先羽根用駆動部材14とアーム5が常に所定の連結状態で作動できるようにするために、アーム5は、ばね15によって、反時計方向へ回転するように付勢されている。尚、周知であるが、このばね15はアーム6に掛けてもよく、また、その付勢力は、上記した先羽根用駆動ばねよりも弱いことは言うまでもない。
【0016】
また、先羽根用駆動部材14の被押動部14bは、シャッタ地板1の表面側に一段下げて形成されている。これは、後述する作動説明から理解されるが、この先羽根用駆動部材14と後記のセット部材とが、互いに作動上干渉せず、被押動部14bにおいてのみ接触することができるようにするためである。更に、先羽根用駆動部材14の取付部14cには、鉄片部材16が取り付けられている。この鉄片部材16の取り付け方は周知であるため、図面上では簡略的に示してあるが、先羽根用駆動部材14のセット作動の最終段階において、鉄片部材16が図示していない電磁石に接触したとき、鉄片部材16の接触面が、取付部14c内に配置されている図示していないばねの力に抗して、取付部14c側に移動できるようにして取り付けられている。
【0017】
シャッタ地板1の軸1fには、後羽根用駆動部材17と後羽根用作動部材18が回転可能に取り付けられている。そして、これらの部材の平面形状は、夫々図4(a),図4(b)に示されており、それらの取り付け構成は図5から理解できるようにしてある。そこで先ず、取り付け構成から説明する。図5から明らかなように、後羽根用駆動部材17は、実際には、板部17Aと軸部17Bで構成されている。そして、軸部17Bには、シャッタ地板側から鍔部,大径部,中径部,小径部が形成されていて、後羽根用作動部材18は大径部に対して回転可能に嵌合させられている。また、中径部にはスペーサー19を嵌合させた後、板部17Aを嵌合させ、その板部17Aを軸部17Bと一体化させている。このようにして、後羽根用駆動部材17と後羽根用作動部材18とを相互に回転可能に取り付けてから、軸部17Bを軸1fに対して回転可能に嵌合させているわけである。
【0018】
このようにして取り付けられている後羽根用駆動部材17は、図示していないが、軸部17Bの小径部に緩く巻回された周知の後羽根用駆動ばねによって、図1において時計方向へ回転するように付勢されている。また、後羽根用駆動部材17には、被押動部17a,折曲部17b,取付部17cが形成されていて、取付部17cには、鉄片部材20が取り付けられている。そして、この鉄片部材20も、上記した鉄片部材16と同様にして取り付けられている。
【0019】
他方、後羽根用作動部材18には、作動ピン18aと、円弧面18b1 を有する係合部18bが設けられている。このうち、作動ピン18aは、シャッタ地板1に形成されている円弧状の孔1cを貫通して、アーム9の長孔9aに嵌合している。そして、この嵌合関係がガタつかず、後羽根用作動部材18とアーム9が常に所定の連結状態で作動できるようにするために、アーム9は、ばね21によって、反時計方向へ回転するように付勢されている。しかし、後述の作動説明から分かるが、このばね21は、その外にも、二重遮光機能にとって重要な役目を果たすようになっている。尚、ばね21はアーム10に掛けてあっても構わない。また、その付勢力は、上記した後羽根用駆動ばねよりも弱い。
【0020】
シャッタ地板1の軸1gには、セット部材22が回転可能に嵌合され、図示していないばねによって、反時計方向へ回転するように付勢されている。そして、このセット部材22には、図4(c)に示されているように、二つの押動部22a,22b,係合部22c,被押動部22dが形成され、背部にはピン22eが設けられている。このうち、押動部22aは先羽根用駆動部材14の被押動部14bと接触し、また、押動部22bは後羽根用駆動部材17の被駆動部17aに接触し得るようになっている。
【0021】
また、係合部22cは、押動部22bと、略同じ位置において二段に形成されているが、セット部材22の時計方向の回転方向に対しては、押動部22bより張り出すようにして形成されている。そして、この係合部22cは、後羽根用作動部材18の係合部18bに形成されている円弧面18b1 に接し得るようになっている。更に、ピン22eは、シャッタ地板1の円弧状の孔1dに挿入されており、孔1dの下端面に当接することによって、図示していないばねによるセット部材22の反時計方向への回転が阻止されるようになっている。
