JP4700778B2 - ラクタムの製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、農薬、染料、ポリアミドなどの原料、溶剤等として有用なアミド又はラクタムの製造法、より詳細には、前記アミド又はラクタムをメチレン基を有する炭化水素類等から直接製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アミドやラクタムを製造する方法として、鎖状又は環状ケトンをオキシム化した後、五塩化リン、硫酸などの試薬を作用させて、いわゆるベックマン転位により対応するアミド又はラクタムを生成させる方法が知られている。しかし、この方法では、メチレン基を有する炭化水素類からアミドやラクタムを誘導する場合には、ケトンの製造工程を含め、少なくとも3つの工程を経なければならない。また、ラクタムの製造法として、相当するアミノ酸の脱水環化により得る方法が知られている。しかし、この方法では、アミノ酸が高価なため経済的に極めて不利である。
【0003】
一方、硝酸酸化プロセスなどから排出される二酸化窒素や一酸化窒素などの窒素酸化物は大気汚染を引き起こすため、これを有効に利用する方法が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、メチレン基を有する炭化水素類から対応するアミド又はラクタムをワンステップで得る方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、環境汚染の原因となる窒素酸化物を有効に利用して、アミド又はラクタムを簡易に製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の触媒を用いると、メチレン基を有する鎖状又は環状化合物から対応するアミド又はラクタムが一段で生成することを見いだし、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記式(1’)
【化2】
Figure 0004700778
(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1及びR2は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。X’はヒドロキシル基を示す。前記R1、R2、又はR1及びR2が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1’)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい)
で表されるイミド化合物、及びハロゲン又はハロゲンとベックマン転位触媒の存在下、シクロアルカンと窒素酸化物とを反応させて、対応するラクタムを生成させるラクタムの製造法を提供する。
【0007】
前記窒素酸化物には、下記式(2)
xy (2)
(式中、xは1又は2、yは1〜6の整数を示す)
で表される化合物が含まれる。また、上記の反応は酸素の存在下で行うことができる。
なお、本明細書では、「メチレン基を有する鎖状又は環状化合物」を単に基質と称する場合がある。また、本明細書には上記発明の他に、下記式(1)
【化3】
Figure 0004700778
(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1及びR2は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示す。前記R1、R2、又はR1及びR2が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい)
で表されるイミド化合物、及びハロゲン又はベックマン転位触媒の存在下、メチレン基を有する鎖状又は環状化合物と窒素酸化物とを反応させて、対応するアミド又はラクタムを生成させるアミド又はラクタムの製造法についても記載する。
【0008】
【発明の実施の形態】
[イミド化合物]
前記式(1)で表されるイミド化合物において、置換基R1及びR2のうちハロゲン原子には、ヨウ素、臭素、塩素およびフッ素が含まれる。アルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル基などの炭素数1〜10程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が含まれる。好ましいアルキル基としては、例えば、炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルキル基が挙げられる。
【0009】
アリール基には、フェニル、ナフチル基などが含まれ、シクロアルキル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが含まれる。アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜10程度、好ましくは炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基が含まれる。
【0010】
アルコキシカルボニル基には、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル基などのアルコキシ部分の炭素数が1〜10程度のアルコキシカルボニル基が含まれる。好ましいアルコキシカルボニル基にはアルコキシ部分の炭素数が1〜6程度、特に1〜4程度の低級アルコキシカルボニル基が含まれる。
【0011】
アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6程度のアシル基が例示できる。
【0012】
