JP4001677B2 - 熱硬化型接着剤組成物とその接着シ―ト類 - Google Patents

熱硬化型接着剤組成物とその接着シ―ト類 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品の固定などの用途に利用される熱硬化型接着剤組成物と、そのシ―ト状やテ―プ状などの接着シ―ト類に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子部品の固定用途でも、信頼性の向上のため、熱硬化型接着剤が使用されている。この用途では、電子部品の固定後、実装のため、熱工程(約260℃のハンダリフロ―工程)に曝される場合があり、これに耐える高耐熱性、とくに熱工程時に剥離などを生じない強固な剥離接着性が求められる。
【0003】
また、このような高耐熱性・強接着性を発揮させるにあたり、生産性の向上、硬化時の熱による固定部品の劣化の低減、圧着時の部品の損傷の低減などの理由により、低圧で短時間の接着条件、硬化条件が求められている。さらにまた、この種の用途では、電子部分の誤作動の原因となる不純物の除去が重要であり、部品を固定する熱硬化型接着剤にも高純度なものが求められている。
【0004】
従来、熱硬化型接着剤としては、エポキシ系接着剤が古くから検討され、強接着、高耐熱を必要とする様々な分野で使用されてきた。このエポキシ系接着剤のひとつとして、接着特性などの改質のため、天然ゴムや合成ゴムなどのポリマ―成分にエポキシ樹脂を配合したものが知られているが、上記ポリマ―成分の熱時劣化の問題や、未架橋による糊はみ出しの問題などがあつた。
【0005】
これらの問題を解決するため、熱安定性にすぐれたアクリル系ポリマ―成分にエポキシ樹脂を配合した熱硬化型接着剤も提案されている。たとえば、特開平4−209686号公報には、エポキシ基や水酸基含有の単量体を共重合させたアクリル系ポリマ―成分にエポキシ樹脂とその硬化剤を配合した熱硬化型感圧性接着剤が提案されている。しかし、この熱硬化型接着剤は、エポキシ樹脂の硬化時にアクリルポリマ−成分も反応させるため、硬化物の耐熱性は向上するが、硬化物の架橋密度が密になりすぎて、剥離強度が低下し、とくに剛性の小さいプラスチツクフイルムなどに対して十分な剥離強度が得られなかつた。
【0006】
また、特公平7−15090号公報には、アクリル酸アルキルエステルにN−ビニルピロリドン、アクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレ―トなどの極性単量体を加え、これにさらに光架橋剤(交叉結合剤)、光重合開始剤、エポキシ樹脂およびその硬化剤を加え、これを光重合して、三次元に架橋された熱安定性にすぐれるアクリル系ポリマ―成分を生成し、これにより接着時・硬化時の劣化が少なく、しかもアクリル系ポリマ―成分の合成段階から無溶剤化することのできる熱硬化型感圧性接着剤を得ることが提案されている。
【0007】
しかし、この熱硬化型感圧性接着剤でも、極性単量体としてアクリル酸やヒドロキシエチルアクリレ―トなどを用いると、前記と同様に剥離強度の低下という問題があつた。また、極性単量体として上記以外のN−ビニルピロリドンなどを用いたときでも、光重合後の熱硬化型感圧性接着剤は、エポキシ樹脂の硬化に時間がかかるという問題があつた。これは、接着使用前の貯蔵安定性を考えて、エポキシ樹脂の硬化剤としてジシアンジアミド、イミダゾ―ルなどの潜在性硬化剤を選択使用しているためである。