JP4001562B2 - モータ及びディスク装置 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、PWMセンサレス駆動を行うモータ、及びそのモータを用いたディスク装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図21は従来のモータの構成を示すブロック図であり、この図21を用いて、従来のモータの動作を簡単に説明する。ロータ1010は永久磁石による界磁部を有し、3相のコイル1011、1012、1013との相互作用により回転力を発生する。電力供給器1020は、3個ずつに上側と下側に分かれたパワートランジスタを含んで構成され、上側と下側の各パワートランジスタが直列接続され、その接続点に各相のコイルの一端が接続されている。上側パワートランジスタ及び下側パワートランジスタを含んで構成された電力供給器1020は、コイル1011、1012、1013への電力供給を行う。位置検出器1030は各コイル1011、1012、1013の一端の端子電圧V1、V2、V3と他端の共通電圧Vcとを比較し、その比較結果に応動した検出パルス信号FGを出力する。指令器1040はロータ1010を速度制御する速度指令信号ECをスイッチング制御器1050へ出力する。スイッチング制御器1050は指令器1040の速度指令信号ECに応動して電力供給器1020のパワートランジスタを高周波スイッチング動作させるためのPWM信号Wpを通電制御器1060へ出力する。通電制御器1060は位置検出器1030の検出パルス信号FGとスイッチング制御器1050のPWM信号Wpに応動してコイル1011、1012、1013への通電を制御するための通電制御信号N1、N2、N3及びM1、M2、M3を電力供給器1020へ出力する。これにより、電力供給器1020がコイル1011、1012、1013に対して通電制御された電力供給を行い、モータ1010はPWMセンサレスで駆動される。
【0003】
さらに、従来のモータにおいては、ロータ位置検出の誤動作を防止するために、高周波スイッチング動作に応じたマスク処理を行った出力信号を通電切換えに用いる位置検出信号として用いている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記のように構成された従来のモータにおいては、コイルの中性点が高周波スイッチング動作のオフ状態の時に、電源電圧もしくはグランド電圧に引き込まれ、位置検出動作を行うことが困難になる。このような問題を解決するために、別の構成の従来のモータにおいては、高周波スイッチング動作のオン動作中にのみ位置検出動作を行わせるものがあった。(例えば、特許文献2参照。)
【0005】
【特許文献1】
特開平11−4595号公報
【特許文献2】
特開平8−223970号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来のモータの構成においては次のような課題があった。従来のモータでは、位置検出器1030において各コイル1011、1012、1013の一端の端子電圧V1、V2、V3と共通電圧Vcとを比較して、その比較結果に応動した検出パルス信号FGを通電制御器1060へ出力し、通電制御器1060は検出パルス信号FGに応動した上側通電制御信号N1、N2、N3及び下側通電制御信号M1、M2、M3を電力供給器1020へ出力している。これにより、電力供給器1020はコイル1011、1012、1013に電力を供給し、モータのセンサレス駆動を行わせていた。したがって、起動初期において位置検出器1030でロータ位置を誤検出した場合、その誤検出した情報により通電制御を行って、センサレス駆動が実施されるため、従来のモータでは起動失敗を引き起こす可能性が高いという問題があった。
【0007】
起動初期においてはロータ位置が不定であり、回転速度が遅いため、コイル1011、1012、1013に誘起される逆起電圧が小さく、ロータ位置検出を正確に行うことは困難であった。したがって、従来のモータのセンサレス駆動においては、起動失敗を起こすことがあり、大きな問題を有していた。特に、モータをPWMセンサレス起動させる場合には、PWM動作による電流変化に伴う誘導電圧が検出相の端子電圧に重畳されるため、PWMセンサレス起動時の誘導電圧による影響を受けて、ロータ位置を誤検出してしまい、起動失敗を起こすことがあった。そのため、従来のモータにおいては、起動時において特定相にロータを引きつけて位置固定を行った後、起動させるよう構成した装置があった。このようなモータにおいては、初期位置固定のために要する時間が長くなるため、起動時間が長くなるという問題があった。
本発明は上記のような従来のモータにおける問題を解決するものであり、PWMセンサレス駆動において、PWM動作による電流変化に伴う誘導電圧の影響を考慮して、安定したPWMセンサレス駆動が可能なモータ及びこのモータを用いたディスク装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の構成のモータは、ロータと、複数相のコイルと、複数個の第1の駆動トランジスタと、複数個の第2の駆動トランジスタとを含み、前記複数相のコイルに電力を供給する電力供給手段と、前記複数相のコイルの端子電圧に応動して前期ロータの回転位置を検出する位置検出手段と、前記位置検出手段の出力信号に応動して前記電力供給手段による前記複数相のコイルへの通電を制御する通電制御手段と、速度指令信号を出力する指令手段と、前記電力供給手段の前記複数個の第1の駆動パワートランジスタと前記複数個の第2の駆動パワートランジスタの少なくとも1個のパワートランジスタを前記速度指令信号に応動して高周波スイッチング動作させるスイッチング動作手段と、を具備するモータ装置であって、
前記位置検出手段は、前記コイルの未通電相の端子電圧と前記複数相コイルの共通電位を比較出力する比較信号に応動して前期ロータの回転位置を検出する検出信号と前記検出信号の論理を反転した反転検出信号を切換える位置検出信号切換手段を備え、前記高周波スイッチング動作のオン動作中に位置検出信号切換手段の出力信号を出力することを特徴とするモータ装置である。
【0009】
このように構成することにより、スイッチング動作のオン動作中に位置検出を行うため、PWM動作による電流変化量が正の場合にのみ位置検出を行い、その際に得られた検出信号の論理を反転した反転検出信号を位置検出信号切換手段から出力することにより、誘導電圧による起動失敗を防ぐことが可能となる。つまり、安定したPWMセンサレス起動が可能となる。
さらに、前記ロータの状態を判定する回転速度判定手段を備え、少なくとも1回の前記回転速度判定手段の状態判定信号を前記位置検出信号切換手段に用いることを特徴とする。
このように構成することにより、PWMセンサレス起動させた場合の誘導電圧による影響で位置を誤検出するような状態を脱した後は、位置検出信号切換手段により前記検出信号を位置信号とすることにより、定常回転時は安定した動作が可能となる。
これら及びその他の構成や動作については、実施の形態の説明において詳細に説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る好適な実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0011】
