JP4141731B2 - イミド系化合物を触媒として用いた有機化合物の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、N−ヒドロキシフタルイミドなどのイミド系化合物を触媒として用いて各種の有機化合物を酸化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
N−ヒドロキシフタルイミド等のイミド系化合物は、分子状酸素による酸化、カルボキシル化、ニトロ化、スルホン化、炭素−炭素結合生成反応(アシル化、ラジカルカップリング反応等)などの諸反応を温和な条件下で円滑に進行させる触媒として注目されている。
【0003】
例えば、特開平8−38909号公報及び特開平9−327626号公報には、イミド系化合物触媒の存在下、炭化水素やアルコールなどの基質を分子状酸素で酸化して、対応するアルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸などを製造する方法が開示されている。特開平10−316610号公報には、イミド系化合物触媒の存在下、エーテル類を酸化すると、エステル、酸無水物、ラクトン等が生成することが記載されている。WO99/50204には、イミド系化合物触媒と共酸化剤の存在下、非芳香族性のエチレン結合を有する化合物を分子状酸素により酸化して対応するエポキシドを製造する方法、及びイミド化合物触媒と共酸化剤の存在下、ケトンを分子状酸素で酸化して対応するエステル又はラクトンを製造する方法が記載されている。
【0004】
また、特開平11−239730号公報には、イミド系化合物触媒の存在下、基質を窒素酸化物と反応させて対応するニトロ化合物を得る方法、及び前記触媒の存在下、基質を一酸化炭素及び酸素と反応させて対応するカルボン酸を製造する方法が開示されている。WO99/41219には、イミド系化合物触媒の存在下、基質を酸素及びビアセチルなどの1,2−ジカルボニル化合物等と反応させると、温和な条件下でアシル化反応が進行することが記載されている。WO00/35835には、特定のイミド系化合物と該イミド系化合物に対するラジカル発生剤の存在下で2つの化合物を反応させ、ラジカル機構により付加若しくは置換反応生成物又はそれらの酸化生成物を製造する方法が開示されている。特開2001−354611号公報には、イミド系化合物と特定のコバルト(II)塩とで構成された触媒の存在下、炭素−炭素二重結合の隣接位にメチレン基を有する不飽和化合物を酸素と反応させて、該メチレン基の炭素原子にオキソ基が導入された対応する共役不飽和カルボニル化合物を生成させる共役不飽和カルボニル化合物の製造法が開示されている。
【0005】
このように、イミド系化合物を触媒として用いる方法によれば、比較的温和な条件で、基質にヒドロキシル基や、ニトロ基、カルボキシル基などの酸素原子含有基を導入したり、炭素−炭素結合を形成することが可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、イミド系化合物を触媒とする反応では、反応原料の入手元やロットにより反応収率が大きく変動することがある。特に、天然由来の原料を用いた場合にその傾向が強く、目的化合物の安定した製造が困難になるおそれがあった。
従って、本発明の目的は、イミド系化合物を触媒として用いて有機化合物を製造するに際し、該有機化合物を安定した反応収率で製造できる方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討の結果、イミド系化合物を触媒として用いる反応では、反応原料中に酸化阻害物質が含まれていると、該酸化阻害物質がイミド系化合物の触媒能を低下させ、その含有量により目的化合物の収率が大幅に変動すること、及び反応に供する原料に対して酸化阻害物質を減少させるための特定の前処理を施すと、反応収率の変動が抑制され、目的化合物を安定に製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記式(I)
【化2】
[式中、nは0又は1を示す。Xは酸素原子又は−OR基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)を示す]
で表される環状イミド骨格を有するイミド系化合物を触媒として用いる有機化合物の酸化方法であって、酸化処理による酸化阻害物質を除去するための前処理を施した有機基質を反応に供することを特徴とする有機化合物の酸化方法を提供する。
【0009】
前記イミド系化合物には、下記式(1)
【化4】
[式中、nは0又は1を示す。Xは酸素原子又は−OR基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)を示す。R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を示し、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、又はR1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個以上形成されていてもよい]
で表される化合物が含まれる。
【0010】
酸化処理には金属酸化物処理や酸素処理などが含まれる。前記酸化阻害物質として、例えば、ジエン類、フェノール類などが挙げられる。また、反応は、炭素−炭素二重結合の隣接位にメチレン基を有する不飽和化合物を酸素により酸化して、該メチレン基の炭素原子にオキソ基が導入された対応する共役不飽和カルボニル化合物を生成させる反応であってもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】
[イミド系化合物]
本発明では、触媒として前記式(I)で表される環状イミド骨格を有するイミド系化合物が使用される。
【0012】
式(I)において、窒素原子とXとの結合は単結合又は二重結合である。前記イミド系化合物は、分子中に、式(I)で表されるN−置換環状イミド骨格を複数個有していてもよい。また、このイミド化合物は、前記Xが−OR基であり且つRがヒドロキシル基の保護基である場合、N−置換環状イミド骨格のうちRを除く部分(N−オキシ環状イミド骨格)が複数個、Rを介して結合していてもよい。
【0013】
式(I)中、Rで示されるヒドロキシル基の保護基としては、有機合成の分野で慣用のヒドロキシル基の保護基を用いることができる。このような保護基として、例えば、アルキル基(例えば、メチル、t−ブチル基などのC1-4アルキル基など)、アルケニル基(例えば、アリル基など)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基など)、アリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル基など)、アラルキル基(例えば、ベンジル、2,6−ジクロロベンジル、3−ブロモベンジル、2−ニトロベンジル、トリフェニルメチル基など);置換メチル基(例えば、メトキシメチル、メチルチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、2,2,2−トリクロロエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)メチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基など)、置換エチル基(例えば、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、1−イソプロポキシエチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−メトキシエチル基など)、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、1−ヒドロキシアルキル基(例えば、1−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシヘキシル、1−ヒドロキシデシル、1−ヒドロキシヘキサデシル、1−ヒドロキシ−1−フェニルメチル基など)等のヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基など;アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル基などのC1-20脂肪族アシル基等の脂肪族飽和又は不飽和アシル基;アセトアセチル基;シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボニル基などのシクロアルカンカルボニル基等の脂環式アシル基;ベンゾイル、ナフトイル基などの芳香族アシル基など)、スルホニル基(メタンスルホニル、エタンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル、ナフタレンスルホニル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基(例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル基など)、無機酸(硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸など)からOH基を除した基、ジアルキルホスフィノチオイル基(例えば、ジメチルホスフィノチオイル基など)、ジアリールホスフィノチオイル基(例えば、ジフェニルホスフィノチオイル基など)、置換シリル基(例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリベンジルシリル、トリフェニルシリル基など)などが挙げられる。