そこで、上記の提案では、硬化速度の向上のため、硬化促進剤を添加するようにしているが、硬化促進剤はエポキシ樹脂の硬化反応触媒のため、エポキシ樹脂とは反応結合せず、最終的に接着剤中に不純物として残留し、電子部品の誤作動を引き起こす原因となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に照らし、光重合により得られる三次元に架橋された熱安定性にすぐれるアクリル系ポリマ―成分とエポキシ樹脂およびその硬化剤をベ―スとした熱硬化型接着剤組成物またはその接着シ―ト類において、貯蔵安定性が良好で、かつ電子部品の誤作動などの原因となる不純物が少なく、しかも比較的短時間の硬化ですぐれた接着性、耐熱性を発揮する熱硬化型接着剤組成物またはその接着シ―ト類を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討した結果、光重合により三次元に架橋された熱安定性にすぐれるアクリル系ポリマ―成分を得るにあたり、分子内に第三アミン骨格を有し、かつ酸解離定数pKaが6以上である特定のビニル単量体を使用すると、これがエポキシ樹脂の硬化反応触媒として作用し、エポキシ樹脂の硬化剤としてジシアンジアミド、イミダゾ―ルなどの潜在性硬化剤を用いたときでも、硬化促進剤を添加しなくても、比較的短時間に硬化でき、これにより、貯蔵安定性と硬化時間の短縮を両立でき、また硬化促進剤の添加が不要なため、接着剤中の不純物の低減もはかれることを知つた。
【0010】
また、上記のアクリル系ポリマ―成分を得るにあたり、上記特定のビニル単量体と共重合させる主単量体として、エポキシ基と反応する官能基を有しない単官能(メタ)アクリレ―トを主成分とするモノエチレン性単量体を選択使用し、アクリル酸やヒドロキシエチルアクリレ―トなどのエポキシ基と反応する官能基を持つ単量体の使用をさけることにより、硬化に際し、光重合により得られる上記アクリル系ポリマ―成分とエポキシ樹脂との反応を防止でき、これにより、従来のような硬化物の架橋密度が密になりすぎて、剥離強度が低下する心配もなくなり、結局、前記比較的短時間の硬化により、すぐれた接着性、耐熱性を発揮する硬化物の形成が可能となることを見い出した。
【0011】
本発明は、以上の知見をもとにして完成されたものであり、その要旨とするところは、a)エポキシ基と反応する官能基を有しない単官能(メタ)アクリレ―トを主成分とするモノエチレン性単量体50〜99重量%と、b)分子内に第三アミン骨格を有し、酸解離定数pKaが6以上である上記a成分と共重合可能なビニル単量体50〜1重量%とからなる単量体100重量部に、c)交叉結合剤である多官能(メタ)アクリレ―ト0.05〜5重量部を加え、さらに上記a〜c成分からなる光重合性原料100重量部あたり、d)光重合開始剤0.005〜5重量部と、e)分子内に少なくとも2個のエポキシ基を持つエポキシ樹脂10〜200重量部を加え、かつ上記e成分のエポキシ樹脂100重量部あたり、f)エポキシ樹脂の硬化剤1〜30重量部を加えてなる組成物の光重合反応物からなることを特徴とする熱硬化型接着剤組成物(請求項1)にある。
【0012】
また、本発明は、上記e成分のエポキシ樹脂が常温で液状であり、かつ上記a〜c成分からなる光重合性原料の光重合後のガラス移転温度が−20℃以上である上記構成の熱硬化型接着剤組成物(請求項2)に係るものである。また、本発明は、これらの熱硬化型接着剤組成物からなる層を有することを特徴とするシ―ト状やテ―プ状などの接着シ―ト類(請求項3)に係るものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるa成分のモノエチレン性単量体は、エポキシ基と反応する官能基を有しない単官能(メタ)アクリレ―トを主成分とするものであり、上記の単官能(メタ)アクリレ―トとしては、脂肪族(メタ)アクリレ―ト、脂環式(メタ)アクリレ―ト、芳香族(メタ)アクリレ―トなどが挙げられる。また、これらを主成分として、必要に応じて、エポキシ基と反応する官能基を有しない他のモノエチレン性単量体を併用することもできる。
【0014】
