JP3988430B2 - 点火コイル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、点火コイルに関し、特に内燃機関用点火コイルに関する。
【0002】
【従来の技術】
点火コイルとしては、例えば内燃機関用点火コイルにおいて、各気筒のプラグホール内に取付けられる点火コイルが知られている。
【0003】
この種の点火コイルは、プラグホールの筒軸上に配置される中心コアと、この外周にあって、中心コアの外周側に巻回される2次コイルと、この2次コイルの外周側に同軸に巻回される1次コイルと、これら点火コイルを構成する部品を収容するケースとを備える。
【0004】
2次コイル、1次コイルの巻線としての銅線は、それぞれスプールの外周に巻回されており、それぞれの巻き始め側、巻き終り側の銅線がスプールに設けられたターミナルに電気的に接続している。さらに、これら2次コイル、1次コイル等をケース内に挿入してASSY組付け後、コネクタに設けられるターミナルに、そのスプールのターミナルが溶接等により電気的に接続されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来構成では、点火コイルASSY側のターミナルとは別に、中間ターミナルとしてスプールにターミナルを設けるので、部品点数が増加するという問題がある。また、巻線の銅線をターミナルへ結線する等の端末処理の工数が多くかかってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、したがって、その目的は、巻線の端末処理が、部品点数を増やすことなく、可能な点火コイルを提供することにある。
【0007】
また、別の目的は、部品点数を増やすことなく巻線の端末処理が可能であるとともに、ターミナルへの巻線の結線が容易な点火コイルを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1または請求項3によれば、磁性材料からなる棒状の中心コアと、中心コアの外周側に巻かれた内周側コイルと、中心コアと内周側コイルとの間に配され、内周側コイルの巻線が巻回される内周側スプールと、内周側コイルの外周側に巻かれた外周側コイルと、内周側コイルと外周側コイルとの間に配され、外周側コイルの巻線が巻回される外周側スプールと、外部から給電されるターミナルを有するコネクタとを備え、外周側スプールの両軸端側には、外周側コイルの巻線が軸方向に沿って巻回されるのを規制する鍔部が形成されるとともに、鍔部には、ターミナルに接続する巻き終り側、および巻き始め側の外周側コイルの巻線が固定される巻線保持部が設けられている。
【0017】
本発明の点火コイルは、外周側コイルの巻き終り側および巻き始め側の巻線を、固定する巻線保持部を外周側スプールの鍔部に設けるので、点火コイルを構成する内周側コイル、および外周側コイルと、両コイルの巻線がそれぞれ巻回される内周側スプール、および外周側スプールを備え、これら外周側コイル等の各部材を組付けてASSYとしての点火コイルを形成する際、スプールに設けられたターミナルすなわち中間ターミナルにその巻き終り側および巻き始め側の巻線を溶接等の結線手段により接続することなく、点火コイルASSY側のターミナルすなわち外部から給電されるコネクタ部のターミナルに直接接続することが可能である。
【0018】
上記巻線保持部は、本発明の請求項1または請求項3に記載するように、巻線をターミナルとともに保持する溝部を備えるとともに、溝部に巻線を当接させ、かつターミナルを嵌合させることで、巻線の外周に形成された皮膜を削りとる。
【0019】
この巻線保持部は、コネクタ部のターミナルとともに保持する溝部を備え、ターミナルを嵌合させる際、溝部に当接する巻線の外周表面に形成される皮膜を削りとる機能を有するので、中間ターミナルを廃止できるとともに、ASSY側のコネクタ部に設けられるターミナルを用いて、巻き終り側および巻き始め側の巻線をそれぞれ嵌合固定させ、かつ嵌合と同時に巻線の皮膜を剥がすことで、溶接等の結線装置が不要な、簡易な端末処理を提供できる。
【0020】
