JP2009019181A - 低付着性(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】重合時に使用する全単量体100モル%に対して(メタ)アクリル酸(塩)が60モル%以上である単量体成分を含む重合液を水溶液重合して(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルを連続的に製造する方法であって、上記製造方法は、単量体成分を含む重合液のpHを7〜14とすると共に、該含水ゲルと接するベルト面がステンレス製であるベルト重合機を用いて、ゲル厚を8〜50mm且つ重合ピーク温度を85℃以下に制御して重合を行う工程を含むことを特徴とする低付着性(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルの製造方法。
【選択図】なし
Description
なお、(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体と同様の性能を発揮する重合体としてアミド系重合体があるが、アミド系重合体はもともと低付着性であり、付着性を低くして含水ゲルを引き剥がす工程が必須となるようなものではない。(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体は、アミド系重合体よりも広く多くの技術分野において好適に適用することができるものであることから、(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体の製造において含水ゲルを引き剥がす工程を不要とすることが求められるところであった。
理由は定かではないが、注型重合法で得られる含水ゲルは、基材(ステンレス等)に対する離型が悪い。
このため、注型重合法の場合、通常、鉄製の容器にテフロン(登録商標)ライニング処理を施したものを重合容器としている。テフロン(登録商標)ライニング処理した重合容器を使用すると、重合により得られた含水ゲルは、比較的容易に重合容器(重合枠)より剥がれる。
しかし、テフロン(登録商標)ライニングは長時間使用していくと、鉄製の重合容器より浮き上がった形の剥離を引き起こす。このようになると、伝熱が極端に悪くなり、ゲルへの加熱や冷却が困難となる。このため、定期的なライニングの補修が必要となり、製品コスト上昇に繋がるという課題があった。
この離型材を使用すると、ゲルの付着トラブルはなくなるが、長時間使用すると劣化するという課題があった。従って、離型材を用いないで離型性を高めることが、含水ゲルの製造方法を更に安価且つ効率的なものとするために望まれていた。
ベルト重合機を用いて連続生産する場合は、基本的には無人とすることができ、その際に引き剥がす必要が生じれば、連続工程における作業効率(例えば、作業工程数、作業時間)、人件費等に大きな差異を生じることになる。
したがって、連続的な製造においては、離型材を用いることなく、且つ、引き剥がすことなしに重合工程を行うことが重要な課題であるとされ、更に効率の良い工程とすることが望まれていた。
ベルト重合機を用いて(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルを連続的に製造する場合、含水ゲルを低付着性とすることができれば作業効率(作業工程数、作業時間)、人件費等が大幅に軽減されることになるため、含水ゲルを低付着性とすることに大きな技術的意味があるといえる。
なお、注型重合法で得られる含水ゲルは、理由は定かではないが、ベルト重合法で得られる含水ゲルよりも基材(ステンレス等)に対する離型が悪く、ベルト重合法で得られる含水ゲルほど低付着性とはならないものである。
以下に本発明を詳述する。
上記含水ゲルと接するベルト面とは、重合容器の底面をいい、ベルト基材の上面を意味する。
低付着性(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルを連続的に製造するとは、人手が必要な工程を介することなく、該含水ゲルを製造し続けることをいう。
上記水溶液重合においては、例えば、窒素ガスをバブリングする等の方法により、水溶液(重合液)中に溶解している溶存酸素を予め除去した状態で重合を行うことが好ましい。
上記モノマー液又は触媒水溶液の抜き出しは、例えばギヤーポンプを用いて単位時間当たりに一定量を抜き出すことが好ましい。例えば、単位時間当たりにモノマー液を抜き出す質量が単位時間当たりに触媒水溶液を抜き出す質量に対して、3〜500倍が好ましく、10〜200倍がより好ましい。
上記重合液の液比重(g/cm3)は、0.9〜1.5が好ましく、1.0〜1.3がより好ましく、1.05〜1.25が更に好ましい。
本発明の製造方法において、ベルト重合機の含水ゲルと接するベルト面(ベルト基材)は、ステンレス製である。これらの中でも、ステンレス鋼(SUS)が好ましい。ステンレス鋼としては、例えば、SUS301、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS430、SUS630等が挙げられる。中でも、SUS301が特に好ましい。
