JP4013303B2 - インクジェット記録用カラーインクセット、およびインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録方式に用いられるインクジェット記録用カラーインクセット、およびそれを用いたインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式の原理は、ノズル、スリットあるいは多孔質フィルム等から液体あるいは溶融固体インクを吐出し、紙、布、フィルム等の記録媒体に記録を行うものである。インクを吐出する方法については、静電誘引力を利用してインクを吐出させるいわゆる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用してインクを吐出させるいわゆるドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、高熱により気泡を形成および成長させることにより生じる圧力を利用してインクを吐出させるいわゆる熱インクジェット方式等、各種の方式が提案されており、これらの方式により、極めて高精細の画像を得ることができる。
【0003】
このようなインクジェット記録方式に使用するインクとしては、各種の水溶性の染料または顔料を水または水溶性有機溶媒からなる液状媒体に溶解または分散させたものが知られ、かつ使用されている。
上記の如き従来のインクにおいて種々の改善に関する検討が行われている。インクジェットプリンターに使用される各色インク単独の特性に関しては、以下の(1)〜(6)に示す課題があり、検討されている。
【0004】
(1)コピー用紙、ボンド紙等の普通紙上でもソリッド、ライン濃度ともに高濃度の画像が得られること。
(2)得られる画像が、耐水性、耐光性に優れていること。
(3)ノズル等の吐出口の目詰まりが発生せず、常に吐出安定性、吐出方向性に優れていること。
(4)長期保存安定性が良いこと。
(5)熱インクジェット方式においては、ヒーター上への焦げつき(Kogation)の発生がないこと。
(6)紙上においてインクの速乾性があること。
【0005】
また、前記各色インクを組み合せた、カラー画像を形成するためのカラーインクセットに関しては、前記各色インク単独の特性に加えて、以下の(7)〜(8)に示す課題もあり、併せて検討されている。
(7)2次色であるRGB色の色相、彩度などの発色性が優れ、カラー印字画像の色再現範囲が広いこと。
(8)混色滲み(カラーブリーディング)のないこと。
上記(1)〜(8)に示す要求を満足すべく、従来より多くの提案がなされている。
【0006】
特に普通紙上において、各色インク単独で高画像濃度が得られ、かつ、耐水性の良い画像を得る提案が、従来から数多く提案されている。例えば、特開平3−91577号公報、特開平4−226175公報、特開平4−233975号公報、特開平4−279671号公報、特開平6−93196号公報においては、カルボキシル基を有する染料を用いることによって、耐水性を向上する方法が提案されている。しかし、このような耐水性を向上させた染料を用いたインクは、印字画像の色調が悪いという問題がある。また、このようなインクは、水分の揮発や、カウンターイオンのアンモニウムイオンの揮発によって、染料の溶解性が低下し、吐出口の目詰まりを生じ易く、インクの保存安定性が悪いといった、信頼性上の問題も発生しやすい。
【0007】
さらに、カラー画像印字時にこれらのインクを組み合せて、カラーインクセットとして用いると、2次色であるRGB色の発色性の悪化が顕著になり、色再現範囲が狭いカラー画像しか得られないという問題もある。
一方、上記のフルカラー画像印字時の問題点を改善するため、特開平6−228482号公報においては、各色染料を混合する方法が提案されている。しかし、この場合は、各色インク単独およびカラーインクセットとして用いた時の印字画像の色調、2次色であるRGB色の発色性、吐出口の目詰まり性は改善されるが、耐水性が悪いという問題がある。
【0008】
近年、ビジネス文書や、家庭での印刷文書において、2次色であるRGB色の発色性が良く、色再現範囲が広く、かつ、耐水性が良いフルカラー印字画像が要求されているが、これらの特性を全て満足できるカラーインクセットは、いまだ実用化されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の様な現状に鑑み、その問題点を解決し、上記全ての要求を満足させることを目的としてなされたものである。
すなわち、本発明の目的は、インクジェット記録用カラーインクセットにおいて、耐水性に優れ、かつ、2次色であるRGB色の発色性に優れ、色再現範囲が広いフルカラー画像が得られる、インクジエット記録用インクセットを提供することである。本発明者等は、鋭意検討の結果、特に、ある特定の染料を組み合せたカラーインクセットを使用して印字すると、各色インク単独および2次色であるRGB色の発色性が非常に良く、色再現範囲も広く、吐出口の目詰まり性も満足でき、かつ、実用上十分な耐水性、耐光性を得ることを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。即ち本発明は、
(i)それぞれ少なくとも色材、水性有機溶剤および水を含むシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクの3色のインクよりなるインクジェット記録用カラーインクセットにおいて、前記各色のインク中の色材が、下記a)〜c)の各構成からなることを特徴とするインクジェット記録用カラーインクセットである。
【0011】
a)シアンインク中の色材
遊離酸の状態で一般式(I)で示される染料および/または一般式(II)で示される染料と、C.I.アシッドブルー9および/またはC.I.ダイレクトブルー199との混合物であり、遊離酸の状態で一般式(I)で示される染料および/または一般式(II)で示される染料と、C.I.アシッドブルー9および/またはC.I.ダイレクトブルー199との混合比が、重量比で20:1から1:1の範囲である構成。
一般式(I)
【0012】
【化15】
【0013】
式中、Pcは金属を含むフタロシアニン核を表し、R1 、R2 およびR3 はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、または置換アラルキル基を表し、Lは有機結合基を表し、Gは、−COSHおよび−COOHから選択された1個または2個の基により置換された有機基を表し、t+qは3または4であり、tおよびqはそれぞれ独立に1以上の数である。Xはカルボニル基または下記式(1)〜(3)で示される基を表す。
【0014】
【化16】
【0015】
式(1)〜(3)中、ZはNR4 R5 、SR6 またはOR6 を表し、YはH、Cl、Z、SR7 またはOR7 を表し、EはClまたはCNを表す。R4 、R5 、R6 およびR7 は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基、またはR4 とR5 とが結合された窒素原子とともに5または6員環を形成する基を表す。
【0016】
一般式(I)で示される染料は、少なくとも1個以上の−COOHと、少なくとも1個以上の−SO3 Hとを有し、−COSHの個数と−COOHの個数との和が、−SO3 Hの個数と同数以上である。
一般式(II)
【0017】
【化17】
【0018】
式中、Pcは金属を含むフタロシアニン核を表し、R1 は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、または置換アラルキル基を表し、R2 は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、または置換アミノ基を表し、t+qは3または4であり、tおよびqはそれぞれ独立に1以上の数である。
b)マゼンタインク中の色材
