[酸化触媒系]
本発明の酸化触媒系は、環状イミノ単位を有する触媒(イミド化合物)と遷移金属助触媒とを含有し、基質を酸素酸化(分子状酸素により酸素酸化)するための触媒系であって、前記遷移金属助触媒として、周期表9族金属成分、周期表7族金属成分、および周期表4族金属成分を用いる。遷移金属助触媒において、周期表4族金属成分1モルに対する周期表9族金属成分及び周期表7族金属成分の割合は、それぞれ、1モル以下である。
(環状イミノ単位を有する触媒)
イミド化合物は、環の構成要素として前記式(1)で表される骨格(骨格(1))を有する環状イミノ単位を有する化合物である。イミド化合物は、分子中に、少なくとも1つの骨格(1)を有していればよく、複数の骨格(1)を有していてもよい。また、環状イミノ単位は、構成要素として複数の骨格(1)で1つの環を構成していてもよい。環状イミノ単位は、骨格(1)が有する窒素原子以外に、1つ又は複数のヘテロ原子(例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子など(特に窒素原子))を環の構成原子として有していてもよい。
骨格(1)[又は前記触媒(イミド化合物)の環状イミノ単位]において、Xは酸素原子、−OH基又は保護基Rで保護されたヒドロキシル基を示す。保護基Rについては、前記特許文献2,特許文献3,特許文献4などを参照できる。保護基Rとしては、例えば、置換基を有していてもよい炭化水素基[アルキル基、アルケニル基(アリル基など)、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基など];ヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基、例えば、置換C1−3アルキル基(ハロC1−2アルキル基(2,2,2−トリクロロエチル基など)、C1−4アルコキシC1−2アルキル基(メトキシメチル基、エトキシメチル基、イソプロポキシメチル基、2−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−イソプロポキシエチル基など)、これらのC1−4アルコキシC1−2アルキル基に対応するC1−4アルキルチオC1−2アルキル基、ハロC1−4アルコキシC1−2アルキル基(2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、ビス(2−クロロエトキシ)メチル基など)、C1−4アルキルC1−4アルコキシC1−2アルキル基(1−メチル−1−メトキシエチル基など)、C1−4アルコキシC1−3アルコキシC1−2アルキル基(2−メトキシエトキシメチル基など)、C1−4アルキルシリルC1−4アルコキシC1−2アルキル基(2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基など)、アラルキルオキシC1−2アルキル基(ベンジルオキシメチル基など)など)、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択された5又は6員複素環基(テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基などの飽和複素環基など)、置換基を有していてもよい1−ヒドロキシ−C1−20アルキル基(1−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシヘキシル基などの1−ヒドロキシ−C1−10アルキル基、1−ヒドロキシ−1−フェニルメチル基など)など;アシル基(飽和又は不飽和アルキルカルボニル基、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル基などのC1−20アルキル−カルボニル基など;アセトアセチル基;脂環式アシル基、例えば、シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボニル基などのC4−10シクロアルキル−カルボニル基など;ベンゾイル、ナフトイル基などのC6−12アリール−カルボニル基など)、アルキル基がハロゲン化されていてもよいスルホニル基(メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基などのアルキルスルホニル基、ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル、ナフタレンスルホニル基などのアリールスルホニル基など);アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基など);置換又は無置換カルバモイル基(カルバモイル基、メチルカルバモイル基などのC1−4アルキルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基など);無機酸(硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸など)からOH基を除した基;ジアルキルホスフィノチオイル基、ジアリールホスフィノチオイル基;置換シリル基(例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリベンジルシリル、トリフェニルシリル基など)などが挙げられる。
好ましいRとしては、アルキル基(メチル基など)以外の保護基、例えば、水素原子;ヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基;加水分解により脱離可能な加水分解性保護基、例えば、カルボン酸、スルホン酸、炭酸、カルバミン酸、硫酸、リン酸、ホウ酸などの酸からOH基を除した基(アシル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基など)などが例示できる。
前記式において、窒素原子「N」と「X」とを結ぶ実線と破線との二重線は単結合又は二重結合を示す。
環状イミノ単位を有する触媒(イミド化合物)としては、例えば、骨格(1)を環の構成要素として含む5員又は6員の環状ユニットを有する化合物などが例示できる。このような化合物は、公知であり、前記特許文献2,特許文献3,特許文献4などを参照できる。5員の環状ユニットを有する化合物としては、例えば、下記式(2)で表される化合物などが例示でき、前記6員の環状ユニットを有する化合物としては、例えば、下記式(3)又は(4)で表される化合物などが例示できる。
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を示し、R1とR2とは互いに結合して芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよく、R2とR3とは互いに結合して芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。これらの環は、上記環状イミノ単位をさらに1又は2個有していてもよい。実線と破線との二重線は単結合又は二重結合を示す。Xは前記に同じ。)
置換基R1、R2及びR3で表されるハロゲン原子には、ヨウ素、臭素、塩素およびフッ素原子が含まれる。アルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、デシル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−20アルキル基(特にC1−16アルキル基)が含まれる。シクロアルキル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル基などのC3−10シクロアルキル基が含まれる。アリール基には、フェニル、ナフチル基などが含まれる。
アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、テトラデシルオキシ、オクタデシルオキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−20アルコキシ基(特に、C1−16アルコキシ基)が含まれる。置換オキシカルボニル基には、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、デシルオキシカルボニル基などのC1−20アルコキシ−カルボニル基;シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル基などのC3−10シクロアルキルオキシ−カルボニル基;フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル基などのC6−12アリールオキシ−カルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基などのC6−12アリールC1−4アルキルオキシ−カルボニル基などが挙げられる。アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル基などのC1−20アルキル−カルボニル基など;アセトアセチル基;シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル基などのシクロアルキルカルボニル基(C3−10シクロアルキル−カルボニル基など);ベンゾイル、ナフトイル基などの芳香族アシル基などが例示できる。アシルオキシ基としては、前記アシル基に対応するアシルオキシ基、例えば、C1−20アルキル−カルボニルオキシ基;アセトアセチルオキシ基;シクロアルキルカルボニルオキシ基;アリールカルボニルオキシ基などが例示できる。
前記置換基R1、R2及びR3は、同一又は異なっていてもよい。また、前記式(2)〜(4)において、R1とR2とを結ぶ破線又はR2とR3とを結ぶ破線は、それぞれ、R1及びR2、又はR2及びR3が、互いに結合して、芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよいことを示す。なお、R1及びR2が互いに結合して形成される環と、R2及びR3が互いに結合して形成される環とは、一体となって、多環式の芳香族性又は非芳香族性の縮合環を形成していてもよい。
R1とR2とが互いに結合して形成される芳香族性又は非芳香族性環、及びR2とR3とが互いに結合して形成される芳香族性又は非芳香族性環は、例えば、5〜16員環、好ましくは6〜14員環、さらに好ましくは6〜12員環(例えば、6〜10員環)程度であってもよい。また、前記芳香族性又は非芳香族性環は、複素環、縮合複素環であってもよいが、炭化水素環又は炭化水素環がさらに1又は2個の環状イミノ単位を有する環である場合が多い。このような炭化水素環には、例えば、非芳香族性脂環式環(シクロヘキサン環などのC3−10シクロアルカン環、シクロヘキセン環などのC3−10シクロアルケン環など;非芳香族性橋かけ環(5−ノルボルネン環などの二環式乃至四環式橋かけ式炭化水素環など)、芳香族環(ベンゼン環、ナフタレン環などのC6−12アレーン環、縮合環など)が含まれる。これらの環は置換基(アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子など)を有していてもよい。前記環は、芳香族環で構成される場合が多い。