上記含水ゲルと接するベルト面の表面粗度(Ra)としては、1μm以下を使うことができるが、好ましくは0.005〜0.6μmであり、更に好ましくは0.02〜0.5μmである。特に好ましくは0.1〜0.4μmである。
本発明の好ましい形態としては、ベルト面上に離型材が貼られておらず、含水ゲルと該含水ゲルと接するベルト面との間にテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂製離型材や他の離型材を用いることなく含水ゲルを製造する形態、すなわち、含水ゲルの製造において含水ゲルとベルト面とが直接接する形態であり、低コストで含水ゲルを製造することができるところにも本発明の技術的意義がある。すなわち、離型材が装着されていないベルト面(基材)を用いて、(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルを低付着性のものとし、含水ゲルを製造することが好ましい。
重合液のpHが7より低い場合、含水ゲルが該含水ゲルと接するベルト面上に強く付着し、引き剥がすことが困難となる。例えば、中和度が0〜60モル%であれば、離型性に劣ることになる。
14より大きい場合、余剰のアルカリが製品中に残留することになり好ましくない。また、アゾ系重合開始剤のように、pHが高すぎると分解が悪くなり結果として重合速度が大幅に遅れることがある。本発明の製造方法は、上記重合液のpHを8〜13とすることが特に好ましい。
更に不都合なことは、例えば、光重合で含水ゲルを得るような場合、含水ゲルの上下で光強度の大きなずれが発生し、結果として不均一なゲルとなるため好ましくない。
本発明の製造方法は、ゲル厚を10〜30mmに制御することが好ましい。
上記ゲル厚と重合液厚とは異なるものである。ゲル厚は、通常重合液厚より少し薄くなる。これは、重合による体積収縮のためである。
上記重合液の温度は、例えば重合液(含水ゲル)の厚み方向中央部の温度を白金線測温抵抗体温度計を用いて測定することにより求めることができる。
重合ピーク温度が高くなると、通常ベルト重合機出口での温度も高いものとなる。
本発明の製造方法は、上記重合ピーク温度を80℃以下に制御することが好ましい。より好ましくは、75℃以下である。すなわち、本発明の製造方法は、重合ピーク温度を75℃以下に制御することが好ましい。
重合ピーク温度の下限としては、分子量が充分なものとなる温度であればよく、30℃以上であることが好ましい。より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、50℃以上である。
また、重合開始温度としては、15〜50℃が好ましい。
ステンレス製のベルト基材の下面を水と接触させる形態は、特に限定されないが、例えばベルト面の下部より水がシャワー状に散布される形態が好ましい。
上記ベルト基材の下面を接触させる水の温度は、重合液を冷却できる温度であれば特に限定されないが、5〜40℃であることが好ましい。本発明においては、熱伝導度に優れたステンレス製のベルト基材上で重合するため、比較的高温の冷却水を使用しても重合液を充分に冷却することができ、分子量の高くかつ残留単量体含量の少ないアクリル酸(塩)重合体が安価に得られることになる。通常、夏場においては、冷却塔における水温の上限は35℃程度となる。本願発明の製造方法によると35℃程度の比較的高温度の水を冷却水として使用することができるため、冷却水を冷却するための冷凍機が不要となり設備費が安くなる。上記水の温度としてより好ましくは、10〜38℃であり、更に好ましくは、20〜35℃である。
また後述するように、上記重合ピーク温度の制御は、紫外線を用いた光重合によって重合を行う場合、紫外線の照射条件を調整すること等によっても行うこともできる。
上記(メタ)アクリル酸(塩)の割合は、重合時に使用する全単量体100モル%中の(メタ)アクリル酸(塩)の割合(モル%)であり、本発明では、60モル%以上に特定されることになる。すなわち、(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルを構成することになる単量体成分の全量を100モル%とすると、そのうち(メタ)アクリル酸(塩)の割合が60モル%以上となるようにすればよい。(メタ)アクリル酸(塩)単量体の比率が高い程、重合して得られた含水ゲルの付着性を低いものとする本発明の効果がより顕著になる。本発明の(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルの製造方法において、上記単量体成分は、(メタ)アクリル酸(塩)が80モル%以上であることが好ましい。さらに好ましくは、90モル%以上である。
