JP4380841B2 - 熱接着性組成物とその接着シ―ト類 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品の固定用途などに用いられる熱接着性組成物と、そのシ―ト状やテ―プ状などの接着シ―ト類に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子部品の固定用途などに、種々の接合材料が使用されている。
この種の用途では、強接着性とともに、電子部品を基板に実装するときのハンダリフロ―に耐えうる高耐熱性が必要である。また、電子機器の小型化に伴い、接着面積が微小化する傾向にあるが、この場合、外観上の問題、電子部品の機能低下などの問題により、接着剤の流動性の制御(糊はみ出し)が非常に重要となつている。さらに、この種の用途では、接着時の濡れ性を確保するため、熱プレスにより接着処理しているが、生産性の向上、熱接着時の部品損傷の低減などの理由により、低圧、短時間での接着条件が求められている。
【0003】
これに対して、従来公知の熱硬化型接着シ―ト類は、接着剤のガラス転移温度が室温以上のため、室温では粘着性がなく、熱プレス時に気泡の抱き込みなどがなく、良好に接着処理でき、耐熱性にもすぐれている。しかし、熱硬化型接着剤は、短時間のプレス接着条件で用いる場合、通常、硬化前は未反応の低分子量分が多いため、電子部品などの微小部分への接着に致命的となる糊はみ出しの問題があり、また硬化に時間がかかる問題がある。さらに、反応性のため、低温保管が必要であるなど、取り扱いが煩雑であり、また接着シ―ト類の特性が時間の経過とともに変化し、安定した特性を得にくいという問題もある。
【0004】
また、従来公知の粘着シ―ト類は、粘着剤のガラス転移温度が−20℃以下のため、常温で粘着性であり、なんの予備操作もなしに目的物に貼り付けでき、この貼り付けでただちに接着強度を発現できる。また、未反応物を含有していないため、常温保存が可能であり、特性の経時変化が少ないなどの利点もある。しかし、粘着シ―ト類は、その粘着性から、プレスなどによる面接着では、気泡の抱き込みなどがあり、100℃以上の高温になると、抱き込んだ気泡の膨張などにより、剥離や発泡などが起こる問題がある。また、接着強度や耐熱性が、熱硬化型接着剤に比べて、一般に劣るという問題もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に照らし、常温で粘着性が低く、プレス接着時に気泡の抱き込みや糊はみ出しなどを生じず、低圧、短時間とくに数秒以内の加熱処理で強固な接着性を示し、また100℃以上の高温での使用やハンダ付け工程での使用に耐える耐熱性を有し、さらに常温保存が可能で経時安定性にすぐれた熱接着性組成物とその接着シ―ト類を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的に対する鋭意検討の過程において、まず、アクリル系粘着シ―ト類の作製に一般的に使用されているアルキル基の炭素数が2〜14個である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これに粘着性を低くするためにポリマ―のガラス転移温度が高くなるような単量体を共重合させた共重合物について、検討してみたところ、粘着性の低いシ―ト類の作製はできるものの、接着処理に長時間を有し、低圧、短時間の加熱処理では接着特性が極端に低下してしまい、接着シ―ト類として機能しなかつた。
【0007】
本発明者らは、この知見を踏まえて、さらに検討した結果、ホモポリマ―のガラス転移温度が−30℃以上となる特定の(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする非粘着性重合物を使用し、これに特定の軟化点を有する流動性付与樹脂を配合したものによると、可撓性や柔軟性に富むシ―ト状物などを形成でき、このものは常温で粘着性が低く、プレス接着時に気泡の抱き込みなどを生じず、低圧、短時間とくに数秒以内の加熱処理で強固な接着性を発揮し、その際に糊はみ出しも生じず、また100℃以上の高温での使用やハンダ付け工程での使用に耐える耐熱性を示し、さらに常温保存が可能で経時安定性にもすぐれた熱接着性組成物とその接着シ―ト類が得られることを知り、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、つぎの式(1);
【化2】
(式中、R1 は水素原子またはメチル基、R2 はメチレン基、エチレン基またはプロピレン基、n=1〜3の整数、φはフェニル基、モノアルキル置換フェニル基またはジアルキル置換フェニル基である)