好ましい触媒(イミド化合物)には、下記式(1a)〜(1d)で表される化合物及び前記式(4)で表される化合物が含まれる。
[式中、−A1−は、単結合又は下記式(A)
で表される基を示す。R4〜R16は、同一又は異なって、水素原子、前記例示のアルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、前記例示のアルコキシ基、カルボキシル基、前記例示の置換オキシカルボニル基、前記例示のアシル基、前記例示のアシルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、前記例示のハロゲン原子を示す。R6〜R12は、隣接する基同士が互いに結合して、前記と同様の芳香族性又は非芳香族性の環を形成していてもよく、下記式(1e)
(式中、−A3−及び−A4−は単結合又は前記式(A)で表される基を示す。ただし、−A3−が単結合のとき、−A4−は単結合又は前記式(A)で表される基であり、−A3−が前記式(A)で表される基であるとき、−A4−は単結合である)で表される環状イミノ単位を形成してもよい。また、R6〜R12のうち隣接する基同士が互いに結合して形成される芳香族性又は非芳香族性の環が、さらに式(1e)で表される環状イミノ単位を1又は2個有していてもよい。式(1d)中、A2はメチレン基又は酸素原子を示す。実線と破線との二重線は、単結合又は二重結合を示す。]
なお、複数の環状イミノ単位を有するイミド化合物としては、例えば、下記式で表される化合物などが例示できる。
(式中、R17〜R20は、同一又は異なって、水素原子、前記例示のアルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、前記例示のアルコキシ基、カルボキシル基、前記例示の置換オキシカルボニル基、前記例示のアシル基、前記例示のアシルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、前記例示のハロゲン原子を示す。−A1−、A2、−A3−、−A4−、R6、R8、R9、R13〜R16及びXは前記に同じ。R6、R7〜R10、及びR17〜R20のうち隣接する基同士は互いに結合して、前記と同様の芳香族性又は非芳香族性の環を形成していてもよい。実線と破線との二重線は、単結合又は二重結合を示す。)
置換基R4〜R20において、ハロアルキル基には、トリフルオロメチル基などのハロC1−20アルキル基が含まれる。置換基R4〜R20は、通常、水素原子、アルキル基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ニトロ基、ハロゲン原子である場合が多い。
好ましいイミド化合物としては、例えば、前記式においてXがOH基である化合物、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド又はN−ヒドロキシコハク酸イミドのα,β位置にアシルオキシ基(アセトキシ、プロピオニルオキシ、バレリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ラウロイルオキシ基など)やアリールカルボニルオキシ基(ベンゾイルオキシ基など)が置換した化合物、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド又はN−ヒドロキシフタル酸イミドの4位及び/又は5位にアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル基など)やアリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基など)が置換した化合物、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸イミド(例えば、N,N′−ジヒドロキシナフタレン−1,8,4,5−テトラカルボン酸イミドなど)、1,3,5−トリヒドロキシイソシアヌル酸など;式(1)においてXがOR基(Rはアセチル基などのアシル基を示す)である化合物、例えば、前記例示のN−ヒドロキシ骨格を有する化合物(式(1)においてXがOH基である化合物)に対応するN−アシル骨格を有する化合物(例えば、N−アセトキシコハク酸イミド、N−アセトキシマレイン酸イミド、N−アセトキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジアセトキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミド、N−アセトキシフタル酸イミド、N−アセトキシテトラブロモフタル酸イミド、N−アセトキシテトラクロロフタル酸イミド、N−アセトキシヘット酸イミド、N−アセトキシハイミック酸イミド、N−アセトキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジアセトキシピロメリット酸イミド、N,N′−ジアセトキシナフタレンテトラカルボン酸イミド(例えば、N,N′−ジアセトキシナフタレン−1,8,4,5−テトラカルボン酸イミドなど)、N−バレリルオキシフタル酸イミド、N−ラウロイルオキシフタル酸イミドなど);前記例示のN−ヒドロキシ骨格を有する化合物(式(1)においてXがOH基である化合物)に対応し、かつ式(1)においてXがOR基(Rはヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール結合を形成可能な基を示す)である化合物、例えば、N−メトキシメチルオキシフタル酸イミド、N−(2−メトキシエトキシメチルオキシ)フタル酸イミド、N−テトラヒドロピラニルオキシフタル酸イミドなど;式(1)においてXがOR基(Rはスルホニル基を示す)である化合物、例えば、N−メタンスルホニルオキシフタル酸イミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)フタル酸イミドなど;式(1)においてXがOR基(Rは無機酸からOH基を除した基を示す)である化合物、例えば、N−ヒドロキシフタル酸イミドの硫酸エステル、硝酸エステル、リン酸エステル又はホウ酸エステルなどが挙げられる。
環状イミノ単位を有する触媒(イミド化合物)の製造方法は、前記特許文献2,特許文献3,特許文献4などに記載されており、これらの文献に記載の方法に準じて製造できる。なお、前記触媒に対応する酸無水物には、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸などの飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物;テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸1,2−無水物、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物などの飽和又は不飽和非芳香族性環状多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物);無水ヘット酸、無水ハイミック酸などの橋かけ環式多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物);無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ニトロフタル酸、ヘット酸、無水ハイミック酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水メリット酸、1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3;6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物などが含まれる。
本発明において、好ましい触媒(環状イミノ単位を有する触媒又はN−ヒドロキシ骨格を有する化合物)は、脂環式又は芳香族化合物である。特に、複数の環状イミノ単位を有する化合物、例えば、テトラカルボン酸無水物に対応し、かつヒドロキシル基が保護されていてもよいN−ヒドロキシ環状イミノ化合物(N−ヒドロキシ環状イミノ化合物又はヒドロキシル基が保護基で保護されたN−ヒドロキシ環状イミノ化合物)である。
さらに、環状イミノ単位を有する触媒(イミド化合物)は、基質としての芳香族化合物のアルキル基の数(置換数)と同じ数の遊離カルボキシル基を有する酸無水物から誘導された化合物であるのが好ましい。より詳細には、環状イミノ単位を有する触媒(イミド化合物)は、当該触媒に対応する遊離のポリカルボン酸(又は酸無水物)の形態で、基質としての芳香族化合物のアルキル基の数(置換数)と同じ数の遊離カルボキシル基(又は酸無水物基)を有するのが好ましい。すなわち、環状イミノ単位を有する触媒(イミド化合物)は、当該イミド化合物に対応する同種の酸無水物から誘導された化合物であるのが好ましい。さらに、触媒は、少なくとも1つの環状イミノ単位(又はイミド環)と1又は複数の遊離のカルボキシル基を有する化合物、特に複数の環状イミノ単位(又はイミド環)を有する化合物が好ましい。
好ましい触媒(イミド化合物)は、トリメリット酸又はその酸無水物から誘導される化合物(N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N−アセトキシトリメリット酸イミドなど)、シクロヘキサンテトラカルボン酸又はその酸無水物から誘導される化合物(N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミド、N,N′−ジアセトキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミドなど)、ピロメリット酸又はその酸無水物から誘導される化合物(N,N′−ジヒドロキシピロメリットイミド、N,N′−ジアセトキシピロメリットイミドなど)、ナフタレンテトラカルボン酸(1,8,4,5−テトラカルボキシナフタレンなど)又はその酸無水物から誘導される化合物(N,N′−ジヒドロキシナフタレン−1,8,4,5−テトラカルボン酸イミドなどのN,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸イミド、N,N′−ジアセトキシナフタレン−1,8,4,5−テトラカルボン酸イミドなどのN,N′−ジアセトキシナフタレンテトラカルボン酸イミドなど)などが例示できる。