《実施の形態1》
図1から図4に本発明に係る実施の形態1のモータを示す。図1は実施の形態1のモータの構成を示すブロック図である。
図1において、ロータ10には永久磁石の発生磁束により複数極の界磁磁束を発生する界磁部が取り付けられている。3相のコイル11、12、13は固定体であるステータに設けられており、各相のコイル11、12、13はロータ10との相対関係において互いに電気的に120度相当ずれた位置に配置されている。各コイル11、12、13の一端は電力供給器20に接続され、他端は共通接続されている。3相コイル11、12、13は3相の駆動電流I1、I2、I3により3相磁束を発生し、ロータ10との相互作用によって駆動力を発生し、ロータ10及びこのロータ10に取り付けられたディスク1を回転させる。
【0012】
電力供給源である直流電源5は負極端子側をアース電位とし、正極端子側に所要の直流電圧Vmを供給している。直流電源5の正極端子側には電流検出器51を介して3個の上側パワートランジスタ21、22、23の電流流入側端子が共通接続され、上側パワートランジスタ21、22、23の電流流出側端子にはそれぞれ3相コイル11、12、13の電力供給側端子が接続されている。また、直流電源5の負極端子側には3個の下側パワートランジスタ25、26、27の電流流出側端子が共通接続され、下側パワートランジスタ25、26、27の電流流入側端子にはそれぞれ3相コイル11、12、13の電力供給側端子が接続されている。さらに、上側パワートランジスタ21、22、23には上側パワーダイオード21d、22d、23dがそれぞれ逆並列接続され、下側パワートランジスタ25、26、27には下側パワーダイオード25d、26d、27dがそれぞれ逆並列接続されている。なお、上側パワートランジスタ21、22、23及び下側パワートランジスタ25、26、27はNチャンネル電界効果型パワートランジスタを使用し、各Nチャンネル電界効果型パワートランジスタに逆並列接続されて形成された寄生ダイオードをそれぞれ上側パワーダイオード21d、22d、23d及び下側パワーダイオード25d、26d、27dとして使用している。
【0013】
電力供給器20は上側パワートランジスタ21、22、23及び下側パワートランジスタ25、26、27、ならびに上側パワーダイオード21d、22d、23d及び下側パワーダイオード25d、26d、27dで構成される。上側パワートランジスタ21、22、23は、通電制御器60からの上側通電制御信号N1、N2、N3に応動して直流電源5の正極端子側と3相コイル11、12、13の電力供給側端子間の電力供給路を開閉動作し、3相コイル11、12、13への駆動電流I1、I2、I3の正極側電流を供給する電流路を形成する。上側通電制御信号N1、N2、N3は、スイッチング制御器52のPWM信号Wpにより各通電区間においてディジタル的なPWM信号になっている。つまり、上側パワートランジスタ21、22、23は高周波スイッチング動作を行う。下側パワートランジスタ25、26、27は、通電制御器60の下側通電制御信号M1、M2、M3に応動して直流電源5の負極端子側と3相コイル11、12、13の電力供給側端子間の電力供給路を開閉動作し、3相コイル11、12、13への駆動電流I1、I2、I3の負極側電流を供給する電流路を形成する。なお、スイッチング制御器52の構成及び動作の詳細は後述する。
【0014】
位置検出器30はディスク1及びロータ10の回転位置を検出し、その検出結果に対応した位置検出パルス信号FGを出力する。図2に位置検出器30の具体的な構成を示す。位置検出器30は4個の入力抵抗31、32、33、34と3個の電圧比較回路35、36、37と検出信号切換回路39Aとノイズ除去回路38と検出回路39Bとを具備している。
【0015】
3相コイル11、12、13の一端に生じる端子電圧V1、V2、V3及び共通接続された中点電圧Vcはそれぞれ入力抵抗31、32、33及び34を介して電圧比較回路35、36、37に入力される。各電圧比較回路35、36、37は各端子電圧V1、V2、V3と中点電圧Vcとを直接比較し、その比較結果に応動した電圧比較信号C1、C2、C3をそれぞれ出力する。検出信号切換回路39Aは、電圧比較回路35、36、37からの電圧比較信号C1、C2、C3とそれらを論理的に反転した信号のいずれかを選択して、切換信号C1S、C2S、C3Sを出力する。なお、検出信号切換回路39Aの構成及び動作の詳細は後述する。位置検出器30における検出信号の切換えには検出信号切換器70の出力信号である状態判定信号NSを用いる。検出信号切換器70は、位置検出パルス信号FGを用いてディスク1及びロータ10の状態判定を行い、ディスク1及びロータ10の状態を示す状態判定信号NSを出力する。
【0016】
検出信号切換回路39Aの具体的な回路構成を図3を用いて説明する。図3は検出信号切換回路39Aの具体的な構成を示す回路図である。
検出信号切換回路39Aは比較結果に応動した電圧比較信号C1、C2、C3からインバータ回路301、302、303を介し電圧比較反転信号C1−、C2−、C3−を生成する。また、状態判定信号NSからインバータ回路300を介し状態判定反転信号NS−を生成する。
次に、状態判定信号NSと電圧比較信号C1、C2、C3、又は状態判定反転信号NS−と電圧比較反転信号C1−、C2−、C3−の各々の信号が論理積ゲート回路304、305、306、307、308、309に入力されて、論理積ゲート回路後信号が各論理和ゲート回路310、311、312に出力される。次に、各論理和ゲート回路310、311、312により2つの論理積ゲート回路304と305、306と307、308と309の2出力を加算した切換信号C1S、C2S、C3Sが検出信号切換回路39Aの出力信号となる。
【0017】
ノイズ除去回路38は検出信号切換回路39Aの切換信号C1S、C2S、C3Sに含まれる高周波スイッチング動作に伴うスイッチングノイズのノイズ除去を行い、ノイズ除去後電圧比較信号C1R、C2R、C3Rを出力する。なお、ノイズ除去にはスイッチング制御器52のマスク信号Wmを用いる。マスク信号Wmについては後述する。
次に、位置検出器30の検出回路39Bは、ノイズ除去回路38のノイズ除去後電圧比較信号C1R、C2R、C3Rと通電制御器60の検出ウィンドウ信号WIN1〜6が入力されて、ディスク1及びロータ10の位置検出を行うための検出パルス信号FGだけを出力する。すなわち、検出回路39Bは、ディスク1及びロータ10の位置検出の結果に対応した検出パルス信号FGを出力する。検出パルス信号FGは指令器40と通電制御器60と検出信号切換器70に入力される。
なお、位置検出器30の構成においては、図5に示すように、ノイズ除去回路38と検出信号切換回路39Aの回路配置を交代させてもよい。このようにノイズ除去回路38と検出信号切換回路39Aを交代させた構成においても、位置検出器30の各回路は先に説明した位置検出器30の各回路と同じ動作を行い、実質的に同等の効果を有する。
【0018】
以下、位置検出器30の検出回路39Bに入力される検出ウィンドウ信号WIN1〜6について説明する。
