JP3997077B2 - 電動弁 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動弁に関し、特に、空気調和装置等の冷凍サイクル装置の2段式電動膨張弁等として使用される電動弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
2段式電動膨張弁は、主弁体の内部に副弁体を有する二重構造になっており、弁ハウジングに形成された大口径の主弁ポートを主弁体の軸線方向移動によって開閉し、主弁体に形成された小口径の副弁ポートを副弁体の軸線方向移動によって開閉する。このような2段式電動膨張弁では、主弁体と副弁体とが所定量のみ弁リフト方向に相対変位可能に接続され、電動モータの回転を送りねじによって弁リフト方向の線形運動に変換して副弁体を弁リフト方向(軸線方向)に移動させるようになっている。
【0003】
この種の2段式電動膨張弁は、特公平6−65915号公報、特許第2898906号公報等に示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような従来の2段式電動膨張弁は、主弁体が弁閉ばねによって弁閉方向に付勢され、弁締切は弁閉ばねのばね力によって行われる。このため、冷媒流の方向が主弁体を開く方向に作用する状態において、主弁体を締め切って副弁体により小流量制御を行う場合、大径の主弁体が冷媒流によって押し開かれないようにするために、弁閉ばねのばね荷重をそれに打ち勝つよう相当大きくする必要が生じる。
【0005】
弁閉ばねのばね荷重を大きくすると、それに伴い、主弁体を開弁させるのに必要な駆動力が大きくなり、出力の大きい電動モータを使わなくてはならなくなる。
【0006】
このため、従来の2段式電動膨張弁では、安定した双方向の小流量制御(絞り)を行うことが困難であるか、あるいは大出力の電動モータの使用を強いられ、消費電力の増大、装置の大型化を招くことになる。
【0007】
この発明は、上述の如き問題点を解消するためになされたもので、大出力の電動モータを必要とすることなく安定した双方向の小流量制御を行うことができ、省電力化、小型化設計を行うことができ、2段式電動膨張弁等として使用される電動弁を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、この発明による電動弁は、第1の入出口ポート、第2の入出口ポート、前記第1の入出口ポートと常時連通している主弁室、及び、前記主弁室と前記第2の入出口ポートとの間に設けられた主弁ポートを各々画定する弁ハウジングと、前記主弁室内に設けられて軸線方向移動により前記主弁ポートを開閉する主弁部を有し、内部に前記主弁室と常時連通の副弁室を画定すると共に、当該副弁室を前記主弁ポートに向けて開放する副弁ポートを該主弁ポートの口径に対して小さい口径によって形成された主弁体と、前記主弁体に設けられ、軸線方向移動により前記副弁ポートを開閉する副弁部を有する副弁体と、前記弁ハウジングに取り付けられた弁開閉駆動用の電動モータとを有する電動弁であって、前記主弁体は、前記弁ハウジングに形成された第1のねじ部とねじ係合し、自身の中心軸線周りの回転によって軸線方向に移動し、前記副弁体は前記電動モータのロータ軸と駆動連結され、前記ロータ軸は、固定側に形成された第2のねじ部とねじ係合し、ロータの回転により軸線方向に移動し、前記ロータ軸と前記主弁体とが所定の回転角度範囲のみ相対的に回転変位可能にトルク伝達関係で連結されているものである。
【0009】
この発明による電動弁によれば、全閉状態において、ロータ軸が弁開方向に所定の回転角度回転(正回転)するまでは、ロータによるロータ軸の正回転により第2のねじ部のねじ係合によって副弁体だけが全閉位置より開弁移動する。ロータ軸が所定の回転角度以上弁開方向に回転すると、ロータ軸と主弁体とがトルク伝達関係で連結され、主弁体がロータ軸と共に正回転し、主弁体の正回転により第1のねじ部のねじ係合によって主弁体が全閉位置より弁開移動する。
【0010】