なお、(メタ)アクリル酸(塩)の上限は、単量体成分の実質的に全てが(メタ)アクリル酸(塩)である100モル%とすることができ、したがって、(メタ)アクリル酸(塩)の範囲は、重合時に使用する全単量体100モル%に対して、60〜100モル%であることが好ましく、80〜100モル%であることがより好ましい。より好ましくは、90〜100モル%である。
上記(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体は、(メタ)アクリル酸系水溶性重合体部分中和塩及び/又は(メタ)アクリル酸水溶性重合体完全中和塩を意味する。これらの具体的な化合物については、後述するとおりである。
上記(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルは、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸塩により構成される(メタ)アクリル酸(塩)単量体を必須とする単量体成分を重合して得られる重合体により形成される、水を含んでなるゲル状物である。
上記重量平均分子量の測定方法は、ダイナミック光散乱光度計を用いて以下の条件により測定するものである。
装置:ダイナミック光散乱光度計(大塚電子社製、商品名:DSL−700)
溶媒:0.16MのNaClの水溶液
試料濃度:0.05〜2mg/ml
試料pH:10(at25℃)
測定温度:25℃
重合工程では、上述したように(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸塩により構成される(メタ)アクリル酸(塩)単量体を必須とする単量体成分を重合することとなる。上記(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルは、このようにして得られる重合体により形成される、重合溶媒としての水を含んでなるゲル状物であるが、(メタ)アクリル酸塩としては、(メタ)アクリル酸を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物、すなわち(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸マグネシウム、(メタ)アクリル酸カルシウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも(メタ)アクリル酸ナトリウムが好ましい。より好ましくは、アクリル酸ナトリウムである。
重合時の単量体濃度としては、20〜60質量%とすることが好ましい。重合時の単量体濃度がこの範囲を外れた場合、ステンレス製のベルト面からゲルの離型が悪くなる場合がある。単量体濃度が20質量%を下回るとこの傾向が強くなるものである。より好ましくは、25〜55質量%であり、更に好ましくは、30〜50質量%である。
本発明の光重合の形態は、紫外線を用いる形態であり、中でも上記紫外線として近紫外線を使用する形態が好ましい。上記光重合は、第1段目の反応として、10W/m2以下の紫外線を用いることによって行うことが好ましい形態の1つである。10W/m2を超える場合、光量が高過ぎて重合ピーク温度が高くなり、充分に高い分子量の重合体を得ることができず、また、不溶解分が多く発生するおそれがある。より好ましくは、8W/m2以下であり、更に好ましくは、6W/m2以下である。下限値としては、1W/m2以上であることが好ましい。1W/m2未満であると、重合反応を充分に促進できないおそれがある。より好ましくは、1.5W/m2以上であり、更に好ましくは、2W/m2以上である。
なお、本発明で紫外線とは、主要な波長範囲が10〜500nmの光であり、近紫外線とは、主要な波長範囲が300〜500nmの光のことである。
なお、上記照射時間は、当該重合液の基材ベルト上での移動距離、ベルトの移動速度、ベルトの有効長さなどを考慮して決定できる。
上記2段階目の紫外線の照射時間としては、残存する単量体を充分に低減でき照射時間であれば特に限定されないが、1〜30分であることが好ましい。より好ましくは、3〜20分であり、更に好ましくは、5〜15分である。
装置:UVメーター
メーカー:株式会社カスタム
型式:本体 UVA−365
センサー:UVセンサー(スペクトラ応答性 300nm〜400nm)
なお、紫外線の強度に関する問題としては、その強度が強すぎると重合制御が困難となる問題、すなわち突沸問題と不溶解分が増える傾向にあるという品質問題がある。最初は強度を弱くして一次反応を行い、次いで強度を強くすることで、このような問題に対しても有利となる。