検出ウィンドウ信号WIN1〜6は通電制御器60の出力信号であり、それぞれ未通電相における3相コイル11、12、13に誘起される逆起電圧の立ち上がり及び立ち下がりゼロクロスの検出用ウィンドウに対応している。例えば、検出ウィンドウ信号WIN1はコイル11の逆起電圧の立ち上がりゼロクロス検出用ウィンドウとなり、検出ウィンドウ信号WIN2はコイル13の逆起電圧の立ち下がりゼロクロス検出用ウィンドウとなり、検出ウィンドウ信号WIN3はコイル12の逆起電圧の立ち上がりゼロクロス検出用ウィンドウとなる。このように検出ウィンドウ信号WIN1〜6は電気角で60度づつ位相がずれた信号となる。
指令器40はディスク1及びロータ10の回転速度を所定速度に速度制御する速度制御回路を含んで構成され、位置検出器30からの検出パルス信号FGによりディスク1及びロータ10の回転速度を検出し、目標回転速度との差に応動した速度指令信号Acをスイッチング制御器52に出力する。
【0019】
図1に示すように、スイッチング動作器50は電流検出器51とスイッチング制御器52を含んで構成されている。図4はスイッチング動作器50の具体的な構成を示すブロック図である。電流検出器51は電流検出抵抗110を含んで構成され、直流電源5の正極端子側から上側パワートランジスタ21、22、23を介して3相コイル11、12、13に供給される通電電流Vmまたは供給電流に比例した電流検出信号Adを出力する。スイッチング制御器52は、電流検出器51の電流検出信号Adと指令器40からの速度指令信号Acとの比較を行い、その比較結果に応動したPWMリセット信号Prを形成し、そのPWMリセット信号Prに応動したPWM信号Wpとマスク信号Wmを出力する。PWM信号Wpは通電制御器60に入力され、マスク信号Wmは位置検出器30のノイズ除去回路38に入力される。PWM信号Wpは電力供給器20の上側パワートランジスタ21、22、23及び下側パワートランジスタ25、26、27を高周波スイッチング動作(PWM動作)させる信号となる。
なお、実施の形態1のモータにおいては、電流検出器51を直流電源5の正極端子側と上側パワートランジスタ21、22、23との間に設けた構成としているが、直流電源5の負極端子側と下側パワートランジスタ25、26、27との間に設けた構成としても同様の効果を奏する。
【0020】
図4に示すように、スイッチング制御器52は比較回路111と基準トリガ発生回路112とPWM信号作成回路113とマスク信号作成回路116とを含んで構成される。比較回路111は電流検出器51の電流検出信号Adと指令器40の速度指令信号Acとの比較を行い、その比較結果に応動したPWMリセット信号Prを出力する。具体的には、電流検出信号Adが速度指令信号Acよりも大きくなるとPWMリセット信号Prは“L”レベルから“H”レベルに状態変化する。基準トリガ発生回路112は一定周期Tpで基準トリガ信号Psを出力する回路である。具体的に周波数1/Tpは、20kHz〜500kHzの値である。PWM信号作成回路113は比較回路111のPWMリセット信号Prと基準トリガ発生回路112の基準トリガ信号PsによりPWM信号Wpを出力する。図6に基準トリガ信号PsとPWMリセット信号PrとPWM信号Wpの関係を示す。PWM信号Wpは一定周期Tpの基準トリガ信号Psの立ち上がりエッジで“H”レベルに状態変化し、PWMリセット信号Prの立ち上がりエッジによって“L”レベルに状態変化する。このように、PWM信号Wpは電流検出信号Adと速度指令信号Acとの比較結果に応動したPWM信号となる。つまり、基本PWM信号Wbは指令器40からの速度指令信号Acに応動してデューティが変更されたPWM信号である。具体的には、目標回転速度に対してディスク1及びロータ10の実回転速度が遅い場合、指令器40の速度指令信号Acは大きくなり、PWM信号Wpのオンデューティも大きくなる。また、逆に目標回転速度に対してディスク1及びロータ10の実回転速度が早い場合、指令器40の速度指令信号Acは小さくなり、PWM信号Wpのオンデューティも小さくなる。また、目標回転速度とディスク1及びロータ10の実回転速度がほぼ等しい場合、指令器40の速度指令信号Acは目標回転速度に対応した値となり、PWM信号Wpのオンデューティもほぼ目標回転速度に対応した値となる。
【0021】
以上のように、実施の形態1のモータにおいては、指令器40が位置検出器30の検出パルス信号FGからディスク1及びロータ10の回転速度を検出し、目標回転速度との差に応動した速度指令信号Acを出力する。そして、実施の形態1のモータは、その速度指令信号Acに応動してPWM信号Wpのオンデューティを変更させることにより、ディスク1及びロータ10の速度制御が行われている。
【0022】
通電制御器60は位置検出器30の検出パルス信号FGに応動した上側通電制御信号N1、N2、N3及び下側通電制御信号M1、M2、M3を出力し、電力供給器20の上側パワートランジスタ21、22、23及び下側パワートランジスタ25、26、27の3相コイル11、12、13への通電制御を行う。上側通電制御信号N1、N2、N3にはスイッチング制御器52のPWM信号Wpが論理合成されている。上側通電制御信号N1、N2、N3(PWM信号Wp)により上側パワートランジスタ21、22、23は高周波スイッチング動作(PWM動作)を行い、下側通電制御信号M1、M2、M3により下側パワートランジスタ25、26、27はフルオン動作を行う。
具体的に説明すると、コイル11からコイル12への通電制御がなされている場合、上側パワートランジスタ21が上側通電制御信号N1(PWM信号Wp)により高周波スイッチング動作(PWM動作)を行い、下側パワートランジスタ26が下側通電制御信号M2によりフルオン動作を行っている。上側パワートランジスタ21がPWM信号Wpによりオン動作している時、上側パワートランジスタ21は直流電源5の正極側端子からコイル11に正極側電流を供給し、下側パワートランジスタ26は直流電源5の負極側端子からコイル12に負極側電流を供給している。次に、PWM信号Wpがオフするとコイル11に流れていた正極側電流はコイル12のインダクタンス作用により流れ続けようとするため、同一相の下側パワーダイオード25dによりコイル11に正極側電流を供給する。実施の形態1のモータにおいては、以上のようにPWMセンサレス駆動が行われる。また、先にも説明したように通電制御器60は位置検出器30の検出パルス信号FGに応動した検出ウィンドウ信号WIN1〜6を出力している。
【0023】
一般に、従来のモータのセンサレス駆動においては、ディスク1及びロータ10の回転位置を検出する必要があるため、未通電相区間、つまり、電力供給器20における同相の上下パワートランジスタがオフ状態の区間を設け、その区間で該当するコイルに誘起される逆起電圧のゼロクロス検出を行って、モータのセンサレス駆動が行われていた。しかし、起動初期はロータ位置が不定であり、回転速度が遅いため、3相コイル11、12、13に誘起される逆起電圧は小さく、位置検出が困難であった。そのため、従来のモータにおけるセンサレス駆動では起動失敗を起こすことがあり問題であった。特に、モータをPWM駆動させる場合には、PWM動作による電流変化に伴う誘導電圧が検出相の端子電圧に重畳されており、従来のモータにおいてPWMセンサレス起動させる場合、誘導電圧による影響で位置を誤検出し、起動失敗を起こすことがあった。このように、PWM動作には電流変化に伴う誘導電圧が発生しており、特に起動初期においては誘導電圧が位置検出に対して大きな影響を与えていた。
