JP3978860B2 - プリント配線板用ガラス織布基材及びプリント配線板用積層板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子機器、電気機器、コンピューター、通信機器等を用いられるプリント配線板およびその強化材であるガラス織布基材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維は、その優れた耐熱性、寸法安定性、電気特性等の理由からエレクトロニクス分野で広く使われており、特に、ガラス原糸を製織しているガラス織布は、その優れた特性からプリント配線板用素材としての需要が多い。近年、プリント配線板に、IC等を自動挿入する実装方式が増えている。この自動挿入では、部品を実装する位置を正確に決める必要がある。一方プリント配線板の製造工程では、ソルダーレジストの乾燥、ヒュージング等の加熱などを伴い、プリント配線板は過酷な条件にさらされている。この為、プリント配線板に対し、熱による寸法変化を生じ部品を実装する位置がずれることが問題となっている。特に、たて、よこについて寸法変化が異なる場合、プリント配線板の加工工程において、たて、よこに異方性が生じてしまう。従って、プリント配線板の寸法安定性が、現在のレベルでは不満足となり、寸法変化に対し異方性のないプリント配線板が必要になってきた。
【0003】
このような問題を解決するために、ガラス繊維による一方向引揃え基材(以下UD材と称する)を強化材とするプリント配線板が提案されている。例えば、特開平1−216829号、特開平1−216830号、特開平4−270657号、特公平7−90606号、特開平8−39686号、特開平8−52183号などにUD材を用いたプリント配線板の製造法や製造装置が開示されている。しかし、UD材を強化材として用いるプリント配線板の製造は、従来の製織工程、ワニス含浸工程、プレス工程を踏まずに生産できることが特徴であるが、独自の製造装置を造らねばならず、新たな設備投資を必要とする。また、技術的にも未解決の問題があり、まだ試作段階の状況にある。そこで、現在一般に用いられているプリント配線板の製造法を用いることができ、寸法安定性に優れたプリント配線板およびその強化材である一方向特性を有するガラス織布基材が特願平10−42947号により提案された。しかし、この方法によるガラス織布基材の断面構造は、経糸と緯糸からなる2層構造で構成されており、目的とする寸法変化を得るためには、少なくとも2枚のガラス織布基材を積層し、断面が3層以上の構造にする必要があり、プレス成型時において手間が掛かり、且つコストアップの要因となる。
【0004】
【開発が解決しようとする課題】
本発明は、現在一般に用いられているプリント配線板の製造法を用いることができ、一枚の積層によって、プレス成型時の手間を最小限にでき、かつ、材料コストをダウンでき、寸法安定性に優れたプリント配線板およびその強化材である一方向特性を有するガラス織布基材の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために成されたものであり、本発明のガラス織布基材は、経糸方向に少なくとも10mm以上、緯糸方向に少なくとも10mm以上の範囲において、経糸が緯糸と上下に交差せず、かつこの範囲において、緯糸が1本おきに交互に配置された経糸に挟まれた断面構造の状態にあることを特徴とするプリント配線板用ガラス織布基材である。また、本発明のガラス織布基材は、好ましくは両耳部及び必要により全面において間欠的に平織り組織、綾織り組織、朱子織り組織から選ばれた織り組織が存在することを特徴とするプリント配線板用ガラス織布基材である。さらに、本発明のガラス織布基材は、好ましくは経糸と緯糸の25mm当たりのガラス糸量の比率(経糸本数×経糸の番手/緯糸本数×緯糸の番手)が0.7〜1.4の範囲にあることを特徴とするプリント配線板用ガラス織布基材である。また、本発明には前記したガラス織布基材に合成樹脂を含浸塗布させたプリプレグおよびガラス織布基材を強化材とするプリント配線板用積層板も含まれる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1のガラス織布基材は、経糸方向に少なくとも10mm以上、緯糸方向に少なくとも10mm以上の範囲にわたって経糸が緯糸と上下に交差せず、更に緯糸が1本おきに上下に配置された経糸の間に挟まれ、その断面が恰も3層構造を有していることを特徴としている。図1に本発明のガラス織布基材の1例を示す。図1において1は本発明のガラス織布基材を示し、2が緯糸を3が経糸を示す。Xは緯糸方向を示し、Yは経糸方向を示す。