JP3977670B2 - カメラ用フォーカルプレンシャッタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シャッタ羽根が、シャッタ地板に枢着された複数のアームと、それらのアームの夫々に枢支された1枚以上の羽根で構成されているタイプのカメラ用フォーカルプレンシャッタに関する。
【0002】
【従来の技術】
カメラ用フォーカルプレンシャッタの中には、二つのシャッタ羽根(先羽根,後羽根などと称される)が、シャッタ地板を含む三つの板部材の間に構成された二つの羽根室に配置されていて、撮影に際しては、それらによって形成されるスリットが、方形をした撮像面を連続的に露光していくようにしたものが知られている。そして、この形式のフォーカルプレンシャッタは、銀塩カメラにもデジタルスチルカメラ(動画を撮れるものを含む)にも採用されている。また、一つのシャッタ羽根が、シャッタ地板を含む二つの板部材の間に構成された羽根室に配置されているものも知られているが、この形式のフォーカルプレンシャッタは、デジタルスチルカメラにだけ採用されている。
【0003】
そして、いずれの形式のフォーカルプレンシャッタの場合も、一つのシャッタ羽根は、シャッタ地板に枢着された複数のアームと、それらのアームの夫々に枢支された1枚以上の羽根とで構成されており、アームが所定の角度範囲で往復回転させられると、羽根が、撮像面を覆う位置と、撮像面の前面から退避した位置との間を作動するようになっている。また、そのように構成されたシャッタ羽根は、シャッタ地板に取り付けられていて所定の角度だけ往復回転する駆動部材に連動して作動させられるようになっているが、その駆動部材はシャッタ地板の羽根室外の面に取り付けられているため、シャッタ地板には貫通孔が形成されていて、駆動部材に設けられた駆動ピンがその貫通孔に挿入され、羽根室内で上記のアームの一つに連結されている。そして、その貫通孔は、駆動ピンが駆動部材の回転軸を中心にして往復作動することから、通常は略円弧状をした長孔として形成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、シャッタ地板の羽根室外の面には、上記した駆動部材のほかにも各種の構成部材が沢山取り付けられいるが、それらの殆どは、比較的上記の長孔の近傍位置に取り付けられている。また、それらの部材は、セット作動時や露光作動時において回転などをする作動部材であったり、それらの作動部材と摺接する部材であったり、それらの作動部材によって当接される部材であったりするため、長孔の付近ではシャッタの作動の都度、それらの摺接や当接によって、微細な磨耗紛が発生する。また、シャッタ機構以外のカメラ構成部材(例えば、ミラー駆動機構)から発生した磨耗紛や外部からカメラ内に進入してきたゴミなども、長孔の近傍に飛来してくるものがある。
【0005】
このようにして、長孔の近傍で発生したり、長孔の近傍に飛来してきた磨耗紛などは、長孔から羽根室内に進入し、フィルム面や撮像素子面などに付着するようになる。そして、フィルムや撮像素子の表面に所定量以上付着した場合には、好適な撮影結果が得られず、拡大して再現したときには、その不具合さが画像の一部に顕在化されてしまうことになる。特に、デジタルスチルカメラの場合には、撮像素子が、フィルムの場合とは異なり、カメラ内に固定されているため、磨耗紛などが数十ミクロン台の極めて微細なものであっても、それらが蓄積されていくことになって問題化してしまう。そのため、撮像素子の表面をクリーニングする必要がでてくるが、その反面、磨耗紛などが撮像素子の表面に付着しにくくなるようにする努力も行われている。しかしながら、磨耗紛などが、上記の長孔から羽根室内に進入するのを少しでも防止できるようにするための構成は、一般には知られていない。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、羽根室外においてシャッタ地板に取り付けられている駆動部材と、羽根室内に配置されているシャッタ羽根とを連結するために、シャッタ地板に形成されている長孔から、羽根室外におけるシャッタ機構等で発生した磨耗紛などが、羽根室内に侵入しにくくなるように構成したカメラ用フォーカルプレンシャッタを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタは、被写体光路用の開口部を有していて該開口部の傍らに円弧状をした少なくとも一つの長孔を有していると共に他の板部材との間に羽根室を構成するシャッタ地板と、前記シャッタ地板に枢着されている複数のアームと該アームの各々に枢支された少なくとも1枚の羽根とで構成されている少なくとも一つのシャッタ羽根と、駆動ピンを有していて羽根室外において前記シャッタ地板に回転可能に取り付けられており該駆動ピンを前記長孔に貫通させて前記アームの一つに連結させている駆動部材と、を備えていて、羽根室外において前記シャッタ地板には前記長孔の周囲の少なくとも一部に沿って壁部が設けられているようにする。
