以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
(第1構成例)
図1は、AD変換器1Aの構成を示す図である。この図に示される第1構成例のAD変換器1Aは、DA変換部10A、比較部20および制御部30Aを備える。AD変換器1Aは、入力アナログデータAinに応じたデジタルデータを制御部30Aから出力する。
DA変換部10Aは、N個の容量素子C0~CN-1、N個のスイッチSW0~SWN-1およびスイッチSWRSTを含む。N個のスイッチSW0~SWN-1は、制御部30Aから出力される制御信号に基づいて設定される。各容量素子Cnの第1端は、対応するスイッチSWnと接続されている。各容量素子Cnの第1端は、スイッチSWnの設定により、高電位の第1基準電位VREFH、低電位の第2基準電位VREFLおよびオープンの何れかとされる。各容量素子Cnの第2端は、共通に接続されて出力端を構成している。スイッチSWRSTは、この出力端と第2基準電位供給線との間に設けられている。DA変換部10Aは、この出力端から、N個のスイッチSW0~SWN-1それぞれの設定に応じたデータCTOPを比較部20へ出力する。
なお、Nは2以上の整数であり、nは0以上(N-1)以下の整数である。また、N個の容量素子C0~CN-1のうち何れかの容量素子の第1端は一定電位とされる場合があり、その場合には、その容量素子に対応するスイッチは不要である。
比較部20は、2つの入力端それぞれに入力されるデータを大小比較して、その比較結果を表す比較信号を制御部30Aへ出力する。第1構成例では、比較部20は、DA変換部10Aから出力されたデータCTOPを一方の入力端に入力し、入力アナログデータAinを他方の入力端に入力する。
制御部30Aは、比較部20から出力された比較信号に基づいて、逐次比較のステップ毎に、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPと入力アナログデータAinとの差が小さくなるように制御信号を生成して、その制御信号をDA変換部10Aへ出力する。以下に、AD変換器1Aの幾つかの動作例を示す。これらの動作例のうち、逐次比較の各ステップにおいて全ての容量素子が第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLに接続される動作例が比較例であり、逐次比較の何れかのステップにおいて何れかの容量素子がオープン状態とされる動作例が実施例である。
図2は、AD変換器1Aの第1動作例を説明する表である。第1動作例では、N=4とし、容量素子C0の容量値をCとし、容量素子C1の容量値をCとし、容量素子C2の容量値を2Cとし、容量素子C3の容量値を4Cとする。各容量素子の容量値は、単位容量値Cの倍数で示されている。この表には、逐次比較の各ステップにおける制御信号Ccodeおよび各容量素子Cnの第1端の電位が示されている。「H」は、容量素子の第1端が高電位の第1基準電位VREFHに接続されることを示し、「L」は、容量素子の第1端が低電位の第2基準電位VREFLに接続されることを示す。Ccodeは、DA変換部10Aの各スイッチの設定を制御するために制御部30AからDA変換部10Aに与えられる3ビットの制御信号である。スイッチSW3の設定は、Ccode[c2,c1,c0]のMSBであるc2により制御される。スイッチSW2の設定は、Ccodeの第2ビットであるc1より制御される。スイッチSW1の設定は、CcodeのLSBであるc0により制御される。容量素子C0は常に低電位の第2基準電位VREFLに接続されるので、スイッチSW0は無くてもよい。
初期化ステップでは、4個のスイッチSW0~SW3およびスイッチSWRSTにより、4個の容量素子C0~C3それぞれの両端は、第2基準電位VREFLとされる。これにより、4個の容量素子C0~C3それぞれの電荷は初期化され、DA変換部10Aから比較部20へ出力されるデータCTOPが初期化される。初期化ステップが終了すると、スイッチSWRSTはオフ状態となる。
初期化ステップの後の逐次比較の最初のステップ1では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[1,0,0]が与えられることで、容量素子C3は第1基準電位VREFHに接続され、容量素子C2,C1,C0は第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は4Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は4Cとなる。このような各容量素子の接続状態のときにDA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+VREFL)/2となる。
ステップ1においてDA変換部10Aから出力されるデータCTOPと入力アナログデータAinとが比較部20により大小比較され、その比較結果を表す比較信号が比較部20から制御部30Aへ出力される。そして、制御部30Aにより、ステップ1の比較結果に応じて、逐次比較の次のステップ2でDA変換部10Aに与えられるCcodeが決定される。ステップ2は、ステップ1の比較結果に応じてケース1とケース2とに分かれる。データCTOPが入力アナログデータAinより小さい場合にケース1に進み、データCTOPが入力アナログデータAinより大きい場合にケース2に進む。
逐次比較のステップ2のケース1では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[1,1,0]が与えられることで、容量素子C3,C2は第1基準電位VREFHに接続され、容量素子C1,C0は第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は6Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は2Cとなる。このような各容量素子の接続状態のときにDA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(3VREFH+VREFL)/4となる。