【0022】
次に、本実施例の作動を説明する。図1は、露光作動の終了直後の状態を示している。従って、先羽根群の羽根7,8は重畳されて、開口部1aの下方位置に格納されており、後羽根群の羽根11,12,13が展開状態となって開口部1aを覆っている。また、セット部材22は初期位置にあり、ピン22eは、シャッタ地板1の円弧状の孔1dの下端面に接触している。このようにして、露光作動が終了すると、フィルムの自動巻き上げに連動して、図示していないカメラ本体側の部材が、セット部材22の被押動部22dを下方へ押し、セット部材22を、図示していないばねの力に抗して時計方向へ回転させ、セット操作を行わせる。
【0023】
セット部材22は、このような時計方向へのセット作動において、先ず、押動部22aが被押動部14bを押し、先羽根用駆動部材14を図示していない先羽根用駆動ばねに抗して反時計方向へ回転させる。次に、押動部22bが被押動部17aを押し、後羽根用駆動部材17を図示していない後羽根用駆動ばねに抗して反時計方向へ回転させ始める。後羽根用駆動部材17が反時計方向へ回転すると、折曲部17bが後羽根用作動部材18の側面から退いて行くから、後羽根用作動部材18も、ばね21の付勢力によって反時計方向へ追従しようとするが、押動部22bが被押動部17aに接触したときには、既に係合部22cが、後羽根用作動部材18の係合部18bの作動軌跡内に進入しているので、後羽根用作動部材18は、円弧面18b1 が係合部22cに接触し、追従することができない。
【0024】
そのため、セット部材22は、係合部22cを円弧面18b1 に摺動させつつ、先羽根用駆動部材14と後羽根用駆動部材17だけを反時計方向へ回転させることになる。従って、このセット作動においては、先羽根群の羽根7,8は相互の重なり量を減じながら上方へ作動させられていくが、後羽根群の羽根11,12,13は、後羽根用作動部材18が反時計方向へ回転できないので、展開状態のまま開口部1aを覆っている。本実施例においては、このように、押動部22bと係合部22cが同じセット部材22の略同じ位置に形成されていて、係合部22cが押動部22bよりもセット作動方向に僅かに張り出して形成されているので、製作時における後羽根用駆動部材17と後羽根用作動部材18に対するセット部材22の位置決めが容易である。
【0025】
このようにして行われるセット作動は、先羽根用駆動部材14に設けられた鉄片部材16と、後羽根用駆動部材17に設けられた鉄片部材20が、夫々、図示されていない電磁石に接触した後、カメラ本体側の部材の作動が停止することによってセット部材22の回転が停止し、終了する。その状態が図2に示されている。そして、この状態は、カメラ本体側の部材がセット部材22の被押動部22dに接触したままでいるため、次の撮影が行われるまで維持されている。従って、カメラの不使用状態においては、開口部1a、即ち露光開口は、先羽根群の羽根7,8と後羽根群の羽根11,12,13によって二重に覆われていることになり、羽根相互の重合部からの漏光は実質的に問題がなくなってしまう。
【0026】
次の撮影に際して、カメラのレリーズボタンが押されると、その初期段階で電源スイッチが閉じ(カメラによってはレリーズボタンが押される前に電源スイッチが閉じているものもある)、図示していない各電磁石が通電状態となって、夫々、鉄片部材16,20を吸着する。その段階で、セット部材22の被押動部22dに接触していた図示していないカメラ本体側の部材が上方へ退いて行くので、セット部材22は、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転する。
【0027】
その過程において、押動部22a,22bが、先羽根用駆動部材14の被押動部14bと、後羽根用駆動部材17の被押動部17aから離れるが、上記のように鉄片部材16,20が各電磁石によって吸着されているので、先羽根用駆動部材14と後羽根用駆動部材17とは、図示していない先羽根用駆動ばねと後羽根用駆動ばねによっては露光作動を行えない。しかしながら、押動部22bが後羽根用駆動部材17の被押動部17aから離れた直後に、係合部22cと係合部18bとの係合が解かれるので、アーム9を付勢しているばね21によって、後羽根用作動部材18は反時計方向へ回転される。