上記の脂肪族(メタ)アクリレ―トとしては、エチル(メタ)アクリレ―ト、ブチル(メタ)アクリレ―ト、イソアミル(メタ)アクリレ―ト、n−ヘキシル(メタ)アクリレ―ト、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレ―ト、イソオクチル(メタ)アクリレ―ト、イソノニル(メタ)アクリレ―ト、デシル(メタ)アクリレ―ト、ドデシル(メタ)アクリレ―トなどのアルキル基の炭素数が平均2〜14個の(メタ)アクリル酸アルキルエステルがある。上記の脂環式(メタ)アクリレ―トとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレ―トに代表されるシクロヘキシル型、イソボルニル(メタ)アクリレ―トに代表されるイソボルニル型などの(メタ)アクリレ―トが挙げられる。上記の芳香族(メタ)アクリレ―トとしては、フエノキシエチル(メタ)アクリレ―ト、フエノキシプロピル(メタ)アクリレ―ト、ノニルフエノキシエチル(メタ)アクリレ―ト、ノニルフエノキシプロピル(メタ)アクリレ―トなどが挙げられる。
【0015】
また、上記の他のモノエチレン性単量体としては、エポキシ基と反応するカルボキシル基、水酸基、エポキシ基などの官能基を有しないものであればよく、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリルなどの公知の各種のモノエチレン性単量体を使用できる。また、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基や置換アミド基含有単量体は、第三アミン骨格を有するが、酸解離定数pKaが6未満であり、エポキシ樹脂の硬化触媒作用が小さいため、a成分の1種として上記他のモノエチレン性単量体のひとつとして使用できる。
【0016】
本発明に用いられるb成分のビニル単量体は、分子内に第三アミン骨格を少なくとも1個有し、かつ酸解離定数pKaが6以上である、上記のa成分と共重合可能なビニル単量体であり、具体的には、アミノエチル(メタ)アクリレ―ト、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレ―ト、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレ―ト、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが用いられる。これらのビニル単量体を用いると、光重合により得られるアクリル系ポリマ―成分は、それ自体がエポキシ樹脂の硬化触媒作用を示すものとなり、硬化促進剤を添加しなくても、エポキシ樹脂の硬化速度が速くなる。このような効果は、上記の酸解離定数が大きくなるほど著しい。
【0017】
本発明において、上記a成分のモノエチレン性単量体と上記b成分のビニル単量体は、a成分が50〜99重量%、好ましくは70〜95重量%であり、b成分のビニル単量体が50〜1重量%、好ましくは30〜5重量%となる割合で用いられる。b成分のビニル単量体が50重量%を超えると、アクリル系ポリマ―成分としての特性が損なわれ、また1重量%未満となると、エポキシ樹脂の硬化触媒作用が十分に発揮されず、硬化速度が遅くなる。
【0018】
本発明に用いられるc成分の交叉結合剤は、光重合により得られるアクリル系ポリマ―成分を三次元に架橋して熱安定性にすぐれたものとし、また接着剤の糊はみ出しを抑制するためのものであり、トリメチロ―ルプロパン(メタ)アクリレ―ト、ペンタエリスリト―ルテトラ(メタ)アクリレ―ト、1,2−エチレングリコ―ルジ(メタ)アクリレ―ト、1,6−ヘキサンジオ―ルジ(メタ)アクリレ―トなどの多官能(メタ)アクリレ―トが用いられる。
【0019】
これらの多官能(メタ)アクリレ―トは、a,b成分からなる単量体100重量部あたり、0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部の割合で用いられる。この範囲内で、2官能の場合は多く、3官能やそれ以上の官能基数の場合は少なくできるが、0.05重量部より少ないと光重合後の架橋度が低く、接着剤を被着体に貼り合せる際に糊はみ出しが発生しやすく、5重量部より多いと、硬化時の架橋密度が密になりすぎ、接着力の低下をきたしやすい。
【0020】