ステップ2のケース1においてDA変換部10Aから出力されるデータCTOPと入力アナログデータAinとが比較部20により大小比較され、その比較結果を表す比較信号が比較部20から制御部30Aへ出力される。そして、制御部30Aにより、ステップ2のケース1の比較結果に応じて、逐次比較の次のステップ3でDA変換部10Aに与えられるCcodeが決定される。ステップ2のケース1の後のステップ3は、ステップ2のケース1の比較結果に応じてケース1-1とケース1-2とに分かれる。データCTOPが入力アナログデータAinより小さい場合にケース1-1に進み、データCTOPが入力アナログデータAinより大きい場合にケース1-2に進む。
逐次比較のステップ2のケース2では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[0,1,0]が与えられることで、容量素子C2は第1基準電位VREFHに接続され、容量素子C3,C1,C0は第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は2Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は6Cとなる。このような各容量素子の接続状態のときにDA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+3VREFL)/4となる。
ステップ2のケース2においてDA変換部10Aから出力されるデータCTOPと入力アナログデータAinとが比較部20により大小比較され、その比較結果を表す比較信号が比較部20から制御部30Aへ出力される。そして、制御部30Aにより、ステップ2のケース2の比較結果に応じて、逐次比較の次のステップ3でDA変換部10Aに与えられるCcodeが決定される。ステップ2のケース2の後のステップ3は、ステップ2のケース2の比較結果に応じてケース2-1とケース2-2とに分かれる。データCTOPが入力アナログデータAinより小さい場合にケース2-1に進み、データCTOPが入力アナログデータAinより大きい場合にケース2-2に進む。
ステップ3のケース1-1では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[1,1,1]が与えられることで、容量素子C3,C2,C1は第1基準電位VREFHに接続され、容量素子C0は第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は7Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和はCとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(7VREFH+VREFL)/8となる。
ステップ3のケース1-2では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[1,0,1]が与えられることで、容量素子C3,C1は第1基準電位VREFHに接続され、容量素子C2,C0は第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は5Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は3Cとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(5VREFH+3VREFL)/8となる。
ステップ3のケース2-1では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[0,1,1]が与えられることで、容量素子C2,C1は第1基準電位VREFHに接続され、容量素子C3,C0は第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は3Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は5Cとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(3VREFH+5VREFL)/8となる。
ステップ3のケース2-2では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[0,0,1]が与えられることで、容量素子C1は第1基準電位VREFHに接続され、容量素子C3,C2,C0は第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和はCとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は7Cとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+7VREFL)/8となる。
このように、逐次比較の最初のステップ1では、制御部30AからDA変換部10Aに与えられるCcodeが[1,0,0]に仮設定されて、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPと入力アナログデータAinとが大小比較され、その比較結果に基づいて、CcodeのMSBであるc2が決定される。次のステップ2では、制御部30AからDA変換部10Aに与えられるCcodeが[c2,1,0]に仮設定されて、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPと入力アナログデータAinとが大小比較され、その比較結果に基づいて、Ccodeの第2ビットであるc1が決定される。
