JP3993819B2 - Ad変換器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器(アナログ・デジタル変換器)に関し、特に、逐次比較型AD変換器に用いて好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する、製品用途が広いAD変換器として、例えば特許文献1〜特許文献5等に開示されているような逐次比較型AD変換器が知られている。逐次比較型AD変換器は、比較的簡単な回路構成で実現され、CMOSプロセスとの整合性が高く比較的安価に製造可能であり、かつAD変換に要する時間が短く、中庸の変換精度を実現できる。
【0003】
逐次比較型AD変換器の構成及び動作の概要を図15に基づいて説明する。
図15は、逐次比較型AD変換器の構成を概念的に示したブロック図である。
図15において、50は逐次比較制御回路、51は局部DA変換器(デジタル・アナログ変換器:DAC)、52は比較器(コンパレータ)である。
【0004】
アナログ入力端子53より入力される入力アナログ電位VinをAD変換するとき、逐次比較制御回路50は、デジタルデータS21を生成して局部DA変換器51に供給する。局部DA変換器51は、供給されるデジタルデータS21をDA変換し、比較電位である局部アナログ電位S22を生成する。
【0005】
比較器52は、入力アナログ電位Vinと局部DA変換器51が生成する局部アナログ電位S22との大小関係を比較判定し、判定結果を判定出力S23として出力する。逐次比較制御回路50は、判定出力S23に基づいてデジタルデータにおける1つのビットの値を決定し、さらに決定した値を反映させた新たなデジタルデータS21を生成して局部DA変換器51に供給する。
【0006】
逐次比較型AD変換器は、上述した動作を繰り返し行い、最上位ビット(MSB)から最下位ビット(LSB)側に向かってデジタルデータの値を1ビット毎に順次決定していく。これにより、逐次比較型AD変換器は、入力アナログ電位Vinと局部アナログ電位S22との差が最小になるときのデジタルデータをAD変換出力として外部に出力する。
【0007】
逐次比較型AD変換器によるAD変換の原理を、図16を用いて説明する。図16においては、2分検索と呼ばれる比較電位の生成方法を3ビット精度のAD変換を一例に示す。
【0008】
3ビット精度のAD変換は、例えば比較のための電源電圧Vrefを8つの電圧範囲に分割し、“000”〜“111”の8つの連続するバイナリコードを低電圧側の電圧範囲から順に“000”、“001”、…、“111”とそれぞれ割り当てる。そして、入力アナログ電位Vinが何れの電圧範囲に属するかを判定することにより、入力アナログ電位Vinを3ビットのデジタルデータに変換する。
【0009】
3ビット精度の逐次比較AD変換器において、1ビット目(MSB)の比較時(1サイクル目)には、一般に入力アナログ電位Vinと電源電圧Vrefを2分割する電位(Vref/2)との大小関係が比較される。デジタルデータ“100”を局部DA変換器51に入力することで、局部アナログ電位S22がVref/2になる。
【0010】
1ビット目の比較の結果、入力アナログ電位VinがVref/2より高ければ、次に入力アナログ電位Vinと3Vref/4との大小関係が比較される(2ビット目の比較)。デジタルデータ“110”を局部DA変換器51に入力することで、局部アナログ電位S22が3Vref/4になる。さらに、2ビット目の比較の結果、入力アナログVinが電位3Vref/4より高ければ、次に入力アナログ電位Vinと7Vref/8との大小関係が比較される(3ビット目の比較)。デジタルデータ“111”を局部DA変換器51に入力することで、局部アナログ電位S22が7Vref/8になる。3ビット目の比較の結果、入力アナログ電位Vinが7Vref/8より高ければ、最終的なデジタルデータの値は“111”に決定される。
【0011】
逆に、1ビット目の比較の結果、入力アナログ電位VinがVref/2より低ければ、次に入力アナログ電位VinとVref/4(デジタルデータ“010”)との大小関係が比較される(2ビット目の比較)。さらに、2ビット目の比較の結果、入力アナログ電位VinがVref/4より高ければ、次に入力アナログ電位Vinと3Vref/8(デジタルデータ“011”)との大小関係が比較される(3ビット目の比較)。3ビット目の比較の結果、入力アナログ電位Vinが3Vref/8より低ければ、最終的なデジタルデータの値は“010”に決定される。
【0012】
このように、逐次比較型AD変換器にて用いられる2分検索は、比較結果に基づいて、入力アナログ電位Vinが属する電圧範囲をVref/2(1ビット目)→Vref/4(2ビット目)→Vref/8(3ビット目)と狭めていくことにより、最終的なデジタルデータの値を決定していく。
上述した説明では、説明を簡単にするために3ビット精度のAD変換を一例に示したが、任意のビット数精度のAD変換も同様である。
【0013】
図17は、従来の逐次比較型AD変換器の具体的な回路構成例を示す図である。なお、逐次比較型AD変換器の変換精度は8ビットから10ビット程度が一般的であるが、図17においては、説明を簡単にするために4ビット精度の逐次比較型AD変換器を一例として示す。
【0014】
図17において、容量C1〜C5とスイッチ(群)53(及び54、NM1)が4ビット精度の局部DA変換器を構成する。容量C1〜C5は、容量C1、C2の容量値をCxとすると、容量C3の容量値が2Cx、容量C4の容量値が4Cx(=22Cx)、容量C5の容量値が8Cx(=23Cx)と重み付けされている。一般的に容量C3、C4及びC5は、相対精度を確保するために、例えばそれぞれ単位容量Cxを2個、4個及び8個並列に接続して構成される。
【0015】
また、反転増幅回路(以下、「インバータ」と称す。)1、2、3、容量C6、C7及びNチャネルトランジスタ(NMOSトランジスタ)NM1、NM2、NM3が3段のコンパレータ(チョッパー型コンパレータ)を構成する。各コンパレータは、1つのインバータ1、2、3と1つのNMOSトランジスタNM1、NM2、NM3とでそれぞれ構成される。なお、コンパレータを容量C6、C7により結合しているのは、インバータ1〜3により全体で十分な増幅度を確保するためである。
【0016】
また、上記図15において、コンパレータ52は差動回路(差動アンプ)で示したが、実際の回路では各種の変形が可能であり、図17において各コンパレータは、入力端を1つだけ有する一端子(シングルエンド)入力の回路である。また、NMOSトランジスタNM1、NM2、NM3のゲートには制御信号SPL1がそれぞれ供給されているが、多少タイミングをずらした同じ極性の制御信号を供給しても良い。
【0017】
上記図17に示した逐次比較型AD変換器は、アナログ入力端子8より入力される入力アナログ電位Vinをデジタルデータに変換する際、まず入力アナログ電位Vinのサンプリングを行う。このとき、逐次比較制御回路4’は、制御信号S24、S25によりスイッチ53、54をそれぞれ制御し、スイッチ53、54及びラインL1〜L6を介して容量C1〜C5の一端をアナログ入力端子8に対してそれぞれ接続する。
【0018】
また、逐次比較制御回路4’は、制御信号SPL1によりNMOSトランジスタNM1がON(オン)状態になり、ノードN1の電位VN1がインバータ1の論理しきい値VTLに等しくなるように制御する。NMOSトランジスタNM2、NM3についても同様である。
上述のようにしてノードN1の電位VN1を論理しきい値VTLにし、容量C1〜C5の一端に入力アナログ電位Vinを供給することで、入力アナログ電位Vinのサンプリングが行われ、電位差(Vin−VTL)に応じた電荷が容量C1〜C5に蓄積される。
【0019】
入力アナログ電位Vinのサンプリングが終了した後、逐次比較型AD変換器は、MSBから下位側にデジタルデータを1ビット毎に順次決定していく比較動作を行う。
逐次比較制御回路4’は、サンプリングにて容量C1〜C5に蓄積した電荷を容量C1〜C5に再分配することによりノードN1の電位VN1が決定されるように、NMOSトランジスタNM1をOFF(オフ)状態にする(NMOSトランジスタNM2、NM3についても同様にOFF(オフ)状態にする。)。
【0020】
また、逐次比較制御回路4’は、スイッチ53、54を制御し、容量C1〜C4の一端をグランドに対して接続するとともに、容量C5の一端をリファレンス電位(比較のための電源電圧)Verfを供給する電源端子15に接続する。これにより、サンプリングにて容量C1〜C5に蓄積された電荷が再分配され、ノードN1の電位VN1は、(Vref/2−Vin+VTL)になる。
【0021】
インバータ1は、ノードN1の電位VN1が論理しきい値VTLより低いか否か、すなわち入力アナログ電位VinがVref/2よりも高いか否かを判定する。上記判定の結果、入力アナログ電位VinがVref/2よりも高い場合には、インバータ1からの出力がハイレベル(“H”)になるので、判定出力S1は“H”になる。一方、入力アナログ電位VinがVref/2よりも低い場合には、インバータ1からの出力がロウレベル(“L”)になるので、判定出力S1は“L”になる。逐次比較制御回路4’は、上記判定出力S1が“H”の場合にはMSBの値を“1”に決定し、判定出力S1が“L”の場合にはMSBの値を“0”に決定する。
【0022】
決定したMSBの値が“1”のときには、逐次比較制御回路4’は、スイッチ53、54を制御し、容量C4、C5の一端を電源端子15に接続するとともに、容量C1〜C3の一端をグランドに対して接続する。これにより、ノードN1の電位VN1は、(3Vref/4−Vin+VTL)になる。
【0023】
一方、決定したMSBの値が“0”のときには、逐次比較制御回路4’は、スイッチ53、54を制御し、容量C4の一端を電源端子15に対して接続するとともに、容量C1〜C3、C5の一端をグランドに対して接続する。これにより、ノードN1の電位VN1は、(Vref/4−Vin+VTL)になる。
上述したのと同様にして、ノードN1の電位VN1がコンパレータ1の論理しきい値VTLより低いか否かをインバータ1にて判定することにより、逐次比較制御回路4’は、MSBより1ビットだけ下位側のビットの値を決定する。
【0024】
以下同様にして、逐次比較制御回路4’は、スイッチ53、54を制御し、決定したビットの値に応じて容量C1〜C5の一端を電源端子15又はグランドに対して接続する。そして、ノードN1の電位VN1がインバータ1の論理しきい値VTLより低いか否かをインバータ1にて判定することにより、MSBから順にデジタルデータを決定していく。
【0025】
ここで、例えばスイッチ53、54を制御して、容量C1、C3〜C5の一端をグランドに対して接続し、容量C2の一端を電源端子15に接続すると、ノードN1の電位VN1は(Vref/16−Vin+VTL)になる。つまり、上記図17に示した逐次比較型AD変換器の局部DA変換器は、容量C1〜C5の合計の容量値16Cxに対して1/16の容量値Cxを単位とし、スイッチ53を制御することで容量C1〜C5の一端を電源端子15又はグランドに対して選択的に接続する。これにより、上記図17に示した逐次比較型AD変換器は、局部DA変換器によりVref/16刻みでノードN1の電位VN1を変化させることができ、4ビットのデジタルデータを決定することができる。
【0026】
また、上述した説明からわかるように、上記図17においてノードN1の電位VN1は、
N1=(局部DA変換器の出力電位)−入力アナログ電位Vin+VTL…(1)
になる(VTLはインバータ1の論理しきい値)。つまり、容量C1〜C5とスイッチ53、54は局部DA変換器としての機能に加え、アナログ入力端子8より入力される入力アナログ電位Vinのサンプル・ホールド回路及び上記式(1)に示される電位VN1を生成する加減算回路としての機能を有する。
このように、比較的安価に製造できるCMOSプロセスで製造され、小面積かつ比較的高速な高分解能逐次比較型AD変換器が実現されている。
【0027】
【特許文献1】
特開昭57−55614号公報
【特許文献2】
特開昭59−163913号公報
【特許文献3】
特開昭64−13819号公報
【特許文献4】
特開平7−95080号公報
【特許文献5】
特開2001−16079号公報
【特許文献6】
特開2000−295106号公報
【非特許文献1】
J.Yuan and C.Svensson,“A 10-bit 5-MS/s successive approximation ADC cell used in a 70-MS/s ADC array in 1.2-um CMOS”,IEEE Journal of Solid-State Circuits,vol.29,No.8,p.866-872,August 1994.