前記置換基R1及びR2は、同一又は異なっていてもよい。また、前記式(1)において、R1及びR2は互いに結合して、二重結合、または芳香族性又は非芳香属性の環を形成してもよい。好ましい芳香族性又は非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜10員環程度であり、複素環又は縮合複素環であってもよいが、炭化水素環である場合が多い。このような環には、例えば、非芳香族性脂環式環(シクロヘキサン環などの置換基を有していてもよいシクロアルカン環、シクロヘキセン環などの置換基を有していてもよいシクロアルケン環など)、非芳香族性橋かけ環(5−ノルボルネン環などの置換基を有していてもよい橋かけ式炭化水素環など)、ベンゼン環、ナフタレン環などの置換基を有していてもよい芳香族環(縮合環を含む)が含まれる。前記環は、芳香族性環で構成される場合が多い。前記環は、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。
前記一般式(1)において、Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示し、窒素原子NとXとの結合は単結合又は二重結合である。
【0013】
前記R1、R2、又はR1及びR2が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい。例えば、R1又はR2が炭素数2以上のアルキル基である場合、このアルキル基を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。また、R1及びR2が互いに結合して二重結合を形成する場合、該二重結合を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。さらに、R1及びR2が互いに結合して芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成する場合、該環を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。
【0014】
好ましいイミド化合物には、下記式で表される化合物が含まれる。
【化4】
Figure 0004700778
(式中、R3〜R6は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子を示す。R3〜R6は、隣接する基同士が互いに結合して芳香族性又は非芳香族性の環を形成していてもよい。式(1f)中、Aはメチレン基又は酸素原子を示す。R1、R2、Xは前記に同じ。式(1c)のベンゼン環には、式(1c)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい)
【0015】
置換基R3〜R6において、アルキル基には、前記例示のアルキル基と同様のアルキル基、特に炭素数1〜6程度のアルキル基が含まれ、ハロアルキル基には、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜4程度のハロアルキル基、アルコキシ基には、前記と同様のアルコキシ基、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基、アルコキシカルボニル基には、前記と同様のアルコキシカルボニル基、特にアルコキシ部分の炭素数が1〜4程度の低級アルコキシカルボニル基が含まれる。また、アシル基としては、前記と同様のアシル基、特に炭素数1〜6程度のアシル基が例示され、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素原子が例示できる。置換基R3〜R6は、通常、水素原子、炭素数1〜4程度の低級アルキル基、カルボキシル基、ニトロ基、ハロゲン原子である場合が多い。R3〜R6が互いに結合して形成する環としては、前記R1及びR2が互いに結合して形成する環と同様であり、特に芳香族性又は非芳香族性の5〜12員環が好ましい。
【0016】
好ましいイミド化合物の代表的な例として、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸イミドなどが挙げられる。
【0017】
式(1)で表されるイミド化合物は、慣用のイミド化反応、例えば、対応する酸無水物とヒドロキシルアミンNH2OHとを反応させ、酸無水物基の開環及び閉環を経てイミド化する方法により調製できる。
【0018】
前記酸無水物には、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸などの飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸1,2−無水物などの飽和又は不飽和非芳香族性環状多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物)、無水ヘット酸、無水ハイミック酸などの橋かけ環式多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物)、無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ニトロフタル酸、無水トリメット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物が含まれる。
【0019】
特に好ましいイミド化合物は、脂環式多価カルボン酸無水物又は芳香族多価カルボン酸無水物、なかでも芳香族多価カルボン酸無水物から誘導されるN−ヒドロキシイミド化合物、例えば、N−ヒドロキシフタル酸イミド等が含まれる。
【0020】
式(1)で表されるイミド化合物は一種又は二種以上使用できる。前記イミド化合物は、担体に担持した形態で用いてもよい。担体としては、活性炭、ゼオライト、シリカ、シリカ−アルミナ、ベントナイトなどの多孔質担体を用いる場合が多い。前記イミド化合物の担体への担持量は、担体100重量部に対して、例えば0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部程度である。
【0021】
前記イミド化合物の使用量は、広い範囲で選択でき、例えば、基質1モルに対して、0.0001〜1モル、好ましくは0.001〜0.5モル、さらに好ましくは0.01〜0.4モル程度である。