最後のステップ3では、制御部30AからDA変換部10Aに与えられるCcodeが[c2,c1,1]に仮設定されて、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPと入力アナログデータAinとが大小比較され、その比較結果に基づいて、CcodeのLSBであるc0が決定される。そして、ステップ3の後に最終的に得られたCcode(または、このCcodeに基づいて得られるデジタルデータ)が、入力アナログデータAinに応じたデジタルデータとして制御部30Aから出力される。
図3は、AD変換器1Aの第2動作例を説明する表である。第2動作例では、N=5とし、容量素子C0の容量値をCとし、容量素子C1の容量値をCとし、容量素子C2の容量値を2Cとし、容量素子C3の容量値を2Cとし、容量素子C4の容量値を2Cとする。前の第1動作例では容量素子C3の容量値が4Cであったのに対して、この第2動作例では容量素子C3,C4の容量値の和が4Cである。したがって、互いに並列に設けられている容量素子C3,C4がCcodeのc2に基づいて互いに同じ電位に設定されることで、第2動作例は第1動作例と等価なものとなる。
図3には、初期化ステップから逐次比較のステップ1に移行する際、ステップ1から次のステップ2のケース1に移行する際、および、ステップ1から次のステップ2のケース2に移行する際、それぞれにおける基準電位供給線経由の電荷移動量(キックバック電荷移動量)も示されている。V=VREFH-VREFLとすると、初期化ステップから逐次比較のステップ1に移行する際の電荷移動量は2CVである。ステップ1から次のステップ2のケース1に移行する際の電荷移動量はCV/2である。ステップ1から次のステップ2のケース2に移行する際の電荷移動量は3CV/2である。
図4は、AD変換器1Aの第3動作例を説明する表である。前述の第2動作例の場合と同様に、この第3動作例でも、N=5とし、容量素子C0の容量値をCとし、容量素子C1の容量値をCとし、容量素子C2の容量値を2Cとし、容量素子C3の容量値を2Cとし、容量素子C4の容量値を2Cとする。
図4には、逐次比較の最初のステップ1の2つのケースA,Bが示されている。この図において、「z」は、容量素子の第1端が第1基準電位VREFHおよび第2基準電位VREFLの何れにも接続されておらずオープン状態(ハイインピーダンス状態)であることを示す。
ケースAでは、容量素子C4,C3,C2はオープン状態とされ、容量素子C1は第1基準電位VREFHに接続され、容量素子C0は第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和はCとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和はCとなる。
ケースBでは、容量素子C4は第1基準電位VREFHに接続され、容量素子C3,C2はオープン状態とされ、容量素子C1,C0は第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は2Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は2Cとなる。
第3動作例のステップ1のケースA,Bの何れにおいても、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+VREFL)/2となる。これは、第1動作例および第2動作例それぞれのステップ1においてDA変換部10Aから出力されるデータCTOPと同じ値である。
しかし、第3動作例のステップ1のケースAでは、初期化ステップから逐次比較のステップ1に移行する際の電荷移動量はCV/2である。これは、第1動作例および第2動作例それぞれのステップ1に移行する際の電荷移動量の1/4である。また、第3動作例のステップ1のケースBでは、初期化ステップから逐次比較のステップ1に移行する際の電荷移動量はCVである。これは、第1動作例および第2動作例それぞれのステップ1に移行する際の電荷移動量の1/2である。
このように、制御部30Aは、DA変換部10Aの各スイッチの設定を逐次比較のステップ毎に制御する際に、逐次比較の何れかステップにおいて、DA変換部10Aの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する制御信号をDA変換部10Aへ出力する。このようにすることで、逐次比較の際に用いられる容量素子の容量値の総和を小さくすることができるので、キックバックを小さくすることができる。そして、逐次比較の各ステップの期間を短縮することができて、AD変換器の高速化が可能となる。
キックバックは、逐次比較の最初のステップでは大きく、ステップが進むに従って小さくなっていく傾向がある。したがって、制御部30Aは、DA変換部10Aの各スイッチの設定を制御する際に、逐次比較の少なくとも最初のステップ1において、DA変換部10Aの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する制御信号をDA変換部10Aへ出力するのが好適である。制御部30Aは、DA変換部10Aの各スイッチの設定を制御する際に、逐次比較のステップが進むに従って、DA変換部10Aの複数の容量素子のうち第1端を第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLとする容量素子の容量値の総和を次第に増加させるよう指示する制御信号をDA変換部10Aへ出力するのが好適である。また、制御部30Aは、逐次比較の最後のステップにおいて、または、最後のステップまでに、DA変換部10Aの全ての容量素子の第1端を第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLとするよう指示する制御信号をDA変換部10Aへ出力するのが好適である。