で表される、ホモポリマーのガラス転移温度(以下、Tgという)が−30℃以上である(メタ)アクリル酸エステル70〜100重量%と、これと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体30〜0重量%とからなる単量体の非粘着性重合物100重量部に、軟化点が80〜200℃の流動性付与樹脂3〜30重量部を含ませてなり、かつエポキシ樹脂とその硬化剤を含まないことを特徴とする熱接着性組成物(請求項1)に係るものであり、とくに、上記の非粘着性重合物が紫外線などの放射線の照射による重合物である上記構成の熱接着性組成物(請求項2)に係るものである。また、本発明は、基材の片面または両面に上記構成の熱接着性組成物からなる層を有することを特徴とする接着シート類(請求項3)に係るものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明における式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルは、ホモポリマ―のTgが−30℃以上、好ましくは−10℃以上となるものであり、代表的なものとして、フエノキシエチル(メタ)アクリレ―ト、フエノキシプロピル(メタ)アクリレ―ト、ノニルフエノキシエチル(メタ)アクリレ―ト、ノニルフエノキシプロピル(メタ)アクリレ―トなどがある。また、フエノ―ル、クレゾ―ル、ノニルフエノ―ルなどのエチレンオキシド付加物、プロピレンオキシド付加物など(付加モル数3まで)と(メタ)アクリル酸とのエステルなども好ましく用いられる。これらは、1種または2種以上用いられる。
【0010】
本発明における上記の式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体は、耐熱性や接着性の改善、改質のため、必要に応じて用いられものであり、たとえば、分子内にカルボキシル基、水酸基またはエステル基などの極性基を含有するモノエチレン性不飽和単量体や、分子内に五員環や複素環を含有するモノエチレン性不飽和単量体などが挙げられる。これらは、必要により1種または2種以上用いられる。
【0011】
カルボキシル基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸、カプロラクトン変性(メタ)アクリレ―トなどが挙げられる。水酸基含有単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ―ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ―ト、2−ヒドロキシ−3−フエノキシプロピル(メタ)アクリレ―トなどが挙げられる。エステル基含有単量体としては、各種のアルキル(メタ)アクリレ―ト、アルコキシアルキル(メタ)アクリレ―トなどが挙げられる。五員環含有単量体とししては、テトラヒドロフルフリ―ル(メタ)アクリレ―ト、テトラヒドロフルフリ―ル誘導体の(メタ)アクリレ―トなどが挙げられる。複素環含有単量体としては、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ―ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ―トなどが挙げられる。
【0012】
本発明において、上記の式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルとこれと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体との使用割合は、前者の(メタ)アクリル酸エステルが70〜100重量%、好ましくは85〜95重量%で、これと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体が30〜0重量%、好ましくは15〜5重量%となるようにするのがよく、このような範囲で使用することにより耐熱性と接着性などのバランスをうまくとることができる。
【0013】
本発明においては、このような単量体を重合させて、非粘着性重合物とする。重合は、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法などの適宜の重合方式を採用できる。中でも、紫外線や電子線などの放射線の照射による塊状重合法が好ましい。これによれば、有機溶剤の残存による電子部品の腐食、高温での気化膨張による膨れ、剥がれ、ずれ、また乳化剤のブリ―ドによる汚染、接着不良、耐湿性低下などの心配がなく、さらに比較的弱い強度の紫外線などを照射することで重合物の分子量を高くでき、高い架橋度と大きな凝集力を有する耐熱性にとくに良好な非粘着性重合物が得られる。重合には、重合触媒として、熱重合開始剤や光重合開始剤が用いられ、また過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などや、これらと還元剤とからなるレドツクス系開始剤なども用いられる。
