JP4030469B2 - 固体を懸濁状態で含む高硬度液の凝集処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、凝集処理方法に関する。より詳しくは、固体を懸濁状態で含む高硬度液において、液中に懸濁している固体粒子を凝集させて処理する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
凝集処理方法は、固体粒子が懸濁している液において、固体粒子を凝集させてフロックと呼ばれる固まりに凝集させて処理する技術であり、例えば、下水や一般産業廃水等の廃水処理、土木現場での泥水処理、浚渫埋め立て時の泥水の沈降分離等の処理技術で広く利用されている。このような凝集処理においては、溶解している硬度成分が高くて水質が悪い液を処理する場合がある。例えば、通常の工業用水のカルシウム(Ca)硬度とマグネシウム(Mg)硬度とを合わせた全硬度は、30〜60ppm程度(Ca硬度は約7掛)であるが、これよりも全硬度がはるかに高い水、例えば、セメントを含む結果カルシウムイオンを異常に高く含む廃液や炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム等の硬度成分を含有する無機物を土中から掘削するときや製造するときの廃水処理や硬度成分が多量溶解している泥水の処理や沈降分離等に適用することができるような処理方法が求められている。
【0003】
従来の凝集処理方法に関し、下記の先行技術文献が開示されている。
すなわちアクリルアミド系化合物を単量体成分とする重合体を用いる凝集剤について、アクリルアミドとアクリル酸ソーダ(ナトリウム)の共重合体である凝集剤(例えば、特許文献1〜4参照。)や、(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸とを必須構成単位とする重合体を含有する凝集剤(例えば、特許文献5〜6参照。)が開示されている。また、アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドとアクリルアミドを含有するビニル単量体の重合物の混合物から成る凝集剤(例えば、特許文献7参照。)が開示されている。
しかしながら、このような技術においては、アクリルアミド系化合物を主成分として形成される重合体が用いられることから、残留するアクリルアミド系化合物による毒性を解消したり、コストを低減したりするための工夫の余地があった。また、処理しようとする液の全硬度については特定されていないことから、液の全硬度が高い場合に充分な凝集性能が発揮されるようにする工夫の余地があった。
また、上記のようなアクリルアミド系水溶性重合体を用いてpHが高い液を凝集処理する場合、当該重合体が加水分解する場合もあり有害なアンモニアガスが発生することになり問題であった。
【0004】
また塩の形態の重合体を用いるものについて、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩を含む汚泥の凝集剤が開示されている(例えば、特許文献8参照。)。
更にN−ビニルアミドや、N−ビニルカルボン酸アミド、ジアルキルアミノプロピルアクリルアミド等のアミド系共重合体からなる凝集剤(例えば、特許文献9〜12参照。)や、特定の固有粘度やイオン交換水に対する不溶解分を特徴とし、活性炭処理したアクリル酸ナトリウムを用いた部分中和(メタ)アクリル酸系重合体を使用した凝集剤(例えば、特許文献13参照。)が開示されている。
【0005】
しかしながら、これらの技術においても、処理しようとする液の全硬度については特定されていない。また、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩の形態の重合体を含む凝集剤を用いる場合、処理しようとする液の全硬度が高いと、例えば、カルシウムイオン(Ca2+)を介して重合体が3次元化して不溶化すると共に液の濁度が高くなってしまうことから、この点において、全硬度が高い水に懸濁している固体粒子を充分に凝集させることができるようにする工夫の余地があった。したがって、これらの技術においても、全硬度が高い液に対して、懸濁している固体粒子を充分に凝集させ、廃水や泥水処理、沈降分離等に更に好適に用いられるようにするための工夫の余地があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−170433号公報(第2、5〜6頁)
【特許文献2】
特開平6−335605号公報(第2、5〜6頁)
【特許文献3】
特開平10−076109号公報(第2、4頁)
【特許文献4】
特開平4−284892号公報(第3頁)
【特許文献5】
特開平6−254305号公報(第2頁)
【特許文献6】
特開平10−099867号公報(第2、4〜5頁)
【特許文献7】
特開平11−319412号公報(第2、4〜5頁)
【特許文献8】
特開平7−308700号公報(第2頁)
【特許文献9】
特開平8−243600号公報(第2頁)
【特許文献10】
特許2779732号公報(第1頁)
【特許文献11】
特開2002−145963号公報(第2、3〜7頁)
【特許文献12】
特開平8−71599号公報(第2頁)
【特許文献13】
特開2000−212222号公報(第2、3頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、全硬度が高い液に懸濁している固体粒子を充分に凝集させ、しかも安全性が高いことから、各種の処理方法に好適に適用することができる凝集処理方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、固体粒子が懸濁している液の凝集処理方法について種々検討したところ、カルボキシル基含有水溶性重合体が凝集性能を発揮し、しかも安全性が高いことに着目し、全硬度が高い水に懸濁している固体粒子を凝集させるのに特定の耐塩指数を有するカルボキシル基含有水溶性重合体を添加すると、全硬度が高い液中の固体粒子を凝集させるのに充分な凝集性能が発揮されることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。すなわち特定の耐塩指数を有するカルボキシル基含有水溶性重合体を用いると、液中の全硬度濃度が高くなればなるほど、その作用効果が顕著になることを見いだした。例えば、全硬度濃度が低い場合、耐塩指数が低い重合体でも高い凝集効果を発揮するが、全硬度濃度が100ppm以上の場合、耐塩指数が高いカルボキシル基含有水溶性重合体を用いると、耐塩指数が低いものに比較して顕著に固体粒子の凝集性能が改善されることになる。耐塩指数が低いものを用いる場合には、全硬度濃度が高くなると凝集性能が低下し、これにより多くの凝集剤を添加することが必要となる。