遊離酸の状態で一般式(III) で示される染料と、遊離酸の状態で一般式(IV)で示される染料との混合物であり、遊離酸の状態で一般式(III) で示される染料と、遊離酸の状態で一般式(IV)で示される染料との混合比が、重量比で20:1から1:1の範囲である構成。
一般式(III)
【0019】
【化18】
【0020】
式中、Jは、
【0021】
【化19】
【0022】
で示される基を表し、Ar1 およびAr2 はそれぞれ独立にアリール基または置換アリール基を表し、Ar1 およびAr2 の少なくとも1つは、−COSHまたは−COOHから選択された置換基を少なくとも1つ有する。Lは2価の有機連結基を表し、Xはカルボニル基または下記式(1)〜(3)で示される基を表す。
【0023】
【化20】
【0024】
式(1)〜(3)中、ZはNR1 R2 、SR3 またはOR3 を表し、YはH、Cl、Z、SR4 またはOR4 を表し、EはClまたはCNを表す。R1 、R2 、R6 およびR7 は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、置換アラルキル基、またはR4 とR5 とが結合された窒素原子とともに5または6員環を形成する基を表す。
【0025】
一般式(III) で示される染料は、少なくとも1個以上の−COOHと、少なくとも1個以上の−SO3 Hとを有し、−COSHの個数と−COOHの個数との和が、−SO3 Hの個数と同数以上である。
一般式(IV)
【0026】
【化21】
【0027】
式中、P1 、P2 およびXは、それぞれ下記表に挙げられるものが任意に組み合わされて選択される。
【0028】
【化22】
【0029】
c)イエローインク中の色材
遊離酸の状態で一般式(V)で示される染料と、C.I.ダイレクトイエロー144および/またはC.I.ダイレクトイエロー86との混合物、あるいはC.I.ダイレクトイエロー144および/またはC.I.ダイレクトイエロー86からなる染料である構成。
一般式(V)
【0030】
【化23】
【0031】
式中、Ar1 およびAr2 はそれぞれ独立にアリール基または置換アリール基を表し、Ar1 およびAr2 の少なくとも1つは、−COSHまたは−COOHから選択された置換基を少なくとも1つ有する。J1 およびJ2 は、それぞれ独立に下記式(1)〜(3)で示される基を表す。
【0032】
【化24】
【0033】
式(1)〜(3)中、R5 は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、CN、ウレイド、NHCOR6 から選択される基を表し、R6 は水素、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基を表す。Tはアルキル基を表し、Wは水素原子、CN、−CONR10R11、ピリジニウム、−COOHから選択される基を表し、mは炭素数2〜8のアルキレン鎖を表し、Bは水素原子、アルキル基、または−COOHを表し、R1 、R2 、R3 、R4 、R10およびR11は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基を表し、Lは2価の有機連結基を表す。nは0または1であり、Xは下記式(4)〜(6)で示される基を表す。
【0034】
【化25】
【0035】
式(4)〜(6)中、ZはOR7 、SR7 またはNR8 R9 を表し、YはH、ClまたはCNを表し、EはClまたはCNを表す。R7 、R8 およびR9 は、それぞれ独立に水素、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基、またはR8 とR9 とが結合された窒素原子とともに5または6員環を形成する基を表す。
【0036】
一般式(V)で示される染料は、少なくとも1個以上の−COOHを有し、−SO3 Hを有しない場合には、−COSHの個数と−COOHの個数との和が2個以上であり、−SO3 Hを有する場合には、−COSHの個数と−COOHの個数との和が−SO3 Hの個数と同数以上である。
【0037】
(ii)それぞれ少なくとも色材、水性有機溶剤および水を含むシアンインク、マゼンタインク、イエローインクおよびブラックインクの4色のインクよりなるインクジェット記録用カラーインクセットにおいて、各色のインク中の色材が、前記シアンインクでは(i)に記載のa)の構成、前記マゼンタインクでは(i)に記載のb)の構成、前記イエローインクでは(i)に記載のc)の構成、および、前記ブラックインクでは下記d)の構成から、それぞれなることを特徴とするインクジェット記録用カラーインクセットである。
【0038】
d)ブラックインク中の色材
遊離酸の状態で一般式(VI)で示される染料と、C.I.ダイレクトイエロー144および/または遊離酸の状態で一般式(VII) で示される染料との混合物であり、遊離酸の状態で一般式(VI)で示される染料と、C.I.ダイレクトイエロー144および/または一般式(VII) で示される染料との混合比が、重量比で20:1から1:1の範囲である構成。
一般式(VI)
【0039】
【化26】
【0040】
式中、Xは水素原子または−COOHを表し、Yは水素原子、−COOHまたは−SO3 Hを表し、Zは水素原子又は−SO 3 Hを表す。
一般式(VI)で示される染料は、少なくとも1個以上の−COOHを有する。
一般式(VII)
【0041】
【化27】
【0042】
式中、YおよびZは、それぞれ独立に水素原子または−SO3 Hを表し、R1 およびR2 は、それぞれ独立に下記式(1)または(2)で示される基を表す。
【0043】
【化28】
【0044】
式(1)または(2)中、A、GおよびEは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、−OHおよび−COOHから選択される基を表す。J、L、QおよびWは、それぞれ独立に水素原子、−OH、−NH2 および−SO3 Hから選択される基を表す。
【0045】
(iii) 前記各色のインク中の色材の量が、各色インク全重量に対して1〜10重量%であることを特徴とする(i)または(ii)に記載のインクジェット記録用カラーインクセットである。
【0046】
(iv)前記各色のインクの25℃における表面張力γが20〜50mN/mであることを特徴とする(i)ないし(iii) に記載のインクジェット記録用カラーインクセットである。
【0047】
(v)前記各色のインクの25℃における粘度ηが1.5〜5.0mPasであることを特徴とする(i)ないし(iv)に記載のインクジェット記録用カラーインクセットである。
【0048】
(vi)前記各色のインクのpHが6.0〜10.0であることを特徴とする(i)ないし(v)に記載のインクジェット記録用カラーインクセットである。
【0049】
(vii) 前記各色のインク中の水性有機溶剤が、アルキレングリコール類もしくは多価アルコール類の溶剤であることを特徴とする(i)ないし(vi)に記載のインクジェット記録用カラーインクセットである。
【0050】
(viii)前記各色のインク中に、界面活性剤を含有してなることを特徴とする(i)ないし(vii) に記載のインクジェット記録用カラーインクセットである。
【0051】
(ix)記録信号に応じてインクの液滴をオリフィスから吐出させて記録を行うインクジェット記録方法において、前記インクとして(i)ないし(viii)に記載のインクジェット記録用インクセットの各色のインクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法である。
【0052】
(x)インクの液滴が、加熱手段による熱エネルギーを各色のインクに作用させることにより形成されることを特徴とする(ix)に記載のインクジェット記録方法である。
【0053】
(xi)前記加熱手段に、複数のエネルギーパルスを作用させることを特徴とする(x)に記載のインクジェット記録方法である。
【0054】
(xii) 前記加熱手段の周囲が、ポリイミド系樹脂で形成されていることを特徴とする(x)ないし(xi)に記載のインクジェット記録方法である。