巻線保持部の上記溝部は、本発明の請求項1または請求項5に記載するように、巻線保持部の先端側を迂回して、両側面に形成されている。
【0021】
すなわち、ターミナルを用いて、巻き終り側または巻き始め側の巻線を嵌合固定させる巻線保持部には、嵌合固定させる際に巻線を当接させる溝部が巻線保持部の先端側を迂回して両側面に形成されているので、ターミナルによって嵌合固定される巻線は、両側面に当接する巻線の少なくとも2箇所で、嵌合と同時に巻線の皮膜を剥がされる。したがって、ターミナルへ電気的に接続する巻線の表面積の拡大が図られるので、ターミナルへの巻線の端末処理が確実に行なうことができる。
【0022】
本発明の請求項2または請求項3に記載するように、ターミナルは、溝部に保持される巻線に対応する内壁部に、巻線と嵌合する皮膜除去片を備えている。
【0023】
すなわち、ターミナルの溝部に保持される巻線に対応する内壁部には、巻線と嵌合する皮膜除去片が備えられている構造を有するので、内壁部に形成する皮膜除去片の数に応じて、ターミナルへ電気的に接続する巻線の表面積をさらに拡大できる。
【0024】
本発明の請求項4によれば、ターミナルは、プレス加工により形成されるものであって、皮膜除去片は、ターミナルが巻線保持部に嵌合する方向に向って、嵌合代が大きくなるように、内壁の一部を内部へ曲げることにより形成されている。
【0025】
これにより、皮膜除去片を有するターミナルはプレス加工によって皮膜除去片を一体成形できるとともに、ターミナルが巻線保持部に嵌合する方向に向って嵌合代が大きくなるように内部へ曲げられるので、皮膜除去片は、プレス加工されるターミナルの材料の縦弾性係数に起因したばね作用によってばね接触する程度の曲げ状態で、巻線の皮膜の剥がしが可能である。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の点火コイルを内燃機関用点火コイルに適用して、具体化した実施形態を、図面に従って説明する。
【0027】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の点火コイルの概略構成を表す縦断面図である。図2は、図1中のII線内部分を拡大した縦断面図である。図3は、図1中の本発明の要部である外周側コイルが巻回されている外周側スプールを示す外観斜視図である。図4は、図1中の点火コイルの頭部をIV−IV方向からみた横断面図である。
【0028】
図1に示すように、点火コイル1は、図示しないエンジンブロックの上部に気筒毎に形成されたプラグホール内に収容され、点火プラグ(図示せず)と図1中の下側で電気的に接続している。
【0029】
点火コイル1は、点火コイル1の筒状のケースとして、樹脂材料からなる円筒状のハウジング11を備えており、このハウジング11内に形成された収容室11aには、中心コア部12、二次スプール20、二次コイル21、一次スプール23、一次コイル24、外周コア25等が収容されている。
【0030】
なお、このハウジング11は、コネクタ部30や点火コイル1をエンジンブロックに固定するためのブラケット部32が一体化された頭部11b、外周コア25の外周を覆って点火コイル本体部(詳しくは、内周側コイルとしての二次コイル21、外周側コイルとしての一次コイル24等が収容される部位)を保護する筒部11c、および点火プラグに嵌合装着(詳しくは、二次コイル24の高圧側の巻線が接続される第1高圧ターミナル40、この第1高圧ターミナル40と点火プラグの端子に接触する導電性材料からなるスプリング42とを電気的に接続する第2高圧ターミナル41等が収容される)高圧タワー部11dとを含んで構成されている。頭部11bと筒部11cと高圧タワー部11dとの接続部は、圧入嵌合する構造となっており、それぞれ接着剤等にて接着され、シールされている。
【0031】
ハウジング11の収容室11aに充填されたエポキシ樹脂26は、点火コイル1内の各部材間に浸透し、樹脂絶縁材として部材間の電気絶縁を確実なものとしている。詳しくは、収容室11aには、樹脂絶縁材としての電気絶縁性を有する注型樹脂(本実施形態では、エポキシ系樹脂)26が充填されて両コイル21、24およびその他の部品がモールド固定されている。なお、筒部11cと高圧タワー部11dとの接続部には、外周コア25とハウジング11との間の熱膨縮差によるエポキシ樹脂26の割れを防ぐために、例えば外周コア25下端に弾性緩衝部材11eを装着している。