【0008】
その場合、羽根室外において前記シャッタ地板には、撮影作動の終了段階で前記駆動部材に当接されて前記駆動部材を制動する制動手段が設けられていて、前記壁部が、少なくとも前記制動手段と前記長孔との間に設けられいるようにしてもよいし、更に、羽根室外において前記シャッタ地板には、前記壁部に沿ってその外側に羽根室まで貫通していない溝部が形成されており、該溝部の底部には粘着面をさらすようにして粘着シートが貼付されているようにしてもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。図1は、実施例のフォーカルプレンシャッタをカメラに組み込んだ状態において、被写体側から視たときの左側の約半分を示した平面図であって、露光作動終了直後の状態を示したものである。また、図2はその要部断面図であって、図の上方が被写体側となる。更に、図3は、図1と同じようにして視た平面図であって、セット状態を示したものである。尚、本実施例の説明において、表面側とは被写体側のことをいい、背面側とは撮影者側のことをいう。
【0010】
先ず、実施例の構成を、主に図1及び図2を用いて説明する。図1において、シャッタ地板1の略中央部には、長方形を横長にした被写体光路用の開口部1aが形成されている。しかし、上記したように、図1はシャッタを被写体側から視て左側の約半分だけを示したものであるから、その開口部1aについても、左側の一部だけが示されている。また、図2に示すように、シャッタ地板1の背面側には、所定の間隔を空けて、適宜な手段によって、中間板2と補助地板3が順に取り付けられており、シャッタ地板1と中間板2との間に先羽根の羽根室を形成し、中間板2と補助地板3との間に後羽根の羽根室を形成している。そして、中間板2と補助地板3にも、開口部1aと類似の形状をした図示していない被写体光路用の開口部が形成されているが、本実施例においては、開口部1aの形状が被写体光の通過領域を規制している。但し、この開口部1aが撮影画枠を規制するものであるとは限らない。
【0011】
図1において、開口部1aの左側には、円弧状の二つの長孔1b,1cが貫通孔として形成されている。また、長孔1b,1cの下端を、同一中心,同一半径で延長した位置には、被写体側から見てC字状をした壁1d,1eが形成されており、それらの内壁面には、ブチルゴム製の緩衝部材4,5が取り付けられている。そして、図2に示されているように、緩衝部材4は、両面の粘着シート6によって壁1dに貼付されているが、緩衝部材5の場合にも全く同様にして壁1eに取り付けられている。
【0012】
また、図1に示されているように、長孔1b,1cの下方の縁には、平面形状が凹字状の壁1f,1gが形成されており、それらの外側に隣接したシャッタ地板面には、被写体側から見て窪んでいる溝1h,1iが形成されている。そして、図2から分かるように、壁1fは上記の壁1dよりも低く、また、溝1hの底面には粘着シート7が貼付されている。このような構成は、壁1e,壁1g,溝1iの場合も同様であり、溝1iの底面には粘着シート8が貼付されている。尚、本実施例の場合、この粘着シート7,8は、両面粘着テープであるが、後述の説明からも分かるように、本来は被写体側にさらされている面が粘着性を有していることを要求されるものであるため、片面の粘着テープを用い、溝1h,1iの底面には接着剤によって貼付するようにしても差し支えない。
【0013】
シャッタ地板1の表面側には、軸1j,1k,1mが立設され、背面側には、軸1n,1p,1q,1rが立設されている。そして、それらのうち、軸1jと軸1n、及び軸1kと軸1qとは同心となるように配置されている。尚、シャッタ地板1の表面側に立設されている軸1j,1k,1mの先端には、図示していない支持板とプリント配線板が重ねて取り付けられており、それらのうち、シャッタ地板1側に配置された支持板には先羽根用電磁石と後羽根用電磁石が取り付けられているが、それらの取付け構成は、特開2001−21942号公報などによって周知であるため、図示を省略してある。
【0014】