【0028】
【発明が解決しようとする課題】
近年の集積回路等の微細化の進展とともに、集積回路等のデジタル回路における動作の高速化が進展している。デジタル回路における動作の高速化に見合ったシステム全体での性能向上を達成するために、AD変換器においても動作の高速化が要求されている。小さな面積で回路を構成できる逐次比較型AD変換器においても、動作の高速化が強く要求されている。
【0029】
しかしながら、上記図17に示したような従来の逐次比較型AD変換器においては、動作周波数(動作速度)を制限する要因があった。以下、従来の逐次比較型AD変換器の動作周波数を制限する要因について図18に基づいて説明する。
【0030】
図18(A)、(B)は、上記図17に示した従来の逐次比較型AD変換器が有する局部DA変換器を4ビット精度から10ビット精度に拡張した10ビット精度の逐次比較型AD変換器の動作波形の一例を示す図である。電位767Vref/1024の入力アナログ電位Vinが入力され、上述した2分検索を用いて最終的にデジタルデータの値“767”(2進数表記では、“1011111111”)を決定する際の動作波形を示している。なお、“1011111111”の出力を実際に得るには、伝達特性の関係から入力アナログ電位Vinは767.5×Vref/1024になるが、説明を簡単にするために767Vref/1024とする。
【0031】
図18に動作波形を示した10ビット精度の逐次比較型AD変換器の動作原理は、上記図17に示した逐次比較型AD変換器と同じであるので、以下では図17を参照しながら動作波形について説明する。
図18(A)、(B)に示したサンプリング期間TSPLにおいて、サンプリング容量(図17に示す容量C1〜C5)は、入力アナログ電位Vinとインバータ1の論理しきい値VTLとの電位差(Vin−VTL)に充電される。このとき、ノードN1(インバータ1の入力端)の電位VN1、ノードN2(インバータ1の出力端)の電位VN2は、図18(A)、(B)に示されるように論理しきい値VTL(図18においては約2.5V)になっている。
【0032】
サンプリング終了後、逐次比較型AD変換器は、比較期間TCOMにおいてMSBから下位側に順番にデジタルデータを決定していく比較動作を行う。
【0033】
1ビット目(MSB)の比較では、局部DA変換器の出力電位は512Vref/1024(Vref/2)であるので、ノードN1の電位VN1は、
N1=512Vref/1024−767Vref/1024+VTL=−255Vref/1024+VTL
になる(上記式(1)参照)。ノードN1の電位VN1がコンパレータ1の論理しきい値VTLよりも低いので、ノードN2の電位VN2は“H”になり、判定出力S1も“H”になる(比較期間TC1)。
したがって、逐次比較型AD変換器は、入力アナログ電位VinがVref/2より高く、次の比較では768Vref/1024(3Vref/4)と入力アナログ電位Vinとを比較すれば良いことがわかる。
【0034】
2ビット目の比較では、局部DA変換器の出力電位は768Vref/1024であるので、ノードN1の電位VN1は、
N1=768Vref/1024−767Vref/1024+VTL=Vref/1024+VTL
になる。ノードN1の電位VN1が論理しきい値VTLよりも高いので、ノードN2の電位VN2及び判定出力S1は“L”になる(比較期間TC2)。
これにより、逐次比較型AD変換器は、入力アナログ電位Vinが3Vref/4より低く、次の比較では640Vref/1024(5Vref/8)と入力アナログ電位Vinとを比較すれば良いことがわかる。
【0035】
同様に3ビット目の比較では、局部DA変換器の出力電位は640Vref/1024であるので、ノードN1の電位VN1は、
N1=640Vref/1024−767Vref/1024+VTL=−127Vref/1024+VTL
になる。したがって、ノードN2の電位VN2及び判定出力S1は“H”になる(比較期間TC3)。
4ビット目の比較では、局部DA変換器の出力電位は704Vref/1024(11Vref/16)であり、ノードN1の電位VN1は、
N1=704Vref/1024−767Vref/1024+VTL=−63Vref/1024+VTL
になる。したがって、ノードN2の電位VN2及び判定出力S1は“H”になる(比較期間TC4)。
【0036】
5ビット目の比較では、局部DA変換器の出力電位は736Vref/1024(23Vref/32)であり、ノードN1の電位VN1は、
N1=736Vref/1024−767Vref/1024+VTL=−31Vref/1024+VTL
になる。したがって、ノードN2の電位VN2及び判定出力S1は“L”になる。
以下同様に、判定出力S1に基づいて6ビット目〜10ビット目の比較をそれぞれ行い、1ビット目をMSBとして各ビットの比較結果を順に並べると、デジタルデータの値“1011111111”が得られる。
【0037】
上記図18に示したAD変換動作において、1ビット目の比較ではインバータ1の入力端の電位(ノードN1の電位VN1)は、(−255Vref/1024+VTL)になる。また、2ビット目の比較ではインバータ1の入力端の電位は、(Vref/1024+VTL)になる。
【0038】
このように、インバータ1の入力端の電位が論理しきい値VTLに対して大きく離れた(十分高い)電位から、論理しきい値VTL付近の逆極性の判定出力S1を出力する電位に変化すると、インバータ1(コンパレータ)における遅延時間が非常に長くなる。これは、インバータ1の入力端の電位と論理しきい値VTLとの電位差が小さいので、ノードN2の電位VN2を変化させる電流の供給源であるインバータ1からノードN2に対して供給される電流が小さく、電位VN2の変化が遅くなるためである。
【0039】
以下、詳細に説明する。
3段のコンパレータにより1000倍の増幅度が得られるように(論理しきい値VTLとの電位差がVref/1024の電位を電源電圧程度に増幅できるように)、コンパレータを構成するインバータ1〜3の増幅率をそれぞれ10倍とする。
【0040】
上記図18に示した1ビット目の比較において、ノードN1の電位VN1は、(−255Vref/1024+VTL)である。論理しきい値VTLとの電位差(−255Vref/1024)は、インバータ1によりほぼ電源電圧まで増幅され、ノードN2の電位VN2は、ほぼ正の電源電圧Vddになる。
【0041】
この状態から2ビット目の比較を行う。
2ビット目の比較において、ノードN1の電位VN1は、(Vref/1024+VTL)であり、ノードN2の電位VN2は、最終的に(VTL−10Vref/1024)程度、つまり論理しきい値VTL程度の電位になる。したがって、インバータ1は、1ビット目の比較を終了した後、2ビット目の比較結果を得るまでに、放電によりVdd−(VTL−10Vref/1024)、電源電圧の約1/2分もノードN2の電位VN2を低くしなければならない。
【0042】
ここで、インバータ1の相互コンダクタンスをgmとすると、2ビット目の比較時にインバータ1が供給可能な負荷電流は、gm×(Vref/1024)になる。インバータ1の相互コンダクタンスをgmは、インバータ1に流す電流で決まるので、消費電力の観点からある値より大きくすることはできない。
【0043】
そのため、インバータ1は、gm×(Vref/1024)で示される小さな電流で、ノードN2の電位VN2をVdd−(VTL−10Vref/1024)も変化させなければならないので多大な時間を要する。例えば、上記図18に示した動作例では、60ns以上の遅延時間DTを要してしまう。従来の逐次比較型AD変換器においては、1ビット当たりの比較に要する時間及び全体の変換時間を上述したようなもっとも大きくなる場合の遅延時間に合わせて設計しなければならなかった。
【0044】
以上のように、従来の逐次比較型AD変換器においては、入力アナログ電位Vinをデジタルデータに変換する際のあるビットの比較時に、インバータ1の入力端の電位が論理しきい値VTLに対して大きく離れた電位から、論理しきい値VTL付近の逆極性の判定出力S1を出力する電位に変化する場合があり、このときのコンパレータにおける遅延時間が非常に長くなるという問題があった。
【0045】
また、上記特許文献6には、各ビット決定に割り当てられた所定時間の期間に基づかず、ビット決定を行うための信号を提供することにより逐次比較型AD変換器における動作の高速化を図る方法が開示されている。しかしながら、上記特許文献6に開示されている方法は、デジタルデータが得られる時間が入力アナログ電位Vinに応じて異なるため、得られた結果を有効に利用するには回路が複雑化してしまうという問題があった。さらに、上記特許文献6に開示されている方法は、反対に結合された2つの差動コンパレータ回路を用いなければならず、シングルエンド入力のコンパレータに適用することができない、また差動コンパレータ回路を用いた場合でも回路規模が2倍以上になってしまうという問題があった。
【0046】
また、上記非特許文献1には、差動コンパレータ回路の出力信号をリセットすることで逐次比較型AD変換器における動作の高速化を図る方法が開示されている。しかしながら、上記特許文献6に開示されている方法は、正帰還回路を増幅回路として用いており、シングルエンド入力のコンパレータには適用できないとともに、タイミング設計が非常に困難になるという問題があった。
【0047】
本発明は、このような事情に鑑みて成されたものであり、逐次比較型AD変換器にてAD変換を高速に行うことができるようにすることを目的とする。また、本発明は、正帰還型の回路を用いない回路構成でAD変換を高速に行うことができる逐次比較型AD変換器を提供することを第2の目的とする。
【0048】
【課題を解決するための手段】
本発明のAD変換器は、比較電位を出力する局部DA変換器と、比較期間にて入力アナログ電位と比較電位とを比較し比較結果を増幅する増幅回路を有する比較器と、比較結果に基づいて、デジタルデータの値を1ビット毎に逐次決定し、決定した値に応じた次のビットの比較電位を局部DA変換器に出力させる制御回路と、任意の上記比較期間に上記増幅回路を初期化するリセット回路とを備える。比較器は、縦属接続されたn段(nは自然数)の増幅回路を有し、リセット回路は、少なくとも1段目の増幅回路の出力を初期化する。
【0049】
これにより、あるビットの比較時にインバータ1の入力端の電位が論理しきい値VTLから大きく離れた電位から、次のビットの比較時に論理しきい値VTL付近の逆の判定出力S1を出力すべき電位に変化したとしても、リセット回路により、リセット期間中にインバータ1の出力端の電位を電源電圧Vdd付近から論理しきい値VTL付近の電位に充放電することができるようになる。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する逐次比較型AD変換器においては、局部DA変換器の内部にて供給されるデジタルデータをDA変換して生成する電位を、説明の便宜上、「局部DA変換器の出力電位」と称する。
【0051】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による逐次比較型AD変換器の一構成例を示す図である。
【0052】
図1において、インバータ1、2、3、容量C6、C7及びNチャネルトランジスタ(NMOSトランジスタ)NM1、NM2、NM3が、上記図17に示した逐次比較型AD変換器と同様に直列接続した3段のコンパレータ(チョッパー型コンパレータ)を構成する。各コンパレータは、1つのインバータ1、2、3と、対応するインバータ1、2、3の入力端子及び出力端子にソース及びドレインがそれぞれ接続された1つのNMOSトランジスタNM1、NM2、NM3とで構成される。NMOSトランジスタNM1、NM2、NM3のゲートには制御信号SPL1が供給される。
【0053】
なお、インバータ1、2、3の論理しきい値は等しく、VTLである。また、コンパレータを容量C6、C7により結合しているのは、インバータ1〜3により全体で十分な増幅度を確保するとともに、インバータ1、2、3の論理しきい値VTLのずれがある場合に、それを補償するためである。
【0054】
4は逐次比較制御回路であり、図1に示した逐次比較型AD変換器を構成する各回路を制御する。例えば、逐次比較制御回路4は、比較動作時にインバータ3の出力である判定出力S1に基づいて所定期間毎にデジタルデータを生成するとともに、デジタルデータにて決定した値を保持する。さらに、逐次比較制御回路4は、すべてのビットの値が決定したデジタルデータをアナログ入力電位VinのAD変換出力として外部に出力する。また、例えば、逐次比較制御回路4は、生成したデジタルデータを局部DA変換器5に供給したり、制御信号SPL1及びリセット信号RSTを出力したりする。
