JP3826484B2 - インクジェット記録用インクおよびその記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット方式の記録装置に用いるインクジェット用インク及び該インクジェット用インクを用いるインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式の原理は、ノズル、スリットあるいは多孔質フィルム等から液体あるいは溶融固体インクを吐出し、紙、布、フィルム等に記録を行うものである。インクを吐出する方法については、静電誘引力を利用してインクを吐出させる、いわゆる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用してインクを吐出させる、いわゆるドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、高熱により気泡を形成、成長させることにより生じる圧力を利用してインクを吐出させる、いわゆる熱インクジェット方式等、各種の方式が提案されており、これらの方式により、極めて高精細の画像を得ることができる。
【0003】
かかるインクジェット記録方式に使用するインクとしては、各種の水溶性の染料を水と水溶性有機溶媒からなる液状媒体に溶解させた水性染料インク、各種の顔料を水と水溶性有機溶媒からなる液状媒体に分散させた水性顔料インク、油溶性染料を有機溶媒に溶解させた油性染料インク等が知られている。
これらインクの中でも、水性染料を溶解した水性インクは、主溶媒が水であるため、安全性に優れており、さらに、染料を用いるため、カラー画像の発色性が良く高品位な印字画像が得られ、インクの保存安定性にも優れるため、インクジェット記録用インクの主流となっている。
しかしながら、着色剤として水溶性染料を用いた水性インクの場合は、印字画像の耐水性が悪いという問題がある。
【0004】
このような水性染料インクの耐水性を改善するために、種々の研究開発がなされている。
例えば、特開平2−296878号公報、特開平2−255876号公報には、インク中にポリアミンを含有させ、耐水性を向上させる方法が提案されている。しかし、このようなインクの場合には、ポリアミンとの相互作用により、染料の溶解安定性が低下し易く、またポリアミンの経時による反応のため粘度が上昇し易いため、目詰まり、インクの吐出安定性の悪化のような信頼性の低下等が起こりやすいという問題があり、インクジェット記録用インクとして満足できるものではない。
【0005】
また、特開平4−270286号公報、特開平6−93196号公報等には、それぞれ一般式 I、一般式IIで示されるカルボキシル基を有する色材によって耐水性を向上させる方法が提案されている。
しかし、これらの色材を配合したインクの場合には、耐水性には優れているが、普通紙、特に紙の表面pHが酸性領域にある酸性紙に記録した場合、本来の鮮やかな色調とは異なったくすんだ色調となり、画像濃度も低い記録画像になってしまうという問題がある。
【0006】
このような酸性紙上での色相を改善するために、一般のインクでは、pH緩衝剤を添加するのが有効であるが、インクジェット記録用インクの場合、pH緩衝剤としてリン酸二水素カリウムや四ほう酸ナトリウム等の無機塩を添加したのでは、目詰まり、インクの吐出安定性の悪化を招くという問題がある。
また、酸性紙上での色相を改善する方法として、特開平2−233781号公報には、インク中にpka>4.3以上のカルボン酸塩を含有させる方法が提案されている。
しかし、特開平2−233781号公報に記載のpka>4.3以上のカルボン酸塩を一般式1または一般式2で示されるカルボキシル基を有する色材と併用した場合には、これら塩と該色材との相互作用により、該色材の溶解安定性が低下し、該色材が析出してしまい、目詰まり、インクの吐出安定性の悪化を招き、さらには印字した際、画像の乱れや印字濃度の低下の原因となってしまうという問題がある。また、これらの塩は一般に臭気を有しており、実用に適さない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これまで述べたように、インクジェット記録用の水性染料インクにおいては、耐水性に優れるとともに、インクジェット記録インクに要求される発色性や吐出安定性等、種々の性能を満足させるインクジェット用インクは未だ得られていないのが現状である。
【0008】
従って、本発明の目的は、先に述べた従来における諸問題を解決し、インクジェット記録インクに要求される種々の性能を満足させるインク、すなわち、耐水性に優れ、普通紙上、特に酸性紙上における色相が良好で、臭気がなく、画像濃度が高く、インクの目詰まりがなく吐出安定性に優れ、長期放置後の吐出回復性にも優れ、記録ヘッドなどのインクと接触する部剤を腐食劣化させることなく、高い信頼性を有するインクジェット記録用インクを提供することである。また、本発明のもう一つの目的は、該インクジェット記録用インクを用いたインクジェット記録方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者等は鋭意検討を重ねた結果、一般式 Iおよび/または一般式IIで示される色材と、C.I.AcidBlue9、C.I.DirectBlue199、C.I.DirectBlue86から選択される少なくとも一種の色材とを併用することにより、一般式 Iおよび/または一般式IIで示される色材による耐水性が維持されるとともに、発色性や吐出安定性等、従来、耐水性とは相容れなかった性能が発揮されることを見出し本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、水と色材と水溶性有機溶剤とを含有し且つ色材として染料のみを含有してなるインクジェット用記録インクにおいて、下記一般式Iで示される色材および/または下記一般式IIで示される色材と、C.I.AcidBlue9、C.I.DirectBlue199、C.I.DirectBlue86から選択される少なくとも一種の色材とを含有してなり、且つ、下記一般式Iまたは下記一般式 II で示される色材の、M 1 、M 2 、M 3 及びM 4 の少なくとも1つが、アンモニウムイオンであることを特徴とするインクジェット記録用インクである。
【0011】
一般式 I
Pc(SO3 M1 )t (SO2 −NR1 −L−NR2 −X−NR3 −G)q
(Pcは、金属を含むフタロシアニン核を示し、R1 、R2 、R3 はそれぞれ独立にH、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、置換アラルキル基を示し、Lは2価の有機結合基を示し、Xはカルボニル基、又は下記の式(1)〜(3)で表される基を示す。式(1)〜(3)中の、ZはNR4 R5 、SR6 、OR6 を示し、Yは、H、Cl、Z、SR7 、OR7 を示し、Eは、Cl、CNを示す。R4 、R5 、R6 、R7 は、それぞれ独立に、H、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基、または、R4 、R5 が結合されたN原子とともに5又は6員環を形成する基を示す。
【0012】
【化3】
【0013】
Gは−COSM2 基または−COOM2 基から選択された1又は2個の基により置換された有機基を示し、(t+q)は3〜4で、qは1以上である。一般式1で示される色材は1個以上の−COOM基と、1個以上の−SO3 M基を有し、−COSM基と−COOM基の和が−SO3 M基と同数以上である。またM1 、M2 は対イオンを表し、各々アルカリ金属、アンモニウム及びアミン類の中から選ばれる塩基である。)
【0014】
一般式II
【0015】
【化4】
【0016】
(Pcは、金属を含むフタロシアニン核を示し、R1 は、H、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、置換アラルキル基を示し、R2 は、H、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、アミノ基、置換アミノ基を示し、(t+q)は3〜4で、qは1以上である。またM3 、M4 は対イオンを表し、各々アルカリ金属、アンモニウム及びアミン類の中から選ばれる塩基である。)
【0017】
さらに、本発明は、記録信号に応じてオリフィスから吐出させたインク液滴を記録媒体に浸透させることにより記録を行うインクジェット記録方法において、本発明のインクジェット記録用インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法である。
【0018】