シャッタ地板1の軸1jには、合成樹脂製の先羽根用駆動部材9が回転可能に取り付けられている。この先羽根用駆動部材9は、被押動部9aと、駆動ピン9bと、当接部9cと、取付部9dとを有していて、図示していない周知の先羽根用駆動ばねによって時計方向へ回転するように付勢されている。そして、背面側に設けられている駆動ピン9bは、長孔1bを貫通してシャッタ地板1の背面側に突き出ており、その先端部を、長孔1bとほぼ同一形状に形成された補助地板3の長孔3a(図2参照)に挿入している。また、当接部9cも背面側に設けられていて、上記の緩衝部材4に当接し得るようになっている。更に、取付部9dは、被写体側に大きく隆起して形成されており、周知であるため図示を省略しているが、その内部には、上記の特開2001−21942号公報に記載されているような鉄片部材が、ばねを介在させて取り付けられ、先羽根用電磁石に通電されたとき、吸着され得るようになっている。
【0015】
シャッタ地板1の軸1kには、合成樹脂製の後羽根用駆動部材10が回転可能に取り付けられていて、図示していない後羽根用駆動ばねによって時計方向へ回転するように付勢されている。そして、この後羽根用駆動部材10は、ローラ10aと、駆動ピン10bと、当接部10cと、取付部10dとを有している。それらのうち、駆動ピン10bは、背面側に設けられており、長孔1cを貫通してシャッタ地板1の背面側に突き出ている。また、当接部10cも背面側に設けられていて、緩衝部材5に当接し得るようになっている。更に、取付部10dには、上記した先羽根用駆動部材9の取付部9dの場合と同様に、図示していない鉄片部材がばねを介在させて取り付けられており、図示していない後羽根用電磁石に通電されたとき、吸着され得るようになっている。
【0016】
シャッタ地板1の軸1mには、セット部材11が回転可能に取り付けられている。このセット部材11は、押動部11a,11bと、被押動部11cとを有していて、図示していない復帰ばねの付勢力によって、反時計方向へ回転するように付勢されているが、図1は、その回転を図示していない停止手段によって阻止されている状態を示したものである。以下、セット部材11については、この位置を初期位置と称する。
【0017】
次に、シャッタ地板1の背面側に配置されている先羽根と後羽根の構成を説明する。先ず、先羽根は、シャッタ地板1の軸1n,1pに対して回転可能に取り付けられている二つのアーム12,13と、それらの先端部に向けて順に枢支された4枚の羽根とで構成されている。しかし、その構成は周知であるため、図面を見やすくするために、図1においては、それらの羽根のうち最先端に枢支されたスリット形成羽根14だけを示してあり、図2においては、アーム13とすべての羽根を省略してある。そして、周知のように、アーム12に形成された孔には、先羽根用駆動部材9の駆動ピン9bが嵌合している。他方、後羽根は、軸1q,1rに対して回転可能に取り付けられた二つのアーム15,16と、それらの先端部に向けて順に枢支された4枚の羽根とで構成されているが、それらの羽根のうち、最先端に枢支されているスリット形成羽根17のみを示してある。そして、アーム15に形成された孔には、後羽根用駆動部材10の駆動ピン10bが嵌合している。
【0018】
次に、本実施例の作動を説明する。図1は、露光作動終了直後の停止状態を示している。このとき、先羽根用駆動部材9は、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力によって時計方向へ回転し、当接部9cが緩衝部材4に接触して、この停止状態が維持されている。また、このとき、先羽根の4枚の羽根は重畳されて、開口部1aの下方位置に格納されている。他方、後羽根用駆動部材10は、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力によって時計方向へ回転し、当接部10cが緩衝部材5に接触して、この停止状態が維持されている。そして、このとき、後羽根の4枚の羽根は展開されて開口部1aを覆っている。
【0019】
本実施例のセット作動は、図示していないカメラ本体側の部材がセット部材11の被押動部11cを押し、図示していない復帰ばねの付勢力に抗して時計方向へ回転させることによって行なわれる。そして、セット部材11が時計方向へ回転を開始すると、先ず、押動部11aが先羽根用駆動部材9の被押動部9aを押し、先羽根用駆動部材9を、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させる。それによって、アーム12が駆動ピン9bによって反時計方向へ回転させられるため、先羽根の4枚の羽根は、相互の重なりを小さくしつつ上方へ移動していく。
【0020】