【0032】
中心コア部12は、コア本体13と、コア本体13の両軸端に配設された永久磁石14、15とからなる。
【0033】
コア本体13は、図1および図2に示すように、磁性材料(本実施形態では、珪素鋼板)からなる棒状に形成されており、薄い珪素鋼板を横断面がほぼ円形となるように径方向に積層して組立てられている。
【0034】
また、このコア本体13の外周には、緩衝部材としての筒部材17が配置されている。なお、この筒部材17は、加熱することにより径寸法等が収縮する熱収縮チューブ(本実施形態では、ポリオリフィン系樹脂、あるいは単孔質スポンジ等のゴム材)であって、コア本体13と筒部材17との一体形成が可能である。
【0035】
さらに、外周側に筒部材17を備えた中心コア部12に、キャップ19が嵌合している。なお、キャップ19および内周側スプールとしての二次スプール20は、中心コア部12の外周を取り囲むケース部材を構成している。
【0036】
なお、永久磁石14、15は、コイルにより励磁されて発生する磁束の方向とは逆方向の極性を有している。
【0037】
二次コイル(内周側コイル)21は、中心コア部12の外周側(詳しくは、コア本体13の外周側に配された筒部材17の外周側)に配置され、二次コイル21の高圧側の巻線が点火プラグに電気的に接続するとともに、この二次コイル21の外側には、二次コイル21に発生する高電圧を制御するイグナイタ60からの制御信号が入力される一次コイル(外周側コイル)24が配置されている。
【0038】
なお、点火コイルでは、一次コイル24に入力された電圧を昇圧して二次コイル21から出力するものであるので、二次コイル21の巻数は、一次コイル24の巻数より多く、かつ、二次コイル21が一次コイル24より内側に配置されているため、二次コイル21の巻線の線径を、一次コイル24の巻線より小さくしている(図2参照)。
【0039】
二次スプール(内周側スプール)20は、図1に示すように、筒部材17の外周側に配設されており、中心コア部12、筒部材17の端部を保持する底部20aを備えた有底筒状に樹脂(本実施形態では、PPE樹脂)等の電気絶縁材料で形成されている。二次コイル21は二次スプール20の外周に巻回されており、二次コイル21の高電圧側にはさらにダミーコイル22が一重巻き程度に巻回されている。ダミーコイル22は二次コイル21と第1高圧ターミナル40とを電気的に接続している。二次コイル21の高圧側の巻線を単線ではなく、ダミーコイル22で二次コイル21と第1高圧ターミナル40とを電気的に接続することにより、二次コイル21と第1高圧ターミナル40との電気的に接続部の表面積を大きくし、電気的接続部への電界集中を避けている。
【0040】
なお、二次コイル21は、図1および図2に示すように、高電圧側に向かうほど、コイルの厚み(コイルの巻き段数)が減少するように巻かれている。
【0041】
一次スプール(外周側スプール)23は、図1および図2に示すように、二次コイル21の外周側に配設されており、樹脂(本実施形態では、PPE樹脂)等の電気絶縁材料で略円筒状に形成されている。一次コイル24は一次スプール23の外周に巻回されている。
【0042】
なお、一次スプール23の外周面(一次コイル24と一次スプール23の間)には、PET(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂等からなる薄膜フィルム(図示せず)が巻かれていていてもよい。この薄膜フィルムにより、一次スプール23と、モールド用樹脂としての樹脂絶縁材26とが完全に接着してしまうことを防止する。
【0043】
なお、二次コイル21、および一次コイル24のそれぞれの巻線を巻回する二次スプール20、一次スプール23は、所望の巻き段数を巻回した巻線が崩れることを防止するため、両軸端側に、スプール20、23の外周側に沿って軸方向に向って巻回されるのを規制する鍔部23d、20dが形成されている(図2参照)。この鍔部23dは、両軸端側に円環状に形成される必要はなく、例えば図3に示すように、巻線が巻回される円筒部23b(図2参照)から径方向に突出する複数(例えば、4個)の係止部により形成されていてもよい。