本発明によれば、一般式 Iおよび/または一般式IIで示される色材と、C.I.AcidBlue9、C.I.DirectBlue199、C.I.DirectBlue86から選択される少なくとも一種の色材との相乗効果により、耐水性に優れ、普通紙上、特に酸性紙上における色相が良好で、臭気がなく、画像濃度が高く、インクの目詰まりがなく吐出安定性に優れ、長期放置後の吐出回復性にも優れ、記録ヘッドなどのインクと接触する部剤を腐食劣化させることなく、高い信頼性を有するインクジェット記録用インクを提供される。また、本発明によれば、該インクジェット記録用インクを用いることにより、臭気のない状態で長期間にわたり安定に記録でき、得られる記録像は、普通紙上、特に酸性紙上における色相が良好で、濃度が高く、高品質で耐水性に優れるインクジェット記録方法が提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
(インクジェット記録用インク)
本発明のインクジェット記録用インクは、水と水溶性有機溶剤と色材とを含有してなり、該色材として、一般式 Iおよび/または一般式IIで示される色材と、C.I.AcidBlue9、C.I.DirectBlue199、C.I.DirectBlue86から選択される少なくとも一種の色材とを併用するものである。
【0021】
本発明で用いる一般式 Iおよび/または一般式IIで示される色材(以下、「一般式 Iおよび/または一般式IIで示される染料」と称することがある。)は、カルボキシル基を有するフタロシアニン染料であるが、その遊離酸の水に対する溶解度が比較的低く、さらにpH<7において、液媒体に対する溶解度が急激に低下する特徴を有しているため、良好な耐水性を示すものである。
本発明に用いられる一般式 Iで示される色材は以下の構造を有する。
一般式 I
Pc(SO3 M1 )t (SO2 −NR1 −L−NR2 −X−NR3 −G)q
(Pcは、金属を含むフタロシアニン核を示し、R1 、R2 、R3 はそれぞれ独立にH、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、置換アラルキル基を示し、Lは2価の有機結合基を示し、Xはカルボニル基、又は下記の式(1)〜(3)で表される基を示す。式(1)〜(3)中の、ZはNR4 R5 、SR6 、OR6 を示し、Yは、H、Cl、Z、SR7 、OR7 を示し、Eは、Cl、CNを示す。R4 、R5 、R6 、R7 は、それぞれ独立に、H、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基、または、R4 、R5 が結合されたN原子とともに5又は6員環を形成する基を示す。置換基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基等をあげることができる。
【0022】
【化5】
【0023】
Gは−COSM2 基または−COOM2 基から選択された1又は2個の基により置換された有機基を示し、(t+q)は3〜4で、qは1以上である。一般式 Iで示される色材は1個以上の−COOM基と、1個以上の−SO3 M基を有し、−COSM基と−COOM基の和が−SO3 M基と同数以上である。またM1 、M2 は対イオンを表し、各々アルカリ金属、アンモニウム及びアミン類の中から選ばれる塩基である。)
【0024】
式中、対イオンを表すM1 、M2 は各々、アルカリ金属、アンモニウム類及びアミン類の中から選択される塩基であるが、その具体例としては特に制限はないが、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等のアルカノールアンモニウムイオン等が挙げられ、対イオンがアンモニウムイオンである場合には、紙等の記録媒体上に印字した後、アンモニウムイオンがアンモニアとなって揮発し、一般式 Iおよび/または一般式IIで示される色材が遊離酸の形として該記録媒体上に残るため、耐水性を向上させることができる点で特に好ましい。
Pcは、金属を含むフタロシアニン核であるが、該フタロシアニン核に含まれる金属としては、ニッケル、銅、鉄、チタニウム、バナジウム等が好ましく、最も好ましいのはCuである。
R1 、R2 、R3 はそれぞれ独立にH、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、置換アラルキル基を表し、R4 、R5 、R6 、R7 は、それぞれ独立に、H、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基、または、R4 、R5 が結合されたN原子とともに5又は6員環を形成する基を表すが、その具体例として好ましいものは、H、炭素数1〜5のアルキル基、−OH基又は−COOH基で置換された炭素数1〜5の置換アルキル基などである。
【0025】
本発明に用いられる一般式IIで示される色材は以下の構造を有する。
一般式II
【0026】
【化6】
【0027】
(Pcは、金属を含むフタロシアニン核を示し、R1 は、H、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、置換アラルキル基を示し、R2 は、H、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、アミノ基、置換アミノ基を示し、(t+q)は3〜4で、qは1以上である。またM3 、M4 は対イオンを表し、各々アルカリ金属、アンモニウム及びアミン類の中から選ばれる塩基である。)置換基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基等をあげることができる。
【0028】
式中、対イオンを表すM3 、M4 は各々、アルカリ金属、アンモニウム類及びアミン類の中から選択される塩基であるが、その具体例としては特に制限はないが、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等のアルカノールアンモニウムイオン等が挙げられ、これらの中でも耐水性を向上させることができる点でアンモニウムイオンが好ましい。
Pcは、金属を含むフタロシアニン核であるが、該フタロシアニン核に含まれる金属としては、ニッケル、銅、鉄、チタニウム、バナジウム等が好ましく、最も好ましいのはCuである。
R1 は、H、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、置換アラルキル基を表し、またR2 は、H、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、アミノ基、置換アミノ基をその具体例として好ましいものは、H、炭素数1〜5のアルキル基、−OH基又は−COOH基で置換された炭素数1〜5の置換アルキル基などである。
COOM基は、式中の2位、3位、5位、6位に存在するのが好ましく、2位または3位に存在するのがより好ましい。
【0029】
一般式 Iまたは一般式IIで示される色材のうち、一般式 IIIで表される構造が特に好ましい。
一般式 III
【0030】
【化7】
【0031】
一般式 IIIにおいて、CuPcは銅を含むフタロシアニン核を表し、M5 、M6 は対イオンを表す。
【0032】
以下に、一般式 Iで示される色材の好ましい具体例(化合物 I−1〜 I−19)および一般式2で示される色材の好ましい具体例(化合物II−1〜II−11)を示す。なお、本発明は、これらの好ましい具体例に何ら限定されるものではない。
【0033】
【化8】
【0034】
【化9】
【0035】
【化10】
【0036】
【化11】
【0037】
【化12】
【0038】
【化13】
【0039】
【化14】
【0040】
【化15】
【0041】
【化16】
【0042】
【化17】
【0043】
先に述べたように、これらの一般式 Iおよび/または一般式IIで示される色材は、その遊離酸の水に対する溶解度が比較的低く、さらにpH<7において、液媒体に対する溶解度が急激に低下する特徴を有しているため、良好な耐水性を示すものであるが、インクジェット記録用インクが、一般式 Iおよび/または一般式IIで示される色材のみを含有する場合には、記録媒体上での急激なpH低下により生じる一般式 Iおよび/または一般式IIで示される色材の凝集・析出により、普通紙上、特に酸性紙上における色相が悪くなる傾向もある。また、その遊離酸の水に対する溶解度の低さから、ノズルの先端での局所的な水分蒸発や、インクカートリッジ中での長期保管などによる水分の減少によって一般式 Iおよび/または一般式IIで示される色材が析出しやすくなる。
【0044】
本発明で用いる前記一般式 Iおよび/または一般式IIで示される色材と混合併用される色材は、C.I.AcidBlue9、C.I.DirectBlue199、C.I.DirectBlue86から選択される。その中でも、一般式 Iおよび/または一般式IIで示される色材と混合併用した場合に耐水性が良好で、普通紙上、特に酸性紙上における色相の改善、吐出安定性の改善が顕著である等の点で、C.I.AcidBlue9が好ましい。
【0045】
本発明では、一般式 Iおよび/または一般式IIで表される色材のみならず、これとC.I.AcidBlue9、C.I.DirectBlue199、C.I.DirectBlue86から選択される少なくとも一つの色材(以下「混合併用される色材」又は「混合併用される染料」と称することがある)とを含有し併用するので、耐水性を損なうことなく、普通紙上、特に酸性紙上における色相の改善を可能にし、さらに水分の減少によって色材濃度が上昇した場合も、色材が析出することなく、目詰まり、インクの吐出安定性の悪化を起こすことがない。
