JP4004858B2 - アクリル酸系重合体の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリル酸系重合体の製造法に関する。更に詳しくは、例えば、洗剤組成物等に好適に使用しうる、着色が低減されたアクリル酸系重合体の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリル酸系重合体は、洗剤組成物等に広く使用されている化合物である。しかし、例えば、洗剤組成物の製造工程において、レドックス開始剤を用いて重合させることによって得られたアクリル酸系重合体と、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ゼオライト、塩化ナトリウム等の無機塩とを含むアルカリ調製液を加熱乾燥させた場合には、被乾燥物が桃色ないし赤色に着色することがあり、かかる着色は、洗剤組成物等の製品としての価値を低下させる要因となっていた。
【0003】
しかしながら、これまでのところ、その着色の原因の究明がなされていないため、着色防止手段の開発が待ち望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、洗剤組成物の製造工程において、レドックス開始剤を用いて重合させることによって得られたアクリル酸系重合体と、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ゼオライト、塩化ナトリウム等の無機塩とを含むアルカリ調製液を加熱乾燥させ、熱履歴を与えた場合であっても、着色を生じがたいアクリル酸系重合体の製造法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、重合禁止剤としてキノン化合物を含むアクリル酸又はその塩を含有してなる単量体をレドックス開始剤を用いて重合させた後、得られたアクリル酸系重合体と酸化剤とを混合することにより、該アクリル酸系重合体に含有されているキノン化合物の含有量がアクリル酸系重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり20mg以下となるまでキノン化合物の含有量を低減させるアクリル酸系重合体の製造法に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
アクリル酸は、非常に反応性が高く、化学的に不安定な化合物であり、例えば、輸送中において外部から衝撃を受けただけでも重合することがある。そこで、一般に市販されているアクリル酸には、その重合を抑制するためにキノン化合物に代表される重合禁止剤が含有されている。重合禁止剤としてアクリル酸に含有されているキノン化合物の含有量は、一般に、アクリル酸1kgあたり200mg程度である。
【0007】
一般に、低温重合開始剤として用いられているレドックス開始剤を用いてアクリル酸を重合させた場合には、その重合条件によっても異なるが、アクリル酸系重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり160〜180mg程度のキノン化合物が残存している。
【0008】
そこで、本発明者らは、キノン化合物が含有されているアクリル酸に着目し、アクリル酸を必須モノマー成分とする重合体におけるキノン化合物の含有量を、該重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり20mg以下としたところ、該重合体を洗剤組成物の原料として用い、その製造工程において熱履歴を加えた場合であっても、着色という現象が解消されることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
単量体として、アクリル酸又はその塩を含有するものが用いられる。
アクリル酸又はその塩としては、アクリル酸をはじめ、アクリル酸の一部ないし全部が中和された塩、例えば、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム等のアクリル酸アルカリ金属塩が挙げられる。これらの中では、アクリル酸ナトリウムが好ましい。
【0010】
本明細書において、「アクリル酸系重合体を構成しているアクリル酸」とは、アクリル酸系重合体において、そのモノマー成分として使用されているアクリル酸をいう。アクリル酸系重合体の中にアクリル酸塩に基づく繰返し単位が存在している場合には、そのアクリル酸塩に基づく繰返し単位をアクリル酸に基づく繰返し単位と見做して取扱う。
【0011】
アクリル酸に重合禁止剤として含有されているキノン化合物としては、p−メトキシフェノール(以下、メトキノンという)、ハイドロキノン、ベンゾキノン、 tert-ブチルカテコール等が挙げられる。
【0012】
アクリル酸系重合体は、アクリル酸又はその塩を含有する単量体を重合させることによって製造することができる。
【0013】