本発明に用いられるd成分の光重合開始剤には、ベンゾインメチルエ―テル、ベンゾインイソプロピルエ―テルなどのベンゾインエ―テル類、アニゾインメチルエ―テルなどの置換ベンゾインエ―テル類、2,2−ジエトキシアシランアセトフエノン、2,2−ジメトキシ−2−フエノンアセトフエノンなどの置換アセトフエノン類、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフエノンなどの置換−α−ケト―ル類などがある。光重合に際し、エポキシ樹脂の紫外線カチオン重合を引き起こすおそれのある光重合開始剤は使用できない。
【0021】
これらの光重合開始剤は、前記のa〜c成分からなる光重合性原料100重量部あたり、0.005〜5重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部の割合で用いられる。光重合開始剤の上記使用量が0.005重量部より少なくなると、未反応物が多く残存しやすく、5重量部より多くなると、アクリル系ポリマ―成分の分子量が低くなり接着剤の凝集力の低下をきたしやすい。
【0022】
本発明に用いられるe成分のエポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を持つ化合物であり、ビスフエノ―ルエポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、フエノリツクエポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフエノ―ルエポキシ樹脂などの中から、適宜選択使用される。固形のエポキシ樹脂も使用できるが、光重合性原料への配合時、極性溶媒に溶解して配合するか、温度をかけてエポキシ樹脂を溶融させて配合する必要があり、光重合性原料に対する相溶性、配合時の簡便さより、常温で液状のエポキシ樹脂が好適に用いられる。
【0023】
なお、常温で液状のエポキシ樹脂を使用する場合、接着剤の糊はみ出しなどを抑制するため、前記のa〜c成分からなる光重合性原料は、光重合後のガラス移転温度〔Tg〕が−20℃以上となるものが望ましく、このようなTgが得られるように上記a〜c成分の単量体組成などが適宜選択される。
【0024】
エポキシ樹脂の使用量は、前記a〜c成分からなる光重合性原料100重量部あたり、10〜200重量部、好ましくは50〜150重量部となる範囲内で、その種類や光重合性原料の種類などに応じて、適宜決定される。エポキシ樹脂の上記使用量が10重量部より少ないと、硬化が不十分となつて耐熱性が低下し、200重量部より多くなると、加熱硬化時の軟化、流動により、糊はみ出しなどの外観異常をきたし、貯蔵安定性も低下し、さらに硬化物の弾性率が著しく上昇して剥離強度が低下するなどの問題が起こりやすい。
【0025】
本発明に用いられるf成分のエポキシ樹脂の硬化剤は、エポキシ樹脂と直接反応して上記樹脂を硬化に導くものであり、貯蔵安定性の点より、潜在性硬化剤が好ましい。具体的には、ジシアンジアミド、イミダゾ―ルまたはその誘導体、脂肪族または芳香族アミン、酸無水物、ヒドラジン化合物などの単独または2種以上の組み合わせが挙げられる。このような硬化剤の中でも、貯蔵安定性を考慮した場合、組成物中で不均一系を形成するもの、たとえば、不溶解性であるもの、マイクロカプセル化したものが、とくに好ましく用いられる。
【0026】
このようなエポキシ樹脂の硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂100重量部あたり、1〜30重量部、好ましくは3〜20重量部となる範囲内で、b成分のビニル単量体の使用量、エポキシ樹脂のエポキシ当量、硬化剤の種類(とくに硬化反応機構)などに応じて、適宜選択される。硬化剤の上記使用量が1重量部より少なくなると、硬化反応が不十分となり、未反応のエポキシ樹脂が残留しやすく、耐熱性が低下し、また、30重量部より多くなると、硬化反応は十分となるが、貯蔵安定性が低下するなどの問題が起こりやすい。