【0014】
また、Xが−OR基である場合において、N−置換環状イミド骨格のうちRを除く部分(N−オキシ環状イミド骨格)が複数個、Rを介して結合する場合、該Rとして、例えば、オキサリル、マロニル、スクシニル、グルタリル、アジポイル、フタロイル、イソフタロイル、テレフタロイル基などのポリカルボン酸アシル基;カルボニル基;メチレン、エチリデン、イソプロピリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、ベンジリデン基などの多価の炭化水素基(特に、2つのヒドロキシル基とアセタール結合を形成する基)などが挙げられる。
【0015】
好ましいRには、例えば、水素原子;ヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基;カルボン酸、スルホン酸、炭酸、カルバミン酸、硫酸、リン酸、ホウ酸などの酸からOH基を除した基(アシル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基等)などの加水分解により脱離可能な加水分解性保護基などが含まれる。
【0016】
式(I)において、nは0又は1を示す。すなわち、式(I)は、nが0の場合は5員のN−置換環状イミド骨格を表し、nが1の場合は6員のN−置換環状イミド骨格を表す。
【0017】
前記イミド系化合物の代表的な例として、前記式(1)で表されるイミド化合物が挙げられる。このイミド化合物において、置換基R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうちハロゲン原子には、ヨウ素、臭素、塩素およびフッ素原子が含まれる。アルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル基などの炭素数1〜30程度(特に、炭素数1〜20程度)の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が含まれる。
【0018】
アリール基には、フェニル、ナフチル基などが含まれ、シクロアルキル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが含まれる。アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、テトラデシルオキシ、オクタデシルオキシ基などの炭素数1〜30程度(特に、炭素数1〜20程度)のアルコキシ基が含まれる。
【0019】
置換オキシカルボニル基には、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、デシルオキシカルボニル、ヘキサデシルオキシカルボニル基などのC1-30アルコキシ−カルボニル基(特に、C1-20アルコキシ−カルボニル基);シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル基などのシクロアルキルオキシカルボニル基(特に、3〜20員シクロアルキルオキシカルボニル基);フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル基などのアリールオキシカルボニル基(特に、C6-20アリールオキシ−カルボニル基);ベンジルオキシカルボニル基などのアラルキルオキシカルボニル基(特に、C7-21アラルキルオキシ−カルボニル基)などが挙げられる。
【0020】
アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル基などのC1-30脂肪族アシル基(特に、C1-20脂肪族アシル基)等の脂肪族飽和又は不飽和アシル基;アセトアセチル基;シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボニル基などのシクロアルカンカルボニル基等の脂環式アシル基;ベンゾイル、ナフトイル基などの芳香族アシル基などが例示できる。
【0021】
アシルオキシ基としては、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、イソブチリルオキシ、バレリルオキシ、ピバロイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、オクタノイルオキシ、デカノイルオキシ、ラウロイルオキシ、ミリストイルオキシ、パルミトイルオキシ、ステアロイルオキシ基などのC1-30脂肪族アシルオキシ基(特に、C1-20脂肪族アシルオキシ基)等の脂肪族飽和又は不飽和アシルオキシ基;アセトアセチルオキシ基;シクロペンタンカルボニルオキシ、シクロヘキサンカルボニルオキシ基などのシクロアルカンカルボニルオキシ基等の脂環式アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ基などの芳香族アシルオキシ基などが例示できる。
【0022】
前記置換基R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なっていてもよい。また、前記式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して、二重結合、または芳香族性又は非芳香属性の環を形成してもよい。好ましい芳香族性又は非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜10員環程度であり、複素環又は縮合複素環であってもよいが、炭化水素環である場合が多い。このような環には、例えば、非芳香族性脂環式環(シクロヘキサン環などの置換基を有していてもよいシクロアルカン環、シクロヘキセン環などの置換基を有していてもよいシクロアルケン環など)、非芳香族性橋かけ環(5−ノルボルネン環などの置換基を有していてもよい橋かけ式炭化水素環など)、ベンゼン環、ナフタレン環などの置換基を有していてもよい芳香族環(縮合環を含む)が含まれる。前記環は、芳香族環で構成される場合が多い。前記環は、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。
【0023】
前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、又はR1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個以上形成されていてもよい。例えば、R1、R2、R3、R4、R5又はR6が炭素数2以上のアルキル基である場合、このアルキル基を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。また、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して二重結合を形成する場合、該二重結合を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。さらに、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成する場合、該環を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。
【0024】
好ましいイミド化合物には、下記式で表される化合物が含まれる。
【化5】
(式中、R11〜R16は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を示す。R17〜R26は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子を示す。R17〜R26は、隣接する基同士が結合して、式(1c)、(1d)、(1e)、(1f)、(1h)又は(1i)中に示される5員又は6員のN−置換環状イミド骨格を形成していてもよい。Aはメチレン基又は酸素原子を示す。Xは前記に同じ)
【0025】
置換基R11〜R16におけるハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基としては、前記R1〜R6における対応する基と同様のものが例示される。
【0026】
置換基R17〜R26において、アルキル基には、前記例示のアルキル基と同様のアルキル基、特に炭素数1〜6程度のアルキル基が含まれ、ハロアルキル基には、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜4程度のハロアルキル基、アルコキシ基には、前記と同様のアルコキシ基、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基、置換オキシカルボニル基には、前記と同様の置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)が含まれる。また、アシル基としては前記と同様のアシル基(脂肪族飽和又は不飽和アシル基、アセトアセチル基、脂環式アシル基、芳香族アシル基等)などが例示され、アシルオキシ基としては前記と同様のアシルオキシ基(脂肪族飽和又は不飽和アシルオキシ基、アセトアセチルオキシ基、脂環式アシルオキシ基、芳香族アシルオキシ基等)などが例示される。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素原子が例示できる。置換基R17〜R26は、通常、水素原子、炭素数1〜4程度の低級アルキル基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ニトロ基、ハロゲン原子である場合が多い。