図5は、AD変換器1Aの第4動作例を説明する表である。第4動作例では、N=8とし、8個の容量素子C0~C7それぞれの容量値をCとする。容量素子C7,C6,C5,C4の容量値の総和は4Cであり、容量素子C3,C2の容量値の総和は2Cである。したがって、互いに並列に設けられている容量素子C7,C6,C5,C4がCcodeのc2に基づいて互いに同じ電位に設定されるとともに、互いに並列に設けられている容量素子C3,C2がCcodeのc1に基づいて互いに同じ電位に設定されることで、第4動作例は第1動作例と等価なものとなる。
図6は、AD変換器1Aの第5動作例を説明する表である。前述の第4動作例の場合と同様に、この第5動作例でも、N=8とし、8個の容量素子C0~C7それぞれの容量値をCとする。
この第5動作例において、逐次比較の最初のステップ1では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[1,0,0]が与えられることで、容量素子C4は第1基準電位VREFHに接続され、容量素子C0は第2基準電位VREFLに接続され、他の容量素子はオープン状態とされる。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和はCとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和はCとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+VREFL)/2となる。
ステップ2のケース1では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[1,1,0]が与えられることで、3個の容量素子C6,C4,C2は第1基準電位VREFHに接続され、1個の容量素子C0は第2基準電位VREFLに接続され、他の容量素子はオープン状態とされる。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は3Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和はCとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(3VREFH+VREFL)/4となる。
ステップ2のケース2では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[0,1,0]が与えられることで、1個の容量素子C2は第1基準電位VREFHに接続され、3個の容量素子C6,C4,C0は第2基準電位VREFLに接続され、他の容量素子はオープン状態とされる。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和はCとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は3Cとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+3VREFL)/4となる。
ステップ3のケース1-1では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[1,1,1]が与えられることで、7個の容量素子C7,C6,C5,C4,C3,C2,C1は第1基準電位VREFHに接続され、1個の容量素子C0は第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は7Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和はCとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(7VREFH+VREFL)/8となる。
ステップ3のケース1-2では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[1,0,1]が与えられることで、5個の容量素子C7,C6,C5,C4,C1は第1基準電位VREFHに接続され、3個の容量素子C3,C2,C0は第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は5Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は3Cとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(5VREFH+3VREFL)/8となる。
ステップ3のケース2-1では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[0,1,1]が与えられることで、3個の容量素子C3,C2,C1は第1基準電位VREFHに接続され、5個の容量素子C7,C6,C5,C4,C0は第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は3Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は5Cとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(3VREFH+5VREFL)/8となる。
ステップ3のケース2-2では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[0,0,1]が与えられることで、1個の容量素子C1は第1基準電位VREFHに接続され、7個の容量素子C7,C6,C5,C4,C3,C2,C0は第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和はCとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は7Cとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+7VREFL)/8となる。
