JP4014004B2 - 部分中和(メタ)アクリル酸系重合体、部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法、並びに、掘削土処理剤又はパップ剤用添加剤 - Google Patents

部分中和(メタ)アクリル酸系重合体、部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法、並びに、掘削土処理剤又はパップ剤用添加剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、部分中和(メタ)アクリル酸系重合体及びその製造方法並びに部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を含んでなる掘削土処理剤又はパップ剤用添加剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
部分中和(メタ)アクリル酸系重合体は例えば、医薬用として湿布薬やパップ剤の粘着性や保水性の向上を目的とした添加剤や親水性軟膏基材として使用されている。また、塗料用としては、カーペット用コンパウンドの増粘剤、塗料の増粘剤や粘着剤や粘着性向上剤として使用されている。製造プロセスにおいては、アルミナ製造時の赤泥沈降剤、ソーダ工業における塩水精製用凝集剤と多用されている。土木・建築用としては掘削土処理剤や浚渫土処理剤や調泥剤として使用されている。更に、その他一般工業用として吸湿剤、乾燥剤、表面改質剤、各種増粘剤としても使用されている。このように部分中和(メタ)アクリル酸系重合体は種々の分野で多岐にわたって使用されている。
【0003】
ところで、(メタ)アクリル系の重合体を製造する方法について種々検討がされている。このような技術に関し、光重合することにより低分子量のアクリル重合体及び共重合体を得る方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この技術には、連鎖移動剤としてメタノールが添加され、使用される単量体の重合時の濃度として約60重量%から約80重量%で光重合させている実施例が記載されている。しかし、使用されている単量体成分の主たる成分はアクリルアミドであり、また(メタ)アクリル酸系単量体に該当するアクリル酸の使用量は数%でごくわずかであり本願が目的とする水溶性重合体(部分中和(メタ)アクリル酸系重合体)とは異なる水溶性重合体に関しての製造技術である。また、この公報に開示される重合体は、掘削土処理剤やパップ剤用添加剤として所望される物性の点では充分な物性を保有した重合体ではない。
【0004】
また、光重合により水溶性重合体を製造する方法に関して開示されている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照。)。例えば、光重合開始剤の使用量を少なくすることで、発熱や急激な反応を抑制し、その結果厚さ30mm以上の厚みの重合体ゲルを製造できるとしている(例えば、特許文献4参照。)。ここで使用されている単量体成分も上述した技術と同様にアクリルアミドでありアクリル酸はごく少量である。よって開示されるのは本願が目的とする水溶性重合体とは違う重合体であり、掘削土処理剤やパップ剤用添加剤として所望される物性の点では充分な物性を保有した重合体ではない。また、光開始剤としてアシルホスフィンオキサイドを使用することで重合時の発熱を低下させる技術が開示されている(例えば、特許文献6参照。)。この技術も、重合に使用される主たる成分はアクリルアミドでありアクリル酸はごく少量であり、また、重合時の濃度も35%と低く、本願が目的とする水溶性重合体とは違う重合体である。また、本願が目的とする(メタ)アクリル酸系重合体としての好ましい物性開示がない。またこれらの公報には連鎖移動剤の使用に関して記載はない。
【0005】
(メタ)アクリル系の重合体を用いる掘削土処理剤の技術に関しては、(メタ)アクリルアミド(共)重合体及び石コウからなる含水土壌固化剤(例えば、特許文献7参照。)、また、アクリル酸ナトリウム−アクリルアミド共重合体等のカルボキシル基を有する水溶性重合体と石灰とからなる含水土壌の改質剤(例えば、特許文献8参照。)が開示されている。これらの技術においてはアクリルアミド系の重合体が用いられるが、残留単量体(アクリルアミド)の毒性からその使用が著しく制限されている。また、特定の合成水溶性高分子物質を用いる掘削土の処理方法が開示されている(例えば、特許文献9参照。)。該水溶性高分子物質は安全性は高いが、比較的多量に添加しなければ掘削土を固化させることはできず、この点を改善することが望まれている。更に、ポリアクリル酸及び/又はその塩の水溶液からなる含水土壌の改質剤が開示されている(例えば、特許文献10参照。)。このポリアクリル酸を用いたものの評価は比較的良好であるが、低添加量における使用において、より性能を向上させる工夫の余地があった。
【0006】
具体的には、特開平9−176638号公報の実施例1で中和率が0%、重量平均分子量が800000のポリアクリル酸が開示されてはいる。しかし上記引例ではどのような製造方法で得たポリアクリル酸か記載されておらず、また不溶解分等も記載されてはいない。また上記公報の実施例1や実施例5で示される水溶性重合体の土処理性能もそれほど高いものではなく、その原因として、重量平均分子量が低いことが考えられた。上記特開9−176638号公報には、光重合方法で(メタ)アクリル酸系水溶性重合体を得る場合に重合時に単量体濃度を高くしかつ連鎖移動剤を使用することで重量平均慣性半径を高くすることができ合わせて不溶解分も少なくすることができること並びに該製造方法で得られた(メタ)アクリル酸系水溶性重合体が顕著な土処理性能を奏すること等は一切記載されていない。
【0007】
またパップ剤用添加剤の技術に関しては、従来、例えばポリアクリル酸ナトリウムのような完全中和型の重合体が多用されてきた。しかしながら、このような完全中和型の重合体を使用した場合、得られたパップ剤は粘着性が低いため、貼付箇所から脱落したり、捲れたりしやすいという問題点があった。このような問題点を克服するために、例えば、ポリアクリル酸部分中和塩の使用が提案されている(例えば、特許文献11参照。)。また、完全中和型のポリアクリル酸ナトリウムと未中和型のポリアクリル酸とを併用することが提案されている(例えば、特許文献12参照。)。更に、未中和型のポリアクリル酸を添加剤に用いることが提案されている(例えば、特許文献13参照。)。これらの技術における添加剤の粘着性における評価は比較的良好であるが、パップ剤としたときの保型性が充分ではなく、この点において工夫の余地があった。すなわち(メタ)アクリル酸系の重合体をパップ剤用添加剤として使用する場合に、高い粘着性と保型性とを充分に発現し得るように工夫する余地があった。なお、上記の保型性とは、パップ剤としたときに基材の弾性を示す物性であり、例えば、指等でパップ剤基材表面に凹部をつけたときにその凹部が元の形状に戻る戻りやすさを示す物性である。
【0008】
また、30℃における固有粘度及びイオン交換水に対する不溶解分が特定された部分中和(メタ)アクリル酸系重合体が開示されている(例えば、特許文献14参照。)。このような(メタ)アクリル系の重合体は、掘削土処理剤やパップ剤用添加剤等に用いることができる凝集剤や増粘剤としての作用を発揮することができるものである。しかし開示される重合方法は熱重合方法であり、光重合方法に関して一切記載されておらず特に(メタ)アクリル酸系水溶性重合体を光重合方法で得るときに連鎖移動剤存在下(メタ)アクリル酸系単量体が所定濃度以上含まれる反応液で行うことに関して何も示されていない。
【0009】
また、上記公報記載の熱重合方法で中和度が低くかつ分子量が高い(メタ)アクリル酸系水溶性重合体を製造した場合、得られたゲル状の(メタ)アクリル酸系水溶性重合体が重合装置やゲル解砕機の各種の装置に付着することが考えられ、工業的により安定的に製造することに工夫の必要があった。また、得られたゲル状重合体中に残存する単量体が多くなる、架橋しやすい状態であるので不溶解分が多くなる等の問題が予想され、当該重合方法を応用し工業的に安定に部分的に中和された(メタ)アクリル酸系重合体を得ることができるようにするための工夫の余地があった。
【0010】
【特許文献1】
特開昭48−58079号公報(特公昭56−15808号公報)(第1−3頁)
【特許文献2】
特開昭61−155405号公報(特公平5−53804号公報)(第1−2頁)
【特許文献3】
特開昭61−155406号公報(特公平5−32410号公報)(第1−2頁)
【特許文献4】
特開平10−231309号公報(第1−2頁)
【特許文献5】
特開平11−228609号公報(第1−3、5−6頁)
【特許文献6】
特開平10−231308号公報(第1−2頁)
【特許文献7】
特開昭64−81886号公報(特公平3−2478号公報)(第1頁)
【特許文献8】
特開平4−345685号公報(特許第2529785号公報)(第1−2頁)
【特許文献9】
特公平6−31514号公報(特開昭63−44097号公報)(第1−2頁)
【特許文献10】
特開平9−176638号公報(第1−2、4−5頁)
【特許文献11】
特開昭61−260014号公報(第1頁)
【特許文献12】
特開昭62−63512号公報(第1頁)
【特許文献13】
特開平8−53346号公報(第1−2頁)
【特許文献14】
特開2000−212222号公報(第1−2、5頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、様々な用途に好適に適用することが可能であり、掘削土処理剤に用いる場合には、安全性に優れ、しかも低添加量で含水土壌を強度の高い土に改質することができ、また、パップ剤用添加剤に用いる場合には、高い粘着性と保型性とを発現させることができる部分中和(メタ)アクリル酸系重合体及びそのような重合体の製造に有利な製造方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の用途に係る発明は、特定の製造方法により製造されてなり、特定中和度、特定重量平均慣性半径且つ特定不溶解分の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体が上記数多い用途分野の中でも、特に掘削土処理剤とパップ剤用添加剤として顕著な効果を奏することを見出し本発明を完成させたものである。そしてここで着目する重量平均慣性半径という物性が、掘削土処理剤あるいはパップ剤をより改良されたものにするために、当該目的に使用する重合体の選定基準として非常に明瞭であることも見出し発明を完成させたものである。そしてここで着目する重量平均慣性半径という物性が、掘削土処理剤又はパップ剤をより改良されたものにするために、当該目的に使用する部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を選定する基準として非常に明瞭であることも見出した。一般的に高分子の分子の大きさを表現する手段として、重量平均慣性半径や固有粘度がある。重量平均慣性半径は特定条件下、重合体を糸マリ状化させたときの、その糸マリ程度を半径表示したものである。一方、固有粘度は特定条件下、分子を直線状に引き伸ばした状態の分子鎖を間接的に表すものであり、両者は本質的に全く異なるものである。上述したように、本願は特定の重量平均慣性半径且つ特定の条件を具備した重合体が掘削土処理剤とパップ剤用添加剤として顕著な効果を奏することを見出し、完成に至ったものである。