【0028】
そして、この後羽根用作動部材18の回転は後先羽根用駆動部材17の折曲部17bに当接するまで行われるが、その間に、後羽根群の羽根11,12,13は、相互の重なりを大きくしつつ上方へ作動し、開口部1aから退いていく。このようにして、後羽根用作動部材18が折曲部17bに当接して停止し、後羽根群の羽根11,12,13が重畳状態となって、開口部1aの上方位置に格納される。他方、セット部材22は、その後、ピン22eが孔1dの下端面に当接することによって初期位置に復帰する。その状態が図3に示されている。そして、この状態が、先羽根群と後先羽根群との露光作動開始の直前状態ということになる。
【0029】
その後、自動焦点合わせ等の全ての準備作動が終了すると、その終了信号によって露光時間制御回路が作動し、先ず、先羽根用の電磁石に対する通電を断つと共に露光秒時のカウントを開始する。それにより、電磁石に鉄片部材16を吸着保持されていた先羽根用駆動部材14が、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力によって急速に時計方向へ回転する。そのため、先羽根群の羽根7,8は、開口部1aを覆っていた展開状態から下方へ作動され、隣接する羽根との相互の重なり量を大きくしながら開口部1aを開放していく。そして、各羽根が重畳状態となって開口部1aから完全に退いた後、先羽根用駆動部材14の作動ピン14aが緩衝部材3に当接し、衝撃を吸収されて停止する。
【0030】
先羽根群の露光作動が開始されてから所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの出力信号によって、今度は図示されていない後羽根用の電磁石に対する通電が断たれる。それによって、それまで鉄片部材20を電磁石に吸着保持されていた後羽根用駆動部材17が、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力によって急速に時計方向へ回転する。このとき、折曲部17bに押され、後羽根用作動部材18も急速に時計方向へ回転する。そのため、後羽根群の羽根11,12,13は、開口部1aの上方位置に格納されていた重畳状態から下方へ作動され、隣接する羽根との相互の重なり量を小さくしながら展開し、開口部1aを閉鎖していく。そして、開口部1aを完全に覆った段階において、後羽根用作動部材18の作動ピン18aが緩衝部材4に当接し、衝撃を吸収されて停止する。このような露光作動の終了直後の状態が図1に示された状態である。
【0031】
このように、本実施例によれば、後羽根群の駆動系を後羽根用駆動部材17と後羽根用作動部材18との二つの部材で構成することによって、他の部材を設けることなく二重遮光機能が得られるので、上記した従来例に比較して、可成りコストダウンを図ることができる。また、本実施例におけるセット部材22の構成によれば、上記したように、後羽根用駆動部材17と後羽根用作動部材18に対する位置調整が簡単であり、且つセット作動時における後羽根用作動部材18の抑止が確実に行える。
【0032】
尚、上記の実施例においては、ばね21が、孔9aと作動ピン18aとの嵌合ガタを無くすためと、後羽根群と後羽根用作動部材18を露光作動開始位置へ作動させるために用いられているが、本発明は、このばね21を、主に前者の目的に用い、後者の目的のためには、上記の従来例のようにして、もう一つのばねを、後羽根用駆動部材17と後羽根用作動部材18との間に、相互に引き合うようにして設けても差し支えない。また、本発明は、上記の実施例におけるアーム9と後羽根用作動部材18とを、合成樹脂で一部品として製作しても差し支えない。その場合には、軸1fに相当する軸を補助地板2に立設し、その軸に、その部品を嵌合させることになるので、そのためには、シャッタ地板1の一部を切除することになる。
【0033】