またカルボキシル基含有水溶性重合体の重量平均分子量を100万以上に特定すると、凝集剤としての作用が効率的に発揮され、本発明の作用効果がより充分に発揮されることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0009】
すなわち本発明は、固体粒子を懸濁状態で含む液を凝集処理する方法であって、全硬度が100ppm以上である当該液に対して、重量平均分子量が100万以上且つ耐塩指数が50以上のカルボキシル基含有水溶性重合体を添加して、当該液中に懸濁している固体粒子をフロックとして凝集させ処理する凝集処理方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明の凝集処理方法は、固体粒子を懸濁状態で含む液を凝集処理する方法であり、全硬度が100ppm以上である液、すなわち硬度成分を100ppm以上含む液に対して、カルボキシル基含有水溶性重合体を添加することにより行うことになる。液中に懸濁している固体粒子の種類、形状、大きさ等は特に限定されるものではなく、カルボキシル基含有水溶性重合体により凝集させることができるものであればよい。
上記硬度成分は、JIS K0101に記載の全硬度分析法に従って分析されるものであり、具体的には、液中に存在するカルシウムイオン(Ca2+)及びマグネシウムイオン(Mg2+)を含むものである。本発明においては、カルシウム硬度とマグネシウム硬度とを合わせた全硬度が100ppm以上である液に対して凝集処理を行うことになる。好ましくは、500ppm以上であり、より好ましくは、1000ppm以上である。これにより、本発明の作用効果をより顕著に発揮することができる。なお、本発明の凝集処理方法は、上記硬度成分には含まれないアルミニウムイオン等の多価金属イオンが液中に存在している場合においても用いることができる。
【0011】
上記全硬度を測定する方法としては、日本工業規格(JIS K0101)に記載されている全硬度分析法に従って測定する。具体的には孔径1μmのフィルターを用いて、液をろ過した後のろ液について、下記式(1)で表すように、ろ液中に含まれるカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの量を、これに対応する炭酸カルシウムの量に換算することにより、ろ液1Lにおけるmg数(=ppm)で表すことができる。
H=b×(1000/V)×1.001 (1)
上記式中、Hは、ろ液の全硬度を表す(単位はmg/L=ppm)。bは、ろ液について、10mmol(ミリモル)/LのEDTA(エチレンジアミン四酢酸)溶液を加えて滴定した際に、ろ液の赤みが消えて青色へ変化したときの該EDTA溶液の添加量である(単位はml)。Vは、ろ液の量である(単位はml)。1.001は、10mmol(ミリモル)/LのEDTA溶液1mlの炭酸カルシウム相当量である(単位はmg/ml)。
【0012】
本発明の凝集処理方法において用いるカルボキシル基含有水溶性重合体の添加量としては、処理対象である全硬度が100ppm以上である液に対して、0.1〜1000ppmとすることが好ましい。0.1ppm未満であると、本発明の作用効果を充分に発揮することができないおそれがあり、また、1000ppmを超えても、上記添加量の範囲内で使用した場合と比較して、凝集性能等が更に向上しないおそれがある。より好ましくは、1〜500ppmであり、更に好ましくは、5〜200ppmである。
【0013】
本発明の凝集処理方法においては、重量平均分子量が100万以上且つ耐塩指数が50以上のカルボキシル基含有水溶性重合体を用いることになる。
上記カルボキシル基含有水溶性重合体の重量平均分子量が100万未満であると、充分な凝集性能を発揮することができない。また、耐塩指数が50未満であると、全硬度が高い水に懸濁している固体粒子を充分に凝集させるという本発明の作用効果を発揮することができない。
本発明における重量平均分子量の好ましい形態としては、200万〜1000万である。より好ましくは、300万〜800万である。また、耐塩指数の好ましい形態としては、60以上である。より好ましくは、70以上である。なお、耐塩指数の上限としては、100である。
【0014】
上記カルボキシル基含有水溶性重合体の重量平均分子量は、ダイナミック光散乱光度計を使用して、次のようにして求めたものである。
(重量平均分子量の測定方法)
NaCl 0.16m/lに下記濃度のカルボキシル基含有重合体を含む溶液を作成した。即ち、0.05mg/ml溶液(A)、0.1mg/ml溶液(B)、0.2mg/ml溶液(C)、0.4mg/ml溶液(D)、0.5mg/ml溶液(E)、1mg/ml溶液(F)、2mg/ml溶液(G)をそれぞれ調製した。
次に、溶液(A)〜(G)を0.45μmのメンブランフィルターでそれぞれろ過し、測定サンプル(A)〜(G)とした。次いで、ダイナミック光散乱光度計(大塚電子社製、DSL−700)を使用して、測定サンプル(A)〜(G)の光散乱強度を測定することにより重合体の重量平均分子量を求めた。なお、測定はいずれも25℃の恒温にて行った。
【0015】
本発明においては、耐塩指数を次のようにして求める。
容量100ccのビーカーに、耐塩指数を求めようとする重合体を0.2質量%含んだ水溶液90gを入れ、マグネチックスターラーで撹拌下、3%塩化カルシウム・2水和物(和光純薬社製、特級)水溶液10gを添加したものを、吸光光度計を用いて、400nmでの光透過率%(石英10mmセル、レファレンスはイオン交換水とする。)を測定する。このときの光透過率%を耐塩指数とする。なお、本件の各種実施例、重量平均分子量や耐塩指数等の物性を測定するときにはイオン交換水を使用した。
【0016】