図1においてa、bの長さが10mm以上であるのが請求項1のガラス織布基材である。図2に図1に示したX方向の断面、図3に図1に示したY方向の断面を示す。図2において11は本発明のガラス織布基材のX方向断面を示し、22が緯糸を示し、33が経糸を示す。図3において111は本発明のガラス織布基材のY方向断面を示し、222が緯糸を333が経糸を示す。通常平織りの場合は、図4に示すように経糸7、緯糸6が1本おきに上下に交差して織り組織を形成しているが、本発明の場合は、この範囲では少なくとも10mm以上の間隔をおいて経糸が緯糸と上下に交差している。プリント配線板用の強化材に用いられる目付け重量が30〜200g/m2程度の代表的なガラス織布の25mm当たりの打ち込み本数は30〜60本程度であるから、これを本発明のガラス織布に適用すると、経糸は約8〜15本単位以上で緯糸と上下に交差することになる。図1において円に囲まれた部分では、一方向に引揃えられた緯糸と、その緯糸に対して直 交し一方向に引揃えられた経糸が重なっている状態とも見ることができる。従って、この部分に限っていえばプリント配線板用の強化材として最も望ましい状態にあるといえる。
【0007】
10mm以上に限定した理由は、CSPやBGA、PGAにみられる半導体パッケージ用チップやICカード等に搭載される基板用のチップが10mm以上であるためである。チップをこの部分に合わせて実装するとUD材による基板に近い効果を得ることができる。本発明のガラス織布基材の織り組織を形成する上限は、プレス機におけるプレス有効面積も考慮にいれる必要があり、実際上は600〜650mm程度が上限で、好ましくは10〜400mm程度の範囲が望ましい。最近のプリント配線板は、小形化しており25mm角から50mm角程度の大きさのものが増えている。また、織り組織の単位としては正方形である必要はなく、長方形であっても良い。即ち、図1においてa、bの値が異なっても良い。
【0008】
本発明の請求項2のガラス織布基材は、請求項1のガラス織布基材において両耳部に平織り、綾織り、朱子織りの何れかの織り組織を有するものである。請求項1のガラス織布基材は、極端な経畦織りとも考えられ、織り組織としてはルーズな織り組織であるため、取扱い性が必ずしも良くない。この取扱い性を改良するために図1に示すように両端部に耳組織部4が設けられている。耳組織としては、平織り、綾織り、朱子織りの何れかが可能であるが組織が一番しっかりしている点では平織りが望ましい。平織りの中には平織りの変わり織り組織とされる斜子織り等も含まれる。耳組織部の幅は少なくとも2mm以上は必要である。本発明の請求項3、請求項4のガラス織布基材は、請求項1、請求項2のガラス織布基材の両耳部を除く全面において、間欠的に平織り、綾織り、朱子織りの何れかの目止め用の織り組織を有するものである。請求項1、請求項2のガラス織布基材の両耳部を除く全面においては、織り組織としてはルーズな織り組織であるため、堅型乾燥炉を伴ったワニス含浸工程によりプリプレグを作成した場合、織物の製織幅が広いものになるに従い、含浸した樹脂の重みで塗工進行方向と反対方向に緯糸のたるみが発生し易く、作成されたプリプレグの外観が必ずしも良くない。このプリプレグ作成時におけるたるみの発生を改良するために図1に示すような一定の間隔あるいは間欠的に幅の極狭い目止め用の織り組織が設けられている。目止め用の織り組織部44の織り組織としては、平織り、綾織り、朱子織りの何れかが可能であるが組織が一番しっかりしている点では平織りが望ましい。平織りの中には平織りの変わり組織とされる斜子織り等も含まれる。織り組織部の幅については、2mm〜20mmの範囲が好ましい。本発明の請求項5のガラス織布基材は、経糸と緯糸の25mm当たりのガラス糸量の比率(経糸本数×経糸の番手/緯糸本数×緯糸の番手)が0.7〜1.4の範囲にあることを特徴とするものである。経糸と緯糸の25mm当たりのガラス糸量の比率(経糸本数×経糸の番手/緯糸本数×緯糸の番手)が0.7以下では、経糸のガラス糸量が少なくなることから、シランカップリング剤の塗布工程或いはワニス含浸工程においてたて方向にかかる張力に耐えられず切断を引き起こす問題があり、1.4以上では、緯糸の密度が粗くなることから、ワニス含浸工程において製造したプリプレグにピンホールが生じる問題がある。プリント配線板用ガラス織布基材として一般に使用されている7628タイプの場合、25mm当たりの経糸、緯糸の打ち込み本数は44本と32本であり、経/緯比が1.4である。従って、7628タイプの織布を織っている織機を緯糸打込み用ギアと経糸ビームをそのまま転用でき、本発明のガラス織布基材を安価に製造することができる。