【0014】
熱重合開始剤には、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパ―ベンゾエイト、クメンヒドロパ―オキシド、ジイソプロピルパ―オキシジカ―ボネ―ト、ジ(2−エトキシエチル)パ―オキシジカ―ボネ―ト、t−ブチルパ―オキシネオデカノエ―ト、t−ブチルパ―オキシピバレ―ト、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パ―オキシド、ジプロピオニルパ―オキシド、ジアセチルパ―オキシドなどの有機過酸化物、2,2−アゾビスイソブチルニトリル、2,2−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネ―ト)、4,4−アゾビス(4−シアノバレツク酸)、2,2−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕などのアゾ系化合物などがある。
【0015】
光重合開始剤には、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フエニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α−ジメチルアセトフエノン、メトキシアセトフエノン、2,2−ジメトキシ−2−フエニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフエノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフエニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)−フエニル〕−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフエノン系化合物、ベンゾインエチルエ―テル、ベンゾインイソプロピルエ―テル、アニゾインメチルエ―テルなどのベンゾインエ―テル系化合物、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフエノンなどのα−ケト―ル系化合物、ベンジルジメチルケタ―ルなどのケタ―ル系化合物などがある。
【0016】
本発明の熱接着性組成物は、このようにして得られる非粘着性重合物を主剤とし、これにさらに軟化点(または融点)が80〜200℃、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜150℃の流動性付与樹脂を配合する。これには、ロジン系、テルペン系、合成石油系、フエノ―ル系、キシレン系など、一般に粘着付与樹脂として知られる各種樹脂をいずれも使用できる。
【0017】
このような流動性付与樹脂を配合することで、熱接着性組成物に適度の流動性が付与されて、低圧、短時間とくに数秒以内の加熱処理で強固な接着強度が得られるという効果が奏される。この流動性付与樹脂の軟化点が80℃より低いと、低圧、短時間の接着には有利であるが、耐熱性が不十分となり、200℃を超えると、プレス接着時に流動性付与成分として機能しなくなり、短時間での接着が困難となる。このような流動性付与樹脂の中でも、耐熱性がとくに要求される用途に対しては、フエノ―ル系樹脂が最も好ましく用いられる。
【0018】
本発明において、このような流動性付与樹脂の使用量としては、非粘着性重合物100重量部あたり、3〜30重量部の範囲内、好ましくは5〜15重量部の範囲内で、その種類や非粘着性重合物の種類に応じて、適宜決められる。上記の使用量が3重量部より少ないと、プレス接着時に流動性成分として機能しなくなり、低圧、短時間での接着が困難となり、30重量部より多くなると、低圧、短時間の接着には有利であるが、耐熱性が不十分となる。
【0019】
本発明の熱接着性組成物には、任意成分として、可塑剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料、老化防止剤などの従来公知の添加剤を、組成物の諸特性を低下させない程度に、配合することができる。また、接着剤としての保持特性を向上させるため、交叉結合剤として、イソシアネ―ト系やエポキシ系の架橋剤を用いることができる。さらに、非粘着性重合物を紫外線などの放射線の照射による塊状重合で得る場合は、この重合を行う際に、交叉結合剤として、トリメチロ―ルプロパントリ(メタ)アクリレ―ト、ペンタエリスリト―ルテトラ(メタ)アクリレ―ト、1,2−エチレングリコ―ルジ(メタ)アクリレ―ト、1,4−ブタンジオ―ルジアクリレ―ト、1,6−ヘキサンジオ―ルジ(メタ)アクリレ―トなどの多官能(メタ)アクリレ―トを添加することができる。
【0020】