さらに、触媒(イミド化合物)には、連結基又は連結骨格(例えば、ビフェニル単位、ビスアリール単位など)を介して前記式(1)で表される骨格を有する環状化合物も含まれる。このような触媒(イミド化合物)としては、テトラカルボキシビフェニル類又はその酸無水物から誘導される化合物、例えば、N,N′−ジヒドロキシビフェニルテトラカルボン酸イミド、N,N′−ジアセトキシビフェニルテトラカルボン酸イミドなどの他、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸又はその酸無水物から誘導される化合物(N,N′−ジヒドロキシビフェニルエーテルテトラカルボン酸イミド、N,N′−ジアセトキシビフェニルエーテルテトラカルボン酸イミドなど)、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸又はその酸無水物から誘導される化合物(N,N′−ジヒドロキシビフェニルスルホンテトラカルボン酸イミド、N,N′−ジアセトキシビフェニルスルホンテトラカルボン酸イミドなど)、ビフェニルスルフィドテトラカルボン酸又はその酸無水物から誘導される化合物(N,N′−ジヒドロキシビフェニルスルフィドテトラカルボン酸イミド、N,N′−ジアセトキシビフェニルスルフィドテトラカルボン酸イミドなど)、ビフェニルケトンテトラカルボン酸又はその酸無水物から誘導される化合物(N,N′−ジヒドロキシビフェニルケトンテトラカルボン酸イミド、N,N′−ジアセトキシビフェニルケトンテトラカルボン酸イミドなど)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)アルカン又はその酸無水物から誘導される化合物(N,N′−ジヒドロキシビフェニルアルカンテトラカルボン酸イミド、N,N′−ジアセトキシビフェニルアルカンテトラカルボン酸イミドなど)などが含まれる。
式(1)で表されるイミド化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。前記イミド化合物は反応系内で生成させてもよい。
前記イミド化合物は、担体(例えば、活性炭、ゼオライト、シリカ、シリカ−アルミナ、ベントナイトなどの多孔質担体)に担持した形態で用いてもよい。担体100重量部に対する前記イミド化合物の担持量は、例えば、0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部程度である。
前記触媒(イミド化合物)の使用量は、反応成分(基質;芳香族化合物)に対して、環状イミノユニット換算で、0.01〜100モル%程度の広い範囲で選択でき、例えば、基質に対して、0.2〜100モル%(例えば、0.5〜75モル%)、好ましくは1〜50モル%(例えば、2.5〜40モル%)、さらに好ましくは5〜30モル%(例えば、7〜30モル%)程度である。
触媒は、反応系に種々の態様、例えば、一括仕込み、逐次添加、連続添加などの態様で添加できる。好ましい方法は連続添加法である。連続添加する場合、添加時間は、例えば、1〜10時間、好ましくは2〜7時間程度であってもよい。
(遷移金属助触媒)
本発明で使用する遷移金属助触媒は、少なくとも周期表9族金属成分(又は金属化合物)、周期表7族金属成分(又は金属化合物)、および周期表4族金属成分(又は金属化合物)を含有する。このような組み合わせにより、金属助触媒の失活を抑制して、触媒活性を高めることができ、目的とする最終酸化生成物(例えば、芳香族ポリカルボン酸など)の収率を向上できる。
周期表9族金属成分としては、9族金属元素(Co、Rh、Irなど)を含む成分が使用でき、周期表7族金属成分としては、7族金属元素(Mn、Tc、Reなど)を含む成分が使用できる。また、周期表4族金属成分としては、4族金属元素(Ti、Zr、Hfなど)を含む成分が使用できる。各金属成分は、1つの金属元素を含んでいてもよく、複数の同族金属元素を含んでいてもよい。なお、前記金属元素の原子価は特に制限されず、例えば0〜6価程度である。
各金属成分(又は金属化合物)としては、前記金属元素の単体、水酸化物、酸化物(複合酸化物を含む)、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、オキソ酸塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩など)、イソポリ酸の塩、ヘテロポリ酸の塩などの無機化合物;有機酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、青酸塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩など)、錯体などの有機化合物が挙げられる。前記錯体の配位子としては、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど)、アシル(アセチル、プロピオニルなど)、アルコキシカルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、ハロゲン原子(塩素、臭素など)、CO、CN、酸素原子、H2O(アコ)、ホスフィン(トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンなど)のリン化合物、NH3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、NO3(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合物などが挙げられる。
周期表9族金属化合物の具体例としては、例えば、水酸化物(水酸化コバルトなど)、酸化物(酸化コバルトなど)、ハロゲン化物(塩化コバルト、臭化コバルトなど)、無機酸塩(硝酸コバルト、硫酸コバルト、リン酸コバルトなど)などの無機化合物;有機酸塩(酢酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルトなど);錯体(コバルトアセチルアセトナトなどの2価又は3価のコバルト錯体など)などのコバルト化合物の他、これらのコバルト化合物に対応するロジウム化合物及びイリジウム化合物などが挙げられる。また、周期表7族金属化合物の具体例としては、酸化物(酸化マンガンなど)、ハロゲン化物(塩化マンガンなど)、無機酸塩(硫酸マンガンなど)などの無機化合物;酢酸マンガンなどの有機酸塩;錯体(マンガンアセチルアセトナト2価又は3価のマンガン錯体など)などのマンガン化合物の他、これらのマンガン化合物に対応するテクネチウム化合物及びレニウム化合物などが挙げられる。周期表4族金属化合物としては、水酸化物(水酸化ジルコニウムなど)、酸化物(酸化ジルコニウムなど)、ハロゲン化物(塩化ジルコニウムなど)、無機酸塩(硫酸ジルコニウムなど)などの無機化合物;有機酸塩(酢酸ジルコニウム、オキソ酢酸ジルコニウムなど);錯体(ジルコニウムアセチルアセトナトなどの4価又は5価のジルコニウム錯体など)などのジルコニウム化合物の他、これらのジルコニウム化合物に対応するチタン化合物及びハフニウム化合物などが挙げられる。各金属化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
また、価数の異なる複数の金属化合物を組み合わせて使用してもよい。例えば、2価又は3価のコバルト化合物(酢酸コバルト(II)など)と2価又は3価のマンガン化合物(酢酸マンガン(II)など)と4価又は5価のジルコニウム化合物(オキソ酢酸ジルコニウム(IV)又は硫酸ジルコニウム(IV)など)とを組み合わせてもよい。
遷移金属助触媒としては、少なくともコバルト化合物、マンガン化合物及びジルコニウム化合物を含む助触媒系が好ましい。
周期表9族金属成分(コバルト化合物など)の割合は、周期表4族金属成分(ジルコニウム化合物など)1モルに対して、金属元素換算で、1モル以下(例えば、0.01〜1モル)、好ましくは0.02〜0.7モル、さらに好ましくは0.05〜0.5モル(特に、0.1〜0.3モル)程度である。
周期表7族金属成分(マンガン化合物など)の割合は、周期表4族金属成分1モルに対して、金属元素換算で、1モル以下(例えば、0.01〜1モル)、好ましくは0.05〜1モル(例えば、0.1〜1モル)、さらに好ましくは0.2〜0.5モル程度である。また、周期表7族金属成分の割合は、周期表9族金属成分1モルに対して、金属元素換算で、0.5〜6モル(例えば、1〜5モル、好ましくは2〜4モル、さらに好ましくは2.5〜3.5モル)程度であってもよい。
また、周期表9族金属成分及び周期表7族金属成分の総モル量(金属元素の総モル量)に対して、周期表4族金属成分のモル数(金属元素のモル数)を大きくしてもよい。例えば、周期表9族金属成分及び周期表7族金属成分の総量1モルに対して、周期表4族金属成分の割合は、金属元素換算で、0.1〜3モル(例えば、0.3〜2.5モル、好ましくは0.5〜2モル、さらに好ましくは1〜2モル)程度であってもよい。
なお、各金属成分は、上記の周期表の族の金属元素に加え、さらに他の遷移金属元素を含有してもよく、他の遷移金属元素を含む化合物と組み合わせて使用してもよい。他の遷移金属元素としては、周期表2族元素(Mg、Ca、Sr、Baなど)、3族元素(Sc、ランタノイド元素、アクチノイド元素など)、5族元素(Vなど)、6族元素(Cr、Mo、Wなど)、8族元素(Fe、Ru、Osなど)、10族元素(Ni、Pd、Ptなど)、11族元素(Cuなど)、12族元素(Znなど)、13族元素(B、Al、Inなど)、14族元素(Sn、Pbなど)、15族元素(Sb、Biなど)などが挙げられる。なお、本明細書では、ホウ素Bも金属元素に含まれるものとする。各金属成分は、これらの他の遷移金属元素を、1つ又は二種以上組み合わせて含有してもよく、他の遷移金属元素を含む化合物を1つ又は二種以上併用してもよい。なお、他の遷移金属元素の原子価は特に制限されず、例えば0〜6価程度である。また、他の遷移金属元素を含む化合物としては、前記例示の金属化合物に対応する化合物(例えば、水酸化物、酸化物などの無機化合物;有機酸塩;錯体など)などが例示できる。なお、これらの遷移金属化合物は、前記特許文献2,特許文献3,特許文献4などを参照できる。
遷移金属助触媒の使用量は、例えば、前記イミド化合物1モルに対して、金属元素換算で、0.001〜10モル、好ましくは0.005〜5モル、さらに好ましくは0.01〜3モル程度の範囲から選択できる。遷移金属助触媒の使用量は、前記イミド化合物に対して、5〜1000ppm、好ましくは10〜500ppm(例えば、20〜300ppm)程度であってもよい。また、金属化合物の使用量は、反応成分(基質)1モルに対して、金属元素換算で、例えば、1×10−7〜0.1モル(例えば、0.001〜0.05モル)程度の範囲から選択できる。遷移金属助触媒の使用量は、通常、基質に対して、金属元素換算で、0.001〜20モル%、好ましくは0.01〜10モル%、さらに好ましくは0.05〜5モル%程度である。