【0027】
本発明において、光重合前の組成物は、以下のように調製される。まず、a,b成分からなる単量体とd成分の光重合開始剤を混合し、このプレミツクスを部分的に重合して、粘度が約500〜5,000センチポイズの塗工可能なシロツプ状物とする。つぎに、このシロツプ状物に、c成分の交叉結合剤である多官能(メタ)アクリレ―ト、e成分のエポキシ樹脂、f成分のエポキシ樹脂の硬化剤および必要により追加の光重合開始剤を混合し、光重合前の組成物を調製する。この組成物には、光重合性を損なわない限り、充填剤、顔料、老化防止剤、シランカツプリング剤などの公知の各種の添加剤を添加してもよい。
【0028】
本発明においては、このようにして調製される組成物に光重合処理を施して、光重合反応物からなる熱硬化型接着剤組成物とする。この組成物中には、前記のa〜c成分からなる光重合性原料が光重合しかつ三次元に架橋した熱安定性にすぐれるアクリル系ポリマ―成分が生成しており、このアクリル系ポリマ―成分とエポキシ樹脂およびその硬化剤が混在した状態となつている。
【0029】
光重合処理は、通常は、光重合前の組成物を剥離ライナ上に塗布し、窒素ガスなどの不活性ガスで置換した酸素のない雰囲気中で行うか、紫外線透過性フイルムによる被覆で空気を遮断した状態で行うのがよい。光重合に用いる紫外線は、波長範囲が約180〜460nmの電磁放射性であるが、これより長波長または短波長の電磁放射性を用いてもよい。紫外線源としては、水銀ア―ク、炭素ア―ク、低圧水銀ランプ、中・高圧水銀ランプ、メタルハイライドランプなどの一般の照射装置が用いられる。紫外線の強度は、被照射体までの距離や電圧の調整および照射時間(生産性)との兼ね合いで、適宜設定される。
【0030】
本発明の接着シ―ト類は、このようにして得られる熱硬化型接着剤組成物からなる層を有し、その厚さが通常10〜200μmとなるシ―ト状やテ―プ状などの形態とされたものである。また、ポリイミドフイルム、ポリエステルフイルム、ポリテトラフルオロエチレンフイルム、ポリエ―テルエ―テルケトンフイルム、ポリエ―テルスルホンフイルムなどのプラスチツクフイルムを基材とし、この基材の片面または両面に上記の熱硬化型接着剤組成物からなる層を有する基材付きの接着シ―ト類としてもよい。この場合、剥離ライナ上に形成した熱硬化型接着剤組成物からなる層を基材上に貼り合わせるか、基材上に光重合前の組成物を直接塗布し、これを光重合処理して上記同様の層を形成してもよい。
【0031】
本発明の熱硬化型接着剤組成物とその接着シ―ト類は、光重合によりアクリル系ポリマ―成分を生成させるにあたり、前記特定のビニル単量体を使用したことにより、潜在性硬化剤を選択使用し、かつ硬化促進剤無添加の系でも、比較的短時間に硬化でき、これにより、貯蔵安定性と硬化時間の短縮との両立をはかれ、また接着剤中の残留不純物の低減をはかれる。しかも、上記硬化に際し、アクリル系ポリマ―成分とエポキシ樹脂との反応を防止でき、硬化物の架橋密度が密になりすぎて剥離強度が低下する心配もなく、上記硬化によつてすぐれた接着性、耐熱性を発揮させることができる。このため、本発明の熱硬化型接着剤組成物とその接着シ―ト類は、電子部品の固定などの用途に有利に利用できる。
【0032】
【実施例】
つぎに、本発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味するものとする。
【0033】
実施例1
ブチルアクリレ―ト15部、フエノキシエチルアクリレ―ト80部、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド〔(株)興人製の「DMAPAA」、pKa=10.35〕5部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フエニルアセトフエノン(チバガイギ―社製の「イルガキユア−651」)0.05部からなるプレミツクスを、窒素ガス雰囲気中で紫外線に暴露して部分的に光重合させ、粘度が約5,000センチポイズの塗工可能なシロツプ状物とした。