【0055】
(xiii)予備吐出工程と記録工程とを有し、該記録工程が、記録信号に応じてオリフィスから吐出させたインクの液滴を記録媒体に浸透させる工程であることを特徴とする(ix)ないし(xii) に記載のインクジェット記録方法である。
【0056】
本発明の作用やメカニズムの詳細は不明であるが、敢えてそのメカニズムを推測するならば、以下の通りである。
前記遊離酸の状態で一般式(I)、(II)、(III) 、(IV)、あるいは(V)で示される染料は、それぞれ単独で用いた場合、耐水性は良いが、印字画像の色調悪化現象が見られる。これは、紙上での乾燥時染料が紙中に浸透定着する前に急激に析出するため発生すると思われ、特に2次色であるRGB色については、紙上でのインク量が、各色単独印字時に比べて多いので顕著である。これら染料の急激な析出現象は、その染料の遊離酸構造の水に対する溶解度が比較的小さい為、局所的な水分蒸発によって、染料濃度が上昇することによると推定される。従って、上記染料を組み合せたカラーインクセットを用いると、その染料の組合せ特有の現象として、2次色であるRGB色の発色性が悪く、色再現範囲が狭くなると思われる。また、このように染料の析出性が高いため、吐出口の目詰まりを生ずる場合もある。
【0057】
一方、本発明において、前記遊離酸の状態で一般式(I)、(II)、(III) 、あるいは(VI)と混合して用いられるC.I.アシッドブルー9、C.I.ダイレクトブルー199、遊離酸の状態で一般式(IV)で示される染料、C.I.ダイレクトイエロー144、あるいは、遊離酸の状態で一般式(VI)で示される染料は、上記のような色調悪化現象の問題はなく、2次色であるRGB色の発色性も良好であるが、耐水性が十分でない。
【0058】
従って、上記各染料を適切な割合で混合したインクを用い、これを組合せた本発明のインクセットによれば、紙上での染料の急激な析出を回避できるとともに、良好な耐水性を得ることができるものと思われる。その結果、2次色であるRGB色の発色性が改善され、色再現範囲の広い印字画像を得ることができると考えられる。
【0059】
なお、本発明においてイエローインク中の色材として用いられるC.I.ダイレクトイエロー144、および、C.I.ダイレクトイエロー86は、上記発色性、色再現性、耐水性および吐出口の目詰まり性等の問題がないため、単独でも、混合しても用いることができる。
【0060】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.インクセット
本発明のインクセットは、シアンインク、マゼンタインク、およびイエローインク、さらに好ましくはブラックインクよりなるものであり、各色インクが特定の色材、およびこれを溶解する水性有機溶剤、水を少なくとも含む。本発明におけるこれら各インクの成分に就いて説明する。
【0061】
〔各色インク中の色材〕
a)シアンインク中の色材
シアンインク中の色材は、遊離酸の状態で一般式(I)で示される染料および/または一般式(II)で示される染料と、C.I.アシッドブルー9および/またはC.I.ダイレクトブルー199との混合物である。
【0062】
一般式(I)
【0063】
【化29】
【0064】
式中、Pcは金属(例えば、銅、ニッケル、鉄、チタニウム等)を含むフタロシアニン核を表し、R1 、R2 およびR3 はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、または置換アラルキル基を表す。これらの置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
Lは2価の有機結合基を表し、具体的には例えば、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
Gは、−COSHおよび−COOHから選択された1個または2個の基により置換された有機基を表し、具体的には例えば、メチル基、フェニル基等が挙げられる。
t+qは3または4であり、tおよびqはそれぞれ独立に1以上の数である。
Xはカルボニル基または下記式(1)〜(3)で示される基を表す。
【0065】
【化30】
【0066】
式(1)〜(3)中、ZはNR4 R5 、SR6 またはOR6 を表し、YはH、Cl、Z、SR7 またはOR7 を表し、EはClまたはCNを表す。R4 、R5 、R6 およびR7 は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基、またはR4 とR5 とが結合された窒素原子とともに5または6員環を形成する基を表す。これらの置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、また窒素原子とともに形成される5または6員環としては、例えば、トリアジル環等が挙げられる。
遊離酸の状態で一般式(I)で示される染料は、少なくとも1個以上の−COOHと、少なくとも1個以上の−SO3 Hとを有し、−COSHの個数と−COOHの個数との和が、−SO3 Hの個数と同数以上である。
【0067】
一般式(II)
【0068】
【化31】
【0069】
式中、Pcは金属(例えば、銅、ニッケル、鉄、チタニウム等)を含むフタロシアニン核を表し、R1 は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、または置換アラルキル基を表す。これらの置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
R2 は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、または置換アミノ基を表し、該置換基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
t+qは3または4であり、tおよびqはそれぞれ独立に1以上の数である。
【0070】
本発明において、シアンインク中で「C.I.アシッドブルー9および/またはC.I.ダイレクトブルー199」と混合される染料としては、以上の「遊離酸の状態で一般式(I)で示される染料」および「遊離酸の状態一般式(II)で示される染料」が挙げられるが、両者の内特に「遊離酸の状態で一般式(II)で示される染料」が、彩度、耐目詰まり性の点で好ましい。
【0071】
「遊離酸の状態で一般式(I)で示される染料」の具体例を以下に示す。なお、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0072】
【化32】
【0073】
【化33】
【0074】
【化34】
【0075】
【化35】
【0076】
【化36】
【0077】
【化37】
【0078】
【化38】
【0079】
【化39】
【0080】
【化40】
【0081】
【化41】
【0082】
また、「遊離酸の状態で一般式(II)で示される染料」の具体例を以下に示す。なお、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0083】
【化42】
【0084】
【化43】
【0085】
【化44】
【0086】
【化45】
【0087】
シアンインク中の色材における上記各染料の混合比としては、「遊離酸の状態で一般式(I)で示される染料および/または一般式(II)で示される染料」と、「C.I.アシッドブルー9および/またはC.I.ダイレクトブルー199」とが、重量比で20:1から1:1の範囲である。20:1を越えて「遊離酸の状態で一般式(I)で示される染料および/または一般式(II)で示される染料」の比率が増加すると、シアン色の色調の悪化、2次色の発色性悪化、および、吐出口の目詰まり等の現象が現れ、特に2次色の発色性の悪化が顕著になる。一方、1:1未満に同比率が減少すると、耐水性の悪化を生じる。
【0088】
b)マゼンタインク中の色材
マゼンタインク中の色材は、遊離酸の状態で一般式(III) で示される染料と、遊離酸の状態で一般式(IV)で示される染料との混合物である。