【0046】
このような効果が得られる理由としては、一般式 Iおよび/または一般式IIで表される色材に対して、混合併用する色材が何らかの相互作用をもたらし、紙面上におけるpHの急激な低下に対して一般式 Iおよび/または一般式IIで表される色材を保護することによって、急激な凝集・析出現象を抑制し、緩和していると推測される。また混合併用する色材自身も良好な色相を有するため、混合併用することにより、一般式 Iおよび/または一般式IIで表される色材の色相の悪さを補い、インク全体としての色相の改善ができるものと推測される。また一般式 Iおよび/または一般式IIで表される色材と比べて、混合併用される色材は、比較的溶解度の高い性質を有するため、水分が減少し、一般式 Iおよび/または一般式IIで表される色材の不溶化が起こり始めても、それを保護し、可溶化するものと推測される。
【0047】
本発明のインクジェット記録用インクにおいては、一般式 Iおよび/または一般式IIで表される色材と、混合併用される色材との重量比が95:5〜70:30の範囲にあることが好ましい。95:5を越えて一般式 Iおよび/または一般式IIで表される色材の比率が大きくなると、相乗効果は発現せず、色相の改善は得られないこともある。一方、70:30未満に一般式 Iおよび/または一般式IIで表される色材の比率が小さくなると、印字した際、その画像の耐水性が低下してしまうことがある。
また、本発明のインクジェット記録用インクにおいては、発色性、画像濃度、また色材の溶解安定性の点で、全色材の含有量が0.3〜10重量%であることが好ましく、1〜8重量%がさらに好ましい。
【0048】
本発明で用いる水溶性有機溶剤は、水溶性を示すものであれば特に制限はなく、例えば、多価アルコール、ポリグリコール、グリコールエーテル、アルコール、アルカノールアミン、その他の極性溶剤等が挙げられる。
【0049】
水溶性有機溶剤が、多価アルコール、ポリグリコール及びグリコールエーテルから選択される少なくとも1種である場合には、インクの保湿性及び色材の溶解性が良好になり、目詰まり、インクジェット記録用インクの吐出安定性を維持し、さらに長期の保存に対しても色材の凝集・析出を防ぐことができるため、より好ましく、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール。プロピレングリコール、チオジグリコールが特に好ましい。また、インクジェット記録用インクの紙への浸透性及び色材の溶解性の点からは、グリコールエーテルが好ましく、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが特に好ましい。
【0050】
前記多価アルコール及びポリグリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、グリセリン、チオジグリコール等を好適に用いることができる。
前記グリコールエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を好適に用いることができる。
【0051】
前記アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等を好適に用いることができる。
前記アルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等を好適に用いることができる。
前記極性溶剤としては、例えば、ピロリドン、Nーメチルー2ーピロリドン、トリエタノールアミン、ジメチルスルオキシド、スルフォラン等を好適に用いることができる。
【0052】
本発明においては、これらの有機溶剤は、1種単独でも使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
また、本発明においては、これらの水溶性有機溶剤のインクジェット記録用インクにおける含有量が3〜40重量%であることが好ましい。前記水溶性有機溶剤の含有量が3重量%未満であるとインクジェット記録用インクが乾燥しやすくなり、一方40重量%を越えると紙への定着が悪く、また粘度が高くなり吐出不良を起こしやすくなる。
【0053】
本発明で用いる水は、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水が好ましく、特に超純水が、多価カチオン、微生物等の混入が無く、保管安定性、目詰まりの点で好ましく用いられる。
【0054】
本発明のインクジェット記録用インクは、その他の成分を含有していても良く、それらの成分は、特に制限なく目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、20°CにおけるpKaが6.0〜10.0の範囲であるカルボン酸及び/又はスルホン酸構造を有する含窒素化合物、アルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、常温において固体であり、100〜350°Cにおいて重量で50%以上気化する水溶性有機化合物、界面活性剤等の成分を含有していても良い。
【0055】
本発明のインクジェット記録用インクは、pHが8.0〜12.0の範囲にあることが好ましい。かかる範囲では適度なpHの緩衝作用を発揮し、印字後の乾燥時の急激なpH低下を緩和し、色相の悪化をさらに改善することができる。pHが、8.0未満であると色材が初期段階から析出し易くなることがあり、12.0を越えるとヘッド材料をはじめインクジェット記録装置内で常時インクと接触する材料の腐食や溶解、剥離等の劣化が進み易くなることがある。また、色材の溶解安定性、他の構成材料の安定性の点で、pHが8.0〜10.0の範囲にあることがより好ましく、8.5〜9.5の範囲にあることがさらに好ましい。
【0056】
このようにpHを8.0〜12.0の範囲に維持し、かつ色材を安定的に溶解するために、20°Cにおけるpkaが6.0〜10.0であるカルボン酸及び/又はスルホン酸構造(これらは塩であってもよい)を有する含窒素化合物と、アルカリ金属の水酸化物(MOHで表され、Mは、Li、Na、Kから選択される)若しくは水酸化アンモニウムとを添加することが好ましい。これらの成分によりpHを調製すれば、特に、保管安定性、目詰まりの点で有利である。
【0057】
本発明で用いる20°CにおけるpKaが6.0〜10.0の範囲であるカルボン酸及び/又はスルホン酸構造(これらは塩であってもよい)を有する含窒素化合物としては、カルボキシル基が置換したアルキル基、スルホン酸基が置換したアルキル基を含有する窒素化合物が挙げられる。また、カルボキシル基やスルホン酸基に加え、さらに水酸基が置換したアルキル基、カルバモイル基が置換したアルキル基等を含有する化合物が挙げられる。
【0058】
カルボキシル基が置換したアルキル基としては、例えば、カルボキシメチル基、1−カルボキシエチル基、2−カルボキシエチル基、1−カルボキシ−n−プロピル基、2−カルボキシ−n−プロピル基、3−カルボキシプロピル基、2−カルボキシ−i−プロピル基、1−カルボキシ−n−ブチル基、4−カルボキシブチル基、3−カルボキシ−i−ブチル基、2−メチル−4−カルボキシブチル基、カルボキシ−t−ブチル基、5−カルボキシペンチル基等が挙げられる。
【0059】
スルホン酸基が置換したアルキル基としては、例えば、前記カルボキシル基が置換したアルキル基において該カルボキシル基をスルホン酸基で置き換えたアルキル基等が挙げられる。
【0060】
これらの酸性基はリチウム、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩の形態でアルキル基に置換していてもよい。これらの酸性基の好ましい例としては、カルボキシメチル基、1−カルボキシエチル基、1−カルボキシ−n−プロピル基、スルホメチル基、1−スルホエチル基、1−スルホ−n−プロピル基等が挙げられる。
【0061】
水酸基が置換したアルキル基としては、例えば、メチロール基、2−ヒドロキシエチル基、メチロールメチル基、トリメチロールメチル基、1−ヒドロキシ−n−プロピル基、2−ヒドロキシ−n−プロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシ−i−プロピル基、1−ヒドロキシ−n−ブチル基、2−ヒドロキシ−n−ブチル基、4−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシ−i−ブチル基、2−メチル−3−ヒドロキシブチル基、ヒドロキシ−t−ブチル基、4−ヒドロキシ−n−ペンチル基、5−ヒドロキシペンチル基等が挙げられる。
【0062】
カルバモイル基が置換したアルキル基としては、例えば、前記カルボキシル基が置換したアルキル基において該カルボキシル基をカルバモイル基で置き換えたアルキル基等が挙げられ、その好ましい具体例としては、メチロール基、2−ヒドロキシエチル基、トリメチロールメチル基、カルバモイルメチル基等が挙げられる。
【0063】