上記の架橋剤や多官能(メタ)アクリレ―トからなる交叉結合剤の使用量としては、前記の非粘着性重合物(またはその単量体)100重量部に対して、通常0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部とするのがよい。交叉結合剤として多官能(メタ)アクリレ―トを使用する場合、上記の範囲内で、2官能の場合は多く、3官能やそれ以上の官能基数の場合は少なくする。交叉結合剤の使用量が少なすぎると、重合後の架橋度が低くなり、被着体への熱接着時に糊はみ出しを生じやすくなり、多すぎると、架橋密度が密となり、架橋度も高くなり、接着不良などの接着力の低下を引き起こしやすい。
【0021】
本発明の接着シ―ト類は、基材の片面または両面に、上記の非粘着性重合物と軟化点が80〜200℃の流動性付与樹脂を含有する熱接着性組成物からなる層を、厚さが通常10〜200μmとなるように設けて、シ―ト状やテ―プ状などの形態としたものである。上記の層は、あらかじめ適宜の重合法で非粘着性重合物を得、これに流動性付与樹脂や架橋剤などを加えて熱接着性組成物を調製し、これを基材上に塗工し、必要により加熱などにより架橋処理する方式で形成できる。また、より好ましくは、重合前の単量体またはその部分重合物に流動性付与樹脂や多官能(メタ)アクリレ―トなどを加えた放射線重合性組成物を調製し、これを基材上に塗工し、紫外線などの放射線を照射して重合させ、非粘着性重合物の合成と同時に層形成する方式を採用するのがよい。
【0022】
上記放射線の照射方法によると、接着剤の耐熱性の向上にとくに好結果が得られる。紫外線を照射する場合は、窒素ガスなどの不活性ガスで置換された酸素のない雰囲気中で行うか、紫外線透過性のフイルムによる被覆で空気を遮断した状態で行うのがよい。また、用いる紫外線は、波長範囲が約180〜460nmの電磁放射性であるが、これより長波長または短波長の電磁放射性を用いてもよい。紫外線の発生源には、水銀ア―ク、炭素ア―ク、低圧水銀ランプ、中・高圧水銀ランプ、メタロハライドランプなどの一般の照射装置が用いられる。紫外線の強度は、被照射体までの距離や電圧、照射時間などで決定される。
【0023】
基材としては、ポリイミドフイルム、ポリエステルフイルム、ポリテトラフルオロエチレンフイルムなどのプラスチツクフイルムや繊維基材などの非剥離性基材が用いられ、また剥離紙などの剥離性基材も使用できる。剥離性基材の場合、この上に形成した熱接着性組成物からなる層を最終的に非剥離性基材の上に転写してもよい。本発明の接着シ―ト類には、基材としてこのような非剥離性基材を用いたものと剥離基材を用いたものとの両方が含まれる。
【0024】
本発明の接着シ―ト類は、常温保存が可能で、接着特性の経時変化が少なく、常温で粘着性が低いため、プレス接着時に気泡の抱き込みなどを生じることがなく、被着体に容易に接着でき、また耐熱性を低下させない程度の流動性付与樹脂を配合したことで、低圧、短時間とくに数秒内の加熱処理により強固な接着性を発揮するとともに、100℃以上の高温での使用やハンダ付け工程での使用に耐える耐熱性を発揮し、そのうえ、糊はみ出しなどの問題を生じることもない。このため、電子部品などの固定用途などとして、また耐熱フイルムや金属板などの接合材料として、その他上記特徴を生かした幅広い用途に使用できる。
【0025】
【実施例】
つぎに、本発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味するものとする。
【0026】
実施例1
冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた反応容器に、酢酸エチル210部を溶媒として、フエノキシエチルアクリレ―ト(ホモポリマ―のTg:−10℃)100部、過酸化ベンゾイル0.3部を入れ、窒素気流中で重合処理して、固形分が約30重量%の非粘着性重合物の溶液を得た。この溶液に、その固形分100部あたり、フエノ―ル樹脂〔荒川化学(株)製の商品名「1010R」、軟化点:85〜110℃〕5部、多官能イソシアネ―ト系架橋剤3部を均一に混合して、熱接着性組成物の溶液を調製した。つぎに、この熱接着性組成物の溶液を剥離性基材上に塗布し、130℃で5分間乾燥処理して、厚さが80μmの熱接着性組成物の層を形成し、接着シ―トを作製した。
【0027】
実施例2
四つ口フラスコに、フエノキシエチルアクリレ―ト90部、アクリロイルモルフオリン8部、アクリル酸2部、2,2−ジメトキシ−2−フエニルアセトフエノン0.05部を投入し、窒素雰囲気下紫外線を照射して部分的に光重合させ、粘度が約30ポイズのシロツプを得た。この部分重合したシロツプ100部に、フエノ―ル樹脂〔荒川化学(株)製の商品名「1010R」、軟化点:85〜110℃〕5部、交叉結合剤として1,6−ヘキサンジオ―ルジアクリレ―ト0.3部を均一に混合して、光重合性組成物を調製した。つぎに、この光重合性組成物を剥離性基材上に塗布し、900mj/cm2 の紫外線を照射して光重合させ、厚さが80μmの熱接着性組成物の層を形成し、接着シ―トを作製した。