【0009】
しかし、本発明の効果である寸法安定性の良いプリント配線板を得るためには、ガラス糸量の比率が0.8〜1.2の範囲であることが望ましく、更に、経方向、緯方向の寸法変化率の差を小さくするためには、0.9〜1.1の範囲にするのが好ましい。また、経糸と緯糸の番手を変えて打込む場合も、ガラス糸量の比率を同様に0.9〜1.1の範囲にすることが好ましい。本発明のガラス織布基材に用いられるガラス繊維としては、プリント配線用板の強化材として従来より使用されているEガラス、Sガラス、Dガラス、Qガラス等のSiO2
を主成分とするガラス繊維を用いることができる。フィラメント径としては3〜13μmの範囲のガラス繊維を用いることができる。3μmより小さい場合は、製織性などの作業性が悪く、13μmより大きい場合は、基板にした場合のドリル加工性が低下する。一般的には、5〜9μmの範囲が望ましい。番手としては20〜25,000デニールのガラス繊維を使用できる。より太い糸を用いた場合は、製織効率が上がるので経済的にはメリットがあるが、その反面、耳止めするための端部が粗い組織となるため、広い幅の耳組織が必要となる。従って、2mm程度で耳止めのできる範囲の糸の太さが望ましい。耳止めの効果を得るためには幅方向に少なくとも3回以上緯糸が織り込まれていることが必要である。糸のより数としては特に制限はないがより数の小さい方が望ましい。合撚糸でも使用可能である。
【0010】
本発明に用いられるガラス繊維の集束には、公知の澱粉系の集束剤を使用することができる。集束したガラス繊維ストランドは加撚しヤーンとし或いは無撚りのまま製織する。この場合のガラス織布基材は、常法により加熱脱油され、その後シランカップリング剤により表面処理が行われる。シランカップリング剤としては、従来公知のものが適宜使用できる。従来公知のシランカップリング剤として代表的なものは、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。シランカップリング剤は通常水溶液、またはアルコール類、ケトン類、グリコール類、エーテル類、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒の溶液、あるいは水とこれら有機溶媒との混合溶媒の溶液として0.01〜5重量%の濃度で使用される。ガラス繊維の表面に付着させるシランカップリング剤の量(固形分基準)としては、0.001〜0.5重量%の範囲が好ましく、更に好ましくは0.01〜0.2重量%の範囲である。
【0011】
本発明に使用されるガラス繊維として、澱粉系の集束剤を使わずに合成樹脂系の集束剤を用いることもできる。例えばアミン付加やエチレンオキサイド付加によりエポキシ樹脂を変性したもの、ウレタン樹脂を変性したものなどを主成分とし、シランカップリング剤も集束剤中に配合する。この場合は、集束剤を除去する必要がなく、製織されたガラス織布基材は、そのままプリプレグ工程に投入することができる。本発明のガラス織布基材は、厚さは0.03〜0.4mmの範囲であれば良く、質量としては25〜400g/m2の範囲であれば良い。本発明のガラス織布基材を製織する織機としては、一般に、ガラス織布の製織に使用されている織機であれば特に制限がなく、エアジェット織機やシャットル織機、レピア織機等が使用できる。耳組織を別に設ける場合は、耳の部分と地の部分の組織の違いによる経糸のテンションむらを吸収するために、テンションコントローラを設置したり、耳の部分用のビームと地の部分用のビームを別に設置しそれぞれのテンションを制御する方法などの手段を講じる必要がある。また、緯糸のたるみを防ぐために両耳部分を除く織布全面に目止め用の織り組織を別に設ける場合についても、耳組織を別に設ける場合と同様に前記方法による手段を講じる必要がある。本発明の請求項6のプリプレグは、本発明のガラス織布基材にエポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの合成樹脂を含浸させて作成される。合成樹脂としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を使用できるが、含浸性の点を考慮すると熱硬化性樹脂が望ましい。本発明に用いられる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の単独、または混合樹脂が用いられる。これらの熱硬化性樹脂は、溶媒タイプでも無溶媒タイプでもよい。また、本発明に用いられるエポキシ樹脂としては、従来公知のものが適宜使用できる。例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、臭素化エポキシ樹脂、ノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0012】