更に、上記の実施例においては、先羽根用駆動部材14と後羽根用駆動部材17に、夫々、鉄片部材16,20を取り付け、露光作動の開始位置において、先羽根用電磁石と後羽根用電磁石が、それらの鉄片部材16,20を直接吸着保持しているようにした所謂ダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタに適用した場合で説明した。しかしながら、本発明は、このようなタイプのフォーカルプレンシャッタに限定されるものではない。即ち、露光作動の開始位置において、先羽根用駆動部材14と後羽根用駆動部材17が、夫々、先羽根用係止部材と後羽根用係止部材によって機械的に係止されており、その係止を先羽根用電磁石と後羽根用電磁石によって順に解除するようにした所謂係止タイプのフォーカルプレンシャッタに適用することもできる。また、それらの係止を、露光時間制御回路や電磁石を用いず、機械的な遅延機構を用いて順に解除するようにしたシャッタにも適用することができる。
【0034】
【発明の効果】
上記のように、本発明によれば、従来よりも部品点数が少なく、組立調整も簡単になり、低コストで二重遮光機能が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の露光作動終了直後の状態を示した平面図である。
【図2】実施例のセット状態を示した平面図である。
【図3】実施例の露光作動開始直前の状態を示した平面図である。
【図4】実施例中における主な部材の平面図であって、夫々、図4(a)は後羽根用駆動部材を、図4(b)は後羽根用作動部材を、図4(c)はセット部材を示したものである。
【図5】実施例における後羽根用駆動部材と後羽根用作動部材の軸支構成を示した断面図である。
【符号の説明】
1 シャッタ地板
1a 開口部
1b,1c,1d 孔
1e,1f,1g,1h,1i 軸
2 補助地板
3,4 緩衝部材
5,6,9,10 アーム
5a,9a 長孔
7,8,11,12,13 羽根
14 先羽根用駆動部材
14a,18a 作動ピン
14b,17a,22d 被押動部
14c,17c 取付部
15,21 ばね
16,20 鉄片部材
17 後羽根用駆動部材
17A 板部
17B 軸部
17b 折曲部
18 後羽根用作動部材
18b,22c 係合部
18b1 円弧面
19 スペーサー
22 セット部材
22a,22b 押動部
22e ピン

Claims (3)

  1. 各々が主アームを含む二つのアームによって複数枚の羽根を枢支しており該主アームの往復回動によって露光用開口の開閉作動を行う先羽根群及び後羽根群と、先羽根群の主アームに連結されていて該主アームと同軸心上で往復回動が可能であり露光作動時には先羽根用駆動ばねによって回動される先羽根用駆動部材と、後羽根群の主アームに連結されていて該主アームと同軸心上で往復回動が可能な後羽根用作動部材と、後羽根群と後羽根用作動部材とをセット方向に作動させる付勢ばねと、後羽根群の主アームと同軸心上で往復回動が可能であって露光作動時に後羽根用駆動ばねによって回動され後羽根用作動部材を押動し回動させる後羽根用駆動部材と、セット時に初期位置から作動して先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材とを前記各駆動ばねに抗してセット位置へ回動させる前に係合部によって前記付勢ばねによる後羽根用作動部材の回動を阻止し先羽根用駆動部材の露光作動の直前に初期位置へ復帰することによって後羽根用作動部材と後羽根群のセット位置への作動を可能にするセット部材とを備えていることを特徴とするカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
  2. 前記セット部材は往復回動が可能であって、該セット部材には、後羽根用駆動部材を押してセット位置へ作動させる押動部と、後羽根用作動部材のセット方向への回動を阻止する前記の係合部とが、セット部材の回動軸の略同じ径方向位置において、該回動軸の軸方向に二段に形成されていて、且つ該係合部が該押動部よりもセット作動方向に張り出して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
  3. 前記後羽根群の主アームと後羽根用作動部材とが一体的に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
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