【0055】
局部DA変換器5は、上記図17に示した局部DA変換器と同様の動作を行う。具体的には、局部DA変換器5は、逐次比較制御回路4から供給されるデジタルデータS2をDA変換して比較電位(局部DA変換器の出力電位)を生成する。また、局部DA変換器5は、アナログ入力端子8より入力される入力アナログ電位Vinを記憶し、各ビットの比較時にノードN1の電位VN1を、
N1=(局部DA変換器の出力電位)−入力アナログ電位Vin+VTL…(1)
にする。つまり、局部DA変換器5は、局部DA変換器、入力アナログ電位Vinのサンプル・ホールド回路及び上記式(1)に示される電位VN1を生成する加減算回路としての機能を有する。
なお、逐次比較制御回路4及び局部DA変換器5の詳細については後述する。
【0056】
6はリセット回路であり、入力されるリセット信号RST(インバータ7により反転されたリセット信号RSTも含む。)に基づいて、ノードN2(1段目のコンパレータの出力端)の電位VN2を、論理しきい値VTL付近の電位に充放電するように動作する。
【0057】
リセット回路6は、4つのNMOSトランジスタNM4、NM5、NM6、NM7と、4つのPチャネルトランジスタ(PMOSトランジスタ)PM1、PM2、PM3、PM4とで構成される。トランジスタPM1、PM2のソースは電源電圧Vddに対してそれぞれ接続され、トランジスタNM4、NM7のソースはグランド(GND)に対してそれぞれ接続される。
【0058】
トランジスタPM2のドレインとトランジスタNM5のドレイン、トランジスタNM5のソースとトランジスタNM6のドレイン、トランジスタNM6のソースとトランジスタNM7のドレインがそれぞれ接続される。トランジスタPM3のドレインはトランジスタPM4のソースに接続される。トランジスタPM3のソースは、トランジスタPM2のドレインとトランジスタNM5のドレインとの相互接続点N6に接続され、トランジスタPM4のドレインは、トランジスタNM6のソースとトランジスタNM7のドレインとの相互接続点N7に接続される。
【0059】
また、トランジスタPM1のドレインとトランジスタNM4のドレインとの相互接続点、トランジスタNM5のソースとトランジスタNM6のドレインとの相互接続点、及びトランジスタPM3のドレインとトランジスタPM4のソースとの相互接続点は、ノードN2に対して接続される。トランジスタPM1のゲートは相互接続点N6に接続され、トランジスタNM4のゲートは相互接続点N7に接続される。トランジスタPM2、NM5、NM6のゲートには、リセット信号RSTが供給され、トランジスタPM3、PM4、NM7のゲートには、リセット信号RSTがインバータ7により反転され供給される。
【0060】
次に、動作について説明する。
本実施形態の逐次比較型AD変換器によるAD変換でのサンプリング動作及び、比較動作の基本的な動作原理は、従来の逐次比較型AD変換器と同様である。図2(A)、(B)、(C)は、上記図1に示した逐次比較型AD変換器(局部DA変換器は10ビット精度)の動作波形の一例を示す図である。電位767Vref/1024の入力アナログ電位VinをAD変換する際の動作波形を示している。
【0061】
図2に示したサンプリング期間TSPLにおいて、ノードN1(インバータ1の入力端)の電位VN1、ノードN2(インバータ1の出力端)の電位VN2は、論理しきい値VTLになり、入力アナログ電位Vinが局部DA変換器5に記憶される。ノードN3〜N5及び判定出力S1の電位も論理しきい値VTLである。
【0062】
サンプリング終了後、逐次比較型AD変換器は、比較期間TCOMにおいてMSBから下位側に順番にデジタルデータを決定していく比較動作を行う。逐次比較型AD変換器は、2分検索により入力アナログ電位Vinとの電位差がもっとも小さくなるデジタルデータを検索する。
【0063】
1ビット目(MSB)の比較では、局部DA変換器5の出力電位は512Vref/1024(Vref/2)であるので、ノードN1の電位VN1は、
N1=512Vref/1024−767Vref/1024+VTL=−255Vref/1024+VTL
になる(上記式(1)参照)。したがって、ノードN2の電位VN2及び判定出力S1は“H”になる(比較期間TC1)。
【0064】
2ビット目の比較では、局部DA変換器5の出力電位は768Vref/1024(3Vref/4)であるので、ノードN1の電位VN1は、
N1=768Vref/1024−767Vref/1024+VTL=Vref/1024+VTL
になる。ノードN2の電位VN2及び判定出力S1は“L”になる(比較期間TC2)。
【0065】
3ビット目の比較では、局部DA変換器5の出力電位は640Vref/1024(5Vref/8)であるので、ノードN1の電位VN1は、
N1=640Vref/1024−767Vref/1024+VTL=−127Vref/1024+VTL
になる。ノードN2の電位VN2及び判定出力S1は“H”になる(比較期間TC3)。
【0066】
4ビット目の比較では、局部DA変換器5の出力電位は704Vref/1024(11Vref/16)であり、ノードN1の電位VN1は、
N1=704Vref/1024−767Vref/1024+VTL=−63Vref/1024+VTL
になる。ノードN2の電位VN2及び判定出力S1は“H”になる(比較期間TC4)。
【0067】
5ビット目の比較では、局部DA変換器5の出力電位は736Vref/1024(23Vref/32)であり、ノードN1の電位VN1は、
N1=736Vref/1024−767Vref/1024+VTL=−31Vref/1024+VTL
になる。ノードN2の電位VN2及び判定出力S1は“H”になる。
【0068】
6ビット目の比較では、局部DA変換器5の出力電位は752Vref/1024(47Vref/64)であり、ノードN1の電位VN1は、
N1=752Vref/1024−767Vref/1024+VTL=−15Vref/1024+VTL
になる。ノードN2の電位VN2及び判定出力S1は“H”になる。
【0069】
7ビット目の比較では、局部DA変換器5の出力電位は760Vref/1024(95Vref/128)であり、ノードN1の電位VN1は、
N1=760Vref/1024−767Vref/1024+VTL=−7Vref/1024+VTL
になる。ノードN2の電位VN2及び判定出力S1は“H”になる。
【0070】
8ビット目の比較では、局部DA変換器5の出力電位は764Vref/1024(191Vref/256)であり、ノードN1の電位VN1は、
N1=764Vref/1024−767Vref/1024+VTL=−3Vref/1024+VTL
になる。ノードN2の電位VN2及び判定出力S1は“H”になる。
【0071】
9ビット目の比較では、局部DA変換器5の出力電位は766Vref/1024(383Vref/512)であり、ノードN1の電位VN1は、
N1=766Vref/1024−767Vref/1024+VTL=−Vref/1024+VTL
になる。ノードN2の電位VN2及び判定出力S1は“H”になる。
【0072】
10ビット目の比較では、局部DA変換器5の出力電位は767Vref/1024であり、ノードN1の電位VN1は、
N1=767Vref/1024−767Vref/1024+VTL=VTL
になる。ここで、上述したように説明を簡単にするために入力アナログ電位Vinは767Vref/1024としたが、“767”の出力を実際に得るには、入力アナログ電位Vinは767.5×Vref/1024であるので、ノードN2の電位VN2及び判定出力S1は“H”になる。
得られる各ビットの比較結果を、1ビット目をMSBとして順に並べると、デジタルデータの値“1011111111”が得られる。
【0073】
ここで、本実施形態による逐次比較型AD変換器は、図6に示したようにAD変換動作における各ビットの比較期間にて初期の一定期間RT、リセット信号RSTを“H”にする。これにより、リセット回路6が活性化され、一時的にコンパレータ回路が備える1段目のインバータ1の出力抵抗を小さく、すなわちインバータ1の増幅率を小さくするように制御する。その後、逐次比較型AD変換器は、各ビットの比較期間における残りの期間、リセット回路6を非活性化してインバータ1の増幅率を大きくし、比較結果が得られるように制御する。
【0074】
説明を簡単にするためにリセット回路6のトランジスタPM1、NM4が、インバータ1を構成するPMOSトランジスタ、NMOSトランジスタとそれぞれ同じサイズであるとする。トランジスタPM1、NM4がインバータとして動作するときの論理しきい値もVTLになる。
【0075】
リセット信号RSTが“H”のとき、リセット回路6では、トランジスタPM2、NM7がOFF状態になり、トランジスタPM3、PM4、NM5、NM6がON状態になる。これにより、トランジスタPM1、NM4のゲート電位は、ノードN2の電位VN2に等しくなり、トランジスタPM1、NM4は、ノードN2の電位VN2が入力されるインバータと等価に動作する(但し、出力も同時にノードN2に接続されており、トランジスタPM1、NM4は、入出力が短絡されノードN2に接続されたインバータとして動作する。)。
【0076】
このとき、ノードN2の電位VN2がインバータ1の論理しきい値VTLより高い場合には、トランジスタPM1、NM4の出力は“L”になろうとする。逆に、ノードN2の電位VN2がインバータ1の論理しきい値VTLより低い場合には、トランジスタPM1、NM4の出力は“H”になろうとする。トランジスタPM1、NM4のドレインがノードN2に接続されているために、ノードN2の電位VN2がインバータ1により論理しきい値VTLから大きく離れようとすると、論理しきい値VTL付近の電位に引き戻そうとするフィードバック制御が働くととらえても良い。
【0077】
その結果、リセット信号が“H”である期間は、リセット回路6(トランジスタPM1、NM4の作用)により、インバータ1の出力抵抗が小さくなる。したがって、ノードN2の電位VN2と論理しきい値VTLとの電位差と、ノードN1の電位VN1と論理しきい値VTLとの電位差の比、すなわちリセット回路6による効果を含めたインバータ1の増幅率は小さくなる。
【0078】
一方、リセット信号RSTが“L”の期間は、トランジスタPM2、NM7がON状態になり、トランジスタPM3、PM4、NM5、NM6がOFF状態になる。これにより、トランジスタPM1、NM4は、OFF状態になり、リセット回路6はノードN2の電位VN2にほとんど影響を及ぼさない。
【0079】
仮に、リセット回路6が活性化されていない(トランジスタPM1、NM4がOFF状態)場合のコンパレータを構成するインバータ1〜3の増幅率を10倍とし、リセット回路6が活性化されている(トランジスタPM1、NM4がON状態)場合のインバータ1の増幅率を2倍(インバータ2、3の増幅率は10倍)としてコンパレータにおける遅延時間について説明する。
【0080】
つまり、リセット回路6を活性化した場合には、インバータ1の出力抵抗(増幅率)が、等価的にリセット回路6を活性化していない場合の1/5になるとする。上記図2に示した動作波形においても、リセット信号RSTが“H”のときには、インバータ1の増幅率が小さくなり、ノードN2の電位VN2が論理しきい値VTLに近い電位になっていることがわかる。
【0081】
本実施形態においても、電位767Vref/1024の入力アナログ電位VinをAD変換する際、1ビット目の比較ではインバータ1の入力端の電位は、(−255Vref/1024+VTL)になる。同様に、2ビット目の比較ではインバータ1の入力端の電位は、(Vref/1024+VTL)になる。
【0082】
従来の逐次比較型AD変換器では、このようにあるビットの比較時にインバータ1の入力端の電位が論理しきい値VTLに対して大きく離れた電位から、論理しきい値VTL付近の逆の比較結果を出力する電位に変化すると、インバータ1における遅延時間が非常に長くなっていた。これは、上述したようにインバータ1の相互コンダクタンスgmは設計により一定であるので、インバータ1の入力端の電位が論理しきい値VTL付近である場合には、論理しきい値VTLとの電位差がLSB相当分と最小であるにもかかわらず、出力の電位変動が電源電圧の1/2程度と最大になる場合があるためである。
【0083】
それに対して、本実施形態による逐次比較型AD変換器では、リセット信号RSTが“L”の期間中は従来と同様の動作を行うので、1ビット目の比較ではノードN2の電位VN2は、ほぼ正の電源電圧Vddになる。
【0084】