図4は、減光板を設ける形態であり、連続基材ベルト(ステンレス製)4と紫外線ランプ5との間に、減光板6が設置されている。この場合、ベルト4を稼働させることで、重合液が減光板6の下部を移動していくことになる。ここに紫外線ランプ5により一定強度の紫外線を照射すると、減光板6が設置されている部分を移動するときは、光照射強度が低下した紫外線(例えば10W/m2以下の近紫外線)が重合液に照射され、減光板6が設置されていない部分を移動するときはこの一定強度の紫外線(例えば10W/m2を超える近紫外線)が重合液に照射されることになる。従って、重合液をベルト4によって移動させ、減光板6が設けられた部分と設けられていない部分とを通過することにより、光照射強度を変更することができる。
上記ベルトの長さ(重合長ともいう)としては、1000mm以上が好ましく、また、30000mm以下が好ましい。より好ましくは1500mm以上であり、更に好ましくは2000mm以上であり、また、より好ましくは20000mm以下であり、更に好ましくは15000mm以下である。
上記ベルトの速度は、2cm/min以上が好ましく、5cm/min以上がより好ましい。200cm/min以下が好ましく、100cm/min以下がより好ましい。
重合液(含水ゲル)がベルト上に滞留する時間は、5分以上が好ましい。5分以上とすることにより、含水ゲルを充分高分子量のものとすることができ、付着性を低いものとすることができる。10分以上がより好ましく、15分以上が更に好ましい。また、100分以下が好ましい。100分以下とすることにより、本発明の製造方法がより効率的なものになる。50分以下がより好ましく、40分以下が更に好ましい。
上記光重合開始剤としては、その作用効果を発揮するものであれば特に限定されないが、アゾ系開始剤が好ましい。アゾ系開始剤としては、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、1,1′−アゾビス(1−アミジノ−1−シクロプロピルエタン)、2,2′−アゾビス(2−アミジノ−4−メチルペンタン)、2,2′−アゾビス(2−N−フェニルアミノアミジノプロパン)、2,2′−アゾビス(1−イミノ−1−エチルアミノ−2−メチルプロパン)、2,2′−アゾビス(1−アリルアミノ−1−イミノ−2−メチルブタン)、2,2′−アゾビス(2−N−シクロへキシルアミジノプロパン)、2,2′−アゾビス(2−N−ベンジルアミジノプロパン)及びその塩酸、硫酸、酢酸塩等、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)及びそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(イソブチルアミド)、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(1,1′−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−1,1′−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等が好適である。これらの中でも、2,2′−アゾビス−2−アミジノプロパン2塩酸塩等のアゾ系水溶性開始剤がより好ましい。このように、上記重合工程は、重合開始剤がアゾ系水溶性開始剤であるアクリル酸塩系重合体の製造方法アゾ系水溶性開始剤もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
本発明の製造方法において熱重合によって重合を行う場合は、熱重合開始剤を用いることになる。
熱重合開始剤を用いることにより、残存する単量体の量を低減することができる。
上記熱重合開始剤としては、水性媒体に可溶な広い範囲の重合開始剤が使用可能であるが、例えば、過酸化水素;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、4,4′−アゾビス−(4−シアノバレリン酸)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;過酢酸、過コハク酸等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
還元剤を使用する場合は、単量体成分1モルに対して、0.001〜1gが好ましい。
上記連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコール酸、チオ酢酸、メルカプトエタノール等の含硫黄化合物;亜燐酸、亜燐酸ナトリウム等の亜燐酸系化合物;次亜燐酸、次亜燐酸ナトリウム等の次亜燐酸系化合物;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類が好適である。これらの中でも、次亜燐酸系化合物が好ましい。より好ましくは、次亜燐酸ナトリウムである。上記連鎖移動剤の使用量としては、重合濃度や光重合開始剤との組み合わせ等により適宜設定すればよいが、重合に使用される単量体成分1モルに対して、0.0001g以上が好ましく、また、0.2g以下が好ましい。また、更に好ましくは、0.001g以上であり、また、0.15g以下であり、特に好ましくは、0.005g以上であり、また、0.10g以下である。