回転方向逆転時には、逆回転開始位置よりロータ軸が弁閉方向に所定の回転角度回転(逆回転)するまでは、ロータによるロータ軸の逆回転により第2のねじ部のねじ係合によって副弁体だけが弁閉移動する。逆回転開始位置よりロータ軸が弁閉方向に所定の回転角度回転(逆回転)すると、副弁体は全閉する。これより更にロータ軸が逆回転すると、ロータ軸と主弁体とがトルク伝達関係で連結され、主弁体がロータ軸と共に逆回転し、主弁体の逆回転により第1のねじ部のねじ係合によって主弁体が弁閉移動する。
【0011】
そして、主弁体は第1のねじ部によって弁ハウジングとねじ係合し、ばね付勢でないから、主弁体が冷媒流等による流体圧によって弁開位置を変動することがない。
【0012】
この発明による電動弁は、前記主弁体に突出ピンが固定され、前記ロータ軸にトルク伝達部材が固定され、前記ロータ軸の正逆回転によって回転する前記トルク伝達部材が前記突出ピンに衝突することにより、前記ロータ軸と前記主弁体とが略1回転のみ相対的に回転変位可能で、連れ廻し式に前記主弁体を回転させるものである。
【0013】
この発明による電動弁によれば、ロータ軸の略1回転によって副弁体の開閉(全閉−全開)が行われる。
【0014】
この発明による電動弁は、前記主弁体に突出ピンが固定され、前記ロータ軸にトルク伝達部材が固定され、前記ロータ軸に中間部材が回転可能に取り付けられ、前記ロータ軸の正逆回転によって回転する前記トルク伝達部材が前記中間部材に衝突し、更に当該トルク伝達部材と共に回転する前記中間部材が前記突出ピンに衝突することにより、前記ロータ軸と前記主弁体とが略2回転のみ相対的に回転変位可能で、連れ廻し式に前記主弁体を回転させるものである。
【0015】
この発明による電動弁によれば、ロータ軸の略2回転によって副弁体の開閉(全閉−全開)が行われる。
【0016】
この発明による電動弁は、前記第2のねじ部のリードが前記第1のねじ部のリードより小さいものである。
【0017】
この発明による電動弁によれば、第2のねじ部のリードが第1のねじ部のリードより小さいことにより、副弁体のロータ1回転についての弁リフト量(軸線方向移動量)が主弁体のそれより小さくなる。
【0018】
また、この発明による電動弁では、前記副弁体は、バッファ的な動作を行う圧縮コイルばねを内蔵した弁ホルダを介して前記電動モータのロータ軸と駆動連結され、当該副弁体が前記圧縮コイルばねにより弁閉方向に付勢されている構造にすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照してこの発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1〜図5はこの発明による電動弁の実施の形態1を示している。なお、図1は全閉状態を、図2は副弁全開状態を、図3は主弁全開状態を各々示している。
【0020】
電動弁10は弁ハウジング11を有している。弁ハウジング11は、第1の入出口ポート12と、第2の入出口ポート13と、第1の入出口ポート12と常時直接連通している主弁室14と、主弁室14と第2の入出口ポート13との間に設けられた大口径の主弁ポート15とを画定している。主弁ポート15の主弁室14の側の開口端周りには主弁座部16が画定されている。
【0021】
主弁室14には比較的大径の主弁体17が、軸線方向、すなわち図にて上下方向(弁リフト方向)に移動可能に設けられている。主弁体17は、外周面部に形成された雄ねじ部17Aにて主弁室14の内周面部に形成された雌ねじ部18とねじ係合し、先端外周面(主弁部)17Bにて主弁ポート15の周りに画定されている主弁座部16に着座して主弁ポート15を閉じる弁閉位置と、主弁座部16より離れて主弁ポート15の連通を確立する弁開位置との間に移動可能になっている。主弁体17は、雄ねじ部17Aと雌ねじ部18(第1のねじ部)とのねじ係合により、自身の中心軸線周りの回転によって上下方向(弁リフト方向)に移動する。
【0022】
主弁体17は、カップ形状をしていて内部に連通路19によって主弁室14と常時連通の副弁室20を画定しており、底部に副弁室20を主弁ポート15に向けて開放する小口径の副弁ポート21が開口している。副弁ポート21の副弁室20の側の開口端周りには副弁座部22が画定されている。