【0013】
また中和度が20〜80モル%である(メタ)アクリル酸系単量体を主成分として含む単量体成分から(メタ)アクリル酸系重合体を製造する方法において、近紫外線を照射する本願発明の光重合によると、従来の製造方法である熱重合法に比べ、重合時間を短時間とすることが可能となる。また、重合温度を低くしても重合がスムーズに進行するため、除熱の関係上、高濃度での生産が可能となる。このように、光重合方法を採用することで、生産性が向上すると共に、重量平均慣性半径が充分に大きく、しかも不溶解分が少ない重合体が得られることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0014】
すなわち本発明は、(メタ)アクリル酸系重合体が有する酸基と中和された状態の基の総和を100モル%として示したときの、中和された状態の基の含有量が20〜80モル%の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体であって、上記部分中和(メタ)アクリル酸系重合体は、重合に使用される全単量体成分を100モル%として(メタ)アクリル酸系単量体を50モル%以上含む単量体成分、光重合開始剤、連鎖移動剤及び重合溶媒を含有する反応液に近紫外線を照射することによって重合し、上記単量体成分の重合時の反応液中の濃度を40〜97質量%として製造されてなり、イオン交換水に対する不溶解分が5質量%未満であって、かつ、完全中和時の重量平均慣性半径が160nm以上である部分中和(メタ)アクリル酸系重合体である。
以下に本発明を詳述する。
【0015】
本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体は、(メタ)アクリル酸系重合体が有する酸基と中和された状態の基の総和を100モル%として示したときの、中和された状態の基の含有量が20〜80モル%である。このような重合体においては、部分的に中和されて塩の形態となっていることから、部分中和塩又は部分中和重合体ともいう。なお、本明細書中、酸基と中和された状態の基の総和を100モル%として示したときの、中和された状態の基の含有量を、中和度ともいう。すなわち本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体は、中和度が20〜80モル%である。
上記部分中和(メタ)アクリル酸系重合体は、例えば、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸塩により構成される(メタ)アクリル酸系単量体を必須とする単量体成分を重合して得られる重合体である。具体的には、重合に使用される全単量体成分を100モル%として(メタ)アクリル酸系単量体を50モル%以上含む単量体成分を重合してなる重合体である。また、好ましい形態としては、(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体以外の酸基を含む単量体を合計した単量体中の酸基と中和された状態の基の総和を100モル%として示したときの、中和された状態の基の含有量が20〜80モル%となるように単量体群を選択された単量体成分を重合してなる重合体である。これにより、本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体が凝集作用や増粘作用をより充分に発揮することとなる。
【0016】
また上記の中和された状態の基の含有量(中和度ともいう)が20〜80モル%であるとは、(メタ)アクリル酸系重合体が有する酸基と中和された状態の基の総和を100モル%として示したときの、中和された状態の基の含有量が20〜80モル%であることを意味する。なお中和された形態の基とは、酸基における解離し得る水素イオンが他のカチオンで置換された基である。
したがって中和度の求め方としては、例えば、部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を形成する単量体成分がアクリル酸をxモル、アクリル酸の塩としてアクリル酸ナトリウムをyモル、アクリル酸エステルとしてアクリル酸メチルをzモル含むとし、これらがすべて重合したとすると、アクリル酸エステルがイオン性ではなく、中和された形態ではないために、下記式により求められることになる。
【0017】
分母には、部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造に使用した酸基を有する原料単量体成分と中和された形態の基(ここでは酸基がアルカリ金属等で中和された塩の形態)を有する原料単量体成分のモル数の和をとる。分子には、中和された形態の基(ここでは酸基がアルカリ金属等で中和された塩の形態)を有する原料単量体成分のモル数をとる。これを以下の式に当てはめることで中和度(中和された形態の基の含有割合)をパーセントで出し、単位はモル%とする。なお、上記に従って、所定の中和された形態の基の含有割合となるように、上記原料単量体成分を選択して使用することは、好ましい形態である。
【0018】
【式1】
Figure 0004014004
【0019】
また、例えば、部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を形成する単量体成分がアクリル酸をαモル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムをβモル、アクリルアミドをγモル含むとし、これらがすべて重合したとすると、アクリルアミドがイオン性ではなく、中和された形態ではないために、下記式により求められることになる。
下記式においては、分母及び分子に、上記式におけるのと同様に酸基を含有する原料単量体成分のモル数等をとる。これを以下の式に当てはめることで中和度をパーセントで出し、単位はモル%とする。
【0020】
【式2】
Figure 0004014004
【0021】
更に、部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を形成する単量体成分がアクリル酸ナトリウムをaモル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をbモル含むとし、これらが全て重合したとすると下記式により求められることになる。
下記式においては、分母及び分子に、上記式におけるのと同様に酸基を含有する原料単量体成分のモル数等をとる。これを以下の式に当てはめることで中和度をパーセントで出し、単位はモル%とする。
【0022】
【式3】
Figure 0004014004
【0023】
また、部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造に使用した中和されていない形態の基を有する原料単量体成分をEモル、中和された形態の基(ここでは酸基がアルカリ金属等で中和された塩の形態)を有する原料単量体成分のモル数をFモルとし、これらがすべて重合したとすると、中和度は下記式により求められることになる。
【0024】
【式4】
Figure 0004014004
【0025】
なお、(メタ)アクリル酸系重合体における中和度を上記範囲に調整する方法としては、上述したように、酸型単量体と塩型単量体との比率を適宜設定することにより調整することが好ましいが、酸型単量体の重合中に塩基性化合物等を添加することにより、酸型単量体やその重合体を中和しながら重合も行うような反応形式であってもよい。例えば、本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を製造する場合には、所定量の(メタ)アクリル酸系単量体を使用し重合体を製造した後で、重合体自体の中和度が20〜80モル%になるように苛性ソーダ等のアルカリ性物質を使用し重合体を中和して製造してもかまわない。また、本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造に用いる単量体成分としては、酸基が未中和状態の(メタ)アクリル酸系単量体であってもよく、酸基が中和された(メタ)アクリル酸系単量体の中和塩であってもよい。
【0026】
上記部分中和(メタ)アクリル酸系重合体では、完全中和時の重量平均慣性半径が160nm未満であると、様々な用途に好適に適用することができないこととなる。また、掘削土処理剤とする場合には、低添加量で含水土壌を強度の高い土に改質することができないこととなり、また、パップ剤用添加剤とする場合には、高い粘着性と保型性とを発現させることができないこととなる。300nmを超えると、取扱いにくくなり、また、製造することが困難となる。一方、イオン交換水に対する不溶解分が5質量%以上であると、製品品質を向上することができないうえに、より充分に作用を発揮することができないこととなる。よって本発明の(メタ)アクリル酸系重合体の好ましい重量平均慣性半径の範囲は、160nm〜300nmである。
なお、重量平均慣性半径については、高分子学会編、「高分子辞典」、朝倉書店、昭和60年、第9刷、p.45−49に記載されている。また、The Journal of Chemical Physics, Vol.44, No.12(1966),p.4550−4564、G.C.Berryらの文献にも詳細に記載されている。
【0027】
上記重量平均慣性半径の好ましい範囲としては、180nm以上である。この場合、180〜300nmとなる。より好ましくは、190nm以上であり、更に好ましくは、200nm以上であり、最も好ましくは、210nm以上である。また、より好ましくは、280nm以下、更に好ましくは、260nm以下である。また、上記不溶解分の好ましい範囲としては、4質量%未満である。より好ましくは、3質量%未満であり、更に好ましくは、2質量%未満であり、最も好ましくは、1質量%未満である。
【0028】
上記重量平均慣性半径は、例えば、部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を完全中和した重合体中和物を含む溶液を調製し、これについて屈折率及び光散乱強度を測定して求めることができる。なお完全中和とは、部分中和(メタ)アクリル酸系重合体において、酸基における解離し得る水素イオンが他のカチオンですべて置換されることである。本発明においては、完全中和時の重量平均慣性半径が上記の範囲となる限り、他のカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられる。また、中和の方法としても、公知の方法で中和することができる。
また上記不溶解分は、イオン交換水500gに部分中和(メタ)アクリル酸系重合体1.0gを添加し、25℃で2時間攪拌した後に32メッシュのフィルタを用いて濾過することにより、含水状態の不溶物を取り出し、下記計算式
不溶解分(質量%)={不溶物の質量(g)/500(g)}×100
に基づいて算出される値である。なお、本明細書中、不溶解分は、水溶液中の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を上記フィルタで濾過後、1分以内に測定される値とする。なお、濾過及び秤量は、25℃、湿度60%以上の条件で行う。