すなわち、本発明においては、製造対象が特定組成の水溶性樹脂の含水ゲルをSUSの金属基材ベルトで連続的に製造する場合、当該金属基材ベルトへの付着性の低い含水ゲルを効率よく製造することができるところに、顕著な技術的効果がある。
本願発明における含水ゲル中の残留単量体量としては、重合反応に使用した全単量体に対して5モル%以下が好ましい。3モル%以下がより好ましく、1モル%以下が特に好ましい。ゲル中の残留単量体量が全単量体に対して5モル%を超えた場合、ベルト面からゲルの離型が悪くなる場合がある。
処理工程としては、例えば、重合、押出、乾燥、粉砕、分級の順に、これらの工程を含むことが好ましい。このような工程を経ることにより、種々の分野に好適に使用できる(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体が得られることとなる。
実施例で使用したゲル、すなわち本発明の製造方法により得られた含水ゲルは、全て残留単量体量が1モル%以下であった。
容量200Lのステンレス製ドラムにアクリル酸ナトリウム37%水溶液149.7部、70%グリセリン水溶液1.99部を入れ、攪拌下、5%硫酸を添加してpHを10.0に調整した。
次いで、イオン交換水を添加して全量を152.3部にした。次いで、窒素ガスをバブリングして、溶存酸素を4ppmに下げることによりモノマー液(1)を作製した。
次に、容量2Lのステンレス製容器に、重合触媒として2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩(和光純薬工業社製、商品名V−50)0.0235部及びイオン交換水1.543部を添加し、攪拌して溶解した。このようにして触媒水溶液(1)を作製した。該触媒水溶液中の触媒V−50の濃度は1.5%であった。
図5に示した重合設備において、モノマー槽よりギヤーポンプP1を用いてモノマー液(1)を33.85部/Hrの割合で抜き出した。また、触媒槽よりギヤーポンプP2を用いて触媒水溶液(1)を0.348部/Hrの割合で抜き出した。
モノマー液(1)と触媒水溶液(1)は混合器で混合され、重合液(1)として34.2部/Hrの割合でベルト重合機に供給された。該重合液(1)中のアクリル酸ナトリウムの濃度は36%であった。また、液比重は1.173であった。グリセリンは、アクリル酸ナトリウムに対して2.5%の添加量であり、V−50はアクリル酸ナトリウム1モルに対して0.04gの添加量であった。また、pHは10.0であった。
ベルト重合機はワーク幅300mm、重合長2700mmであり、10.8cm/minの速度で連続的に稼動した。また、ベルト基材の材質はSUS301であり、研磨グレードはJIS G4305に規定される2Bに相当するものであり、Raが0.4μmであった。上記JIS G4305に規定される2Bは、「冷間圧延後、熱処理、酸洗又はこれに準じる処理を施した後、適当な光沢を得る程度に冷間圧延して仕上げたもの。」を意味する((社)特殊鋼倶楽部編集委員会ステンレス鋼ワーキンググループ、「ステンレス鋼の利用状況」、(株)特殊鋼倶楽部、平成元年3月25日、p264の記載内容を参照のこと)。またSUS301以外でも例えば、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS430、SUS630等も使うことができる。その場合もRaを1μm以下とすることが好ましい。
ベルト面より20cm上部にUVランプ(ブラックライト水銀ランプ 東芝ライテック社製 商品名H250BL−L250W)が6本設置された。ランプの直下には、ランプ毎に減光用のパンチングメタルが配置された。
パンチングメタルは重合液の入口部から数えて1〜4枚は開口率が10.1%であり、5〜6枚は開口率が51%であった。このようにすることにより、重合液の入口部から1〜4枚のパンチングメタルの下でベルト面の直上の光強度を約3W/m2に調整した。また、5〜6枚のパンチングメタルの下でベルト面の直上の光強度を約13W/m2に調整した。
該ベルト重合機に上記した重合液を34.2部/Hrの割合で連続的に供給した。
ベルトには離型材は貼っていなかった。すなわち、含水ゲルと該含水ゲルと接するベルト面との間にテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂製離型材や他の離型材を用いることなく含水ゲルを製造した。
ベルト重合機の出口より厚み14mmの含水ゲルが連続的に排出されたが、ベルト面に付着することなしに極めて容易に剥離しながら連続的に排出された。
重合期間中、重合液(含水ゲル)の厚み方向中央部の温度を白金線測温抵抗体温度計で測定したところ、最高温度(ピーク温度)として76℃であった。
その結果を表1に示した。
更に、該重合体粉末(1)の重合率(全単量体に対する重合した単量体のモル%)を臭素付加法で測定した結果、99%以上であった。また重合体粉末(1)の重量平均分子量を前記した方法で測定した結果、470万であった。
