JP3974986B2 - 車両の姿勢制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の旋回姿勢を目標走行方向に向かって収束させるように制御する車両の姿勢制御装置に関し、特に、システムの故障等により正常な姿勢制御が行えない異常状態になったときのフェールセーフ技術の分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の車両の姿勢制御装置として、例えば特開平6−87421号公報に開示されるように、車両の左右両側に対する制動力をそれぞれ異なる大きさに分配して車体重心回りにヨーモーメントを発生させることで、車両のヨーレイトを制御目標値に一致させて、制動時の車両の操安性の向上を図るようにしたものが知られている。
【0003】
一方、上記のような車両の姿勢制御装置としては、各車輪に対する制動力の分配制御に加え、エンジン出力を低下させて車速を低下させることで、車両の旋回姿勢の安定化を図るようにしたものも知られている。
【0004】
そして、これらの姿勢制御装置では、各種センサにより車両の走行状態や姿勢状態を検出するようにしているので、該センサの断線や短絡或いは制御装置自体の故障等が発生すると制御不能になってしまうことから、上述の如き故障が検出されたときには、姿勢制御を禁止することが行われており、その際、制御を実行中であれば、制御中の各車輪の制動力を無制御の状態まで次第に変化させるフェールセーフ処理を行うようにして、ヨーレイトの急変による車両の操安性の低下を防止しつつ、姿勢制御を中止するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような車両の姿勢制御装置による姿勢制御が正常に行えない異常状態になったきには、その異常状態すなわち故障個所やその状態或いは故障発生時の車両の走行状態等によっては、姿勢制御を直ちに中止して、車両の姿勢状態を全面的にドライバの運転操作に委ねる方が好ましい場合がある。
【0006】
また、上記のエンジン出力の低下により車両の姿勢安定化を図るようにしたものでは、例えばブレーキ液圧系統に異常が発生したとしてもエンジンの制御は継続することができるので、該エンジン制御による姿勢制御は継続する方が好ましいことがある。
【0007】
しかしながら、上記従来の姿勢制御装置においては、異常時には一律に、姿勢制御の制御量を次第に減少させてその後に制御を中止するフェールセーフ処理が行われるので、上記の要求から見て必ずしも適切な対応を行っていることにはならず、車両の走行安定性の向上の余地が残っている。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フェールセーフの制御手順に工夫を凝らすことで、異常状態に応じて適切なフェールセーフ処理を行い得るようにして、姿勢制御装置の異常時における車両の走行安定性の向上を図ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の解決手段では、車両の姿勢制御装置の異常時に、互いに異なる複数のフェールセーフ形態のうちから異常状態に応じていずれか一つを選択するようにした。
【0010】
具体的には、請求項1記載の発明では、車両の前後左右の各車輪に独立して制動力を付与可能な制動手段と、上記車両の旋回姿勢に対応する車両状態量を検出する状態量検出手段と、該状態量検出手段により検出された検出値を、車両の走行状態に応じて設定される姿勢制御目標値と比較して、その偏差量が所定値以上に大きくなったとき、上記制動手段の作動により上記各車輪に制動力を分配して付与するとともに、エンジン出力を低下させて、車両の旋回姿勢を制御する姿勢制御手段とを備えた車両の姿勢制御装置を対象とする。そして、上記制動手段又はエンジン系統の少なくとも一方が故障して上記姿勢制御手段による姿勢制御を正常に行うことのできない異常状態を、検出する異常状態検出手段と、上記姿勢制御手段による姿勢制御の異常状態が上記異常状態検出手段により検出されたとき、姿勢制御手段による姿勢制御自体の禁止、又は姿勢制御手段による縮退制御の実行のいずれか一方を異常状態に応じて選択するフェールセーフ手段とを設け、このフェールセーフ手段は、上記姿勢制御手段による制御の実行中に、上記制動手段又はエンジン系統のいずれか一方のみが故障したときには、その故障した方の制御を禁止する一方、他方の制御は車両の走行状態に依らず禁止しない、という態様の縮退制御を選択する構成とする。