このようにして、先羽根のスリット形成羽根14が後羽根のスリット形成羽根17に所定量重なると、その段階からは、セット部材11の押動部11bが後羽根用駆動部材10のローラ10aを回転させながら押し、後羽根用駆動部材10を、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させ始める。それによって、駆動ピン10bがアーム15を反時計方向へ回転させるため、後羽根の4枚の羽根は相互の重なりを大きくしつつ上方へ移動していく。
【0021】
先羽根用駆動部材9と後羽根用駆動部材10は、このようにして、各々の駆動ばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させられていくが、セット部材11の回転は、後羽根の4枚の羽根が重畳されて開口部1aの上方位置へ格納されると共に、先羽根の4枚の羽根が展開されて開口部1aを完全に覆い、しかも、各々の駆動部材9,10の取付部9d,10dに取り付けられた図示していない鉄片部材が、図示していない先羽根用電磁石と後羽根用電磁石の鉄芯に夫々確実に接触した段階で、停止させられる。図3は、そのようにして行われたセット作動の完了状態を示したものである。
【0022】
その後、撮影に際して、カメラのレリーズボタンが押されると、先ず、先羽根用電磁石と後羽根用電磁石に通電され、先羽根用駆動部材9と後羽根用駆動部材10に夫々取り付けられた図示していない夫々の鉄片部材が吸着保持される。次に、図示していないカメラ本体側の部材が、セット部材11の被押動部11cに対する押圧力を解いていくので、セット部材11は、図示していない復帰ばねの付勢力によって反時計方向へ回転されていく。そして、セット部材11の押動部11a,11bが、先羽根用駆動部材9の被押動部9aと後羽根用駆動部材10のローラ10aから離れると、その過程で、周知のように、各駆動部材9,10は時計方向に若干動くことになるが、各鉄片部材が夫々の電磁石に吸着保持されているので実質的には動かされず、先羽根と後羽根は露光作動開始位置で待機状態となる。セット部材11は、その後も回転を続け、図1に示された初期位置へ復帰して停止する。
【0023】
その後、最初に先羽根用電磁石に対する通電が断たれ、所定時間後には後羽根用電磁石に対する通電が断たれる。そこで、先ず、先羽根用電磁石に対する通電が断たれると、先羽根用駆動部材9の鉄片部材に対する吸引力が失われて、先羽根用駆動部材9が、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力によって時計方向へ急速に回転させられる。そのため、駆動ピン9bがアーム12を時計方向へ回転させるので、先羽根の4枚の羽根は相互の重なり量を大きくしつつ下方へ移動し、スリット形成羽根14の上端縁によって開口部1aを開放していく。次に、後羽根用電磁石に対する通電が断たれて吸引力が失われると、後羽根用駆動部材10は、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力によって時計方向へ急速に回転させられる。それによって、駆動ピン10bがアーム15を時計方向へ回転させるので、後羽根の4枚の羽根は、相互の重なり量を小さくしつつ下方へ移動し、スリット形成羽根17の下端縁によって開口部1aを覆っていく。
【0024】
このようにして、先羽根と後羽根が、それらのスリット形成羽根14,17の間に形成したスリットにより、撮像面を連続的に露光していくことになるが、その露光作動の最終段階には、当接部9cが緩衝部材4に当接し、緩衝部材4を圧縮させることによって制動されてから停止する。その結果、先羽根の4枚の羽根は、開口部1aの下方位置に格納状態となって静止する。このようにして、先羽根用駆動部材9の当接部9cが緩衝部材4に当接した直後に、今度は、後羽根用駆動部材10の当接部10cが緩衝部材5に当接し、同様にして制動されてから停止する。その結果、後羽根の4枚の羽根は、開口部1aを完全に覆った状態となって静止するが、その状態が図1に示された状態である。
【0025】
ところで、本実施例の場合には、全ての部材を図示していないが、実際には、シャッタ地板1の表面側に、沢山の部材が取り付けられている。そして、それらのうちのかなりの部材が、上記した機械的な作動に関与している。そのため、作動のたびに、それらの部材からは、目視するのが困難なような微細な磨耗紛が発生している。
【0026】
