JP3975417B2 - 揚げ物用衣材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フライ、から揚げ、天ぷらなど揚げ物用衣材に関し、揚げ物を調理した際に種と称される畜肉類、魚介類、野菜類コロッケ等の被揚げ物と衣との結着がきわめて良好で、食感面でも優れている揚げ物用衣材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、揚げ物用衣材としては、グルテンの少ない小麦粉を主体とし、食感を改善する目的で、各種の蛋白質類、澱粉質類、乳化剤、卵及び重曹等を添加し、また必要に応じて適当量の水を加えてバッターとしている。
しかし小麦粉を主体とした従来の衣材では、調理した場合に、種と衣との結着性が悪く、剥がれやすいことにより、得られた揚げ物は商品として見た目が悪く、商品価値を著しく損なう等の問題が生じていた。
また揚げ物は、食感面においてはサクッとしたクリスピーな食感が好まれ、このクリスピー感を経時的に保つことが商業的には望まれているが、小麦粉主体のバッター粉ではべとつき等の欠点が生じ、十分なクリスピー感が得られなかった。
【0003】
これらの欠点を解決するために従来より種々の技術が提案されている。例えば、α化もち米粉を用いてさっぱりとした食感とし、かつバッター液の粘度を安定化する方法(特公平4−49386号)、生損傷澱粉を用いてさっぱりとしたフライを作成する方法(特公平4−49387号)、α化米粉とロースト小麦粉を用いてバッター液の粘度安定性とカリッとした食感を得る方法(特公平4−11858号)、澱粉に食用蛋白と食用油脂を混合し加水して乾燥させた食品素材を小麦粉に10〜70重量部加えてバッターとして、種と衣の結着性と食感を改良する方法(特開平1−320962号)等が知られている。
【0004】
一方、小麦粉を用いない澱粉ベースのバッターとしては、40重量%濃度のスラリー粘度が200cps 以上である油脂加工澱粉を用いる方法(特公平5−21542号)や、歩留まりを向上させるために油脂加工澱粉とα化澱粉、α化穀粉を添加した方法(特開昭62−143663号)や、油脂加工澱粉α化品を用いた方法(特開昭62−195259号)等が知られている。
【0005】
さらにはバッターミックスの溶解性や風味、パンク耐性改善を目的として穀粉に油脂30〜70%及び糖類、乳化剤を加えて100〜200℃で焙焼したバッター粉を用いる方法(特開平9−84541号)などがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこれらの技術によってもそれぞれ一長一短があり、種物に特有の結着性の問題を改善すること、食感においてソフトでクリスピーな食感を与えることの両方を満足させ得るものではなく、昨今において求められる多様化した食感に対応することができなかった。
一方、ハイアミロース澱粉とウルチ種澱粉を混合した油脂コーティング澱粉を用いる方法(特開平8−173073号)は、非常に有効であるが残念ながらややコストが高い等のデメリットがあった。
【0007】
本発明は、以上のような従来技術における問題点を解決し打ち粉、バッター液として揚げ物調理した場合、種と衣の結着性が良好で、しかもソフトでクリスピーな食感を呈し、比較的安価で性能の優れた揚げ物用衣材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を解決するために鋭意検討を重ねた結果、衣材として所定の特性を備えた油脂コーティング澱粉を用いることで種と衣との結着性が良好で、ソフトでクリスピーな食感を呈することを知得して本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の揚げ物用衣材は、40重量%濃度に加水調製した場合、スラリーとならず、半固形状のペースト状態を呈し、その表面圧縮応力が20〜80g/cm2 であり、かつ170℃の油中での水分蒸散速度が0.12〜0.18%/sec となる特性を有する油脂コーティング澱粉を含むことを特徴とするものである。