【0024】
以下、モータのPWMセンサレス起動において生じる誘導電圧について説明する。ここで誘導電圧とはPWM動作による電流変化に伴い発生する電圧である。この誘導電圧について実施の形態1のモータを用いて具体的に説明すると、図1の電力供給器20において、上側パワートランジスタ21をPWM動作させ、下側パワートランジスタ27をフルオン動作させる。この動作状態はコイル11からコイル13への通電状態であり、検出相はコイル12となる。通常、モータが回転していない場合には共通接続された中点電圧Vcと検出相(コイル12)の端子電圧V2は等しくなり、その差電圧は0となるはずである。しかしながら、モータにPWM動作を行わせると、中点電圧Vcに対して検出相の端子電圧V2にはPWM動作特有の現象である誘導電圧が重畳される。誘導電圧はPWM動作による電流変化に伴い発生する電圧であるが、電流変化量が正の場合と負の場合とではその特性は逆極性になる。また、電流変化量に対しても誘導電圧の大きさは変化する。
【0025】
従来のモータにおけるディスク及びロータの起動方法としては、起動開始前に特定相にディスク及びロータを引きつけ、位置固定を行った後に起動させる方法があった。このように初期位置固定を行ってから起動させると安定したセンサレス起動が可能であるが、初期位置固定に要する時間が長くなるため、従来のモータにおいては、起動初期では強制同期駆動を行い、その後センサレス駆動に切り換える起動方法が多く用いられていた。
【0026】
本発明に係る実施の形態1のモータのように電流検出器51により3相コイル11、12、13の駆動電流のピーク値制御を行う構成では、起動開始直後のPWMのオンデューティは大きく、ほぼ100%である。つまり、起動開始直後にはほとんどPWM動作のオン区間で位置検出を行う状態である。この場合、検出相の端子電圧にはPWM動作による正の電流変化に伴う誘導電圧が重畳され、その影響で位置を誤検出し、起動失敗を起こすおそれがあった。
そこで、実施の形態1のモータにおいては、起動開始時以外ではPWM動作のオン区間で位置検出を行う構成とし、起動開始時には位置信号として検出した信号の論理を反転した反転検出信号を用いる構成にした。具体的には、位置検出器30に検出信号切換回路39Aを設け、起動開始時には検出信号切換回路39Aから反転検出信号を出力させ、位置検出器30においてオン区間でのみ位置検出を行う構成とした。これにより、オン区間でのみ位置検出動作を行い、起動開始時に検出信号を論理的に反転して位置信号として用いる構成であるため、擬似的にPWM動作による負の電流変化における位置検出を行うこととなる。したがって、この時の誘導電圧特性は起動失敗を起こしていたPWM動作による正の電流変化に伴う誘導電圧特性に対して逆極性となる。このように構成することにより、実施の形態1のモータでは安定したPWMセンサレス起動が可能となる。さらに、状態判定信号NSに応動して、起動開始後に位置信号を反転検出信号から検出信号に切換えることにより安定したPWMセンサレス動作が可能となる。
【0027】
なお、本発明に係る実施の形態1のモータのPWMセンサレス駆動制御において、オン区間をAとし、オン後の第1の所定時間をTaとすると、オン区間Aは第1の所定時間Taよりも長い時間(A>Ta)であればどのような時間でもよい。実施の形態1のモータの構成においては、その他、本発明の趣旨を変えずに種々の変更が可能であり、そのような構成は本発明に含まれることはいうまでもない。
【0028】
《実施の形態2》
以下、本発明に係る実施の形態2のモータについて説明する。実施の形態2のモータは前述の実施の形態1のモータと実質的に同じ構成を有しており、実施の形態2はモータにおける検出信号切換器の具体的な構成を示している。図7は実施の形態2のモータにおける検出信号切換器の構成を示すブロック図である。実施の形態2の説明において、実施の形態1と同じ機能、構成を有する要素には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0029】
実施の形態2のモータにおける検出信号切換器170について図7を参照して説明する。検出信号切換器170はカウンタ回路171とラッチ回路172とを備えている。カウンタ回路171には位置検出パルス信号FGが入力され、この位置検出パルス信号FGに応動してディスク1及びロータ10の回転速度データが順次出力される。次に、回転速度データの中の所定の回転速度(回転数)を示す回転速度データの出力がラッチ回路172に少なくとも1回入力されたとき、ラッチ回路172は状態判定信号NSを出力するよう構成されている。
検出信号切換器170は、上記のように構成されているため、実施の形態2のモータにおいては、検出信号切換器170の誤動作等による誤った状態での位置信号の切換えを確実に防止でき、安定したPWMセンサレス起動が可能となる。また、実施の形態2のモータにおいては、状態判定信号NSに応動して位置信号を反転検出信号から検出信号に切換えることにより安定したPWMセンサレス動作が可能となる。
なお、実施の形態2のモータにおいて、ディスク1及びロータ10の状態判定は位置検出パルス信号FGを用いて判定を行う構成に限定されず、その他の構成でディスク1及びロータ10の状態判定を行ってもよい。
上記の実施の形態2のモータにおいては、回転速度データの中の所定の回転速度(回転数)を用いてラッチ回路172が状態判定信号NSを出力するよう構成されており、この回転速度はロータの逆起電圧の最大値が相互インダクタンスによる最大発生電圧よりも大きくなる回転数に設定することが効果的である。
【0030】
《実施の形態3》
以下、本発明に係る実施の形態3のモータについて説明する。図8は実施の形態3のモータにおける検出信号切換器の構成を示すブロック図である。実施の形態3のモータは前述の実施の形態1のモータと検出信号切換器70以外の構成が実質的に同じであり、検出信号切換器70の代わりに図8に示した検出信号切換器270が設けられている。したがって、実施の形態3の説明において、実施の形態1と同じ機能、構成を有する要素には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0031】
実施の形態3のモータにおける検出信号切換器270について図8を用いて説明する。
図8に示すように、検出信号切換器270はラッチ回路273を具備している。このラッチ回路273には位置検出器30からの位置検出パルス信号FGが入力され、少なくとも1回の位置検出パルス信号FGが入力されたときに、状態判定信号NSを位置検出器30に出力する構成となっている。
実施の形態3のモータにおいては、検出信号切換器270を用いることにより、安定なPWMセンサレス起動を行った後、ディスク1及びロータ10の回転速度に依存しない状態判定信号NSに応動して位置信号が反転検出信号から検出信号に切換えられる。これにより、実施の形態3のモータは、安定したPWMセンサレス動作を行うことが可能となる。