単量体の重合法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法等が挙げられる。これらの重合法のなかでは、本発明は、溶液重合法で得られたアクリル酸系重合体の水溶液に対して特に効果的である。
【0014】
溶液重合法の一例としては、筒状の反応管を用い、その一端から単量体及び重合開始剤を供給するとともに、反応管内に気体を供給することにより、単量体の重合を行う方法が挙げられる。より具体的には、例えば、特公平2−24283号公報に記載されているような円筒状又は二重円筒状の反応管の一端からアクリル酸又はその塩を含有する単量体及び亜硫酸水素ナトリウムを含有する水溶液を供給するとともに、該反応管に酸素含有ガスを前記水溶液に対して並流となるように供給し、該ガスの気流によって水溶液の薄膜流を反応管の内壁に形成させて反応させることにより、アクリル酸系重合体を得ることができる。
【0015】
前記方法においては、水溶液の供給量を1〜2000kg/h、気体の供給量を0.6〜1800m3 /hとし、反応管内の気体移動速度を2〜100m/secとすることが好ましい。また、亜硫酸水素ナトリウムの量は、単量体1モルあたり0.008〜0.4モルであることが好ましく、反応管内の温度は5〜80℃であることが好ましい。
【0016】
また、前記方法以外にも、例えば、特公昭60−24806号公報に記載されているような撹拌槽型反応器に水を仕込み、空気を微小な気泡として吹き込みながら、均一撹拌下でアクリル酸塩を含有する単量体及び亜硫酸水素ナトリウムを反応器に添加することにより、アクリル酸系重合体を得ることができる。
【0017】
レドックス開始剤に用いられる酸化剤としては、例えば、酸素、オゾン、過酸化水素、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。また還元剤としては、例えば、亜硫酸水素塩、鉄(II価) イオン、クロムイオン、亜硫酸塩等が挙げられる。これらの中では、酸素と亜硫酸水素塩の組み合わせが好ましく、酸素と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせがより好ましい。
【0018】
酸素含有ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスに酸素ガスを含有させたもの、空気、酸素ガス等が挙げられる。また、酸素ガスを空気で希釈させたものや、酸素ガスを空気に添加したものであってもよい。酸素含有ガスにおける酸素濃度は、反応性を高める観点から、10容量%以上であることが好ましく、20容量%以上であることがより好ましい。
【0019】
酸化剤及び還元剤の量は、それぞれ、単量体100重量部あたり、0.01〜3重量部であることが好ましい。また、空気等のガス状の酸化剤を用いる場合には、酸化剤の量は、標準状態(273K、101.3kPa)において、還元剤1モルあたり10L以上であることが好ましい。
【0020】
次に、得られたアクリル酸系重合体に含有されているキノン化合物の含有量を該重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり20mg以下となるまで低減させる。
【0021】
キノン化合物の含有量を低減させる具体的な方法としては、例えば、
▲1▼ アクリル酸系重合体水溶液と酸化剤とを混合させることにより、キノン化合物の含有量を低減させる方法(以下、酸化法という)、
▲2▼ アクリル酸系重合体水溶液と吸着剤とを接触させることにより、キノン化合物の含有量を低減させる方法(以下、吸着法という)
等が挙げられ、酸化法と吸着法とを併用することもできる。例えば、アクリル酸系重合体水溶液からキノン化合物を吸着法によって低減させた後、酸化法を用いてもよく、あるいは酸化法によってアクリル酸系重合体水溶液におけるキノン化合物の含有量を低減させた後、吸着法を用いてもよい。
【0022】
まず、酸化法を採用する場合について説明する。酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの酸化剤の中では、キノン化合物を効率よく分解させることができる観点から、過酸化水素が好ましい。
【0023】
酸化剤の量は、その種類等によって異なるので一概には決定することができないが、通常、アクリル酸系重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり100〜20000mgであることが好ましい。例えば、酸化剤として、過酸化水素を用いる場合、キノン化合物を効率よく分解させるとともに、過酸化水素の分解による過度の発泡を抑制し、アクリル酸系重合体の組成に悪影響を与えないようにするために、過酸化水素の量は、アクリル酸系重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり、350〜15000mgであることが好ましく、1000〜9000mgであることがより好ましい。
【0024】