【0034】
つぎに、この部分重合したシロツプ状物100部に、交叉結合剤であるトリメチロ―ルプロパントリアクリレ―ト0.2部、ビスフエノ―ルA型エポキシ樹脂〔油化シエルエポキシ(株)製の「エピコ―ト828」〕100部、イミダゾ―ル系マイクロカプセル化潜在性硬化剤〔旭チバ(株)製の「ノバキユア−HX−3721」〕8部を加えて、組成物とした。
【0035】
ついで、剥離ライナとして、シリコ─ン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレ―トフイルムからなる離型処理フイルムを使用し、この剥離ライナ上に上記の組成物を塗布したのち、窒素ガス雰囲気下、光強度5mw/cm2 の高圧水銀ランプにより、900mj/cm2 の紫外線を照射して光重合させた。これにより、厚さが100μmの光重合反応物からなる熱硬化型接着剤組成物の層を形成して、接着シ―トとした。
【0036】
実施例2
ブチルアクリレ―ト15部、フエノキシエチルアクリレ―ト84部、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(前出の「DMAPAA」)1部、光重合開始剤(前出の「イルガキユア−651」)0.05部を用い、実施例1と同様にして、粘度が約5,000センチポイズの塗工可能なシロツプ状物とした。この部分重合したシロツプ状物100部に、交叉結合剤であるトリメチロ―ルプロパントリアクリレ―ト0.2部、ビスフエノ―ルA型エポキシ樹脂(前出の「エピコ―ト828」)50部、イミダゾ―ル系マイクロカプセル化潜在性硬化剤(前出の「ノバキユア−HX−3721」)4部を加えて、組成物とした。
【0037】
ついで、この組成物を、実施例1と同様にして、剥離ライナ上に塗布し、紫外線に暴露して、厚さが100μmの光重合反応物からなる熱硬化型接着剤組成物の層を形成して、接着シ―トとした。
【0038】
実施例3
ブチルアクリレ―ト60部、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレ―ト〔(株)興人製の「DMAEA」、pKa=6.1〕40部、光重合開始剤(前出の「イルガキユア−651」)0.5部を用い、実施例1と同様にして、粘度が約5,000センチポイズの塗工可能なシロツプ状物とした。この部分重合したシロツプ状物100部に、交叉結合剤であるトリメチロ―ルプロパントリアクリレ―ト0.2部、ビスフエノ―ルA型エポキシ樹脂(前出の「エピコ―ト828」)50部、潜在性硬化剤であるジシアンジアミド〔油化シエルエポキシ(株)製の「DICY−7」〕5部を加えて、組成物とした。
【0039】
ついで、この組成物を、実施例1と同様にして、剥離ライナ上に塗布し、紫外線に暴露して、厚さが100μmの光重合反応物からなる熱硬化型接着剤組成物の層を形成して、接着シ―トとした。
【0040】
実施例4
イソボロニルアクリレ―ト70部、N,N−ジメチルアクリルアミド20部、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレ―ト(前出の「DMAEA」)10部、光重合開始剤(前出の「イルガキユア−651」)0.5部を用い、実施例1と同様にして、粘度が約5,000センチポイズの塗工可能なシロツプ状物とした。この部分重合したシロツプ状物100部に、交叉結合剤であるトリメチロ―ルプロパントリアクリレ―ト0.2部、ビスフエノ―ルA型エポキシ樹脂(前出の「エピコ―ト828」)50部、脂肪族系のエポキシ樹脂〔油化シエルエポキシ(株)製の「エピコ―ト872」〕150部、イミダゾ―ル系マイクロカプセル化潜在性硬化剤(前出の「ノバキユア−HX−3721」)6部、ジシアンジアミド(前出の「DICY−7」)4部を加えて、組成物とした。
【0041】