【0027】
好ましいイミド化合物のうち5員のN−置換環状イミド骨格を有する化合物の代表的な例として、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α−メチルコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,α−ジメチルコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,β−ジメチルコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,α,β,β−テトラメチルコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミド、N,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、α,β−ジアセトキシ−N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,β−ビス(プロピオニルオキシ)コハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,β−ビス(バレリルオキシ)コハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,β−ビス(ラウロイルオキシ)コハク酸イミド、α,β−ビス(ベンゾイルオキシ)−N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−4−メトキシカルボニルフタル酸イミド、4−エトキシカルボニル−N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4−ペンチルオキシカルボニルフタル酸イミド、4−ドデシルオキシ−N−ヒドロキシカルボニルフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4−フェノキシカルボニルフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4,5−ビス(メトキシカルボニル)フタル酸イミド、4,5−ビス(エトキシカルボニル)−N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4,5−ビス(ペンチルオキシカルボニル)フタル酸イミド、4,5−ビス(ドデシルオキシカルボニル)−N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4,5−ビス(フェノキシカルボニル)フタル酸イミドなどの式(1)におけるXが−OR基で且つRが水素原子である化合物;これらの化合物に対応する、Rがアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基である化合物;N−メトキシメチルオキシフタル酸イミド、N−(2−メトキシエトキシメチルオキシ)フタル酸イミド、N−テトラヒドロピラニルオキシフタル酸イミドなどの式(1)におけるXが−OR基で且つRがヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール結合を形成可能な基である化合物;N−メタンスルホニルオキシフタル酸イミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)フタル酸イミドなどの式(1)におけるXが−OR基で且つRがスルホニル基である化合物;N−ヒドロキシフタル酸イミドの硫酸エステル、硝酸エステル、リン酸エステル又はホウ酸エステルなどの式(1)におけるXが−OR基で且つRが無機酸からOH基を除した基である化合物などが挙げられる。
【0028】
好ましいイミド化合物のうち6員のN−置換環状イミド骨格を有する化合物の代表的な例として、例えば、N−ヒドロキシグルタルイミド、N−ヒドロキシ−α,α−ジメチルグルタルイミド、N−ヒドロキシ−β,β−ジメチルグルタルイミド、N−ヒドロキシ−1,8−デカリンジカルボン酸イミド、N,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−デカリンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド(N−ヒドロキシナフタル酸イミド)、N,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどの式(1)におけるXが−OR基で且つRが水素原子である化合物;これらの化合物に対応する、Rがアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基である化合物;N−メトキシメチルオキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ビス(メトキシメチルオキシ)−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどの式(1)におけるXが−OR基で且つRがヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール結合を形成可能な基である化合物;N−メタンスルホニルオキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ビス(メタンスルホニルオキシ)−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどの式(1)におけるXが−OR基で且つRがスルホニル基である化合物;N−ヒドロキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド又はN,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドの硫酸エステル、硝酸エステル、リン酸エステル又はホウ酸エステルなどの式(1)におけるXが−OR基で且つRが無機酸からOH基を除した基である化合物などが挙げられる。
【0029】
前記イミド系化合物のうち、Xが−OR基で且つRが水素原子である化合物(N−ヒドロキシ環状イミド化合物)は、慣用のイミド化反応、例えば、対応する酸無水物とヒドロキシルアミンとを反応させ、酸無水物基の開環及び閉環を経てイミド化する方法により得ることができる。また、前記イミド系化合物のうち、Xが−OR基で且つRがヒドロキシル基の保護基である化合物は、対応するRが水素原子である化合物(N−ヒドロキシ環状イミド化合物)に、慣用の保護基導入反応を利用して、所望の保護基を導入することにより調製することができる。例えば、N−アセトキシフタル酸イミドは、N−ヒドロキシフタル酸イミドに無水酢酸を反応させたり、塩基の存在下でアセチルハライドを反応させることにより得ることができる。また、これ以外の方法で製造することも可能である。
【0030】
特に好ましいイミド化合物は、脂肪族多価カルボン酸無水物又は芳香族多価カルボン酸無水物から誘導されるN−ヒドロキシイミド化合物(例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミド、N−ヒドロキシグルタルイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなど);及び該N−ヒドロキシ環状イミド化合物のヒドロキシル基に保護基を導入することにより得られる化合物などが含まれる。
【0031】
式(I)で表されるN−置換環状イミド骨格を有するイミド系化合物は、反応において、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。前記イミド系化合物は反応系内で生成させてもよい。また、イミド系化合物は担体に担持した形態で用いてもよい。担体としては、活性炭、ゼオライト、シリカ、シリカ−アルミナ、ベントナイトなどの多孔質担体を用い場合が多い。
【0032】
[有機基質]
本発明において反応原料として用いられる化合物(有機基質;以下、単に「基質」と称することがある)には、前記イミド系化合物触媒の存在下で、分子状酸素による酸化、カルボキシル化、ニトロ化、スルホン化、炭素−炭素結合生成反応(アシル化、ラジカルカップリング等)などの反応が可能な部位を有する種々の化合物が含まれる(前記従来の技術の項に示した文献参照)。これらの化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用される。
【0033】
有機基質の代表的な例として、例えば、炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類、複素環化合物、チオール類、スルフィド類、アミド類などが挙げられる。なかでも好ましい基質には、炭化水素類、アルコール類、アルデビド類、ケトン類などが含まれる。
【0034】
炭化水素類としては、例えば、置換基を有していてもよい飽和又は不飽和脂肪族炭化水素類、置換基を有していてもよい飽和又は不飽和脂環式炭化水素類、完全又は部分水素添加縮合多環式炭化水素などの非芳香族性環を含む縮合環式炭化水素類、第三級炭素原子(メチン炭素)を含む橋かけ環式炭化水素類、芳香族性環にメチル基又はメチレン基が結合した芳香族炭化水素類などが挙げられる。
【0035】
飽和又は不飽和脂肪族炭化水素類としては、例えば、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカンなどのC4-20飽和炭化水素;2−ブテン、イソブテンなどのC4-20オレフィン炭化水素などの直鎖及び分枝状の脂肪族炭化水素(好ましくは、イソブタンなどの分枝状飽和炭化水素、イソブテンなどの分枝状不飽和炭化水素など)などが例示される。