含窒素化合物の具体例としては、特に制限はないが、アセトアミドグリシン、N−2−ヒドロキシエチルグリシン、N−カルバモイルメチル−β−アラニン、N−2−ヒドロキシエチル−N−カルバモイルメチルグリシン、N−ヒドロキシメチル−N−カルバモイルメチル−γ−アミノ酪酸、N−カルボキシメチルイミノジアセトアミド、N−カルバモイルメチルイミノジ酢酸、N−ヒドロキシプロピルイミノジプロピオン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン等、あるいはN−2−ヒドロキシエチル−2−アミノエタンスルホン酸、N−3−ヒドロキシプロピル−2−アミノエタンスルホン酸、N−カルバモイルメチル−2−アミノエタンスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、N−2−ヒドロキシエチル−N−カルバモイルメチルアミノメタンスルホン酸、N−2−ヒドロキシエチル−N−カルバモイルメチル−2−アミノエタンスルホン酸、N,N−ビス−カルバモイルメチル−2−アミノエタンスルホン酸、N−2−ヒドロキシエチルイミノジエタンスルホン酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸、またはこれらのリチウム、ナトリウム、カリウム又はアンモニウム塩等が挙げられる。
【0064】
本発明においては、これらの含窒素化合物の中でも、インクベヒクルへの溶解性という点で、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、アセトアミドグリシン、N−カルバモイルメチルイミノジ酢酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンが好ましい。また、その中でも熱的な安定性という点で、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸がより好ましい。
【0065】
これらの含窒素化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
含窒素化合物のインクジェット記録用インクにおける含有量は、用いる色材自体の溶解性によって異なり、適宜適切な量が選択されるが、十分な色材溶解安定化能を発揮し、含窒素化合物自体も十分に溶解安定化し得るには、0.1〜8重量%が好ましく、色材の溶解安定化と該含窒素化合物自体の溶解安定性とのバランスの点で、0.4〜3重量%がより好ましい。
【0066】
本発明で用いるアルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。水酸化アンモニウムと該アルカリ金属の水酸化物の中では、イオン化した場合の保水性の点で水酸化リチウム、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
【0067】
本発明においては、アルカリ金属の水酸化物及び水酸化アンモニウムのインクジェット記録用インクにおける含有量は、前記含窒素化合物の含有量に依存し、一概に規定することができないが、インクジェット記録用インクのpHを8以上に保つためには、0.05重量%以上が好ましく、ヘッド材料をはじめインクジェット記録装置内で常時インクと接触する材料の腐蝕や溶解、剥離等の劣化を十分に抑制するためには5重量%以下が好ましく、具体的には、0.05〜5重量%の範囲内でインクジェット記録用インクのpHが8〜12の範囲に調整されるように添加するのが好ましい。
【0068】
本発明のインクジェット記録用インクにおいては、常温において固体であり、100〜350°Cにおいて重量で50%以上が気化する水溶性有機化合物(以下、「特定の水溶性有機化合物」と称することがある。)を添加するのが好ましい。かかる水溶性有機化合物を含有してなると、インクを加熱することによりインク液滴を形成するインクジェット記録方法に該インクジェット記録用インクを用いた場合、インク液滴を噴射する力が向上し、その結果インク液滴が紙表面上により強く着弾し、緩く着弾した場合に比べ、インク液滴の紙表面上における滞留時間が短くなり、従って染料が紙上において過剰に凝集・析出することなく、発色性の良い画像を得ることができる。特定の水溶性有機化合物の気化する割合が高くなるほど、これらの効果は顕著であり、50%以下では、インク液滴を噴射する力が不十分かつ不安定となる。
【0069】
ここで、「常温」とは、25°C近傍を意味し、「100〜350°Cにおいて50重量%以上が気化する」とは、熱重量分析において、20°C/分の速度で昇温し、100〜350°Cの温度範囲における重量減少率が50重量%以上であることを意味する。
【0070】
このように、常温において固体であり、100〜350°Cにおいて重量で50%以上が気化する水溶性有機化合物としては、尿素、チオ尿素又はその誘導体、及びベタインが好適に用いられる。これらの水溶性有機化合物の場合には、水および水溶性有機溶媒への溶解安定性が良好のため、保管安定性、目詰まりの点で有利である。
尿素の誘導体としては、例えば、アルキル尿素類、ジアルキル尿素類、エチレン尿素等が挙げられる。前記チオ尿素の誘導体としては、例えば、アルキルチオ尿素類、ジアルキルチオ尿素類等が挙げられる。
【0071】
また、これらの水溶性有機化合物は、それ自身が保湿性を有するため、インクジェット記録用インクの保湿性の向上を補助する。さらに、これらの特定の水溶性有機化合物は、色材の溶解性を補助する性質も有していることから、色材の析出を抑制し、インクジェット記録用インクの保存安定性にも寄与している。
【0072】
本発明においては、これらの水溶性有機化合物のインクジェット記録用インクにおける含有量は、インク液滴を噴射する力を十分に向上させ、保湿性を保ち、前記含窒素化合物、前記アルカリ金属の水酸化物及び水酸化アンモニウムとの相互作用を十分に保つためには、0.1重量%以上が好ましく、これらの特定の水溶性有機化合物の溶解性安定性を十分に得、安定したインク液滴の噴射力を得るためには、15重量%以下が好ましく、3〜9重量%がより好ましい。
【0073】
本発明のインクジェット記録用インクにおいては、界面活性剤を添加することが好ましい。かかる界面活性剤を含有してなると、該界面活性剤がインクジェット記録用インクの紙への浸透性を促進するだけでなく、色材分子と相互作用を生じることにより、該色材を安定に溶解させ、その結果、目詰まり、インクジェット記録用インクの吐出安定性の悪化を防ぎ、さらに長期に渡る保存に対しても色材の凝集・析出を防ぐことができる。また色材分子との相互作用により印字物の発色制御も良好になる。
【0074】
本発明で用いられる界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれでもよい。
【0075】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、等の、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック共重合体、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、グリセリンのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド等を用いることができる。
【0076】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩およびスルホン酸塩、高級アルキルスルホンアミドのアルキルカルボン酸塩、スルホコハク酸塩、そのエステル塩等を用いることができる。
【0077】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、第一、第二又は第三級のアミン塩、第四級アンモニウム塩等を用いることができる。
両性界面活性剤としては、例えば、ベタイン、スルホベタイン、サルフェートベタイン、イミダゾリルベタイン等を用いることができる。
さらに、本発明においては、前記界面活性剤として、リオキシエチレンパーフロロアルキルエーテル、パーフロロアルキルベンゼンスルホン酸塩、パーフロロアルキル第四級アンモニウム塩等のフッソ系界面活性剤や、シリコン系界面活性剤等を用いることができる。
【0078】
本発明においては、これらの界面活性剤の中でも、色材のイオンや、前記各成分のイオンと相互作用を起こしにくいノニオン界面活性剤が好ましく、熱的な安定性と純度の点でポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック共重合体がより好ましい。
【0079】
本発明においては、これら界面活性剤のインクジェット記録用インクにおける含有量としては、0.005〜5重量%であることが好ましく、0.01〜2重量%がより好ましい。
【0080】