【0029】
本発明はまた、(メタ)アクリル酸系重合体が有する酸基と中和された状態の基の総和を100モル%として示したときの、中和された状態の基の含有量が20〜80モル%の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を製造する方法であって、上記部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法は、(メタ)アクリル酸系単量体を、重合に使用する全単量体成分の総和を100モル%として50モル%以上含み、かつ(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体以外の酸基を含む単量体を合計した単量体中の酸基と中和された状態の基の総和を100モル%として示したときの、中和された状態の基の含有量が20〜80モル%となるように選択された単量体成分、光重合開始剤、連鎖移動剤及び重合溶媒を含有する反応液に近紫外線を照射する光重合工程を含んでなり、上記光重合工程は、単量体成分の重合時の反応液中の濃度を40〜97質量%としてなる部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法でもある。このような製造方法は、上述した本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の好ましい製造方法でもある。なお中和度が20〜80モル%である(メタ)アクリル酸系単量体を(メタ)アクリル酸系単量体部分中和塩ともいう。なお、重合に使用する単量体成分は、必要に応じ(メタ)アクリル酸系単量体以外の他の単量体を含んでいてもよい。
【0030】
本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法は、(メタ)アクリル酸系重合体が有する酸基と中和された状態の基の総和を100モル%として示したときの、中和された状態の基の含有量が20〜80モル%の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を製造する方法である。
本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法は、重合に使用される全単量体成分を100モル%として(メタ)アクリル酸系単量体を50モル%以上、より好ましくは70モル%以上であり、更に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは85モル%以上含む単量体成分、光重合開始剤、連鎖移動剤及び重合溶媒を含有する反応液に近紫外線を照射することによって単量体成分を重合させ、当該部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を得る光重合工程を含んでなり、上記光重合工程は、単量体成分の重合時の反応液中の濃度を40〜97質量%としてなる。また、上記製造方法で得られる(メタ)アクリル酸系重合体の好ましい形態は、当該重合体の完全中和時の重量平均慣性半径が160nm〜300nmの範囲であることである。
【0031】
上記製造方法は、光重合工程を含む重合体の製造方法であるが、光重合が開始すると発熱するので、その熱を利用して重合を促進させるために光重合開始剤に熱重合開始剤が併用されていてもよい。また、重合を熱重合で開始する形態であってもよく、また重合途中で熱重合が併用されていてもよい。
【0032】
上記重合に使用される全単量体成分を100モル%として(メタ)アクリル酸系単量体を50モル%以上含む単量体成分は、(メタ)アクリル酸系単量体と必要によりその他の単量体を含むものである。(メタ)アクリル酸系単量体及びその他の単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、(メタ)アクリル酸系重合体とは、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸塩により構成される(メタ)アクリル酸系単量体を必須とする単量体成分を重合して得られる重合体である。
【0033】
上記単量体成分において、(メタ)アクリル酸系単量体とは、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸塩であるが、(メタ)アクリル酸塩としては、(メタ)アクリル酸を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物、すなわち(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸マグネシウム、(メタ)アクリル酸カルシウム、(メタ)アクリル酸アンモニウムが好適である。これらの中でも、(メタ)アクリル酸ナトリウムが好ましい。より好ましくは、アクリル酸ナトリウムである。上記(メタ)アクリル酸系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記単量体成分は、(メタ)アクリル酸系単量体以外の酸型単量体やその他の単量体を含んでいてもよいが、(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体以外の酸基を含む単量体を合計した単量体中の酸基と中和された状態の基の総和を100モル%として示したときの、中和された状態の基の含有量が20〜80モル%となるように単量体群を選択することになる。また、単量体成分としては、中和度が20〜80モル%である(メタ)アクリル酸系単量体を50モル%以上含むことが好ましい。より好ましくは、55モル%以上、60モル%以下である。これにより、本発明の製造方法により得られる部分中和(メタ)アクリル酸系重合体が、その作用効果をより充分に発揮することとなる。更に好ましくは、70モル%以上であり、特に好ましくは、80モル%以上であり、最も好ましくは、85モル%以上である。
なおモル%の値は、単量体成分のすべてを100モル%としたときの値である。
【0035】
上記(メタ)アクリル酸系単量体以外の酸基を含む単量体としては、例えば、α−ヒドロキシアクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド等の不飽和スルホン酸系単量体;(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸等の不飽和ホスホン酸系単量体、これら酸型単量体を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記(メタ)アクリル酸系単量体以外の酸基を含む単量体の中でも、不飽和スルホン酸系単量体の1価金属塩、2価金属塩及びアンモニウム塩を含有することが好ましい。その中でも具体的には、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)及び/又は3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(塩)を含有することが特に好ましい。上記単量体を使用することにより、部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の完全中和時の重量平均慣性半径をより高くしたり、不溶解分をより少なくしたりすることができるため、重合体の基本性能を向上させることができる。上記(メタ)アクリル酸系単量体以外の酸基を含む単量体の含有量としては、重合に使用する単量体成分全てを100モル%とすると、50モル%未満とすることが好ましい。より好ましくは1モル%以上50モル%未満である。更に好ましくは1モル%以上30モル%未満である。特に好ましくは1モル%以上20モル%未満である。最も好ましくは、2モル%以上15モル%未満である。
【0037】
上記(メタ)アクリル酸系単量体や、上記(メタ)アクリル酸系単量体以外の酸基を含む単量体以外のその他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体;(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル等の疎水性単量体;3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレンアルコール)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ビニルアルコール等の水酸基を有する不飽和単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のカチオン性単量体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお本発明の好ましい形態にあっては、特にアクリルアミド系単量体は、重合性が低く残存しやすいので、残存した場合安全性に問題が出てくるので、上記のその他単量体としてアクリルアミド系単量体の使用量は、重合に使用する単量体成分を100モル%として、30モル%以下とすることが好ましい。より好ましくは20モル%〜0モル%、更に好ましくは10モル%〜0モル%、特に好ましくは5モル%〜0モル%の範囲内とすることが好ましい。
【0038】
上記重合に使用する単量体成分の重合時における反応液中の濃度は、40〜97質量%であることが好ましい。本件の光重合による部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法においては、重合時の単量体成分の濃度が高い方が重合体の基本性能を向上させることができる。具体的には、重合時の単量体成分の濃度を上記濃度範囲とすることで、得られる部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の不溶解分を低く保ちながら、分子量を高くすることができる。上記濃度は更に具体的には、重合開始時における反応液中の単量体成分の濃度である。本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法における光重合方法においては、連鎖移動剤を使用するとともに重合時の単量体成分の濃度を高くすることで、得られる部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の重量平均慣性半径をより高くすることができ、部分中和(メタ)アクリル酸系重合体が持つ凝集作用や増粘作用を更に高めることができる。また、あわせて得られる部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の不溶解分を低くすることができる。
【0039】
一般的に重量平均慣性半径の大きな(メタ)アクリル酸系重合体を公知の重合方法で得ようとした場合、重量平均慣性半径の増大に伴って、不溶解分が増加し好ましくない。本発明では、特定の条件下での光重合方法によりこの従来技術の問題点を解消することができることになる。また、本件の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法である光重合方法では、あわせて生産性を向上させることができる面でより有利である。具体的には、単量体成分の濃度が40質量%未満の低濃度重合を行うと、単位質量当たりの乾物製品を得るために、単量体成分の濃度が40質量%以上の高濃度重合の場合より装置が大型化する。また、乾燥に要するユーティリティも大きくなる。従って、低濃度重合は高濃度重合に比べて、製造コストが高くなる。また、低濃度重合では充分に高い重量平均慣性半径にはなりにくく、その結果生成するゲルの粘着性が高濃度重合により得られるゲルに比べ強いので、ベルト面からの離型や、ゲル解砕が容易ではないため、加工上の問題も生じることになる。