例えば、本実施例に示した部材の場合でも、先羽根用駆動部材9,後羽根用駆動部材10,セット部材11は回転部材であるから、軸1j,1k,1mとの間に磨耗紛を発生させる。ローラ10aの場合も同様である。また、セット部材11の押動部11aが先羽根用駆動部材9の被押動部9aを押すときには、カム作用が働くので磨耗紛を発生させる。更に、各駆動部材9,10の当接部9c,10cが緩衝部材4,5に当接してからは、当接部9c,10cが緩衝部材4,5の表面を引き伸ばしながら擦るので、このときにも磨耗紛は発生する。そして、比較的軟らかい緩衝部材4,5から発生した磨耗紛の場合は、他から発生した磨耗紛よりも大きいものが含まれている。尚、本実施例においては、各駆動部材9,10に設けられた当接部9c,10cを緩衝部材4,5に当接させているが、通常は当接部9c,10cを設けず、駆動ピン9b,10bを緩衝部材4,5に当接させている。そのような場合にも、本実施例の場合と同様にして磨耗紛は発生する。
【0027】
このようにしてシャッタ地板1の表面側で発生した磨耗紛は、長孔1b,1cに向かってあらゆる方向から飛来してくる。また、そのように飛来してくる磨耗紛は、発生時に直接飛来するものもあるが、一旦シャッタ地板1や他の部材の表面に付着していて、その後の撮影時における振動等に起因して飛来してくるものもある。そのため、飛来してくる磨耗紛の中には、一部、シャッタ機構以外で発生した磨耗紛や外部から進入してきたものも含まれている。そして、そのようにして長孔1b,1cに向かって飛来してきた磨耗紛は、長孔1b,1cが貫通孔であることから、従来の場合には、全て羽根室内に入っていた。そして、羽根室内に入った磨耗紛は、シャッタ羽根に付着したりしてから、さらに奥に進入し撮像面に付着してしまうものもあった。
【0028】
それに対して、本実施例の場合には、長孔1b,1cの羽根室外の縁に凹字状の壁1f,1gが設けられているので、長孔1b,1cに対してシャッタ地板1の表面を進行してくる磨耗紛を完全に遮断することができるし、斜めに飛来してくる磨耗紛の進入も高い確率で遮断することが可能になっている。また、長孔1b,1cの外側には溝1h,1iが形成されていて、その底部に粘着シート7,8が貼付されているので、溝1h,1iに入った磨耗紛は粘着シート7,8に捕捉されてしまい、カメラの姿勢や振動によって再度飛散しずらくなっている。従って、本実施例の場合には、その分だけ磨耗紛が撮像面に達しなくなる。
【0029】
尚、本実施例の場合には、緩衝部材4,5から発生する磨耗紛を特に重視しているため、壁1f,1gを長孔1b,1cの下方位置においてだけ凹字状に形成しているが、その他の箇所で発生する磨耗紛に対してもより効果的に遮断できるようにするためには、図1に二点鎖線で示してあるように、それらの壁1f,1gや溝1h,1iを、長孔1b,1cの全周にわたって形成し、溝1h,1iの中に粘着シート7,8を貼付するようにすることが好ましい。その場合、壁1f,1gだけを全周にわたって形成するだけでも効果的であることは言うまでもない。また、セット作動時において、セット部材11と二つの駆動部材9,10とから発生する磨耗紛を重視する場合には、そのような壁1f,1gを長孔1b,1cの左側の縁に沿って円弧状に形成するだけでもよい。
【0030】
更に、本実施例の場合は、露光作動時において各駆動部材9,10が時計方向へ回転するように構成されているため、緩衝部材4,5を長孔1b,1cの下方位置に取り付けているが、露光作動時において各駆動部材9,10が反時計方向へ回転するタイプのものの場合は、緩衝部材4,5が長孔1b,1cの上方位置に取り付けられている。従って、そのようなタイプのものの場合には、壁1f,1gに相当する壁を、長孔1b,1cの上方の縁に形成することになる。
【0031】
また、本発明は、磨耗紛を捕捉するために、粘着シートを貼付することを必須としない。しかし、粘着シートを貼付した方が効果的であることは言うまでもない。そして、粘着シートを貼付する場合には、溝1h,1iの底部にだけ貼付するのではなく、それらの内壁面にも貼付した方が効果的である。更に、溝1h,1iを形成しないで、そこに単に粘着シートを貼付するだけにしてもよいし、壁1f,1gの外壁面に貼付しても差し支えない。また、粘着シートを貼付する場合、最初から複数枚の粘着シートを重ねて貼付しておくようにすると、粘着性の劣化などによって磨耗紛の捕捉力が低下したとき、粘着シートを貼り代えずに、表面側の粘着シートを取り除くだけで済むようになる。更に、上記の実施例は、撮影時に、駆動部材9,10が、図示していない駆動ばねによって作動させられる場合で説明したが、本発明は、モータによって作動させられるものにも適用される。また、上記の実施例の場合は、二つのシャッタ羽根を備えているが、本発明は、一つのシャッタ羽根を備えたフォーカルプレンシャッタにも適用することができる。
【0032】