【0089】
一般式(III)
【0090】
【化46】
【0091】
式中、Jは、
【0092】
【化47】
【0093】
で示される基を表し、Ar1 およびAr2 はそれぞれ独立にアリール基または置換アリール基を表す。これらの置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられ、Ar1 およびAr2 の少なくとも1つは、−COSHまたは−COOHから選択された置換基を少なくとも1つ有する。
Lは2価の有機連結基を表し、具体的には例えば、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
Xはカルボニル基または下記式(1)〜(3)で示される基を表す。
【0094】
【化48】
【0095】
式(1)〜(3)中、ZはNR1 R2 、SR3 またはOR3 を表し、YはH、Cl、Z、SR4 またはOR4 を表し、EはClまたはCNを表す。R1 、R2 、R6 およびR7 は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、置換アラルキル基、またはR4 とR5 とが結合された窒素原子とともに5または6員環を形成する基を表す。これらの置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられ、また窒素原子とともに形成される5または6員環としては、例えば、トリアジル環等が挙げられる。
【0096】
遊離酸の状態で一般式(III) で示される染料は、少なくとも1個以上の−COOHと、少なくとも1個以上の−SO3 Hとを有し、−COSHの個数と−COOHの個数との和が、−SO3 Hの個数と同数以上である。
【0097】
・一般式(IV)
【0098】
【化49】
【0099】
式中、P1 、P2 およびXは、それぞれ下記表に挙げられるものが任意に組み合わされて選択される。
【0100】
【化50】
【0101】
上記遊離酸の状態で一般式(III) で示されるマゼンタ染料のうち、好ましい構造としては、下記遊離酸の状態一般式(III−a)で示される構造である。
【0102】
【化51】
【0103】
式中、Lは上記一般式(III) と同様2価の有機連結基を表す。ZはNR1 R2 、SR3 またはOR3 を表し、R1 、R2 およびR3 は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、置換アラルキル基、またはR1 とR2 とが結合された窒素原子とともに5または6員環を形成する基を表す。これらの置換基としては、上記一般式(III) と同様である。
【0104】
「遊離酸の状態で一般式(III) で示される染料」の具体例を以下に示す。なお、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0105】
【化52】
【0106】
【化53】
【0107】
【化54】
【0108】
【化55】
【0109】
【化56】
【0110】
【化57】
【0111】
【化58】
【0112】
【化59】
【0113】
【化60】
【0114】
【化61】
【0115】
【化62】
【0116】
また、「遊離酸の状態で一般式(IV)で示される染料」の具体例を以下に示す。なお、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0117】
【化63】
【0118】
【化64】
【0119】
【化65】
【0120】
【化66】
【0121】
【化67】
【0122】
【化68】
【0123】
マゼンタインク中の色材における上記各染料の混合比としては、「遊離酸の状態で一般式(III) で示される染料」と、「遊離酸の状態で一般式(IV)で示される染料」とが、重量比で20:1から1:1の範囲である。20:1を越えて「遊離酸の状態で一般式(III) で示される染料」の比率が増加すると、マゼンタ色の色調の悪化、2次色の発色性悪化、および、吐出口の目詰まり等の現象が現れ、特に2次色の発色性の悪化が顕著になる。一方、1:1未満に同比率が減少すると、耐水性の悪化を生じる。
【0124】
c)イエローインク中の色材
イエローインク中の色材は、遊離酸の状態で一般式(V)で示される染料と、C.I.ダイレクトイエロー144および/またはC.I.ダイレクトイエロー86との混合物、あるいはC.I.ダイレクトイエロー144および/またはC.I.ダイレクトイエロー86からなる染料である。
【0125】
・一般式(V)
【0126】
【化69】
【0127】
式中、Ar1 およびAr2 はそれぞれ独立にアリール基または置換アリール基を表し、Ar1 およびAr2 の少なくとも1つは、−COSHまたは−COOHから選択された置換基を少なくとも1つ有する。これらの置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられる。
J1 およびJ2 は、それぞれ独立に下記式(1)〜(3)で示される基を表す。
【0128】
【化70】
【0129】
式(1)〜(3)中、R5 は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、CN、ウレイド、NHCOR6 から選択される基を表し、R6 は水素、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基を表す。これらの置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられる。
Tはアルキル基を表し、Wは水素原子、CN、−CONR10R11、ピリジニウム、−COOHから選択される基を表す。
【0130】
mは炭素数2〜8のアルキレン鎖を表し、具体的には例えば、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
Bは水素原子、アルキル基、または−COOHを表し、R1 、R2 、R3 、R4 、R10およびR11は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基を表し、これらの置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられる。
Lは2価の有機連結基を表し、具体的には例えば、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
nは0または1であり、Xは下記式(4)〜(6)で示される基を表す。
【0131】
【化71】
【0132】
式(4)〜(6)中、ZはOR7 、SR7 またはNR8 R9 を表し、YはH、ClまたはCNを表し、EはClまたはCNを表す。R7 、R8 およびR9 は、それぞれ独立に水素、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基、またはR8 とR9 とが結合された窒素原子とともに5または6員環を形成する基を表す。これらの置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられ、また窒素原子とともに形成される5または6員環としては、例えば、トリアジル環等が挙げられる。
【0133】
遊離酸の状態で一般式(V)で示される染料は、少なくとも1個以上の−COOHを有し、−SO3 Hを有しない場合には、−COSHの個数と−COOHの個数との和が2個以上であり、−SO3 Hを有する場合には、−COSHの個数と−COOHの個数との和が−SO3 Hの個数と同数以上である。
【0134】
「遊離酸の状態で一般式(V)で示される染料」の具体例を以下に示す。なお、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0135】
【化72】
【0136】
【化73】
【0137】
【化74】
【0138】
【化75】
【0139】
【化76】
【0140】