【0022】
[ハロゲン又はベックマン転位触媒]
前記ハロゲンには、塩素、臭素、ヨウ素などが含まれる。また、ベックマン転位触媒とは、いわゆるベックマン転位反応に通常用いられる触媒又は試薬を意味し、その代表的な例として、硫酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、ポリリン酸、ギ酸、三フッ化ホウ素などの酸(プロトン酸及びルイス酸);オキシ塩化リン、五塩化リン、塩化アセチルなどのハロゲン含有化合物;無水酢酸などの酸無水物などが挙げられる。このようなベックマン転位触媒は、その前駆体を使用して反応系内で発生させてもよい。ハロゲン及びベックマン転位触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
なお、塩素などのハロゲンは、本反応において、ラジカル開始剤的に機能し、基質から水素を引き抜いてハロゲン化水素に変換され、これがベックマン転位触媒として作用するものと推測される。
ハロゲン及びベックマン転位触媒の使用量は、反応速度や副反応等を考慮して適宜選択でき、その種類によって異なるが、例えば、基質1モルに対して、0.0001〜1モル程度、好ましくは0.0005〜0.1モル程度である。
【0024】
[基質]
本発明では、基質として、メチレン基を有する鎖状又は環状化合物、特に2つの炭素原子と結合したメチレン基を有する鎖状又は環状化合物を用いる。これらの基質は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
メチレン基を有する鎖状化合物には、下記式(3)
【化5】
Figure 0004700778
(式中、Ra、Rbは、それぞれ有機基を示す)
で表される化合物が含まれる。
【0026】
前記Ra、Rbにおける有機基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ペンタデシル基などのアルキル基(例えばC1-20アルキル基、好ましくはC1-12アルキル基、さらに好ましくはC1-8アルキル基);ビニル、アリル、1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−オクテニル基などのアルケニル基(例えばC2-20アルケニル基、好ましくはC2-12アルケニル基、さらに好ましくはC2-8アルケニル基);エチニル、1−プロピニル基などのアルキニル基(例えばC2-20アルキニル基、好ましくはC2-12アルキニル基、さらに好ましくはC2-8アルキニル基);シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロドデシル基などのシクロアルキル基(例えばC3-20シクロアルキル基、好ましくはC3-15シクロアルキル基);シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル基などのシクロアルケニル基(例えばC3-20シクロアルケニル基、好ましくはC3-15シクロアルケニル基);フェニル、ナフチル基などのアリール基;ベンジル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピル基などのアラルキル基;2−ピリジル、2−キノリル、2−フリル、2−チエニル、4−ピペリジニル基などの芳香族性又は非芳香族性の複素環基などが挙げられる。これらの有機基は、反応を阻害しない範囲で種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基など)、置換チオ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)、アラルキル基、複素環基などを有していてもよい。
【0027】
式(3)で表される化合物の中でも、例えば、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ジフェニルメタンなどのRa、Rbのうち少なくとも一方が芳香族性基(アリール基又は芳香族性複素環基)である化合物が好ましい。
【0028】
メチレン基を有する環状化合物には、シクロアルカン類、シクロアルケン類、橋かけ環式化合物などの脂環式炭化水素類が含まれる。これらの中でも、シクロアルカン類が好ましい。
【0029】
前記シクロアルカン類は、下記式(4)
【化6】
Figure 0004700778
(式中、nは2以上の整数を示す)
で表される。
【0030】
式(4)において、環には置換基が結合していてもよく、他の環が縮合していてもよい。nは、例えば2〜30程度、好ましくは4〜20程度、さらに好ましくは5〜9程度である。
【0031】
前記式(4)で表されるシクロアルカン類としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロドデカン、シクロトリデカン、シクロテトラデカン、シクロペンタデカン、シクロヘキサデカン、シクロオクタデカン、シクロノナデカンなどが挙げられる。前記環に結合していてもよい置換基としては、前記有機基が有していてもよい置換基として例示したものと同様の置換基が挙げられる。
【0032】
シクロアルケン類としては、例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロへプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデカエン、シクロドデカエンなどが例示される。
【0033】