なお、アクリル酸系重合体水溶液に過酸化水素を添加する場合、キノン化合物の分解を促進させるために、過酸化水素を添加する前に、その水溶液のpHを8.0〜13.9、好ましくは11.0〜13.5に調整することが望ましい。pHは、例えば、水酸化ナトリウム等のpH調整剤を用いて容易に調整することができる。
【0025】
酸化剤をアクリル酸系重合体水溶液に添加する際の温度は、キノン化合物の分解効率を高めるために、10〜50℃であることが好ましい。
【0026】
酸化剤をアクリル酸系重合体水溶液に添加した後には、酸化剤とアクリル酸系重合体水溶液に含まれているキノン化合物との混合性を高めるために、攪拌することが好ましい。
【0027】
アクリル酸系重合体を構成しているアクリル酸1kgあたりのキノン化合物の含有量を以下に説明する所望の量である20mg以下にまで低減させるのに要する時間は、酸化剤の種類及びその量、アクリル酸系重合体水溶液におけるキノン化合物の含有量等の諸条件によって異なるので一概には決定することができないが、通常の場合では、1分間〜24時間程度である。
【0028】
なお、アクリル酸系重合体水溶液と酸化剤との混合は、例えば、回分式、半回分式、連続式等の方法によって行うことができる。また、酸化剤で処理した後に酸化剤が残存している場合には、還元剤による還元処理を行ってもよい。
【0029】
次に、吸着法を採用する場合について説明する。吸着剤としては、例えば、活性炭、ゼオライト、活性白土等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの吸着剤の中では、キノン化合物の除去効率を高める観点から、活性炭が好ましい。
【0030】
吸着剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、アクリル酸系重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり、100〜1000gであることが好ましい。吸着剤として、例えば、活性炭を用いる場合には、キノン化合物を効率よく吸着させ、生産性を高めるとともに、活性炭の使用量を低減させる観点から、活性炭の量は、アクリル酸系重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり、100〜650gであることが好ましい。
【0031】
なお、アクリル酸系重合体水溶液と吸着剤とを接触させる際には、キノン化合物の吸着効率を高めるために、吸着剤との接触前に、あらかじめアクリル酸系重合体水溶液のpHを5〜9、好ましくは6〜8に調整することが望ましい。pHは、例えば、水酸化ナトリウム等のpH調整剤を用いて容易に調整することができる。
【0032】
アクリル酸系重合体水溶液と吸着剤とを接触させる際には、アクリル酸系重合体水溶液の温度は、キノン化合物の吸着効率を高めるとともに、アクリル酸系重合体自体の熱劣化を回避するために、10〜70℃、好ましくは30〜50℃であることが望ましい。
【0033】
アクリル酸系重合体水溶液と吸着剤とを接触させる方法においては、吸着剤とアクリル酸系重合体水溶液に含まれているキノン化合物との接触効率を高めるために、攪拌することが好ましい。また、吸着剤を充填した容器にアクリル酸系重合体水溶液を通液する方法や循環する方法などを採用してもよい。いずれの方法においても、吸着剤とアクリル酸系重合体水溶液とを接触させることによって、アクリル酸系重合体水溶液に含まれているキノン化合物を吸着剤に吸着させ、アクリル酸系重合体水溶液に含まれているキノン化合物を低減させることができる。
【0034】
アクリル酸系重合体を構成しているアクリル酸1kgあたりのキノン化合物の含有量を以下に説明する所望量である20mg以下にまで低減させるのに要する時間は、吸着剤の種類及びその量、アクリル酸系重合体水溶液に含まれるキノン化合物の含有量等の諸条件によって異なるので一概には決定することができないが、通常、5分間〜24時間程度である。
【0035】
以上のようにして、アクリル酸系重合体におけるキノン化合物の含有量が低減され、例えば、アクリル酸系重合体が洗剤組成物の製造工程での加熱乾燥時に熱履歴を受けた場合であっても、被乾燥物の着色を回避することができる。キノン化合物の含有量は、アクリル酸系重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり、20mg以下とすることにより、着色を防止することができるが、より一層色相の変化を防止するためには、10mg以下であることが好ましく、3.5mg以下であることがより好ましい。
【0036】
かくして得られたアクリル酸系重合体は、洗剤組成物の製造工程等において熱履歴を受けた場合であっても、桃色ないし赤色に着色しがたいものとなるので、洗剤組成物等に好適に使用しうるものとなる。
【0037】
なお、アクリル酸系重合体におけるキノン化合物の含有量は、以下の測定条件の下、高速液体クロマトグラフィー(以下、「HPLC」という)によって定量される。本明細書におけるキノン化合物の含有量は、かかる方法によって測定されたときの値である。