本発明における凝集処理方法においては、油や有機溶剤等の液状有機物を含有する液にも用いることができる。液状有機物を含有する液としては、例えば、塗料の洗浄や処理工程から発生するシンナーや有機溶剤を含有する塗料工業廃水、ガソリンや重油を含有する石油工業廃水、単量体や有機溶剤等の有機工業原料を有する化学工業廃水等が挙げられ、これらの液中に存在する液状有機物の含有量は、通常数パーセント(質量%)以下である。
【0017】
本発明で用いられるカルボキシル基含有水溶性重合体としては、カルボキシル基を有する原料単量体(カルボキシル基含有単量体)を重合して得られるものであることが好ましい。
上記カルボキシル基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−ヒドロキシアクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体及びこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体及びこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、不飽和モノカルボン酸系単量体が好ましい。特に好ましい不飽和モノカルボン酸系単量体は、アクリル酸(塩)である。
【0018】
本発明においては、上記カルボキシル基含有単量体と、必要に応じて該カルボキシル基含有単量体以外の他の単量体とを必須成分として導かれる、特定の耐塩指数且つ特定の重量平均分子量を有する重合体とすることが好ましい。
このような単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド等の不飽和スルホン酸系単量体及びこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸等の不飽和ホスホン酸系単量体及びこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体;(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル等の疎水性単量体;3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレンアルコール)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ビニルアルコール等の水酸基を有する不飽和単量体;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のカチオン性単量体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体が好適である。これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0019】
上記カルボキシル基含有単量体以外の他の単量体の中でも、不飽和スルホン酸系単量体及びこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、疎水性単量体、並びに、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも一種の単量体であることが好ましい。不飽和スルホン酸系単量体の中でも2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩としての2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)が特に好ましい。また、疎水性単量体の中でも、(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましく、中でも、アクリル酸エチル(エチルアクリレート)や、アクリル酸メトキシエチル等のアルコキシアルキルアクリレートが特に好ましい。また、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートでも好ましく、その中でも、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0020】
上記カルボキシル基含有水溶性重合体としてはまた、(メタ)アクリル酸系(塩)を含む単量体群から導かれる重合体であることが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸系(塩)を含む単量体群から導かれる重合体としては、使用する単量体成分を100モル%として、(メタ)アクリル酸系単量体、好ましくはアクリル酸(塩)を50モル%以上、99モル%以下使用して重合してなる(メタ)アクリル酸系水溶性重合体とすることが好ましい。
【0021】
上記カルボキシル基含有水溶性重合体において、カルボキシル基含有単量体以外の他の単量体の使用量としては、単量体成分すべてを100モル%とすると、1モル%以上、50モル%以下とすることが好ましい。上記の範囲を外れると、凝集性能が低下すると共に、例えば、エチルアクリレートを用いる場合には、エチルアクリレートが単量体水溶液にほとんど溶解しなくなり、共重合反応が充分に進行しないおそれがある。また、アクリル酸メトキシエチル等のアルコキシ(メタ)アクリレートや2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)を多量に用いる場合には、経済的に不利になるおそれがある。
上記カルボキシル基含有単量体以外の他の単量体の使用量としては、より好ましくは、3モル%以上、40モル%未満であり、更に好ましくは、5モル%以上、35モル%未満である。
上記アミド系単量体を用いる場合には、安全性の観点から、より好ましくは、30モル%未満であり、更に好ましくは、20モル%未満である。特に好ましくは、10モル%未満である。
【0022】
上記カルボキシル基含有水溶性重合体における中和度としては、5モル%以上、100モル%以下であることが好ましい。中和度とは、カルボキシル基含有水溶性重合体が有する酸基と、中和された形態の基との総和を100モル%として示したときの、中和された形態の基の含有量(モル%)を意味しており、単量体成分中の酸型単量体と塩型単量体との合計量に対する塩型単量体の割合から求めることができる。上記中和度が5モル%未満の場合、本発明の作用効果を充分に発揮することができないおそれがある。
【0023】