【0023】
副弁室20には副弁ポート21を開閉するニードル部(副弁部)23Aを有する副弁体23が軸線方向(上下方向)に移動可能に設けられており、副弁体23は軸線方向移動により副弁ポート21を開閉する。
【0024】
副弁体23は、主弁体17に軸線方向に移動可能に嵌合した弁ホルダ24より保持され、弁ホルダ24と弁ホルダ24に固着されたプラグ部材25との間に設けられた内部ばね(圧縮コイルばね)26によって副弁ポート21の側に付勢されている。
【0025】
弁ハウジング11にはステッピングモータ30が取り付けられている。ステッピングモータ30は、弁ハウジング11に固定装着されたキャップ形状のロータケース31と、ロータケース31内に回転可能に且つ軸線方向に移動可能に設けられた永久磁石付き(図示省略)のロータ32と、ロータ32の中心部に固定連結されたロータ軸33と、ロータケース31の外側に配置されたステータコイルユニット34とを有している。ステータコイルユニット34には位置決め片39が取り付けられており、位置決め片39と弁ハウジング11に固定された位置決めピン29との係合によってステータコイルユニット34の位置決めがなされる。
【0026】
ロータ軸33は下端部33Aにてプラグ部材25に固定連結されている。ロータ軸33の上端部には雄ねじ部33Bが設けられている。ロータケース31の内部中央には雌ねじ部材35がロータケース31の上部中央より垂下された状態で固定されており、雌ねじ部材35の雌ねじ部35Aにロータ軸33の雄ねじ部33Bがねじ係合している。
【0027】
ロータ軸33は、雄ねじ部33Bと雌ねじ部35A(第2のねじ部)とのねじ係合により、ロータ32の回転によって上下方向(弁リフト方向)に移動する。雄ねじ部33Bと雌ねじ部35Aのリード(ねじピッチ)は主弁体17の雄ねじ部17Aと雌ねじ部18のリードより小さい。
【0028】
ロータ軸33には二面取り部33Cが形成されており、二面取り部33Cには径方向に延びたアーム状のトルク伝達部材36がトルク伝達関係で固定されている。
【0029】
主弁体17の上面部には突出ピン28が固定されており、ロータ軸33の正逆回転によって回転するトルク伝達部材36が突出ピン28の側面に衝突(図5参照)することにより、ロータ軸33と主弁体17とが略1回転のみ相対的に回転変位可能な態様で、連れ廻し式に主弁体17が回転駆動される。
【0030】
主弁体17、副弁体23、弁ホルダ24、プラグ部材25、内部ばね26、ロータ軸33、トルク伝達部材36の組み付けについて、図4を参照して説明する。まず、トルク伝達部材36の二面取り孔36Aをロータ軸33の二面取り部33Cに挿入▲1▼し、つぎに、ロータ軸33の下端部33Aをプラグ部材25の嵌合孔25Aに圧入▲2▼する。弁ホルダ24内に副弁体23、内部ばね26を詰め込み、プラグ部材25を弁ホルダ24に圧入▲3▼する。そして、弁ホルダ24を主弁体17の副弁室20に挿入▲4▼する。
【0031】
雌ねじ部材35の外周には螺旋ガイド線体37が固定されており、螺旋ガイド線体37にはスライダ38が旋回可能に係合している。スライダ38は、ロータ32に形成された突条部32Aに係合し、ロータ32の回転によって旋回駆動され、螺旋ガイド線体37に案内されて上下動(軸線方向移動)し、全閉ストッパ部37Aに当接することにより全閉位置を設定し、全開ストッパ部37Bに当接することにより全開位置を設定する。
【0032】
つぎに、上述の構成による電動弁10(実施の形態1)の開閉動作について説明する。
【0033】
全閉状態時(図6のA点)は、図1に示されているように、主弁体17が最降下位置にあって主弁体17の先端外周面17Bが主弁座部16に着座して主弁ポート15を閉じ、副弁体23のニードル部23Aが副弁座部22に着座して副弁ポート21を閉じている。弁開方向の回転(正回転)を図5で見て反時計廻り方向とすると、この全閉状態時には、トルク伝達部材36は図5に実線によって示されているように、突出ピン28の一方の側面28Aに当接する初期位置にある。
【0034】