実施例1で用いたのと同じ重合容器を用い、下記表1に示した重合条件で重合した他は実施例1と同様に重合した。その結果を下記表1に示した。
得られた含水ゲルを実施例1と同等に乾燥し、重合体粉末(2)〜(9)を得た。該重合体粉末(2)〜(9)の物性を実施例1と同様に測定した。不溶解分は殆ど認められずに均一に溶解した。また、該重合体粉末(2)〜(9)の重合率は全て、99%以上であった。
容量200Lのステンレス製ドラムにアクリル酸ナトリウム37%水溶液52.3部、70%グリセリン水溶液1.81部、イオン交換水50部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸28.4部を入れ、攪拌下、48%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10.0に調整した。
次いで、イオン交換水を添加して全量を153.9部にした。次いで、窒素ガスをバブリングして、溶存酸素を4ppmに下げることによりモノマー液(10)を作製した。
次に、容量2Lのステンレス製容器に、重合触媒として2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩(和光純薬工業社製、商品名V−50)0.0137部及びイオン交換水0.899部を添加し、攪拌して溶解した。このようにして触媒水溶液(10)を作製した。該触媒水溶液中の触媒V−50の濃度は1.5%であった。
実施例1で用いたのと同じ重合設備において、モノマー槽よりギヤーポンプP1を用いてモノマー液(10)を33.3部/Hrの割合で抜き出した。また、触媒槽よりギヤーポンプP2を用いて触媒水溶液(10)を0.197部/Hrの割合で抜き出した。
モノマー液(10)と触媒水溶液(10)は混合器で混合され、重合液(10)として33.3部/Hrの割合でベルト重合機に供給されている。該重合液(10)中のアクリル酸ナトリウムと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムからなる単量体の濃度は33%であった。また、液比重は1.141であった。グリセリンは、単量体に対して2.5%の添加量であり、V−50は単量体1モルに対して0.04gの添加量である。また、pHは10.0であった。
ベルト重合機の出口より、厚み約14mmの含水ゲルが、ベルト面に付着することなしに連続的に排出された。
重合期間中、重合液(含水ゲル)の厚み方向中央部の温度を白金線測温抵抗体温度計で測定したところ、最高温度(ピーク温度)として63℃であった。
得られた含水ゲルを実施例1と同等に乾燥し重合体粉末(10)を得た。該重合体粉末(10)の物性を実施例1と同様に測定した。不溶解分は殆ど認められずに均一に溶解した。また、該重合体粉末(10)の重合率は99%以上であった。
下記表1及び2の「モノマー組成(モル比)」の欄において、SAは、アクリル酸ナトリウムを表し、AAは、アクリル酸を表し、SMAは、メタクリル酸ナトリウムを表し、AMPS−Naは、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムを表し、AAmは、アクリルアミドを表す。
実施例1で用いたのと同じ重合容器を用い、下記表2に示した重合条件で重合した他は実施例1と同様に重合しその結果を下記表2に示した。
得られた含水ゲルを実施例1と同等に乾燥し比較重合体粉末(1)〜(3)を得た。該比較重合体粉末(1)〜(3)の物性を実施例1と同様に測定した。不溶解分は殆ど認められずに均一に溶解した。また、該比較重合体粉末(1)〜(3)の重合率は全て、99%以上であった。
容量200Lのステンレス製ドラムにアクリル酸ナトリウム37%水溶液113.0部、アクリル酸2.23部、アクリルアミド40%水溶液9.17部、イオン交換水28.1部を入れ、攪拌した。
次いで、窒素ガスをバブリングして、溶存酸素を4ppmに下げることにより比較モノマー液(4)を作製した。
次に、容量2Lのステンレス製容器に、重合触媒として2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩(和光純薬工業社製、商品名V−50)0.021部及びイオン交換水1.386部を添加し、攪拌して溶解した。このようにして比較触媒水溶液(4)を作製した。該触媒水溶液中の触媒V−50の濃度は1.5%であった。
実施例1で用いたのと同じ重合設備において、モノマー槽よりギヤーポンプP1を用いて比較モノマー液(4)を39.2部/Hrの割合で抜き出した。また、触媒槽よりギヤーポンプP2を用いて比較触媒水溶液(4)を0.362部/Hrの割合で抜き出した。
比較モノマー液(4)と比較触媒水溶液(4)は混合器で混合され、比較重合液(4)として39.2部/Hrの割合でベルト重合機に供給されている。比較該重合液(4)中のアクリル酸ナトリウム、アクリル酸及びアクリルアミドからなる単量体の濃度は31%であった。また、液比重は1.133であった。V−50は単量体1モルに対して0.04gの添加量である。また、比較重合液(4)のpHは5.8であった。