【0040】
また、物性面では、低濃度重合により得られる部分中和(メタ)アクリル酸系重合体は、重量平均慣性半径が小さく、あわせて不溶解分が多くなる傾向がある。よって低濃度重合では凝集作用や増粘作用が改良された当該部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を得ることが困難となる。更に、残存モノマーが多くなる。すなわち、重合の完結性に問題が生じることになる。上記単量体成分の重合時における反応液中の濃度、すなわち上記単量体成分の重合開始時における反応液中の濃度は、45〜97質量%であるが、好ましくは45〜95質量%である。より好ましくは、50〜95質量%であることである。更に好ましくは、55質量%以上であり、また、90質量%以下であり、特に好ましくは、65質量%以上であり、最も好ましくは、70質量%以上である。
なお、上記の反応液中の単量体成分の濃度は、重合に使用する全単量体成分を含む反応液を100質量%として求めたものである。具体的には分母に使用する全単量体成分をとって比を求め100質量%表示したものである。
【0041】
上記光重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、1,1′−アゾビス(1−アミジノ−1−シクロプロピルエタン)、2,2′−アゾビス(2−アミジノ−4−メチルペンタン)、2,2′−アゾビス(2−N−フェニルアミノアミジノプロパン)、2,2′−アゾビス(1−イミノ−1−エチルアミノ−2−メチルプロパン)、2,2′−アゾビス(1−アリルアミノ−1−イミノ−2−メチルブタン)、2,2′−アゾビス(2−N−シクロへキシルアミジノプロパン)、2,2′−アゾビス(2−N−ベンジルアミジノプロパン)及びその塩酸、硫酸、酢酸塩等、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)及びそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(イソブチルアミド)、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(1,1′−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−1,1′−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ系光重合開始剤、
【0042】
2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184)とベンゾフェノンとの共融混合物、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(イルガキュア369)と2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア651)との3:7の混合物、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド(CGI403)と2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア1173)との1:3の混合物、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド(CGI403)と1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184)との1:3の混合物、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド(CGI403)と1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184)との1:1の混合物、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア1173)との1:1の液状混合物、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、
【0043】
オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノンとの共融混合物、4−メチルベンゾフェノンとベンゾフェノンとの液状混合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドとオリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]とメチルベンゾフェノン誘導体との液状混合物、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルファニル)プロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、α−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、エチル4−ジメチルアミノベンゾエート、アクリル化アミンシナジスト、ベンゾイン(iso−及びn−)ブチルエステル、アクリルスルホニウム(モノ、ジ)ヘキサフルオロリン酸塩、2−イソプロピルチオキサントン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルスルフィド、2−ブトキシエチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、エチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、
【0044】
ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾインヒドロキシアルキルエーテル、ジアセチル及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、ジフェニルジスルフィド及びその誘導体、ベンゾフェノン及びその誘導体、ベンジル及びその誘導体等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、アゾ系光重合開始剤を用いることが好ましく、例えば、2,2′−アゾビス−2−アミジノプロパン2塩酸塩等の水溶性アゾ系光重合開始剤が好適に用いられる。
【0045】
上記光重合開始剤の使用量としては、重合に使用される単量体成分1モルに対して、0.0001g以上が好ましく、また、1g以下が好ましい。これにより、部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の分子量や重合率を充分に高いものとすることができる。より好ましくは、0.001g以上であり、また、0.5g以下である。
【0046】
上記連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコール酸、チオ酢酸、メルカプトエタノール等の含硫黄化合物;亜燐酸、亜燐酸ナトリウム等の亜燐酸系化合物;次亜燐酸、次亜燐酸ナトリウム等の次亜燐酸系化合物;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、次亜燐酸系化合物が好ましい。より好ましくは、次亜燐酸ナトリウムである。
上記連鎖移動剤の使用量としては、重合濃度や光重合開始剤との組み合わせ等により適宜設定すればよいが、重合に使用される単量体成分1モルに対して、0.0001g以上が好ましく、また、0.2g以下が好ましい。0.001g以上で0.1g以下が更に好ましく、0.005g以上で0.05g以下が特に好ましい。
【0047】
上記重合溶媒としては、水が好適に用いられる。また、水以外にも有機溶媒等を適宜併用してもよい。有機溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の炭化水素類;メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;(ジ)エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類が好適である。
【0048】
本発明における光重合工程では、上記反応液に近紫外線を照射することになる。上記光重合工程において近紫外線を照射する装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、蛍光ケミカルランプ、蛍光青色ランプ等が挙げられる。また、近紫外線の波長領域としては、300nm以上であり、また、500nm以下であることが好適である。
【0049】
本発明では、上記光重合工程は、近紫外線を0.1〜100W/m2の強度で照射して重合させることが好ましい。特に近紫外線を10W/m2以下の強度で照射して重合を開始させることが好ましい。これにより、不溶解分をより少なくすることができる。また、部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の完全中和時の重量平均慣性半径をより高くすることができる。より好ましくは、8W/m2以下であり、更に好ましくは、6W/m2以下であり、最も好ましくは、4W/m2以下である。また、近紫外線を照射して重合する間は、近紫外線の照射強度が一定であっても変化させてもよいが、上記照射強度の最大が10W/m2以下になるように調節して重合を開始させることが好ましい。なお、本明細書中、近紫外線の光照射強度は、近紫外線が照射される反応液の上面部、すなわち反応液表面において測定される光照射強度である。光照射強度は、下記の光量計で測定することができる。
装置:紫外線積算光量計
メーカー:ウシオ電機社
型式:本体 UIT−150
センサー UVD−C365(感度波長域310〜390nm)
なお、近紫外線の強度に関する問題としては、重合制御が困難となる問題、すなわち突沸問題と品質問題があるが、強度が強いと不溶解分が増える傾向にあり、また、重量平均慣性半径も低下する傾向にある。最初は強度を弱くして次いで強度を強くすることで、このような問題に対して有利となる。
【0050】
上記光重合工程における重合方法としては、上記反応液が水溶液の形態である水溶液重合による方法が好ましい。水溶液重合においては、例えば、窒素ガスをバブリングする等の方法により、水溶液中に溶解している溶存酸素を予め除去した状態で重合を行うことが好ましい。また、重合操作方法としては、回分式でも連続式でもよいが、静置重合による方法が好ましい。なお、静置重合の中の1つの重合形態としてベルト重合がある。
【0051】
図1〜4を用いて本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法の実施の一形態を説明する。なお、図1〜4において、6は光照射の方向を表す矢印であり、7はベルト運転方向を示す矢印である。
