JP4913930B2 - 熱接着性組成物とその接着シ―ト類 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、常温で粘着性がなく、加熱により接着性を示す熱接着性組成物と、これを用いたシ―ト状やテ―プ状などの接着シ―ト類に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子部品などの固定用途に、種々の接合材料が使用されている。
この種の用途では、強接着性とともに、電子部品を基板に実装するときのハンダリフロ―に耐えうる高耐熱性が必要である。また、電子機器の小型化に伴い、接着面積が微小化する傾向にあるが、この場合、外観上の問題、電子部品の機能低下の問題などより、流動性の制御(糊はみ出し)が非常に重要となつている。さらに、この種の用途では、接着時の濡れ性を確保するため、一般に、熱プレスにより接着処理しているが、生産性の向上、熱接着時の部品の損傷の低減などの理由により、低圧、短時間での接着条件が求められている。
【0003】
これに対して、従来公知の熱硬化型接着シ―ト類は、接着剤のガラス転移温度が室温以上のため、室温では粘着性がなく、熱硬化により強接着性と高耐熱性を発揮する。しかし、熱硬化型接着剤は、硬化前は未反応の低分子量成分が多いため、電子部品などの微小部分への接着に致命的となる接着時の糊はみ出しの問題があり、さらに硬化に時間がかかる問題もあつた。また、反応性のため、接着特性が経時的に変化して安定した特性が得られにくく、これを防ぐのに低温保管が必要となるなど、取り扱いが面倒という問題もあつた。
【0004】
また、従来公知の粘着シ―ト類は、粘着剤のガラス転移温度が−40℃以下で、常温で粘着性を有しており、なんの予備操作もなしに目的物に貼り付けでき、この貼り付けでただちに接着強度を発現できる。また、未反応物を含有していないため、常温保存可能であり、接着特性の経時変化が少ないなどの利点がある。しかし、粘着シ―ト類は、プレスなどによる面接着では、粘着性のために、気泡の抱き込みなどがあり、100℃以上の高温になると、抱き込んだ気泡の膨張などにより、剥離、発泡などが起こる問題がある。また、接着強度や耐熱性が、熱硬化型のものに比べて、一般に劣るという問題もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、常温で粘着性がなく、面接着時に気泡の抱き込みを生じず、低圧、短時間の加熱により強接着性、高耐熱性を発揮し、その際に糊はみ出しの問題がなく、また常温保存が可能で経時的安定性にすぐれた熱接着性組成物とその接着シ―ト類を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的に対する鋭意検討の過程において、まず、アクリル系粘着シ―ト類に一般的に使用されるアルキル基の炭素数が平均2〜14個である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主モノマ―とし、これに粘着性をなくすためにポリマ―のガラス転移温度が高くなるモノマ―を共重合させた重合物について、検討してみたところ、接着シ―ト類の作製はできるが、接着処理に非常に長時間を要し、低圧、短時間の加熱では十分な接着特性は得られなかつた。つぎに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしてポリマ―のガラス転移温度が−30℃以上と高くなるようなアルキル基を持つモノマ―を用いて重合物をつくり、この重合物について検討してみたところ、非常にもろい接着シ―ト類となり、可撓性や柔軟性の点で満足できるものは得られなかつた。
【0007】
本発明者らは、上記の知見を踏まえて、さらに検討を続けた結果、主モノマ―として、上記のような(メタ)アクリル酸アルキルエステルに代えて、ホモポリマ―のガラス転移温度が−30℃以上となる特定の分子構造を持つたアクリル系モノマ―を用いてなる非粘着性重合物によれば、可撓性や柔軟性に富むシ―ト状物などを形成することができ、このものは常温で粘着性がなく、このため、被着体への面接着時に気泡の抱き込みなどを生じず、低圧、短時間の加熱により強接着性、高耐熱性を発揮させることができ、その際に糊はみ出しの問題も生じず、また、加熱接着前の上記シ―ト状物などは常温保存が可能で、経時的安定性にすぐれていることを見い出し、本発明を完成するに至つた。
【0008】
すなわち、本発明は、基材の片面または両面に熱接着性組成物からなる層を有し、この層は、下記の式(I);
【化2】
(式中、R1 は水素原子またはメチル基、R2 はメチレン基、エチレン基またはプロピレン基、n=1〜3の整数、φはフェニル基、モノアルキル置換フェニル基またはジアルキル置換フェニル基である)