ベルト重合機の出口より厚み約18mmの含水ゲルが排出されたが、ベルト面に極めて強固に付着し、容易に剥がれなかった。
重合期間中、重合液(含水ゲル)の厚み方向中央部の温度を白金線測温抵抗体温度計で測定したところ、最高温度(ピーク温度)として72℃であった。
得られた含水ゲルを乾燥温度100℃で乾燥した他は実施例1と同等に乾燥し、比較重合体粉末(4)を得た。該比較重合体粉末(4)の物性を実施例1と同様に測定した。不溶解分は殆ど認められずに均一に溶解した。また、該重合体粉末(4)の重合率は99%以上であった。
ここで表3中、「ベルト面よりの剥離性」が「2」、「3」の場合の、評価「付着が殆ど認められず」とは、ベルト長さ1000mm、ワーク幅300mmのベルト上に、0.1以上1g未満のゲルが付着している状態を意味し、「ベルト面よりの剥離性」が「1」の場合の、評価「付着物が少し認められた状態」とは、ベルト長さ1000mm、ワーク幅300mmのベルト上に、1g以上10g以下のゲルが付着している状態をいう。
比較例2では、ゲル厚を55mmと高くしたため、ピーク温度が85℃を超えたから悪くなった、すなわちゲル厚が55mmと高くなったため、重合熱の除去が充分でなくなり、重合ピーク温度が85℃を超えることになり(88℃)、剥離性が低下したと考えられる。
ゲル厚の数値範囲の下限の技術的意義については、実施例2及び比較例1について比較を行うと、実施例2が8mmで下限値であり、その下限値を下回る比較例1(7mm)と比較すると明らかである。実施例2では、含水ゲルの剥離性が「2」であるが、それに対して、比較例1では、含水ゲルの剥離性が「1」である。この結果、上述したのと同様に、実施例において本発明の有利な効果が顕著に現れることになる。
上述した実施例及び比較例で明確に本発明の有利な効果が立証され、本発明の技術的意義が裏付けられている。
2:ローラー
3:スクレーパー
4:連続基材ベルト(ステンレス製)
5:紫外線ランプ
6:減光板
7:光照射方向
8:ベルト運転方向
9:モノマー槽
10:触媒槽
11:混合器
12:ギヤーポンプP1
13:ギヤーポンプP2
14:ブラックライト水銀ランプ(H250BL−L)、東芝ライテック株式会社製
15:減光板(開口率10.1%、パンチングメタル)
16:減光板(開口率51%、パンチングメタル)
17:スプレーノズル
18:堰(エッジロープ)
Claims (6)
- 重合時に使用する全単量体100モル%に対して(メタ)アクリル酸(塩)が60モル%以上である単量体成分を含む重合液を水溶液重合して(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルを連続的に製造する方法であって、
該製造方法は、単量体成分を含む重合液のpHを7〜14とすると共に、該含水ゲルと接するベルト面がステンレス製であるベルト重合機を用いて、ゲル厚を8〜50mm且つ重合ピーク温度を85℃以下に制御して重合を行う工程を含むことを特徴とする低付着性(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルの製造方法。 - 前記単量体成分は、(メタ)アクリル酸(塩)が80モル%以上であることを特徴とする請求項1に記載の低付着性(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルの製造方法。
- 前記製造方法は、重合液のpHを8〜13とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の低付着性(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルの製造方法。
- 前記製造方法は、ゲル厚を10〜30mmに制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低付着性(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルの製造方法。
- 前記製造方法は、重合ピーク温度を75℃以下に制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の低付着性(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルの製造方法。
- 前記製造方法は、光重合によって重合を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の低付着性(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルの製造方法。
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