【0036】
飽和又は不飽和脂環式炭化水素類には、例えば、シクロアルカン類(例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、シクロドデカンなど)、環状オレフィン類(例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロデセンなど)、テルペン類(例えば、リモネン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1−p−メンテン、3−p−メンテン、cis−カルベオール、trans−カルベオール、α−セドレン、バレンセン、イソロンギホレンなど)などが挙げられる。好ましい脂環式炭化水素類には、3〜30員環、好ましくは3〜25員環、特に3〜20員環(例えば5〜20員環、とりわけ5〜16員環)程度の脂環式炭化水素類が含まれる。なお、上記テルペン類のうち多環式化合物は、多環式炭化水素類にも分類される。
【0037】
縮合多環式炭化水素類又は橋かけ環式炭化水素類などの多環式炭化水素類には、少なくとも一つのメチリジン基(すなわち、メチン炭素−水素結合−CH<)を橋頭位及び/又は接合位(環と環との接合位)に有する化合物が含まれる。完全又は部分水素添加縮合多環式炭化水素などの非芳香族性環を含む縮合多環式炭化水素類には、例えば、アセナフテン、フルオレン、テトラリン、インデン、インダン、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロフェナレン、パーヒドロアセナフチレン、デカリン、ヘキサヒドロインダンなどが挙げられ、5〜8員環(特に5又は6員環)が縮合している場合が多い。
【0038】
橋かけ環式炭化水素類には、例えば、二環式炭化水素(例えば、ピナン、ピネン、ボルナン、ノルボルナン、ノルボルネン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[4.3.2]ウンデカンなど)、三環式炭化水素(例えば、アダマンタン、エキソトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、エンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンなど)、四環式炭化水素(例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンなど)などの他、ジシクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどのジエンの二量体、これらの二量体の水素添加物(例えば、ジシクロヘキサン、ジシクロペンタンなど)およびこれらの誘導体やテルペン類(例えば、単環式モノテルペン、二環式モノテルペン、単環式セスキテルペン、二環式セスキテルペン、三環式セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン、ポリテルペン及びこれらの誘導体など)などが挙げられる。橋かけ環式炭化水素類としては、環を構成する炭素数が7〜16程度(特に炭素数6〜14程度)の二環式ないし四環式炭化水素(例えば、ピナン、ボルナン、ノルボルナン、ノルボルネン、アダマンタンなど)を用いる場合が多い。
【0039】
芳香族性環にメチル基又はメチレン基が結合した芳香族炭化水素類は、少なくとも一つのメチル基又はメチレン基が芳香族性環に置換した化合物であればよく、芳香族性環は、芳香族性炭化水素環、芳香族性複素環の何れであってもよい。このような化合物として、例えば、トルエン、(o−,m−,p−)キシレン、1,2,3−トリメチルベンゼン、メシチレン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、デュレン、4−t−ブチル−1−メチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、o−,m−又はp−エチルトルエン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、1,5−ジメチルナフタレン、2,5−ジメチルナフタレン、1−メチルアントラセン、4,4′−ジメチルビフェニル、ジベンジル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタンなどが挙げられる。これらのなかでも、メチル基の置換数が、分子中1〜4個程度のC6-10芳香族炭化水素などが特に好ましい。
【0040】
前記炭化水素類は、その炭化水素の種類に応じて、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環式基、オキソ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アミノ基、置換アミノ基、シアノ基、ニトロ基などが置換していてもよい。
【0041】
好ましい炭化水素類には、(1)非芳香族性炭素−炭素二重結合の隣接位にメチレン基などの炭素−水素結合を有する不飽和化合物(例えば、2−ブテンなどのC4-20オレフィン炭化水素;シクロヘキセンなどの5〜16員環のシクロアルケン;バレンセンなどのテルペン類など)、(2)脂環式炭化水素(例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの5〜16員環のシクロアルカンなど)、(3)非芳香族性環(例えば、シクロアルカン環又は複素環)を含む縮合環式化合物(例えば、デカリン、テトラリン、フルオレンなど)、(4)第三級炭素原子(メチン炭素)を含む橋かけ環式炭化水素(例えば、アダマンタン、ノルボルネンなど)、(5)芳香族性環にメチル基又はメチレン基が結合した芳香族炭化水素(例えば、トルエン、(o−,m−,p−)キシレン、p−t−ブチルトルエンなどの1〜4個のメチル基を有するC6-10芳香族炭化水素;ジフェニルメタンなどのメチレン基が芳香環に結合した芳香族炭化水素等)などが含まれる。
【0042】
前記炭化水素類を、前記イミド系化合物触媒の存在下、酸素で酸化することにより、対応するアルコール類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、エポキシ化合物、ラクトン、酸無水物、アセタール類、エステル類などの酸化物が生成する。例えば、非芳香族性炭素−炭素二重結合の隣接位にメチレン基などの炭素−水素結合を有する不飽和化合物を酸化すると、炭素−炭素二重結合に隣接する部位が酸化されて、ヒドロキシル基又はオキソ基が導入され、対応するアリルアルコール類や共役不飽和カルボニル化合物が生成する。脂環式炭化水素を酸化すると、環にヒドロペルオキシ基、ヒドロキシル基又はオキソ基が導入され、条件によっては環が酸化的に開裂してジカルボン酸などが生成する。非芳香族性環を含む縮合環式化合物を酸化すると、該非芳香族性環にヒドロキシル基又はオキソ基が導入され、条件によっては環が開裂してジカルボン酸などが生成する。第三級炭素原子(メチン炭素)を含む橋かけ環式炭化水素を酸化すると該第三級炭素原子(橋頭位など)にヒドロキシル基が導入されたり、反応条件により、その隣接位にオキソ基が導入される。芳香族性環にメチル基又はメチレン基が結合した芳香族炭化水素を酸化すると、該メチル基又はメチレン基が酸化され、条件により、対応するアルコール、アルデヒド、ケトン又はカルボン酸が生成する。
【0043】
また、前記炭化水素類を前記イミド系化合物触媒の存在下、酸素及び一酸化炭素、窒素酸化物(NO、NO2、N2O3など)、硫黄酸化物(SO2など)、1,2−ジカルボニル化合物、又はラジカル的な炭素−炭素結合形成反応の可能な化合物と反応させることにより、それぞれ、対応するカルボン酸、ニトロ化合物、有機硫黄酸(スルホン酸など)、アシル化反応生成物(アルデヒド、ケトン)又は炭素−炭素結合形成反応生成物若しくはその誘導体(例えば、酸化体、ラクトン等の環化体など)が生成する。例えば、第三級炭素原子(メチン炭素)を含む橋かけ環式炭化水素を、前記イミド系化合物触媒の存在下、酸素及び一酸化炭素、窒素酸化物(NO、NO2、N2O3など)、硫黄酸化物(SO2など)、1,2−ジカルボニル化合物、又はラジカル的な炭素−炭素結合形成反応の可能な化合物と反応させると、前記第三級炭素原子に、カルボキシル基、ニトロ基、スルホン酸基、アシル基、炭化水素基等が導入された化合物又はその誘導体が生成する。
【0044】
前記ラジカル的な炭素−炭素結合形成反応の可能な化合物としては、例えば、不飽和化合物、メチン炭素原子を有する化合物などのラジカルを捕捉可能な化合物が挙げられる。前記不飽和化合物として、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、クロトン酸エステル、桂皮酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、スチレン等の炭素−炭素不飽和結合の隣接位に電子吸引基を有する不飽和化合物(活性オレフィン類など);メチルアセチレン等の炭素−炭素三重結合を有する化合物;ベンゼン環などの芳香族性炭素環を有する化合物;ケテン類;イソシアネート又はチオシアネート化合物;プロピレン、1−オクテンなどの非活性オレフィンなどが挙げられる。前記メチン炭素原子を有する化合物としては、デカリン、アダマンタンなどの橋かけ環式化合物;1−メチルシクロヘキサンなどの環に炭化水素基が結合した非芳香族性環状化合物;イソブタンなどの第3級炭素原子を有する鎖状炭化水素類などが挙げられる。これらの化合物は、不飽和結合を構成する炭素原子やメチン炭素原子の部位で、基質と炭素−炭素結合を形成する。