上述したような全閉状態において、ステッピングモータ30によってロータ軸33が弁開方向に正回転を開始すると、雄ねじ部33Bと雌ねじ部35Aとのねじ係合により、ロータ32と共に、ロータ軸33、プラグ部材25、弁ホルダ24、副弁体23が弁リフト方向に上昇移動する。この上昇移動により、副弁体23のニードル部23Aが副弁座部22より離間し、副弁ポート21を開く。
【0035】
ロータ軸33が正回転開始位置より略1回転するまでは(トルク伝達部材36が図5に仮想線によって示されているように、突出ピン28の他方の側面28Bに当接するまでは)、ロータ軸33の正回転が主弁体17に伝えられることがなく、主弁体17は全閉位置に位置している状態を維持し、副弁体23だけが開弁移動する。
【0036】
ロータ軸33が正回転開始位置より略1回転すると、図5に仮想線によって示されているように、トルク伝達部材36が突出ピン28の他方の側面28Bに当接し、副弁体23は、図2に示されているように、全開状態になる(図6のB点)。
【0037】
これにより、ロータ軸33が正回転開始位置より略1回転するまでは、流量は、副弁体23の弁リフト量により決まる副弁ポート21の開度(副弁体制御域)によって比較的小流量に決定される。
【0038】
これより更に、ロータ軸33が正回転すると、トルク伝達部材36が突出ピン28を押すことにより、ロータ軸33と主弁体17とがトルク伝達関係で連結され、主弁体17がロータ軸33と共に連れ廻し式に正回転する。このように主弁体17が正回転することにより、雄ねじ部17Aと雌ねじ部18とのねじ係合によって弁体17が弁リフト方向に上昇移動する。この上昇移動により、主弁体17の先端外周面17Bが主弁座部16より離間し、主弁ポート15が開かれる。
【0039】
この状態では、流量は、主弁体17の弁リフト量により決まる主弁ポート15の開度(主弁体制御域)によって比較的大流量に決定され、ロータ軸33が所定量正回転(数回転)すると、主弁体17は、図3に示されているように、全開状態になる(図6のC点)。
【0040】
上述した主弁体17の開弁過程では、雄ねじ部33Bと雌ねじ部35Aのねじピッチが、雄ねじ部17Aと雌ねじ部18のねじピッチより小さいことにより、主弁体17と弁ホルダ24および副弁体23とで軸線方向(弁開閉方向)の相対変位が生じ、主弁体17の開弁が進行することに伴って副弁体23は閉弁する。なお、主弁体17の開弁に伴って副弁体23が閉弁しても、このときには、主弁ポート15によって流量制御されるから、副弁体23の閉弁によって流量が低減することはない。
【0041】
つぎに、全開状態よりの弁閉動作を図7(a)〜(d)を参照して説明する。なお、図7(a)は全開状態(図3と同じ)を、図7(b)は全開位置より逆回転方向に略1回転した状態を、図7(c)は全開位置より逆回転方向に略1回転した状態より全閉状態との間の中間状態を、図7(d)は全閉状態(図1と同じ)を各々示している。
【0042】
図7(a)に示されている全開状態下にて、ロータ軸33が弁閉方向に逆回転すると、その逆回転開始位置より略1回転するまでは(トルク伝達部材36が図5に実線によって示されているように、突出ピン28の一方の側面28Aに当接するまでは)、ロータ軸33の逆回転が主弁体17に伝えられることがなく、主弁体17は全開位置のままで、副弁体23は閉弁(全閉位置)にあることから、それ以上、閉弁側に移動できず、弁ホルダ24だけが内部ばね26を撓ませつつ閉弁側に移動する(図7(b)参照)。なお、この区間(図6のC点→D点)では、主弁体17が動かず、流量が変化することはない。
【0043】
ロータ軸33が逆回転開始位置より略1回転すると、図5に実線によって示されているように、トルク伝達部材36が突出ピン28の一方の側面28Aに当接する状態に戻り、これより更に、ロータ軸33が逆回転すると、トルク伝達部材40が突出ピン28を逆方向から押すことにより、ロータ軸33と主弁体17とがトルク伝達関係で連結され、主弁体17がロータ軸33と共に連れ廻し式に逆回転する。このように主弁体17が逆回転することにより、雄ねじ部17Aと雌ねじ部18とのねじ係合によって主弁体17が、図7(c)に示されているように、弁リフト方向に降下移動し、主弁体17の開度が減少する。