【0032】
《実施の形態4》
以下、本発明に係る実施の形態4のモータについて説明する。図9は実施の形態4のモータにおける検出信号切換器の構成を示すブロック図である。実施の形態4のモータは前述の実施の形態1のモータと検出信号切換器70以外の構成が実質的に同じであり、検出信号切換器70の代わりに図9に示した検出信号切換器370が設けられている。したがって、実施の形態4の説明において、実施の形態1と同じ機能、構成を有する要素には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0033】
実施の形態4のモータにおける検出信号切換器370について図9を用いて説明する。
図9に示すように、検出信号切換器370はカウンタ回路371と第1のラッチ回路372と第2のラッチ回路373と論理積ゲート回路374とを具備している。カウンタ回路371と第2のラッチ回路373には位置検出パルス信号FGが位置検出器30から入力される。カウンタ回路371が出力する回転速度データの中で、所定の回転速度(回転数)を示す信号が第1のラッチ回路372に少なくとも1回入力されたとき、第1のラッチ回路372は第1の状態判定信号NS1を論理積ゲート回路374に出力する。第2のラッチ回路373は、位置検出器30から少なくとも1回の位置検出パルス信号FGが入力されたとき、第2の状態判定信号NS2を論理積ゲート回路374に出力する。論理積ゲート回路374は、第1の状態判定信号NS1と第2の状態判定信号NS2が入力され、論理積の演算処理を行い、その結果を状態判定信号NSとして出力する。
実施の形態4のモータにおいては、検出信号切換器370の2つのラッチ回路372、373の論理積を用いることにより、安定なPWMセンサレス起動が確実に行われた後、ディスク1及びロータ10の回転速度に依存しない状態判定信号NSに応動して位置信号が反転検出信号から検出信号に切換えられる。これにより、実施の形態4のモータは、安定したPWMセンサレス動作を確実に行うことが可能となる。
【0034】
《実施の形態5》
以下、本発明に係る実施の形態5のモータについて説明する。図10は実施の形態5のモータの構成を示すブロック図である。図11は実施の形態5のモータにおける検出信号切換器の構成を示すブロック図である。実施の形態5のモータは前述の実施の形態1のモータとスイッチング制御器52と検出信号切換器70以外の構成が実質的に同じであり、検出信号切換器70の代わりに図11に示した検出信号切換器70Aが設けられている。また、実施の形態5におけるスイッチング制御器52Aは、図4に示した実施の形態1におけるスイッチング制御器52の構成を有してPWM信号Wpを通電制御器60と検出信号切換器70Aに出力するよう構成されており、検出信号切換器70Aから出力されたPWM動作状態判定信号NSoは位置検出器30に入力されるよう構成されている。実施の形態5の説明において、実施の形態1と同じ機能、構成を有する要素には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0035】
図11に示すように、実施の形態5における検出信号切換器70Aは、カウンタ回路71Aとラッチ回路72Aと高周波スイッチング動作判定回路74Aと論理積ゲート回路75Aとを具備している。カウンタ回路71Aには位置検出器30の位置検出パルス信号FGが入力され、回転速度データを順次出力する。ラッチ回路72Aは回転速度データの中の所定の回転速度を示す信号が少なくとも1回入力されたとき、状態判定信号NSを論理積ゲート回路75Aに出力する。
高周波スイッチング動作判定回路74Aは、少なくとも1回のPWM信号Wpがスイッチング制御器52Aから入力されたとき、PWM動作信号Woを“H”レベルの状態で論理積ゲート回路75Aに出力する。次に、論理積ゲート回路75Aは、状態判定信号NSとPWM動作信号Woが入力されて論理積の演算処理を行い、その演算結果がPWM動作状態判定信号NSoとして出力される。このPWM動作状態判定信号NSoは、検出信号切換器70Aの出力として位置検出器30とスイッチング制御器52Aに入力される。
【0036】
上記のように構成された実施の形態5のモータにおいては、PWMセンサレスの起動時において高周波スイッチング動作が実施されていない場合には、PWM動作特有の現象である誘導電圧が発生しないため、位置検出器30の中でPWM動作特有の現象である誘導電圧を考慮した動作は停止される。一方、PWMセンサレスの起動時において高周波スイッチング動作が実施されている場合には、位置検出器30の中でPWM動作特有の現象である誘導電圧を考慮した動作が実施される。したがって、実施の形態5のモータにおいては、高周波スイッチング動作の実施に無関係に安定したセンサレス起動を行うことが可能となる。
【0037】
《実施の形態6》
以下、本発明に係る実施の形態6のモータについて説明する。図12は実施の形態6のモータの構成を示すブロック図である。図13は実施の形態6のモータにおける検出信号切換器の構成を示すブロック図である。実施の形態6のモータは前述の実施の形態1のモータとスイッチング制御器52と検出信号切換器70以外の構成が実質的に同じであり、検出信号切換器70の代わりに図13に示した検出信号切換器70Bが設けられている。また、実施の形態6におけるスイッチング制御器52Bは、図4に示した実施の形態1におけるスイッチング制御器52の構成を有してPWM信号Wpを通電制御器60と検出信号切換器70Bに出力するよう構成されている。検出信号切換器70Bから出力された状態判定信号NSは位置検出器30に入力され、検出信号切換器70Bから出力された強制スイッチング信号Wkはスイッチング制御器52BのPWM信号作成回路113(図4参照)に入力されるよう構成されている。実施の形態6の説明において、実施の形態1と同じ機能、構成を有する要素には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0038】
実施の形態6のモータにおける検出信号切換器70Bは、カウンタ回路71Bとラッチ回路72Bと高周波スイッチング動作判定回路74Bと強制高周波スイッチング回路76Bとインバータ回路77Bと論理積ゲート回路78Bとを具備している。カウンタ回路71Bには位置検出器30からの位置検出パルス信号FGが入力され、回転速度データを順次出力する。ラッチ回路72Bは回転速度データの中の所定の回転速度を示す信号が少なくとも1回入力されたとき、状態判定信号NSを出力する。この状態判定信号NSが誘導電圧に影響されない通常のスイッチング動作時の検出信号切換器70Bの出力となる。
【0039】