【化77】
【0141】
【化78】
【0142】
【化79】
【0143】
【化80】
【0144】
【化81】
【0145】
【化82】
【0146】
【化83】
【0147】
【化84】
【0148】
【化85】
【0149】
【化86】
【0150】
イエローインク中の色材は、遊離酸の状態で一般式(V)で示される染料と、C.I.ダイレクトイエロー144および/またはC.I.ダイレクトイエロー86との混合物、あるいはC.I.ダイレクトイエロー144および/またはC.I.ダイレクトイエロー86からなる染料が用いられる。これらを混合して用いる場合には、各染料の混合比としては、「遊離酸の状態で一般式(V)で示される染料」が、「C.I.ダイレクトイエロー144および/またはC.I.ダイレクトイエロー86」1重量部に対して、重量比で20重量部以下である。20重量部を越えて「遊離酸の状態で一般式(V)で示される染料」の比率が増加すると、イエロー色の色調の悪化、2次色の発色性悪化、および、吐出口の目詰まり等の現象が見られ、特に2次色の発色性の悪化が顕著になる。
【0151】
d)ブラックインク中の色材
ブラックインク中の色材は、遊離酸の状態で一般式(VI)で示される染料と、C.I.ダイレクトイエロー144および/または遊離酸の状態で一般式(VII) で示される染料との混合物である。
【0152】
・一般式(VI)
【0153】
【化87】
【0154】
式中、Xは水素原子または−COOHを表し、Yは水素原子、−COOHまたは−SO3 Hを表し、Zは水素原子又は−SO 3 Hを表す。
遊離酸の状態で一般式(VI)で示される染料は、少なくとも1個以上の−COOHを有する。
【0155】
・一般式(VII)
【0156】
【化88】
【0157】
式中、YおよびZは、それぞれ独立に水素原子または−SO3 Hを表し、R1 およびR2 は、それぞれ独立に下記式(1)または(2)で示される基を表す。
【0158】
【化89】
【0159】
式(1)または(2)中、A、GおよびEは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、−OHおよび−COOHから選択される基を表す。J、L、QおよびWは、それぞれ独立に水素原子、−OH、−NH2 および−SO3 Hから選択される基を表す。
【0160】
上記一般式(VI)で示される染料のうち、好ましい構造としては、下記一般式(VI−a)でる示される構造である
【0161】
【化90】
【0162】
式中、mは1または2を、nは0または1をそれぞれ表す。
「遊離酸の状態で一般式(VI)で示される染料」の具体例を以下に示す。なお、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0163】
【化91】
【0164】
【化92】
【0165】
また、「遊離酸の状態で一般式(VII) で示される染料」の具体例を以下に示す。なお、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0166】
【化93】
【0167】
【化94】
【0168】
【化95】
【0169】
【化96】
【0170】
【化97】
【0171】
【化98】
【0172】
【化99】
【0173】
ブラックインク中の色材における上記各染料の混合比としては、「遊離酸の状態で一般式(VI)で示される染料」と、「C.I.ダイレクトイエロー144および/または一般式(VII) で示される染料」とが、重量比で20:1から1:1の範囲である。20:1を越えて「遊離酸の状態で一般式(VI)で示される染料」の比率が増加すると、ブラック色のブロンズ化現象などの色調の悪化、および、吐出口の目詰まり等の現象が見られ、一方、1:1未満に同比率が減少すると、耐水性の悪化を生じる。
【0174】
e)上記各色材中のカウンターイオン
上記各色材(染料)中の可溶化基(−SO3 - ,−COO- 等)のカウンターイオンとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン、アルカノールアンモニウムイオンが挙げられ、耐水性の点で、アンモニウムイオンが好ましい。
【0175】
〔水性有機溶剤〕
本発明に用いられる水性有機溶剤は、上記色材(染料)を溶解する水性の溶剤であり、具体的には例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、グリセリン、チオジグリコール等の多価アルコール類やポリアルキレングリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、トリエタノールアミン、ジメチルスルフォキシド、スルフォラン等、またエタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0176】
これら水性有機溶剤の中でも、アルキレングリコール類または多価アルコール類が好ましく、特にエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンがインク保湿性、染料溶解性の点で好ましい。また、インクの紙への浸透性を高める為には、グリコールエーテル類を添加することが好ましく、特にエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
このような水性有機溶剤は、単独でも使用できるが、2種以上混合して使用しても良い。
【0177】
〔水〕
本発明において用いられる水としては、水道水、脱イオン水、蒸留水、精製水等、通常の水であれば如何なるものも使用することができ、pHの調整や、吐出口の目詰まり性を考慮すると、より純粋な水、例えば、脱イオン水、蒸留水、精製水が好ましい。
【0178】
〔その他の成分〕
染料の溶解状態をさらに安定化させるため、いわゆる界面活性剤、分散剤、包接化合物等を添加してもよい。
界面活性剤としては、ノニオン、アニオン、あるいは両性界面活性剤が好ましく、特にノニオン界面活性剤が好ましい。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド等があげられ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体が好ましい。アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルフェニルスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩のフォルマリン縮合物、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルフォン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、およびスルフォン酸塩、高級アルキルスルフォンアミドのアルキルカルボン酸塩、スルフォコハク酸、エステル塩等、また両性界面活性剤としては、ベタイン、スルフォベタイン、サルフェートベタイン等が使用し得る。
【0179】
その他、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸またはその塩を単量体成分とする水溶性ポリマー、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体、シクロデキストリン、大環状アミン類、クラウンエーテル類、アセトアミド等を用いることができる。
【0180】
分散剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、あるいは両性界面活性剤等の他に、スチレン−アクリル酸共重合体やポリビニルアルコール等の高分子分散体等が挙げられる。
包接化合物としては、シクロデキストリン、ポリシクロデキストリン、大環状アミン類、アセトアミド等が挙げられる。
【0181】