上記中和された形態の基の含有割合は、以下のようにして求める。例えば、当該重合体を製造するために使用したカルボキシル基含有水溶性重合体を形成する単量体成分がアクリル酸をxモル、アクリル酸の塩としてアクリル酸ナトリウムをyモル、アクリル酸エステルとしてエチルアクリレート及び/又はアクリル酸メトキシエチルをzモル含むとし、これらがすべて重合したとすると、アクリル酸エステルがイオン性ではなく、また、中和された形態ではないために、下記式(2)により求められることになる。
分母には、本件の重合方法に使用した酸基を有する原料単量体成分と中和された形態の基(ここでは酸基がアルカリ金属等で中和された塩の形態)を有する原料単量体成分のモル数の和をとる。分子には、中和された形態の基(ここでは酸基がアルカリ金属等で中和された塩の形態)を有する原料単量体成分のモル数をとる。これを以下の式に当てはめることで中和された形態の基の含有割合をパーセントで出し、単位はモル%とする。本発明では、下記式(2)で示す中和された形態の基の含有割合を中和度と記載することがある。
(中和された状態の基の含有割合)={y/(x+y)}×100 (2)
xモル:AA(アクリル酸)
yモル:SA(アクリル酸ナトリウム)
zモル:AM(アクリル酸エチル)及び/又はAME(アクリル酸メトキシエチル)
【0024】
また、例えば、カルボキシル基含有水溶性重合体を形成する単量体成分がアクリル酸をαモル、アクリル酸の塩としてアクリル酸ナトリウムをβモル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をγモル含むとし、これらがすべて重合したとすると、下記式(3)により求められることになる。
下記式(3)においては、分母及び分子に、上記式(2)におけるのと同様に原料単量体成分のモル数をとる。これを以下の式に当てはめることで中和された形態の基の含有割合をパーセントで出し、単位はモル%とする。
(中和された状態の基の含有割合)={β/(α+β+γ)}×100 (3)
αモル:AA(アクリル酸)
βモル:SA(アクリル酸ナトリウム)
γモル:AMPS(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)
【0025】
更に、例えば、カルボキシル基含有水溶性重合体を形成する単量体成分がアクリル酸をaモル、アクリル酸の塩としてアクリル酸ナトリウムをbモル、メタクリル酸をcモル含むとし、これらがすべて重合したとすると、下記式(4)により求められることになる。
下記式(4)においては、分母及び分子に、上記式(2)におけるのと同様に原料単量体成分のモル数をとる。これを以下の式に当てはめることで中和された形態の基の含有割合をパーセントで出し、単位はモル%とする。
(中和された状態の基の含有割合)={b/(a+b+c)}×100 (4)
aモル:AA(アクリル酸)
bモル:SA(アクリル酸ナトリウム)
cモル:MAA(メタクリル酸)
【0026】
本発明におけるカルボキシル基含有水溶性重合体の製造方法としては、例えば、水溶液重合、乳化重合、逆層懸濁重合等の方法を用いることが可能であり、また、静置重合でも撹拌重合でも製造することができる。更に、熱重合でも光重合でも製造可能である。本発明においては、耐塩指数が高い高分子量物が効率的に得られるため、光照射による静置水溶液重合法が特に好ましい製造方法である。
以下に重合方法について説明する。
上記重合方法においては、単量体成分、光重合開始剤、重合溶媒及び必要に応じ連鎖移動剤を含有する反応液に近紫外線を照射することによって単量体成分を重合する光重合工程を含んでなることが好ましい。また、光重合が開始すると発熱するので、その熱を利用して重合を促進させるために光重合開始剤に熱重合開始剤が併用されていてもよい。
【0027】
上記重合方法において、光重合開始剤としては、以下のものが好適である。
2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、1,1′−アゾビス(1−アミジノ−1−シクロプロピルエタン)、2,2′−アゾビス(2−アミジノ−4−メチルペンタン)、2,2′−アゾビス(2−N−フェニルアミノアミジノプロパン)、2,2′−アゾビス(1−イミノ−1−エチルアミノ−2−メチルプロパン)、2,2′−アゾビス(1−アリルアミノ−1−イミノ−2−メチルブタン)、2,2′−アゾビス(2−N−シクロへキシルアミジノプロパン)、2,2′−アゾビス(2−N−ベンジルアミジノプロパン)及びその塩酸、硫酸、酢酸塩等、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)及びそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(イソブチルアミド)、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(1,1′−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−1,1′−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ系光重合開始剤、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184)とベンゾフェノンとの共融混合物、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(イルガキュア369)と2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア651)との3:7の混合物、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド(CGI403)と2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア1173)との1:3の混合物、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド(CGI403)と1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184)との1:3の混合物、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド(CGI