図1は、一定間隔の遮光版を設ける形態であり、連続基材ベルト1と紫外線ランプ2との間に、遮光版3が一定間隔で設置されている。この場合、ベルト1を稼働させることで、反応液が遮光版3の下部を移動していくことになる。ここに紫外線ランプ2により一定強度の近紫外線を照射すると、遮光版3が設置されていない部分を移動するときはこの一定強度の近紫外線が反応液に照射され、遮光版3が設置されている部分を移動するときは反応液に照射される近紫外線の光照射強度が低下することになる。従って、反応液をベルト1によって移動させ、遮光版3が設けられた部分と設けられていない部分を交互に通過させることで、遮光版を移動させることなく、光照射強度を強/弱繰り返し変化させることが可能となる。すなわち、上記の一定間隔の遮光版3によって、ベルト1の重合用組成物に、光が断続的に照射され、光照射強度の強/弱繰り返しが実現される。
【0052】
図2は、強遮光版と弱遮光版とを連続して設ける形態であり、連続基材ベルト1と紫外線ランプ2との間に、強遮光版4と弱遮光版5が連続して等間隔に設置されている。この場合にも、光照射強度を強/弱繰り返し変化させることが可能となる。
また、上記の遮光版3、強遮光版4及び弱遮光版5の設置の間隔であるが、紫外線が基材に照射されているときと、遮断や光照射強度が低下できるように設置されていればよく、特に一定間隔でなくてもかまわない。
【0053】
上記ベルト重合における実生産機のベルトの形状としては、船型が好適である。図3は、図1において連続基材ベルト1として船型ベルト8を用いた形態であり、図4は、図1において連続基材ベルト1として船型ベルト8を用いた形態である。また、図5(a)は、図3及び図4における船型ベルト8の概念図であり、図5(b)は、図5(a)のX−X′における断面概念図を示す。
ベルト形状としての上記の船型であるが、船型であると単量体及び連鎖移動剤及び重合溶媒を含む本発明における反応液をベルト上に展開しても保持しやすい形態であるので本発明では好ましい実施形態である。上記の船型以外の形状であっても、ベルト上に当該反応液を保持できる形態であれば本発明における光重合時に使用するベルトとして適応可能である。また、ベルトの進行方向に対してのベルトの端部に堰が設けられていてもよい。
【0054】
上記ベルト重合における実生産機のベルトの長さとしては、1m以上が好ましく、50m以下が好ましい。より好ましくは2m以上であり、更に好ましくは3m以上であり、また、より好ましくは40m以下であり、更に好ましくは30m以下である。
上記ベルトの稼働速度としては、3cm/min以上が好ましく、また、10m/min以下が好ましい。より好ましくは4cm/min以上であり、更に好ましくは5cm/min以上であり、また、より好ましくは7m/min以下であり、更に好ましくは5m/min以下である。
【0055】
上記光重合工程における重合条件としては、単量体成分の組成、光重合開始剤や連鎖移動剤の種類や使用量等に応じて適宜設定すればよいが、重合開始時における単量体成分の反応液中の濃度(単量体濃度)としては、40質量%以上であり、また、97質量%以下であり、より好ましくは、50〜95質量%であり、更に好ましくは、55〜90質量%であり、特に好ましくは、65〜90質量%であり、最も好ましくは、70〜90質量%である。上記重合開始時とは、言いかえると重合するために所定量の単量体成分を含む反応液を調製し、重合させるときである。上記単量体濃度は反応液を100質量%としての濃度である。単量体濃度を高くすることで完全中和時の重量平均慣性半径をより高くすることができ、重合体の凝集作用や増粘作用を更に高めることができる。また、生産性を向上させることができる面でより有利である。また、重合温度としては、−5℃以上であり、また、150℃以下であることが好ましいが、重合を開始する温度としては、50℃以下であることが好ましい。より好ましくは、30℃以下であり、更に好ましくは、20℃以下である。重合開始温度が低い方が突沸等の異常反応に基づく危険がなくなると共に、高濃度での反応が容易となるため、生産性の面で有利である。また、上記の重合温度は、得られる当該部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の物性をより良好にするためにも有効な重合条件である。更に、重合時間としては、1分以上であり、また、90分以下であることが好ましいが、より好ましくは、60分以下であり、更に好ましくは、30分以下である。本発明においては、光重合を行うため、またあわせて上記の高濃度の重合条件と併用することによって、得られる重合体の凝集作用や増粘作用をより高めることができ、また不溶解分も少なくすることができるので好ましい形態となる。重合時間を短縮することが可能となり、生産性の面で有利である。
【0056】
本発明の製造方法においては、上記光重合工程により得られる重合物を好ましくは50℃〜200℃で乾燥させることにより、乾燥物である部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を得ることができる。重合物を乾燥させる方法としては、例えば、乾燥しやすいように、重合物を切断する等の方法により重合物の表面積を大きくしたり、減圧乾燥したりすることが好ましい。乾燥温度が50℃よりも低いと、重合物を充分に乾燥させることができないおそれがあり、200℃よりも高いと、重合物の熱架橋が起こり、不溶解分が多くなるおそれがある。また、220℃よりも高い場合には、重合物の主鎖や架橋点の切断が起こり、完全中和時の重量平均慣性半径が低下するおそれがある。よって、より好ましい乾燥温度は、50〜180℃である。更に好ましくは、50〜150℃である。なお乾燥時間としては、重合物に含まれる水分量や乾燥温度等に応じて適宜設定すればよい。
【0057】
本発明は更に、上記部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を主成分とする掘削土処理剤又はパップ剤用添加剤でもある。
上記掘削土処理剤は、掘削工事等により発生する含水土壌を改質して粒状等の固化物とするために含水土壌に添加されるものであるが、本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を用いると、安全性に優れ、しかも低添加量で含水土壌を強度の高い土に改質することができるものとなる。
【0058】
上記掘削土処理剤が用いられる含水土壌としては、例えば、地中連続壁工法、泥水シールド工法等を採用した掘削工事の掘削時に発生する土を土砂と泥水とに分離し、脱水プレス等により泥水の固液分離を行った後に得られる脱水ケーキ等としての汚泥;建設作業にともなって発生する泥水を沈殿槽に静置して得られる沈殿物としての汚泥;掘削残土、軟弱残土;採石場及び砕石場にて発生する含水石粉等の汚泥;粘土やシルト等が挙げられる。このような含水土壌は、ベントナイト等を含有するものであってもよい。また、JIS A 1203の含水比試験方法に基づいて測定される含水比が20〜200%となるものが好ましい。含水比は、下記式により計算されることになる。
{水(g)/含水土壌の固形分(g)}×100
200%を超えると、水の含有量が多くなり過ぎることから、掘削土処理剤の使用量が多くなり、コストが高くなるおそれがある。
【0059】
本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体は、上記含水土壌の中でも、関東地方で発生したものに用いることが適している。関東地方における建設発生土の発生量は、全国の中で最も多く、一般的に関東ローム(火山灰質粘性土)、シルト、粘土等を多く含み、粒状の固化物とすることが困難なものであるが、本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を適用することにより、このような含水土壌を再利用することが可能となる。
【0060】
上記掘削土処理剤の含水土壌に対する添加量としては、例えば、含水土壌100重量部に対して部分中和(メタ)アクリル酸系重合体が0.02重量部以上となり、また、5重量部以下となることが好ましい。0.02重量部未満であると、含水土壌を充分に改質することができないおそれがあり、5重量部を超えると、改質効果がほとんど変わらないこととなる。より好ましくは、0.03重量部以上であり、また、1重量部以下である。
【0061】
上記パップ剤用添加剤は、パップ剤に粘着性を付与するためにパップ剤用基材に添加されるものであるが、本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を用いると、高い粘着性と保型性とを発現させることができるものとなる。なお、保型性とは、パップ剤としたときに基材の弾性を示す物性であり、例えば、指等でパップ剤基材表面に凹部をつけたときにその凹部が元の形状に戻る戻りやすさを示す物性である。
上記パップ剤用添加剤のパップ剤用基材に対する添加量としては、例えば、パップ剤用基材100重量部に対して部分中和(メタ)アクリル酸系重合体が0.02重量部以上となり、また、30重量部以下となることが好ましい。0.02重量部未満であると、パップ剤用基材を増粘して高い粘着性や保型性を発現させることができないおそれがあり、30重量部を超えると、増粘効果がほとんど変わらないこととなる。より好ましくは、0.2重量部以上であり、また、10重量部以下である。
【0062】
また特に部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を掘削土処理剤とする場合には、本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体における重合時に使用する単量体成分として、特にアクリルアミド系単量体は、重合性が低く残存しやすいので、残存した場合安全性に問題が出てくるので、上記のその他単量体としてアクリルアミド系単量体を使用する場合には、その使用量を、上述した範囲とすることが好ましい。
【0063】
本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体は、様々な用途に好適に適用することが可能であり、例えば、掘削土処理剤やパップ剤用添加剤、浚渫土処理剤等に用いることができるものであるが、上述したように、特に掘削土処理剤やパップ剤用添加剤の主成分として用いることが好適なものである。この場合、掘削土処理剤に用いると、安全性に優れ、しかも低添加量で含水土壌を強度の高い土に改質することができ、また、パップ剤用添加剤に用いると、高い粘着性と保型性とを発現させることができることとなる。
【0064】
【実施例】
以下に実施例を揚げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は、「重量部」を意味するものとする。
【0065】
実施例1
容量500mlのステンレス製容器にアクリル酸222.9g、イオン交換水3.32gを入れ、冷却下、水酸化ナトリウム48%水溶液64.5gを添加し、アクリル酸部分中和塩水溶液を得た。このアクリル酸部分中和塩水溶液を窒素バブリングすることにより溶存酸素を除去した。次いでこの水溶液を10℃に温度調整した後、光重合開始剤であるV−50(和光純薬工業社製、アゾ系光重合開始剤、化学名2,2′−アゾビス−2−アミジノプロパン2塩酸塩)の2%水溶液4.64g及び連鎖移動剤である次亜燐酸ナトリウムの2%水溶液4.64gを添加し均一混合した。
【0066】