【0028】
実施例3
四つ口フラスコに、クレゾ―ルのエチレンオキシド付加物(付加モル数1)とアクリル酸とのエステル(ホモポリマ―のTg:−20℃)95部、アクリル酸5部、2,2−ジメトキシ−2−フエニルアセトフエノン0.05部を投入し、窒素雰囲気下で紫外線を照射して部分的に光重合させ、粘度が約30ポイズのシロツプを得た。この部分重合したシロツプ100部に、テルペンフエノ―ル樹脂〔住友デユレス社製の商品名「スミライトレジンPR−12603」、軟化点:133℃〕10部、交叉結合剤としてトリメチロ―ルプロパントリアクリレ―ト0.2部を均一に混合して、光重合性組成物を調製した。つぎに、この光重合性組成物を剥離性基材上に塗布し、900mj/cm2 の紫外線を照射して光重合させ、厚さが80μmの熱接着性組成物の層を形成し、接着シ―トを作製した。
【0029】
実施例4
四つ口フラスコに、ノニルフエノ―ルのエチレンオキシド付加物(付加モル数1)とアクリル酸とのエステル(ホモポリマ―のTg:−25℃)95部、2−ヒドロキシ−3−フエノキシプロピルアクリレ―ト5部、2,2−ジメトキシ−2−フエニルアセトフエノン0.05部を投入し、窒素雰囲気下紫外線を照射して部分的に光重合させ、粘度が約30ポイズのシロツプを得た。この部分重合したシロツプ100部に、テルペン系樹脂〔住友デユレス社製の商品名「スミライトレジン」、軟化点:133℃〕20部、交叉結合剤としてトリメチロ―ルプロパントリアクリレ―ト0.2部を均一に混合して、光重合性組成物を調製した。つぎに、この光重合性組成物を剥離性基材上に塗布し、900mj/cm2 の紫外線を照射して光重合させ、厚さが80μmの熱接着性組成物の層を形成し、接着シ―トを作製した。
【0030】
比較例1
冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた反応容器に、酢酸エチル210部を溶媒として、ブチルアクリレ―ト(ホモポリマ―のTg<−30℃)60部、アクリロニトリル35部、アクリル酸5部、過酸化ベンゾイル0.3部を入れ、窒素気流中で重合処理して、固形分が約30重量%の重合物の溶液を得た。この溶液に、その固形分100部あたり、フエノ―ル樹脂〔荒川化学(株)製の商品名「1010R」、軟化点:85〜110℃〕5部、多官能イソシアネ―ト系架橋剤1部を均一に混合して、接着剤溶液を調製した。つぎに、この接着剤溶液を剥離性基材上に塗布し、130℃で5分間乾燥処理して、厚さが80μmの接着剤層を形成し、接着シ―トを作製した。
【0031】
比較例2
四つ口フラスコに、イソオクチルアクリレ―ト(ホモポリマ―のTg<−30℃)80部、アクリル酸20部、2,2−ジメトキシ−2−フエニルアセトフエノン0.05部を投入し、窒素雰囲気下紫外線を照射して部分的に光重合させ、粘度が約30ポイズのシロツプを得た。この部分重合したシロツプ100部に、フエノ―ル樹脂〔荒川化学(株)製の商品名「1010R」、軟化点:85〜110℃〕5部、交叉結合剤として1,6−ヘキサンジオ―ルジアクリレ―ト0.3部を均一に混合して、光重合性組成物を調製した。つぎに、この光重合性組成物を剥離性基材上に塗布し、900mj/cm2 の紫外線を照射して光重合させ、厚さが80μmの接着剤層を形成し、接着シ―トを作製した。
【0032】
比較例3
フエノ―ル樹脂〔荒川化学(株)製の商品名「1010R」、軟化点:85〜110℃〕5部を用いなかつた以外は、実施例2と同様にして、厚さが80μmの熱接着性組成物の層を形成し、接着シ―トを作製した。
【0033】
比較例4
フエノ―ル樹脂(荒川化学(株)製の商品名「1010R」、軟化点:85〜110℃)の使用量を40部に変更した以外は、実施例2と同様にして、厚さが80μmの熱接着性組成物の層を形成し、接着シ―トを作製した。
【0034】
比較例5
四つ口フラスコに、フエノキシエチルアクリレ―ト100部、2,2−ジメトキシ−2−フエニルアセトフエノン0.05部を投入し、窒素雰囲気下で紫外線を照射して部分的に光重合させ、粘度が約30ポイズのシロツプを得た。この部分重合したシロツプ100部に、テルペンフエノ―ル樹脂(住友デユレス社製の商品名「スミライトレジンPR−12603」、軟化点:133℃)10部、エポキシ樹脂(油化シエルエポキシ社製の商品名「エピコ―ト828」)50部、変性ポリアミン(エポキシ樹脂の硬化剤、エ―・シ―・ア―ル社製の商品名「ACRハ―ドナ―X−3615」)7部、交叉結合剤として1,6−ヘキサンジオ―ルジアクリレ―ト0.3部を均一に混合して、光重合性組成物を調製した。つぎに、この光重合性組成物を剥離性基材上に塗布し、900mj/cm2 の紫外線を照射して光重合させ、厚さが80μmの熱接着性組成物の層を形成し、接着シ―トを作製した。