【0044】
なお、一次スプール23に巻回する一次コイル24の巻き始め側、および巻き終り側の巻線の端末処理の詳細、特に一次スプール23に係わる特徴については、後述する。
【0045】
外周コア25は一次コイル24のさらに外側に装着され、薄い珪素鋼板等の磁性材料で略円筒状に形成されている。なお、外周コア25は、薄い珪素鋼板を筒状に巻回し、巻回開始端と巻回終了端とを接続していないので、軸方向に隙間が形成されている。外周コア25は中心コア12(詳しくはコア本体13とコア本体13の両軸端に配設された永久磁石14,15)の両永久磁石14、15間、つまり永久磁石14の外周位置から永久磁石15の外周位置にわたる軸方向長さを有する。
【0046】
また、第1高圧ターミナル40の中央部は、第2高圧ターミナル41を挿入する方向に折り曲げられた爪部を構成している。この爪部に第2高圧ターミナル41の先端が挿入することにより、第2高圧ターミナル41は第1高圧ターミナル40と電気的に接続している。ダミーコイル22の高電圧端の巻線は、フュージングまたははんだ付け等で、第1ターミナル40に電気的に接続されている。スプリング42は、第2高圧ターミナル41と電気的に接続するとともに、プラグホールに点火コイル1を挿入した際に点火プラグと電気的に接続する。ハウジング11の高電圧側開口端には、ゴムからなるプラグキャップ43が装着されており、このプラグキャップ43に点火プラグを挿入する。
【0047】
なお、コネクタ30には、ターミナル31がインサート成形されており、このターミナル31は、スイッチング回路としてのイグナイタ60から一次コイル24へ制御信号を供給するように、一次コイル24の巻線端部に電気的に接続される。
【0048】
なお、一次スプール23に巻回する一次コイル24の巻線端部としての巻き始め側、および巻き終り側の巻線の端末処理の詳細、特に一次スプール23、ターミナル31との組付関係については、後述する。
【0049】
なお、イグナイタ60は、図1に示すように、点火コイル1(詳しくは、頭部11b)に収容されて、ターミナル31を介して外部からイグナイタ60へ給電されるものであってもよいし、あるいは一次コイル24へ制御信号を供給するイグナイタ60を点火コイル1の外部に設けて、ターミナル31を介して制御信号を一次コイル24へ供給してもよい。
【0050】
上述の構成を有する点火コイル1は、コネクタ部30のターミナル31を介して、イグナイタ60から出力される制御信号が一次コイル24へ供給されると、一次コイル24に入力された電圧に応じて二次コイル21に高電圧が発生する。この高電圧がダミーコイル22、第1ターミナル40、第2高圧ターミナル41、スプリング42を介して点火プラグに印加される。
【0051】
ここで、本発明の点火コイル1に係わるコイルの巻線の端末処理、特に外周側コイルとしての一次コイル24の巻き始め側および巻き終り側の巻線の端末処理について、以下図3および図4に従って説明する。
【0052】
まず、一次スプール23は、図2および図3に示すように、一次コイル24の巻線が外周に沿って巻回される円筒部23bと、巻線の崩れ防止のための鍔部23dとを含んで構成されている。
【0053】
鍔部23dは、円筒部23bの外周に沿って軸方向に巻回される一次コイル24の巻線が崩れることなく、円筒部23bの外周側に所望の巻き段数が形成されるように、円筒部23bの両軸端(詳しくは、巻線の軸方向巻き範囲の両端)に配設されている。
【0054】
また、この鍔部23dは、円筒部23の外周に沿って複数(図3では4個)の径方向に突出する係止部23d1、23d2で形成されている。これにより、鍔部23dとしての複数(図3では4個)の係止部23d1において、一次コイル24の巻線端部、特に巻き始め側の巻線の外部からの引き込み(詳しくは、後述する巻き始め側の巻線が巻きからめられる突起部23dpからの引き込み)が、図3に示すように、係止部23d1間から容易に行なうことができる。
【0055】