で表される、ホモポリマーのガラス転移温度(以下、Tgという)が−30℃以上である(メタ)アクリル酸エステル70〜100重量%と、これと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体30〜0重量%とからなる単量体に多官能(メタ)アクリレートを加えた無溶剤型重合性組成物の非粘着性重合物を含有してなり、この非粘着性重合物が光重合開始剤を用いた紫外線の照射による重合物であることを特徴とする接着シートに係るものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明における式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルは、ホモポリマ―のTgが−30℃以上、好ましくは−10℃以上となるものであり、代表的なものとして、フエノキシエチル(メタ)アクリレ―ト、フエノキシプロピル(メタ)アクリレ―ト、ノニルフエノキシエチル(メタ)アクリレ―ト、ノニルフエノキシプロピル(メタ)アクリレ―トなどがある。また、フエノ―ル、クレゾ―ル、ノニルフエノ―ルなどのエチレンオキシド付加物、プロピレンオキシド付加物など(付加モル数3まで)と(メタ)アクリル酸とのエステルなども好ましく用いられる。これらは、1種または2種以上用いられる。
【0010】
本発明における上記エステルと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体は、官能基や極性基の導入による耐熱性や接着性の改善、改質のために用いられる。たとえば、アクリル酸、イタコン酸、カプロラクトン変性アクリレ―ト、スルホプロピルアクリレ―ト、ヒドロキシアルキルアクリレ―ト、シアノアルキルアクリレ―ト、アクリルアミド、置換アクリルアミド、N−ビニルカプロラクタム、アクリロニトリル、2−メトキシエチルアクリレ―ト、アクリル酸グリシジル、酢酸ビニルなどが挙げられ、必要により1種または2種以上用いられる。
【0011】
本発明において、上記の式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルとこれと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体との使用割合は、前者の(メタ)アクリル酸エステルが70〜100重量%、好ましくは85〜95重量%で、後者の共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体が30〜0重量%、好ましくは15〜5重量%となるようにするのがよく、このような範囲で使用することにより耐熱性と接着性などのバランスをうまくとることができる。
【0012】
本発明においては、このような単量体を重合させて、非粘着性重合物とする。重合は、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法など適宜の重合方式を採用できるが、中でも、紫外線や電子線などの放射線の照射による塊状重合法が好ましい。これによれば、有機溶剤の残存による電子部品の腐食、高温での気化膨張による膨れ、剥がれ、ずれ、乳化剤のブリ―ドによる汚染、接着不良、耐湿性低下などの心配がなく、また比較的弱い強度の紫外線などを照射することで重合物の分子量を高くでき、高い架橋度と大きな凝集力を有する耐熱性にとくにすぐれた非粘着性重合物が得られる。重合には、重合触媒として、熱重合開始剤や光重合開始剤が用いられ、また過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などや、これらと還元剤とからなるレドツクス系開始剤なども使用できる。
【0013】
熱重合開始剤には、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパ―ベンゾエイト、クメンヒドロパ―オキシド、ジイソプロピルパ―オキシジカ―ボネ―ト、ジ−n−プロピルパ―オキシジカ―ボネ―ト、ジ(2−エトキシエチル)パ―オキシジカ―ボネ―ト、t−ブチルパ―オキシネオデカノエ―ト、t−ブチルパ―オキシピバレ―ト、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パ―オキシド、ジプロピオニルパ―オキシド、ジアセチルパ―オキシドなどの有機過酸化物、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネ―ト)、4,4′−アゾビス(4−シアノバレツク酸)、2,2′−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]などのアゾ系化合物などがある。
【0014】