【0038】
〔キノン化合物の含有量の測定条件〕
カラム:東ソー(株)製、商品名:TSK-GEL Super AW2500
移動相:0.1mol/Lリン酸二水素カリウム及び0.1mol/Lリン酸二水素ナトリウムの水溶液/アセトニトリル=70/30 (容量比)
検出器:UV(220nm)
カラム温度:40℃
流速:0.6mL/min
【0039】
試料及び測定:40%アクリル酸系重合体水溶液の場合には該水溶液2gを、また該水溶液以外のアクリル酸系重合体水溶液又は固体のアクリル酸系重合体の場合には、それぞれ該溶液中の固形分0.8g又は固体0. 8gを、液量が200mL となるようにイオン交換水に溶かした試料を調製し、そのうちの20μL をHPLCに注入し、測定する。
測定されたピーク面積と、別に求めておいた検量線からキノン化合物を定量する。
測定限界:アクリル酸系重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり3.5mg
【0040】
また、アクリル酸系重合体の重量平均分子量を測定したときの測定条件は、以下のとおりである。
【0041】
【0042】
検出器:RI
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
換算標準物質:ポリアクリル酸(AMERICAN STANDARDS CORP社製)
試料:40%アクリル酸系重合体水溶液の場合には、該水溶液2gを、また該水溶液以外のアクリル酸系重合体水溶液又は固体のアクリル酸系重合体の場合には、それぞれ該溶液中の固形分0.8g又は固体0.8gを、液量が200mL となるようにイオン交換水に溶かした試料を調製し、そのうちの100 μL を注入する。
【0043】
【実施例】
製造例1
アクリル酸1kgあたりメトキノン200mgを含有する80重量%アクリル酸水溶液75.0kgに、35重量%水酸化ナトリウム水溶液90.4kgとイオン交換水34.6kgを添加し、アクリル酸濃度が30.0重量%、アクリル酸の中和度が95%となるように調整されたアクリル酸ナトリウム水溶液を得た。
【0044】
反応容器として、内径12mm、長さ8mの垂直型円筒状反応管を用いた。アクリル酸ナトリウム水溶液の流量が3.89kg/hで、35重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の流量が0.16kg/hとなるように、両水溶液を混合しながら反応管の下端から上方向に反応管の内壁に沿って供給しながら、下端から空気を流量8m3 /h(標準状態)で供給し、反応管内を空気が流通するようにして重合反応を行った。その間、反応管外側に設けたジャケットに通水して反応管内の温度を25〜30℃に調節した。
【0045】
また、得られた重合体水溶液について、105℃で2時間の乾燥条件で乾燥を行い、固形物の定量を行った。
その結果、中和度95モル%の40重量%アクリル酸ナトリウム重合体水溶液200kgが得られた。
【0046】
得られたアクリル酸ナトリウム重合体の重量平均分子量を前記方法によって測定したところ、9500であった。
【0047】
また、得られたアクリル酸ナトリウム重合体に含まれているメトキノン濃度を前記した高速液体クロマトグラフィーによって測定したところ、アクリル酸系重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり163mgであった。
【0048】
製造例2
200L容の反応槽内に、水20kgを入れ、撹拌しながら撹拌翼下から焼結フィルターにて空気を0.3m3 /h(標準状態)で微気泡にして吹き込みながら、製造例1で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液175.45kg及び35重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液7.25kgをそれぞれ別の滴下口から反応槽に、各液温を25〜30℃に調整しながら6時間で連続的に滴下した。滴下終了後、反応温度を25〜30℃に調整しながら、撹拌下、空気の吹き込みを1時間行ない、重合を行った。
【0049】
また、得られた重合体水溶液について、105℃で2時間の乾燥条件で乾燥を行い、固形物の定量を行った。
その結果、中和度95モル%の40重量%アクリル酸ナトリウム重合体水溶液200kgが得られた。
【0050】
得られたアクリル酸系重合体の重量平均分子量を前記した方法で測定したところ、120000であった。
【0051】
また、得られたアクリル酸ナトリウム重合体におけるメトキノンの含有量を前記した高速液体クロマトグラフィーによって測定したところ、アクリル酸系重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり160mgであった。
【0052】
実施例1