さらにまた、この鍔部23dには、一次コイル24の巻線端部、すなわち巻き始め側および巻き終り側の巻線を巻きからめる突起部23dpが設けられている。詳しくは、一次スプール23の両軸端側に設けられている鍔部23dのうち、いずれか一方の軸端側の鍔部(詳しくは、図3中に示す複数の係止部23d1)に、しかも、一次コイル24の巻き始め側、および巻き終り側の巻線がそれぞれ巻きからめられるように、例えば複数の係止部23d11〜23d14のうち、係止部23d11、23d13に設けられている。
【0056】
これにより、鍔部23dすなわち一次スプール23に一次コイル24の巻線端部を巻きからめることができる突起部23dpを設けるので、点火コイル1を構成する一次スプール23等の各部材を組付けてASSYとしての点火コイル1を形成する際、従来構成の点火コイルのようにスプール23に設けられたターミナル(以下、中間ターミナルと呼ぶ)に一次コイル24の巻き始め側および巻き終り側の巻線を溶接等の結線手段により接続させることなく、外部から給電されるコネクタ部30に設けられたターミナル31(以下、点火コイル1のASSY側のターミナルと呼ぶ)に直接接続することが可能である。
【0057】
したがって、従来構成のように中間ターミナルの部品増加を伴うことなく、巻線の端末処理が可能である。
【0058】
しかも、中間ターミナルに巻線を溶接等により結線する作業が不要となるので、点火コイル1の工程の簡素化が図れる。すなわち、点火コイル1の構成部品毎に組付けた後にASSY組付けをして点火コイル1を形成する際、一次コイル24の巻線端部がスプール23の突起部23dpに巻きからめられるだけで、例えばASSSY工程へ運搬中に一次スプール23に巻回された一次コイルの巻線が崩れて巻き乱れることはない。
【0059】
突起部23dpに巻きからめる巻き回数は、3/2回巻きが望ましい。なお、巻き始め側の巻線については、所望の巻き段数に巻回される外周側の巻線によって、その巻き始め側の巻線部分の外周側が巻回されるので、巻き初め位置の安定化の観点から、少なくとも1/4回巻きからめればよく、一方、巻き終り側の巻線については、最外周の巻回される巻線となるので、突起部23dpへ巻きからめる巻回状態の安定化の観点から、少なくとも1回巻きからめる必要がある。
【0060】
次に、一次スプール23、およびASSY側のターミナル31との組付関係に係わる巻線の端末処理の特徴を、以下説明する。
【0061】
図3に示すように、突起部23dpは、鍔部23d(詳しくは、係止部23d1)の外周側に形成されれいる。
【0062】
このため、巻き始め側および巻き終り側のそれぞれの巻線端部のターミナル31へ延ばす方向が、突起部23dpの軸部23dpjを中心として、図3に示すように、角度θの広い範囲で設定可能であるので、突起部23dpつまり一次スプール23に対して、ターミナル31の配置の自由度が向上できる。
【0063】
されに、突起部23dpは、径方向に突出する鍔部23dの外周側に形成されているので、少なくとも、一次コイル24の巻き始め側および巻き終り側の巻線部分は、点火コイル1の中心部すなわち二次コイル21から遠ざかるように配置される。すなわち、一次コイル24の巻き始め側および巻き終り側の巻線部分が、高電圧を発生する二次コイル21から遠ざけることができるので、耐電圧上、有利な一次コイル24の巻線配置を提供可能である。
【0064】
詳しくは、図1に示すように、ターミナル31を有する頭部11cが一次コイル24等を収容する筒部11bの上方に配置される点火コイル1の構造において、図4に示すように、突起部23dpの巻きからめられた巻き始め側および巻き終り側の巻線は、それぞれ、径方向外側に配置されたターミナル31の端部31aに向って延ばすようにすることで、耐電圧上有利な一次コイル24の巻線配置を確保するとともに、突起部23dpがターミナル31に近い側の鍔部23d(詳しくは、係止部23d2ではなく、係止部23d1)に形成されていることで、ターミナル31への巻線の結線作業の容易化が図れる。
【0065】
(第2の実施形態)