これらエポキシ樹脂には、通常、硬化剤(促進剤)が併用され、これらの硬化剤(促進剤)としては、アミン系、酸無水物系、エポキシ系等の硬化剤(促進剤)を挙げることができる。アミン系の硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミノ、テトラエチレンペンタミン、脂肪族ポリエーテルトリアミン、ジシアンジアミド、4、4’−メチレンジアニリン(MDA)、m−フェニレンジアミン(MPDA)、4、4’−ジアミノジフェニルスルフォン、2、6−ジアミノピリジン(DAP)、33.3%MPDA−33.3%MDA−33.3%イソプロピルMDPA、40%MDA−60%ジエチルMDA、40%MPDA−60%MDA、アミノポリアミド、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2、4、6−トリス(ジメチルアミノエチル)フェノール等が挙げられる。また、酸無水物系の硬化剤としては、フタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ナディクメチルアンハイドライド、ドデシルコハク酸無水物、クロレンディクアンハイドライド、トリメリト酸無水物、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、3、3’、4、4’−ベンゾフェノン−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0013】
さらにエポキシ系の硬化剤としては、ブチルグリシジルエーテル、ヘプチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。本発明に用いられるポリイミド樹脂としては、従来公知のものが適宜使用できる。代表的なものとしては、ケルイミド[ローヌプーラン(株)製]、
キネル[デュポン(株)製] 、カプトン[デュポン(株)製] 、BTレジン[三菱ガス化学(株)製]等が挙げられる。本発明に用いられるフェノール樹脂としては、従来公知のものが適宜使用できる。代表的なものとしては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、炭化水素変性フェノール樹脂、シリコーン樹脂変性フェノール樹脂、エポキシ樹脂変性フェノール樹脂等が挙げられる。ガラス織布基材に樹脂を含浸させる方法は、常法により行い樹脂分は20〜70%の範囲が望ましい。本発明の請求項7の積層板は本発明のガラス織布基材を強化材とするものであり、表面の少なくとも一方に、銅、金、銀等からなる導電性金属箔層を有していてもよい。このような導電性金属箔層は、プレス法等の常法により形成することができる。又、本発明の積層板は、内層配線を備えたものであってもよい。これら導電性金属箔層を有する積層板は、プリント配線板等の材料として好適である。
【0014】
本発明の積層板は、一方向性のガラス織布基材を用いているため、経糸と緯糸が上下に交差しない部分についていえば、UDシートを強化材として用いたのと同様な効果を有する。従って、通常の平織り組織のように糸が一本おきに上下することによる糸に対する拘束効果が少ないため、樹脂の含浸性が改善され、その結果、耐熱性や寸法安定性の良い積層板が得られる。また、UDシートの場合と同様に、表面平滑性の良い積層板が得られる。寸法安定性については、一方向材による効果と含浸性が改善されることによる効果とが重なって、寸法安定性の良好な積層板が得られる。さらには、本発明のガラス織布基材は、耳組織及び目止め用組織のないものに関しては、経糸と緯糸が上下に交差する回数が少ないため打込み本数を通常の平織り組織の場合より上げることが可能であり、組織の密な織布基材を得ることができる。また、耳組織及び目止め用組織のあるものに関しては、経糸に細番手のヤーンを使用することにより、組織の密な織布基材を得ることができる。図4に通常の平織り組織のガラス織布を示してあるが、8は経糸と緯糸が重なっている部分であり、9は経糸と緯糸に囲まれた空隙部分である。本発明のガラス織布基材では、この空壁部分を小さくすることができるため、積層板にレーザー光で穴明けする際にレーザー光のエネルギー損失を少なくすることができる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。なお以下の文章の%及び部は、特記しない限り重量%及び重量部をそれぞれ意味する。
<実施例1>