ついで、この組成物を、実施例1と同様にして、剥離ライナ上に塗布し、紫外線に暴露して、厚さが100μmの光重合反応物からなる熱硬化型接着剤組成物の層を形成して、接着シ―トとした。
【0042】
比較例1
N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(「DMAPAA」)5部を使用せず、ブチルアクリレ―トの使用部数を20部に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さが100μmの光重合反応物からなる熱硬化型接着剤組成物の層を形成して、接着シ―トとした。
【0043】
比施例2
N,N−ジメチルアミノエチルアクリレ―ト(「DMAEA」)40部に代えて、N−ビニルピロリドン40部を使用した以外は、実施例3と同様にして、厚さが100μmの光重合反応物からなる熱硬化型接着剤組成物の層を形成して、接着シ―トとした。
【0044】
比施例3
フエノキシエチルアクリレ―トの使用部数を75部に減らし、脂環式エポキシ基含有単量体〔ダイセル(株)製の「サイクロマ―A200」〕5部を加えた以外は、実施例1と同様にして、厚さが100μmの光重合反応物からなる熱硬化型接着剤組成物の層を形成して、接着シ―トとした。
【0045】
比施例4
フエノキシエチルアクリレ―トの使用部数を70部に減らし、エポキシ基含有単量体であるグリシジルアクリレ―ト10部を加えた以外は、実施例1と同様にして、厚さが100μmの光重合反応物からなる熱硬化型接着剤組成物の層を形成して、接着シ―トとした。
【0046】
上記の実施例1〜4および比較例1〜4の各接着シ―トについて、以下の方法により、貯蔵安定性試験、硬化性試験、接着性試験およびハンダ耐熱性試験を行つた。これらの結果は、表1に示されるとおりであつた。
【0047】
なお、上記の各試験において、接着シ―トの硬化処理は、160℃の熱風オ―ブン中1時間の条件で行つたが、比較例2だけは、上記条件のほかに、160℃の熱風オ―ブン中3時間の条件でも行つた。表1中、比較例2(A)は、160℃で1時間の硬化条件としたときの結果、比較例2(B)は、160℃で3時間の硬化条件としたときの結果、である。
【0048】
<貯蔵安定性試験>
接着シ―トを50℃で10日間貯蔵したのちに、以下の接着性試験を行い、貯蔵後の接着力(90°剥離接着力)を測定した。貯蔵前の初期の接着力(90°剥離接着力)に対する上記貯蔵後の接着力(90°剥離接着力)の低下が10%未満であるものを○、10%以上であるものを×、と評価した。
【0049】
<硬化性試験>
接着シ―トより、まず、接着剤が約2gとなる量採取精秤し、これを精秤した円筒ろ紙につめ、ソツクスレ―抽出器により抽出処理した(抽出溶剤:酢酸エチル、抽出条件:80〜90℃で24時間)。この抽出処理後、円筒ろ紙を取り出し、残存物の乾燥重量を測定した。この乾燥重量の採取サンプルの重量に対する比を溶剤不溶分(X1)として求めた。
【0050】
つぎに、接着シ―トを前記の条件で硬化処理したのち、上記と同様にして、抽出処理後の溶剤不溶分(X2)を求めた。この硬化処理後の溶剤不溶分(X2)と硬化処理前の溶剤不溶分(X1)とから、硬化処理により増加した溶剤不溶分の割合、つまり硬化割合を、〔(X2−X1)/X1〕×100(%)として、算出し、これを硬化性の指標とした。
【0051】
<接着性試験>
幅10mm、長さ50mmの接着シ―トを、厚さが75μmのポリイミドフイルムに接着し、これをSUS(BA304)に接着した。このサンプルを200℃×10kg/cm2 ×1秒のプレス条件で圧着したのち、前記の条件で硬化処理した。この硬化処理後、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で30分間放置したのち、23℃の雰囲気下で引張速度50mm/分の条件で90゜方向に引つ張り、その中心値を90゜剥離接着力として、測定した。
【0052】
<ハンダ耐熱性試験>