【0044】
ロータ軸33が所定量逆回転(数回転)すると、図7(d)に示されているように、主弁体17の先端外周面17Bが主弁座部16に着座し、主弁ポート15が閉じられ、全閉状態になる(図6のA点)。
【0045】
雄ねじ部33Bと雌ねじ部35Aのねじピッチは、雄ねじ部17Aと雌ねじ部18のねじピッチより小さいから、主弁体17の弁閉が進むに従って副弁体23は閉弁した状態のまま、内部ばね26が伸長し、元の状態になる。
【0046】
主弁体17ならびに副弁体23は上述したように開閉し、主弁体17は雄ねじ部17Aと雌ねじ部18とによって弁ハウジング11とねじ係合しているから、第1の入出口ポート12から第2の入出口ポート13へ流体が流れ、その流体圧が弁閉方向に作用しても、また、これとは逆に、第2の入出口ポート13から第1の入出口ポート12へ流体が流れ、その流体圧が弁開方向に作用しても、流体圧によって主弁体17の開閉位置が変動することがなく、双方向性が得られる。
【0047】
これにより、副弁体23だけが弁開する小流量制御域において、主弁体17の締め切り(弁閉位置維持)が流体圧の影響を受けることなく確実に行われ、双方向での安定した小流量制御が可能になる。また、雄ねじ部33Bと雌ねじ部35Aのリードは、雄ねじ部17Aと雌ねじ部18のリードより小さいことにより、副弁体23のロータ1回転についての弁リフト量(軸線方向移動量)が主弁体17のそれより小さくなり、副弁体23による流量制御が高精度に行われる。
【0048】
図8〜図13はこの発明による電動弁の実施の形態2を示している。なお、図8〜図13において、図1〜図5に対応する部分は、図1〜図5に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。また、図8〜図11において、図8は全閉状態を、図9は副弁中開状態を、図10は副弁全開状態を、図11は主弁全開状態を各々示している。
【0049】
この実施の形態では、ロータ軸33の二面取り部33Cにドック形状のトルク伝達部材40がトルク伝達関係で固定され、ロータ軸33の下端部33Aに径方向に延びたアーム状の中間部材41が回転可能に嵌合装着されている。
【0050】
この実施の形態でも、主弁体17の上面部には突出ピン28が固定されており、ロータ軸33の正逆回転によって回転するトルク伝達部材40が中間部材41の側面に衝突し、更にトルク伝達部材40と共に回転する中間部材41が突出ピン28の側面に衝突(図13参照)することにより、ロータ軸33と主弁体17とが略2回転のみ相対的に回転変位可能な態様で、連れ廻し式に主弁体17が回転駆動される。
【0051】
主弁体17、副弁体23、弁ホルダ24、プラグ部材25、内部ばね26、ロータ軸33、トルク伝達部材40、中間部材41の組み付けについて、図12を参照して説明する。まず、トルク伝達部材40の二面取り孔40Aをロータ軸33の二面取り部33Cに、中間部材41の丸孔41Aをロータ軸33の下端部33Aに各々挿入▲1▼し、つぎに、ロータ軸33の下端部33Aをプラグ部材25の嵌合孔25Aに圧入▲2▼する。弁ホルダ24内に副弁体23、内部ばね26を詰め込み、プラグ部材25を弁ホルダ24に圧入▲3▼する。そして、弁ホルダ24を主弁体17の副弁室20に挿入▲4▼する。
【0052】
つぎに、上述の構成による電動弁10(実施の形態2)の開閉動作について説明する。
【0053】
全閉状態時(図14のE点)は、図8に示されているように、主弁体17が最降下位置にあって主弁体17の先端外周面17Bが主弁座部16に着座して主弁ポート15を閉じ、副弁体23のニードル部23Aが副弁座部22に着座して副弁ポート21を閉じている。弁開方向の回転(正回転)を図13で見て反時計廻り方向とすると、この全閉状態時には、図13に示されているように、トルク伝達部材40は中間部材41の一方の側面41Aに当接し、中間部材41が突出ピン28の一方の側面28Aに当接する初期位置にある。
【0054】