このように、各ステップ・各ケースにおいて第5動作例のDA変換部10Aから出力されるデータCTOPは、前述した第1~第4の動作例の場合にDA変換部10Aから出力されるデータCTOPと同じ値となる。この第5動作例では、逐次比較のステップ1およびステップ2において、DA変換部10Aの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する制御信号をDA変換部10Aへ出力する。このようにすることで、逐次比較の際に用いられる容量素子の容量値の総和を小さくすることができるので、キックバックを小さくすることができる。そして、逐次比較の各ステップの期間を短縮することができて、AD変換器の高速化が可能となる。
図7は、AD変換器1Aの第6動作例を説明する表である。前述の第4および第5の各動作例の場合と同様に、この第6動作例でも、N=8とし、8個の容量素子C0~C7それぞれの容量値をCとする。ただし、前述の第4および第5の各動作例では、バイナリコードで表されたCcode[c2,c1,c0]に基づいて各容量素子の接続が決められていたが、この第6動作例では、Ccode[c2,c1,c0]をデコードして得られるサーモメータコードに基づいて各容量素子の接続が決められる。
この第6動作例において、逐次比較の最初のステップ1では、4個の容量素子C0~C3は第1基準電位VREFHに接続され、4個の容量素子C4~C7は第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+VREFL)/2となる。
ステップ2のケース1では、6個の容量素子C0~C5は第1基準電位VREFHに接続され、2個の容量素子C6,C7は第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(3VREFH+VREFL)/4となる。
ステップ2のケース2では、2個の容量素子C0,C1は第1基準電位VREFHに接続され、6個の容量素子C2~C7は第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+3VREFL)/4となる。
ステップ3のケース1-1では、7個の容量素子C0~C6は第1基準電位VREFHに接続され、1個の容量素子C7は第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(7VREFH+VREFL)/8となる。
ステップ3のケース1-2では、5個の容量素子C0~C4は第1基準電位VREFHに接続され、3個の容量素子C5~C7は第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(5VREFH+3VREFL)/8となる。
ステップ3のケース2-1では、3個の容量素子C0~C2は第1基準電位VREFHに接続され、5個の容量素子C3~C7は第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(3VREFH+5VREFL)/8となる。
ステップ3のケース2-2では、1個の容量素子C0は第1基準電位VREFHに接続され、7個の容量素子C1~C7は第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+7VREFL)/8となる。
このように、各ステップ・各ケースにおいて第6動作例のDA変換部10Aから出力されるデータCTOPは、前述した第1~第5の動作例の場合にDA変換部10Aから出力されるデータCTOPと同じ値となる。
図8は、AD変換器1Aの第7動作例を説明する表である。前述の第4~第6の各動作例の場合と同様に、この第7動作例でも、N=8とし、8個の容量素子C0~C7それぞれの容量値をCとする。また、前述の第6動作例の場合と同様に、この第7動作例でも、Ccode[c2,c1,c0]をデコードして得られるサーモメータコードに基づいて各容量素子の接続が決められる。
この第7動作例において、逐次比較の最初のステップ1では、1個の容量素子C3は第1基準電位VREFHに接続され、1個の容量素子C7は第2基準電位VREFLに接続され、他の容量素子はオープン状態とされる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+VREFL)/2となる。
ステップ2のケース1では、3個の容量素子C1,C3,C5は第1基準電位VREFHに接続され、1個の容量素子C7は第2基準電位VREFLに接続され、他の容量素子はオープン状態とされる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(3VREFH+VREFL)/4となる。
ステップ2のケース2では、1個の容量素子C1は第1基準電位VREFHに接続され、3個の容量素子C3,C5,C7は第2基準電位VREFLに接続され、他の容量素子はオープン状態とされる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+3VREFL)/4となる。
ステップ3のケース1-1では、7個の容量素子C0~C6は第1基準電位VREFHに接続され、1個の容量素子C7は第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(7VREFH+VREFL)/8となる。
ステップ3のケース1-2では、5個の容量素子C0~C4は第1基準電位VREFHに接続され、3個の容量素子C5~C7は第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(5VREFH+3VREFL)/8となる。
ステップ3のケース2-1では、3個の容量素子C0~C2は第1基準電位VREFHに接続され、5個の容量素子C3~C7は第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(3VREFH+5VREFL)/8となる。