第2の実施形態としては、第1の実施形態で説明した一次コイル24の巻線端部を巻きからめる突起部23dpを有する一次スプール23に代えて、図5に示すように、一次コイル24の巻線端部を固定する巻線保持部23hを有する一次スプール23を備える点火コイル1の構成としてもよい。
【0066】
図5は、第2の実施形態の点火コイルであって、外周側コイルが巻回されている外周側スプールとターミナルの組付関係を示す模式的組立斜視図である。図6は、図5中の巻線保持部をV−V方向からみた断面図であって、巻線保持部の溝部に巻線が当接している状態を表わす説明図である。
【0067】
図5に示すように、一次スプール23の鍔部23dには、一次コイル24の巻き始め側および巻き終り側の巻線を、それぞれ固定する巻線保持部23hが形成されている。なお、ASSY側のターミナル31は、鍔部23dに設けられた巻線保持部23hの溝部23ha、23hb(図6参照)とともに、巻線保持部23hへターミナル31が嵌合固定することで、巻き始め側および巻き終り側の巻線を保持する。
【0068】
これにより、鍔部23dすなわち一次スプール23に一次コイル24の巻線端部を固定することができる巻線保持部23hを設けるので、点火コイル1を構成する一次スプール23等の各部材を組付けてASSYとしての点火コイル1を形成する際、従来構成の点火コイルのようにスプール23に設けられた中間ターミナルに一次コイル24の巻き始め側および巻き終り側の巻線を溶接等の結線手段により接続させることなく、ASSY側のターミナル31に直接接続することが可能である。
【0069】
上記巻線保持部23hへターミナル31を嵌合固定させる際、本発明の点火コイル1では、巻線端部を溝部23ha、23hbに当接させ、かつターミナル31を嵌合しながら、巻線の皮膜を削りとる皮膜除去片31cが設けられている。
【0070】
これにより、中間ターミナルの廃止ができるとともに、ASSY側のターミナル31自体を用いて、巻き終り側および巻き始め側の巻線をそれぞれ嵌合固定させ、かつ嵌合と同時に巻線の皮膜を剥がすことで、溶接等の結線装置が不要な、簡易な端末処理を提供できる。
【0071】
なお、巻線が当接する溝部23ha、23hbは、図5に示すように、巻線保持部23hの先端側を迂回した一続きのU字状の溝部で形成される。
【0072】
これにより、巻き終り側および巻き始め側の巻線、すなわち巻線端部をU字状の溝部23ha、23hbに沿わせるだけで、両側面の溝部23ha、23hbに当接した状態を容易に形成できるとともに、両側面の溝部23ha、23hbに当接する巻線に起因して、巻線端部を少なくとも2個所で、ターミナル31の嵌合と同時に巻線の皮膜を剥がすことができる。
【0073】
これにより、ターミナル31へ電気的に接続する巻線の表面積の拡大が図られるので、ターミナル31への巻線の端末処理が確実に行なうことができる。
【0074】
なお、この巻線保持部23hへ嵌合固定するターミナル31は、図5に示すように、プレス加工により形成されるものであって、皮膜除去片31cは、ターミナル31が巻線保持部hに嵌合する方向に向って、嵌合代が大きくなるように、内壁31bの一部を内部へ曲げることにより形成されている。
【0075】
これにより、皮膜除去片31cを有するターミナル31はプレス加工によって皮膜除去片31cを一体成形できる。さらに、ターミナル31が巻線保持部23hに嵌合する方向に向って嵌合代が大きくなるように内部へ曲げられるので、皮膜除去片31は、プレス加工されるターミナル31の材料の縦弾性係数に起因したばね作用によってばね接触する程度の曲げ状態で、巻線の皮膜の剥がしが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の点火コイルの概略構成を表す縦断面図である。
【図2】図1中のII線内部分を拡大した縦断面図である。
【図3】図1中の本発明の要部である外周側コイルが巻回されている外周側スプールを示す外観斜視図である。
【図4】図1中の点火コイルの頭部をIV−IV方向からみた横断面図である。
【図5】第2の実施形態の点火コイルであって、外周側コイルが巻回されている外周側スプールとターミナルの組付関係を示す模式的組立斜視図である。