染料の溶解性をさらに良くするために、pH調整剤を添加しても良い。pH調整剤としては、アルカリ金属の水酸化物(MOHで表され、Mは、Li、Na、K等から選択される。)と含窒素化合物の組合せが好ましい。上記アルカリ金属の水酸化物の中でも、LiOH、NaOHが特に好ましい。また上記含窒素化合物の中でもN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、アセトアミドグリシン、N−カルバモイルメチルイミノジ酢酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンが特に好ましい。
その他、必要に応じてデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等の防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、尿素、チオ尿素などの添加剤等を含有させることも可能である。
【0182】
〔各インクの組成割合〕
本発明のインクセットにおける各インクは、それぞれ少なくとも色材、水性有機溶剤および水よりなるが、これらの組成割合としては以下の通りである。
上記色材の各インク中ヘの添加量としては、インク全重量に対し、1〜10重量%が好ましく、より好ましくは2〜5重量%である。1重量%未満では印字物の濃度低下が生じやすく、10重量%を超えると耐目詰まり性が低下しやすくなる。
【0183】
上記水性有機溶剤の各インク中ヘの添加量としては、インク全重量に対し、3〜50重量%が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。3重量%未満では耐目詰まり性が低下しやすく、50重量%を超えると印字物の乾燥性が低下しやすい。
その他の成分の添加量は、その添加目的に応じて適宜設定すればよい。
【0184】
〔各インクの物性〕
各インクの好ましい物性に就いて説明する。
各インクの25℃における表面張力としては、インクジェット記録ヘッドとの濡れ性の点で20〜50mN/mの範囲が好ましく、より好ましくは、25〜45mN/mの範囲である。
各インクの25℃における粘度としては、吐出安定性の点で1.5〜5.0mPasの範囲が好ましく、より好ましくは、1.5〜3.5mPasの範囲である。
各インクのpHとしては、染料の溶解性とヘッド部材との接液性の点でpH6〜10の範囲が好ましく、特にカルボキシル基を含む染料を用いる場合は、pH8〜10の範囲が好ましい。
【0185】
〔インクセットの構成〕
既述の如く、本発明のインクセットは、シアンインク、マゼンタインク、およびイエローインクの3色の構成、もしくはこの構成にさらにブラックインクを加えた4色の構成よりなる。本発明においては、発色性、鮮鋭性、エッジ強調性等の観点より、上記4色の構成よりなるものが特に好ましい。
【0186】
2.インクジェット記録方法
以上説明したインクセットは、記録信号に応じてインク液滴をオリフィスから吐出させて記録を行うインクジェット記録方法に用いることができる。また、インクジェット記録方法に用いられる記録方法としては、静電誘引力を利用してインクを吐出させるいわゆる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用してインクを吐出させるいわゆる圧力パルス方式、およびインクを加熱して気泡を形成、成長させることにより生じる圧力を利用してインク液滴を形成するいわゆる熱インクジェット方式等を挙げることができる。これらの中でも特にフルカラー画像を小型で安価に提供できる点で、熱インクジェット方式が好ましい。
【0187】
熱インクジェット方式を使用する場合には、インクを加熱する発熱体のような加熱手段に複数のパルスを印加することにより、インク液滴を安定的に形成することができる。
特に、熱インクジェット方式の場合、記録を行わずに予備吐出を行う工程を追加することにより、加熱ヘッドのコゲーションを抑制でき、長期にわたり良好な画像を得ることができる。
【0188】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は42mN/m、粘度は1.7mPas、pHは9.1であった。
【0189】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.7mPas、pHは9.1であった。
【0190】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は36mN/m、粘度は2.8mPas、pHは9.2であった。
【0191】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.6mPas、pHは9.1であった。
【0192】
実施例2
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は、42mN/m、粘度は、1.7mPas、pHは、9.1であった。
【0193】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25 Cにおける表面張力は、38mN/m、粘度は、2.7mPas、pHは、9.1であった。
【0194】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は36mN/m、粘度は2.8mPas、pHは9.2であった。
【0195】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.6mPas、pHは9.1であった。
【0196】
実施例3
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は42mN/m、粘度は1.6mPas、pHは9.1であった。
【0197】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.6mPas、pHは9.1であった。
【0198】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は36mN/m、粘度は2.7mPas、pHは9.2であった。
【0199】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.5mPas、pHは9.1であった。
【0200】
実施例4
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は42mN/m、粘度は1.7mPas、pHは9.0であった。
【0201】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.7mPas、pHは9.0であった。
【0202】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は36mN/m、粘度は2.8mPas、pHは9.1であった。
【0203】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.6mPas、pHは9.1であった。
【0204】
実施例5
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は42mN/m、粘度は1.7mPas、pHは9.1であった。
【0205】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.7mPas、pHは9.1であった。
【0206】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は36mN/m、粘度は2.8mPas、pHは9.2であった。
【0207】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.6mPas、pHは7.1であった。
【0208】
実施例6
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は42mN/m、粘度は1.7mPas、pHは9.1であった。