さらに、本発明のインクジェット記録用インクは、必要に応じて、包接化合物、キレート化剤、防カビ剤、水溶性高分子等を含有していてもよい。包接化合物としては、例えば、シクロデキストリン、ポリシクロデキストリン、大環状アミン類、クラウンエーテル類、アセトアミド等が挙げられる。キレート化剤としては、例えば、EDTA(エチレンジアミン−N,N,N’,N’−4酢酸)、EDMA(エチレンジアミン−N−モノ酢酸)、NTA(ニトリロ3酢酸)等が挙げられる。防カビ剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム等が挙げられる。水溶性高分子としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0081】
本発明のインクジェット記録用インクは、20°Cにおける、導電率σ(S/m)と粘度η(mPas)の積(σ×η)が0.4〜4.0であることが好ましい。これらの値がかかる範囲にあると、一般式 Iおよび/または一般式IIで示される色材と混合併用される色材とを安定に溶解することができ、目詰まり、インクジェット記録用インクの吐出安定性の悪化を防ぎ、長期に渡る保存に対しても、色材の析出を防ぐことができる。
【0082】
また、本発明のインクジェット記録用インクは、20°Cにおける、表面張力γが20〜40mN/mであり、かつ粘度ηが1.5〜5.0mPasであることが好ましい。これらの値がかかる範囲にあると、インクジェット記録用インクの紙への浸透速度を早めることができ、その結果、色材が紙上において過剰に凝集・析出することなく定着することができる。
【0083】
本発明のインクジェット記録用インクは、公知の配合物と同様に製造することができ、以下の本発明のインクジェット記録方法に好適に用いることができる。
【0084】
(インクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録方法は、インクとして本発明のインクジェット記録用インクを用いるかぎり特に制限はなく、それ自体公知の記録方式を採用することができる。前記インクジェット記録方法は、一般に、記録信号に応じてオリフィスから吐出させたインク液滴を記録媒体に浸透させることにより記録を行う方法である。
【0085】
本発明のインクジェット記録方法に用いられる記録方式としては、特に制限はないが、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させるいわゆる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用してインクを吐出させるいわゆるドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、及びインクを加熱した気泡を形成、成長させることにより生じる圧力を利用してインク液滴を形成するいわゆる熱インクジェット方式などが挙げられる。
【0086】
本発明においては、これらの記録方式の中でも熱インクジェット方式が好ましい。インク液滴が、加熱手段からインクジェット記録用インクに熱エネルギーを作用させることにより形成される場合には、吐出安定性が良好となる。
以下、図1〜3を参照しながら、熱インクジェット方式による本発明のインクジェット記録方法の好適な一例について説明する。
【0087】
図1〜3は、熱インクジェット方式に用いられる記録ヘッドの概略図であり、図1は、該記録ヘッドの正面図であり、図2は、該記録ヘッドの平面図であり、図3は図1及び図2における点線abに沿った該記録ヘッドの断面図である。なお、図1において、矢印A方向は、該記録ヘッドの高さ方向を、矢印B方向は、該記録ヘッドの奥行き方向を、矢印C方向は、該記録ヘッドの長さ方向をそれぞれ示す。
【0088】
記録ヘッド10は、シリコンで形成された直方体状の本体12を備えている。この本体12には、高さ方向(矢印A方向)と平行であり、かつ上面12Aから本体12の高さ方向の略中央まで達する第1流路14が形成されている。
【0089】
本体12には、奥行き方向(矢印B方向)と平行であり、かつ正面12Bから第1流通路14の手前まで達する直方体状の切欠き12Cが形成され、切欠き12Cの奥行き側には、奥行き方向(矢印B方向)と平行であり、かつ切欠き12Cと第1流通路14とを連通するための連通路16が形成されている。
【0090】
また、本体12には、奥行き方向(矢印B方向)と平行であり、切欠き12Cと連続する位置に、第2流路18が形成されている。この第2流路18の正面形状は三角形となっており、第2流路18の奥行き方向の長さは、切欠き12Cの奥行き方向の長さよりも若干短く形成されている。
【0091】
さらに、本体12には、高さ方向(矢印A方向)と平行とされ、かつ連通路16の正面12C側と第2流路18の正面12Cとは反対側とを連通する連通路20が形成されている。
【0092】
切欠き12Cには、ポリイミド樹脂で形成された直方体状のはめ込み部22がはめ込まれ、エポキシ樹脂により固定されている。このはめ込み部22には、第2流路18の下方、かつはめ込み部22の奥行き方向の略中央部の位置に直方体状の切欠き22Aが形成されており、切欠き22A内には図示しないコントローラに接続された加熱手段としての発熱体24が配置されている。即ち、この記録ヘッド10においては、加熱手段としての発熱体24の周囲がポリイミド系樹脂で形成されている。このように、加熱手段の周囲がポリイミド系樹脂で形成されていると、該樹脂がインクジェット記録用インクに含まれる成分に対して、十分な化学耐性を有するため、該加熱手段の周囲の劣化を抑制することができる。
ここで、「加熱手段の周囲」とは、発熱体によって200°C以上に加熱される部分であって、インク流路に接する部分をいう。
【0093】
この記録ヘッド10では、第1流路14、連通路16及び20、並びに、第2流路18がインク流路を形成しており、第2流路18の正面12B側が吐出口26となっている。そして、インク流路を流れるインクは、第2流路18の下方に配置された発熱体24に加熱され、これによりインク液滴が形成されて、吐出口26より吐出される。
【0094】
発熱体24の加熱は、記録信号に応じて図示しないコントローラから複数のエネルギーパルスが作用(印加)されることにより行われる。複数のエネルギーパルスの作用を受ける場合には、長期間使用しても、初期の印字品質を保つことができる。
【0095】
また、本発明のインクジェット記録方法は、記録を行う記録工程の外、他の工程を含んでいても良く、例えば、目詰まりを防止する目的のために、記録を行わないときにインク液滴を予備吐出させる予備吐出工程を含んでいることが好ましい。
【0096】
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において「部」は全て「重量部」を意味し、その計が100重量部である。
【0097】
(実施例1)
化合物 I−2の染料のアンモニウム塩 3.0重量部
アシッド・ブルー9 0.6重量部
エチレングリコール 20.0重量部
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 3.0重量部
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン
(pka=8.35) 1.5重量部
水酸化ナトリウム 0.25重量部
尿素 5.0重量部
ノニオン界面活性剤
(ポリオキシエチレンラウリルエーテル
(15モルEO付加物)(日本油脂製)) 0.1重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは9.5であった。
【0098】
(実施例2)
化合物 I−10の染料のアンモニウム塩 3.2重量部
アシッド・ブルー9 0.28重量部
チオジグリコール 20.0重量部
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 4.0重量部
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン
(pka=8.35) 1.0重量部
水酸化リチウム 0.2重量部
ベタイン(トリメチルグリシン) 3.0重量部
アニオン界面活性剤(サーフィノール465(日信化学製)) 0.2重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは9.4であった。
【0099】
(実施例3)
化合物II−5の染料のアンモニウム塩 3.3重量部
ダイレクト・ブルー86 0.825重量部
グリセリン 5.0重量部
チオジグリコール 10.0重量部
N−(2−アセトアミド)イミノジ酢酸
(pka=6.60) 4.5重量部
水酸化ナトリウム 1.2重量部
尿素 6.0重量部
アニオン界面活性剤(サーフィノール465(日信化学製)) 0.1重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは9.2であった。
【0100】
(実施例4)
化合物 I−1の染料のアンモニウム塩 2.9重量部
アシッド・ブルー9 0.58重量部
グリセリン 12.0重量部
プロピレングリコール 5.0重量部
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 4.5重量部
ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン
(pka=6.46) 3.0重量部
水酸化リチウム 0.7重量部
ノニオン界面活性剤
(プルロニックPE4300(BASF製)) 0.2重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは8.9であった。
【0101】
(実施例5)
化合物 I−9の染料のアンモニウム塩 3.3重量部
アシッド・ブルー9 0.396重量部
プロピレングリコール 3.0重量部
チオジグリコール 15.0重量部
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸
(pka=7.15) 1.5重量部
水酸化リチウム 0.45重量部
ノニオン界面活性剤
(プルロニックPE4300(BASF製)) 0.2重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは9.2であった。
【0102】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは9.7であった。
【0103】
(実施例7)
化合物 I−6の染料のアンモニウム塩 3.2重量部
ダイレクト・ブルー199 0.4重量部
ジエチレングリコール 20.0重量部
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 3.0重量部
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸
(pka=7.15) 1.0重量部
水酸化リチウム 0.3重量部
ベタイン(トリメチルグリシン) 4.0重量部
ノニオン界面活性剤
(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル
(30モルEO付加物)(日本油脂製)) 0.1重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは9.0であった。
【0104】
(実施例8)
化合物II−4の染料のアンモニウム塩 3.2重量部
ダイレクト・ブルー86 0.42重量部
プロピレングリコール 15.0重量部
N−(2−アセトアミド)イミノジ酢酸(pka=6.60) 4.5重量部
水酸化ナトリウム 1.8重量部
ノニオン界面活性剤
(プルロニックPE4300(BASF製)) 0.2重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは9.6であった。
【0105】
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは9.4であった。
【0106】
(実施例10)
化合物 I−15の染料のアンモニウム塩 3.5重量部
アシッド・ブルー9 0.42重量部
グリセリン 15.0重量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 5.0重量部
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸
(pka=7.15) 3.0重量部
水酸化ナトリウム 0.5重量部
尿素 5.0重量部
ノニオン界面活性剤
(ポリオキシエチレンラウリルエーテル
(15モルEO付加物)(日本油脂製)) 0.1重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは9.2であった。
【0107】
(実施例11)
化合物II−10の染料のアンモニウム塩 3.0重量部
ダイレクト・ブルー86 0.5重量部
ジエチレングリコール 18.0重量部
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 6.0重量部
ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)−メタン
(pka=6.46) 3.5重量部
水酸化ナトリウム 1.0重量部
ノニオン界面活性剤
(プルロニックPE4300(BASF製)) 0.2重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは9.2であった。
【0108】
(実施例12)
化合物 I−12の染料のアンモニウム塩 3.0重量部
ダイレクト・ブルー199 0.41重量部
グリセリン 10.0重量部
エチレングリコール 8.0重量部
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸
(pka=7.15) 1.5重量部
水酸化ナトリウム 0.45重量部
尿素 6.0重量部
ノニオン界面活性剤
(ポリオキシエチレンラウリルエーテル
(15モルEO付加物)(日本油脂製)) 0.2重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは9.4であった。
【0109】
(実施例13)
化合物II−9の染料のアンモニウム塩 2.3重量部
ダイレクト・ブルー199 0.485重量部
エチレングリコール 5.0重量部
プロピレングリコール 12.0重量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 5.0重量部
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸
(pka=7.15) 2.5重量部
水酸化リチウム 1.0重量部
ノニオン界面活性剤
(ポリオキシエチレンラウリルエーテル
(15モルEO付加物)(日本油脂製)) 0.2重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは9.6であった。
【0110】
(実施例14)
化合物II−5の染料のアンモニウム塩 3.2重量部
ダイレクト・ブルー86 0.384重量部
ジエチレングリコール 10.0重量部
プロピレングリコール 8.0重量部
ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)−メタン
(pka=6.46) 3.5重量部
水酸化ナトリウム 1.0重量部
ノニオン界面活性剤
(ポリオキシエチレンラウリルエーテル
(15モルEO付加物)(日本油脂製)) 0.2重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは9.3であった。
【0111】
(実施例15)
化合物II−8の染料のアンモニウム塩 3.3重量部
ダイレクト・ブルー199 1.15重量部
エチレングリコール 10.0重量部
チオジグリコール 5.0重量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 5.0重量部
N−(2−アセトアミド)イミノジ酢酸(pka=6.60) 3.0重量部
水酸化リチウム 1.0重量部
アニオン界面活性剤(サーフィノール465(日信化学製)) 0.2重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは9.2であった。
【0112】
(実施例16)
化合物 I−5の染料のアンモニウム塩 1.5重量部
化合物II−3の染料のアンモニウム塩 1.5重量部
アシッド・ブルー9 0.5重量部
ジエチレングリコール 20.0重量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0重量部
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸
(pka=7.15) 1.0重量部
水酸化リチウム 1.0重量部
ベタイン(トリメチルグリシン) 4.0重量部
(ポリオキシエチレンラウリルエーテル
(15モルEO付加物)(日本油脂製)) 0.2重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは9.1であった。
【0113】
(比較例1)
化合物 I−6の染料のアンモニウム塩 3.5重量部
ジエチレングリコール 20.0重量部
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 3.0重量部
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸
(pka=7.15) 1.0重量部
水酸化リチウム 0.3重量部
尿素 4.0重量部
ノニオン界面活性剤
(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル
(30モルEO付加物)(日本油脂製)) 0.1重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは9.4であった。
【0114】
(比較例2)
アシッド・ブルー9 2.2重量部
エチレングリコール 20.0重量部
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 3.0重量部