403)と1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184)との1:1の混合物、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア1173)との1:1の液状混合物、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノンとの共融混合物、4−メチルベンゾフェノンとベンゾフェノンとの液状混合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドとオリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]とメチルベンゾフェノン誘導体との液状混合物、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルファニル)プロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、α−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、エチル4−ジメチルアミノベンゾエート、アクリル化アミンシナジスト、ベンゾイン(iso−及びn−)ブチルエステル、アクリルスルホニウム(モノ、ジ)ヘキサフルオロリン酸塩、2−イソプロピルチオキサントン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルスルフィド、2−ブトキシエチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、エチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾインヒドロキシアルキルエーテル、ジアセチル及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、ジフェニルジスルフィド及びその誘導体、ベンゾフェノン及びその誘導体、ベンジル及びその誘導体。
【0028】
上記光重合開始剤の使用量としては、重合に使用される単量体成分1モルに対して、0.0001g以上が好ましく、また、1g以下が好ましい。これにより、カルボキシル基含有水溶性重合体の分子量や重合率を充分に高いものとすることができる。より好ましくは、0.001g以上であり、また、0.5g以下である。
【0029】
上記連鎖移動剤としては、チオグリコール酸、チオ酢酸、メルカプトエタノール等の含硫黄化合物;亜リン酸、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸系化合物;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸系化合物;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類が好適である。これらの中でも、次亜リン酸系化合物が好ましい。より好ましくは、次亜リン酸ナトリウムである。
上記連鎖移動剤の使用量としては、重合濃度や光重合開始剤との組み合わせ等により適宜設定すればよいが、重合に使用される単量体成分1モルに対して、0.0001g以上が好ましく、また、0.2g以下が好ましい。また、更に好ましくは、0.001g以上であり、また、0.1g以下であり、特に好ましくは、0.005g以上であり、また、0.05g以下である。
【0030】
上記重合溶媒としては、水が好適に用いられる。また、水以外にも有機溶媒等を適宜併用してもよい。有機溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の炭化水素類;メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;(ジ)エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類が好適である。
光重合開始剤、連鎖移動剤及び重合溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記光重合工程においては、上記反応液に近紫外線を照射することが好ましいが、光重合工程において近紫外線を照射する装置としては、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、蛍光ケミカルランプ、蛍光青色ランプが好適である。また、近紫外線の波長領域としては、300nm以上であることが好ましく、また、500nm以下であることが好ましい。この範囲の波長を有する紫外線を反応液に照射することにより、光重合が開始し、適切な速度で重合反応が進行することになる。
【0032】
上記光重合工程においてはまた、近紫外線を0.1〜100W/m2の強度で照射して重合させることが好ましい。なお、近紫外線の光照射強度は、近紫外線が照射される反応液の上面部、すなわち反応液表面において測定される光照射強度である。光照射強度は、下記の光量計で測定することができる。
装置:紫外線積算光量計
メーカー:ウシオ電機社
型式:本体 UIT−150
センサー UVD−C365(感度波長域310〜390nm)
【0033】
上記光重合工程における重合条件としては、カルボキシル基含有単量体を含む単量体成分の組成、光重合開始剤や連鎖移動剤の種類や使用量等に応じて適宜設定すればよい。例えば、上記光重合工程における、近紫外線の照射開始から重合の終了までの時間としては、1分以上であることが好ましく、また、90分以下であることが好ましい。より好ましくは、60分以下であり、更に好ましくは、30分以下である。
上記光重合工程における重合温度としては、−5℃以上であり、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは、120℃以下である。重合を開始する温度としては、50℃以下であることが好ましい。より好ましくは、30℃以下であり、更に好ましくは、20℃以下である。重合温度が低い方が突沸や重合の暴走等の異常反応の危険がなくなり、生産性の面で有利である。また上記の重合温度は、得られる当該水溶性重合体の物性をより良好にするためにも有効な重合条件である。
【0034】