次に、2ビット目の比較期間になると、まずノードN1の電位VN1は、Vref/1024+VTLになる。同時にリセット信号RSTが“H”になることで、インバータ1の出力抵抗が、等価的にリセット回路6が活性化されていないときの1/5になる。ノードN2の電位VN2を変化させるための遅延時間は、インバータ1の出力抵抗と、ノードN2の負荷容量及び寄生容量で示される。インバータ1の出力抵抗が、リセット回路6が活性化されていない場合の1/5になると、インバータ1(ノードN2)の時定数も1/5になる。
【0085】
これにより、ノードN2の放電時間は、リセット回路6を設けない場合の1/5になる。図2に示したように比較期間にてリセット信号RSTが“H”であるときには、ノードN2の時定数が小さくなり、従来に比べて遅延時間DTも短縮されていることがわかる(特に、2ビット目の比較。)。
【0086】
しかしながら、リセット回路6を常に活性化したままでは、インバータ1の増幅率が2であり、インバータ2、3の増幅率が10であるので、従来の逐次比較型AD変換器のインバータ1〜3による全増幅率の1/5の増幅率しか得られない。そこで、ノードN2の電位VN2が十分放電された後、リセット信号RSTを“L”にすることにより、リセット回路6を非活性化し、インバータ1〜3の増幅率をそれぞれ10倍にすることができる。したがって、リセット信号RSTを“L”にした場合に、本実施形態による逐次比較型AD変換器において最終的に得られるノードN2、N4、比較判定S1の振幅は、上記図17に示した従来の逐次比較型AD変換器とほぼ等しくすることができる。
【0087】
上述した説明では、インバータ1の等価的な出力抵抗、増幅率の観点からノードN2の電位変化の時定数が小さくなることを説明したが、リセット回路6のフィードバック作用からノードN2の電位変化の時定数が小さくなることを説明することも可能である。
【0088】
リセット信号RSTが“H”になると、リセット回路6内のトランジスタPM1、NM4のドレインは、ノードN2に接続されているために、インバータ1によりノードN2の電位VN2が論理しきい値VTLから大きく離れようとすると、論理しきい値VTL付近の電位に引き戻そうとするフィードバック制御が働く。
【0089】
図2に示した例では、ノードN2の電位VN2は、1ビット目の比較によりほぼ電源電圧Vddになっている。2ビット目の比較が始まり、リセット信号RSTが“H”になると、トランジスタPM1、NM4のゲート電位は電源電圧Vddになる。これにより、トランジスタPM1がOFF状態、トランジスタNM4がON状態になり、ノードN2の電位VN2が下がり始める。
【0090】
ノードN2の電位をインバータ1のみで放電する場合には、インバータ1を構成するNMOSトランジスタ、PMOSトランジスタのゲート電位は論理しきい値VTL程度(より正確には、Vref/1024+VTL)であるのに対して、ゲートに電源電圧Vddが印加されたトランジスタNM4によりノードN2の電位が放電される分だけ、ノードN2の電位変化が速くなる。
【0091】
ノードN2の電位VN2が論理しきい値VTL付近まで下がってくると、トランジスタNM4によりノードN2の電位が一方的に放電されることはなくなる。さらに、トランジスタPM1からの充電も行われるので、ノードN2の電位VN2は最終的に論理しきい値VTL付近の電位になる。ここで、トランジスタPM1、NM4で構成されるインバータの論理しきい値もVTLであることが望ましい。
【0092】
以上のように、本実施形態による逐次比較型AD変換器は、リセット回路を備えることによりコンパレータ(インバータ1〜3)出力電位の変化、つまりAD変換動作の高速化が達成される。従来の逐次比較型AD変換器では多大な時間を要する上記図2に示した2ビット目の比較のような場合であっても、本実施形態による逐次比較型AD変換器は、遅延時間を大幅に短縮でき、例えば上記図2に示した例では、従来に比べて1/2以下に短縮されている。
【0093】
また、リセット期間RTには、1段目のコンパレータ(インバータ1)に流れる電流は、リセット回路6が活性化されていない場合の電流値より大きくなるが、各ビットの比較期間に対するリセット期間の割合を、例えば1/5程度の期間にしておけば、消費電力の増加は小さく抑えることが可能である。
【0094】
以上、説明したように本実施形態による逐次比較型AD変換器は、インバータ1の出力端にリセット回路6を設け、各ビット比較の初期の所定期間(リセット期間RT)だけリセット信号RSTによりリセット回路6を活性化する。これにより、インバータ1の出力抵抗を小さく、すなわちインバータ1の増幅率を小さくするよう制御し、各ビット比較の期間の残りの期間においては、リセット回路6を非活性化して、インバータ1の増幅率を大きくして比較結果が得られるように制御する。
【0095】
インバータ1の入力端の電位が論理しきい値VTLから大きく離れた電位から論理しきい値VTL付近の電位に変化するとき、ノードN2の電位VN2を電源電圧Vdd付近から論理しきい値VTL付近の電位に充放電しなければならない。本実施形態によれば、リセット期間RTにて、リセット回路6によりノードN2の電位VN2を電源電圧Vdd付近から、論理しきい値VTL付近の電位に充放電することができ、従来の問題点を解決することができる。これは、リセット回路6を活性化することにより、インバータ1の出力抵抗が小さく、すなわちインバータ1の増幅率が、リセット期間に小さくなるためであると解釈することもできる。これにより、インバータ1の相互コンダクタンスgmが一定で、入力電位差が最小(LSB程度と)程度であり供給できる負荷電流が小さくても、ノードN2の電位VN2の変化に要する時間を短縮できる。これにより、逐次比較型AD変換器でのAD変換動作の高速化を図ることができる。
【0096】
また、上記特許文献6では高速化を達成するために、各ビット決定に割り当てられた所定期間に基づかず、逐次比較ビット決定を行うための信号を提供することにより逐次比較AD変換器の変換速度を改善する方法を採用していたが、反対に結合された2つの差動コンパレータおよび論理回路を使用する必要があった。そのために、シングルエンド入力のコンパレータには適用できない、差動コンパレータを用いる場合でも回路規模が2倍以上になってしまうという問題があったのに対して、本実施形態によれば、シングルエンド入力の増幅器に対しても、わずかな数の素子を追加するだけで、回路規模の増大を抑制しながらもAD変換動作の高速化の手段を提供できるという利点がある。
【0097】
また、上記非特許文献1では、シングルエンド入力のコンパレータには適用できない問題があったのに対して、本実施形態によれば、シングルエンド入力のコンパレータにリセット回路6を適用できるように回路を構成でき、シングルエンド入力コンパレータでの高速化が達成される。
【0098】
さらには、上記特許文献6では、各ビット決定にかかる時間は、各ビット決定に割り当てられた所定期間に基づかない回路構成となっており、入力されるアナログ電位によって、デジタルコードが得られる時間が一定せず、得られた結果を有効に利用するためには、回路が複雑化するという問題点があった。それに対して、本実施形態では、上述した説明から明らかなように、もっとも遅延時間が大きくなる比較条件を探し出して最大の遅延時間をもとに、各ビットの比較の期間をあらかじめ決めて差し支えない。したがって、入力アナログ電位によらず、所定時間の期間に基づく各ビット比較の期間を決定することが可能で、AD変換に要する時間が一定であるという利点も得られる。
【0099】
以上、コンパレータを構成する1段目のインバータ1の出力端であるノードN2に対してリセット回路6を設ける例を説明してきたが、リセット回路6とともに、ノードN4、あるいは判定出力S1の電位を論理しきい値VTL付近にするような回路を用いても、同様な効果が得られることは言うまでもない。
【0100】
図3は、局部DA変換器5の回路構成例を示す図である。図3においては、4ビット精度の容量DA変換器を一例として示しているが、局部DA変換器5の精度はAD変換の精度に合わせて任意のビット数に拡張可能である。また、局部DA変換器5として、容量DA変換器に限らず、抵抗DA変換器を用いても良いし、容量DA変換器と抵抗DA変換器とを合わせて用いても良い。
【0101】
図3において、C1〜C5は容量であり、容量C1、C2の容量値をCxとすると、容量C3の容量値が2Cx、容量C4の容量値が4Cx、容量C5の容量値が8Cxと重み付けされている。NS1〜NS9、NM40はNMOSトランジスタであり、PS1〜PS9はPMOSトランジスタである。
【0102】
21、23、25、27は否定論理積演算回路(NAND回路)、22、24、26、28は否定論理和演算回路(NOR回路)であり、20はインバータである。また、8は入力アナログ電位Vinが供給されるアナログ入力端子、15は比較のための正のリファレンス電位Vrefが供給される端子である。
【0103】
容量C1〜C5の一端は、ノードN1に接続される。容量C1の他端は、トランジスタNM40を介してグランドに接続可能であるとともに、トランジスタNS9、PS9で構成されたトランスファーゲートを介してアナログ入力端子8に接続可能である。トランジスタNM40のゲートには、比較動作の制御信号COMPが供給される。
【0104】
容量C2の他端は、トランジスタNS8、PS8で構成されたトランスファーゲートを介してアナログ入力端子8に接続可能である。さらに、容量C2の他端は、トランジスタPS4を介して端子15に接続可能であるとともに、トランジスタNS4を介してグランドに接続可能である。
【0105】
トランジスタPS4のゲートには、デジタルデータS2[0](LSB)と制御信号COMPとのNAND回路27による演算結果が供給される。また、トランジスタNS4のゲートには、デジタルデータS2[0]とインバータ20により制御信号COMPを反転した信号とのNOR回路28による演算結果が供給される。
【0106】
容量C3、C4、C5の他端については、制御に関わるデジタルデータがそれぞれS2[1]、S2[2]、S2[3](MSB)と異なるだけで、上述した容量C2の他端側と同様の構成であるので説明は省略する。
図3においては、トランジスタPS1〜PS4、NS1〜NS4、容量C1〜C5は容量DA変換器として動作する。
【0107】
それぞれのトランスファーゲートを構成するトランジスタNS5〜NS9及びPS5〜PS9のゲートには、サンプリング動作の制御信号SPL2及びSPL2Bが供給される。
【0108】
図3に示した局部DA変換器5の動作について簡単に説明する。
図3において、制御信号COMPが“H”のとき、容量C1の他端はグランドに接続される。NAND回路21、23、25、27の出力はデジタルデータS2[3]〜S2[0]の反転信号になる。また、インバータ20によりNOR回路22、24、26、28の入力には“L”が供給されるので、NOR回路22、24、26、28の出力もデジタルデータS2[3]〜S2[0]の反転信号になる。
【0109】
デジタルデータS2[3]〜S2[0]の値に従って、重み付けされた容量C1〜C5の上記他端をグランドあるいはリファレンス電位Vrefにできるので、ノードN1にデジタルデータS2に応じた電位を供給することができる(図3では容量C1の他端はグランド(GND)にしているので、リファレンス電位Vrefにつながれる容量値は0〜15Cxとなり、全体の容量が16Cxなので発生できるDAC出力電位は、0からVref/16刻みで、15Vref/16までになる。)
【0110】
図4は、逐次比較制御回路4の構成例を示す図である。
なお、以下の説明では、4ビット精度のAD変換に対応する逐次比較制御回路4を一例として説明するが、上述した局部DA変換器5と同様にAD変換の精度に合わせて任意のビット数に拡張可能である。
【0111】
図4において、30はリセット信号生成回路、31は制御信号生成回路である。制御信号生成回路31は、外部クロック信号OCLK及びサンプリング・比較制御信号CTLが外部から入力され、AD変換動作を制御するための各種制御信号を生成し出力する。生成される制御信号には、サンプリング動作の制御信号SPL1、SPL2、SPL2B、比較動作の制御信号COMP、内部クロック信号CLK1、CLK2、CLK3、CLK4、Dフリップフロップを制御するためのリセット信号DFRST及びセット信号SETがある。
【0112】
リセット信号生成回路30は、判定出力S1、リセット信号RST発生のイネーブル信号RSTENが外部から入力される。また、リセット信号生成回路30は、制御信号COMP、内部クロック信号CLK1〜CLK4、リセット信号DFRST及びセット信号SETが制御信号生成回路31から入力される。リセット信号生成回路30は、入力される信号に基づいてデジタルデータS2及びリセット信号RSTを出力する。
【0113】