【0035】
上記の実施例1〜4および比較例1〜5の各接着シ―トについて、下記の方法により、プレス接着後の外観、接着力およびハンダ耐熱性を調べた。これらの結果は、表1に示されるとおりであつた。
【0036】
<プレス接着後の外観>
30mm角に切断した接着シ―トを、常温でラミネ―タ(圧力:5kg/cm2 、速度:2m/分)によりSUS304に貼り合わせ、これを厚さが75μmのポリイミドフイルムにプレス機(温度150℃、時間1秒、圧力5kg/cm2 )で貼り合わせた。そのときの貼り合わせ面の状態を目視にて確認し、×:気泡の抱き込み、未接着部分または糊はみ出しがみられる、〇:気泡の抱き込み、未接着部分または糊はみ出しのいずれもみられない、と評価した。
【0037】
<接着力>
幅10mm、長さ50mmに切断した接着シ―トを、厚さが75μmのポリイミドフイルムにラミネ―タ(温度:100℃、圧力:5kg/cm2 、速度:2m/分)により貼り合わせ、これをSUS304にプレス機(温度:150℃、時間:1秒、圧力:10kg/cm2 )で貼り合わせた。このサンプルを、エ―ジングさせたのち、初期(常温で30分放置後)および高温放置後(100℃で100時間放置後)に、引張り速度50mm/分の条件で、90°方向に引張り、その中心値を90°剥離接着強度として、接着力を測定した。
【0038】
<ハンダ耐熱性>
幅50mm、長さ50mmに切断した接着シ―トを、厚さが75μmのポリイミドフイルムにラミネ―タ(温度:100℃、圧力:5kg/cm2 、速度:2m/分)により貼り合わせ、これを30mm角のSUS304にプレス機(温度:200℃、時間:1秒、圧力:10kg/cm2 )で貼り合わせた。このサンプルを150℃で1時間の加熱処理により硬化させたのち、SUS304面を上にして240℃に溶融したハンダ浴に浮かせた状態で60秒間処理した。処理後のシ―トの貼り合わせ状態を目視により観察し、○:接着剤の発泡や接着異常(浮き、しわ、剥がれ、ずれ、ボイド)がほとんどみられない、×:上記発泡や接着異常が明らかにみられる、と評価した。
【0039】
表1
【0040】
上記の表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜4の各接着シ―トは、プレス接着時に気泡の抱き込み、未接着部分および糊はみ出しがみられず、接着力にすぐれており、しかも高温連続放置後でも接着力の低下が少なく、ハンダ耐熱性も満足するものであることがわかる。これに対し、比較例1,2の各接着シ―トは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主単量体とし、これと高いTgを付与する単量体とを共重合させることにより、粘着性が低くて、プレス接着時に気泡の抱き込み、未接着部分および糊はみ出しがみられず、外観が良好でハンダ耐熱性も満足する結果が得られているが、低圧、短時間のプレス接着処理では十分な接着力を発揮させることができない。
【0041】
また、比較例3の接着シ―トは、流動性付与樹脂を含ませなかつたため、上記比較例1,2の場合と同様に、低圧、短時間のプレス接着処理では十分な接着力を発揮させることが難しい。さらに、比較例4の接着シ―トは、流動性付与樹脂を過剰に含ませたため、糊はみ出しなどの外観不良が起こり、ハンダ耐熱温度で上記の流動性付与樹脂が流動を起こし、これがハンダ耐熱時の浮きの原因となりハンダ耐熱性を満足させることができない。また、比較例5の接着シ―トは、エポキシ樹脂とその硬化剤を含ませたため、接着剤が熱により硬化して、高温連続放置後に接着力が大きく低下し、使用に供し得ない。
【0042】
【発明の効果】
以上のように、本発明においては、ホモポリマ―のTgが−30℃以上となる特定の(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする非粘着性重合物を使用し、これに特定の軟化点を有する流動性付与樹脂を配合するようにしたことにより、常温で粘着性が低く、プレス接着時に気泡の抱き込みなどを生じず、低圧、短時間とくに数秒以内の加熱処理で強固な接着性を発揮し、その際に糊はみ出しなどを生じず、また100℃以上の高温での使用やハンダ付け工程での使用に耐えうる耐熱性を示し、さらに常温保存が可能で経時安定性にもすぐれた熱接着性組成物とその接着シ―ト類を提供することができる。
Claims (3)
- 非粘着性重合物が紫外線などの放射線の照射による重合物である請求項1に記載の熱接着性組成物。
- 基材の片面または両面に請求項1または2に記載の熱接着性組成物からなる層を有することを特徴とする接着シ―ト類。
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