また、上記の実施例の場合には、上記したように、各駆動部材9,10は、露光作動の終了時において、当接部9c,10cが緩衝部材4,5に当接し、制動されてから停止されるように構成されている。しかしながら、従来のフォーカルプレンシャッタは、各駆動部材9,10に当接部9c,10cを設けていないのが普通である。そのため、停止時には、長孔1b,1cの縁に取り付けられた緩衝部材に対し、駆動ピン9b,10bを当接させて制動され停止されるようになっている。そして、そのような構成をした従来のフォーカルプレンシャッタの中には、駆動ピン9b,10bの作動軌跡内に、コイルばね又は板ばねに付勢されたブレーキ部材を臨ませておき、駆動ピン9b,10bを、そのブレーキ部材に当接させ、ばねの付勢力によって制動されるようにしてから緩衝部材に当接させるようにしたものがある。本発明は、そのように、緩衝部材のような制動手段だけではなく、ブレーキ部材のような制動手段を設けている従来のフォーカルプレンシャッタにも適用することが可能であるし、上記の実施例において、そのようなブレーキ部材を設けるようにしたものにも適用することが可能である。
【0033】
また、上記の実施例におけるフォーカルプレンシャッタは、駆動部材などを取り付けたシャッタ地板が被写体側となり補助地板が撮影者側となるようにして、カメラ内に取り付けられている場合で説明したが、デジタルスチルカメラに組み込まれる場合には、シャッタ地板を撮影者側にして取り付けても差し支えない。
【0034】
【発明の効果】
以上のように、本発明においては、羽根室外でシャッタ地板に取り付けられている駆動部材と、羽根室内に配置されているシャッタ羽根とを連結するために、シャッタ地板に円弧状の長孔が形成されているカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいて、その長孔の周囲の少なくとも一部に壁を設けるようにしたから、羽根室外に取り付けられた構成部材から発生した磨耗紛が、その長孔から羽根室内に進入しにくいという特徴を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】カメラに組み込んだ状態において、被写体側から視たときの左側の約半分を示した実施例の平面図であって、露光作動終了直後の状態を示したものである。
【図2】図1の要部断面図である。
【図3】図1と同様にして示した実施例の平面図であって、セット状態を示したものである。
【符号の説明】
1 シャッタ地板
1a 開口部
1b,1c,3a 長孔
1d,1e,1f,1g 壁
1h,1i 溝
1j,1k,1m,1n,1p,1q,1r 軸
2 中間版
3 補助地板
4,5 緩衝部材
6,7,8 粘着シート
9 先羽根用駆動部材
9a,11c 被押動部
9b,10b 駆動ピン
9c,10c 当接部
9d,10d 取付部
10 後羽根用駆動部材
10a ローラ
11 セット部材
11a,11b 押動部
12,13,15,16 アーム
14,17 スリット形成羽根
Claims (3)
- 被写体光路用の開口部を有していて該開口部の傍らに円弧状をした少なくとも一つの長孔を有していると共に他の板部材との間に羽根室を構成するシャッタ地板と、前記シャッタ地板に枢着されている複数のアームと該アームの各々に枢支された少なくとも1枚の羽根とで構成されている少なくとも一つのシャッタ羽根と、駆動ピンを有していて羽根室外において前記シャッタ地板に回転可能に取り付けられており該駆動ピンを前記長孔に貫通させて前記アームの一つに連結させている駆動部材と、を備えていて、羽根室外において前記シャッタ地板には前記長孔の周囲の少なくとも一部に沿って壁部が設けられていることを特徴とするカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
- 羽根室外において前記シャッタ地板には、撮影作動の終了段階で前記駆動部材に当接されて前記駆動部材を制動する制動手段が設けられていて、前記壁部が、少なくとも前記制動手段と前記長孔との間に設けられいることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
- 羽根室外において前記シャッタ地板には、前記壁部に沿ってその外側に羽根室まで貫通していない溝部が形成されており、該溝部の底部には粘着面をさらすようにして粘着シートが貼付されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
Priority Applications (1)
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