図5は、リセット信号生成回路30の回路構成例を示す図である。この図5において、図4に示した信号と同一の信号には同じ符号を付している。
図5において、32は制御論理回路、DFS1はセット(出力を“1”にする)機能付きDフリップフロップ、DFR1〜DFR3はリセット(出力を“0”にする)機能付きDフリップフロップである。また、34、37、40は遅延回路、35、38、41はインバータ、33、36、39、43は論理積演算回路(AND回路)、42は論理和演算回路(OR回路)である。
【0114】
制御論理回路32は、入力される判定出力S1に基づいてデータ信号DT1〜DT4を出力する。DフリップフロップDFS1、DFR1、DFR2、DFR3は、データ信号DT1〜DT4等に応じてデジタルデータS2[3]〜S2[0]をそれぞれ出力する。
【0115】
遅延回路34は、入力される内部クロック信号CLK1を所定時間(例えば、リセット期間RT)遅延させてインバータ35に出力する。AND回路33は、内部クロック信号CLK1とインバータ35より出力される信号との論理積演算を行い、演算結果をOR回路42に出力する。
【0116】
同様に、遅延回路37とインバータ38とAND回路36との組、遅延回路40とインバータ41とAND回路39との組は、入力される内部クロック信号CLK3、制御信号COMPを用いて上述したのと同様の処理を行い、演算結果をOR回路42に出力する。さらに、OR回路42は、AND回路33、36、39による演算結果を論理和演算し、演算結果をAND回路43に出力する。
AND回路43は、OR回路42から供給される演算結果と、リセット信号RST発生のイネーブル信号RSTENとの論理積演算を行い、演算結果をリセット信号RSTとして出力する。
【0117】
図6は、逐次比較制御回路4の動作の一例を示すタイミングチャートである。
サンプリング期間TSPLにおいて、制御信号生成回路31は、制御信号SPL1、SPL2を“H”、制御信号SPL2Bを“L”にする。これにより、ノードN1の電位VN1がVTLになり、容量(サンプリング容量)C1〜C5の他端がトランジスタNS5〜NS9、PS5〜PS9によりアナログ入力端子8に接続される。したがって、容量C1〜C5は入力アナログ電位VinとVTLとの電位差に充電される。
【0118】
サンプリング期間TSPLでは、比較動作の制御信号COMPは“L”となっている。制御信号COMPとインバータ20により反転された信号により、トランジスタPS1〜PS4のゲート電位は“H”、トランジスタNS1〜NS4のゲート電位は“L”になる。
【0119】
サンプリングが終了して各ビットの比較動作を開始する際、制御信号生成回路31は、ノードN1の電位VN1が電荷の再分配で決まるように制御信号SPL1を“L”にし、トランジスタNM1をOFF状態にする。また、トランジスタNS5〜NS9、PS5〜PS9をOFF状態にするように、制御信号SPL2を“L”、SPL2Bを“H”にする。
【0120】
その後、局部DA変換器5により比較電位を生成し、比較電位と入力アナログ電位Vinとの大小関係を判定していく。まず、基準となるリファレンス電位Vrefの1/2の電位から比較判定を行う。つまり、1ビット目(MSB)の比較(期間TC1)では、リセット信号生成回路30は、デジタルデータS2(S2[3]、S2[2]、S2[1]、S2[0])として“1000”を出力する。
【0121】
そこでリセット信号生成回路30は、セット信号SET及びリセット信号DFRST及びDフリップフロップDFS1、DFR1〜DFR3により、デジタルデータS2に予め“1000”を出力しておく。図6において、セット信号SET及びリセット信号DFRSTが、比較動作開始時点まで“H”になっているのはこのことを表している。ここで、本実施形態では、セット信号SET及びリセット信号DFRSTを“H”にすることで、DフリップフロップDFS1の出力を“H”、DフリップフロップDFR1〜DFR3の出力を“L”にするものとする。
【0122】
次に、制御信号生成回路31は、1ビット目の比較を開始するために制御信号COMPを“H”にする。デジタルデータS2は“1000”になっているので、制御信号COMPを“H”にすることによりトランジスタPS1、NS2〜NS4がON状態になる。したがって、局部DA変換器5は、容量分割により出力電位としてVref/2の電位を生成することができる(より正確には式(1)の電位になる。)。
【0123】
1ビット目の比較結果が得られた後、デジタルデータS2を更新する。
更新されるデジタルデータS2は、1ビット目の比較結果より、1ビット目(S2[3])及び2ビット目(S2[2])の少なくとも一方である。制御信号生成回路31は、1ビット目の比較から2ビット目の比較(期間TC2)に移る時点で、内部クロック信号CLK1、CLK2を“H”に変化させる(Dフリップフロップはクロック信号の立ち上がりに同期して値が更新されるものとする)。
【0124】
デジタルデータS2[3]については、1ビット目の比較結果により値が“0”又は“1”に確定する。デジタルデータS2[2]については、まず“1”をたてて、2ビット目の比較を行う。なお、制御信号生成回路31は、デジタルデータが更新されるまでに、セット信号SETとリセット信号DFRSTとを“H”から“L”にしておく。
【0125】
2ビット目の比較の結果に応じて、デジタルデータS2[2]、S2[1]が更新されるので、制御信号生成回路31は、3ビット目の比較(期間TC3)が始まる時点で、内部クロック信号CLK2、CLK3を“L”から“H”に変化させる。
【0126】
以下同様に、4ビット目の比較(期間TC4)の開始時点では、デジタルデータS2[1]、S2[0]が更新されるので、制御信号生成回路31は、4ビット目の比較が始まる時点で、内部クロック信号CLK3、CLK4を“L”から“H”に変化させる。
【0127】
このように回路を構成すると、制御信号COMPの立ち上がりが、1ビット目の比較の開始に相当し、内部クロック信号CLK1の立ち上がりが、2ビット目の比較の開始に相当し、内部クロック信号CLK3の立ち上がりが、3ビット目及び4ビット目の比較の開始に相当することになる。
【0128】
制御信号COMP、内部クロック信号CLK1、CLK3の立ち上がりを、例えば図5に示したような遅延回路とインバータとAND回路とで検出し、OR回路42により論理和演算を行えば、各ビットの比較期間の開始から一定時間だけ“H”になるリセット信号RSTを生成することができる。なお、図5に示したイネーブル信号RSTENは“H”であるとする。このリセット信号RSTによりAD変換動作を高速化することは上述した通りである。
【0129】
イネーブル信号RSTENを“L”にすれば、リセット信号RSTの発生を停止できることは、図5と上述した説明から明らかである。リセット回路を活性化するリセット信号RSTを発生するように回路を構成するだけでなく、リセット信号RSTが必要ない場合には、リセット回路を活性化しないように制御可能な信号RSTENを設けておく。これにより、例えば、使用状態から高速動作が必要ない場合には、リセット回路を活性化しないように制御でき、逐次比較型AD変換器における低電力動作と高速動作との両立が可能になる。
【0130】
以上説明したように、図5に示した回路のように局部DA変換器に入力するデジタルデータS2の変更、あるいは比較開始を決定するタイミングクロックの変化時刻をそれぞれ検出して論理和演算処理を行うことにより、リセット回路を活性化するリセット信号RSTを簡単な回路で生成することができる。
【0131】
図7は、リセット信号生成回路31の他の回路構成例を示す図である。
上記図5に示したリセット信号生成回路31は、各ビットの比較開始の時刻から所定の期間、すべてのビットの比較においてリセット信号RSTを生成するようにしていたが、図7に示すリセット信号生成回路31は、AD変換動作の高速化の効果が大きい部分についてのみリセット回路を活性化するようにリセット信号RSTを生成する。
【0132】
上述したAD変換動作において、1ビット目の比較を開始する際のノードN2(インバータ1の出力端)の電位VN2は、論理しきい値VTLであるので、リセット回路を使用しなくとも、ノードN2の電位VN2は、すでにリセット(初期化)された場合の電位とほぼ同じ電位になっている。つまり、1ビット目の比較開始時にはリセット信号RSTを“H”に変化させないほうが消費電力の増加を抑制し消費電力の観点から望ましい。
【0133】
また、逐次比較AD変換におけるデジタルデータの検索原理から分かるように、あと(下位側のビット)の比較になるほど、ノードN1(インバータ1の入力端)の電位VN1と論理しきい値VTLとの差が小さくなる。
【0134】
上述した例では、
1ビット目の比較時が、−255Vref/1024
2ビット目の比較時が、 Vref/1024
3ビット目の比較時が、−127Vref/1024
4ビット目の比較時が、 −63Vref/1024
5ビット目の比較時が、 −31Vref/1024
6ビット目の比較時が、 −15Vref/1024
7ビット目の比較時が、 −7Vref/1024
8ビット目の比較時が、 −3Vref/1024
9ビット目の比較時が、 −1Vref/1024
10ビット目の比較時が、0(正しくは、−0.5×Vref/1024)
となる。
【0135】
つまり、逐次比較型AD変換器で使われる2分検索では、入力アナログ電位Vinの範囲を、1回目の比較でVref/2、2回目の比較でVref/4、3回目の比較でVref/8と狭めていき、最終的な値を決定するので、あとの比較になればなるほどノードN1の電位VN1の変化量は小さくなる。したがって、上述したコンパレータ遅延が大きくなるという従来の逐次比較型AD変換器での問題は、下位ビット側の比較になればなるほど遅延時間の増加の程度が小さくなっていく。
【0136】
以上のことから、リセット回路によりノードN2の電位VN2を論理しきい値VTL付近の電位にする動作は、上位ビットの比較時だけに限って行っても全体の高速化に大きな効果があることが分かる。
そこで、図7に示したリセット信号生成回路31では、1ビット目の比較時にはリセット信号RSTを“H”にせず、2ビット目、3ビット目の比較開始時だけリセット信号RSTを“H”にしてリセット回路を活性化するようにしている。これは、例えば図7に示したように、内部クロック信号CLK2の立ち上がりだけを検出してリセット信号RSTを生成することで実現できる(図6参照)。
【0137】
このように、AD変換動作の高速化の効果が大きいビットを比較するときに限ってリセット回路を活性化するようなリセット信号生成回路31を構成することで、消費電力増加を抑制できる、さらに回路規模を削減できる等の利点がある。実際に、上記図7に示したリセット信号生成回路31は、上記図5に示したリセット信号生成回路31から2つの遅延回路、2つのインバータ、2つのAND回路、1つのOR回路を削除したものであり、回路規模が削減されている。
【0138】
以上説明したように、局部DA変換器に入力するデジタルデータの変更、あるいは比較開始を決定する内部クロック信号の変化時刻から、遅延時間改善の効果が大きい部分を選択的に検出して、リセット回路を活性化するリセット信号RSTを生成することで、遅延時間改善の効果が大きい比較ビットに限ってリセット回路を活性化でき、回路の増加を抑えるとともに、消費電力の増加も抑制することができる。
【0139】
また、図7では4ビット精度のDA変換器を一例としたので、2ビット目、3ビット目の比較開始時だけにリセット回路を活性化するためのリセット信号生成回路31を一例として示した。本発明はこれに限らず局部DA変換器が任意のビット数であっても良いこと、比較開始時にリセット回路を活性化する比較のビット数は、効果が大きい部分という観点で自由に設計できることは、以上の説明から明らかであろう。
【0140】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態による逐次比較型AD変換器の構成例を示す図である。この図8において、図1に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0141】
図8に示す第2の実施形態による逐次比較型AD変換器と、上記図1に示した第1の実施形態による逐次比較型AD変換器とは、リセット回路9のみが異なるだけで他の構成及び動作は同じであるので重複する説明は省略し、リセット回路9のみについて説明する。
リセット回路9は、AD変換動作のリセット期間RTにおいて、1段目のインバータ1の出力端であるノードN2と、2段目のインバータ2の出力端であるノードN4の電位を近づけるように作用する。
【0142】