上記製造方法においては、光重合工程で得られる重合物を50℃〜200℃で乾燥させることにより、乾燥物であるカルボキシル基含有水溶性重合体を得ることが好ましい。重合物を乾燥させる方法としては、乾燥しやすいように、重合物を切断する等の方法により重合物の表面積を大きくしたり、減圧乾燥したりすることが好ましい。乾燥温度が50℃よりも低いと、重合物を充分に乾燥させることができないおそれがあり、また、200℃よりも高い場合には、重合物の主鎖や架橋点の切断が起こり、品質が低下するおそれがある。なお、乾燥時間としては、重合物に含まれる水分量や乾燥温度等に応じて適宜設定すればよい。
【0035】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0036】
実施例1
容量500mlのビーカーにアクリル酸32.2g、イオン交換水56.2g、アクリル酸ナトリウム37%水溶液51.0g及びアクリル酸エチル(エチルアクリレート)7.43gを入れ混合した。ビーカーをサランラップで覆った後、窒素ガスをバブリングすることにより溶存酸素を除去した。次いで、該液を7℃に冷却した後、光重合開始剤であるダロキュア(DC)1173(チバ・スベシヤリティケミカルズ社製、化学名:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)の1%アクリル酸溶液1.48g及び連鎖移動剤である0.75%次亜リン酸ナトリウム水溶液1.68gを添加し均一に混合して反応液を得た。この反応液中には、単量体としてアクリル酸、アクリル酸ナトリウム及びアクリル酸エチルが含まれ、反応液中の単量体濃度は40質量%であった。酸型単量体と塩型単量体との合計量に対する塩型単量体(アクリル酸ナトリウム)の割合、つまり中和度は30モル%であった。DC1173の添加量は全単量体1モルに対して0.02gであった。また、次亜リン酸ナトリウムの添加量は全単量体1モルに対して0.017gであった。
【0037】
次いで、波長範囲300〜450nmの近紫外線をブラックライト水銀ランプ(東芝社製、形名「H400BL−L」)を用いて該反応液の上部より光強度22W/m2で15分間照射した。
照射開始後、直ちに重合が開始し、15分後重合が完結した。残留単量体は殆ど存在しな且つた。このようにして得られたゲル状重合体をハサミで裁断した後、120℃で5時間減圧乾燥した。次いで、該乾燥物を卓上型粉砕機を使用して粉砕し、中和度が30モル%であるアクリル酸/アクリル酸エチル=90/10(モル比)共重合体(1)を得た。該共重合体(1)の150℃での蒸発残分は93.6%、25℃での0.2%水溶液粘度は370mPa・s、0.1%水溶液のpHは5.6であった。また、重量平均分子量(Mw)は530万であった。該共重合体(1)の耐塩性指数を次のようにして測定した。
容量100ccのビーカーに共重合体(1)0.2%水溶液90gを入れ、マグネチックスターラーで撹拌下、3%塩化カルシウム・2水和物(和光純薬社製、特級)水溶液10gを添加する。
この液の400nmでの光透過率(石英10mmセル、レファレンスはイオン交換水とする。)を吸光光度計で測定した結果、97.3%であった。
【0038】
該共重合体(1)の凝集性能を次のようにして評価した。
容量100mlのメスシリンダーに炭酸カルシウム(関東化学社製、特級)1gを入れ、そこに3%塩化カルシウム・2水和物(和光純薬社製、特級)水溶液100gを入れメスシリンダーを5回反転して均一に混合した。該混合液の一部を孔径1μのフィルターでろ過し、ろ液の全硬度をJIS K0101に記載の全硬度分析法に従って分析した結果、20500ppmであった。次いで、所定量の共重合体(1)0.2%水溶液を添加した後、メスシリンダーを5回反転したのち静置した。そのときのフロックの沈降速度と30秒経過後の上澄み液の透明性を観察した。その結果を表1に示す。
【0039】
実施例2
容量500mlのビーカーにアクリル酸31.1g、イオン交換水57.6g、アクリル酸ナトリウム37%水溶液49.1g及びアクリル酸メトキシエチル9.31gを入れ混合した。ビーカーをサランラップで覆った後、窒素ガスをバブリングすることにより溶存酸素を除去した。次いで、該液を7℃に冷却した後、光重合開始剤であるDC1173の1%アクリル酸溶液1.43g及び連鎖移動剤である0.75%次亜リン酸ナトリウム水溶液1.43gを添加し均一に混合して反応液を得た。この反応液中には、単量体としてアクリル酸、アクリル酸ナトリウム及びアクリル酸メトキシエチルが含まれ、反応液中の単量体濃度は40質量%であった。酸型単量体と塩型単量体との合計量に対する塩型単量体(アクリル酸ナトリウム)の割合、つまり中和度は30モル%であった。DC1173の添加量は全単量体1モルに対して0.02gであった。また、次亜リン酸ナトリウムの添加量は全単量体1モルに対して0.015gであった。
以下、実施例1と全く同様にして、重合・乾燥・粉砕して中和度が30モル%であるアクリル酸/アクリル酸メトキシエチル=90/10(モル比)共重合体(2)を得た。該共重合体(2)の150℃での蒸発残分は92.8%、25℃での0.2%水溶液粘度は560mPa・s、0.1%水溶液のpHは5.4であった。また、重量平均分子量は480万であった。該共重合体(2)の耐塩性指数を実施例1と同様にして測定した結果、99.3%であった。また、該共重合体(2)の凝集性能を実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0040】
実施例3
容量500mlのビーカーにアクリル酸25.07g、イオン交換水52.94g、アクリル酸ナトリウム37%水溶液56.17g及びメタクリル酸12.68gを入れ混合した。ビーカーをサランラップで覆った後、窒素ガスをバブリングすることにより溶存酸素を除去した。次いで、該液を7℃に冷却した後、光重合開始剤であるDC1173の1%アクリル酸溶液1.47g及び連鎖移動剤である0.75%次亜リン酸ナトリウム水溶液1.67gを添加し均一に混合して反応液を得た。この反応液中には、単量体としてアクリル酸、アクリル酸ナトリウム及びメタクリル酸が含まれ、反応液中の単量体濃度は40質量%であった。酸型単量体と塩型単量体との合計量に対する塩型単量体(アクリル酸ナトリウム)の割合、つまり中和度は30モル%であった。DC1173の添加量は全単量体1モルに対して0.02gであった。また、次亜リン酸ナトリウムの添加量は全単量体1モルに対して0.017gであった。