一方、高周波スイッチング動作判定回路74Bは、第1の所定時間Tsの間に、スイッチング制御器52Bから少なくとも1回のPWM信号Wpが入力されていないとき、高周波スイッチング動作判定回路74BはPWM動作信号Woを“H”レベルに維持して強制高周波スイッチング回路76Bに出力する。次に、第1の所定時間Tsの間に少なくとも1回のPWM信号Wpが入力されたとき、高周波スイッチング動作判定回路74Bは強制高周波スイッチング回路76Bに“L”レベルのPWM動作信号Woを出力する。強制高周波スイッチング回路76Bに“H”レベルのPWM動作信号Woが入力されると、強制高周波スイッチング回路76Bは、強制スイッチング信号Wsとして一定周期Tpで“H”レベルと“L”レベルとを繰り返す信号を論理積ゲート回路78Bに出力する。なお、第1の所定時間Tsを示す信号は、起動開始と同時に判定時間カウンタ回路にてカウントされ、その出力信号(Ts)が高周波スイッチング動作判定回路74Bに入力されるよう構成されている。
【0040】
論理積ゲート回路78Bには、状態判定信号NSがインバータ回路77Bにより変換された信号と強制スイッチング信号Wsとが入力される。論理積ゲート回路78Bは、第2の所定時間Tkの間、強制スイッチング信号Wsを強制スイッチング信号Wkとして出力する。ラッチ回路72Bから出力される状態判定信号NSは、第2の所定時間Tkの間、Lレベルであるため、強制スイッチング信号Wkが検出信号切換器70Bの出力となる。なお、第2の所定時間Tkとは、第1の所定時間Ts経過後、若しくは少なくとも1回のPWM信号Wpが入力された後から、状態判定信号NSが“H”レベルになるまでの期間をいう。
【0041】
以下、実施の形態6のモータにおける具体的な動作を図14を用いて説明する。実施の形態6のモータでは、スイッチング動作を示すPWM信号Wpが高周波スイッチング動作判定回路74Bに入力されなければ、高周波スイッチング動作判定回路74BはPWM動作信号Woを“L”レベルに維持する。PWM動作信号Woが“L”レベルに維持された状態が第1の所定時間Tsの間継続した場合、強制高周波スイッチング回路76Bから強制スイッチング信号Wsが一定周期Tpを有して“H”レベルと“L”レベルとを繰り返す信号が出力される。この強制スイッチング信号Wsは、PWM動作特有の現象である誘導電圧に影響されない状態と判定されるまで継続して出力される。すなわち、PWM動作特有の現象である誘導電圧に影響されない状態を示す状態判定信号NSが出力されるまでの第2の所定時間Tkの間、強制スイッチング信号Wsは継続して出力される。
【0042】
実施の形態6のモータは、上記のように構成されているため、PWMセンサレスの起動時において高周波スイッチング動作が実施されていない場合には、一定期間強制スイッチング信号Wkにより強制的な高周波スイッチング動作を行い、その高周波スイッチング動作に応じた位置検出動作を実施するよう構成されている。これにより、本発明に係る実施の形態6のモータは、安定したセンサレス起動が可能となる。
【0043】
《実施の形態7》
以下、本発明に係る実施の形態7のモータについて説明する。図15は実施の形態7のモータの構成を示すブロック図である。図16は実施の形態7のモータにおけるスイッチング動作器50Cの構成を示すブロック図である。実施の形態7のモータは前述の実施の形態1におけるスイッチング制御器52と検出信号切換器70以外の構成が実質的に同じであり、スイッチング制御器52の代わりに図16に示したスイッチング制御器52Cが設けられている。また、実施の形態7における検出信号切換器70Cは、状態判定信号NSを位置検出器30とスイッチング制御器52Cのマスク信号作成回路116Cに入力されるよう構成されている。実施の形態7の説明において、実施の形態1と同じ機能、構成を有する要素には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0044】
スイッチング動作器50Cは、電流検出器51とスイッチング制御器52Cで構成される。基本的な構成は実施の形態1のスイッチング動作器50とほぼ同じである。
図16に示すように、スイッチング制御器52Cは比較回路111と基準トリガ発生回路112とPWM信号作成回路113とマスク信号作成回路116Cとを含んで構成されており、スイッチング制御器52Cにおいてマスク信号作成回路116C以外の回路は図4に示したスイッチング制御器52と同じである。マスク信号作成回路116Cには、PWM信号作成回路113からのPWM信号Wpが入力されると共に、検出信号切換器70Cからの状態判定信号NSが入力されている。マスク信号作成回路116Cは、位置検出器30のノイズ除去回路38にマスク信号Wmを出力する。マスク信号Wmが入力された位置検出器30のノイズ除去回路38は、電圧比較信号C1、C2、C3に重畳した高周波スイッチング動作に伴うスイッチングノイズを除去する。マスク信号Wmの“H”レベル区間が高周波スイッチングノイズをマスクする区間であり、マスク信号Wmの“L”レベル区間が位置検出可能な区間となる。
【0045】
以下、実施の形態7のモータにおけるスイッチング動作器50Cの具体的な動作を図17を用いて説明する。
実施の形態7のモータにおいて、図17に示すように、状態判定信号NSが“L”レベルでは、マスク信号WmはPWM信号Wpのオン区間以外を全てマスクし、さらにPWM信号Wpのオン後の第3の所定時間Taをマスクする。状態判定信号NSが“H”レベルでは、PWM信号Wpのオン後の第3の所定時間Taをマスクするとともに、PWM信号Wpのオフ後の第4の所定時間Tbをマスクする。
【0046】
したがって、図17に示すように、ディスク1及びロータ10の回転位置検出可能区間は、状態判定信号NSが“L”レベルでは、例えば、PWM信号Wpのオン区間Aから第3の所定時間Taを除いた区間Xのみとなる。また、状態判定信号NSが“H”レベルでは、例えば、PWM信号Wpのオン区間Aから第3の所定時間Taを除いた区間X、及びPWM信号Wpのオフ区間Bから第4の所定時間Tbを除いた区間Yが、回転位置検出可能区間となる。
以上のように、実施の形態7のモータにおいて、状態判定信号NSに応動して、ディスク1及びロータ10の回転位置検出区間を切換えることにより、状態判定信号NSが“H”レベルとなった後は回転位置検出区間が増すことによる位置誤差の少ないPWMセンサレス動作が可能となる。
【0047】
《実施の形態8》
以下、本発明に係る実施の形態8のモータについて説明する。図18は実施の形態8のモータの構成を示すブロック図である。図19は実施の形態8のモータにおける位置検出器30Aの構成を示すブロック図である。実施の形態8のモータは、前述の実施の形態1における位置検出器30以外の構成が実質的に同じであり、実施の形態8における位置検出器30Aは図19に示す構成を有している。前述の実施の形態1のモータにおいては、3相コイル11、12、13の一端に生じる端子電圧V1、V2、V3とそれぞれの他端が共通接続された中点電圧Vcとを位置検出器30に入力し、位置検出器30においてディスク1及びロータ10の回転位置の検出を行う構成であった。実施の形態8のモータでは、3相コイル11、12、13の各端子電圧V1、V2、V3のみを位置検出器30Aに入力し、位置検出器30Aにおいてディスク1及びロータ10の回転位置の検出を行っている点が実施の形態1の構成と異なる。実施の形態8の説明において、実施の形態1と同じ機能、構成を有する要素には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0048】