【図6】図5中の巻線保持部をV−V方向からみた断面図であって、巻線保持部の溝部に巻線が当接している状態を表わす説明図である。
【符号の説明】
1 点火コイル
11 ハウジング(ケース)
12 中心コア部
13 コア本体
13a 軸端部
14、15 永久磁石
17 筒部材(緩衝部材)
19 キャップ
20 二次スプール(内周側スプール)
20a 底部
21 二次コイル(内周側コイル)
23 一次スプール(外周側スプール)
23b 円筒部
23d 鍔部
23d1、23d2 (鍔部として、複数の径方向に突出する)係止部
23dp 突起部
23h 巻線保持部
23ha、23hb 溝部
24 二次コイル(内周側コイル)
25 外周コア
26 エポキシ樹脂(樹脂絶縁材)
30 コネクタ部
31 ターミナル(ASSY側のターミナル)
31a 端部
31b 内壁(内壁部)
31c 皮膜除去片

Claims (5)

  1. 磁性材料からなる棒状の中心コアと、
    該中心コアの外周側に巻かれた内周側コイルと、
    前記中心コアと前記内周側コイルとの間に配され、前記内周側コイルの巻線が巻回される内周側スプールと、
    前記内周側コイルの外周側に巻かれた外周側コイルと、
    前記内周側コイルと前記外周側コイルとの間に配され、前記外周側コイルの巻線が巻回される外周側スプールと、
    外部から給電されるターミナルを有するコネクタとを備え、
    前記外周側スプールの両軸端側には、前記外周側コイルの巻線が軸方向に沿って巻回されるのを規制する鍔部が形成されるとともに、該鍔部には、前記ターミナルに接続する巻き終り側、および巻き始め側の前記外周側コイルの巻線が固定される巻線保持部が設けられており、
    前記巻線保持部は、前記巻線を前記ターミナルとともに保持する溝部を備えるとともに、該溝部に前記巻線を当接させ、かつ前記ターミナルを嵌合させることで、前記巻線の外周に形成された皮膜を削りとるものであり、
    かつ、前記巻線保持部の前記溝部は、前記巻線保持部の先端側を迂回して、両側面に形成されていることを特徴とする点火コイル。
  2. 前記ターミナルは、前記溝部に保持される前記巻線に対応する内壁部に、前記巻線と嵌合する皮膜除去片を備えていることを特徴とする請求項1に記載の点火コイル。
  3. 磁性材料からなる棒状の中心コアと、
    該中心コアの外周側に巻かれた内周側コイルと、
    前記中心コアと前記内周側コイルとの間に配され、前記内周側コイルの巻線が巻回される内周側スプールと、
    前記内周側コイルの外周側に巻かれた外周側コイルと、
    前記内周側コイルと前記外周側コイルとの間に配され、前記外周側コイルの巻線が巻回される外周側スプールと、
    外部から給電されるターミナルを有するコネクタとを備え、
    前記外周側スプールの両軸端側には、前記外周側コイルの巻線が軸方向に沿って巻回されるのを規制する鍔部が形成されるとともに、該鍔部には、前記ターミナルに接続する巻き終り側、および巻き始め側の前記外周側コイルの巻線が固定される巻線保持部が設けられており、
    前記巻線保持部は、前記巻線を前記ターミナルとともに保持する溝部を備えるとともに、該溝部に前記巻線を当接させ、かつ前記ターミナルを嵌合させることで、前記巻線の外周に形成された皮膜を削りとるものであり、
    かつ、前記ターミナルは、前記溝部に保持される前記巻線に対応する内壁部に、前記巻線と嵌合する皮膜除去片を備えていることを特徴とする点火コイル。
  4. 前記ターミナルは、プレス加工により形成されるものであって、前記皮膜除去片は、前記ターミナルが前記巻線保持部に嵌合する方向に向って、嵌合代が大きくなるように、前記内壁の一部を内部へ曲げることにより形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の点火コイル。
  5. 前記巻線保持部の前記溝部は、前記巻線保持部の先端側を迂回して、両側面に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の点火コイル。
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