JP3998845B2 - カルボン酸の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は各種化学製品の中間体などとして有用なカルボン酸の製造法に関する。より詳細には、1,2−ジオール(1,2−グリコール)の酸化開裂によりカルボン酸を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
1,2−ジオールの酸化開裂により対応するカルボン酸を生成させる方法として、過マンガン酸塩や重クロム酸塩を用いる方法が知られている。しかし、この方法は、金属化合物を多量に必要とするため、後処理が煩雑となるだけでなく、資源及び環境上の観点からも好ましくない。
【0003】
一方、金属化合物を多量に用いることなく基質を酸化する方法として、酸素を酸化剤として利用する方法が広く行われている。しかし、1,2−ジオールを酸素により酸化開裂させて対応するカルボン酸を効率よく得る方法は知られていない。
【0004】
なお、特開平8−38909号公報には、特定のイミド化合物を触媒として基質を酸素で酸化する方法が開示されているが、基質として1,2−ジオールを用いた場合に酸化開裂して対応するカルボン酸が生成することは記載されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、酸素により1,2−ジオールを酸化開裂させて対応するカルボン酸を効率よく得る方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定構造のイミド化合物を触媒として用いると、1,2−ジオールから対応するカルボン酸が効率よく生成することを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【化3】
(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1及びR2は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示す。前記R1、R2、又はR1及びR2が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい)で表されるイミド化合物の存在下、3価のコバルト化合物を助触媒として用い、下記式(2)
【化4】
(式中、R a 、R b は、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又は複素環式基を示す。但し、R a 、R b のうち一方は水素原子である)
で表される1,2−ジオールを酸素と反応させて、ヒドロキシル基が結合している2つの炭素原子間を酸化的に開裂させ、対応するカルボン酸を生成させるカルボン酸の製造法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
[1,2−ジオール]
反応成分(基質)として用いる1,2−ジオール(1,2−グリコール)は前記式(2)で表される化合物である。
【0009】
前記式(2)中、Ra、Rbにおける炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらの結合した基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10)程度のアルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10)程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10)程度のアルキニル基などが挙げられる。
【0010】
脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0011】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。
【0012】
好ましい炭化水素基には、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-15シクロアルキル基、C6-10芳香族炭化水素基、C3-15シクロアルキル−C1-4アルキル基、C7-14アラルキル基等が含まれる。
【0013】
上記炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、複素環式基などを有していてもよい。
【0014】
Ra、Rbにおける複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、イソオキサゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリンなどの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン、イソクロマンなどの縮合環など)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−チオピランなどの6員環、ベンゾチオフェンなどの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾールなどの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジンなどの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリンなどの縮合環など)などが挙げられる。上記複素環式基には、前記炭化水素基が有していてもよい置換基のほか、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1-4アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)などの置換基を有していてもよい。
【0016】
好ましいRa、Rbには、水素原子、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-15シクロアルキル基、C6-10芳香族炭化水素基、C3-12シクロアルキル−C1-4アルキル基、C7-14アラルキル基などが含まれる。
【0017】
式(2)で表される1,2−ジオールの代表的な例として、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,2−デカンジオール、1−フェニル−1,2−エタンジオール、3−フェニル−1,2−プロパンジオール、1−(2−ピリジル)−1,2−エタンジオール、1−シクロヘキシル−1,2−エタンジオール、多価アルコール(例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなどのアルジトール類など、又はそれらの誘導体)などの鎖状1,2−ジオールが挙げられる。
【0018】
[イミド化合物]
本発明では、触媒として前記式(1)で表されるイミド化合物を用いる。式(1)において、置換基R1及びR2のうちハロゲン原子には、ヨウ素、臭素、塩素およびフッ素が含まれる。アルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル基などの炭素数1〜10程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が含まれる。好ましいアルキル基としては、例えば、炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルキル基が挙げられる。
【0019】
アリール基には、フェニル、ナフチル基などが含まれ、シクロアルキル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが含まれる。アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜10程度、好ましくは炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基が含まれる。
【0020】