遷移金属助触媒は、反応系に対して種々の態様、例えば、一括仕込み、逐次添加、連続添加などの態様で添加できる。なお、反応の進行に伴って助触媒成分が生成した生成物(カルボン酸又は酸無水物など)と塩を形成し、助触媒として有効に作用しなくなる場合がある。そのため、触媒の活性が低下したとき、遷移金属助触媒は、反応系に対して逐次添加、連続添加などの態様で添加してもよい。
(他の成分)
本発明では、助触媒として、少なくとも1つの有機基が結合した周期表15族元素(N、P、As、Sbなど)又は16族元素(Sなど)を含む多原子陽イオン又は多原子陰イオンとカウンターイオンとで構成された有機塩を用いることもできる。前記有機塩の代表的な例として、有機アンモニウム塩、有機ホスホニウム塩、有機スルホニウム塩などの有機オニウム塩が挙げられる。前記有機塩には、アルキルスルホン酸塩;C1−20アルキル基で置換されていてもよいアリールスルホン酸塩;スルホン酸型イオン交換樹脂(イオン交換体);ホスホン酸型イオン交換樹脂(イオン交換体)なども含まれる。有機塩の使用量は、例えば、前記イミド化合物1モルに対して、0.001〜10モル、好ましくは0.005〜5モル、さらに好ましくは0.01〜3モル)程度である。
本発明では、助触媒として、強酸、例えば、ハロゲン化水素、ハロゲン化水素酸、硫酸、ヘテロポリ酸などを使用してもよい。強酸の使用量は、前記イミド化合物1モルに対して、例えば0.001〜3モル、好ましくは0.005〜2.5モル、さらに好ましくは0.01〜2モル程度である。
本発明では、さらに、助触媒として、電子吸引基(フッ素原子、カルボキシル基など)を有するカルボニル化合物、例えば、ヘキサフルオロアセトン、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロフェニルケトン、安息香酸などを使用してもよい。カルボニル化合物の使用量は、反応成分(基質)1モルに対して、0.0001〜3モル、好ましくは0.0005〜2.5モル、さらに好ましくは0.001〜2モル程度である。
さらに、反応を促進するため、系内に、ラジカル発生剤やラジカル反応促進剤を存在させてもよい。このような成分として、例えば、ハロゲン(塩素、臭素など)、過酸(過酢酸、m−クロロ過安息香酸など)、過酸化物(過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)などのヒドロペルオキシドなど)、硝酸又は亜硝酸若しくはそれらの塩、二酸化窒素、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド(例えば、目的化合物である芳香族ポリカルボン酸に対応するアルデヒドなど)などが挙げられる。前記成分の使用量は、前記イミド化合物1モルに対して、0.001〜1モル、好ましくは0.005〜0.7モル、さらに好ましくは0.01〜0.5モル程度である。
[基質の酸素酸化反応]
本発明の酸化触媒系は、種々の基質を酸素酸化するための触媒として有用である。酸素酸化反応は、前記酸化触媒系の存在下、基質を分子状酸素と接触(通常、加熱下で接触)させることにより行うことができる。
(基質)
基質としては、種々の化合物(例えば、特開平9−327626号公報に開示されている基質など)、例えば、脂肪族又は脂環族炭化水素類、芳香族性環にアルキル基又はアルキレン基(又はアルキリデン基)が結合した芳香族化合物、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類、非芳香族性複素環を含む複素環化合物、チオール類、スルフィド類、アミド類などが挙げられる。好ましい基質には、脂肪族又は脂環族炭化水素類、芳香族化合物、アルコール類、アルデビド類、ケトン類などが含まれる。
(1)脂肪族又は脂環族炭化水素類
脂肪族炭化水素類としては、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素類、例えば、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカンなどのC4−20飽和炭化水素;2−ブテン、イソブテンなどのC4−20オレフィン;ブタジエン(1,3−ブタジエン)、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)などの共役ジエン類などの直鎖及び分枝状の脂肪族炭化水素(好ましくはイソブタンなどの分枝状飽和炭化水素、イソブテンなどの分枝状不飽和炭化水素、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン類など)などが例示できる。これらの脂肪族炭化水素類は置換基を有していてもよい。
脂環族炭化水素類としては、飽和又は不飽和脂環式炭化水素類、例えば、シクロアルカン類、環状オレフィン類、多環式シクロアルカン類、第三級炭素原子(メチン炭素)を含む橋かけ環式炭化水素類、縮合環式炭化水素類の水素添加物、部分水素添加縮合多環式炭化水素などの非芳香族性環を含む縮合環式炭化水素類などが挙げられる。これらの脂環族炭化水素類は、置換基を有していてもよい。
前記脂環式炭化水素類のうち、3〜30員環、好ましくは3〜25員環、特に3〜20員環(例えば5〜20員環、とりわけ5〜16員環)程度の脂環式炭化水素類が好ましい。
シクロアルカン類としては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカンなどのC3−30シクロアルカン(好ましくはC4−20シクロアルカン、さらに好ましくはC4−16シクロアルカンなど)などが挙げられる。
環状オレフィン類としては、例えば、シクロアルケン[例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロデセンなどのC3−30シクロアルケン(好ましくはC4−20シクロアルケン、さらに好ましくはC4−16シクロアルケンなど)など]、シクロアルカジエン類[例えば、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエンなどのシクロヘプタジエン、1,5−シクロオクタジエンなどのシクロオクタジエンなどのC3−30シクロアルカジエン(好ましくはC4−20シクロアルカジエン、さらに好ましくはC4−16シクロアルカジエンなど)など]、シクロアルカトリエン類(例えば、シクロオクタトリエンなどのC7−16シクロアルカトリエンなど)、シクロアルカテトラエン類(例えば、シクロオクタテトラエンなどのC8−16シクロアルカテトラエンなど)などが挙げられる。
橋かけ環式炭化水素類には、例えば、二環式炭化水素(例えば、ピナン、ピネン、ボルナン、ノルボルナン、ノルボルネン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[4.3.2]ウンデカンなど)、三環式炭化水素(例えば、アダマンタン、エキソトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、エンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンなど)、四環式炭化水素(例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンなど)などの他、ジシクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどのジエンの二量体、これらの二量体の水素添加物(例えば、ジシクロヘキサン、ジシクロペンタンなど)およびこれらの誘導体やテルペン類(例えば、単環式モノテルペン、二環式モノテルペン、単環式セスキテルペン、二環式セスキテルペン、三環式セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン、ポリテルペン及びこれらの誘導体など)などが挙げられる。
橋かけ環式炭化水素類としては、環を構成する炭素数が7〜16程度(特に炭素数6〜14程度)の二環式ないし四環式炭化水素(例えば、ピナン、ボルナン、ノルボルナン、ノルボルネン、アダマンタンなど)を用いる場合が多い。
完全又は部分水素添加縮合多環式炭化水素などの非芳香族性環(例えば、5〜8員非芳香族性環、好ましくは5又は6員非芳香族性環など)を含む縮合多環式炭化水素類には、例えば、アセナフテン、フルオレン、テトラリン、インデン、インダン、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロフェナレン、パーヒドロアセナフチレン、デカリン、ヘキサヒドロインダンなどが挙げられる。
縮合多環式炭化水素類又は橋かけ環式炭化水素類などの多環式炭化水素類には、少なくとも一つのメチリジン基(すなわち、メチン炭素−水素結合−CH<)を橋頭位及び/又は接合位(環と環との接合位)に有する化合物が含まれる。
脂肪族又は脂環族炭化水素類のうち、(i)共役ジエン類(例えば、ブタジエン、イソプレンなど)、(ii)不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する化合物(例えば、2−ブテンなどのC4−20オレフィンなど)、(iii-a)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの5〜16員環のシクロアルカン、(iii-b)シクロヘキセンなどの5〜16員環のシクロアルケン、(iv)非芳香族性環(例えば、シクロアルカン環又は複素環)を含む縮合環式化合物(例えば、デカリン、テトラリン、フルオレンなど)、(v)第三級炭素原子(メチン炭素)を含む橋かけ環式炭化水素(例えば、アダマンタン、ノルボルネンなど)などが好ましい。
(2)芳香族性環にアルキル基又はアルキレン基(又はアルキリデン基)が結合した芳香族化合物
芳香族性環(芳香族炭化水素環、芳香族複素環など)にアルキル基又はアルキレン基(又はアルキリデン基)が結合した芳香族炭化水素類又は複素環類は、少なくとも1つのアルキル基又はアルキレン基を有していればよく、複数のアルキル基又はアルキレン基を有していてもよい。また、アルキル基又はアルキレン基に加え、これらの基の酸化により生成し、最終的なカルボキシル基又はその等価体(酸無水物基など)には至らないアルキル基又はアルキレン基の「低次酸化基」を有していてもよい。なお、このような基質の酸化部位には、アルキル基又はアルキレン基の他、上記低次酸化基も含まれる。
前記芳香族性環のうち、芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アセナフチレン、フェナントレン、アントラセン、ピレンなどに対応する単環式又は縮合多環式炭化水素環;環集合炭化水素環、例えば、ビフェニル、ターフェニル、ビナフチルなどに対応する炭化水素環;酸素原子、硫黄原子、スルフィド基、カルボニル基、アルキレン基、シクロアルキレン基などの二価基を介して芳香族炭化水素環が連結したビスアレーン類、例えば、ビフェニルエーテル、ビフェニルスルフィド、ビフェニルスルホン、ビフェニルケトン、ビフェニルアルカンなどに対応するビスアレーン類などが挙げられる。また、芳香族複素環としては、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を1〜3個程度有する芳香族性複素環、例えば、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環、インドール環、インダゾール環、ベンゾトリアゾール環、キナゾリン環、アクリジン環、クロモン環などが挙げられる。