【0209】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.7mPas、pHは9.1であった。
【0210】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は36mN/m、粘度は2.8mPas、pHは9.2であった。
【0211】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.6mPas、pHは9.0であった。
【0212】
実施例7
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は41mN/m、粘度は1.7mPas、pHは9.0であった。
【0213】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.7mPas、pHは9.1であった。
【0214】
・イオン交換水 61.5重量部
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は36mN/m、粘度は2.8mPas、pHは9.2であった。
【0215】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.6mPas、pHは9.0であった。
【0216】
比較例1
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は42mN/m、粘度は1.7mPas、pHは9.1であった。
【0217】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.6mPas、pHは9.1であった。
【0218】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は36mN/m、粘度は2.8mPas、pHは9.2であった。
【0219】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.6mPas、pHは9.1であった。
【0220】
比較例2
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は42mN/m、粘度は1.7mPas、pHは9.1であった。
【0221】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.8mPas、pHは9.1であった。
【0222】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は36mN/m、粘度は2.8mPas、pHは9.2であった。
【0223】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し
インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.6mPas、pHは9.1であった。
【0224】
比較例3
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は42mN/m、粘度は1.7mPas、pHは9.1であった。
【0225】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.7mPas、pHは9.1であった。
【0226】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は36mN/m、粘度は2.7mPas、pHは9.2であった。
【0227】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.6mPas、pHは9.1であった。
【0228】
比較例4
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は42mN/m、粘度は1.7mPas、pHは9.1であった。
【0229】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.7mPas、pHは9.1であった。
【0230】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は36mN/m、粘度は2.8mPas、pHは9.2であった。
【0231】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.6mPas、pHは9.1であった。
【0232】
比較例5
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は42mN/m、粘度は1.7mPas、pHは9.1であった。
【0233】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.7mPas、pHは9.1であった。
【0234】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は36mN/m、粘度は2.8mPas、pHは9.2であった。
【0235】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.6mPas、pHは9.1であった。
【0236】
比較例6
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は42mN/m、粘度は1.6mPas、pHは9.1であった。
【0237】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.6mPas、pHは9.1であった。
【0238】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は36mN/m、粘度は2.7mPas、pHは9.2であった。
【0239】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターで加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力は38mN/m、粘度は2.5mPas、pHは9.1であった。
【0240】
実施例8
実施例1のインクセットから、ブラックを除いた3色のインクからなるインクセットを作製し、これを実施例8のインクセットとした。
【0241】
〔評価試験〕
上記実施例1〜8および比較例1〜6の各インクセットについて、試作したインクジェットプリントヘッド(シリコンおよびポリイミドによりノズルを形成したもの、400dpi)、および、それを登載したサーマルインクジェットプリンターを用いて以下のテストを実施した。プリントヘッドの駆動条件は、駆動電圧30V、発熱抵抗体の抵抗値180Ω、周波数6KHzであった。記録信号に対する印字吐出の駆動パルスおよび予備吐出の駆動パルスは、印字吐出時、プレパルス0.5μs、インターバル1.0μs、メインパルス4.8μs、予備吐出時、プレパルス1.0μs、インターバル1.0μs、メインパルス3.8μsであった。予備吐出は、印字吐出が1×107 パルスを越えた時点で1×105 パルス行った。
【0242】
1)画像品質
試作したサーマルインクジェットプリンターに、実施例1〜8および比較例1〜6の各インクセットを装填し、ゼロックス4024紙(ゼロックス社製)に、シアン、マゼンタ、イエロー色および2次色であるRGB色ベタ画像を印字し、色再現範囲指標として一次色(CMY)と二次色(RGB)のa*、b*を用いたGamutを測定し、また、彩度の目視比較官能評価を行った。結果を下記表1に示す。なお、評価判定基準は以下の通りである。
【0243】
a)色再現範囲評価
○:色再現範囲がひろい(Gamut≧7000)。
△:色再現範囲がやや狭い(6000≦Gamut<7000)。
×:色再現範囲が狭い(Gamut<6000)。
b)彩度評価