200L容の反応槽内に、製造例1と同様にして得られた40重量%アクリル酸ナトリウム重合体水溶液200kg及び35重量%水酸化ナトリウム水溶液1.97kgを添加し、pHを12.0に調整した後、その水溶液に40℃で均一に撹拌しながら35重量%過酸化水素水0.29kg(アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり1690mg)を添加した。
【0053】
得られた水溶液を30分間室温中で攪拌した後、その溶液におけるメトキノンの濃度を測定したところ、アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり10mgであった。また、アクリル酸ナトリウム重合体の重量平均分子量を測定したところ、9500であった。
【0054】
〔乾燥粉末及び洗剤組成物の製造〕
次に、アクリル酸ナトリウム重合体水溶液175重量部、炭酸ナトリウム125重量部、硫酸ナトリウム110重量部、亜硫酸ナトリウム5重量部、ゼオライト143重量部、塩化ナトリウム40重量部、蛍光染料2重量部及び水453重量部を混合し、得られたアルカリ調製液を噴霧乾燥機内で220℃の熱風により噴霧乾燥させたところ、着色のない乾燥粉体が得られた。
【0055】
次に、得られた乾燥粉体100gと界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)50gとを混合し、洗剤組成物を製造しても、やはり着色という現象は観察されなかった。
【0056】
実施例2
実施例1において、35重量%過酸化水素水0.29kgの代わりに35重量%過酸化水素水1.14kg(アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり6650mg)を添加した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0057】
得られた水溶液を30分間室温中で攪拌した後、その水溶液におけるメトキノンの濃度を測定したところ、アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり3.5mg未満であった。
【0058】
得られたアクリル酸ナトリウム重合体水溶液を用いて、実施例1と同様にしてアルカリ調製液を噴霧乾燥機内で220℃の熱風により噴霧乾燥させたところ、着色のない乾燥粉体が得られた。また、この乾燥粉体と界面活性剤とを実施例1と同様にして混合して洗剤組成物を調製しても、着色がなかった。
【0059】
実施例3
200L容の反応槽内に、製造例1で得られた40重量%アクリル酸ナトリウム重合体水溶液200kg及び35重量%水酸化ナトリウム水溶液0.57kgを添加し、pHを8.2に調整した後、その水溶液に40℃で均一撹拌下で35重量%過酸化水素水1.71kg(アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり9980mg)を添加した。
【0060】
24時間経過後のメトキノン濃度は、アクリル酸ナトリウム重合体水溶液中のアクリル酸1kgあたり15mgであった。
【0061】
得られたアクリル酸ナトリウム重合体水溶液を用いて、実施例1と同様にしてアルカリ調製液を噴霧乾燥機内で220℃の熱風により噴霧乾燥させたところ、着色のない乾燥粉体が得られた。また、得られた乾燥粉体と界面活性剤とを実施例1と同様にして混合して洗剤組成物を調製しても着色はなかった。
【0062】
実施例4
200L容の反応槽内に、製造例1で得られた40重量%アクリル酸ナトリウム重合体水溶液200kg及び35重量%水酸化ナトリウム水溶液2.91kgを添加し、pHを13.5に調整した後、その水溶液に40℃で均一に撹拌しながら35重量%過酸化水素水1.71kg(アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり9980mg)を添加した。
【0063】
得られた水溶液を3時間室温中で攪拌した後、その溶液におけるメトキノンの濃度を測定したところ、アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり3.5mg未満であった。また、アクリル酸ナトリウム重合体の重量平均分子量を測定したところ、9500であった。
【0064】
また、得られたアクリル酸ナトリウム重合体水溶液を用いて実施例1と同様にしてアルカリ調製液を噴霧乾燥機内で220℃の熱風により噴霧乾燥させたところ、着色のない乾燥粉体が得られた。また、得られた乾燥粉体と界面活性剤とを実施例1と同様に混合して洗剤組成物を調製しても着色はなかった。
【0065】
実施例5
200L容の反応槽(200L槽A)内に、製造例1で得られた40重量%アクリル酸ナトリウム重合体水溶液200kg及び35重量%水酸化ナトリウム水溶液2.31kgを添加し、pHを12.5に調整した後、その溶液を温度45℃、流量1.0kg/minで25L容の反応槽の上部から送り込み、同時に反応槽の上部の別の滴下口から35重量%過酸化水素水を流量0.0057kg/min(アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり6720mg)で添加し、均一に撹拌した。