【0045】
基質としてのアルコール類には、前記炭化水素類のアルコール誘導体が含まれ、例えば、脂肪族一価アルコール類、脂肪族多価アルコール類、脂環式一価アルコール類、脂環式多価アルコール類又は芳香族アルコール類などが含まれる。
【0046】
脂肪族一価アルコール類には、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、ミリスチルアルコール、1−ヘキサデカノールなどのC1-20飽和脂肪族アルコール;アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパルギルアルコール、シトロネロール、ゲラニオールなどの不飽和脂肪族アルコールなどが挙げられる。脂肪族多価アルコール類には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ピナコール、グリセリンなどが挙げられる。脂環式一価アルコール類には、例えば、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、シクロデカノール、シクロウンデカノール、シクロドデカノール、シクロテトラデカノール、シクロエイコサノール、メチルシクロヘキサノール、シクロヘキセン−1−オール、ボルネオール、メントールなどの5〜30員環の脂肪式一価アルコールなどが挙げられる。好ましい脂環式一価アルコール類には、5〜30員環、好ましくは5〜25員環、特に5〜20員環(例えば、5〜16員環)の化合物が含まれる。脂環式多価アルコール類には、例えば、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールなどが挙げられ、芳香族アルコール類には、例えば、ベンジルアルコール、ベンズヒドロール、フェネチルアルコールなどが挙げられる。
【0047】
これらのアルコールのうち第一級又は第二級アルコールが好ましく、脂肪族アルコール、脂環式アルコール及び芳香族アルコールの何れであってもよい。
【0048】
好ましいアルコール類には、(1)不飽和結合に隣接する部位にヒドロキシル基を有する化合物(例えば、アリルアルコール、ベンジルアルコール、ベンズヒドロールなどの不飽和脂肪族アルコールや芳香族アルコールなど)、(2)脂環式アルコール(例えば、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノールなどのC5-16シクロアルカノールなど)、(3)第三級炭素原子(メチン炭素)を有する脂環式アルコール(例えば、ボルオネールなど)などが含まれる。
【0049】
これらのアルコール類を、前記イミド系化合物触媒の存在下、酸素で酸化することにより、対応するアルデヒド類、ケトン類又はカルボン酸類が生成する。例えば、脂環式アルコール類は、酸化の程度に応じて、対応する脂環式ケトン類又は多価カルボン酸が生成する。例えば、2−メチルシクロヘキサノールの酸化により、2−メチルシクロヘキサノン、さらには、2−メチルアジピン酸が生成する。また、第1級又は第2級アルコールを前記イミド系化合物触媒の存在下、前記ラジカル的な炭素−炭素結合形成反応の可能な化合物と反応させることにより、対応する炭素−炭素結合形成反応生成物若しくはその誘導体(例えば、酸化体、ラクトン等の環化体など)が生成する。この場合、第1級又は第2級アルコールのヒドロキシル基が結合している炭素原子部位で炭素−炭素結合が形成される。
【0050】
基質としてのアルデヒド類には、前記炭化水素類のアルデヒド誘導体が含まれ、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキサナール、オクタナールなどのC1-20飽和脂肪族アルデヒド;アクロレイン、ゲラニアール、シトロネラールなどの不飽和脂肪族アルデヒド;グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデビド、ピメリンアルデヒド、スベリンアルデヒド、セバシンアルデヒドなどの脂肪族ポリアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド類などの他、例えば、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、アニスアルデヒド、1−ナフチルアルデヒド、バニリン(バニルアルデヒド)、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどの芳香族アルデヒド;ホルミルシクロヘキサンなどの脂環式アルデヒド;ニコチンアルデヒド、フルフラールなどの複素環アルデヒドなどが挙げられる。
【0051】
アルデヒド類を、前記イミド系化合物触媒の存在下、酸素で酸化すると、対応するカルボン酸が生成する。例えば、アジピンアルデヒドの酸化により、アジピンが生成する。
【0052】
基質として用いるケトン類には、前記炭化水素類のケトン誘導体が含まれ、例えば、脂肪族ケトン類、脂環式ケトン類、芳香族ケトン類、複素環ケトン類などが含まれる。脂肪族ケトン類には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、ピナコロンなどのC2-20脂肪族ケトンなどが含まれる。脂環式ケトン類には、例えば、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロオクタノン、シクロデカノン、シクロドデカノン、2−メチルシクロヘキサノン、シクロヘキサンジオン、シクロペンテノン、シクロヘキセノン、メントン、カンファーなどの4〜30員環の脂環族ケトン(環状ケトン)などが含まれる。好ましい脂環式ケトン類には、5〜20員環、特に5〜16員環の化合物が含まれる。芳香族ケトン類としては、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、デオキシベンゾイン、1−ナフタレノンなどが挙げられる。複素環ケトン類としては、例えば、インデン−1−オン、1,2,3−インダントリオン、フルオレン−9−オン、4−ピラノンなどの複素環ケトンなどが挙げられる。
【0053】
ケトン類を前記イミド系化合物触媒の存在下で酸素酸化すると、対応するカルボン酸が生成する。例えば、ジエチルケトンの酸化により、酢酸とプロピオン酸が生成し、シクロオクタノンの酸化により、スベリン酸が生成する。
【0054】
基質として用いるアミン類としては、第一級又は第二級アミンが好ましく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、ヒドロキシルアミン、エタノールアミンなどの脂肪族アミン類;シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミンなどの脂環式アミン類;ベンジルアミン、トルイジンなどの芳香族アミン類などが例示される。アミン類を前記イミド系化合物触媒の存在下で酸化すると、対応するシッフ塩基、オキシムなどが生成する。
【0055】
基質として用いる複素環化合物としては、(a)非芳香族性複素環化合物又は非芳香族性複素環を含む縮合環式炭化水素(例えば、ピラン、ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、イソインドリン、クロメン、キサンテン、クロマン、イソクロマンなど)、及び非芳香族性複素環にアルキル基(例えば、メチル、エチル基などの炭素数1〜6程度のアルキル基など)が置換している、前記非芳香族性複素環化合物又は非芳香族性複素環を含む縮合環式炭化水素、(b)芳香族性複素環を有し、且つ芳香族性複素環の隣接位にメチル基またはメチレン基を有する複素環化合物(例えば、2−メチルフラン、2,5−ジメチルフラン、2−メチルチオフェン、2,5−ジメチルチオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、3−エチルピリジン、2−メチルキノリンなどの、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択された1〜3個のヘテロ原子を含む芳香族性複素環に炭素数1〜6程度のアルキル基が置換している複素環化合物など)などが例示される。
【0056】
これらの複素環化合物の酸化により、対応するアルコール類、ケトン類又はカルボン酸類が生成する。例えば、前記複素環化合物(a)を酸化すると、非芳香族性複素環において、ヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄又は窒素原子など)の隣接位のメチレン基がカルボニル基に変換され、対応するカルボニル基を有する化合物が生成する。また、前記複素環化合物(b)を酸化すると、芳香族性複素環の隣接位にメチル基を有する化合物からは、対応する複素環アルデヒド又は複素環カルボン酸が生成し、芳香族性複素環の隣接位にメチレン基を有する化合物からは、対応する複素環ケトンが生成する。
【0057】
基質として用いるチオール類としては、例えば、エタンチオール、フェニルメタンチオールなどが挙げられ、スルフィド類としては、例えば、ジエチルスルフィド、メチルプロピルスルフィド、ジフェニルスルフィドなどが挙げられる。また、アミド類には、例えば、ホルムアミド、アセトアミドなどが含まれる。
なお、2種以上の基質を併用することにより、酸化反応等の反応速度を著しく向上できる場合がある。
【0058】
[有機基質の前処理]
本発明の重要な特徴は、イミド系化合物を触媒とする反応に供する有機基質に対して、予め酸化処理による酸化阻害物質を除去するための前処理を施す点にある。