(1)ガラス織布基材の製造
(1.1)ガラス織布基材の製織
ガラス織布基材として、
経糸 ECE225 1/0 ガラス糸
緯糸 ECE225 1/0 ガラス糸
経糸打込み本数 59本/25mm
緯糸打込み本数 59本/25mm
質量 105g/m2
厚み 0.10mm
経糸の緯糸との非交差部分の長さ
たて方向(図1のおけるb) 350mm
よこ方向(図1におけるa) 350mm
耳部の織り組織は平織りで耳幅は5mm
の条件で製織しガラス織布基材を得た。
【0016】
(1.2)ガラス織布基材の表面処理
シランカップリング剤としてN−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩[東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製;SZ−6032]を用い、このシランカップリング剤を0.5%(固形分)、酢酸3.0%含有する水溶液を得た後、この水溶液に若干のメタノールを加えシランカップリング剤を含有する処理液を調整した。次に、(1.1)で得られたガラス織布基材を加熱脱油した後、上記処理液に浸漬し、マングルを用いてピックアップ30%となるように絞液した後、110℃で加熱乾燥して、シランカップリング剤を表面に付着させたガラス織布を得た。
【0017】
(1.3)プリプレグの製造
上記ガラス織布基材を、下記組成のエポキシ樹脂ワニス(G−10処方)に浸漬し、予備乾燥して樹脂分50%のプリプレグとした。
[エポキシ樹脂ワニスの組成]
・エピコート1001・・・・・・80部
[油化シェルエポキシ(株)製]
・エピコート154・・・・・・・20部
[油化シェルエポキシ(株)製]
・ジシアンジアミド・・・・・・・・4部
・ベンジルジメチルアミン・・・0.2部
・ジメチルフォルムアミド ・・・・30部
(1.4)積層板の製造
上記プリプレグを1枚、さらにその上下に厚さ18μmの銅箔を重ね、定法により加熱成形し厚さ0.1mmの銅箔張り積層板を得た。得られた積層板は、織布基材の交差部分が入らないように300mm×300mmにカットした。
【0018】
<実施例2>
ガラス織布基材として、
経糸 ECE225 1/0 ガラス糸
緯糸 ECE110 1/0 ガラス糸
経糸打込み本数 53本/25mm
緯糸打込み本数 30本/25mm
質量 105g/m2
厚み 0.1mm
経糸の緯糸との非交差部分の長さ
たて方向(図1のおけるb) 350mm
よこ方向(図1におけるa) 350mm
耳部の織り組織は平織りで耳幅は5mm
の条件で製織されたガラス織物基材を用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂分50%のプリプレグを得た。このプリプレグを1枚と厚さ18μmの銅箔を両面に積層し、厚さ0.1mmの銅箔張り積層板を得た。この積層板を300mm×300mmの大きさに切断した。
【0019】
<実施例3>
ガラス織布基材として、
経糸 ECD450 1/0 ガラス糸
緯糸 ECD450 1/0 ガラス糸
経糸打込み本数 53本/25mm
緯糸打込み本数 53本/25mm
質量 48g/m2
厚み 0.06mm
経糸の緯糸との非交差部分の長さ
たて方向(図1のおけるb) 350mm
よこ方向(図1におけるa) 350mm
耳部の織り組織は平織りで耳幅は5mm
の条件で製織されたガラス織物基材を用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂分60%のプリプレグを得た。このプリプレグを1枚と厚さ18μmの銅箔を両面に積層し、厚さ0.06mmの銅箔張り積層板を得た。この積層板を300mm×300mmの大きさに切断した。
【0020】
<実施例4>
ガラス織布基材として、
経糸 ECD450 1/0 ガラス糸
緯糸 ECE225 1/0 ガラス糸
経糸打込み本数 53本/25mm
緯糸打込み本数 27本/25mm
質量 48g/m2
厚み 0.05mm
経糸の緯糸との非交差部分の長さ
たて方向(図1のおけるb) 350mm
よこ方向(図1におけるa) 350mm
耳部の織り組織は平織りで耳幅は5mm
の条件で製織されたガラス織物基材を用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂分60%のプリプレグを得た。このプリプレグを1枚と厚さ18μmの銅箔を両面に積層し、厚さ0.06mmの銅箔張り積層板を得た。この積層板を300mm×300mmに切断した。
【0021】
<比較例1>
ガラス織布基材として、WEA116E[日東紡績(株)製]を用いた。