アルコキシカルボニル基には、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル基などのアルコキシ部分の炭素数が1〜10程度のアルコキシカルボニル基が含まれる。好ましいアルコキシカルボニル基にはアルコキシ部分の炭素数が1〜6程度、特に1〜4程度の低級アルコキシカルボニル基が含まれる。
【0021】
アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6程度のアシル基が例示できる。
【0022】
前記置換基R1及びR2は、同一又は異なっていてもよい。また、前記式(1)において、R1及びR2は互いに結合して、二重結合、または芳香族性又は非芳香属性の環を形成してもよい。好ましい芳香族性又は非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜10員環程度であり、複素環又は縮合複素環であってもよいが、炭化水素環である場合が多い。このような環には、例えば、非芳香族性脂環式環(シクロヘキサン環などの置換基を有していてもよいシクロアルカン環、シクロヘキセン環などの置換基を有していてもよいシクロアルケン環など)、非芳香族性橋かけ環(5−ノルボルネン環などの置換基を有していてもよい橋かけ式炭化水素環など)、ベンゼン環、ナフタレン環などの置換基を有していてもよい芳香族環(縮合環を含む)が含まれる。前記環は、芳香族性環で構成される場合が多い。前記環は、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。
【0023】
前記一般式(1)において、Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示し、窒素原子NとXとの結合は単結合又は二重結合である。
【0024】
前記R1、R2、又はR1及びR2が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい。例えば、R1又はR2が炭素数2以上のアルキル基である場合、このアルキル基を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。また、R1及びR2が互いに結合して二重結合を形成する場合、該二重結合を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。さらに、R1及びR2が互いに結合して芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成する場合、該環を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。
【0025】
好ましいイミド化合物には、下記式で表される化合物が含まれる。
【化5】
(式中、R3〜R6は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子を示す。R3〜R6は、隣接する基同士が互いに結合して芳香族性又は非芳香族性の環を形成していてもよい。式(1f)中、Aはメチレン基又は酸素原子を示す。R1、R2は前記に同じ。式(1c)のベンゼン環には、式(1c)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個結合していてもよい)
置換基R3〜R6において、アルキル基には、前記例示のアルキル基と同様のアルキル基、特に炭素数1〜6程度のアルキル基が含まれ、ハロアルキル基には、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜4程度のハロアルキル基、アルコキシ基には、前記と同様のアルコキシ基、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基、アルコキシカルボニル基には、前記と同様のアルコキシカルボニル基、特にアルコキシ部分の炭素数が1〜4程度の低級アルコキシカルボニル基が含まれる。また、アシル基としては、前記と同様のアシル基、特に炭素数1〜6程度のアシル基が例示され、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素原子が例示できる。置換基R3〜R6は、通常、水素原子、炭素数1〜4程度の低級アルキル基、カルボキシル基、ニトロ基、ハロゲン原子である場合が多い。R3〜R6が互いに結合して形成する環としては、前記R1及びR2が互いに結合して形成する環と同様であり、特に芳香族性又は非芳香族性の5〜12員環が好ましい。
【0026】
好ましいイミド化合物の代表的な例として、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸イミドなどが挙げられる。
【0027】
式(1)で表されるイミド化合物は、慣用のイミド化反応、例えば、対応する酸無水物とヒドロキシルアミンNH2OHとを反応させ、酸無水物基の開環及び閉環を経てイミド化する方法により調製できる。
【0028】
前記酸無水物には、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸などの飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸1,2−無水物などの飽和又は不飽和非芳香族性環状多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物)、無水ヘット酸、無水ハイミック酸などの橋かけ環式多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物)、無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ニトロフタル酸、無水トリメット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物が含まれる。
【0029】
特に好ましいイミド化合物は、脂環式多価カルボン酸無水物又は芳香族多価カルボン酸無水物、なかでも芳香族多価カルボン酸無水物から誘導されるN−ヒドロキシイミド化合物、例えば、N−ヒドロキシフタル酸イミド等が含まれる。
【0030】
式(1)で表されるイミド化合物は一種又は二種以上使用できる。前記イミド化合物は、担体に担持した形態で用いてもよい。担体としては、活性炭、ゼオライト、シリカ、シリカ−アルミナ、ベントナイトなどの多孔質担体を用いる場合が多い。
【0031】
前記イミド化合物の使用量は、広い範囲で選択でき、例えば、1,2−ジオール1モルに対して0.0001〜1モル、好ましくは0.001〜0.5モル、さらに好ましくは0.01〜0.4モル程度であり、0.05〜0.35モル程度である場合が多い。
【0032】
[助触媒]
本発明の方法では、反応速度を上げるため、助触媒として金属化合物を用いる。金属化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。なお、本発明では、金属化合物として3価のコバルト化合物を用いることが必須である。
【0033】
金属化合物を構成する金属元素としては、特に限定されず、周期表1〜15族の金属元素の何れであってもよい。なお、本明細書では、ホウ素Bも金属元素に含まれるものとする。例えば、前記金属元素として、周期表1族元素(Li、Na、Kなど)、2族元素(Mg、Ca、Sr、Baなど)、3族元素(Sc、ランタノイド元素、アクチノイド元素など)、4族元素(Ti、Zr、Hfなど)、5族元素(Vなど)、6族元素(Cr、Mo、Wなど)、7族元素(Mnなど)、8族元素(Fe、Ruなど)、9族元素(Co、Rhなど)、10族元素(Ni、Pd、Ptなど)、11族元素(Cuなど)、12族元素(Znなど)、13族元素(B、Al、Inなど)、14族元素(Sn、Pbなど)、15族元素(Sb、Biなど)などが挙げられる。好ましい金属元素には、遷移金属元素(周期表3〜12族元素)が含まれる。なかでも、周期表5〜11族元素、特に、6族、7族及び9族元素が好ましく、とりわけ、Mo、Co、Mnなど、特にCoが好ましい。金属元素の原子価は特に制限されないが、通常0〜6価程度、好ましくは2〜3価、さらに好ましくは3価である。