【0009】
本発明における油脂コーティング澱粉とは、単に機械的に微量の油脂を澱粉と混合した油脂加工澱粉と異なり、澱粉を気流中にて均一分散させた状態で、油脂をスプレー噴霧させることで、澱粉へせん断応力を与えることなく表面に吸着させたのち加熱熟成させることで澱粉表面を油脂で被覆コーティング加工させたものである。なお、原料澱粉に対する食用油脂の添加量は、0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部である。
【0010】
さらに所定の表面圧縮応力と水分蒸散速度を得るためには、原料澱粉として、コーンスターチ、小麦澱粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘薯澱粉などの澱粉が使用できるが、そのうちタピオカ、馬鈴薯、甘薯、緑豆などの地下澱粉を50%以上含むものが望ましく、更には、これらの澱粉は架橋されていることが好ましい。
【0011】
尚、本発明における表面圧縮応力、油中水分蒸散速度は以下の方法に従って測定される。
表面圧縮応力:
40重量%濃度に加水調製した澱粉ペーストを円筒(直径3.5cm−高さ1.0cm)に入れ、レオメーター(FUDOU RHEOMETER;不動工業(株)製)で測定する。
【0012】
油中水分蒸散速度:
40重量%濃度に加水調製した澱粉ペースト約40gをミニフライパン(直径9.6cm)に採り、170℃の油脂中に投入した後、所定時間(30秒、60秒、90秒、120秒)経過してから引き上げて、各々の油中処理後の澱粉ペーストの水分量を測定し、単位時間当たりの水分変化率を求め、それを水分蒸散速度(%/秒)とした。
【0013】
揚げ物用の衣材に望まれるのは、種物との結着性が良く、揚げた後にサクッとしたクリスピー感と共にソフトな食感を与え得る機能である。本発明における油脂コーティング澱粉は、40重量%濃度に加水調製した澱粉の表面圧縮応力が20〜80g/cm2 で、通常バッターとして使用する1.5倍加水程度の加水量では半固形状態となる程に吸水性が高まっている。
【0014】
こうした吸水性の高まった油脂コーティング澱粉をバッター粉に配合させることでクリスピーな食感を呈すことができる。表面圧縮応力が20g/cm2 以下の油脂コーティング澱粉では吸水性が低すぎるためにクリスピーな食感が得られず、80g/cm2 以上では吸水性が高すぎるためにバッターがうまく種に乗らず不均一な衣量の揚げ物となってしまう等の欠点がある。
【0015】
一方で本発明の油脂コーティング澱粉は、このように吸水性は高いものの、170〜180℃油中においては、適度に油中水分蒸散速度が速く水抜けが良好である。
しかし油脂コーティング澱粉であっても水分蒸散速度が速すぎたり(0.18%/秒以上)、遅すぎたりする場合(0.12%/秒以下)は、硬い衣食感を与えたり、逆にヌメリ食感が感じられる結果となる。
【0016】
すなわち、適度な水分蒸散速度(0.12〜0.18%/秒)を有する油脂コーティング澱粉をバッターとして用いることで、種物及びバッター液中の余分な水分が衣と種の間に残らないために種と衣の結着性が向上する。
したがって、高吸水性を持ちかつ適度な水分蒸散速度を有する油脂コーティング澱粉を揚げ物用衣材として用いることで、種と衣の結着が良好でかつソフトでクリスピーな食感の揚げ物を得ることができる。
【0017】
本発明における油脂コーティングに使用される食用油脂としては、あまに油、桐油、サフラワー油、かや油、くるみ油、けし油、ひまわり油、綿実油、なたね油、大豆油、からし油、カポック油、米糠油、ごま油、とうもろこし油、落花生油、オリーブ油、つばき油、茶油、ひまし油、やし油、パーム油などの植物油脂や、牛脂、魚油、鯨油、豚油、羊油などの動物油脂が挙げられる。さらに、これらの原料をエステル交換したものや、硬化油、分別油を用いることも可能である。