【0066】
反応槽内の処理時間を20分間に設定し、反応槽の下部の抜き出し口から処理した水溶液を抜き出し、液面レベルを一定に保つようにして連続操作を行った。抜き出し口で経時的にメトキノン濃度を測定したところ、アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり3.5mg未満であった。
【0067】
次に、抜き出した処理溶液を別の200L容の反応槽(200L槽B)に溜め込み、過酸化水素の残存量を測定したところ、アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり1050mgであった。
【0068】
そこで、未分解の過酸化水素を還元するために、その後更に35重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液2.48kgを200L槽Bに添加し、均一に撹拌した。
【0069】
得られたアクリル酸ナトリウム重合体水溶液を用いて実施例1と同様にしてアルカリ調製液を噴霧乾燥機内で220℃の熱風により噴霧乾燥させたところ、着色のない乾燥粉体が得られた。また、得られた乾燥粉体と界面活性剤とを実施例1と同様に混合して洗剤組成物を調製しても着色はなかった。
【0070】
実施例6
200L容の反応槽内に、製造例1で得られた40重量%アクリル酸ナトリウム重合体水溶液200kgを入れ、25℃で均一撹拌下で11.4重量%次亜塩素酸ナトリウム1.45kg(アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり2760mg)を添加した。1時間経過後のメトキノン濃度は、アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり3.5mg未満であった。
【0071】
次に、得られたアクリル酸ナトリウム重合体水溶液を用いて実施例1と同様にしてアルカリ調製液を噴霧乾燥機内で220℃の熱風により噴霧乾燥させたところ、着色のない乾燥粉体が得られた。また、得られた乾燥粉体と界面活性剤とを実施例1と同様にして混合して洗剤組成物を調製しても着色はなかった。
【0072】
実施例7
200L容の反応槽内に、製造例2で得られた40重量%アクリル酸ナトリウム重合体水溶液200kg及び35重量%水酸化ナトリウム水溶液1.97kgを添加し、pHを12.0に調整した後、その溶液に40℃で均一に撹拌しながら35重量%過酸化水素水1.14kg(アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり7680mg)を添加した。
【0073】
30分間室温中で放置した後、メトキノンの濃度を測定したところ、アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり3.5mg未満であった。また、アクリル酸ナトリウム重合体の重量平均分子量を測定したところ、120000であった。
【0074】
次に、得られたアクリル酸ナトリウム重合体水溶液を用いて実施例1と同様にしてアルカリ調製液を噴霧乾燥機内で220℃の熱風により噴霧乾燥させたところ、着色のない乾燥粉体が得られた。また、得られた乾燥粉体と界面活性剤とを実施例1と同様にして混合して洗剤組成物を調製しても着色はなかった。
【0075】
実施例8(参考例)
200L容の反応槽内に、製造例1で得られた40重量%アクリル酸ナトリウム重合体水溶液200kgを入れ、40℃で均一に撹拌しながら顆粒状活性炭〔三菱化学(株)製、商品名:S80S〕10kg(アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり166g)を反応槽内に添加し、4時間攪拌した後に、フィルタープレスによりアクリル酸ナトリウム重合体水溶液と活性炭を分離した。得られた水溶液中のメトキノン量を測定したところ、アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり3.5mg未満であった。
【0076】
次に、得られたアクリル酸ナトリウム重合体水溶液を用いて実施例1と同様にしてアルカリ調製液を噴霧乾燥機内で220℃の熱風により噴霧乾燥させたところ、着色のない乾燥粉体が得られた。また、得られた乾燥粉体と界面活性剤とを実施例1と同様にして混合して洗剤組成物を調製しても着色はなかった。
【0077】
実施例9(参考例)