これらの芳香族性環は、置換基(例えば、カルボキシル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換アミノ基、ニトロ基など)を有していてもよい。また、芳香族性環は、非芳香族性環と縮合していてもよい。
前記芳香族性環に結合したアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル基などの第1級又は第2級C1−10アルキル基が挙げられる。好ましいアルキル基は、C1−4アルキル基、特にメチル基、エチル基、イソプロピル基などのC1−3アルキル基である。アルキル基の低次酸化基としては、例えば、ヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチルなどのヒドロキシC1−3アルキル基)、ホルミル基、ホルミルアルキル基(例えば、ホルミルメチル、1−ホルミルエチル基などのホルミルC1−3アルキル基)、オキソ基を有するアルキル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル基などのC1−4アシル基)などが含まれる。
また、前記芳香族性環に結合したアルキレン基(又はアルキリデン基)としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、ブチレン基などの第2級C1−10アルキレン基が挙げられる。好ましいアルキレン基は、C1−4アルキレン基、特に、メチレン基の他、エチレン、プロピレン基などのC2−4アルキレン基、特に、メチレン基である。アルキレン基の低次酸化基としては、例えば、ヒドロキシアルキレン基(例えば、ヒドロキシメチレン、1−ヒドロキシエチレンなどのヒドロキシC1−3アルキレン基)、カルボニル基、オキソ基を有するアルキレン基(例えば、−CH2−C(=O)−、−CH2−C(=O)−CH2−基などのオキソC1−4アルカンジイル基など)などが含まれる。
なお、前記アルキル基、アルキレン基、又はこれらの低次酸化基は、反応を阻害しない範囲で置換基を有していてもよい。
前記芳香族性環は、この環の員数などに応じて、前記アルキル基、アルキレン基又はこれらの低次酸化基を、1〜20個、好ましくは1〜10個、さらに好ましくは2〜6個程度有していてもよい。なお、アルキレン基又はその低次酸化基の個数は、通常、1〜3個、好ましくは1又は2個程度である。アルキル基の個数は、例えば、ベンゼン環には2〜6個(特に3〜6個)、ナフタレン環には4〜8個(特に4〜6個)、ビフェニル骨格を有する化合物(ビフェニル類)では4〜10個(特に4〜6個)、トリフェニル骨格を有する化合物(ターフェニル類)では6〜15個(特に4〜8個)程度であってもよい。芳香族化合物は、通常、芳香族性環にアルキル基又はその低次酸化基を2〜10個(好ましくは3〜6個、さらに好ましくは3〜5個)程度有する化合物であってもよく、複数(例えば、2個)の芳香族性環を、アルキレン基又はその低次酸化基で連結した化合物であってもよい。アルキル基を有する芳香族化合物は、通常、目的となる生成物の芳香族カルボン酸に対応する炭素数のアルキル基を有している。
アルキル基を有する芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、メチルナフタレン、メチルアントラセンなどのアルキル基(メチル基などのC1−4アルキル基など)を有するC6−20芳香族炭化水素類;芳香族性複素環を有し、且つ芳香族性複素環の隣接位にアルキル基(メチル基などのC1−4アルキル基など)又はアルキレン基(メチレン基など)を有する芳香族複素環化合物(例えば、2−メチルフラン、2,5−ジメチルフラン、2−メチルチオフェン、2,5−ジメチルチオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、3−エチルピリジン、2−メチルキノリンなどの、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択された1〜3個のヘテロ原子を含む芳香族性複素環に炭素数1〜6程度のアルキル基が置換している複素環化合物など)などが挙げられる。
好ましい芳香族化合物は、2つ以上のアルキル基及び/又はその低次酸化基を有する化合物、もしくは1つのアルキレン基又はその低次酸化基を有する化合物などである。
2つ以上のアルキル基等を有する芳香族化合物としては、例えば、2つのアルキル基を有する化合物[例えば、キシレン(o−、m−、p−キシレン)、1−エチル−4−メチルベンゼン、1−エチル−3−メチルベンゼン、キシレノール(例えば、2,3−、2,4−、3,5−キシレノールなど)、チモール(6−イソプロピル−m−クレゾール)、メチルベンズアルデヒド、ジメチル安息香酸(例えば、2,3−、2,4−、3,5−ジメチル安息香酸など)、4,5−ジメチルフタル酸、4,6−ジメチルイソフタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、ジメチルナフタレン(1,5−、2,5−ジメチルナフタレンなど)、ジメチルアントラセン、4,4′−ジメチルビフェニル、ジメチルピリジン[2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、3,5−ルチジン、2,6−ルチジン]、2−エチル−4−メチルピリジン、3,5−ジメチル−4−ピロン、N−置換又は無置換−3,5−ジメチル−4−ピリドンなど]、3つのアルキル基を有する化合物[例えば、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン(プソイドクメン)、1,3,5−トリメチルベンゼン(メシチレン)、ジメチルベンジルアルコール、ジメチルベンズアルデヒド、2,4,5−トリメチル安息香酸、トリメチルアントラセン、トリメチルピリジン(2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,6−トリメチルピリジンなど)など]、4以上のアルキル基を有する化合物[例えば、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン(デュレン)、ペンタメチルベンゼン、1,2,3,4,5,6−ヘキサメチルベンゼン、テトラメチルナフタレン(1,2,5,6−、2,3,6,7−、1,2,7,8−テトラメチルナフタレンなど)などの単一のベンゼン環又はナフタレン環に複数のアルキル基が置換した化合物、テトラメチルビフェニル(3,3’,4,4’−、2,2’,3,3’−テトラメチルビフェニルなど)、テトラメチルビフェニルエーテル(ビス(3,4−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(2,3−ジメチルフェニル)エーテル、2,3,3’,4’−テトラメチルジフェニルエーテルなど)、テトラメチルビフェニルスルフィド(ビス(3,4−ジメチルフェニル)スルフィド、ビス(2,3−ジメチルフェニル)スルフィドなど)、テトラメチルビフェニルスルホン(ビス(3,4−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(2,3−ジメチルフェニル)スルホンなど)、テトラメチルビフェニルケトン(ビス(3,4−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(2,3−ジメチルフェニル)ケトン、2,3,3’,4’−テトラメチルジフェニルケトンなど)、テトラメチルビフェニルアルカン(ビス(3,4−ジメチルフェニル)C1−6アルカン、ビス(2,3−ジメチルフェニル)C1−6アルカン、2,3,3’,4’−テトラメチルジフェニルC1−6アルカンなど)、テトラメチルビフェニルシクロアルカン(ビス(3,4−ジメチルフェニル)C4−10シクロアルカン、ビス(2,3−ジメチルフェニル)C4−10シクロアルカンなど)、2,3,4,3’,4’−ペンタメチルジフェニルエーテル、2,3,4,3’,4’−ペンタメチルジフェニルケトンなどのビフェニル類の複数のベンゼン環にそれぞれ複数のアルキル基が置換した化合物など]などが挙げられる。これらのなかでも、メチル基の置換数が、分子中1〜4個程度のC6−10芳香族炭化水素などが特に好ましい。
また、アルキレン基又はその低次酸化基を有する芳香族化合物としては、例えば、ジベンジル、ジフェニルメタン、ベンゾフェノンなどが挙げられる。
好ましい芳香族化合物は、3以上のアルキル基を有する化合物である。また、芳香族化合物は、芳香族性環に有する少なくとも2つのアルキル基が、オルト位の位置関係にあるのが好ましい。なお、複数の芳香族性環を有する芳香族化合物が、複数の芳香族性環(例えば、2つのベンゼン環など)のそれぞれに複数のアルキル基を有する場合、アルキル基の位置は、対称位置であってもよく、非対称位置であってもよい。このような芳香族化合物としては、例えば、プソイドクメン(1,2,4−トリメチルベンゼン)、デュレン、ヘキサメチルベンゼン、ポリアルキルナフタレン[例えば、ジメチルナフタレン(1,2−ジメチルナフタレン、2,3−ジメチルナフタレンなど)、トリメチルナフタレン(1,2,4−トリメチルナフタレンなど)、テトラメチルナフタレン(1,2,3,4−テトラメチルナフタレン、1,2,5,6−テトラメチルナフタレン、2,3,6,7−テトラメチルナフタレンなど)など]、ポリアルキルビスアリール[例えば、テトラメチルビフェニル(2,3,4,5−テトラメチルビフェニル、2,3,11,12−テトラメチルビフェニル、3,4,10,11−テトラメチルビフェニルなど);テトラメチルビフェニルに対応するテトラメチルビフェニルエーテル、テトラメチルビフェニルスルホン、テトラメチルビフェニルケトン、テトラメチルビフェニルアルカン及びテトラメチルビフェニルシクロアルカンなど]などが例示できる。
(3)アルコール類
基質としてのアルコール類には、前記炭化水素類(1)又は芳香族化合物(2)のアルコール誘導体が含まれ、例えば、脂肪族一価又は多価アルコール類、脂環式一価又は多価アルコール類、あるいは芳香族一価又は多価アルコール類などが含まれる。
脂肪族一価アルコール類には、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノールなどのC1−20飽和脂肪族アルコール(好ましくはC1−12飽和脂肪族アルコール、さらに好ましくはC1−8飽和脂肪族アルコール);アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパルギルアルコールなどのC2−20不飽和脂肪族アルコール(好ましくはC3−10不飽和脂肪族アルコール)などが挙げられる。