リセット回路9は、1つのNMOSトランジスタNM8と1つのPMOSトランジスタPM5とからなる1つのトランスファーゲートで構成される。トランスファーゲートにおける信号伝播経路の一端がノードN2に対して接続され、他端がノードN4に対して接続されている。トランジスタNM8のゲートにはリセット信号RSTが供給され、トランジスタPM5のゲートにはインバータ7を介してリセット信号RSTが供給される。
【0143】
例えば、図2に示した動作例にて1ビット目の比較が終わり、2ビット目の比較が始まる場合を考える。このとき、ノードN2の電位VN2は、インバータ1の正の電源電圧Vdd付近の電位になっている。入力アナログ電位Vinのサンプリング時には、ノードN3、N4の電位VN3、VN4も論理しきい値VTLである。したがって、1ビット目の比較の終了時点では、ノードN2の電位VN2がVddになることにより、ノードN3の電位VN3は、容量C6によりVdd程度の電位になる。1ビット目の比較の終了時点では、ノードN4の電位VN4はGND程度の電位になる。
【0144】
1ビット目の比較が終わり、2ビット目の比較が始まると同時にリセット信号RSTを“H”にすると、トランジスタNM8、PM5は、ON状態になり、ノードN2の電位VN2とノードN4の電位VN4とを近づけるように働く。
【0145】
説明を簡単にするためにノードN2の電位VN2とノードN3の電位VN3とが等しいとする(実際には多少異なるが、容量C6の容量がインバータ2の入力容量より十分大きければ、このように近似しても差し支えない。)と、インバータ2の入力がノードN2に対して接続されているものと仮想的に考えることができる。つまり、リセット信号RSTが“H”のときには、インバータ2は、上記図1に示したリセット回路6と同様に、入力と出力とが同じノードに接続されたインバータになることを示している。
【0146】
したがって、トランジスタNM8、PM5がON状態になることにより、入力と出力が仮想的に短絡されたインバータ2は、図1に示したリセット回路6と同様に、インバータ1の増幅率を小さく、インバータ1の出力抵抗を小さくするように動作する。これにより、リセット回路9は、リセット信号が“H”の期間には、ノードN2の電位変化の時定数が小さく、電位変化を高速化するように働く。
【0147】
ノードN2の電位VN2が論理しきい値VTL付近の電位に戻った後、リセット信号RSTを“L”にすると、インバータ1〜3は従来の逐次比較型AD変換器のコンパレータと同様に動作するので、同じ結果を得ることができる。
【0148】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、3段で構成されるシングルエンド入力のインバータ1、2(コンパレータ)の1段目出力であるノードN2の電位と2段目出力であるノードN4の電位とを等しくするように動作するリセット回路9を設け、所定期間に基づく各ビット比較の初期の所定期間、リセット回路9を活性化する。これにより、インバータ1の出力抵抗を小さく、すなわちインバータ1の増幅率を小さくするよう制御し、所定時間の期間に基づく各ビット比較の期間の残りの期間、リセット回路9を非活性化して、インバータ1の増幅率を大きくして、比較結果が得られるように制御することでも、第1の実施形態と同様に、AD変換器動作の高速化の効果が得られる。
【0149】
上記図1に示した回路と同様、各ビットの比較期間は、所定時間の期間に基づいて設計するので、アナログ入力電位によらず、デジタル変換に要する時間を一定とすることができる。また、図8から明らかなように、従来回路にくらべて、わずかな回路の追加で高速化の効果が得られる。
【0150】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図9は、本発明の第3の実施形態による逐次比較型AD変換器の構成例を示す図である。この図9において、図1、図8に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0151】
図9に示す第3の実施形態による逐次比較型AD変換器は、上記図8に示した第2の実施形態による逐次比較型AD変換器より容量C6及びトランジスタNM2を削除し、異なるリセット回路10を備えるようにしたものであり、他の構成及び動作は同じであるので重複する説明は省略する。
【0152】
リセット回路10は、AD変換動作のリセット期間RTにおいて、1段目のインバータ1の出力端であるノードN2を、インバータ1の論理しきい値VTLに近づけるように作用する。
【0153】
リセット回路10は、1つのNMOSトランジスタNM8と1つのPMOSトランジスタPM5とからなる1つのトランスファーゲートに加え、2つのNMOSトランジスタNM9、NM10と2つのPMOSトランジスタPM6、PM7とで構成される。トランジスタPM6のソースは電源電圧Vddに対して接続され、トランジスタNM10のソースはグランドに対して接続される。
【0154】
トランジスタPM6のドレインとトランジスタPM7のソース、トランジスタPM7のドレインとトランジスタNM9のドレイン、トランジスタNM9のソースとトランジスタNM10のドレインが接続される。
トランスファーゲートにおける信号伝播経路の一端がノードN2に対して接続され、他端がトランジスタPM7のドレインとトランジスタNM9のドレインとの相互接続点に接続される。
【0155】
トランジスタPM7、NM9のゲートは、トランジスタPM7のドレインとトランジスタNM9のドレインとの相互接続点に接続される。トランジスタNM8、NM10のゲートにはリセット信号RSTが供給され、トランジスタPM5、PM6のゲートにはインバータ7を介してリセット信号RSTが供給される。
【0156】
例えば、図2に示した動作例にて1ビット目の比較が終わり、2ビット目の比較が始まる場合を考える。このとき、ノードN2の電位VN2は、インバータ1の正の電源電圧Vdd付近の電位になっている。入力アナログ電位Vinのサンプリング時には、ノードN2、N5の電位VN2、VN3も論理しきい値VTLである。インバータ1、2の論理しきい値VTLが等しいと、インバータ2の出力端の電位も論理しきい値VTLになる。1ビット目の比較の終了時点では、ノードN2の電位VN2が電源電圧Vddになるので、インバータ2の出力端の電位はGND程度の電位になる。
【0157】
1ビット目の比較が終わり、2ビット目の比較が始まると同時にリセット信号RSTを“H”にすると、トランジスタNM8、NM10、PM5、PM6がON状態になり、トランジスタNM9、NM10、PM6、PM7は、入力と出力とが同じ電位であるインバータと等価になる。
【0158】
したがって、トランジスタNM9、NM10、PM6、PM7は、インバータの論理しきい値程度の電位を出力しようとする。トランジスタNM9、NM10、PM6、PM7の論理しきい値がインバータ1の論理しきい値VTLにほぼ等しくなるように設計しておくと、トランジスタNM8、PM5からノードN2に供給される電位もほぼ論理しきい値VTLになる。
【0159】
トランジスタNM8、PM5がON状態になることにより、リセット回路10は、図8に示したリセット回路9と同様に、インバータ1の増幅率を小さく、インバータ1の出力抵抗を小さくするように動作する。これにより、リセット回路10は、リセット信号RSTが“H”の期間には、ノードN2の電位変化の時定数が小さくなり、電位変化を高速化するように働く。
【0160】
ノードN2の電位VN2が論理しきい値VTL付近の電位に戻った後、リセット信号RSTを“L”にすると、インバータ1〜3は従来の逐次比較型AD変換器のコンパレータと同様に動作するので、同じ結果を得ることができる。
【0161】
以上説明したように、複数段で構成されるシングルエンド入力のインバータ回路1、2の1段目出力であるノードN2の電位を論理しきい値VTLに等しくするように動作するリセット回路10を設け、所定期間に基づく各ビット比較の初期の所定の期間、リセット回路10を活性化して、インバータ1の出力抵抗を小さく、すなわち増幅率を小さくするように制御し、所定期間に基づく各ビット比較の期間の残りの期間、リセット回路10を非活性化して増幅率を大きくし、比較結果が得られるように制御することでも、同様に、高速化の効果が得られる。
【0162】
上記図8に示した回路と同様、各ビットの比較期間は、所定期間に基づいて設計するので、アナログ入力電位によらず、デジタル変換に要する時間を一定とすることができる。図9から明らかなように、従来回路にくらべて、わずかな回路の追加で高速化の効果が得られる。
【0163】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
図10は、本発明の第4の実施形態による逐次比較型AD変換器の構成例を示す図である。この図10において、図1、図8、図9に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0164】
図10に示す第4の実施形態による逐次比較型AD変換器は、上記図9に示した第3の実施形態によるリセット回路10のトランジスタNM8、PM5、インバータを上記第3の実施形態とは異なるように接続したものであり、他の構成及び動作は同じであるので重複する説明は省略する。
【0165】
リセット回路11は、AD変換動作のリセット期間RTにおいて、1段目のインバータ1の出力端であるノードN2を、インバータ12の論理しきい値VTL’に近づけるように作用する。インバータ12の論理しきい値VTL’とインバータ1の論理しきい値VTLを近い電位としておけば、上述した他の実施形態と同様の効果が得られる。
【0166】
リセット回路11は、1つのNMOSトランジスタNM8と1つのPMOSトランジスタPM5とからなる1つのトランスファーゲート、及びインバータ12により構成される。トランスファーゲートにおける信号伝播経路の一端がノードN2に対して接続され、他端がインバータ12の出力端に接続され、インバータ12の入力端がノードN2に対して接続される。トランジスタNM8のゲートにはリセット信号RSTが供給され、トランジスタPM5のゲートにはインバータ7を介してリセット信号RSTが供給される。
【0167】
リセット回路11は、リセット信号RSTを“H”にすることでトランジスタPM5、NM8がON状態になり、インバータ12は入力と出力とが同じ電位であるインバータと等価になる。したがって、インバータ12は、論理しきい値VTL’程度の電位を出力しようとする。インバータ12の論理しきい値VTL’が、1段目のインバータ1の論理しきい値VTLにほぼ等しくなるように設計しておくと、ノードN2の電位VN2もほぼ論理しきい値VTLになる。
【0168】
トランジスタNM8、PM5がON状態になることにより、リセット回路11は、図9に示したリセット回路10と同様に、インバータ1の増幅率を小さく、インバータ1の出力抵抗を小さくするように動作する。これにより、リセット回路11は、リセット信号RSTが“H”の期間には、ノードN2の電位変化の時定数が小さくなり、電位変化を高速化するよう働く。
【0169】
ノードN2の電位VN2が論理しきい値VTL付近の電位に戻った後、リセット信号RSTを“L”にすると、インバータ1〜3は従来の逐次比較型AD変換器のコンパレータと同様に動作するので、同じ結果を得ることができる。
以上説明したように、図10に示した回路においても、上記図9に示した回路と同様、従来回路にくらべて、わずかな回路の追加で高速化の効果が得られる。
【0170】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。
図11は、本発明の第5の実施形態による逐次比較型AD変換器の構成例を示す図である。この図11において、図1、図9に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0171】
図11に示す第5の実施形態による逐次比較型AD変換器は、上記図9に示した第3の実施形態による逐次比較型AD変換器よりトランジスタNM8、PM5を削除し、トランジスタNM12、PM8を追加したものであり、他の構成及び動作は同じであるので重複する説明は省略する。
【0172】
リセット回路13は、AD変換動作のリセット期間RTにおいて、1段目のインバータ1の出力端であるノードN2を、トランジスタNM9、NM10、PM6、PM7で構成されたインバータの論理しきい値VTLに近づけるように作用する。
【0173】
また、トランジスタPM8のソースは電源電圧Vddに対して接続され、トランジスタNM12のソースはグランドに対して接続される。トランジスタPM8のドレインとトランジスタPM9のソース、トランジスタPM9のドレインとトランジスタNM11のドレイン、トランジスタNM11のソースとトランジスタNM12のドレインが接続される。