上述したような全閉状態において、ステッピングモータ30によってロータ軸33が弁開方向に正回転を開始すると、雄ねじ部33Bと雌ねじ部35Aとのねじ係合により、ロータ32と共に、ロータ軸33、プラグ部材25、弁ホルダ24、副弁体23が弁リフト方向に上昇移動する。この上昇移動により、副弁体23のニードル部23Aが副弁座部22より離間し、副弁ポート21を開く。
【0055】
ロータ軸33が正回転開始位置より略2回転するまでは、ロータ軸33の正回転が主弁体17に伝えられることがなく、主弁体17は全閉位置に位置している状態を維持し、副弁体23だけが開弁移動する。
【0056】
ロータ軸33が正回転開始位置より略1回転すると、トルク伝達部材40が中間部材41の他方の側面41Bに当接し、副弁体23は、図9に示されているように、中開状態になる(図14のF点)。
【0057】
ロータ軸33がさらに正回転し、ロータ軸33が正回転開始位置より略2回転すると、トルク伝達部材40が中間部材41の他方の側面41Bに当接した状態のまま中間部材41が突出ピン28の他方の側面28Bに当接し、副弁体23は、図10に示されているように、全開状態になる(図14のG点)。
【0058】
これにより、ロータ軸33が正回転開始位置より略2回転するまでは、流量は副弁体23の弁リフト量により決まる副弁ポート21の開度(副弁体制御域)によって比較的小流量に決定される。
【0059】
これより更に、ロータ軸33が正回転すると、トルク伝達部材40が中間部材41を介して突出ピン28を押すことにより、ロータ軸33と主弁体17とがトルク伝達関係で連結され、主弁体17がロータ軸33と共に連れ廻し式に正回転する。このように主弁体17が正回転することにより、雄ねじ部17Aと雌ねじ部18とのねじ係合により、弁体17が弁リフト方向に上昇移動する。この上昇移動により、主弁体17の先端外周面17Bが主弁座部16より離間し、主弁ポート15を開く。
【0060】
この状態では、流量は主弁体17の弁リフト量により決まる主弁ポート15の開度(主弁体制御域)によって比較的大流量に決定され、ロータ軸33が所定量正回転すると、主弁体17は、図11に示されているように、全開状態になる(図14のH点)。
【0061】
上述した主弁体17の開弁過程でも、雄ねじ部33Bと雌ねじ部35Aのねじピッチが、雄ねじ部17Aと雌ねじ部18のねじピッチより小さいことにより、主弁体17と弁ホルダ24および副弁体23とで軸線方向(弁開閉方向)の相対変位が生じ、主弁体17の開弁が進行することに伴って副弁体23は閉弁する。なお、主弁体17の開弁に伴って副弁体23が閉弁しても、このときには、主弁ポート15によって流量制御されるから、この場合も、副弁体23の閉弁によって流量が低減することはない。
【0062】
全開状態下にて、ロータ軸33が弁閉方向に逆回転すると、その逆回転開始位置より略2回転するまでは、ロータ軸33の逆回転が主弁体17に伝えられることがなく、主弁体17は全開位置のままで、副弁体23は閉弁(全閉位置)にあることから、それ以上、閉弁側に移動できず、弁ホルダ24だけが内部ばね26を撓ませつつ閉弁側に移動する(図7(b)に示されている状態と同等の状態)。なお、この区間(図14のH点→I点)では、主弁体17が動かず、流量が変化することはない。
【0063】
ロータ軸33が逆回転開始位置より略2回転すると、図13に示されているように、中間部材41が突出ピン28の一方の側面28Aに当接する状態に戻り、これより更に、ロータ軸33が逆回転すると、トルク伝達部材40が突出ピン28を逆方向から押すことにより、ロータ軸33と主弁体17とがトルク伝達関係で連結され、主弁体17がロータ軸33と共に連れ廻し式に逆回転する。このように主弁体17が逆回転することにより、雄ねじ部17Aと雌ねじ部18とのねじ係合によって主弁体17が弁リフト方向に降下移動し、主弁体17の開度が減少する。
【0064】
ロータ軸33が所定量逆回転(数回転)すると、主弁体17の先端外周面17Bが主弁座部16に着座し、主弁ポート15が閉じられ、全閉状態になる(図14のE点)。
【0065】