【0041】
重合時間を60分とした他は実施例1と全く同様にして、重合・乾燥・粉砕して中和度が30モル%であるアクリル酸/メタクリル酸=80/20(モル比)共重合体(3)を得た。該共重合体(3)の150℃での蒸発残分は92.4%、25℃での0.2%水溶液粘度は185mPa・s、0.1%水溶液のpHは5.8であった。また、重量平均分子量は240万であった。該共重合体(3)の耐塩性指数を実施例1と同様にして測定した結果、53.3%であった。また、該共重合体(3)の凝集性能を実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0042】
実施例4
容量500mlのビーカーにアクリル酸16.66g、イオン交換水38.85g、アクリル酸ナトリウム37%水溶液78.97g及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸12.87gを入れ混合した。ビーカーをサランラップで覆った後、窒素ガスをバブリングすることにより溶存酸素を除去した。次いで、該液を7℃に冷却した後、光重合開始剤であるDC1173の1%アクリル酸溶液1.24g及び連鎖移動剤である0.75%次亜リン酸ナトリウム水溶液1.41gを添加し均一に混合して反応液を得た。この反応液中には、単量体としてアクリル酸、アクリル酸ナトリウム及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が含まれ、反応液中の単量体濃度は40質量%であった。酸型単量体と塩型単量体との合計量に対する塩型単量体(アクリル酸ナトリウム)の割合、つまり中和度は50モル%であった。DC1173の添加量は全単量体1モルに対して0.02gであった。また、次亜リン酸ナトリウムの添加量は全単量体1モルに対して0.017gであった。
【0043】
以下、実施例1と全く同様にして、重合・乾燥・粉砕して中和度が50モル%であるアクリル酸/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸=90/10(モル比)共重合体(4)を得た。該共重合体(4)の150℃での蒸発残分は92.8%、25℃での0.2%水溶液粘度は440mPa・s、0.1%水溶液のpHは5.4であった。また、重量平均分子量は510万であった。該共重合体(4)の耐塩性指数を実施例1と同様にして測定した結果、98.8%であった。また、該共重合体(4)の凝集性能を実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0044】
実施例5
容量500mlのビーカーにアクリル酸32.2g、イオン交換水56.2g、アクリル酸ナトリウム37%水溶液51.0g及びアクリル酸エチル7.43gを入れ混合した。ビーカーをサランラップで覆った後、窒素ガスをバブリングすることにより溶存酸素を除去した。次いで、該液を7℃に冷却した後、光重合開始剤であるDC1173の1%アクリル酸溶液1.48g及び連鎖移動剤である2.25%次亜リン酸ナトリウム水溶液1.68gを添加し均一に混合して反応液を得た。この反応液中には、単量体としてアクリル酸、アクリル酸ナトリウム及びアクリル酸エチルが含まれ、反応液中の単量体濃度は40質量%であった。酸型単量体と塩型単量体との合計量に対する塩型単量体(アクリル酸ナトリウム)の割合、つまり中和度は30モル%であった。DC1173の添加量は全単量体1モルに対して0.02gであった。また、次亜リン酸ナトリウムの添加量は全単量体1モルに対して0.051gであった。
【0045】
以下、実施例1と全く同様にして、重合・乾燥・粉砕して中和度が30モル%であるアクリル酸/アクリル酸エチル=90/10(モル比)共重合体(5)を得た。該共重合体(5)の150℃での蒸発残分は93.3%、25℃での0.2%水溶液粘度は130mPa・s、0.1%水溶液のpHは5.4であった。また、重量平均分子量は130万であった。該共重合体(5)の耐塩性指数を実施例1と同様にして測定した結果、99.7%であった。また、該共重合体(6)の凝集性能を実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0046】
実施例6
凝集性能の評価方法として、容量100mlのメスシリンダーに炭酸カルシウム(関東化学社製、特級)1gを入れ、そこに0.02%塩化カルシウム・2水和物(和光純薬社製、特級)水溶液100gを入れメスシリンダーを5回反転して均一に混合した。該混合液の一部を孔径1μのフィルターでろ過し、ろ液の全硬度をJIS K0101に記載の全硬度分析法に従って分析した結果、155ppmであった。他の操作は実施例1と全く同様にして共重合体(1)の凝集性能を評価した。その結果を表1に示す。
【0047】
実施例7
凝集性能の評価方法として、容量100mlのメスシリンダーに炭酸カルシウム(関東化学社製、特級)1gを入れ、そこに塩化カルシウム・2水和物(和光純薬社製、特級)及び塩化マグネシウム・6水和物(和光純薬社製、特級)をそれぞれ1%含有する水溶液100gを入れメスシリンダーを5回反転して均一に混合した。該混合液の一部を孔径1μのフィルターでろ過し、ろ液の全硬度をJIS K0101に記載の全硬度分析法に従って分析した結果、12000ppmであった。
他の操作は実施例1と全く同様にして共重合体(1)の凝集性能を評価した。その結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
上記表1中の記載は、以下の通りである。
AAとはアクリル酸であり、EAとはアクリル酸エチルであり、AMEとはアクリル酸メトキシエチルであり、MAAとはメタクリル酸であり、AMPSとは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。
上澄み液透明性としては、以下のように評価した。
1点:高濁度、2点:高〜中濁度、3点:中濁度、4点:中〜小濁度、5点:小濁度。
【0050】
比較例1
実施例1と同様に、重量平均分子量が400万であるポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒社製、商品名「IH−G」、比較用重合体(1)とする。)の耐塩性指数を測定した結果、5.6%であった。該ポリアクリル酸ナトリウムの凝集性能を実施例1と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0051】