200L容の反応槽内に、製造例1で得られた40重量%アクリル酸ナトリウム重合体水溶液200kgを入れ、40℃で均一に撹拌しながら顆粒状活性炭〔三菱化学(株)製、商品名:S80S〕36kg(アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり600g)を添加し、1時間攪拌した後に、フィルタープレスによりアクリル酸ナトリウム重合体水溶液と活性炭を分離した。得られた水溶液中のメトキノン量を測定したところ、アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり3.5mg未満であった。
【0078】
次に、得られたアクリル酸ナトリウム重合体水溶液を用いて実施例1と同様にしてアルカリ調製液を噴霧乾燥機内で220℃の熱風により噴霧乾燥させたところ、着色のない乾燥粉体が得られた。また、得られた乾燥粉体と界面活性剤とを実施例1と同様にて混合して洗剤組成物を調製しても着色はなかった。
【0079】
比較例1
製造例1で得られた40重量%アクリル酸ナトリウム重合体水溶液200kgをそのまま、実施例1の〔乾燥粉末及び洗剤組成物〕の項におけるアクリル酸ナトリウム重合体水溶液の代わりに用いた他は、実施例1と同様にしてアルカリ調製液を噴霧乾燥機内で220℃の熱風により噴霧乾燥させたところ、桃色に着色した乾燥粉体が得られた。
【0080】
次に、この乾燥粉末100gと界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)50gとを混合したところ、着色した洗剤組成物が得られた。
【0081】
比較例2
製造例1で得られた40重量%アクリル酸ナトリウム重合体水溶液のpHを測定すると6.3であった。
【0082】
200L容の反応槽内に、このアクリル酸ナトリウム重合体水溶液200kgを入れ、その水溶液のpHを調整せずに、その水溶液に40℃で均一に撹拌しながら、35重量%過酸化水素水0.29kg(アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり1690mg)を添加した。24時間攪拌した後にメトキノン濃度を測定したところ、アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり50mgであった。
【0083】
得られたアクリル酸ナトリウム重合体水溶液を実施例1の〔乾燥粉末及び洗剤組成物〕の項において、アクリル酸ナトリウム重合体水溶液の代わりに用いた他は、実施例1と同様にしてアルカリ調製液を噴霧乾燥機内で220℃の熱風により噴霧乾燥させたところ、桃色に着色した乾燥粉体が得られた。
【0084】
次に、この乾燥粉末100gと界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)50gとを混合して洗剤組成物を調製したが、着色した状態であった。
【0085】
比較例3
実施例1において、35重量%過酸化水素水0.29kgの代わりに35重量%過酸化水素水0.029kg(アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり170mg)を添加した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた溶液を24時間室温中で攪拌した後のメトキノン濃度は、アクリル酸ナトリウム重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり35mgであった。
【0086】
得られたアクリル酸ナトリウム重合体水溶液を実施例1の〔乾燥粉末及び洗剤組成物〕の項において、アクリル酸ナトリウム重合体水溶液の代わりに用いた他は、実施例1と同様にしてアルカリ調製液を噴霧乾燥機内で220℃の熱風により噴霧乾燥させたところ、桃色に着色した乾燥粉体が得られた。
【0087】
次に、この乾燥粉末100gと界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)50gとを混合して洗剤組成物を調製したが、着色した状態であった。
【0088】
【発明の効果】
本発明の製造法によれば、レドックス開始剤を用いて重合させて得られたアクリル酸系重合体と、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ゼオライト、塩化ナトリウム等の無機塩とを含むアルカリ調製液を加熱乾燥させ、熱履歴を与えた場合であっても、被乾燥物の着色を抑制することができ、例えば、洗剤組成物の色相を改善することができる。
Claims (2)
- 重合禁止剤としてキノン化合物を含むアクリル酸又はその塩を含有してなる単量体をレドックス開始剤を用いて重合させた後、得られたアクリル酸系重合体と酸化剤とを混合することにより、該アクリル酸系重合体に含有されているキノン化合物の含有量がアクリル酸系重合体を構成しているアクリル酸1kgあたり20mg以下となるまでキノン化合物の含有量を低減させるアクリル酸系重合体の製造法。
- レドックス開始剤として、酸素含有ガス及び亜硫酸水素塩を含有する水溶液を用いる請求項1記載の製造法。
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