橋かけ環式化合物としては、例えば、デカリン、ビシクロ[2.2.0]ヘキサン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[4.3.2]ウンデカン、ツジョン、カラン、ピナン、ピネン、ボルナン、ボルニレン、ノルボルナン、ノルボルネン、カンファー、カンフェン、トリシクレン、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン、トリシクロ[5.2.1.03,8]デカン、エキソトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、エンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、エンドトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカン、アダマンタン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、ペルヒドロアントラセン、ペルヒドロアセナフテン、ペルヒドロフェナントレン、ペルヒドロフェナレン、ペルヒドロインデンなど、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
【0034】
[窒素酸化物]
前記窒素酸化物には、式(2)
xy (2)
(式中、xは1又は2、yは1〜6の整数を示す)
で表される化合物が含まれる。この化合物において、xが1である場合、yは通常1〜3の整数であり、xが2である場合、yは通常1〜6の整数である。
【0035】
窒素酸化物の代表的な例として、N2O、NO、N23、NO2、N24、N25、NO3、N26などが挙げられる。これらの窒素酸化物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。窒素酸化物は純粋なものであってもよく、窒素酸化物を主成分として含む混合物であってもよい。窒素酸化物を主成分として含む混合物として、例えば、硝酸酸化プロセスの排ガスなどを利用できる。
【0036】
好ましい窒素酸化物には、NO、N23、NO2、N25などが含まれる。N23は酸化二窒素(N2O)及び/又は一酸化窒素(NO)と酸素との反応で容易に得ることができる。より具体的には、反応器内に一酸化窒素(又は酸化二窒素)と酸素とを導入して、青色の液体N23を生成させることにより調製できる。そのため、N23を予め生成させることなく、酸化二窒素(N2O)及び/又は一酸化窒素(NO)と酸素とを反応系に導入することにより本反応を行ってもよい。
【0037】
窒素酸化物の量は、基質に対して当モル又は過剰モル量(例えば、1〜50モル倍量)用いてもよく、逆に基質に対して等モル未満の量用いてもよい。なお、窒素酸化物(例えば、二酸化窒素など)の使用量を、基質1モルに対して1モル未満とすると、窒素酸化物の転化率及び目的のアミド又はラクタムの選択率が大幅に向上する場合がある。従って、本発明を窒素酸化物の処理法として利用する場合には、窒素酸化物1モルに対して1モルを超える量の基質を使用するのが好ましい。
【0038】
[酸素]
基質と窒素酸化物との反応を酸素の存在下で行うと、反応速度が大きく向上する場合がある。この効果は、窒素酸化物として二酸化窒素(NO2)などを用いた場合において著しい。
【0039】
酸素は純粋な酸素であってもよく、不活性ガス(二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴンなど)で希釈して使用してもよい。また、酸素源は空気であってもよい。酸素の使用量は、窒素酸化物(例えば、二酸化窒素)1モルに対して0.5モル以上(例えば、1モル以上)、好ましくは1〜100モル、さらに好ましくは2〜50モル程度である。窒素酸化物に対して過剰モルの酸素を使用する場合が多い。
【0040】
[反応]
反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。溶媒としては、例えば、ベンゼンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;t−ブタノール、t−アミルアルコールなどのアルコール類;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;酢酸、プロピオン酸などの有機酸;ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類などが例示でき、これらの溶媒は混合して使用してもよい。なお、基質を窒素酸化物に対して過剰量用いて溶媒として使用することもできる。
【0041】
反応温度は、基質の種類などに応じて、例えば、0℃〜150℃、好ましくは25〜125℃程度の範囲から選択できる。反応圧力は、常圧、加圧下の何れであってもよい。反応は、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。
【0042】
反応終了後、反応生成物は、慣用の分離精製手段、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、析、再結晶、吸着、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段やこれらを組み合わせた分離手段により容易に分離精製できる。
【0043】
本発明では、温和な条件下で反応が進行し、メチレン基を有する鎖状化合物からは対応するアミドが、またメチレン基を有する環状化合物からは対応するラクタムが生成する。例えば、前記式(3)で表される化合物を原料として用いた場合には、下記式(5)
【化7】
Figure 0004700778
(式中、Ra、Rbは前記に同じ)
で表されるアミドが得られる。また、前記式(4)で表される化合物を原料とした場合には、下記式(6)
【化8】
Figure 0004700778
(式中、nは前記に同じ)
で表されるラクタムが得られる。より具体的には、エチルベンゼンからはアセトアニリドなどが生成し、シクロアルカンからは員数の1つ多いラクタム(例えば、シクロヘキサンからはε−カプロラクタム、シクロヘプタンからは7−ヘプタンラクタム、シクロオクタンからは8−オクタンラクタム)が生成する。
【0044】
なお、この反応の機構は必ずしも明らかではないが、まず基質のメチレン基がカルボニル基に酸化された後、オキシム化され、次いでいわゆるベックマン転位により対応するアミド又はラクタムが生成するものと推測される。
【0045】