図19に示した実施の形態8における位置検出器30Aの具体的な構成について説明する。位置検出器30Aにおいて、3相コイル11、12、13の一端に生じた端子電圧V1、V2、V3は、各入力抵抗31、32、33を介して各電圧比較回路35、36、37の一方の入力端子に入力される。各電圧比較回路35、36、37の他方の入力端子には、3相コイル11、12、13の一端に生じた端子電圧V1、V2、V3から擬似的に作成された疑似中点電圧Vciが入力される。疑似中点電圧Vciは、3相コイル11、12、13の一端に生じる端子電圧V1、V2、V3にそれぞれ抵抗34A、34B、34Cを接続し、抵抗34A、34B、34Cの一端を共通接続することにより作成する。電圧比較回路35、36、37は3相コイル11、12、13の一端に生じる端子電圧V1、V2、V3と疑似中点電圧Vciとの直接比較を行う。電圧比較回路35、36、37以降の回路構成は、前述の実施の形態1の位置検出器30と同じである。
以上のように、本発明に係る実施の形態8のモータにおいては、3相コイル11、12、13の一端に生じた端子電圧V1、V2、V3のみを用いてディスク1及びロータ10の回転位置を検出する構成により、安定したPWMセンサレス動作を行うことが可能となる。
【0049】
実施の形態8のモータにおいては、位置検出器30Aには3相コイル11、12、13の一端に生じる各端子電圧V1、V2、V3が入力され、他方の中点電圧が入力されない構成であるため、前述の実施の形態1のモータと比較して、位置検出器への入力ラインを1つ削減できるという効果を有する。すなわち、実施の形態8においては、3相コイルの中点電圧から位置検出器への配線1本と位置検出器の入力端子1個を削減できる。
なお、実施の形態8のモータにおいては、実施の形態1のモータと同じ動作を行い、起動開始時には検出信号切換回路39Aから反転検出信号を出力し、位置検出器30Aはオン動作中にのみディスク1及びロータ10の回転位置の検出を行う構成である。そのため、実施の形態8のモータは、安定したPWMセンサレス起動が可能となる。
その他、本発明の趣旨を変えずして種々の変更が可能であり、そのように変更した構成は本発明に含まれることはいうまでもない。
【0050】
《実施の形態9》
以下、本発明に係る実施の形態9のディスク装置について説明する。図20は実施の形態9のディスク装置の構成を示すブロック図である。
実施の形態9のディスク装置は、前述の実施の形態1のモータにヘッド2と情報処理器3を設けた構成である。ヘッド2は、回転しているディスク1上の情報信号を再生する信号及びディスク1上へ情報信号を記録する信号を出力する。情報処理器3は、ヘッド2からの出力信号を処理する。なお、実施の形態9におけるモータの各々の構成要素の動作については先に述べた実施の形態1における動作と同様であるため省略する。
【0051】
上記のように構成することにより、実施の形態9のディスク装置においては、モータに搭載されたディスク1においても、余分なセンサを用いずに安定したPWMセンサレス起動及び動作を行うことができる。したがって、実施の形態9のディスク装置は、低コストで、さらに回転速度を迅速に立ち上げることが可能な、安定した回転を行うことができる。実施の形態9のディスク装置は安価な構成で、迅速かつ高精度にディスク1からの信号を得ることができ、起動時間の短縮及び誤検出の防止を図ることができる。
また、実施の形態9の構成によれば、ノートパソコン等において省エネ動作中にディスク1の回転/停止を繰り返すようなディスク装置においては、起動失敗が無く起動時間が短いことによる応答速度の速い動作が可能となる。また、起動時においてもPWM動作を行うことが可能となるため、ディスク装置の起動時における低消費電力化を図ることができる。
【0052】
なお、実施の形態9のディスク装置は実施の形態1で説明したモータを用いた構成であるが、本発明のディスク装置としては前述の実施の形態2〜8において説明したモータを用いてディスク装置を構成してもよく、このように構成することにより本発明のディスク装置は実施の形態2〜8のモータが有する効果を奏するものとなる。
前述の各実施の形態において、ディスク1及びロータ10の状態判定は位置検出パルス信号FGを用いて判定を行う構成で説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、その他の構成によりディスク1及びロータ10の状態判定を行ってもよい。
【0053】
【発明の効果】
以上、実施の形態について詳細に説明したところから明らかなように、本発明は次の効果を有する。
本発明のモータによれば、起動初期状態にオン区間で位置検出を行い、さらに位置信号を論理的に反転した信号を位置検出手段の出力信号として通電制御に用いるので、PWM動作時の誘導電圧に依存する起動不良を防止した安定したPWMセンサレス起動が可能となる。
また、本発明においては、ロータがPWM動作時の誘導電圧に影響を受けない状態においては、位置検出手段の出力信号を切換えるよう構成されているため、安定したPWMセンサレス動作が可能となる。
さらに、本発明のディスク装置によれば、安定したPWMセンサレス起動が可能のモータを搭載しているので、安価な構成で迅速かつ高精度にディスクからの信号を得ることができ、起動時間の短縮及びロータ位置の誤検出の防止が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施の形態1のモータにおける全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1のモータにおける位置検出器30の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1のモータにおける検出信号切換回路39Aの構成を示す回路図である。
【図4】実施の形態1のモータにおけるスイッチング動作器50の構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態1のモータにおける位置検出器30の別の構成を示すブロック図である。
【図6】実施の形態1のモータにおけるスイッチング動作器50の各部の動作を説明するためのタイミング図である。
【図7】本発明に係る実施の形態2のモータにおける検出信号切換器170の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明に係る実施の形態3のモータにおける検出信号切換器270の別の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明に係る実施の形態4のモータにおける検出信号切換器370の別の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明に係る実施の形態5のモータの構成を示すブロック図である。
【図11】実施の形態5のモータにおける検出信号切換器70Aの構成を示すブロック図である。
【図12】本発明に係る実施の形態6のモータの構成を示すブロック図である。
【図13】実施の形態6のモータにおける検出信号切換器70Bの構成を示すブロック図である。
【図14】実施の形態6のモータにおける検出信号切換器70Bの各部の動作を説明するためのタイミング図である。