脂肪族多価アルコール類には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ピナコール、グリセリンなどのC2−20飽和又は不飽和脂肪族多価アルコール(好ましくはC2−12飽和脂肪族ジ乃至テトラオール、さらに好ましくはC2−8飽和脂肪族ジ又はトリオールなど)が挙げられる。
脂環式一価アルコール類には、例えば、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロオクタノール、シクロデカノール、メチルシクロヘキサノール、シクロヘキセン−1−オール、シクロオクテン−1−オール、シクロゲラニオール、ボルネオール、メントール、アダマンタノール、カンフェニロール、ボルネオールなどの5〜30員環の脂環式一価アルコールなどが挙げられる。脂環式多価アルコール類には、例えば、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、アダマンタンジオール、アダマンタントリオールなどの5〜30員環の脂環式多価アルコール(ジ乃至テトラオール、好ましくはジ又はトリオールなど)が挙げられる。好ましい脂環式アルコール類には、5〜30員環、好ましくは5〜25員環、特に5〜20員環(例えば、5〜16員環)の化合物(シクロアルカノール、シクロアルカンジオール、多環式シクロアルカノール、多環式シクロアルカンジオールなど)が含まれる。
芳香族アルコール類には、例えば、ベンジルアルコール、サリチルアルコール、ベンズヒドロール、フェネチルアルコールなどのC6−20アリール−C1−10アルキル−アルコール(好ましくはC6−20アリール−C1−6アルキル−アルコールなど)などが挙げられる。
これらのアルコールのうち第一級又は第二級アルコールが好ましい。好ましいアルコール類には、(a)不飽和結合に隣接する部位にヒドロキシル基を有する化合物(例えば、アリルアルコール、ベンジルアルコール、ベンズヒドロールなどの不飽和脂肪族アルコールや芳香族アルコールなど)、(b)脂環式アルコール(例えば、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノールなどのC5−16シクロアルカノールなど)、(c)第三級炭素原子(メチン炭素)を有する脂環式アルコール(例えば、ボルオネールなど)などが含まれる。
(4)アルデヒド類
基質としてのアルデヒド類には、前記炭化水素類(1)又は芳香族化合物(2)(アルキル基を有する芳香族化合物)のアルデヒド誘導体が含まれ、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキサナール、オクタナール、ノナナールなどのC1−20飽和脂肪族アルデヒド(好ましくはC1−10飽和脂肪族アルデヒド);アクロレイン、ゲラニアール、シトロネラールなどの不飽和脂肪族アルデヒド;グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデビド、ピメリンアルデヒド、スベリンアルデヒド、セバシンアルデヒドなどの脂肪族ポリアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド類;ベンズアルデヒド、オキシベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、サルチルアルデヒド、アニスアルデヒド、1−ナフチルアルデヒド、バニリン(バニルアルデヒド)、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどの芳香族アルデヒド;ホルミルシクロヘキサンなどの脂環式アルデヒド;ニコチンアルデヒド、フルフラールなどの複素環アルデヒドなどが挙げられる。
(5)ケトン類
基質として用いるケトン類には、前記炭化水素類(1)又は芳香族化合物(2)のケトン誘導体が含まれ、例えば、脂肪族ケトン類、脂環式ケトン類、芳香族ケトン類、複素環ケトン類などが含まれる。
脂肪族ケトン類には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、ピナコロンなどのC2−20脂肪族ケトン(好ましくはC2−12脂肪族ケトン)などが含まれる。
脂環式ケトン類には、例えば、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノン、シクロテトラデカノン、シクロオクタデカノン、シクロエイコサノン、2−メチルシクロヘキサノン、2−エチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、4−クロロシクロヘキサノン、4−メトキシシクロヘキサノン、シクロヘキサンジオン、シクロペンテノン、シクロヘキセノン、シクロオクテノン、シクロデセノン、メントン、カンファーなどの4〜30員環の脂環族ケトン(環状ケトン)などが含まれる。好ましい脂環族ケトン類には、5〜20員環、特に5〜16員環の化合物が含まれる。
芳香族ケトン類としては、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、デオキシベンゾイン、1−ナフタレノンなどが挙げられる。複素環ケトン類としては、例えば、インデン−1−オン、1,2,3−インダントリオン、フルオレン−9−オン、4−ピラノンなどの複素環ケトンなどが挙げられる。
(6)アミン類
基質として用いるアミン類としては、第一級又は第二級アミンが好ましく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、ヒドロキシルアミン、エタノールアミンなどの脂肪族アミン類;シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミンなどの脂環式アミン類;ベンジルアミン、トルイジンなどの芳香族アミン類などが例示される。
(7)非芳香族性複素環を含む複素環化合物
基質として用いる複素環化合物としては、(a)非芳香族性複素環化合物又は非芳香族性複素環を含む縮合環式炭化水素(例えば、ピラン、ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、イソインドリン、クロメン、キサンテン、クロマン、イソクロマンなど)、及び非芳香族性複素環にアルキル基(例えば、メチル、エチル基などの炭素数1〜6程度のアルキル基など)が置換している、前記非芳香族性複素環化合物又は非芳香族性複素環を含む縮合環式炭化水素などが例示される。
(8)チオール類、スルフィド類及びアミド類
基質として用いるチオール類としては、例えば、エタンチオール、フェニルメタンチオールなどが挙げられ、スルフィド類としては、例えば、ジエチルスルフィド、メチルプロピルスルフィド、ジフェニルスルフィドなどが挙げられる。また、アミド類には、例えば、ホルムアミド、アセトアミドなどが含まれる。
なお、基質としては、種々の置換基(ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環式基、オキソ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アミノ基、置換アミノ基、シアノ基、ニトロ基など)を有する基質などを使用してもよい。
このような置換基を有する基質としては、例えば、炭素数2以上のアルキル基(例えば、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル基などのC2−10アルキル基)、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素原子など)、カルボニル基を有する基質(シクロヘキサンノン、アダマンタノンなどのケトン類)、ヒドロキシル基を有する基質(シクロヘキサノール、アダマンタノールなどのアルコール類)、カルボキシル基を有する基質(カルボキシトルエンなどのカルボン酸類)又はその誘導体(エステルなど)、これらの混合物(KAオイル)やエステル類(シクロヘキシルアセテート、アセチルオキシトルエンなど)などが例示できる。
これらの基質を酸素酸化することにより、基質に対応する酸化物、例えば、ヒドロキシ化合物、アルデヒド化合物、ケトン化合物、有機酸などが生成する。また、アルコール類の酸化により、対応するアルデヒド(ホルミル)化合物、ケトン化合物や有機酸が生成し、アルデヒド化合物の酸化により対応する有機酸が形成する。さらに、ケトン類は酸化により解裂して、対応するアルデヒド(ホルミル)化合物、有機酸を生成する。
本発明の酸化触媒系は、基質として、芳香族性環に隣接する複数のアルキル基(メチル基など)を有する芳香族化合物であっても、複数のアルキル基を効率よく酸化して芳香族ポリカルボン酸を高い収率で得ることができる。例えば、プソイドクメンからトリメリット酸及び/又は無水トリメリット酸;デュレンからピロメリット酸及び/又は無水ピロメリット酸;3,3’,4,4’−テトラメチルベンゾフェノンから3,3’,4,4’−テトラカルボン酸ベンゾフェノンをそれぞれ高い収率で得ることができる。特に、従来の触媒では、酸化反応の中間生成物であるアルキル基を有する芳香族化合物が多量に残存し、目的化合物である芳香族ポリカルボン酸を効率よく製造することが困難である。例えば、デュレンの酸化を例にとって説明すると、基質の酸化に伴ってモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸又はそれらの酸無水物が生成するが、酸化反応に対する活性は、基質>モノカルボン酸>ジカルボン酸>トリカルボン酸の順に低くなる。一方、前記遷移金属助触媒は、モノカルボン酸<ジカルボン酸<トリカルボン酸<テトラカルボン酸の順に塩を形成しやすく、場合によっては不溶物として析出し、カルボン酸との塩の形成に伴って消費され、触媒活性を大きく低下させる。そのため、アルキル基とカルボキシル基とを有する芳香族化合物が比較的多く残存し、トリカルボン酸(メチルトリメリット酸)から全てのアルキル基がカルボキシル基に変換されたピロメリット酸への酸化効率を向上させることが困難である。特に、反応後期に反応を進行させることが困難である。本発明では、このような反応系であっても、特定の酸化触媒系により、芳香族ポリカルボン酸を効率よく生成できる。
(酸素)
酸素としては、分子状酸素及び発生期の酸素のいずれでも使用できる。分子状酸素は特に制限されず、純粋な酸素を用いてもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスで希釈した酸素や空気、希釈空気を使用してもよい。また、酸素は系内で発生させてもよい。酸素の使用量は、通常、基質1モルに対して0.5モル以上(例えば、1モル以上)、好ましくは1〜10000モル、さらに好ましくは5〜1000モル程度である。基質に対して過剰モルの酸素を使用する場合が多い。