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン
(pka=8.35) 1.5重量部
水酸化ナトリウム 0.25重量部
尿素 5.0重量部
ノニオン界面活性剤
(ポリオキシエチレンラウリルエーテル
(15モルEO付加物)(日本油脂製)) 0.1重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは7.7であった。
【0115】
(比較例3)
ダイレクト・ブルー199 2.2重量部
アシッド・ブルー9 0.3重量部
ジエチレングリコール 18.0重量部
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 6.0重量部
ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)−メタン
(pka=6.46) 3.5重量部
水酸化ナトリウム 1.0重量部
ノニオン界面活性剤
(プルロニックPE4300(BASF製)) 0.2重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは8.8であった。
【0116】
(比較例4)
化合物II−1の染料のアンモニウム塩 3.3重量部
エチレングリコール 20.0重量部
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 3.0重量部
水酸化ナトリウム 0.25重量部
ベタイン 5.0重量部
ノニオン界面活性剤
(ポリオキシエチレンラウリルエーテル
(15モルEO付加物)(日本油脂製)) 0.1重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは11.5であった。
【0117】
(比較例5)
化合物 I−2の染料のアンモニウム塩 3.5重量部
エチレングリコール 18.0重量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0重量部
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン
(pka=8.35) 2.0重量部
アニオン界面活性剤(サーフィノール465(日信化学製)) 0.1重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは8.4であった。
【0118】
(比較例6)
ダイレクト・ブルー86 3.0重量部
エチレングリコール 20.0重量部
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 3.0重量部
水酸化ナトリウム 0.25重量部
尿素 5.0重量部
ノニオン界面活性剤
(ポリオキシエチレンラウリルエーテル
(15モルEO付加物)(日本油脂製)) 0.1重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは9.2であった。
【0119】
(比較例7)
ダイレクト・ブルー199 3.0重量部
ジエチレングリコール 10.0重量部
プロピレングリコール 8.0重量部
ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)−メタン
(pka=6.46) 3.5重量部
ノニオン界面活性剤
(ポリオキシエチレンラウリルエーテル
(15モルEO付加物)(日本油脂製)) 0.2重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは8.4であった。
【0120】
(比較例8)
アシッド・ブルー9 2.0重量部
ダイレクト・ブルー86 0.5重量部
ジエチレングリコール 18.0重量部
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 6.0重量部
水酸化ナトリウム 1.0重量部
ノニオン界面活性剤
(プルロニックPE4300(BASF製)) 0.2重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは8.6であった。
【0121】
(比較例9)
ダイレクト・ブルー199 3.0重量部
アシッド・ブルー9 0.45重量部
ジエチレングリコール 18.0重量部
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 6.0重量部
ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)−メタン
(pka=6.46) 3.5重量部
ノニオン界面活性剤
(プルロニックPE4300(BASF製)) 0.2重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは7.8であった。
【0122】
(比較例10)
ダイレクト・ブルー199 1.3重量部
アシッド・ブルー9 1.2重量部
ジエチレングリコール 18.0重量部
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 6.0重量部
ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)−メタン
(pka=6.46) 3.5重量部
水酸化ナトリウム 1.0重量部
ノニオン界面活性剤
(プルロニックPE4300(BASF製)) 0.2重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは8.8であった。
【0123】
(比較例11)
化合物 I−10の染料のアンモニウム塩 3.0重量部
リアクテッド・ブルー72 0.5重量部
エチレングリコール 18.0重量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0重量部
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン
(pka=8.35) 2.0重量部
水酸化ナトリウム 0.2重量部
ノニオン界面活性剤
(ポリオキシエチレンラウリルエーテル
(15モルEO付加物)(日本油脂製)) 0.2重量部
イオン交換水 残量
上記の各成分を十分混合溶解した後、0.45μmフィルターにて加圧濾過し、インクを調製した。調製したインクのpHは9.4であった。
【0124】
実施例1〜16および比較例1〜11の各インクのpH、導電率、粘度、表面張力を測定し、また、各インクを用いて、耐水性、色相、像濃度、目詰まり性、長期放置後の吐出回復性についての評価を下記の基準に従って行った。その結果を表1〜3に示す。
【0125】
1)pH:pHは、20°C、50%RHの環境下において、pHメーター(堀場製作所(株)製)により測定した。
2)導電率:導電率は、20°C、50%RHの環境下において、導電率計(電気化学計器(株)製)により測定した。
3)粘度:粘度は、20°C、50%RHの環境下において、粘度計(レオマット(株)製)により粘度を測定した。
4)表面張力:表面張力は、20°C、50%RHの環境下において、表面張力計(協和界面化学(株)製)により測定した。
【0126】
以下の評価は、試作したインクジェットプリントヘッド(構成材料がシリコン、ポリイミド、及びエポキシなどよりなる。吐出口の形状が一辺の長さが60μmの三角形のノズルを有するヘッドである。)及び、それを登載したサーマルインクジェットプリンターを用いて行った。プリントヘッドの駆動条件は、駆動電圧30V、発熱抵抗体の抵抗値180Ω、周波数6kHz、記録信号に対する印字吐出の駆動パルス及び予備吐出の駆動パルスは下記の条件であった。予備吐出は印字パルスが1×107 パルスを越えた時点で1×105 パルス行った。
【0127】
【0128】
5)耐水性
試作したサーマルインクジェットプリンターを用い、FX−L紙(富士ゼロックス(株)製)とゼロックス4024紙(ゼロックス(株)製)に、ベタ画像を印字し濃度をマクベス濃度計で測定した。印字終了から24時間放置後、水に3分間浸漬後それを取り出し、乾燥させた後、再度濃度を測定し、印字画像の濃度残存率を求め耐水性の指標とした。
○・・・ 濃度残存率80%を越える状態
△・・・ 濃度残存率50〜80%である状態
×・・・ 濃度残存率50%未満である状態
【0129】
6)色相
試作したサーマルインクジェットプリンターを用い、FX−L紙(富士ゼロックス(株)製)とゼロックス4024紙(ゼロックス(株)製)にベタ画像を印字し、その色相を官能評価した。
○・・・ 鮮やかなシアン色である状態
△・・・ ややくすんだシアン色である状態
×・・・ くすんだシアン色である状態
【0130】
7)像濃度
試作したサーマルインクジェットプリンターを用い、FX−L紙(富士ゼロックス(株)製)とゼロックス4024紙(ゼロックス(株)製)に、ベタ画像を印字し濃度をマクベス濃度計で測定した。
○・・・ 印字濃度が1.10以上である状態
△・・・ 印字濃度が1.00〜1.09である状態
×・・・ 印字濃度が0.99以下である状態
【0131】
8)目詰まり性