【図15】本発明に係る実施の形態7のモータの構成を示すブロック図である。
【図16】実施の形態7のモータにおけるスイッチング動作器50Cの構成を示すブロック図である。
【図17】実施の形態7のモータにおけるスイッチング動作器50Cの各部の動作を説明するためのタイミング図である。
【図18】本発明に係る実施の形態8のモータの構成を示すブロック図である。
【図19】実施の形態8のモータにおける位置検出器30Aの構成を示す図である。
【図20】本発明に係る実施の形態9のモータの構成を示すブロック図である。
【図21】従来のモータの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 ディスク
2 ヘッド
3 情報処理器
5 直流電源
10 ロータ
11、12、13 コイル
20 電力供給器
21、22、23 上側パワートランジスタ
25、26、27 下側パワートランジスタ
30 位置検出器
40 指令器
50 スイッチング動作器
51 電流検出器
52 スイッチング制御器
60 通電制御器
70 検出信号切換器
Claims (9)
- ロータと、
複数相のコイルと、
複数個の第1の駆動トランジスタと複数個の第2の駆動トランジスタとを含み、前記複数相のコイルに電力を供給する電力供給手段と、
前記複数相のコイルの端子電圧に応動して前記ロータの回転位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段の出力する位置信号に応動して前記電力供給手段による前記複数相のコイルへの通電を制御する通電制御手段と、
速度指令信号を出力する指令手段と、
前記電力供給手段の前記複数個の第1の駆動パワートランジスタと前記複数個の第2の駆動パワートランジスタの少なくとも1個のパワートランジスタを前記速度指令信号に応動して高周波スイッチング動作させるスイッチング動作手段と、を具備するモータであって、
前記位置検出手段は、前記コイルの未通電相の端子電圧と前記複数相コイル共通電位の中点電圧との比較出力により得られる電圧比較信号に応動して前記ロータの回転位置を検出する検出信号と前記検出信号の論理を反転して生成された反転検出信号とを切換えて出力する位置検出信号切換手段を備え、前記高周波スイッチング動作のオン動作中は前記位置検出信号切換手段の出力信号を前記位置信号として用いることを特徴とするモータ。 - 前記位置検出信号切換手段は、前記位置信号に基づいて得られる前記ロータの回転速度が所定回転数を超えているか否かを判定し、前記所定回転数を超えた場合には状態判定信号を出力する状態判定手段を備え、少なくとも1回の前記状態判定信号の入力により、前記ロータの回転位置を検出する検出信号と前記検出信号の論理を反転して生成された反転検出信号との切換えを行うことを特徴とする請求項1に記載のモータ。
- 前記位置検出信号切換手段は、少なくとも1回の前記位置信号の入力により、前記ロータの回転位置を検出する検出信号と前記検出信号の論理を反転して生成された反転検出信号との切換えを行うことを特徴とする請求項1に記載のモータ。
- 前記位置検出信号切換手段は、少なくとも1回の前記状態判定信号と少なくとも1回の前記位置信号を論理積した信号の入力により、前記ロータの回転位置を検出する検出信号と前記検出信号の論理を反転して生成された反転検出信号との切換えを行うことを特徴とする請求項2に記載のモータ。
- 前記位置検出信号切換手段は、前記高周波スイッチング動作の有無を判定するスイッチング動作判定手段を備え、少なくとも1回の前記高周波スイッチング動作が行われている場合に前記高周波スイッチング動作判定手段から出力されるPWM動作信号と前記状態判定信号との論理積のPWM動作状態判定信号の入力により、前記ロータの回転位置を検出する検出信号と前記検出信号の論理を反転して生成された反転検出信号との切換えを行うことを特徴とする請求項2に記載のモータ。
- 前記速度指令信号に応動した通電開始状態から第1の所定時間内に前記PWM動作信号が出力されない場合に、少なくとも1回の前記高周波スイッチング動作を第2の所定時間内、強制的に行わせる強制高周波スイッチング手段を備え、前記第2の所定時間は前記状態判定信号が出力されるまでとすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のモータ。
- 前記スイッチング動作手段は、前記高周波スイッチング動作のオフからオンへの変化時点を含む第3の所定時間において前記位置信号を出力する前記高周波スイッチング動作のオフ動作中の検出動作を禁止し、前記第3の所定時間以降において前記高周波スイッチング動作のオン動作中の検出動作を実施するオン動作検出手段と、前記高周波スイッチング動作のオンからオフへの変化時点を含む第4の所定時間において前記位置信号を出力する高周波スイッチング動作のオン動作中の検出動作を禁止し、前記第4の所定時間以降において高周波スイッチング動作のオフ動作中の検出動作を実施するオフ動作検出手段と備え、前記オン動作検出手段の出力と前記オフ動作検出手段の出力とを前記状態判定信号に応動して切換えることを特徴とする請求項2に記載のモータ。
- 前記位置検出手段は、前記複数相のコイルの端子電圧と、前記複数相のコイルの中性点電圧または前記複数相のコイルの端子電圧から擬似的に構成した中性点電圧とを直接比較することにより前記ロータの回転位置を検出することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のモータ。
- 少なくとも、ディスクから信号再生を行う、または、ディスクに信号記録を行うヘッド手段と、
少なくとも、前記ヘッド手段の出力信号を処理して再生情報信号を出力する、または、記録情報信号を信号処理して前記ヘッド手段に出力する情報処理手段と、
前記ディスクを直接的に回転駆動させるロータと、
複数相のコイルと、
複数個の第1の駆動トランジスタと複数個の第2の駆動トランジスタとを含み、前記複数相のコイルに電力を供給する電力供給手段と、
前記複数相のコイルの端子電圧に応動して前記ロータの回転位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段の出力する位置信号に応動して前記電力供給手段による前記複数相のコイルへの通電を制御する通電制御手段と、
速度指令信号を出力する指令手段と、
前記電力供給手段の前記複数個の第1の駆動パワートランジスタと前記複数個の第2の駆動パワートランジスタの少なくとも1個のパワートランジスタを前記速度指令信号に応動して高周波スイッチング動作させるスイッチング動作手段と、
を具備するディスク装置であって、
前記位置検出手段は、前記コイルの未通電相の端子電圧と前記複数相コイル共通電位の中点電圧との比較出力により得られる電圧比較信号に応動して前記ロータの回転位置を検出する検出信号と前記検出信号の論理を反転して生成された反転検出信号とを切換えて出力する位置検出信号切換手段を備え、前記高周波スイッチング動作のオン動作中は前記位置検出信号切換手段の出力信号を前記位置信号として用いることを特徴とするディスク装置。
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