【0059】
酸化阻害物質には、一般に酸化反応を阻害するとされている抗酸化剤やラジカル捕捉剤などが含まれる。このような酸化阻害物質はイミド系化合物の触媒能を低下させる。酸化阻害物質の代表的な例として、例えば、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン、α−テルピネン、オシメン、ミルセン、α−フェランドレン、β−フェランドレン、アビエチン酸、レボピマール酸、エルゴステロールなどの共役ジエン類;ビタミンD2、ビタミンD3、α−カロチン、β−カロチン、γ−カロチン、リコペン、ビタミンAなどの共役ポリエン(共役トリエン、共役テトラエンなど);α−フムレン、アラキドン酸などの系中で共役ジエンに異性化可能な化合物(1,4−ジエンなど);チモール、カルバクロール、チロシン、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール、カテキン、エストラジオール、エラグ酸、γ−オリザノール、クエルセチン、セサモリン、β−トコフェロール(ビタミンE)、d−α−トコフェロール、d−γ−トコフェロール、d−δ−トコフェロール、ノルジヒドログアヤレチック酸、フェルラ酸、ヘスペレチン、モリン、ルチン、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピルなどのフェノール類;ビタミンC(L−アスコルビン酸)又はその塩若しくはエステル(L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸パルミチン酸エステルなど)、エリソルビン酸(=エリトルビン酸=イソアスコルビン酸)又はその塩(エリソルビン酸ナトリウムなど)などのジエンやフェノール類以外の還元性物質などが挙げられる。このような酸化阻害物質は、天然由来の化合物、例えばテルペン類などに多く含まれていることが多い。例えば、天然由来のバレンセンや、これに蒸留、加熱処理等を施したものには、下記式(2)で表される共役ジエン化合物[1−エチリデン−2−メチル−2−(4−メチル−1,3−ペンタジエニル)シクロヘキサン、1−エチリデン−3−メチル−3−(4−メチル−1,3−ペンタジエニル)シクロヘキサン、1−エチリデン−4−メチル−4−(4−メチル−1,3−ペンタジエニル)シクロヘキサン]などの酸化阻害物質が含まれている。
【化6】
【0060】
酸化阻害物質除去のための有機基質の前処理において、酸化処理のみを行ってもよい。また、酸化処理と、カラムクロマトグラフィー処理、蒸留、吸着等の他の前処理とを組み合わせることもできる。
【0061】
酸化処理は有機基質と酸化剤とを接触させることにより行うことができる。酸化剤として、例えば、分子状酸素;オゾン;過マンガン酸塩、二酸化マンガン、マンガン(III)塩などのマンガン化合物、クロム酸などのクロム化合物、四酸化オスミウムなどのオスミウム化合物、四酸化ルテニウムなどのルテニウム化合物、酢酸鉛(IV)などの鉛化合物、酢酸水銀(II)などの水銀化合物、炭酸銀、酸化銀、硝酸銀などの銀化合物、タリウム化合物、酸化第二銅などの銅化合物、パラジウム金属、塩化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)などのパラジム化合物、酸化鉄や塩化鉄(III)などの鉄化合物、酸化バナジウム(V)などのバナジウム化合物、セリウム(IV)化合物、ビスマス酸ナトリウムなどのビスマス化合物、酸化ニッケルや過酸化ニッケルなどのニッケル化合物、酸化コバルトなどのコバルト化合物などの金属酸化剤(金属酸化物等);過酢酸、m−クロロ過安息香酸などの過酸、過酸化水素、ヒドロペルオキシドなどの過酸化物;2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン、テトラクロロ−1,2−ベンゾキノン、テトラクロロ−1,4−ベンゾキノンなどのキノン類;二酸化セレンなどのセレン化合物;塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン、次亜塩素酸などの次亜ハロゲン酸又はその塩、ハロゲン酸又はその塩、過ヨウ素酸又はその塩、N−ハロカルボン酸アミドなどのハロゲン含有化合物;硝酸、亜硝酸、二酸化窒素、四酸化二窒素などの窒素酸化物;酸化活性を有する酵素又は微生物;陽極などが挙げられる。
【0062】
酸化剤として分子状酸素を用いる場合には、触媒を使用することができる。触媒としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、タングステン、モリブデン、ルテニウム、オスミウム、パラジウム、白金、銀などの遷移金属の化合物(例えば、錯体、酸化物等)などが挙げられる。これらの触媒は均一系の触媒であってもよく固体触媒であってもよい。
【0063】
上記の酸化剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。好ましい酸化処理には、分子状酸素による処理、二酸化マンガン等のマンガン化合物などの金属酸化剤による処理が含まれる。
【0064】
有機基質と酸化剤との接触は溶媒中で行ってもよい。酸化処理温度は、有機基質の種類や酸化剤の種類によっても異なるが、通常0〜200℃、好ましくは10〜150℃、さらに好ましくは20〜100℃程度である。
【0065】
カラムクロマトグラフィー処理としては、有機基質の種類に応じて適宜選択でき、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどを好適に使用できる。
【0066】
前処理を施した有機基質は、そのまま特に分離精製することなく、又は必要に応じて濾過等の適宜な処理(分離精製処理等)を施した後、イミド系化合物を触媒として用いる反応に供される。有機基質中の酸化阻害物質(例えば、ジエン類、フェノール類)の含有量は、その種類によっても異なるが、1000重量ppm以下が好ましく、特に500重量ppm以下が好ましい。より具体的には、有機基質がテルペン類などの場合には、共役ジエン類の含有量が1000重量ppm以下、特に500重量ppm以下が好ましい。例えば、有機基質としてのテルペン類がバレンセンである場合には、前記式(2)で表される共役ジエン類の含有量が1000重量ppm以下、特に500重量ppm以下が好ましい。
【0067】
[反応]
イミド系化合物を触媒として用いる反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。前記溶媒としては、基質や反応の種類等により適宜選択でき、例えば、酢酸、プロピオン酸などの有機酸;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロベンゼン、ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ化合物;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;水;これらの混合溶媒などが挙げられる。溶媒としては、酢酸などの有機酸類、アセトニトリルやベンゾニトリルなどのニトリル類、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、酢酸エチルなどのエステル類などを用いる場合が多い。
【0068】
反応に用いるイミド系化合物の量は、基質や反応の種類によっても異なるが、一般には、基質1モルに対して0.0000001〜1モル、好ましくは0.000001〜0.5モル、さらに好ましくは0.00001〜0.4モル程度であり、0.0001〜0.35モル程度である場合が多い。
【0069】
反応においては、前記イミド系化合物とともに助触媒を用いることもできる。助触媒として金属化合物が挙げられる。前記イミド系化合物と金属化合物とを併用することにより反応速度や反応の選択性を向上させることができる。
【0070】
金属化合物を構成する金属元素としては、特に限定されないが、周期表1〜15族の金属元素を用いる場合が多い。なお、本明細書では、ホウ素Bも金属元素に含まれるものとする。好ましい金属元素には、遷移金属元素(周期表3〜12族元素)が含まれる。なかでも、周期表5〜11族元素、特に5族〜9族元素が好ましく、とりわけV、Mo、Mn、Coなどが好ましい。また、遷移金属元素と周期表1族又は2族元素との併用により活性が向上する場合がある。金属元素の原子価は特に制限されず、例えば0〜6価程度である。
【0071】
金属化合物としては、前記金属元素の単体、水酸化物、酸化物(複合酸化物を含む)、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、オキソ酸塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩など)、イソポリ酸又はその塩、ヘテロポリ酸又はその塩などの無機化合物;有機酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、青酸塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩など)、錯体などの有機化合物が挙げられる。前記錯体を構成する配位子としては、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど)、アシル(アセチル、プロピオニルなど)、アルコキシカルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、ハロゲン原子(塩素、臭素など)、CO、CN、酸素原子、H2O(アコ)、ホスフィン(トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンなど)のリン化合物、NH3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、NO3(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合物などが挙げられる。