この反応液中には、単量体としてアクリル酸とアクリル酸ナトリウムが含まれ、全単量体中の塩型単量体(アクリル酸ナトリウム)の割合、つまり中和度は25モル%であった。また、反応液中の単量体(アクリル酸とアクリル酸ナトリウム)濃度は80質量%であった。V−50の添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。次亜燐酸ナトリウムの添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。
【0067】
実施例で用いた重合容器は、上部と下部により構成されるものであり、これを図6に概念図により示した。(a)は重合容器の上部10の平面図、(b)は重合容器の上部10の側面図、(c)は重合容器の下部11の平面図、(d)は重合容器の下部11の側面図である。この重合容器はステンレス(SUS304)製であって、重合容器の上部10の内面はテフロン(R)加工が施されている。また、重合容器の下部11には、ジャケットに冷却水等を導入するためのソケット12及び排出するためのソケット13を有し、冷却水等が下側のソケット12より入り、上側のソケット13より排出されるような構造となっている。実施例においては、上部10を下部11にかぶせるようにして合わせ、パッキンを装着し、ボルト・ナットで8ヶ所固定して使用した。
【0068】
このような重合容器の下部11のソケット12から10℃の冷水を導入し、ソケット13から排出すると共に、重合容器の上部10をサランラップで覆って反応液が導入される空間部分を窒素置換した。次いで反応液を重合容器の上部10に導入した後、波長範囲300〜450nmの近紫外線をブラックライト水銀ランプ(東芝社製、形名H400BL−L)を用いて強度3W/m2で15分間照射した。照射開始後、直ちに重合が開始した。次いで強度を7W/m2に上げ、15分間経過後、ソケット12から導入している冷水の温度を80℃に昇温した。同温度に30分間保持することにより重合を完結した。このようにして得られたゲル状重合体をハサミで細かく裁断した後、80℃で減圧乾燥した。次に卓上粉砕機で粉砕した後、40メッシュパスとなるように分級してポリアクリル酸部分中和塩からなる重合体(1)を得た。また、重合体(1)の重量平均慣性半径及び不溶解分を下記の方法により測定した。その結果を表1に示す。
【0069】
(重量平均慣性半径の測定方法)
(1)(メタ)アクリル酸系重合体0.5%水溶液に水酸化ナトリウム5質量%水溶液を添加することでpH10(25℃)に調整して、完全に中和された重合体中和物溶液を得た。次に、NaClとイオン交換水を添加することにより、NaCl 0.16M/Lに下記濃度の重合体中和物を含む溶液を作製した。すなわち、(メタ)アクリル酸系重合体中和物0.05mg/ml溶液(A)、0.1mg/ml溶液(B)、0.2mg/ml溶液(C)、0.4mg/ml溶液(D)、0.5mg/ml溶液(E)、1mg/ml溶液(F)、2mg/ml溶液(G)をそれぞれ調製した。
【0070】
(2)溶液(A)〜(G)を0.45μmのメンブランフィルターでそれぞれろ過し、測定サンプル(A)〜(G)とした。次いで、ダイナミック光散乱光度計(大塚電子社製、DSL−700)を使用して、測定サンプル(A)〜(D)の光散乱強度を測定し、高感度示差屈折計(大塚電子社製、RM−102)を使用して、測定サンプル(E)〜(G)の屈折率を測定した。測定はいずれも25℃の恒温にて行った。
【0071】
(3)測定サンプル(A)〜(D)の光散乱強度、及び、測定サンプル(E)〜(G)の屈折率から、計算ソフト(大塚電子社製、DLS−700S)を用いて、Berry plot法により重量平均慣性半径を算出した。
上記のように本発明における重量平均慣性半径は、所定濃度の重合体中和物を含む溶液についてダイナミック光散乱光度計により求めた光散乱強度及び屈折率からBerry plot法により求めたものである。
【0072】
上記高感度示差屈折計にて、重量平均慣性半径:算出時に必要な屈折率の試料濃度に対する変化率:dn/dcを測定する。またこの本発明で使用した上記Berry plot法については、The Journal of Chemical Physics, Vol.44, No.12(1966),p.4550−4564において、G.C.Berryらの文献に記載されている。
【0073】
また本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体に類似するアクリルアミド系重合体に関して特開平8−67715号公報や特開平9−296388号公報では、重量平均慣性半径を昭和電工社製のGPC測定機器を使用し、検出器に多角度の光散乱検出装置を接続し、デバイプロット(Debye plot)により得ることができることが記載されている。なお、重量平均慣性半径は、重量平均慣性半径や重量平均の根平均二乗半径<Root Mean Square Radius>とも表示され、<S21/2である。なお測定対象となる重合体の分子量の大きさにより、本件で採用したベリープロット(Berry plot)(超高分子量重合体の場合に使用)やジムプロット(中〜高分子量重合体の場合に使用)やデバイプロット(低分子量重合体の場合に使用)を使い分ける場合がある。なお、ベリープロットは通常GPCによる重量平均分子量でいうと100万以上の超高分子量を測定するときに使用するプロット方法である。
【0074】
また、トナー組成物中のバインダー樹脂の慣性半径(S)が記載された特許公報として米国特許第6017669号明細書(対応:特許第3155930号、欧州特許第764889号)がある。この公報では、本願で使用した高感度示差屈折計と同様の測定機器である大塚電子社製のダイナミック光散乱光度計が使用されている。
【0075】
また上記以外に重量平均慣性半径に関する数多くの参考書又は解説書が出版され参照することができる。また大塚電子社製のダイナミック光散乱測定機器の取り扱い説明書等にも上記のような重量平均慣性半径の算出方法に関しての説明がされている。
また重量平均慣性半径については、高分子学会編、「高分子辞典」、朝倉書店、昭和60年、第9刷、p.45−49にも記載されている。
【0076】
(不溶解分の測定方法)
容量500mlのビーカーに、イオン交換水500gを入れ、マグネチックスターラを用いて撹拌しながら、このイオン交換水に、充分に乾燥した(メタ)アクリル酸系重合体1.0gを添加した。次にこの混合物を、ジャーテスターを用いて25℃で2時間撹拌(100rpm)した後、32メッシュのフィルタを用いて濾過することにより、含水状態の不溶物を取り出した。そして、この不溶物を乾燥しないように直ちに(1分以内に)秤量し、下記計算式に基づいて不溶解分を算出した。
不溶解分(質量%)={不溶物の質量(g)/500(g)}×100
なお、上記濾過及び秤量も、25℃、湿度60%の状態で行った。
【0077】
実施例2
アクリル酸を226.2g、イオン交換水を12.05g、水酸化ナトリウム48%水溶液を52.3g、2%V−50水溶液を4.71g、2%次亜燐酸ナトリウム水溶液を4.71gとした以外は、実施例1と同様に反応液を調製した。
【0078】
この反応液中の単量体中和度は20モル%であった。また、単量体濃度は80質量%であった。V−50の添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。次亜燐酸ナトリウムの添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。この反応液を実施例1と同様にして重合を行い、ポリアクリル酸部分中和物からなる重合体(2)を得た。また、重合体(2)の重量平均慣性半径及び不溶解分を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0079】
実施例3
アクリル酸を120.53g、イオン交換水を62.87g、水酸化ナトリウム48%水溶液を111.58g、2%V−50水溶液を2.51g、2%次亜燐酸ナトリウム水溶液を2.51gとした以外は、実施例1と同様に反応液を調製した。
【0080】
この反応液中の単量体中和度は80モル%であった。また、単量体濃度は50質量%であった。V−50の添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。次亜燐酸ナトリウムの添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。該反応液を実施例1と同様にして重合を行い、ポリアクリル酸部分中和物からなる重合体(3)を得た。また、重合体(3)の重量平均慣性半径及び不溶解分を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0081】
実施例4
実施例1の2%V−50水溶液の代わりに、光重合開始剤であるダロキュア(DC)1173(チバ・スペシャリティケミカルズ社製、化学名;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)の2%アクリル酸溶液4.64gを用い、アクリル酸を218.2g、イオン交換水を8.02gとした以外は、実施例1と同様に反応液を調製した。
【0082】
この反応液中の単量体中和度は25モル%であった。また、単量体濃度は80質量%であった。ダロキュア1173の添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。次亜燐酸ナトリウムの添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。この反応液を実施例1と同様にして重合を行い、ポリアクリル酸部分中和物からなる重合体(4)を得た。また、重合体(4)の重量平均慣性半径及び不溶解分を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0083】
実施例5
実施例1のアクリル酸222.9gの代わりにアクリル酸44.69g及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)128.3gを用い、イオン交換水を97.42g、水酸化ナトリウム48%水溶液を25.83g、2%V−50水溶液を1.86g、2%次亜燐酸ナトリウム水溶液を1.86gとした以外は、実施例1と同様に反応液を調製した。
【0084】
この反応液中の単量体中和度は25モル%であった。また、単量体濃度は60質量%であった。V−50の添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。次亜燐酸ナトリウムの添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。この反応液を実施例1と同様にして重合を行い、アクリル酸/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(モル比50/50)部分中和物からなる重合体(5)を得た。また、重合体(5)の重量平均慣性半径及び不溶解分を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0085】
実施例6