本発明の製造方法で得られたアミド又はラクタムは、医薬、農薬、染料、溶剤、爆薬などの原料、ポリアミド(ナイロン)の原料などとして利用できる。特に、6〜10員のシクロアルカンから得られる7〜11員ラクタムは、それぞれポリアミド6〜ポリアミド10の原料として有用である。
【0046】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、メチレン基を有する炭化水素類から対応するアミド又はラクタムをワンステップで得ることができる。また、環境汚染の原因となる窒素酸化物を有効に利用して、アミド又はラクタムを簡易に製造できる。
【0047】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0048】
実施例1
フラスコ内にシクロヘキサン100ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド5ミリモル、塩素0.1ミリモル、酢酸200mlを入れて混合し、一酸化窒素(NO)のガスパック(約5リットル)をフラスコに装着した。攪拌しながら100℃で8時間反応させ、反応生成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ニトロシクロヘキサンが収率37%、ε−カプロラクタムが収率8%で生成していた。シクロヘキサンの転化率は67%であった。
【0049】
実施例2
フラスコ内にシクロヘキサン100ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド5ミリモル、塩素0.5ミリモル、酢酸200mlを入れて混合し、一酸化窒素(NO)のガスパック(約5リットル)をフラスコに装着した。攪拌しながら100℃で8時間反応させ、反応生成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ニトロシクロヘキサンが収率34%、ε−カプロラクタムが収率13%で生成していた。シクロヘキサンの転化率は65%であった。
【0050】
実施例3
フラスコ内にシクロヘキサン100ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド5ミリモル、塩素0.5ミリモル、酢酸150mlを入れて混合し、一酸化窒素(NO)のガスパック(約5リットル)及び酸素のガスパック(約5リットル)をフラスコに装着した。攪拌しながら100℃で10時間反応させ、反応生成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ニトロシクロヘキサンが収率28%、ε−カプロラクタムが収率17%、ニトロシクロヘキサノンが収率5%、シクロヘキサノンが収率8%で生成していた。シクロヘキサンの転化率は72%であった。
【0051】
実施例4
枝付きナスフラスコを氷水に浸漬して、減圧し、ガスパックから一酸化窒素をフラスコ内に導入するとともに、同容積の酸素をガスパックからフラスコ内に導入した。フラスコ内が赤褐色の気体で充満し、赤褐色の気体が沈降するとともにN23を主成分とする青色の液体が生成した。上記一酸化窒素の導入と酸素の導入とを繰り返し、生成した青色液体を液体窒素により凍結させた。
一方、フラスコ内にシクロヘキサン100ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド5ミリモル、塩素0.5ミリモル、酢酸150ml、ベンゾニトリル150mlを入れて混合し、上記で調製した凍結青色液体(N23として2モル)をフラスコに入れた。攪拌しながら60℃で10時間反応させ、反応生成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ニトロシクロヘキサンが収率31%、ε−カプロラクタムが収率21%、ニトロシクロヘキサノンが収率6%、シクロヘキサノンが収率7%で生成していた。なお、シクロヘキサンの転化率は75%であった。
【0052】
実施例5
フラスコ内にシクロヘキサン100ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド5ミリモル、塩素0.5ミリモル、酢酸150ml、ベンゾニトリル150mlを入れて混合し、実施例4と同様にして調製した凍結青色液体(N23として2モル)をフラスコに入れた。攪拌しながら100℃で20時間反応させ、反応生成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ニトロシクロヘキサンが収率25%、ε−カプロラクタムが収率33%、ニトロシクロヘキサノンが収率5%、シクロヘキサノンが収率8%で生成していた。なお、シクロヘキサンの転化率は86%であった。

Claims (3)

  1. 下記式(1’)
    Figure 0004700778
    (式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1及びR2は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。X’はヒドロキシル基を示す。前記R1、R2、又はR1及びR2が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1’)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい)
    で表されるイミド化合物、及びハロゲン又はハロゲンとベックマン転位触媒の存在下、シクロアルカンと窒素酸化物とを反応させて、対応するラクタムを生成させるラクタムの製造法。
  2. 窒素酸化物が、下記式(2)
    xy (2)
    (式中、xは1又は2、yは1〜6の整数を示す)
    で表される化合物である請求項1記載のラクタムの製造法。
  3. 酸素の存在下で反応させる請求項1又は2記載のラクタムの製造法。
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