【0072】
金属化合物の具体例としては、例えば、コバルト化合物を例にとると、水酸化コバルト、酸化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、リン酸コバルトなどの無機化合物;酢酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルトなどの有機酸塩;コバルトアセチルアセトナトなどの錯体等の2価又は3価のコバルト化合物などが挙げられる。また、バナジウム化合物の例としては、水酸化バナジウム、酸化バナジウム、塩化バナジウム、塩化バナジル、硫酸バナジウム、硫酸バナジル、バナジン酸ナトリウムなどの無機化合物;バナジウムアセチルアセトナト、バナジルアセチルアセトナトなどの錯体等の2〜5価のバナジウム化合物などが挙げられる。他の金属元素の化合物としては、前記コバルト化合物、バナジウム化合物に対応する化合物などが例示される。金属化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。特に、コバルト化合物とマンガン化合物とを組み合わせると反応速度が著しく向上することが多い。また、価数の異なる複数の金属化合物(例えば、2価の金属化合物と3価の金属化合物)を組み合わせて用いるのも好ましい。
【0073】
前記金属化合物の使用量は、例えば、前記イミド系化合物1モルに対して、0.0001〜10モル、好ましくは0.005〜3モル程度である。また、金属化合物の使用量は、基質1モルに対して、例えば0.00001モル%〜10モル%、好ましくは0.1モル%〜5モル%程度である。
【0074】
また、助触媒として、少なくとも1つの有機基が結合した周期表15族又は16族元素を含む多原子陽イオン又は多原子陰イオンとカウンターイオンとで構成された有機塩が用いられることもある。助触媒として前記有機塩を用いることにより、反応速度や反応の選択性を向上させることができる。
【0075】
前記有機塩において、周期表15族元素には、N、P、As、Sb、Biが含まれる。周期表16族元素には、O、S、Se、Teなどが含まれる。好ましい元素としては、N、P、As、Sb、Sが挙げられ、特に、N、P、Sなどが好ましい。前記元素の原子に結合する有機基には、置換基を有していてもよい炭化水素基(脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基など)、置換オキシ基(アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基など)などが含まれる。
【0076】
前記有機塩の代表的な例として、有機アンモニウム塩、有機ホスホニウム塩、有機スルホニウム塩などの有機オニウム塩が挙げられる。また、前記有機塩には、メタンスルホン酸塩、ドデカンスルホン酸塩などのアルキルスルホン酸塩(例えば、C6-18アルキルスルホン酸塩);ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩などのアルキル基で置換されていてもよいアリールスルホン酸塩(例えば、C6-18アルキル−アリールスルホン酸塩);スルホン酸型イオン交換樹脂(イオン交換体);ホスホン酸型イオン交換樹脂(イオン交換体)なども含まれる。
【0077】
前記有機塩の使用量は、例えば、前記イミド系化合物1モルに対して、0.001〜0.1モル程度、好ましくは0.005〜0.08モル程度である。
【0078】
また、助触媒として、強酸(例えば、pKa2(25℃)以下の化合物)が使用されることもある。好ましい強酸には、例えば、ハロゲン化水素、ハロゲン化水素酸、硫酸、ヘテロポリ酸などが含まれる。強酸の使用量は、前記イミド系化合物1モルに対して、例えば0.001〜3モル程度である。
【0079】
さらに、助触媒として、電子吸引基が結合したカルボニル基を有する化合物が用いられる場合もある。電子吸引基が結合したカルボニル基を有する化合物の代表的な例として、ヘキサフルオロアセトン、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロフェニルケトン、ペンタフルオロフェニルケトン、安息香酸などが挙げられる。この化合物の使用量は、基質1モルに対して、例えば0.0001〜3モル程度である。
【0080】
また、反応系内にラジカル発生剤やラジカル反応促進剤を存在させることもある。このような成分として、例えば、ハロゲン(塩素、臭素など)、過酸(過酢酸、m−クロロ過安息香酸など)、過酸化物(過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)等のヒドロペルオキシドなど)、硝酸又は亜硝酸若しくはそれらの塩、二酸化窒素、ベンズアルデヒド等のアルデヒドなどが挙げられる。これらの成分を系内に存在させると、反応が促進される場合がある。前記成分の使用量は、前記イミド系化合物1モルに対して、例えば0.001〜3モル程度である。
【0081】
反応温度は、基質や反応の種類に応じて適宜選択できるが、一般には0〜300℃、好ましくは10〜250℃、さらに好ましくは20〜200℃程度である。反応は常圧又は加圧下で行うことができ、加圧下で反応させる場合には、通常0.1〜10MPa程度である。
【0082】
反応は回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。反応終了後、反応生成物等は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離精製手段やこれらの組み合わせにより分離精製できる。
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、イミド系化合物を触媒として用いて有機化合物を製造するに際し、予め有機基質に対して酸化阻害物質を除去するための特定の前処理を施すので、イミド系化合物の触媒活性が損なわれず、目的の有機化合物を安定した反応収率で製造できる。
【0084】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、分析はガスクロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行った。HPLCの測定条件は以下の通りである。
カラム:YMC-Pack ODS-AM AM-302、4.6φ×150L
カラム温度:40℃
サンプル濃度:約5000ppm
サンプル注入量:10μl
検出波長:200〜500nm
移動層:0.06重量%HClO4水溶液(A)とアセトニトリル(B)の混合液
移動層中のBの濃度[y(体積%)]の変化(試料注入後の時間:t分):
t=0〜35分;y=(55/35)t+20
t=35〜45分;y=100
t=45〜60分;y=20
【0085】
天然由来のバレンセンを上記の条件でHPLC分析すると、保持時間47.3分の位置に酸化阻害物質xのピークが検出される。この物質は下記スペクトルデータより前記式(2)で表される共役ジエン化合物と同定された。なお、バレンセンの保持時間は48.6分である。
1H-NMR(400MHz;CDCl3) δ:1.25-1.5(8H, m), 1.61(3H, s), 1.70(3H, s), 1.76(3H, d, J=7.0Hz), 1.81(3H, s), 5.56(1H, q, J=7.0Hz), 5.91(1H, d, J=10.9Hz), 6.19(1H, d, J=15.1Hz), 6.35(1H, dd, J=10.9, 15.1Hz)
MS m/e:204
【0086】
実施例1
工業品のシクロヘキセン(純度98.0重量%;シクロヘキサジエンの含有量:1560重量ppm)10.0g(純シクロヘキセン9.8g)と、有機反応用二酸化マンガン(粒径5μm以下、85%品)0.10gをフラスコに入れ、窒素雰囲気下、70℃で2時間攪拌した。処理液を冷却後、メンブレンフィルター(孔径1μm)を用いて濾過を行うことにより、純度97.7重量%のシクロヘキセン(シクロヘキサジエンの含有量:290重量ppm)を9.8g得た。フラスコに、上記処理後のシクロヘキセン1.64g、N−ヒドロキシフタルイミド3.0ミリモル、酢酸コバルト(II)4水塩0.2ミリモル、コバルト(III)アセチルアセトナト0.4ミリモル、硝酸コバルト(II)6水塩0.2ミリモル、及びアセトニトリル31.2gを入れ、酸素雰囲気下(1atm=0.1MPa)、40℃で1時間攪拌した。反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、目的化合物である2−シクロヘキセン−1−オンが収率73%で生成していた。シクロヘキセンの転化率は95%であった。
【0087】
比較例1
フラスコに、工業品のシクロヘキセン(純度98.0重量%;シクロヘキサジエンの含有量:1560重量ppm)1.64g、N−ヒドロキシフタルイミド3.0ミリモル、酢酸コバルト(II)4水塩0.2ミリモル、コバルト(III)アセチルアセトナト0.4ミリモル、硝酸コバルト(II)6水塩0.2ミリモル、及びアセトニトリル31.2gを入れ、酸素雰囲気下(1atm=0.1MPa)、40℃で1時間攪拌した。反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、目的化合物である2−シクロヘキセン−1−オンが収率64%で生成していた。シクロヘキセンの転化率は90%であった。