比較例2
実施例1と同様に、部分中和ポリアクリル酸ナトリウム(昭和電工社製、商品名「NP700」、比較用重合体(2)とする。)の耐塩性指数を測定した結果、16.5%であった。該部分中和ポリアクリル酸ナトリウムの凝集性能を実施例1と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0052】
比較例3
容量500mlのビーカーにアクリル酸30.90g、イオン交換水52.29g、アクリル酸ナトリウム37%水溶液57.16g及びメタクリル酸6.45gを入れ混合した。ビーカーをサランラップで覆った後、窒素ガスをバブリングすることにより溶存酸素を除去した。次いで、該液を7℃に冷却した後、光重合開始剤であるDC1173の1%アクリル酸溶液1.50g及び連鎖移動剤である0.75%次亜リン酸ナトリウム水溶液1.70gを添加し均一に混合して反応液を得た。この反応液中には、単量体としてアクリル酸、アクリル酸ナトリウム及びメタクリル酸が含まれ、反応液中の単量体濃度は40質量%であった。酸型単量体と塩型単量体との合計量に対する塩型単量体(アクリル酸ナトリウム)の割合、つまり中和度は30モル%であった。DC1173の添加量は全単量体1モルに対して0.02gであった。また、次亜リン酸ナトリウムの添加量は全単量体1モルに対して0.017gであった。
【0053】
重合時間を60分とした他は実施例1と全く同様にして、重合・乾燥・粉砕して中和度が30モル%である比較用アクリル酸/メタクリル酸=90/10(モル比)共重合体(3)を得た。該比較用共重合体(3)の150℃での蒸発残分は94.4%、25℃での0.2%水溶液粘度は265mPa・s、0.1%水溶液のpHは5.8であった。また、重量平均分子量は270万であった。該比較用共重合体(3)の耐塩性指数を実施例1と同様にして測定した結果、45.6%であった。また、該比較用共重合体(3)の凝集性能を実施例1と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0054】
比較例4
容量500mlのビーカーにアクリル酸32.2g、イオン交換水56.2g、アクリル酸ナトリウム37%水溶液51.0g及びアクリル酸エチル7.43gを入れ混合した。ビーカーをサランラップで覆った後、窒素ガスをバブリングすることにより溶存酸素を除去した。次いで、該液を7℃に冷却した後、光重合開始剤であるDC1173の1%アクリル酸溶液1.48g及び連鎖移動剤である3.75%次亜リン酸ナトリウム水溶液1.68gを添加し均一に混合して反応液を得た。この反応液中には、単量体としてアクリル酸、アクリル酸ナトリウム及びアクリル酸エチルが含まれ、反応液中の単量体濃度は40質量%であった。酸型単量体と塩型単量体との合計量に対する塩型単量体(アクリル酸ナトリウム)の割合、つまり中和度は30モル%であった。DC1173の添加量は全単量体1モルに対して0.02gであった。また、次亜リン酸ナトリウムの添加量は全単量体1モルに対して0.085gであった。
【0055】
以下、実施例1と全く同様にして、重合・乾燥・粉砕して中和度が30モル%である比較用アクリル酸/アクリル酸エチル=90/10(モル比)共重合体(4)を得た。該比較用共重合体(4)の150℃での蒸発残分は93.7%、25℃での0.2%水溶液粘度は85mPa・s、0.1%水溶液のpHは5であった。また、重量平均分子量は95万であった。該比較用共重合体(4)の耐塩性指数を実施例1と同様にして測定した結果、99.1%であった。また、該比較用共重合体(4)の凝集性能を実施例1と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0056】
比較例5
凝集性能の評価方法として、容量100mlのメスシリンダーに炭酸カルシウム(関東化学社製、特級)1gを入れ、そこに0.02%塩化カルシウム・2水和物(和光純薬社製、特級)水溶液100gを入れメスシリンダーを5回反転して均一に混合した。該混合液の一部を孔径1μのフィルターでろ過し、ろ液の全硬度をJIS K0101に記載の全硬度分析法に従って分析した結果、155ppmであった。他の操作は実施例1と全く同様にして比較用共重合体(1)の凝集性能を評価した。その結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
上記表2中の記載は、上述した表1のものと同様である。
【0059】
【発明の効果】
本発明の凝集処理方法は、上述のような構成であるので、全硬度が高い液に懸濁している固体粒子を充分に凝集させ、しかも安全性が高いことから、下水や一般産業廃水等の水の処理、土木現場での泥水処理、浚渫埋め立て時の泥水の沈降分離等に好適に適用することができる処理方法である。
Claims (4)
- 固体粒子を懸濁状態で含む液を凝集処理する方法であって、全硬度が100ppm以上である当該液に対して、
重量平均分子量が100万以上且つ耐塩指数が50以上のカルボキシル基含有水溶性重合体を添加して、当該液中に懸濁している固体粒子をフロックとして凝集させ処理する
ことを特徴とする凝集処理方法。 - 前記カルボキシル基含有水溶性重合体は、カルボキシル基含有単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び/又は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)とを必須成分として導かれる重合体である
ことを特徴とする請求項1記載の凝集処理方法。 - 前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、エチルアクリレート及び/又はアルコキシアルキルアクリレートである
ことを特徴とする請求項2記載の凝集処理方法。 - 前記カルボキシル基含有水溶性重合体は、(メタ)アクリル酸系(塩)を含む単量体群から導かれる重合体である
ことを特徴とする請求項1、2又は3記載の凝集処理方法。
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