接着シ―トにより、SUS(BA304)とポリイミドフイルム(75μm)とを両者間に気泡が入らないように貼り合わせた。これを30mm角に切断してサンプルとし、200℃×10kg/cm2 ×1秒のプレス条件で圧着したのち、前記の条件で硬化処理した。この硬化処理後、SUS(BA304)を上にして、260℃に溶融したハンダ浴に浮かせた状態で60秒間処理した。この処理後のサンプルについて、その貼り合わせ状態を目視で観察し、接着剤の発泡と接着異常(浮き、しわ、剥がれ、ずれ)の有無を判別し、変化・異常がみられないものを○、変化・異常がみられるものを×、と評価した。
【0053】
Figure 0004001677
【0054】
上記の表1から明らかなように、本発明の実施例1〜4の各接着シ―トは、硬化促進剤を含まないため、電子部品の誤作動などの原因となる不純物が少ないという利点を有しているうえに、貯蔵安定性にすぐれ、かつ160℃で1時間という短時間の硬化条件で硬化させることのできる、すぐれた硬化性を備えており、しかもこの硬化により接着性(90゜剥離接着力)およびハンダ耐熱性(260℃)を満足する硬化物を形成できるものであることがわかる。
【0055】
これに対して、光重合前の組成物中にb成分としての特定のビニル単量体を含ませなかつた比較例1,2の両接着シ―トは、いずれも、硬化性に劣つており、160℃で1時間という短時間の硬化条件では十分に硬化せず、硬化物の特性、とくにハンダ耐熱性に劣つたものとなり、これらの特性を改善するには、比較例2の(B)に示すように、160℃で3時間という長時間の硬化条件を選択しなければならないものであることがわかる。
【0056】
また、光重合前の組成物中にエポキシ基含有単量体を含ませた比較例3,4の両接着シ―トは、いずれも、エポキシ樹脂の硬化に際し、光重合により得られたアクリル系ポリマ―成分とエポキシ樹脂とが反応結合するため、硬化物の架橋密度が密になりすぎて、接着性が大きく低下し、また比較例4では弾性率の上昇による応力集中のためか、ハンダ耐熱性試験でもクラツクが生じて発泡現象がみられるなど、ハンダ耐熱性にも劣つたものとなることがわかる。
【0057】
【発明の効果】
以上のように、本発明においては、光重合により得られる三次元に架橋された熱安定性にすぐれるアクリル系ポリマ―成分とエポキシ樹脂およびその硬化剤をベ―スとした熱硬化型接着剤組成物またはその接着シ―ト類において、光重合前の組成物中に分子内に第三アミン骨格を有しかつ酸解離定数pKaが6以上である特定のビニル単量体を含ませたことにより、貯蔵安定性が良好で、かつ電子部品の誤作動などの原因となる不純物が少なく、しかも比較的短時間の硬化ですぐれた接着性、耐熱性を発揮する、電子部品の固定などの用途に有用な熱硬化型接着剤組成物またはその接着シ―ト類を提供することができる。

Claims (3)

  1. a)エポキシ基と反応する官能基を有しない単官能(メタ)アクリレ―トを主成分とするモノエチレン性単量体50〜99重量%と、b)分子内に第三アミン骨格を有し、酸解離定数pKaが6以上である上記a成分と共重合可能なビニル単量体50〜1重量%とからなる単量体100重量部に、c)交叉結合剤である多官能(メタ)アクリレ―ト0.05〜5重量部を加え、さらに上記a〜c成分からなる光重合性原料100重量部あたり、d)光重合開始剤0.005〜5重量部と、e)分子内に少なくとも2個のエポキシ基を持つエポキシ樹脂10〜200重量部を加え、かつ上記e成分のエポキシ樹脂100重量部あたり、f)エポキシ樹脂の硬化剤1〜30重量部を加えてなる組成物の光重合反応物からなることを特徴とする熱硬化型接着剤組成物。
  2. e成分のエポキシ樹脂が常温で液状であり、a〜c成分からなる光重合性原料の光重合後のガラス移転温度が−20℃以上である請求項1に記載の熱硬化型接着剤組成物。
  3. 請求項1または2に記載の熱硬化型接着剤組成物からなる層を有することを特徴とする接着シ―ト類。
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