ステップ3のケース2-2では、1個の容量素子C0は第1基準電位VREFHに接続され、7個の容量素子C1~C7は第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+7VREFL)/8となる。
このように、各ステップ・各ケースにおいて第7動作例のDA変換部10Aから出力されるデータCTOPは、前述した第1~第6の動作例の場合にDA変換部10Aから出力されるデータCTOPと同じ値となる。この第7動作例では、逐次比較のステップ1およびステップ2において、DA変換部10Aの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する制御信号をDA変換部10Aへ出力する。このようにすることで、逐次比較の際に用いられる容量素子の容量値の総和を小さくすることができるので、キックバックを小さくすることができる。そして、逐次比較の各ステップの期間を短縮することができて、AD変換器の高速化が可能となる。
(第2構成例)
図9は、AD変換器1Bの構成を示す図である。この図に示される第2構成例のAD変換器1Bは、DA変換部10B、比較部20、制御部30Bおよびスイッチ40を備える。AD変換器1Bは、入力アナログデータAinに応じたデジタルデータを制御部30Bから出力する。
DA変換部10Bは、N個の容量素子C0~CN-1およびN個のスイッチSW0~SWN-1を含む。N個のスイッチSW0~SWN-1は、制御部30Bから出力される制御信号に基づいて設定される。各容量素子Cnの第1端は、対応するスイッチSWnと接続されている。各容量素子Cnの第1端は、スイッチSWnの設定により、高電位の第1基準電位VREFH、低電位の第2基準電位VREFLおよびオープンの何れかとされる。各容量素子Cnの第2端は、共通に接続されて出力端を構成している。DA変換部10Bは、入力アナログデータAinをN個の容量素子C0~CN-1によりホールドした後、N個のスイッチSW0~SWN-1それぞれの設定に応じたデータCTOPを比較部20へ出力する。
なお、Nは2以上の整数であり、nは0以上(N-1)以下の整数である。また、N個の容量素子C0~CN-1のうち何れかの容量素子の第1端は一定電位とされる場合があり、その場合には、その容量素子に対応するスイッチは不要である。
比較部20は、2つの入力端それぞれに入力されるデータを大小比較して、その比較結果を表す比較信号を制御部30Bへ出力する。第2構成例では、比較部20は、DA変換部10Bから出力されたデータCTOPを一方の入力端に入力し、基準レベルVCMを他方の入力端に入力する。基準レベルVCMは、例えば、第1基準電位VREFHと第2基準電位VREFLとの平均値である。または、基準レベルVCMは、比較部20が最も高性能(例えば、高感度、高SN比)に動作することができる値に設定される場合もある。スイッチ40は、比較部20の2つの入力端の間に設けられている。
制御部30Bは、比較部20から出力された比較信号に基づいて、逐次比較のステップ毎に、DA変換部10Bから出力されるデータCTOPと入力アナログデータAinとの差が小さくなるように制御信号を生成して、その制御信号をDA変換部10Bへ出力する。
このAD変換器1Bでは、初期化ステップにおいて、スイッチ40がオン状態となってCTOPがVCMに初期化されるとともに、各スイッチSWnの設定によって各容量素子Cnに入力アナログデータAinがホールドされる。AD変換器1Bは、この初期化ステップの後の逐次比較の各ステップでは、前述したAD変換器1Aの場合と同じ動作が可能である。
制御部30Bは、DA変換部10Bの各スイッチの設定を逐次比較のステップ毎に制御する際に、逐次比較の何れかステップにおいて、DA変換部10Bの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する制御信号をDA変換部10Bへ出力する。このようにすることで、逐次比較の際に用いられる容量素子の容量値の総和を小さくすることができるので、キックバックを小さくすることができる。そして、逐次比較の各ステップの期間を短縮することができて、AD変換器の高速化が可能となる。
制御部30Bは、DA変換部10Bの各スイッチの設定を制御する際に、逐次比較の少なくとも最初のステップ1において、DA変換部10Bの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する制御信号をDA変換部10Bへ出力するのが好適である。制御部30Bは、DA変換部10Bの各スイッチの設定を制御する際に、逐次比較のステップが進むに従って、DA変換部10Bの複数の容量素子のうち第1端を第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLとする容量素子の容量値の総和を次第に増加させるよう指示する制御信号をDA変換部10Bへ出力するのが好適である。また、制御部30Bは、逐次比較の最後のステップにおいて、DA変換部10Bの全ての容量素子の第1端を第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLとするよう指示する制御信号をDA変換部10Bへ出力するのが好適である。
図10は、AD変換器1Bの各スイッチSWnの回路例を示す図である。各スイッチSWnは、PMOSトランジスタM1、NMOSトランジスタM2、PMOSトランジスタM3およびNMOSトランジスタM4を含む。これらのMOSトランジスタは、ゲート電圧の大きさに応じてソースとドレインとの間の導通/非導通が設定されるスイッチとして動作する。
PMOSトランジスタM1は、第1基準電位VREFHを供給する線と容量素子Cnとの間に設けられている。PMOSトランジスタM1は、ゲート回路G1から出力される信号をゲートに入力して、そのゲート電圧に基づいてオン/オフの設定が制御される。
NMOSトランジスタM2は、第2基準電位VREFLを供給する線と容量素子Cnとの間に設けられている。NMOSトランジスタM2は、ゲート回路G2から出力される信号に基づいてオン/オフの設定が制御される。