実施例1のアクリル酸の代わりにアクリル酸206.3g及び3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム(HAPS)19.32gを用い、イオン交換水を11.32g、水酸化ナトリウム48%水溶液を54.2g、2%V−50水溶液を4.43g、2%次亜燐酸ナトリウム水溶液を4.43gとした以外は、実施例1と同様に反応液を調製した。
【0086】
この反応液中の単量体中和度は25モル%であった。また、単量体濃度は80質量%であった。V−50の添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。次亜燐酸ナトリウムの添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。この反応液を実施例1と同様にして重合を行い、アクリル酸/3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(モル比97/3)部分中和物からなる重合体(6)を得た。また、重合体(6)の重量平均慣性半径及び不溶解分を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0087】
実施例7
実施例1のアクリル酸の代わりにアクリル酸172.1g及びメタクリル酸(MAA)51.41gを用い、イオン交換水を5.28g、水酸化ナトリウム48%水溶液を62.25g、2%V−50水溶液を4.48g、2%次亜燐酸ナトリウム水溶液を4.48gとした以外は、実施例1と同様に反応液を調製した。
【0088】
この反応液中の単量体中和度は25モル%であった。また、単量体濃度は80質量%であった。V−50の添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。次亜燐酸ナトリウムの添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。この反応液を実施例1と同様にして重合を行い、アクリル酸/メタクリル酸(モル比80/20)部分中和物からなる重合体(7)を得た。また、重合体(7)の重量平均慣性半径及び不溶解分を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0089】
実施例8
最初、近紫外線を強度7W/m2で15分間照射した後、強度を20W/m2に上げ、更に15分間照射した以外は、実施例1と同様にして反応液の調製及び重合を行い、ポリアクリル酸部分中和物からなる重合体(8)を得た。また、重合体(8)の重量平均慣性半径及び不溶解分を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0090】
実施例9
アクリル酸を106.9g、イオン交換水は139.2g、水酸化ナトリウム48%水溶液を49.5g、2%V−50水溶液を2.22g、2%次亜燐酸ナトリウム水溶液を2.22gとした以外は、実施例1と同様に反応液を調製した。
【0091】
この反応液中の単量体中和度は40モル%であった。また、単量体濃度は40質量%であった。V−50の添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。次亜燐酸ナトリウムの添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。この反応液を実施例1と同様にして重合を行い、ポリアクリル酸部分中和物からなる重合体(9)を得た。また、重合体(9)の重量平均慣性半径及び不溶解分を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0092】
実施例10
単量体濃度を表1に示すようにしたこと以外は、実施例2と同様にして重合体(10)を製造し、該重合体の重量平均慣性半径及び不溶解分を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0093】
実施例11
アクリル酸を94.10g、イオン交換水を105.29g、水酸化ナトリウム48%水溶液を98.0g、2%V−50水溶液を1.96g、2%次亜燐酸ナトリウム水溶液を0.65gとした以外は、実施例1と同様に反応液を調製した。この反応液中の単量体中和度は90モル%であった。また、単量体濃度は40質量%であった。V−50の添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。次亜燐酸ナトリウムの添加量は単量体1モルに対して0.01gであった。この反応液を実施例1と同様にして重合を行い、ポリアクリル酸部分中和物からなる重合体(11)を得た。重合体(11)の重量平均慣性半径及び不溶解分を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0094】
比較例1
2%次亜燐酸ナトリウム水溶液を使用せずに、イオン交換水を7.96gとした以外は、実施例1と同様に反応液を調製した。
この反応液中の単量体中和度は25モル%であった。また、単量体濃度は80質量%であった。V−50の添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。次亜燐酸ナトリウムの添加量は単量体1モルに対して0gであった。この反応液を実施例1と同様にして重合を行い、ポリアクリル酸部分中和物からなる比較重合体(1)を得た。また、比較重合体(1)の重量平均慣性半径及び不溶解分を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0095】
比較例2
窒素ガス導入管及び攪拌装置等を備えた容量2Lの4ツ口フラスコに、アクリル酸222.9部及びイオン交換水3.32部を仕込み、冷却下、水酸化ナトリウム48%水溶液64.5部を添加した。従って、単量体の中和度は25モル%である。次いで、フラスコ内の水溶液を攪拌しながら、窒素ガスを30分間バブリングすることにより溶解している溶存酸素を除去した。
【0096】
その後、この水溶液に熱重合開始剤としての2,2′−アゾヒス−(2−アミジノプロパン)2塩酸塩2%水溶液4.64部、次亜燐酸ナトリウム1水和物2%水溶液4.64部とを添加した。従って、単量体成分1モルに対する2,2′−アゾヒス−(2−アミジノプロパン)2塩酸塩の使用量は0.03gであり、次亜燐酸ナトリウム1水和物の使用量は0.03gである。また、単量体成分の反応液中の濃度は80%であった。
【0097】
図7は、比較例2で用いた重合容器14を示す概念図であり、(a)は重合容器14の平面図、(b)は重合容器14の断面図である。この重合容器14は、ステンレス(SUS304)製の容器下部15及び容器上部(蓋体部)16、パッキング18等からなる。上記蓋体部16は、反応液を仕込むための注入口17aと測低抗体(白金線)を差し込むための温度挿入口17bとを有している。
【0098】
光を透さない上記重合容器14に上記反応液を入れた後、この重合容器14を水温が28℃に予め調節された恒温水槽に浸漬した。反応液の温度が直ちに上昇して熱による重合が開始され、33分後に該温度は68.2℃(1次ピーク温度)に達した。その後、恒温水槽の温度を75℃に昇温させ、同温度に達した時点から60分間、重合を進行させることにより、重合を完結した。終了後、恒温水槽の水温を常温に下げて重合容器14の反応生成物を冷却した後、重合容器14を解枠して反応生成物を取り出した。これにより、ゲル状のポリアクリル酸部分中和物を得た。このゲル状のポリアクリル酸部分中和物を実施例1と同様に処理して比較重合体(2)を得た。また、比較重合体(2)の重量平均慣性半径及び不溶解分を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0099】
比較例3
実施例1のアクリル酸の代わりにアクリル酸97.5g、イオン交換水を172.27g、水酸化ナトリウム48%水溶液を28.2g、2%V−50水溶液を2.03g、次亜燐酸ナトリウム2%水溶液を0gとした他は実施例1と同様に反応液を調製した。この反応液中の単量体中和度は25モル%であった。また、単量体濃度は35質量%であった。V−50の添加量は単量体1モルに対して0.03gであった。次亜燐酸ナトリウムの添加量は単量体1モルに対して0gであった。この反応液を実施例1と同様にして重合を行い、ゲル状重合体を得た。該ゲル状重合体をハサミで切断しようとしたが、ゲルがハサミに纏わり付き、切断が容易ではなかった。
【0100】
よって、この比較例3の条件で製造された当該水溶性重合体は、上記実施例1〜11の条件で製造した当該水溶性重合体に比べ重量平均慣性半径が小さいものとなり、重合容器や重合装置の内壁、重合装置の攪拌装置又はベルト重合装置のベルト部分、又はベルト重合装置で使用される熱可塑フィルム、又は必要に応じて具備される解砕機に付着する可能性が高く取り扱い性が劣ることが判断できる。該ゲルを実施例1と同様に処理して比較重合体(3)を得た。比較重合体(3)の重量平均慣性半径及び不溶解分を実施例1と同様に測定した。その結果を表6に示す。また、比較重合体(3)の残存モノマーを実施例1と同様に測定した結果、2.8モル%であった。
またこの比較例3の条件で製造された当該水溶性重合体は、上記実施例の条件で製造した当該水溶性重合体に比べ、残存するモノマーが多くなることも判明した。また当該水溶性重合体の重量平均慣性半径も実施例1〜11で開示される値よりも小さいものになった。よって、比較例3で製造された水溶性重合体の凝集作用や増粘作用は、実施例で開示される水溶性重合体よりも劣ることが判断できる。
【0101】
【表1】
Figure 0004014004
【0102】
以下に表1について説明する。
単量体組成(単量体成分)において、「AA」はアクリル酸であり、「AMPS」は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸であり、「HAPS」は3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムであり、「MAA」はメタクリル酸である。
光重合開始剤において、「V−50」は2,2′−アゾビス−2−アミジノプロパン2塩酸塩であり、「DC」はダロキュア1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)である。
【0103】
実施例12
以下の表2に示した配合組成でパップ剤用基材を作製した。
【0104】
【表2】
Figure 0004014004
【0105】
得られたパップ剤用基材を不織布上に3mm厚に塗布し、指触によって粘着性を評価した。また、容量100mlのビーカーに、上記パップ剤用基材を厚さ30mmになるように採取し、指触によって保型性(復元性)の評価を行った。その結果を表3に示した。
保型性とは、指触時に指の型を上記基材につけその凹部が完全に復元するか、又は、元の形状になるまで早さを目安とした。保型性が高いとは指で凹部を付与しても指をはなすとすぐその形状が元に戻る形態を示す。なおパップ剤用物性測定用基材は25℃湿度60%の恒温室内で作製しその条件下で粘着性と形状復元性を測定した。以下の実施例や比較例でもパップ剤用物性側定用基材は25℃湿度60%の恒温室内で作製しその条件で粘着性と保型性(形状復元性)を測定した。
【0106】
実施例13〜20
実施例12で用いた重合体(1)の代わりに実施例2〜9で得られた重合体(2)〜(9)を用いた以外は、実施例12と同様にパップ剤基材としての粘着性と保型性を評価した。その結果を表3に示す。