試作したインクジェットプリントヘッドを用い、10°C、15%RH、及び30°C、85%RHの雰囲気中で、所定時間解放放置後、吐出テストを行い、以下の基準で評価を行った。
○・・・ 300秒放置で吐出可能である状態
△・・・ 180秒放置で吐出可能である状態
×・・・ 180秒放置で吐出不可能である状態
【0132】
9)長期放置後の吐出回復性
試作したインクジェットプリントヘッドにインクを充填し、10°C、15%RH、及び30°C、85%RHの雰囲気中で2ヵ月放置後、吸引ポンプでの回復操作を行った後印字させ、正常な印字ができるかを評価した。
○・・・ 回復操作3回以内で正常印字可能である状態
△・・・ 回復操作4回〜8回で正常印字可能である状態
×・・・ 回復操作4回〜8回で正常印字不可能である状態
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【0136】
表1〜3の結果から、本発明の実施例の場合には、耐水性、色相、画像濃度及び耐ノズル目詰まり性が良好であり、長期放置後の吐出回復性が良好であり、記録ヘッド等のインクと接触する部材を腐食劣化させることなく、高い信頼性を得ることができることが明らかである。
【0137】
【発明の効果】
本発明によると、前記従来における諸問題を解決することができ、耐水性に優れ、普通紙上、特に酸性紙上における色相が良好で、臭気がなく、画像濃度が高く、インクの目詰まりがなく吐出安定性に優れ、長期放置後の吐出回復性にも優れ、記録ヘッド等のインクと接触する部材を腐食劣化させることなく、高い信頼性を有するインクジェット記録用インク、及び該インクジェット記録用インクを用いるインクジェット記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、熱インクジェット方式のインクジェット記録装置に用いられる記録ヘッドの一例を説明するための正面図である。
【図2】図2は、熱インクジェット方式のインクジェット記録装置に用いられる記録ヘッドの一例を説明するための平面図である。
【図3】図3は、熱インクジェット方式のインクジェット記録装置に用いられる記録ヘッドの一例であって、図1及び図2に示す記録ヘッドにおける点線ab(奥行き方向)に沿って切断したときの断面図である。
【符号の説明】
10 記録ヘッド
12 本体
12A 上面
12B 正面
12C 切欠き
14 第1流路
16 連通路
18 第2流路
20 連通路
22 はめ込み部
22A 切欠き
24 発熱体
26 吐出口
Claims (20)
- 水と色材と水溶性有機溶剤とを含有し且つ色材として染料のみを含有してなるインクジェット用記録インクにおいて、
下記一般式Iで示される色材および/または下記一般式IIで示される色材と、C.I.AcidBlue9、C.I.DirectBlue199、C.I.DirectBlue86から選択される少なくとも一種の色材とを含有してなり、
且つ、下記一般式Iまたは下記一般式 II で示される色材の、M 1 、M 2 、M 3 及びM 4 の少なくとも1つが、アンモニウムイオンであることを特徴とするインクジェット記録用インク。
一般式I
Pc(SO3 M1 )t (SO2 −NR1 −L−NR2 −X−NR3 −G)q
(一般式I中、Pcは、金属を含むフタロシアニン核を示し、R1 、R2 、R3 はそれぞれ独立にH、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、置換アラルキル基を示し、Lは2価の有機結合基を示し、Xはカルボニル基、又は下記の式(1)〜(3)で表される基を示す。式(1)〜(3)中の、ZはNR4 R5 、SR6 、OR6 を示し、Yは、H、Cl、Z、SR7 、OR7 を示し、Eは、Cl、CNを示す。R4 、R5 、R6 、R7 は、それぞれ独立に、H、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基、または、R4 、R5 が結合されたN原子とともに5又は6員環を形成する基を示す。
一般式II
- 前記色材が、前記一般式Iで示される色材と、C.I.AcidBlue9及びC.I.DirectBlue86から選択される少なくとも一種の色材とで あることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記色材が、前記一般式 II で示される色材と、C.I.AcidBlue9、C.I.DirectBlue199、及びC.I.DirectBlue86から選択される少なくとも一種の色材とであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記色材が、前記一般式Iで示される色材と、前記一般式 II で示される色材と、C.I.AcidBlue9、C.I.DirectBlue199、及びC.I.DirectBlue86から選択される少なくとも一種の色材とであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記一般式Iで示される色材および/または前記一般式IIで示される色材と、C.I.AcidBlue9、C.I.DirectBlue199、C.I.DirectBlue86から選択される少なくとも1種の色材との重量比が、95:5〜70:30であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
- 得られたインクのpHが8.0〜12.0であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
- 20°CにおけるpKaが6.0〜10.0の範囲であるカルボン酸および/またはスルホン酸構造を有する含窒素化合物と、アルカリ金属の水酸化物及び水酸化アンモニウムのいずれか一方とを含有してなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
- 得られたインクの20°Cにおける、導電率σ(S/m)と粘度η(mPas)の積(σ×η)が、0.4〜4.0の範囲であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
- 得られたインクの20°Cにおける、表面張力γが20〜40mN/mであり、粘度ηが1.5〜5.0mPasであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記水溶性有機溶剤が、多価アルコール、ポリグリコール及びグリコールエーテルから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
- 界面活性剤を含有してなることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
- 常温において固体であり、100〜350°Cにおいて重量で50%以上気化する水溶性有機化合物を含有してなることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記の常温において固体であり、100〜350°Cにおいて重量で50%以上気化する水溶性有機化合物のインクジェット記録用インクにおける含有量が、0.1〜15重量%であることを特徴とする請求項12に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記の常温において固体であり、100〜350°Cにおいて重量で50%以上気化する水溶性有機化合物が、尿素、チオ尿素及びこれらの誘導体、並びにベタインから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項12または13に記載のインクジェット記録用インク。
- インクジェット記録用インクにおける全色材の含有量が、0.3〜10重量%であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
- 記録信号に応じてオリフィスから吐出させたインク液滴を記録媒体に浸透させることにより記録を行うインクジェット記録方法において、請求項1乃至15のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
- 前記インク液滴が、加熱手段からインクジェット記録用インクに熱エネルギーを付与することにより形成されることを特徴とする請求項16に記載のインクジェット記録方法。
- 前記加熱手段に複数のエネルギーパルスを作用させてインクに熱エネルギーを付与することを特徴とする請求項17に記載のインクジェット記録方法。
- 前記加熱手段の周囲がポリイミド系樹脂で形成されていることを特徴とする請求項17または18に記載のインクジェット記録方法。
- 予備吐出工程と記録工程とを含み、該記録工程において、記録信号に応じてオリフィスから吐出させたインク液滴を記録媒体に浸透させることを特徴とする請求項16乃至19のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
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