なお、この場合も、雄ねじ部33Bと雌ねじ部35Aのねじピッチは、雄ねじ部17Aと雌ねじ部18のねじピッチより小さいから、主弁体17の弁閉が進むに従って副弁体23は閉弁した状態のまま、内部ばね26が伸長し、元の状態になる。
【0066】
この実施の形態でも、主弁体17ならびに副弁体23は上述したように開閉し、主弁体17は雄ねじ部17Aと雌ねじ部18とによって弁ハウジング11とねじ係合しているから、第1の入出口ポート12から第2の入出口ポート13へ流体が流れ、その流体圧が弁閉方向に作用しても、また、これとは逆に、第2の入出口ポート13から第1の入出口ポート12へ流体が流れ、その流体圧が弁開方向に作用しても、流体圧によって主弁体17の開閉位置が変動することがなく、双方向性が得られる。
【0067】
これにより、この実施の形態でも、副弁体23だけが弁開する小流量制御域において、主弁体17の締め切り(弁閉位置維持)が流体圧の影響を受けることなく確実に行われ、双方向での安定した小流量制御が可能になる。
【0068】
実施の形態1と実施の形態2との相違点は、ロータ軸33の略1回転で副弁体23が全開閉するか、ロータ軸33の略2回転で副弁体23が全開閉するかであり、ロータ回転角に関する副弁体23の開弁量を異なったものに設定できることを示している。なお、中間部材41を2段、3段…にすることにより、副弁体23が全開閉をロータ軸33の略3回転、略4回転…にすることができ、この段数が多いほど、副弁体制御域での分解能がよくなる。
【0069】
図15はこの発明による電動弁10を2段式電動膨張弁として空気調和装置に適用した例を示している。
【0070】
この空気調和機は、圧縮機50と、室外熱交換器51と、第1の室内熱交換器52と、第2の室内熱交換器53と、室外熱交換器51と第1の室内熱交換器52との間の冷媒通路(57〜58)に設けられた膨張弁54と、これらをループ接続する冷媒通路55〜61と、冷房モードと暖房モードとの切換のためにループ接続された冷媒通路55〜61における冷媒の流れ方向を反転する四方弁62とを有している。
【0071】
第1の室内熱交換器52と第2の室内熱交換器53との間の冷媒通路59に、2段式電動膨張弁(サイクルドライ弁)として、電動弁10が接続されている。
【0072】
電動弁10は、通常の冷房運転時、暖房運転時には、実質的な絞り作用を行わない全開状態になり、除湿運転時に副弁体23だけが弁開する小流量制御になり、膨張弁として機能する。電動弁10は、小流量制御において双方向性を有し、双方向での安定した小流量制御が可能であるから、冷房除湿運転、暖房除湿運転が共に適切に行われ得るようになる。
【0073】
なお、電動弁10が全開状態になる冷房運転あるいは暖房運転状態より除湿運転を行う場合には、電動弁10を一旦全閉状態にし、その後にステッピングモータ30を正回転させることにより、副弁体23だけが弁開する小流量制御状態が得られる。
【0074】
【発明の効果】
以上の説明から理解される如く、この発明による電動弁によれば、主弁体は弁ハウジングとねじ係合し、ばね付勢でないから、主弁体が冷媒流等の流体圧によって弁開位置が変動することがなく、副弁体だけが弁開する小流量制御域において、主弁体の弁閉位置維持が流体圧の影響を受けることなく確実に行われ、双方向での小流量制御が可能になる。これにより、大出力の電動モータを必要とすることなく安定した双方向の小流量制御を行うことができ、電動弁の省電力化、小型化設計を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による電動弁の実施の形態1を全閉状態について示す縦断面図である。
【図2】この発明による電動弁の実施の形態1を副弁全開状態について示す縦断面図である。
【図3】この発明による電動弁の実施の形態1を主弁全開状態について示す縦断面図である。
【図4】この発明による電動弁の実施の形態1の弁体部分の組み付け手順を示す部品図である。
【図5】この発明による電動弁の実施の形態1の主弁体に対するトルク伝達構造部を示す平面図である。
【図6】この発明による電動弁の実施の形態1の弁リフト量−流量特性を示すグラフである。
【図7】(a)〜(d)はこの発明による電動弁の実施の形態1の閉弁動作を示す要部のの断面図である。