PMOSトランジスタM3およびNMOSトランジスタM4は、入力アナログデータAinが入力される線と容量素子Cnとの間に互いに並列的に設けられている。PMOSトランジスタM3は、信号ASWnに基づいてオン/オフの設定が制御される。NMOSトランジスタM4は、信号ASWpに基づいてオン/オフの設定が制御される。
ゲート回路G1は、信号Cntlおよび信号ACTpを入力して、これら2つの信号の値の否定論理積の値を有する信号をPMOSトランジスタM1のゲートに与える。ゲート回路G2は、信号Cntlおよび信号ACTnを入力して、これら2つの信号の値の否定論理和の値を有する信号をNMOSトランジスタM2のゲートに与える。ゲート回路G1,G2は、DA変換部10Bに設けられるのが好適である。
Cntlは、バイナリコードであるCcodeの何れかのビット、または、Ccodeをデコードして得られるサーモメータコードの何れかのビットである。ACTp,ACTnは互いに相補的な信号であり、一方がハイレベルであるとき他方はローレベルである。ASWp,ASWnは互いに相補的な信号であり、一方がハイレベルであるとき他方はローレベルである。
ASWpがハイレベルであるとき、スイッチ40を閉じることに依り、各容量素子Cnに入力アナログデータAinがホールドされる。ASWp およびACTpの双方がローレベルであるとき、容量素子Cnはオープン状態となる。ASWp がローレベルであって、ACTpがハイレベルであるとき、容量素子Cnは、Cntlの値に応じて第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLに接続される。ACT信号を複数に分けることで、図10に示す回路には修正を加えずに、一部の容量素子のみ第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLにつなぎ、残りをオープン状態にする制御を実現できる。
図11は、AD変換器1Bの各スイッチSWnの動作を説明するタイミングチャートである。この図において、RSTは、スイッチ40のオン/オフを設定する為の信号である。
ACTpがハイレベルからローレベルに転じた後に、ASWpはローレベルからハイレベルに転じ、RSTもローレベルからハイレベルに転じる。RSTがハイレベルからローレベルに転じた後に、ASWpはハイレベルからローレベルに転じる。初期化ステップにおいて、RSTおよびASWpがハイレベルである期間に、スイッチ40がオン状態となって、CTOPがVCMに初期化され、各容量素子Cnに入力アナログデータAinがホールドされる。
逐次比較の各ステップは、ASWpがハイレベルからローレベルに転じた後に始まる。スイッチSWnに対応する容量素子Cnが第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLに接続されるステップでは、そのスイッチSWnに与えられるACTpはハイレベルとなる。スイッチSWnに対応する容量素子Cnがオープン状態とされるステップでは、そのスイッチSWnに与えられるACTpはローレベルのままとなる。
なお、このようなスイッチ動作により、入力アナログデータAinが入力される線と基準電位供給線との間に貫通電流が流れることを回避することができ、また、各容量素子Cnにホールドされた入力アナログデータAinがリークすることを回避することができる。
(第3構成例)
図12は、AD変換器1Cの構成を示す図である。この図に示される第3構成例のAD変換器1Cは、第1DA変換部11、第2DA変換部12、比較部20、制御部30C、スイッチ41およびスイッチ42を備える。AD変換器1Cは、差動のアナログデータ(Ain1,Ain2)を入力し、第1入力アナログデータAin1と第2入力アナログデータAin2との差に応じたデジタルデータを制御部30Cから出力する。
この第3構成例における第1DA変換部11および第2DA変換部12は、前述した第2構成例におけるDA変換部10Bと同じ構成を有する。第1DA変換部11は、第1入力アナログデータAin1を入力する。第2DA変換部12は、第2入力アナログデータAin2を入力する。
第1DA変換部11のN個のスイッチSW0~SWN-1は、制御部30Cから出力される第1制御信号に基づいて設定される。第1DA変換部11は、第1入力アナログデータAin1をN個の容量素子C0~CN-1によりホールドした後、N個のスイッチSW0~SWN-1それぞれの設定に応じた第1データCTOP1を比較部20へ出力する。
第2DA変換部12のN個のスイッチSW0~SWN-1は、制御部30Cから出力される第2制御信号に基づいて設定される。第2DA変換部12は、第2入力アナログデータAin2をN個の容量素子C0~CN-1によりホールドした後、N個のスイッチSW0~SWN-1それぞれの設定に応じた第2データCTOP2を比較部20へ出力する。
なお、Nは2以上の整数であり、nは0以上(N-1)以下の整数である。また、第1DA変換部11および第2DA変換部12それぞれにおいて、N個の容量素子C0~CN-1のうち何れかの容量素子の第1端は一定電位とされる場合があり、その場合には、その容量素子に対応するスイッチは不要である。
比較部20は、2つの入力端それぞれに入力されるデータを大小比較して、その比較結果を表す比較信号を制御部30Cへ出力する。第3構成例では、比較部20は、第1DA変換部11から出力された第1データCTOP1を一方の入力端に入力し、第2DA変換部12から出力された第2データCTOP2を他方の入力端に入力する。スイッチ41は、比較部20の一方の入力端と基準レベルVCM供給線との間に設けられている。スイッチ42は、比較部20の他方の入力端と基準レベルVCM供給線との間に設けられている。基準レベルVCMは、例えば、第1基準電位VREFHと第2基準電位VREFLとの平均値である。または、基準レベルVCMは、比較部20が最も高性能(例えば、高感度、高SN比)に動作することができる値に設定される場合もある。