【0107】
比較例4、5及び7
実施例12で用いた重合体(1)の代わりに比較例1、比較例2又は比較例3で得られた比較重合体(1)、比較重合体(2)又は比較重合体(3)を用いた以外は、実施例12と同様にパップ剤基材としての粘着性と保型性を評価した。その結果を表3に示す。
【0108】
比較例6
実施例12で用いた重合体(1)の代わりに重量平均分子量が3百万のポリアクリル酸ナトリウム75部と重量平均分子量が5万のポリアクリル酸25部とからなる混合物を用いた以外は、実施例12と同様にパップ剤基材としての粘着性と保型性を評価した。その結果を表3に示す。
なお、比較例6で用いた重量平均分子量300万のポリアクリル酸ナトリウムの不溶解分は1.2%であった。また、比較例6で用いた重量平均分子量が5万のポリアクリル酸の不溶解分は0%であった。
なお、上記重合平均分子量は、GPC法により測定されたものである。
【0109】
【表3】
Figure 0004014004
【0110】
粘着性評価基準
粘着性:5(強い)→1(弱い)
保型性評価基準
保型性:5(良好)→1(悪い)
【0111】
実施例21
ビーター型攪拌翼を備えたプラネタリー式混合機(ソイルミキサー)に、関東地方の一般土木工事によって発生した含水比45%建設残土である含水土壌を所定量仕込んだ。次いで、この含水土壌を160rpmで攪拌しながら、実施例1で得られた重合体(1)を含水土壌100重量部に対し0.07重量部添加し、添加した時点から60秒間混合し、平均粒子径が4mmである粒状物を得た。この実施例21により当該部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の掘削土処理性能を評価した。残土処理後なるべく平均粒子径が小さい土壌粒状物となる掘削土処理剤が性能が良いと評価した。
【0112】
実施例22〜29
実施例21で用いた重合体(1)の代わりに実施例2〜9で得られた重合体(2)〜(9)を用いた以外は、実施例21と同様に評価した。その結果を表4に示す。
【0113】
比較例8、9及び10
実施例21で用いた重合体(1)の代わりに比較例1、比較例2又は比較例3で得られた比較重合体(1)、比較重合体(2)又は比較重合体(3)を用いた以外は、実施例21と同様に評価した。その結果を表4に示す。
【0114】
【表4】
Figure 0004014004
【0115】
【発明の効果】
本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体は、上述のような構成であるので、様々な用途に好適に適用することが可能であり、掘削土処理剤に用いる場合には、安全性に優れ、しかも低添加量で含水土壌を強度の高い土に改質することができ、また、パップ剤用添加剤に用いる場合には、高い粘着性と保型性とを発現させることができるものである。
また本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法は、重合時間を短時間とし、重合を行う反応液が突沸する危険性が少なくなるように重合温度を低くすることが可能であり、また、生産性が向上するうえに、分子量が高くなることから完全中和時の重量平均慣性半径が充分に高いものや不溶解分が少ないものを得るのに有利な製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法の実施の一形態を示す概念図である。
【図2】本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法の実施の他の一形態を示す概念図である。
【図3】本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法の実施の一形態を示す概念図である。
【図4】本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法の実施の他の一形態を示す概念図である。
【図5】(a)は、本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法の実施の一形態において用いられる船型ベルトを示す概念図であり、(b)は船型ベルトの断面概念図である。
【図6】本発明の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の実施例で用いられた重合容器を示す概念図であって、(a)は重合容器の上部10の平面図、(b)は重合容器の上部10の側面図、(c)は重合容器の下部11の平面図、(d)は重合容器の下部11の側面図である。なお、(b)、(c)及び(d)において、括弧内の数値は、重合容器のサイズを表す。
【図7】比較例において用いられた重合容器14を示す概念図であって、(a)は重合容器14の平面図、(b)は重合容器14の断面図である。なお、括弧内の数値は、重合容器のサイズを表す。
【符号の説明】
1 連続基材ベルト
2 紫外線ランプ
3 遮光版
4 強遮光版
5 弱遮光版
6 光照射方向
7 ベルト運転方向
8 連続基材ベルト(船型ベルト)
9 反応液
10 重合容器の上部
11 重合容器の下部
12、13 ソケット
14 重合容器
15 容器下部
16 容器上部(蓋体部)
17a 注入口
17b 温度計挿入口
18 パッキング

Claims (9)

  1. (メタ)アクリル酸系重合体が有する酸基と中和された状態の基の総和を100モル%として示したときの、中和された状態の基の含有量が20〜80モル%の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体であって、
    該部分中和(メタ)アクリル酸系重合体は、重合に使用される全単量体成分を100モル%として(メタ)アクリル酸系単量体を50モル%以上含む単量体成分、光重合開始剤、連鎖移動剤及び重合溶媒を含有する反応液に近紫外線を照射することによって重合し、該単量体成分の重合時の反応液中の濃度を40〜97質量%とし、該連鎖移動剤を単量体成分1モルに対して0.0001g以上、0.05g以下使用して製造されてなり、
    イオン交換水に対する不溶解分が5質量%未満であって、かつ、完全中和時の重量平均慣性半径が160nm〜300nmである
    ことを特徴とする部分中和(メタ)アクリル酸系重合体。
  2. (メタ)アクリル酸系重合体が有する酸基と中和された状態の基の総和を100モル%として示したときの、中和された状態の基の含有量が20〜80モル%であり、掘削土処理剤の主成分として用いる部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を製造する方法であって、
    該部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法は、(メタ)アクリル酸系単量体を、重合に使用する全単量体成分の総和を100モル%として50モル%以上含み、かつ(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体以外の酸基を含む単量体を合計した単量体中の酸基と中和された状態の基の総和を100モル%として示したときの、中和された状態の基の含有量が20〜80モル%となるように選択された単量体成分、光重合開始剤、連鎖移動剤及び重合溶媒を含有する反応液に近紫外線を照射する光重合工程を含んでなり、
    該光重合工程は、単量体成分の重合時の反応液中の濃度を40〜97質量%とし、該連鎖移動剤を単量体成分1モルに対して0.0001g以上、0.05g以下使用してなり、
    該部分中和(メタ)アクリル酸系重合体は、イオン交換水に対する不溶解分が5質量%未満であって、かつ、完全中和時の重量平均慣性半径が160nm〜300nmである
    ことを特徴とする掘削土処理剤の主成分として用いる部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法。
  3. 前記単量体成分の重合開始時における反応液中の濃度は、50〜95質量%である
    ことを特徴とする請求項2記載の掘削土処理剤の主成分として用いる部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法。
  4. 前記光重合工程は、近紫外線を10W/m以下の強度で照射して重合を開始する
    ことを特徴とする請求項2又は3記載の掘削土処理剤の主成分として用いる部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法。
  5. (メタ)アクリル酸系重合体が有する酸基と中和された状態の基の総和を100モル%として示したときの、中和された状態の基の含有量が20〜80モル%であり、パップ剤用添加剤の主成分として用いる部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を製造する方法であって、
    該部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法は、(メタ)アクリル酸系単量体を、重合に使用する全単量体成分の総和を100モル%として50モル%以上含み、かつ(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体以外の酸基を含む単量体を合計した単量体中の酸基と中和された状態の基の総和を100モル%として示したときの、中和された状態の基の含有量が20〜80モル%となるように選択された単量体成分、光重合開始剤、連鎖移動剤及び重合溶媒を含有する反応液に近紫外線を照射する光重合工程を含んでなり、
    該光重合工程は、単量体成分の重合時の反応液中の濃度を40〜97質量%とし、該連鎖移動剤を単量体成分1モルに対して0.0001g以上、0.05g以下使用してなり、
    該部分中和(メタ)アクリル酸系重合体は、イオン交換水に対する不溶解分が5質量%未満であって、かつ、完全中和時の重量平均慣性半径が160nm〜300nmである
    ことを特徴とするパップ剤用添加剤の主成分として用いる部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法。
  6. 前記単量体成分の重合開始時における反応液中の濃度は、50〜95質量%である
    ことを特徴とする請求項5記載のパップ剤用添加剤の主成分として用いる部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法。
  7. 前記光重合工程は、近紫外線を10W/m 以下の強度で照射して重合を開始する
    ことを特徴とする請求項5又は6記載のパップ剤用添加剤の主成分として用いる部分中和(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法。
  8. 請求項1記載の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を主成分とする
    ことを特徴とする掘削土処理剤。
  9. 請求項1記載の部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を主成分とする
    ことを特徴とするパップ剤用添加剤。
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