【0088】
実施例2
工業品のシクロペンテン(純度90.2重量%;シクロペンタジエンの含有量:1580重量ppm)20.0g(純シクロペンテン18.0g)と、有機反応用二酸化マンガン(粒径5μm以下、85%品)0.20gをフラスコに入れ、窒素雰囲気下、70℃で2時間攪拌した。処理液を冷却後、メンブレンフィルター(孔径1μm)を用いて濾過を行うことにより、純度89.3重量%のシクロペンテン(シクロペンタジエンの含有量:80重量ppm)を19.9g得た。
フラスコに、上記処理後のシクロペンテン1.36g、N−ヒドロキシフタルイミド3.0ミリモル、酢酸コバルト(II)4水塩0.2ミリモル、コバルト(III)アセチルアセトナト0.4ミリモル、硝酸コバルト(II)6水塩0.2ミリモル、及びアセトニトリル25.8gを入れ、酸素雰囲気下(1atm=0.1MPa)、40℃で1時間攪拌した。反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、目的化合物である2−シクロペンテン−1−オンが収率60%で生成していた。シクロペンテンの転化率は91%であった。
【0089】
比較例2
フラスコに、工業品のシクロペンテン(純度90.2重量%;シクロペンタジエンの含有量:1580重量ppm)1.36g、N−ヒドロキシフタルイミド3.0ミリモル、酢酸コバルト(II)4水塩0.2ミリモル、コバルト(III)アセチルアセトナト0.4ミリモル、硝酸コバルト(II)6水塩0.2ミリモル、及びアセトニトリル25.8gを入れ、酸素雰囲気下(1atm=0.1MPa)、40℃で1時間攪拌した。反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、目的化合物である2−シクロペンテン−1−オンが収率49%で生成していた。シクロペンテンの転化率は79%であった。
【0090】
実施例3
天然物由来の(R)−(+)−リモネン(純度92.3重量%;テルピネンの含有量:1760重量ppm)6.0g(純リモネン5.5g)と、有機反応用二酸化マンガン(粒径5μm以下、85%品)0.06gをフラスコに入れ、窒素雰囲気下、70℃で2時間攪拌した。処理液を冷却後、メンブレンフィルター(孔径1μm)を用いて濾過を行うことにより、純度92.1重量%の(R)−(+)−リモネン(テルピネンの含有量:320重量ppm)を5.8g得た。フラスコに、上記処理後の(R)−(+)−リモネン1.36g、N−ヒドロキシフタルイミド1.5ミリモル、酢酸コバルト(II)4水塩0.1ミリモル、コバルト(III)アセチルアセトナト0.2ミリモル、硝酸コバルト(II)6水塩0.1ミリモル、及びアセトニトリル12.2gを入れ、酸素雰囲気下(1atm=0.1MPa)、40℃で1時間攪拌した。反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、目的化合物であるカルボンが収率59%で生成していた。リモネンの転化率は95%であった。
【0091】
比較例3
フラスコに、天然物由来の(R)−(+)−リモネン(純度92.3重量%;テルピネンの含有量:1760重量ppm)1.36g、N−ヒドロキシフタルイミド1.5ミリモル、酢酸コバルト(II)4水塩0.1ミリモル、コバルト(III)アセチルアセトナト0.2ミリモル、硝酸コバルト(II)6水塩0.1ミリモル、及びアセトニトリル12.2gを入れ、酸素雰囲気下(1atm=0.1MPa)、40℃で1時間攪拌した。反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、目的化合物であるカルボンが収率39%で生成していた。リモネンの転化率は88%であった。
【0092】
実施例4
天然由来のバレンセン(純度72.9重量%;酸化阻害物質xの含有量:2070重量ppm)762g(純バレンセン555g)と、有機反応用二酸化マンガン(粒径5μm以下、85%品)7.6gをフラスコに入れ、窒素雰囲気下、70℃で2時間攪拌した。処理液を冷却後、メンブレンフィルター(孔径1μm)を用いて吸引濾過することにより、純度73.2重量%のバレンセン(酸化阻害物質xの含有量:210重量ppm)を750g得た。
フラスコに、上記処理後のバレンセン2.04g、N−ヒドロキシフタルイミド1.5ミリモル、酢酸コバルト(II)4水塩0.1ミリモル、コバルト(III)アセチルアセトナト0.2ミリモル、硝酸コバルト(II)6水塩0.1ミリモル、及びアセトニトリル18gを入れ、酸素雰囲気下(1atm=0.1MPa)、40℃で1時間攪拌した。反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、目的化合物であるヌートカトンが収率62%、ヌートカトールが収率7%で生成していた。バレンセンの転化率は99%であった。
【0093】
参考例1
天然由来のバレンセン(純度72.9重量%;酸化阻害物質xの含有量:2070重量ppm)を中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:n−ヘキサン)に付すことにより、純度78.8重量%のバレンセン(酸化阻害物質xの含有量:400重量ppm)を得た。
フラスコに、上記処理後のバレンセン2.04g、N−ヒドロキシフタルイミド1.5ミリモル、酢酸コバルト(II)4水塩0.1ミリモル、コバルト(III)アセチルアセトナト0.2ミリモル、硝酸コバルト(II)6水塩0.1ミリモル、及びアセトニトリル18gを入れ、酸素雰囲気下(1atm=0.1MPa)、40℃で1時間攪拌した。反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、目的化合物であるヌートカトンが収率61%、ヌートカトールが収率5%で生成していた。バレンセンの転化率は99%であった。
【0094】
実施例5
天然由来のバレンセン(純度72.9重量%;酸化阻害物質xの含有量:2070重量ppm)8.4g(純バレンセン6.1g)をフラスコに入れ、酸素雰囲気下、70℃で3時間攪拌した。その結果、純度72.0重量%のバレンセン(酸化阻害物質xの含有量:160重量ppm)を8.4g得た。
フラスコに、上記処理後のバレンセン2.04g、N−ヒドロキシフタルイミド1.5ミリモル、酢酸コバルト(II)4水塩0.1ミリモル、コバルト(III)アセチルアセトナト0.2ミリモル、硝酸コバルト(II)6水塩0.1ミリモル、及びアセトニトリル18gを入れ、酸素雰囲気下(1atm=0.1MPa)、40℃で1時間攪拌した。反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、目的化合物であるヌートカトンが収率56%、ヌートカトールが収率15%で生成していた。バレンセンの転化率は96%であった。
【0095】
実施例6
天然由来のバレンセン(純度72.9重量%;酸化阻害物質xの含有量:2070重量ppm)30.0g(純バレンセン21.9g)と、有機反応用二酸化マンガン(粒径5μm以下、85%品)3.0gをフラスコに入れ、酸素雰囲気下、70℃で2時間攪拌した。処理液を冷却後、メンブレンフィルター(孔径1μm)を用いて吸引濾過することにより、純度72.2重量%のバレンセン(酸化阻害物質xの含有量:150重量ppm)を29.1g得た。
フラスコに、上記処理後のバレンセン2.04g、N−ヒドロキシフタルイミド1.5ミリモル、酢酸コバルト(II)4水塩0.1ミリモル、コバルト(III)アセチルアセトナト0.2ミリモル、硝酸コバルト(II)6水塩0.1ミリモル、及びアセトニトリル18gを入れ、酸素雰囲気下(1atm=0.1MPa)、40℃で1時間攪拌した。反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、目的化合物であるヌートカトンが収率64%、ヌートカトールが収率5%で生成していた。バレンセンの転化率は99%であった。
【0096】
比較例4
天然由来の無処理のバレンセン(純度72.9重量%;酸化阻害物質xの含有量:2070重量ppm)2.04g、N−ヒドロキシフタルイミド1.5ミリモル、酢酸コバルト(II)4水塩0.1ミリモル、コバルト(III)アセチルアセトナト0.2ミリモル、硝酸コバルト(II)6水塩0.1ミリモル、及びアセトニトリル18gを入れ、酸素雰囲気下(1atm=0.1MPa)、40℃で1時間攪拌した。反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、目的化合物であるヌートカトンが収率43%、ヌートカトールが収率12%で生成していた。バレンセンの転化率は84%であった。
Claims (4)
- 前処理を施した有機基質中の、ジエン類又はフェノール類含有量が1000重量ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機化合物の酸化方法。
- 酸化処理が金属酸化物処理又は酸素処理である請求項1又は2に記載の有機化合物の酸化方法。
- 反応が、非芳香族性炭素−炭素二重結合の隣接位にメチレン基を有する不飽和化合物を酸素により酸化して、該メチレン基の炭素原子にオキソ基が導入された対応する共役不飽和カルボニル化合物を生成させる反応である請求項1〜3の何れかの項に記載の有機化合物の酸化方法。
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