制御部30Cは、比較部20から出力された比較信号に基づいて、逐次比較のステップ毎に、第1データCTOP1と第2データCTOP2との差が小さくなるように第1制御信号および第2制御信号を生成して、第1制御信号を第1DA変換部11へ出力し、第2制御信号を第2DA変換部12へ出力する。
このAD変換器1Cでは、初期化ステップにおいて、スイッチ41,42の双方がオン状態となってCTOP1,CTOP2の双方がVCMに初期化されるとともに、第1DA変換部11において各スイッチSWnの設定によって各容量素子Cnに第1入力アナログデータAin1がホールドされ、第2DA変換部12において各スイッチSWnの設定によって各容量素子Cnに第2入力アナログデータAin2がホールドされる。AD変換器1Cは、この初期化ステップの後の逐次比較の各ステップでは、例えば次のような動作をする。
図13は、AD変換器1Cの第1動作例を説明する表である。図13(a)は、AD変換器1Cの第1DA変換部11の動作を示す。図13(b)は、AD変換器1Cの第2DA変換部12の動作を示す。この第1動作例では、N=8とし、8個の容量素子C0~C7それぞれの容量値をCとする。また、この第1動作例では、Ccode[c2,c1,c0]をデコードして得られるサーモメータコードに基づいて各容量素子の接続が決められる。制御部30Cから第2DA変換部12に与えられるCcode2は、制御部30Cから第1DA変換部11に与えられるCcode1の各ビットの極性を反転したものである。
この第1動作例では、逐次比較の各ステップにおいて、8個の容量素子C0~C7の何れも、第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLに接続される。第1DA変換部11の動作は、前述の図7で説明したAD変換器1Aの第6動作例と同様である。第2DA変換部12から出力される第2データCTOP2は、第1DA変換部11から出力される第2データCTOP1に対し2の補数となる。
図14は、AD変換器1Cの第2動作例を説明する表である。図14(a)は、AD変換器1Cの第1DA変換部11の動作を示す。図14(b)は、AD変換器1Cの第2DA変換部12の動作を示す。前述の第1動作例の場合と同様に、この第2動作例でも、N=8とし、8個の容量素子C0~C7それぞれの容量値をCとする。また、前述の第1動作例の場合と同様に、この第2動作例でも、Ccode[c2,c1,c0]をデコードして得られるサーモメータコードに基づいて各容量素子の接続が決められる。制御部30Cから第2DA変換部12に与えられるCcode2は、制御部30Cから第1DA変換部11に与えられるCcode1の各ビットの極性を反転したものである。
この第2動作例では、逐次比較の各ステップにおいて、8個の容量素子C0~C7は、第1基準電位VREFH、第2基準電位VREFLおよびオープン状態の何れかとされる。第1DA変換部11の動作は、前述の図8で説明したAD変換器1Aの第7動作例と同様である。第2DA変換部12から出力される第2データCTOP2は、第1DA変換部11から出力される第2データCTOP1に対し2の補数となる。
このように、制御部30Cは、第1DA変換部11および第2DA変換部12それぞれの各スイッチの設定を逐次比較のステップ毎に制御する際に、逐次比較の何れかステップにおいて、第1DA変換部11および第2DA変換部12それぞれの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する第1制御信号および第2制御信号を出力する。このようにすることで、逐次比較の際に用いられる容量素子の容量値の総和を小さくすることができるので、キックバックを小さくすることができる。そして、逐次比較の各ステップの期間を短縮することができて、AD変換器の高速化が可能となる。
キックバックは、逐次比較の最初のステップでは大きく、ステップが進むに従って小さくなっていく。したがって、制御部30Cは、第1DA変換部11および第2DA変換部12それぞれの各スイッチの設定を制御する際に、逐次比較の少なくとも最初のステップ1において、第1DA変換部11および第2DA変換部12それぞれの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する第1制御信号および第2制御信号を出力するのが好適である。制御部30Cは、第1DA変換部11および第2DA変換部12それぞれの各スイッチの設定を制御する際に、逐次比較のステップが進むに従って、第1DA変換部11および第2DA変換部12それぞれの複数の容量素子のうち第1端を第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLとする容量素子の容量値の総和を次第に増加させるよう指示する第1制御信号および第2制御信号を出力するのが好適である。また、制御部30Cは、逐次比較の最後のステップにおいて、または、最後のステップまでに、第1DA変換部11および第2DA変換部12それぞれの全ての容量素子の第1端を第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLとするよう指示する第1制御信号および第2制御信号を出力するのが好適である。
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明の考え方は逐次比較型AD変換器全般に適用できる。例えば、逐次比較のステップの途中または最後に冗長ステップを挿入してもよい。
上述した第2および第3の構成例のAD変換器は、DA変換部の各容量素子の第2端が比較部の入力端に接続されて、DA変換部の各容量素子の第1端に入力アナログデータAinが入力されるボトムプレートサンプリングの構成であった。AD変換器は、比較部の入力端に接続されるDA変換部の各容量素子の第2端に入力アナログデータが入力されるトッププレートサンプリングの構成であってもよい。