光重合開始剤としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フエニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α′−ジメチルアセトフエノン、メトキシアセトフエノン、2,2−ジメトキシ−2−フエニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフエノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフエニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フエニル]−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフエノン系化合物、ベンゾインエチルエ―テル、ベンゾインイソプロピルエ―テル、アニゾインメチルエ―テルなどのベンゾインエ―テル系化合物、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフエノンなどのα−ケト―ル系化合物、ベンジルジメチルケタ―ルなどのケタ―ル系化合物、2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物、1−フエノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物、ベンゾフエノン、ベンゾイル安息香酸、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフエノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパ―オキンカルボニル)ベンゾフエノンなどのベンゾフエノン系化合物などが挙げられる。
【0015】
本発明の熱接着性組成物は、上記のようにして得られる非粘着性重合物を必須成分とし、これに任意成分として、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料、老化防止剤などの公知の各種添加剤を含有させることができる。また、接着剤としての保持特性を向上させるために、交叉結合剤として、イソシアネ―ト系化合物、エポキシ系化合物などの公知の架橋剤や、光重合を行う場合などには、トリメチロ―ルプロパントリ(メタ)アクリレ―ト、ペンタエリスリト―ルテトラ(メタ)アクリレ―ト、1,2−エチレングリコ―ルジ(メタ)アクリレ―ト、1,6−ヘキサンジオ―ルジ(メタ)アクリレ―トなどの多官能(メタ)アクリレ―トを含有させるようにするのが好ましい。
【0016】
上記の架橋剤や多官能(メタ)アクリレ―トからなる交叉結合剤の使用量は、前記の単量体100重量部に対し、通常0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部の範囲とするのがよく、多官能(メタ)アクリレ―トでは、上記範囲内で2官能の場合は多く、3官能ないしそれ以上の多官能の場合は少なくするのがよい。上記使用量が0.05重量部より少ないと、重合後の架橋度を十分に高くできず、保持特性の低下を招きやすく、逆に3重量部より多いと、弾性率が極端に高くなり、接着不良などの接着性の低下を引き起こしやすい。
【0017】
本発明の接着シ―ト類は、基材の片面または両面に、上記の非粘着性重合物を含有する熱接着性組成物からなる層を設けて、シ―ト状やテ―プ状などの形態としたものである。上記の層は、あらかじめ適宜の重合法で非粘着性重合物を得、これに架橋剤などを加えて熱接着性組成物を調製し、これを基材上に塗工し、必要に応じて加熱などにより架橋処理する方式で形成できる。また、より好ましくは、重合前の単量体またはその部分重合物に多官能(メタ)アクリレ―トなどを加えた放射線重合性組成物を、基材上に塗工し、紫外線などの放射線を照射して重合させ、非粘着性重合物の合成と同時に層形成する方式を採用するのがよい。
この方法によれば、接着剤の耐熱性により好結果が得られる。
【0018】
基材としては、ポリエステルフイルムなどの合成樹脂フイルムや繊維基材などの非剥離性基材のほか、剥離紙などの剥離性基材を使用できる。剥離性基材の場合、この上に形成した熱接着性組成物の層を最終的に非剥離性基材の上に転写してもよい。本発明の接着シ―ト類には、基材としてこのような非剥離性基材を用いたものと剥離性基材を用いたものとの両方が含まれる。
【0019】
本発明の接着シ―ト類は、常温保存が可能で、接着特性の経時変化が少なく、常温で粘着性がないため、面接着時に気泡の抱き込みを生じず、低圧、短時間の加熱により強接着性、高耐熱性を発揮でき、とくに100℃以上の高温での使用やハンダ付け工程での使用に耐えることができ、そのうえ、糊はみ出しなどの問題を生じることもない。このため、電子部品などの固定用途として、ポリイミドなどの耐熱フイルムや金属板などの接合材料として、好適に使用できる。また、これ以外にも、上記の特徴を生かした幅広い用途に使用できる。
【0020】
【実施例】
つぎに、本発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味するものとする。
なお、以下に記載の「実施例1〜5」のうち、「実施例2〜5」が本発明の特許請求の範囲に含まれる接着シートの例を示したものであり、「実施例1」は本発明の特許請求の範囲には含まれない参考例としての接着シートの例を示したものである。
【0021】
実施例1
冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた反応容器に、酢酸エチル210部を溶媒として、フエノキシエチルアクリレ―ト(ホモポリマ―のTg:−10℃)95部、アクリル酸5部、過酸化ベンゾイル0.3部を入れ、窒素気流中で重合して、固形分が約30重量%である非粘着性重合物の溶液を得た。この溶液に、その固形分100部あたり、多官能イソシアネ―ト系架橋剤3部を均一に混合して、熱接着性組成物の溶液を調製した。つぎに、この熱接着性組成物の溶液を剥離性基材上に塗布し、130℃で5分間乾燥処理して、厚さが80μmの熱接着性組成物の層を形成し、接着シ―トを作製した。
【0022】
実施例2
フエノキシエチルアクリレ―ト90部、アクリロイルモルフオリン10部、2,2−ジメトキシ−2−フエニルアセトフエノン0.05部を、四つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で紫外線に暴露して部分的に光重合させることにより、粘度が約30ポイズのシロツプを得た。この部分重合したシロツプ100部に、交叉結合剤としての1,6−ヘキサンジオ―ルジアクリレ―ト0.3部を均一に混合し、光重合性組成物を調製した。つぎに、この光重合性組成物を剥離性基材上に塗布し、900mj/cm2 の紫外線を照射して光重合させ、厚さが80μmの熱接着性組成物の層を形成し、接着シ―トを作製した。
【0023】
実施例3
フエノキシエチルアクリレ―ト90部の代わりに、クレゾ―ルのエチレンオキシド付加物(付加モル数1)とアクリル酸とのエステル(ホモポリマ―のTg:−20℃)90部を使用した以外は、実施例2と同様にして、光重合性組成物を調製し、これを用いて、実施例2と同様にして、厚さが50μmの熱接着性組成物の層を形成し、接着シ―トを作製した。
【0024】
実施例4
ノニルフエノ―ルのエチレンオキシド付加物(付加モル数1)とアクリル酸とのエステル(ホモポリマ―のTg:−25℃)95部、アクリル酸5部、2,2−ジメトキシ−2−フエニルアセトフエノン0.05部を、四つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で紫外線に暴露して部分的に光重合させることにより、粘度が約30ポイズのシロツプを得た。この部分重合したシロツプ100部に、交叉結合剤としてのトリメチロ―ルプロパントリアクリレ―ト0.2部を均一に混合し、光重合性組成物を調製した。つぎに、この光重合性組成物を剥離性基材上に塗布し、900mj/cm2 の紫外線を照射して光重合させ、厚さが80μmの熱接着性組成物の層を形成し、接着シ―トを作製した。
【0025】
実施例5
フエノキシエチルアクリレ―ト100部、2,2−ジメトキシ−2−フエニルアセトフエノン0.02部を四つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で紫外線に暴露して部分的に光重合させることにより、粘度が約30ポイズのシロツプを得た。この部分重合したシロツプ100部に、交叉結合剤としての1,6−ヘキサンジオ―ルジアクリレ―ト0.3部を均一に混合し、光重合性組成物を調製した。つぎに、この光重合性組成物を剥離性基材上に塗布し、900mj/cm2 の紫外線を照射して光重合させ、厚さが80μmの熱接着性組成物の層を形成し、接着シ―トを作製した。
【0026】
比較例1
冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた反応容器に、酢酸エチル210部を溶媒として、ブチルアクリレ―ト(ホモポリマ―のTg<−30℃)60部、アクリロニトリル35部、アクリル酸5部、過酸化ベンゾイル0.3部を入れ、窒素気流中で重合処理して、固形分が約30重量%の重合物の溶液を得た。この溶液に、その固形分100部あたり、多官能イソシアネ―ト系架橋剤3部を均一に混合し、接着剤溶液を調製した。つぎに、この接着剤溶液を剥離性基材上に塗布し、130℃で5分間乾燥処理して、厚さが80μmの接着剤層を形成し、接着シ―トを作製した。
【0027】
比較例2
イソオクチルアクリレ―ト(ホモポリマ―のTg<−30℃)80部、アクリル酸20部、2,2−ジメトキシ−2−フエニルアセトフエノン0.05部を、四つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で紫外線に暴露して部分的に光重合させることにより、粘度が約30ポイズのシロツプを得た。この部分重合したシロツプ100部に、交叉結合剤としての1,6−ヘキサンジオ―ルアクリレ―ト0.3部を均一に混合し、光重合性組成物を調製した。つぎに、この光重合性組成物を剥離性基材上に塗布し、900mj/cm2 の紫外線を照射して光重合させ、厚さが80μmの接着剤層を形成し、接着シ―トを作製した。
【0028】
比較例3
エチルアクリレ―ト(ホモポリマ―のTg>−30℃)80部、アクリロイルモルフオリン20部、2,2−ジメトキシ−2−フエニルアセトフエノン0.05部を、四つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で紫外線に暴露して部分的に光重合させることにより、粘度が約30ポイズのシロツプを得た。この部分重合したシロツプ100部に、交叉結合剤としての1,6−ヘキサンジオ―ルジアクリレ―ト0.3部を均一に混合し、光重合性組成物を調製した。この光重合性組成物を剥離性基材上に塗布し、900mj/cm2 の紫外線を照射して光重合させ、厚さが80μmの接着剤層を形成し、接着シ―トを作製した。