【0174】
トランジスタPM9のドレインとトランジスタNM11のドレインとの相互接続点が、ノードN2に対して接続される。トランジスタPM9、NM11のゲートは、ノードN1に対して接続される。トランジスタPM8、NM12のゲートには、バイアス電位BIASP、BIASNがそれぞれ供給される。トランジスタNM12、PM8は、電流を制限するためのトランジスタとして働く。
【0175】
リセット信号RSTを“H”にすることにより、トランジスタPM6、NM10がON状態になり、トランジスタNM9、NM10、PM6、PM7は入力と出力とが同じ電位であるインバータと等価になる。したがって、トランジスタNM9、NM10、PM6、PM7により構成されるインバータは、論理しきい値程度の電位を出力しようとする。
【0176】
トランジスタNM9、NM10、PM6、PM7構成されるインバータの論理しきい値が、1段目のインバータを構成するトランジスタNM11、NM12、PM8、PM9の論理しきい値VTLにほぼ等しくなるように設計しておくと、ノードN2の電位VN2もほぼ論理しきい値VTLになる。
【0177】
トランジスタPM6、NM10がON状態になることにより、リセット回路13は、図9に示したリセット回路10と同様に、トランジスタNM11、NM12、PM8、PM9により構成されたインバータの増幅率を小さく、当該インバータの出力抵抗を小さくするように動作する。これにより、リセット回路13は、リセット信号RSTが“H”の期間には、ノードN2の電位変化の時定数が小さくなり、電位変化を高速化するよう働く。
【0178】
ノードN2の電位VN2が論理しきい値VTL付近の電位に戻った後、リセット信号RSTを“L”にすると、トランジスタNM11、NM12、PM8、PM9により構成されたインバータ、インバータ2、3は従来の逐次比較型AD変換器のコンパレータと同様に動作するので、同じ結果を得ることができる。
【0179】
上述した第5の実施形態では、トランジスタNM8、PM5を用いずに本発明を適用した逐次比較型AD変換器の構成例を示した。トランジスタNM8、PM5を用いなくても逐次比較型AD変換器は上記図11に示したように構成することが可能である。さらに、リセット期間RTにて流れる電流が大きくなる場合には、ゲートに一定の電圧を加えた電流制限用のトランジスタNM12、PM8を追加することで電流を制限することができる。
以上説明したように、図11に示した回路においても、上記図9に示した回路と同様、従来回路にくらべて、わずかな回路の追加で高速化の効果が得られる。
【0180】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。
図12は、本発明の第6の実施形態による逐次比較型AD変換器の構成例を示す図である。この図12において、図1、図8に示した構成要素等と同一の機能を有する構成要素等には同一の符号を付している。また、図13(A)〜(D)は、第6の実施形態による逐次比較型AD変換器の動作波形の一例を示す図である。
【0181】
第6の実施形態による逐次比較型AD変換器は、上述した第1〜第5の実施形態においてインバータ1〜3を用いて構成される3段のコンパレータを、正帰還型の回路を用いない差動回路1’、2’、3’を用いて構成したものである。なお、図12においては、3段のコンパレータ及びリセット回路9以外の回路については図示していないが、逐次比較制御回路4、局部DA変換器5は上述した実施形態と同様である。
【0182】
図12に示した逐次比較型AD変換器は、NMOSトランジスタNM1、NM2、NM3’、NM13〜NM15、NMOSトランジスタNM8とPMOSトランジスタPM5とで構成されるリセット回路9、差動回路1’、2’、3’、容量C6〜C9及びインバータ7を有する。
【0183】
入力S4には、比較のためのリファレンス電位Vr(図13においては「論理しきい値」と記す。)が供給されるものとする。また、コンパレータ入力S3には、上記図1等に示した局部DA変換器と同様の局部DA変換器により、
局部DA変換器の出力電位−入力アナログ電位Vin+Vr…(2)
の電位が供給されるものとする。
【0184】
図12に示すような正帰還型の回路を用いない差動回路1’、2’、3’をコンパレータに用いる場合でも、以下に説明するように本発明の考え方を適用することができる。
【0185】
図12においては、ノードN1とN2、N3とN4、N5と判定出力S1が、それぞれ逆相関係の信号になり、かつノードN2、N3、N4、N5、判定出力S1に対して、それぞれノードN9、N10、N11、N12、差動回路3’の負(−)側出力が、相補関係の信号になる。そのため、入力S4にリファレンス電位Vr、コンパレータ入力S3に上記式(2)で示される電位を供給すると、コンパレータ内のノードN2〜N5、N9〜N12が差動信号になる点を除き、上述した第1〜第5の実施形態とコンパレータとしての機能は同じになる。
【0186】
図12に示した逐次比較型AD変換器においてもサンプリング時(図13の期間TSPL)には、制御信号SPLによりコンパレータを構成する差動回路1’、2’、3’の入力電位と出力電位とが等しくなるように制御される(但し、判定出力S1については除く。)。なお、入力S5には、入力S4と同じ電位Vrを供給するものとするが、入力S4の電位と入力S5の電位が多少異なっていても良い。
【0187】
したがって、サンプリング時にはノードN1〜N5、ノードN8〜N12の電位が等しくなり、結合容量C6〜C9に蓄えられる電荷は、理想的には0である(図13の比較期間TCOMにて1ビット目の比較が始まる前の状態)。
この状態で、コンパレータ入力S3に、上記式(2)で示される電位を供給して比較動作を開始する。
【0188】
上記式(2)は、上記式(1)における論理しきい値VTLをリファレンス電位Vrに置き換えただけのものであるので、ノードN1(コンパレータ入力S3)の電位VN1がリファレンス電位Vrより高いときには、ノードN2の電位VN2が低くなり、判定出力S1は“L”になる。ノードN1の電位VN1がリファレンス電位Vrより低いときには、ノードN2の電位VN2が高くなり、判定出力S1は“H”になる。これは、ノードN1〜N5及び判定出力S1の電位の挙動については、上述した第1〜第5の実施形態と同様であることを示している。
【0189】
また、AD変換動作でのコンパレータ入力S3の電位変化も同様であるので、リセット回路9を備えていないときに生ずるコンパレータ遅延の問題についても従来の逐次比較型AD変換器と同じである。
そこで、第6の実施形態による逐次比較型AD変換器は、図12に示すようにノードN2の電位VN2に対して逆相の電位を出力するノードN9とノードN2との間にリセット回路9を設けることで、差動回路1’の増幅率を一時的に小さくできるようにする。
【0190】
上述した第1〜第5の実施形態と同様にAD変換動作を高速化できることを、上記図2に示した動作例と同じ動作での1ビット目の比較が終わり、2ビット目の比較が始まる場合を例に説明する。
1ビット目の比較の終了時点では、ノードN2の電位VN2及びノードN9の電位VN9は、それぞれリファレンス電位Vrに対して十分正(+)の電位、十分負の電位になる(図13の期間TC1終了時点)。
【0191】
1ビット目の比較が終わり、2ビット目の比較(図13の期間TC2)が始まると同時にリセット信号RSTを“H”にすると、リセット回路9は、トランジスタNM8、PM5がON状態になり、ノードN2の電位VN2とノードN9の電位VN9とを近づけるように動作する。すなわち、リセット回路9を活性化させることで、ノードN1から見たノードN2、N9の電圧増幅率を小さく、ノードN2、N9に対する出力抵抗を小さくするように動作する。
【0192】
したがって、リセット回路9は、ノードN2、N9における電位変化の時定数を小さくし、コンパレータのノードN2の電位変化を高速化するように働く。なお、図13においてはリセット信号RSTが“H”のとき、ノードN2、N9の電位VN2、VN9が等しくなるものとして図示した。
【0193】
ノードN2の電位VN2がリファレンス電位Vr付近の電位に戻った後、リセット信号RSTを“L”にすると、差動回路1’の増幅率が大きくなり、差動回路1’、2’、3’は従来の逐次比較型AD変換器のコンパレータと同様に動作するので、同じ結果を得ることができる。
【0194】
以上説明したように、1段あるいは複数段で構成される正帰還型の回路を用いない差動回路1’の差動出力間にリセット回路9を設け、リセット期間RTにリセット回路9を活性化して、一時的に差動回路1’の出力抵抗を小さく、すなわち差動回路1’の増幅率を小さくするように制御し、その後リセット回路9を非活性化し、増幅率を大きくして、比較結果を得るよう制御することで、コンパレータ回路が、差動回路1’で構成される場合であっても、本発明の考え方が適用できるようになり、あるビットの比較時にノードN1の電位VN1がリファレンス電位Vrefから大きく離れた電位から、次のビットの比較時にリファレンス電位Vref付近の逆の結果を出力すべき電位に変化するときの遅延時間を短縮することができる。
【0195】
上記図1、図8に示した回路の説明から明らかなので、詳細な説明は省略したが、各ビットの比較期間は、所定時間の期間に基づいて設計するので、アナログ入力電位によらず、デジタル変換に要する時間を一定とすることができる。また、従来回路にくらべて、わずかな回路の追加で高速化の効果が得られる。
なお、図12に示した回路ではノードN2とノードN9の間にリセット回路9を設ける例を示したが、ノードN2とN4、N9とN11の間にそれぞれリセット回路を置いても、同様の効果が得られる。
【0196】
図14(A)〜(C)は、第6の実施形態による逐次比較型AD変換器の具体的な回路構成例を示す図である。この図14において、図12に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0197】
図14(A)は、上記図12に示した差動回路1’に対応する部分の具体的な回路構成例を示している。図14(A)において、14はコモンモードフィードバック回路であり、C6、C8、C10は容量である。また、NM16〜NM21はNMOSトランジスタであり、PM10〜PM13はPMOSトランジスタである。S6、S7は、差動回路2’に対する出力である。
【0198】
トランジスタNM16、NM17は、上記図12に示したトランジスタNM1、NM13と同様に動作する。トランジスタNM18〜NM20、PM10、PM11が差動回路を構成し、上記図12に示した差動回路1’に対応する。ここで、図14(A)は、差動回路1’に対応する部分を示しているので、リセット回路9は図示していない。
【0199】
図14(A)に示す回路において、コモンモードフィードバック回路14は、ノードN2、N9のコモン電位が入力S9の電位(コモン電位のリファレンス電位)に等しくなるようにバイアス電位を生成する。例えば、ノードN2、N9の電位VN2、VN9がともに入力S9の電位に対して高くなると、ノードN13の電位が上がり、トランジスタPM6、PM7の抵抗値が大きくなる。これにより、ノードN2、N9の電位VN2、VN9が下がる。
【0200】
逆に、ノードN2、N9の電位VN2、VN9が入力S9の電位に対してともに低くなると、ノードN13の電位が下がり、トランジスタPM6、PM7の抵抗値が小さくなる。これにより、ノードN2、N9の電位VN2、VN9が上がる。
つまり、コモンモードフィードバック回路14のフィードバック作用により、ノードN2、N9のコモン電位は、入力S9の電位に等しくなる。コモン電位が入力S9の電位に等しく制御された状態で、サンプリング時にトランジスタNM16、NM17によりコンパレータ入力S3、入力S4の電位を決めることができる。
【0201】
図14(B)は、上記図12に示した差動回路2’に対応する部分の具体的な回路構成例を示している。図14(B)において、NM25〜NM32はNMOSトランジスタであり、PM14〜PM17はPMOSトランジスタである。C7、C9は容量であり、S10、S11は、差動回路3’に対する出力である。トランジスタNM25、NM26、NM29〜NM32、PM14〜PM17が差動回路を構成し、上記図12に示した差動回路2’に対応する。
【0202】
上記図12においては、トランジスタNM2、NM14を制御することにより、サンプリング時にノードN3とN4、N10とN11を同電位にした。図14(B)に示す回路では、トランジスタNM27により、サンプリング時にノードN3とN4を同電位にし、ノードN10には、トランジスタNM28により入力S5(リファレンス電位)を供給するように構成している。
【0203】