(反応溶媒)
酸化反応は溶媒の非存在下で行ってもよいが、通常、溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、ベンゼンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;t−ブタノール、t−アミルアルコールなどのアルコール類;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、ヘキサン酸などの有機酸;酢酸エチルなどのエステル類;ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類などが例示でき、これらの溶媒は混合して使用してもよい。これらの溶媒の中でも、有機酸などのプロトン性有機溶媒及びニトリル類など、特に反応性、経済面から酢酸が好ましい。反応溶媒の使用量は、基質に対して1.5〜100倍量、好ましくは3〜50倍量、さらに好ましくは5〜25倍量である。
(酸無水物)
なお、反応系には、必要により、酸無水物を添加してもよい。酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸などの脂肪族モノカルボン酸無水物;無水安息香酸などの芳香族モノカルボン酸無水物;前記触媒の項で記載の酸無水物(脂肪族多価カルボン酸無水物、脂環式多価カルボン酸無水物、芳香族多価カルボン酸無水物)などが挙げられる。これらの酸無水物のうち、脂肪族モノカルボン酸無水物、特に無水酢酸が好ましい。酸無水物の使用量は、例えば、基質1モルに対して、0.1〜100モル、好ましくは0.5〜40モル、さらに好ましくは1〜20モル程度であってもよい。酸無水物は基質に対して大過剰量用いることもできる。
(反応操作又は反応条件)
酸化反応の反応温度は、反応剤、基質の種類などに応じて、例えば、0〜300℃、好ましくは15〜250℃、さらに好ましくは30〜200℃程度の範囲から選択でき、通常、50〜190℃(特に70〜190℃)程度で反応する場合が多い。反応は、略一定の温度で行ってもよく、必要に応じて、複数の温度域で行ってもよく、段階的又は連続的に昇温又は降温しつつ行っても良い。
また、基質の酸化度に応じて、反応の温度域を変化させてもよい。例えば、基質の酸化部位(例えば、基質のアルキル基又はアルキレン基)が酸化されていない状態の酸化度を0%、基質の酸化部位がカルボキシル基又はカルボニル基に酸化された化合物の酸化度を100%としたとき、酸化度が30%以上(例えば、30〜70%)になるまで反応させる温度域(低温域)と、酸化度が75%以上になるまで反応させる温度域(高温域)との少なくとも2つの温度域を含む複数の温度域で反応を行ってもよい。このような複数の温度域で反応させることにより、金属助触媒の消費及び触媒の活性低下を有効に防止でき、酸化生成物(カルボン酸など)を高い収率で得ることができる。なお、前記低温域を反応初期とし、高温域を反応後期とすることができる。
なお、基質としてアルキル基を有する芳香族化合物を用い、アルキル基の数がnである場合を例にとって説明すると、HPLC分析に基づいて、酸化反応生成物が、n個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸の収率m1%、n-1個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸の収率m2%、n-2個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸の収率m3%、…、n-(n-1)個のカルボキシル基を有するカルボン酸の収率mx%からなるとき、酸化度は、以下の計算式で算出できる。
酸化度=m1%+m2%×(n-1/n)+m3%×(n-2/n)+…+mx%×(1/n)
芳香族化合物がデュレン(メチル基の数4)である場合、酸化度は、以下の計算式で算出できる。
酸化度=m1%+m2%×(3/4)+m3%×(2/4)+m4%×(1/4)
なお、上記カルボン酸以外の酸化物(アルデヒド類、アルコール類など)が生成するため、酸化度は現実には上記計算値より高いものの、これらの成分については考慮しないものとする。
前記低温域では、酸化度が30%以上になるまで反応させればよいが、通常、酸化度が35〜75%(例えば、35〜70%)、好ましくは40〜75%(例えば、45〜70%)程度、通常、40〜65%(例えば、45〜60%)程度に反応を進行させる。低温域での酸化度は50〜75%(例えば、50〜70%)、特に50〜65%(例えば、50〜60%)程度であってもよい。
また、低温域(反応初期)での反応は単一の反応温度域で行ってもよく、段階的に温度を上昇させる複数の反応温度域で行ってもよく、連続的に温度を上昇させて行ってもよい。低温域での反応は、基質(芳香族化合物など)の種類に応じて、通常、反応温度50〜140℃(例えば、60〜135℃、好ましくは65〜130℃、さらに好ましくは70〜120℃)程度で行うことができ、70〜130℃程度であってもよい。また、低温域での反応は、60〜120℃、好ましくは65〜100℃、さらに好ましくは70〜90℃)程度で行ってもよい。
金属助触媒の消費及び触媒の活性低下を防止して目的とする酸化生成物[例えば、酸化度75〜100%、特に酸化度85〜100%の酸化生成物(例えば、芳香族ポリカルボン酸)など]を生成させるためには、低温域(反応初期)は、少なくとも反応温度120℃未満(例えば、100℃未満)の第1の低温域を含んでもよい。第1の低温域の反応温度は、例えば、60〜120℃(例えば、60〜115℃)、好ましくは70〜110℃(例えば、75〜90℃)程度であり、通常、60〜110℃程度である。第1の低温域の反応温度は、60〜95℃、好ましくは70〜90℃(例えば、75〜90℃)程度であり、通常、60〜90℃程度であってもよい。
低温域は、前記第1の低温域での反応に後続する第2の低温域(又は中間温度域)を含んでいるのが好ましい。第2の低温域(又は中間温度域)の反応温度は、通常、前記第1の低温域の反応温度よりも高く、例えば、100〜140℃(例えば、105〜135℃)、好ましくは110〜130℃(例えば、115〜125℃)程度であってもよい。なお、低温域(第1の低温域及び/又は第2の低温域)では、反応温度を段階的又は連続的に上昇させてもよい。このような低温域での反応は、反応系に生成した酸化生成物(カルボン酸、特にポリカルボン酸など)と遷移金属助触媒との塩の形成の抑制に有効である。
高温域では、酸化度が75%以上になるまで基質を反応させればよいが、通常、酸化度が80%以上(80〜100%、例えば、85〜99%程度)になるまで反応させる。高温域での反応は、通常、低温域(例えば、第2の低温域)での反応に後続して、前記低温域の反応温度よりも高い温度で行われる。高温域の反応温度は、100〜150℃、好ましくは110〜150℃(例えば、115〜145℃)、さらに好ましくは120〜140℃程度である。高温域(反応後期)では、反応温度を段階的又は連続的に上昇させてもよい。
なお、前記複数の温度域は、さらに、前記低温域(第2の低温域、第2の低温域)及び高温域に加えて、各温度域間には、各温度域の温度に対して中間の温度で反応させる温度域を含んでいてもよく、高温域に後続してさらに高温で反応させる温度域を含んでいてもよい。また、反応温度は、昇温プログラムにより設定時間内に設定温度に上昇させてもよい。また、昇温温度幅は所定の温度領域であれば特に制限されず、1〜10℃程度であってもよく、段階的な昇温回数も特に制限されず、2〜10回程度であってもよい。
反応は常圧(0.1MPa)下で行ってもよいが、通常、加圧系で行われる。反応圧力は、例えば、0.3〜20MPa、好ましくは0.5〜10MPa、さらに好ましくは0.6〜5MPa程度であってもよい。
反応時間(流通式反応においては滞留時間)は、反応温度及び圧力に応じて、例えば、1分〜48時間、好ましくは2分〜24時間、さらに好ましくは5分〜8時間程度の範囲から適当に選択できる。さらに、反応時間は、例えば、30分〜48時間、好ましくは1〜36時間、さらに好ましくは2〜24時間程度の範囲から適当に選択してもよい。
酸化反応において、触媒系、助触媒、基質、溶媒などの成分(反応系に加える成分)は、予め、反応器又は反応初期に一括で仕込んでもよく、反応器又は反応初期に予めいずれかの成分を一括で仕込み、他の成分を逐次又は連続的に添加してもよい。なお、遷移金属助触媒の消費又は触媒(イミド化合物)の失活を防止するため、反応系に遷移金属助触媒を添加(特に、滴下などの方法で逐次又は連続添加)するのが好ましい。また、金属助触媒の添加(又は補充)とともに、反応系には触媒(イミド化合物)を添加(特に、滴下などの方法で逐次又は連続添加)してもよい。遷移金属助触媒及び/又は触媒(イミド化合物)の添加時期は、特に制限されず、反応初期及び反応後期のいずれであってもよいが、少なくとも反応後期の反応系に添加するのが好ましい。
酸素は、連続供給、逐次供給、一括供給などの種々の態様で反応系に導入できるが、反応系に連続的に供給するのが好ましい。なお、反応系からのオフガス酸素濃度は特に制限されず、例えば、0〜20体積%(例えば、0.5〜10体積%)程度であってもよいが、通常、1〜9体積%程度である。
また、基質は、反応系に対して、初期に一括で仕込む方法、反応系中に逐次添加、連続添加などの方法で導入することができる。
なお、酸化反応において、反応系の水分量を、反応系全体に対して、30重量%以下(例えば、0〜30重量%)、好ましくは3〜20重量%(例えば、3〜18重量%)、さらに好ましくは4〜15重量%(例えば、4〜10重量%)程度の範囲に調整すると、酸化反応を促進できるとともに、副生物の生成を抑制でき、カルボン酸などの目的とする反応生成物を高収率で得ることができる。
前記反応操作は、連続式、回分式、又は半回分式で行ってもよい。また、反応は、水を除去しながら行う反応蒸留で行ってもよく、デカンターなどの水分離装置と組み合わせて水を除去する反応蒸留で行ってもよい。反応を二段階以上に分けて行ってもよい。反応装置としては、慣用の装置が使用でき、1又は複数の装置を使用してもよい。複数の装置を使用する場合、装置は直列及び/又は並列に接続してもよい。
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、吸着、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段やこれらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
空気流通型反応器に、デュレン40g(0.30モル)、酢酸320g、酢酸コバルト(2価)0.19g(0.7ミリモル)、酢酸マンガン(2価)0.55g(2.2ミリモル)、硫酸ジルコニウム1.06g(3.0ミリモル)を加え、圧力を窒素にて0.8MPaに昇圧し、80℃に加熱した。