【図8】この発明による電動弁の実施の形態2を全閉状態について示す縦断面図である。
【図9】この発明による電動弁の実施の形態2を副弁中開状態について示す縦断面図である。
【図10】この発明による電動弁の実施の形態2を副弁全開状態について示す縦断面図である。
【図11】この発明による電動弁の実施の形態2を主弁全開状態について示す縦断面図である。
【図12】この発明による電動弁の実施の形態2の弁体部分の組み付け手順を示す部品図である。
【図13】この発明による電動弁の実施の形態2の主弁体に対するトルク伝達構造部を示す平面図である。
【図14】この発明による電動弁の実施の形態2の弁リフト量−流量特性を示すグラフである。
【図15】この発明による電動弁を2段式電動膨張弁として空気調和装置に適用した例を示すブロック図である。
【符号の説明】
10 電動弁
11 弁ハウジング
12 第1の入出口ポート
13 第2の入出口ポート
14 主弁室
15 主弁ポート
17 主弁体
17A 雄ねじ部
18 雌ねじ部
20 副弁室
21 副弁ポート
23 副弁体
24 弁ホルダ
30 ステッピングモータ
32 ロータ
33 ロータ軸
33B 雄ねじ部
34 ステータコイルユニット
35 雌ねじ部材
35A 雌ねじ部
36 トルク伝達部材
28 突出ピン
40 トルク伝達部材
41 中間部材

Claims (5)

  1. 第1の入出口ポート、第2の入出口ポート、前記第1の入出口ポートと常時連通している主弁室、及び、前記主弁室と前記第2の入出口ポートとの間に設けられた主弁ポートを各々画定する弁ハウジングと、
    前記主弁室内に設けられて軸線方向移動により前記主弁ポートを開閉する主弁部を有し、内部に前記主弁室と常時連通の副弁室を画定すると共に、当該副弁室を前記主弁ポートに向けて開放する副弁ポートを該主弁ポートの口径に対して小さい口径によって形成された主弁体と、
    前記主弁体に設けられ、軸線方向移動により前記副弁ポートを開閉する副弁部を有する副弁体と、
    前記弁ハウジングに取り付けられた弁開閉駆動用の電動モータとを有する電動弁であって、
    前記主弁体は、前記弁ハウジングに形成された第1のねじ部とねじ係合し、自身の中心軸線周りの回転によって軸線方向に移動し、
    前記副弁体は前記電動モータのロータ軸と駆動連結され、
    前記ロータ軸は、固定側に形成された第2のねじ部とねじ係合し、ロータの回転により軸線方向に移動し、前記ロータ軸と前記主弁体とが所定の回転角度範囲のみ相対的に回転変位可能にトルク伝達関係で連結されていることを特徴とする電動弁。
  2. 前記主弁体に突出ピンが固定され、前記ロータ軸にトルク伝達部材が固定され、前記ロータ軸の正逆回転によって回転する前記トルク伝達部材が前記突出ピンに衝突することにより、前記ロータ軸と前記主弁体とが略1回転のみ相対的に回転変位可能で、連れ廻し式に前記主弁体を回転させることを特徴とする請求項1記載の電動弁。
  3. 前記主弁体に突出ピンが固定され、前記ロータ軸にトルク伝達部材が固定され、前記ロータ軸に中間部材が回転可能に取り付けられ、前記ロータ軸の正逆回転によって回転する前記トルク伝達部材が前記中間部材に衝突し、更に当該トルク伝達部材と共に回転する前記中間部材が前記突出ピンに衝突することにより、前記ロータ軸と前記主弁体とが略2回転のみ相対的に回転変位可能で、連れ廻し式に前記主弁体を回転させることを特徴とする請求項1記載の電動弁。
  4. 前記第2のねじ部のリードが前記第1のねじ部のリードより小さいことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の電動弁。
  5. 前記副弁体は、圧縮コイルばねを内蔵した弁ホルダを介して前記電動モータのロータ軸と駆動連結され、前記圧縮コイルばねにより弁閉方向に付勢されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の電動弁。
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