【0018】
また、本発明の油脂コーティング澱粉は揚げ物用衣材として、から揚げ、天ぷら、豚カツ、メンチカツ、クリームコロッケ、フリッターなどで打ち粉やまぶし粉、バッター液として使用でき、さらに中種によっては所定の油脂コーティング澱粉単独のみならず必要に応じて、通常揚げ物食品の衣材に使用されている材料を用いることができる。具体的には、小麦粉、コーンフラワー、米粉、α化穀粉などの穀粉、前述の地下澱粉以外の澱粉、タマリンド種子ガム、キサンタンガム、グァーガム、カラギーナンなどの天然ガム、ベーキングパウダー、重炭酸ソーダなどの膨張剤、大豆蛋白、卵白、卵黄、カゼインなどの蛋白質、澱粉分解物、還元澱粉分解物などのデキストリン、大豆油、マーガリンなどの油脂類、レシチン、シュガーエステルなどの乳化剤、βカロチン、エンチイエローなどの色素、みりん、醤油、グルタミン酸ソーダ、核酸系の調味料などが挙げられ、これらは必要に応じて適宜用いることができる。その場合も本発明の油脂コーティング澱粉の効果が減少することはない。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの例に限られるものではない。
【0020】
<油脂コーティング澱粉の調製>
表1に示す条件で澱粉を流動層乾燥装置を用いて常温下にて均一分散させた状態で食用油脂をスプレー噴霧し5分混合した後、ビニール袋内に詰めて恒温室内で60℃で7日間、加熱熟成して油脂コーティング澱粉を得た(試料No1〜6)。これら油脂コーティング澱粉と市販の天ぷら用小麦粉(試料No7)のそれぞれについて表面圧縮応力と水分蒸散速度を測定した結果を表1に記載した。
【0021】
<機能試験>
表1における試料No1〜6の原料澱粉とNo7の小麦粉にそれぞれ2倍量の水を添加、混合してバッター液を調製した。
このバッター液を冷凍豚肉に均一に付けた後、パン粉付けし180℃に加熱したサラダ油中にて4分フライして豚カツを作成した。
得られた豚カツについて種と衣の結着性、食感を調べた。
【0022】
結着性の評価については大きさのほぼ等しい豚カツ10点を作成し、フライ後10分経過後にカットしてそれぞれの断面の結着程度を5段階に分けてその総合点で評価した。
5:全面が結着している。
4:約1/6が剥がれている。
3:約1/3が剥がれている。
2:約1/2が剥がれている。
1:1/2以上剥がれている。
【0023】
また食感の評価は専門パネラー10名による試食評価で行い、5段階評価の総合点でつけた。
5:ソフトでクリスピー。
4:ややソフトでクリスピー。
3:かわらない。
2:やや柔らかいまたはやや硬い。
1:柔らかいまたは硬い。
【0024】
総合評価は、結着性の評価点と食感の評価点の合計点で判断した。
○○○:96点以上
○○ :90〜95点
○ :80〜89点
△ :60〜79点
× :40〜59点
×× :39点以下
その結果を表2に示す。
【0024】
表1
【0025】
表2
【0026】
【発明の効果】
以上の結果より、吸水性が高く特定の水分蒸散速度を有する油脂コーティング澱粉をバッターとして用いることにより、フライ食品の種と衣の結着性が良好でかつクリスピーでソフトな食感を与えるという優れた揚げ物が得られる。
Claims (1)
- 架橋タピオカ澱粉を気流中にて均一分散させた状態で、油脂をスプレー噴霧させることで、澱粉へせん断応力を与えることなく表面に吸着させたのち加熱熟成させ澱粉表面を油脂で被覆コーティング加工してなる油脂コーティング澱粉であって、40重量%濃度に加水調製したときに、スラリーとならず、半固形状のペースト状態を呈し、その加水調製したものの表面圧縮応力が20〜80g/cm2 であり、かつ170℃の油中での水分蒸散速度が、0.12〜0.18%/秒となる特性を有する油脂コーティング澱粉を含有することを特徴とする揚げ物用衣材。
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