N,N’−ジヒドロキシピロメリットイミド14.8g(60ミリモル)を酢酸300g中に添加したスラリー液、及び空気と窒素とを混合したガスを、反応器中に供給開始して反応を開始させた。前記スラリー液は、スラリーポンプにて5時間かけて反応器に連続フィードし、ガスの供給は、オフガス中の酸素濃度が2〜8%になるように調節した。反応開始後、反応温度を0.5時間かけて120℃に昇温し、そのまま1.5時間維持した。その後3時間130℃で反応を継続した。反応の間、必要に応じて、ガスや触媒の供給量を調節して反応を制御した。
触媒添加終了後(反応開始から5時間後)、130℃にて1時間、オフガス中の酸素濃度を8%に維持して、熟成を行い、その後、ガス供給を停止し、冷却し、開圧した。
開圧後の反応液をHPLCで分析したところ、ピロメリット酸が収率86%(65.2g)、メチルトリメリット酸が収率3%(2.0g)で生成していた。
実施例2
空気流通型反応器に、デュレン40g(0.30モル)、酢酸320g、酢酸コバルト(2価)0.19g(0.7ミリモル)、酢酸マンガン(2価)0.55g(2.2ミリモル)、硫酸ジルコニウム1.06g(3.0ミリモル)を加え、圧力を窒素にて0.8MPaに昇圧し、80℃に加熱した。
N−ヒドロキシスクシンイミド17.3g(150ミリモル)を酢酸300g中に添加した触媒液、及び空気と窒素とを混合したガスを、反応器中に供給開始して反応を開始させた。前記触媒液は、スラリーポンプにて5時間かけて反応器に連続フィードし、ガスの供給は、オフガス中の酸素濃度が2〜8%になるように調節した。反応開始後、反応温度を0.5時間かけて120℃に昇温し、そのまま1.5時間維持した。その後3時間130℃で反応を継続した。反応の間、必要に応じて、ガスや触媒の供給量を調節して反応を制御した。
触媒添加終了後(反応開始から5時間後)、130℃にて1時間、オフガス中の酸素濃度を8%に維持して、熟成を行い、その後、ガス供給を停止し、冷却し、開圧した。
開圧後の反応液をHPLCで分析したところ、ピロメリット酸が収率88%(67.1g)、メチルトリメリット酸が収率3%(2.0g)で得られた。
比較例1
空気流通型反応器に、デュレン40g(0.30モル)、酢酸320g、酢酸コバルト(2価)1.00g(4ミリモル)、酢酸マンガン(2価)0.49g(2ミリモル)、硫酸ジルコニウム0.71g(2ミリモル)を加え、圧力を窒素にて0.8MPaに昇圧し、80℃に加熱した。
N,N’−ジヒドロキシピロメリットイミド14.8g(60ミリモル)を酢酸300g中に添加したスラリー液、及び空気と窒素とを混合したガスを、反応器中に供給開始して反応を開始させた。前記スラリー液は、スラリーポンプにて5時間かけて反応器に連続フィードし、ガスの供給は、オフガス中の酸素濃度が2〜8%になるように調節した。反応開始後、反応温度を0.5時間かけて120℃に昇温し、そのまま1.5時間維持した。その後3時間130℃で反応を継続した。反応の間、必要に応じて、ガスや触媒の供給量を調節して反応を制御した。
触媒添加終了後(反応開始から5時間後)、130℃にて1時間、オフガス中の酸素濃度を8%に維持して、熟成を行い、その後、ガス供給を停止し、冷却し、開圧した。
開圧後の反応液をHPLCで分析したところ、ピロメリット酸が収率42%(32.0g)、メチルトリメリット酸が収率29%(19.5g)で生成していた。
実施例3
空気流通型反応器に、デュレン40g(0.30モル)、酢酸320g、酢酸コバルト(2価)0.50g(2ミリモル)、酢酸マンガン(2価)0.49g(2ミリモル)、硫酸ジルコニウム0.71g(2ミリモル)を加え、圧力を窒素にて0.8MPaに昇圧し、80℃に加熱した。
N,N’−ジヒドロキシピロメリットイミド14.8g(60ミリモル)を酢酸300g中に添加したスラリー液、及び空気と窒素とを混合したガスを、反応器中に供給開始して反応を開始させた。前記スラリー液は、スラリーポンプにて5時間かけて反応器に連続フィードし、ガスの供給は、オフガス中の酸素濃度が2〜8%になるように調節した。反応開始後、反応温度を0.5時間かけて120℃に昇温し、そのまま1.5時間維持した。その後3時間130℃で反応を継続した。反応の間、必要に応じて、ガスや触媒の供給量を調節して反応を制御した。
触媒添加終了後(反応開始から5時間後)、130℃にて1時間、オフガス中の酸素濃度を8%に維持して、熟成を行い、その後、ガス供給を停止し、冷却し、開圧した。
開圧後の反応液をHPLCで分析したところ、ピロメリット酸が収率78%(59.4g)、メチルトリメリット酸が収率8%(5.4g)で得られた。
実施例4
空気流通型反応器に、デュレン40g(0.30モル)、酢酸320g、酢酸コバルト(2価)0.25g(1ミリモル)、酢酸マンガン(2価)0.49g(2ミリモル)、硫酸ジルコニウム0.71g(2ミリモル)を加え、圧力を窒素にて0.8MPaに昇圧し、80℃に加熱した。
N,N’−ジヒドロキシピロメリットイミド14.8g(60ミリモル)を酢酸300g中に添加したスラリー液、及び空気と窒素とを混合したガスを、反応器中に供給開始して反応を開始させた。前記スラリー液は、スラリーポンプにて5時間かけて反応器に連続フィードし、ガスの供給は、オフガス中の酸素濃度が2〜8%になるように調節した。反応開始後、反応温度を0.5時間かけて120℃に昇温し、そのまま1.5時間維持した。その後3時間130℃で反応を継続した。反応の間、必要に応じて、ガスや触媒の供給量を調節して反応を制御した。
触媒添加終了後(反応開始から5時間後)、130℃にて1時間、オフガス中の酸素濃度を8%に維持して、熟成を行い、その後、ガス供給を停止し、冷却し、開圧した。
開圧後の反応液をHPLCで分析したところ、ピロメリット酸が収率82%(62.5g)、メチルトリメリット酸が収率5%(3.4g)で得られた。
実施例5
空気流通型反応器に、デュレン40g(0.30モル)、酢酸320g、酢酸コバルト(2価)0.19g(0.7ミリモル)、酢酸マンガン(2価)0.55g(2.2ミリモル)、硫酸ジルコニウム2.12g(6.0ミリモル)を加え、圧力を窒素にて0.8MPaに昇圧し、80℃に加熱した。
N,N’−ジヒドロキシピロメリットイミド14.8g(60ミリモル)を酢酸300g中に添加したスラリー液、及び空気と窒素とを混合したガスを、反応器中に供給開始して反応を開始させた。前記スラリー液は、スラリーポンプにて5時間かけて反応器に連続フィードし、ガスの供給は、オフガス中の酸素濃度が2〜8%になるように調節した。反応開始後、反応温度を0.5時間かけて120℃に昇温し、そのまま1.5時間維持した。その後3時間130℃で反応を継続した。反応の間、必要に応じて、ガスや触媒の供給量を調節して反応を制御した。
触媒添加終了後(反応開始から5時間後)、130℃にて1時間、オフガス中の酸素濃度を8%に維持して、熟成を行い、その後、ガス供給を停止し、冷却し、開圧した。
開圧後の反応液をHPLCで分析したところ、ピロメリット酸が収率89%(67.8g)、メチルトリメリット酸が収率2%(1.3g)で得られた。
実施例6
空気流通型反応器に、デュレン40g(0.30モル)、酢酸320g、酢酸コバルト(2価)0.19g(0.7ミリモル)、酢酸マンガン(2価)0.55g(2.2ミリモル)、オキソ酢酸ジルコニウム1.35g(6.0ミリモル)を加え、圧力を窒素にて0.8MPaに昇圧し、80℃に加熱した。
N,N’−ジヒドロキシピロメリットイミド14.8g(60ミリモル)を酢酸300g中に添加したスラリー液、及び空気と窒素とを混合したガスを、反応器中に供給開始して反応を開始させた。前記スラリー液は、スラリーポンプにて5時間かけて反応器に連続フィードし、ガスの供給は、オフガス中の酸素濃度が2〜8%になるように調節した。反応開始後、反応温度を0.5時間かけて120℃に昇温し、そのまま1.5時間維持した。その後3時間130℃で反応を継続した。反応の間、必要に応じて、ガスや触媒の供給量を調節して反応を制御した。
触媒添加終了後(反応開始から5時間後)、130℃にて1時間、オフガス中の酸素濃度を8%に維持して、熟成を行い、その後、ガス供給を停止し、冷却し、開圧した。
開圧後の反応液をHPLCで分析したところ、ピロメリット酸が収率88%(67.1g)、メチルトリメリット酸が収率3%(2.0g)で得られた。
実施例7(プソイドクメン)
空気流通型反応器に、プソイドクメン36g(0.30モル)、酢酸320g、酢酸コバルト(2価)0.25g(1ミリモル)、酢酸マンガン(2価)0.55g(2.2ミリモル)、オキソ酢酸ジルコニウム0.76g(3.0ミリモル)を加え、圧力を窒素にて0.8MPaに昇圧し、80℃に加熱した。
N,N’−ジヒドロキシピロメリットイミド14.8g(60ミリモル)を酢酸300g中に添加したスラリー液、及び空気と窒素とを混合したガスを、反応器中に供給開始して反応を開始させた。前記スラリー液は、スラリーポンプにて5時間かけて反応器に連続フィードし、ガスの供給は、オフガス中の酸素濃度が2〜8%になるように調節した。反応開始後、反応温度を0.5時間かけて120℃に昇温し、そのまま1.5時間維持した。その後3時間130℃で反応を継続した。反応の間、必要に応じて、ガスや触媒の供給量を調節して反応を制御した。
触媒添加終了後(反応開始から5時間後)、130℃にて1時間、オフガス中の酸素濃度を8%に維持して、熟成を行い、その後、ガス供給を停止し、冷却し、開圧した。
開圧後の反応液をHPLCで分析したところ、トリメリット酸が収率94%(59.3g)、メチルテレフタル酸が収率2%(1.1g)で生成していた。
実施例8(3,3’,4,4’−テトラメチルベンゾフェノン)
空気流通型反応器に、3,3’,4,4’−テトラメチルベンゾフェノン71.5g(0.30モル)、酢酸320g、酢酸コバルト(2価)0.25g(1ミリモル)、酢酸マンガン(2価)0.55g(2.2ミリモル)、硫酸ジルコニウム1.06g(3.0ミリモル)を加え、圧力を窒素にて0.8MPaに昇圧し、80℃に加熱した。
N−ヒドロキシスクシンイミド13.8g(120ミリモル)を酢酸300g中に添加した触媒液、及び空気と窒素とを混合したガスを、反応器中に供給開始して反応を開始させた。前記触媒液は、スラリーポンプにて5時間かけて反応器に連続フィードし、ガスの供給は、オフガス中の酸素濃度が2〜8%になるように調節した。反応開始後、反応温度を0.5時間かけて120℃に昇温し、そのまま0.5時間維持した。その後4時間130℃で反応を継続した。反応の間、必要に応じて、ガスや触媒の供給量を調節して反応を制御した。
触媒添加終了後(反応開始から5時間後)、130℃にて1時間、オフガス中の酸素濃度を8%に維持して、熟成を行い、その後、ガス供給を停止し、冷却し、開圧した。
開圧後の反応液をHPLCで分析したところ、3,3’,4,4’−テトラカルボン酸ベンゾフェノンが収率85%(91.4g)、3,4,4’−トリカルボン酸−3’−メチルベンゾフェノンが収率3%(3.0g)で生成していた。