使用糸 ECE225 1/0 ガラス糸
経糸打込み本数 60本/25mm
緯糸打込み本数 58本/25mm
質量 105g/m2
厚み 0.1mm
の条件により平織製織されたガラス織布基材を用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂分50%のプリプレグを得た。このプリプレグ1枚を用い、厚さ18μmの銅箔を両面に重ね、厚さ0.1mmの銅箔張り積層板を得た。
【0022】
<比較例2>
ガラス織布基材として、WEA05E[日東紡績(株)製]を用いた。
使用糸 ECD450 1/0 ガラス糸
経糸打込み本数 60本/25mm
緯糸打込み本数 46本/25mm
質量 48g/m2
厚み 0.05mm
の条件により平織製織されたガラス織布基材を用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂分60%のプリプレグを得た。このプリプレグ1枚を用い、厚さ18μmの銅箔を両面に重ね、厚さ0.1mmの銅箔張り積層板を得た。
【0023】
実施例1、2、3、4および比較例1、2で得られた銅箔張り積層板について寸法変化率を測定した。測定結果を表1に示す。
<寸法変化率測定方法>
銅箔張り積層板にエッチング処理を施して、それぞれの積層板の両面にある銅箔を取り除き、その後170℃で30分キュア後に寸法変化を測定した。尚、寸法変化率はもとの銅箔張り積層板を基準として算出し求めた。その結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1から明らかなように、実施例1及び実施例2、実施例3及び実施例4で得られた各ガラス繊維強化エポキシ樹脂積層板においては、比較例1及び比較例2で得られたガラス繊維強化エポキシ樹脂積層板よりも寸法安定性に優れ、又、たて方向よこ方向に異方性がないことが分かる。
【0025】
以上説明したように、本発明のガラス織布基材を用いた積層板は、寸法安定性に優れていることから、本発明のガラス織布基材を用いることにより、IC等を自動挿入する実装方式に対応できるプリント配線板を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガラス織布基材の一例を示す平面図
【図2】本発明のガラス織布基材のX方向の断面図
【図3】本発明のガラス織布基材のY方向の断面図
【図4】従来のガラス織布基材の拡大平面図
【符号の説明】
1、11、111.本発明のガラス織布基材
2、22、222.緯糸
3、33、333.経糸
4. 耳組織部
44.目止め用織り組織部
5. 従来のガラス織布基材
6. 緯糸
7. 経糸
8. 経糸と緯糸の重なり部
9. 空隙部
Claims (7)
- ガラス繊維糸を経糸及び緯糸として製織してなるガラス織布基材であって、
前記ガラス繊維糸の番手は20〜25,000デニールであり、
前記ガラス織布基材の経糸方向及び緯糸方向の長さが各々10mmの範囲において、下記(a)及び(b)を満たす織り組織を有することを特徴とするプリント配線板用ガラス織布基材。
(a)経糸が緯糸と上下に交差していないこと。
(b)経糸が1本おきに緯糸の上下に配置されていること。 - 前記ガラス織布基材の緯糸方向の両端の両耳部に、平織り組織、綾織り組織、朱子織り組織から選ばれた何れかの織り組織からなる幅2mm以上の耳組織部を有する請求項1に記載のプリント配線板用ガラス織布基材。
- 前記両耳部を除く前記ガラス織布基材面に、平織り組織、綾織り組織、朱子織り組織から選ばれた何れかの織り組織であり、前記ガラス織布基材の経糸方向に延在し、幅が2〜20mmである目止め用の織り組織部を有する請求項2に記載のプリント配線板用ガラス織布基材。
- 前記両耳部を除く前記ガラス織布基材面に、平織り組織、綾織り組織、朱子織り組織から選ばれた何れかの織り組織であり、前記ガラス織布基材の緯糸方向に延在し、幅が2〜20mmである目止め用の織り組織部を有する請求項3に記載のプリント配線板用ガラス織布基材。
- 前記経糸と前記緯糸の25mm当たりのガラス糸量の比率、すなわち(25mm当たりの経糸本数×経糸の番手)/(25mm当たりの緯糸本数×緯糸の番手)が、0.7〜1.4である請求項1から請求項4の何れか一項目に記載のプリント配線板用ガラス織布基材。
- 請求項1から請求項5の何れか一項に記載のガラス織布基材に合成樹脂を含浸塗布させたプリント配線板用プリプレグ。
- 請求項1から請求項5の何れか一項に記載のガラス織布基材を強化材とするプリント配線板用積層板。
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