○:カラーベタ画像のくすみがとんどない。
△:カラーベタ画像が若干くすみを帯びている。
×:カラーベタ画像のくすみがはげしい。
【0244】
【表1】
【0245】
2)耐水性
上記試作したサーマルインクジェットプリンターに、実施例1〜8および比較例1〜6の各インクセットを装填し、FX−L紙(富士ゼロックス社製)とゼロックス4024紙(ゼロックス社製)に、ベタ画像を印字し濃度をマクベス濃度計で測定した。印字終了から24時間室温で放置後、水に3分間浸漬後それを取り出し、乾燥させた後、再度濃度を測定し、印字画像の濃度残存率(試験前に対する試験後のマクベス濃度の値の割合)を求め耐水性の指標とした。結果を下記表2に示す。なお、評価判定基準は以下の通りである。
○:濃度残存率80%以上
△:濃度残存率50%以上80%未満
×・濃度残存率50%未満
【0246】
3)目詰まり性
上記試作したインクジェットプリントヘッドを用い、実施例1〜8および比較例1〜6の各インクセットを装填し、10℃15%RH、および30℃85%RHの雰囲気中で、所定時間開放放置後、吐出テストを行った。結果を下記表2に示す。なお、評価判定基準は以下の通りである。
○:300秒放置で全色吐出可能。
△:180秒放置で全色吐出可能。
×:180秒放置で全色吐出不可能。
【0247】
4)長期放置後の吐出回復性
上記試作したインクジェットプリントヘッドを用い、実施例1〜8および比較例1〜6の各インクセットを装填し、10℃15%RH、および30℃85%RHの雰囲気中2か月放置後、吸引ポンプでの回復操作を行った後印字させ、正常な印字ができるまでの回復操作の回数により長期放置後の吐出回復性を評価した。結果を下記表2に示す。なお、評価判定基準は以下の通りである。
○:回復操作3回以内で全色正常印字可能
△:回復操作4回〜8回で全色正常印字可能
×:回復操作8回でも全色正常印字が不可能
【0248】
【表2】
【0249】
【発明の効果】
以上の如く本発明によれば、普通紙に対しても画質品質が良好で、各色インク単独および2次色の発色性が優れ、色再現範囲が広く、さらに、十分な目詰まり耐性を持ち、常に吐出安定性、吐出方向性に優れ、長期保存性がよいインクジエット記録用カラーインクセット、およびそれを用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
Claims (13)
- それぞれ少なくとも色材、水性有機溶剤および水を含むシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクの3色のインクよりなるインクジェット記録用カラーインクセットにおいて、前記各色のインク中の色材が、下記a)〜c)の各構成からなることを特徴とするインクジェット記録用カラーインクセット。
a)シアンインク中の色材
遊離酸の状態で一般式(I)で示される染料および/または一般式(II)で示される染料と、C.I.アシッドブルー9および/またはC.I.ダイレクトブルー199との混合物であり、遊離酸の状態で一般式(I)で示される染料および/または一般式(II)で示される染料と、C.I.アシッドブルー9および/またはC.I.ダイレクトブルー199との混合比が、重量比で20:1から1:1の範囲である構成。
一般式(I)
一般式(I)で示される染料は、少なくとも1個以上の−COOHと、少なくとも1個以上の−SO3 Hとを有し、−COSHの個数と−COOHの個数との和が、−SO3 Hの個数と同数以上である。
一般式(II)
b)マゼンタインク中の色材
遊離酸の状態で一般式(III) で示される染料と、遊離酸の状態で一般式(IV)で示される染料との混合物であり、遊離酸の状態で一般式(III) で示される染料と、遊離酸の状態で一般式(IV)で示される染料との混合比が、重量比で20:1から1:1の範囲である構成。
一般式(III)
一般式(III) で示される染料は、少なくとも1個以上の−COOHと、少なくとも1個以上の−SO3 Hとを有し、−COSHの個数と−COOHの個数との和が、−SO3 Hの個数と同数以上である。
一般式(IV)
遊離酸の状態で一般式(V)で示される染料と、C.I.ダイレクトイエロー144および/またはC.I.ダイレクトイエロー86との混合物、あるいはC.I.ダイレクトイエロー144および/またはC.I.ダイレクトイエロー86からなる染料である構成。
一般式(V)
一般式(V)で示される染料は、少なくとも1個以上の−COOHを有し、−SO3 Hを有しない場合には、−COSHの個数と−COOHの個数との和が2個以上であり、−SO3 Hを有する場合には、−COSHの個数と−COOHの個数との和が−SO3 Hの個数と同数以上である。 - それぞれ少なくとも色材、水性有機溶剤および水を含むシアンインク、マゼンタインク、イエローインクおよびブラックインクの4色のインクよりなるインクジェット記録用カラーインクセットにおいて、各色のインク中の色材が、前記シアンインクでは請求項1に記載のa)の構成、前記マゼンタインクでは請求項1に記載のb)の構成、前記イエローインクでは請求項1に記載のc)の構成、および、前記ブラックインクでは下記d)の構成から、それぞれなることを特徴とするインクジェット記録用カラーインクセット。
d)ブラックインク中の色材
遊離酸の状態で一般式(VI)で示される染料と、C.I.ダイレクトイエロー144および/または遊離酸の状態で一般式(VII) で示される染料との混合物であり、遊離酸の状態で一般式(VI)で示される染料と、C.I.ダイレクトイエロー144および/または一般式(VII) で示される染料との混合比が、重量比で20:1から1:1の範囲である構成。
一般式(VI)
一般式(VI)で示される染料は、少なくとも1個以上の−COOHを有する。
一般式(VII)
- 前記各色のインク中の色材の量が、各色インク全重量に対して1〜10重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録用カラーインクセット。
- 前記各色のインクの25℃における表面張力γが20〜50mN/mであることを特徴とする請求項1ないし3に記載のインクジェット記録用カラーインクセット。
- 前記各色のインクの25℃における粘度ηが1.5〜5.0mPasであることを特徴とする請求項1ないし4に記載のインクジェット記録用カラーインクセット。
- 前記各色のインクのpHが6.0〜10.0であることを特徴とする請求項1ないし5に記載のインクジェット記録用カラーインクセット。
- 前記各色のインク中の水性有機溶剤が、アルキレングリコール類もしくは多価アルコール類の溶剤であることを特徴とする請求項1ないし6に記載のインクジェット記録用カラーインクセット。
- 前記各色のインク中に、界面活性剤を含有してなることを特徴とする請求項1ないし7に記載のインクジェット記録用カラーインクセット。
- 記録信号に応じてインクの液滴をオリフィスから吐出させて記録を行うインクジェット記録方法において、前記インクとして請求項1ないし8に記載のインクジェット記録用インクセットの各色のインクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
- インクの液滴が、加熱手段による熱エネルギーを各色のインクに作用させることにより形成されることを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録方法。
- 前記加熱手段に、複数のエネルギーパルスを作用させることを特徴とする請求項10に記載のインクジェット記録方法。
- 前記加熱手段の周囲が、ポリイミド系樹脂で形成されていることを特徴とする請求項10ないし11に記載のインクジェット記録方法。
- 予備吐出工程と記録工程とを有し、該記録工程が、記録信号に応じてオリフィスから吐出させたインクの液滴を記録媒体に浸透させる工程であることを特徴とする請求項9ないし12に記載のインクジェット記録方法。
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