上記図12に示した回路では、差動回路2’の回路構成によっては、サンプリング時のノードN3、N4、N10、N11のコモン電位が決まりにくい場合がある。そのような場合には、図14(B)に示す回路のように、差動回路の一方の入力に所定の電位を供給することが可能である。
【0204】
図14(C)は、上記図12に示した差動回路3’に対応する部分の具体的な回路構成例を示している。図14(C)において、NM33〜NM38はNMOSトランジスタであり、PM18〜PM21はPMOSトランジスタである。トランジスタNM33〜NM37、PM18〜PM21が差動回路を構成し、上記図12に示した差動回路3’に対応する。
【0205】
図14に示した回路のノードN2とN9に、図12に示したようなリセット回路9を接続することで、本発明を適用したコンパレータ回路になる。あるいは、図14に示した回路のノードN2とN4、N9とN11の電位を等しくするようリセット回路を設けてもよい。図14においては、図12に示した差動回路の例を示すために、各種の差動回路1’、2’、3’を用いた例を示したが、図14で示した差動回路例、あるいはその他の差動回路の例であっても、各種の組み合わせが、具体的な回路例では考えられ、それらの各種変形回路においても、本発明のリセット回路の考え方が適用でき、高速化の効果が得られることは言うまでもない。
【0206】
なお、上述した第1〜第6の実施形態においては、リセット期間は比較期間の開始直後に設けるようにしているが、本発明はこれに限らず、比較期間の終了前にリセット期間を設けるようにしても良いし、あるビットと次のビットの2つの比較期間にわたって(またがって)リセット期間を設けても良い。つまり、あるビットの比較結果が得られてから次のビットでの実際の比較動作を開始する前の期間に、リセット期間を設ければ良い。
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
本発明の諸態様を付記として以下に示す。
【0207】
(付記1)入力アナログ電位と比較電位との比較判定を繰り返し行って、入力アナログ電位をデジタルデータに変換するAD変換器であって、
上記比較電位を出力する局部DA変換器と、
上記デジタルデータの1ビットの値を決定するために割り当てられた比較期間にて、上記入力アナログ電位と上記局部DA変換器より出力される上記比較電位とを比較し比較結果を増幅する増幅回路を有する比較器と、
上記比較器からの比較結果に基づいて、上記デジタルデータの値を1ビット毎に逐次決定し、決定した値に応じた次のビットの比較電位を上記局部DA変換器に出力させる制御回路と、
一又は複数ビットの上記比較期間に上記増幅回路を初期化するリセット回路とを備えることを特徴とするAD変換器。
(付記2)上記比較器は、縦属接続されたn段(nは自然数)の増幅回路を有し、上記リセット回路は、少なくとも1段目の上記増幅回路の出力を初期化することを特徴とする付記1に記載のAD変換器。
(付記3)上記制御回路は、上記増幅回路の初期化を指示するリセット信号を生成し、
上記リセット回路は、上記リセット信号に応じて上記増幅回路を初期化することを特徴とする付記1又は2に記載のAD変換器。
(付記4)上記増幅回路の初期化は、上記リセット回路により上記増幅回路の出力抵抗が小さくなるように制御されることを特徴とする付記1〜3の何れか1項に記載のAD変換器。
(付記5)上記増幅回路の初期化は、上記増幅回路の出力端の電位を上記増幅回路の論理しきい値にすることを特徴とする付記1〜3の何れか1項に記載のAD変換器。
(付記6)上記増幅回路は、インバータ回路であることを特徴とする付記1〜5の何れか1項に記載のAD変換器。
(付記7)上記リセット回路は、すべてのビットの上記比較期間で上記増幅回路を初期化することを特徴とする付記1〜6の何れか1項に記載のAD変換器。
(付記8)上記リセット回路は、選択されたビットの上記比較期間だけ上記増幅回路を初期化することを特徴とする付記1〜6の何れか1項に記載のAD変換器。
(付記9)上記リセット回路は、上位側から2ビット目の上記比較期間だけ上記増幅回路を初期化することを特徴とする付記1〜6の何れか1項に記載のAD変換器。
(付記10)上記比較期間は、上記増幅回路を初期化する初期化期間及び上記入力アナログ電位と比較電位との比較を行う比較増幅期間に分けられ、上記初期化期間は、上記比較期間とともに開始されることを特徴とする付記1〜9の何れか1項に記載のAD変換器。
(付記11)上記比較期間は、上記増幅回路を初期化する初期化期間及び上記入力アナログ電位と比較電位との比較を行う比較増幅期間に分けられ、上記初期化期間は、上記比較期間とともに終了することを特徴とする付記1〜9の何れか1項に記載のAD変換器。
(付記12)上記比較期間は、上記増幅回路を初期化する初期化期間及び上記入力アナログ電位と比較電位との比較を行う比較増幅期間に分けられ、上記初期化期間は、隣接する2つの上記比較期間にわたって設けられていることを特徴とする付記1〜9の何れか1項に記載のAD変換器。
(付記13)上記制御回路は、比較動作の開始を決定する制御信号及び内部クロック信号の変化をそれぞれ検出して論理和演算処理を行い、演算結果を上記リセット信号として出力することを特徴とする付記1〜12の何れか1項に記載のAD変換器。
(付記14)上記制御回路は、比較動作の開始を決定する制御信号及び内部クロック信号の変化を選択的に検出して論理和演算処理を行い、演算結果を上記リセット信号として出力することを特徴とする付記1〜12の何れか1項に記載のAD変換器。
(付記15)上記制御回路は、上記増幅回路の初期化を許可する初期化許可信号に応じて、上記リセット信号を生成することを特徴とする付記1〜14の何れか1項に記載のAD変換器。
(付記16)上記リセット回路は、上記リセット信号に応じて、入力端及び出力端が上記増幅回路の出力端に共通接続されるインバータであることを特徴とする付記1〜15の何れか1項に記載のAD変換器。
(付記17)上記リセット回路は、インバータ、及びNチャネルトランジスタとPチャネルトランジスタとで構成されるトランスファーゲートを有し、上記トランスファーゲートの一端が上記増幅回路の出力端に接続され、他端が上記インバータの入力端及び出力端に接続されていることを特徴とする付記1〜15の何れか1項に記載のAD変換器。
(付記18)上記リセット回路は、NチャネルトランジスタとPチャネルトランジスタとで構成されるトランスファーゲートを有し、上記トランスファーゲートの一端が1段目の増幅回路の出力端に接続され、他端が2段目の増幅回路の出力端に接続されていることを特徴とする付記2に記載のAD変換器。
(付記19)上記増幅回路は、正帰還型とは異なる差動回路であることを特徴とする付記1〜3の何れか1項に記載のAD変換器。
(付記20)上記リセット回路は、NチャネルトランジスタとPチャネルトランジスタとで構成されるトランスファーゲートを有し、当該トランスファーゲートは上記差動回路の2つの出力端を短絡可能なように接続されていることを特徴とする付記19に記載のAD変換器。
【0208】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、入力アナログ電位と比較電位との比較判定を繰り返し行い、1ビット毎にデジタルデータの値を逐次決定していき入力アナログ電位をデジタルデータに変換するAD変換にて、入力アナログ電位と局部DA変換器にて生成される比較電位とを、縦属接続されたn段の増幅回路を有する比較器で比較する際、一又は複数ビットの比較期間ではリセット回路により少なくとも1段目の増幅回路の出力を初期化して、入力アナログ電位と比較電位とを比較する。
【0209】
これにより、増幅回路の入力端の電位が論理しきい値から大きく離れた電位から、次のビットの比較時に論理しきい値付近の逆の比較結果を出力すべき電位に変化したとしても、リセット回路により増幅回路の出力端の電位を電源電圧付近から論理しきい値付近の電位に充放電することができる。したがって、増幅回路の出力端の電位変化に要する時間を短縮することができ、逐次比較型AD変換器でのAD変換動作を高速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態による逐次比較型AD変換器の一構成例を示す図である。
【図2】第1の実施形態による逐次比較型AD変換器の動作波形の一例を示す図である。
【図3】局部DA変換器の回路構成例を示す図である。
【図4】逐次比較制御回路の構成例を示す図である。
【図5】リセット信号生成回路の回路構成例を示す図である。
【図6】逐次比較制御回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図7】リセット信号生成回路の他の回路構成例を示す図である。
【図8】第2の実施形態による逐次比較型AD変換器の構成例を示す図である。
【図9】第3の実施形態による逐次比較型AD変換器の構成例を示す図である。
【図10】第4の実施形態による逐次比較型AD変換器の構成例を示す図である。
【図11】第5の実施形態による逐次比較型AD変換器の構成例を示す図である。
【図12】第6の実施形態による逐次比較型AD変換器の構成例を示す図である。
【図13】第6の実施形態による逐次比較型AD変換器の動作波形の一例を示す図である。
【図14】第6の実施形態による逐次比較型AD変換器の具体的な回路構成例を示す図である。
【図15】逐次比較型AD変換器の構成を概念的に示したブロック図である。
【図16】逐次比較型AD変換器によるAD変換の原理を説明するための図である。
【図17】従来の逐次比較型AD変換器の具体的な構成例を示す図である。
【図18】従来の逐次比較型AD変換器の動作波形の一例を示す図である。
【符号の説明】
1、2、3 反転増幅器(インバータ)
4 逐次比較制御回路
5 局部DA変換器
6 リセット回路
8 アナログ入力端子
RST リセット信号
S1 判定出力
S2 デジタルデータ

Claims (9)

  1. 入力アナログ電位と比較電位との比較判定を繰り返し行って、入力アナログ電位をデジタルデータに変換するAD変換器であって、
    上記比較電位を出力する局部DA変換器と、
    上記デジタルデータの1ビットの値を決定するために割り当てられた比較期間にて、上記入力アナログ電位と上記局部DA変換器より出力される上記比較電位とを比較し比較結果を増幅する増幅回路を有する比較器と、
    上記比較器からの比較結果に基づいて、上記デジタルデータの値を1ビット毎に逐次決定し、決定した値に応じた次のビットの比較電位を上記局部DA変換器に出力させる制御回路と、
    一又は複数ビットの上記比較期間に上記増幅回路を初期化するリセット回路とを備え
    上記比較器は、縦属接続されたn段(nは自然数)の増幅回路を有し、上記リセット回路は、少なくとも1段目の上記増幅回路の出力を初期化することを特徴とするAD変換器。
  2. 上記制御回路は、上記増幅回路の初期化を指示するリセット信号を生成し、
    上記リセット回路は、上記リセット信号に応じて上記増幅回路を初期化することを特徴とする請求項に記載のAD変換器。
  3. 上記増幅回路の初期化は、上記リセット回路により上記増幅回路の出力抵抗が小さくなるように制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載のAD変換器。
  4. 上記増幅回路の初期化は、上記増幅回路の出力端の電位を上記増幅回路の論理しきい値にすることを特徴とする請求項1又は2に記載のAD変換器。
  5. 上記リセット回路は、すべてのビットの上記比較期間で上記増幅回路を初期化することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のAD変換器。
  6. 上記リセット回路は、選択されたビットの上記比較期間だけ上記増幅回路を初期化することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のAD変換器。
  7. 上記リセット回路は、上記リセット信号に応じて、入力端及び出力端が上記増幅回路の出力端に共通接続されるインバータであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のAD変換器。
  8. 上記リセット回路は、NチャネルトランジスタとPチャネルトランジスタとで構成されるトランスファーゲートを有し、上記トランスファーゲートの一端が1段目の増幅回路の出力端に接続され、他端が2段目の増幅回路の出力端に接続されていることを特徴とする請求項に記載のAD変換器。
  9. 上記増幅回路は、正帰還型とは異なる差動回路であることを特徴とする請求項1又は2に記載のAD変換器。
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