【0034】
金属化合物としては、前記金属元素の単体、水酸化物、酸化物(複合酸化物を含む)、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、オキソ酸塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩など)、オキソ酸、イソポリ酸、ヘテロポリ酸などの無機化合物;有機酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、青酸塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩など)、錯体などの有機化合物が挙げられる。前記錯体を構成する配位子としては、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど)、アシル(アセチル、プロピオニルなど)、アルコキシカルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、ハロゲン原子(塩素、臭素など)、CO、CN、酸素原子、H2O(アコ)、ホスフィン(トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンなど)のリン化合物、NH3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、NO3(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合物などが挙げられる。金属化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0035】
金属化合物の使用量は、例えば、1,2−ジオール1モルに対して、0.0001〜0.7モル、好ましくは0.001〜0.5モル、さらに好ましくは0.0015〜0.1モル程度であり、0.0015〜0.05モル程度である場合が多い。
【0036】
[酸素]
酸素は分子状の酸素及び発生機の酸素の何れであってもよい。分子状酸素としては、純粋な酸素を用いてもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスで希釈した酸素を使用してもよい。操作性及び安全性のみならず経済性などの点から、空気を使用するのが好ましい。
【0037】
酸素の使用量は、基質の種類に応じて適宜選択できるが、通常、基質1モルに対して、0.5モル以上(例えば、1モル以上)、好ましくは1〜100モル、さらに好ましくは2〜50モル程度である。基質に対して過剰モルの酸素を使用する場合が多い。
【0038】
[反応]
反応は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、例えば、酢酸、プロピオン酸などの有機酸;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロベンゼン、ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ化合物;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;これらの混合溶媒など挙げられる。溶媒としては、酢酸などの有機酸類、アセトニトリルやベンゾニトリルなどのニトリル類、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、酢酸エチルなどのエステル類などを用いる場合が多い。
【0039】
反応温度は、1,2−ジオールの種類などに応じて適当に選択でき、例えば、0〜200℃、好ましくは5〜150℃、さらに好ましくは10〜120℃程度であり、通常、10〜100℃程度で反応する場合が多い。反応は、常圧または加圧下で行うことができ、加圧下で反応させる場合には、通常、1〜100atm(例えば、1.5〜80atm)、好ましくは2〜70atm程度である。反応時間は、反応温度及び圧力に応じて、例えば30分〜48時間、好ましくは5〜35時間、さらに好ましくは8〜30時間程度の範囲から適当に選択できる。反応は、酸素の存在下又は酸素の流通下、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。
【0040】
本発明の方法では、反応により、1,2−ジオールにおいてヒドロキシル基が結合している2つの炭素原子間が酸化的に開裂し、対応するカルボン酸が生成する。例えば、前記式(2)で表される1,2−ジオールを反応に付すと、下記式(3)及び/又は式(4)
RaCOOH (3)
RbCOOH (4)
(式中、Ra、Rbは前記に同じ)
で表されるカルボン酸が生成する。なお、分子内にホルミル基を有する化合物(アルデヒド)では、前記ホルミル基はカルボキシル基に変換される場合が多い。
【0041】
反応終了後、反応生成物は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により、容易に分離精製できる。
【0042】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、特定の触媒を用いるため、酸素により1,2−ジオールから対応するカルボン酸を効率よく得ることができる。
【0043】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0044】
実施例1
1,2−オクタンジオール2ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.2ミリモル、コバルト(III)アセチルアセトナト[Co(acac)3]0.02ミリモル、アセトニトリル3mlの混合物を、酸素雰囲気下(1気圧)、70℃で13時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、ヘプタン酸が収率71%で生成していた。1,2−オクタンジオールの転化率は83%であった。
【0045】
実施例2
1−フェニル−1,2−エタンジオール2ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.4ミリモル、コバルト(III)アセチルアセトナト[Co(acac)3]0.02ミリモル、アセトニトリル3mlの混合物を、酸素雰囲気下(1気圧)、20℃で20時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、安息香酸が収率86%で生成していた。1−フェニル−1,2−エタンジオールの転化率は96%であった。
【0046】
実施例3
1,2−ブタンジオール2ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.2ミリモル、コバルト(III)アセチルアセトナト[Co(acac)3]0.02ミリモル、アセトニトリル3mlの混合物を、酸素雰囲気下(1気圧)、70℃で13時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、プロピオン酸が収率70%で生成していた。1,2−ブタンジオールの転化率は80%であった。
Claims (1)
- 下記式(1)
で表される1,2−ジオールを酸素と反応させて、ヒドロキシル基が結合している2つの炭素原子間を酸化的に開裂させ、対応するカルボン酸を生成させるカルボン酸の製造法。
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JP02173699A JP3998845B2 (ja) | 1999-01-29 | 1999-01-29 | カルボン酸の製造法 |
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Publications (2)
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