【0029】
以上の実施例1〜5および比較例1〜3の各接着シ―トと、参考例1としての市販の熱硬化型接着シ―ト(剥離性基材上に厚さが100μmのエポキシ/ゴム系の熱硬化型接着剤からなる層を設けたもの)とについて、下記の方法により、粘着性、接着性(90°剥離接着強度)、耐熱性(ハンダ耐熱性)を評価した。
これらの結果は、表1に示されるとおりであつた。
【0030】
<粘着性>
剥離性基材付きのまま、幅10mmに切断した接着シ―トを、常温でハンドロ―ラによりSUS304に貼り合わせ、ただちに剥がした。そのとき、接着シ―トの伸び、切れなどなく良好に剥がれたものを「粘着性なし」、伸び、切れなどが発生したものを「粘着性あり」、と評価した。
【0031】
<接着性>
幅10mm、長さ50mmに切断した接着シ―トを、作製直後(初期)および30℃で30日間保存後(保存後)に、厚さが75μmのポリイミドフイルムにラミネ―タ(温度:100℃、圧力:5kg/cm、速度:2m/分)にて貼り合わせ、これをSUS304にプレス機(温度:200℃、時間:1秒、圧力:10kg/cm2 )で貼り合わせた。このサンプルを、150℃で1時間の加熱処理により、硬化およびエ―ジングさせたのち、23℃,65%RHの雰囲気下に、30分間放置後、引張り速度50mm/分で90°方向に引張り、その中心値を、90°剥離接着強度とした。
【0032】
<耐熱性>
幅50mm、長さ50mmに切断した接着シ―トを、厚さが75μmのポリイミドフイルムにラミネ―タ(温度:100℃、圧力:5kg/cm、速度:2m/分)で貼り合わせ、これを、30mm角のSUS304にプレス機(温度:200℃、時間:1秒、圧力:10kg/cm2 )で貼り合わせた。このサンプルを、150℃で1時間の加熱処理により、硬化およびエ―ジングさせたのち、直ちに(初期)および30℃,60%RHの雰囲気下で7日間放置後(放置後)に、SUS304面を上にして240℃に溶融したハンダ浴に浮かせた状態で60秒間処理した。処理後のシ―トの貼り合わせ状態を目視で観察し、接着剤の発泡や接着異常(浮き、しわ、剥がれ、ずれ)がみられないものを○、上記発泡や接着異常が明らかにみられるものを×、と評価した。
【0033】
【0034】
上記の表1の結果から明らかなように、光重合性組成物を紫外線の照射により光重合させた本発明の実施例2〜5の各接着シ―トは、常温で粘着性がなく、したがつて、面接着時に気泡の抱き込みを生じる心配がなく、低圧、短時間の加熱により、大きな接着強度を示し、かつハンダ耐熱性も満足し、さらにシ―トの保存環境などによる接着強度などの変動がみられず、経時的安定性にすぐれていることがわかる。また、上記の接着性試験において、糊はみ出しなどの問題も生じないものであることもわかつた。
【0035】
これに対し、比較例1〜3では、共重合モノマ―や主モノマ―の選択により、常温で粘着性のない接着シ―トを作製できるが、短時間の接着処理では接着強度が出ず、比較例2のように仮に良好な接着強度を示しても、ハンダ耐熱性を満足させることができない。また、参考例1に示す市販のエポキシ系熱硬化型接着剤を用いた接着シ―トは、接着強度と耐熱性はすぐれているが、反応性のために、シ―トの保管環境により特性の変動が大きく、取り扱いが不便である。
【0036】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、ホモポリマ―のガラス転移温度が−30℃以上となる特定の分子構造を持つたアクリル系モノマ―を主モノマ―とした非粘着性重合物を用いることにより、常温で粘着性がなく、被着体への面接着時に気泡の抱き込みなどを生じず、低圧、短時間の加熱により強接着性、高耐熱性を発揮でき、とくに100℃以上での高温での使用やハンダ付け工程での使用に耐えうるすぐれた耐熱性を備え、また加熱接着時に糊はみ出しの問題を生じず、そのうえ、常温保存が可能で、経時的安定性にすぐれた熱接着性組成物とそのシ―ト状やテ―プ状などの接着シ―ト類を提供することができる。
Claims (1)
- 基材の片面または両面に熱接着性組成物からなる層を有し、この層は、下記の式(I);
で表される、ホモポリマーのガラス転移温度が−30℃以上である(メタ)アクリル酸エステル70〜100重量%と、これと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体30〜0重量%とからなる単量体に多官能(メタ)アクリレートを加えた無溶剤型重合性組成物の非粘着性重合物を含有してなり、この非粘着性重合物が光重合開始剤を用いた紫外線の照射による重合物であることを特徴とする接着シート。
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