【0011】
この構成によれば、姿勢制御手段による姿勢制御の異常状態が異常状態検出手段により検出されたとき、フェールセーフ手段により、2つのフェールセーフ形態のうちのいずれかが選択される。すなわち、姿勢制御手段による制御の実行中に、制動手段又はエンジン系統のいずれか一方のみが故障したときには、その故障した方の制御を禁止する一方、他方の制御は車両の走行状態に依らず禁止しない、という縮退制御が選択される。
【0012】
こうして故障した方の制御を禁止することで、姿勢制御の実行中における制動手段又はエンジン出力の誤制御に起因する車体姿勢の崩れを防止することができる。また、エンジン出力が制御不能であれば、制動手段の制御による姿勢制御が実行され、反対に、制動手段が制御不能であれば、エンジン出力の制御による姿勢制御が実行されることで、異常時にも可能な範囲で姿勢制御を実行することができる。
【0013】
一方で、姿勢制御手段による制御の実行中でないときに、制動手段又はエンジン系統の少なくとも一方が故障すれば、フェールセーフ手段は、車両が所定の高速走行状態にあるか又は所定の低μ路面を走行していて、旋回姿勢が大きく崩れ易いと考えられるときを除いて、姿勢制御自体の禁止を選択するのが好ましい(請求項2の発明)。
【0014】
請求項3記載の発明では、請求項1記載の発明におけるフェールセーフ手段は、姿勢制御手段による縮退制御を選択してエンジン出力の制御を禁止するとき、エンジンが所定の高回転状態にある場合には、上記姿勢制御手段による制動手段の作動制御を併せて禁止する構成とする。
【0015】
すなわち、一般に、エンジンの運転状態が所定の高回転域にある場合には、制動手段の作動による姿勢制御のみを行うと、ブレーキにかかる負担が大きくなり過ぎるので、この場合には、エンジン出力の制御を禁止すると同時に、制動手段の作動制御を併せて禁止して、ブレーキに過大な負担がかかることを防止することができる。
【0016】
請求項4記載の発明では、請求項1記載の発明における、フェールセーフ手段により選択される縮退制御は、各車輪に分配して付与される制動力の左右の車輪間の偏差量を、正常時のの姿勢制御に比べて小さくさせるものとする。
【0017】
このことで、縮退制御により、各車輪に分配して付与される制動力の左右の車輪間の偏差量が正常時の姿勢制御に比べて小さくなるので、旋回姿勢の修正よりも制動を重視した姿勢制御が行われることになり、上記通常の姿勢制御を正常に行うことのできない異常状態であっても、車速の低下によって、車両の旋回姿勢の安定化が図られる。
【0018】
請求項5記載の発明では、請求項1記載の発明において、車両の各車輪への制動力を制御することで該各車輪のブレーキロックを阻止するアンチスキッドブレーキ手段を備えている。そして、フェールセーフ手段は、異常状態検出手段による異常検出時に上記アンチスキッドブレーキ手段の制御感度を高める感度補正部を備えている構成とする。
【0019】
この構成では、姿勢制御手段による姿勢制御を正常に行うことのできない異常状態において、アンチスキッドブレーキ手段の制御感度が感度補正部により高められる。このことで、制動時の車両の姿勢の不安定化を防止することができ、上記姿勢制御手段による制御が不十分であっても、これを補完して車両の走行安定性を確保することができる。
【0020】
なお、アンチスキッドブレーキ手段の制御感度を高めるためには、例えば、制御の介入頻度を高めて早めに制御が開始されるようにすればよく、また、制御ゲインを増大させて制御の応答性を高めるようにしてもよい。
【0021】
請求項6記載の発明では、請求項1記載の発明において、駆動輪への駆動力を制御して、該駆動輪の空転を阻止するトラクション制御手段を備えている。そして、フェールセーフ手段は、異常状態検出手段による異常検出時に上記トラクション制御手段の制御感度を高める感度補正部を備えている構成とする。
【0022】
この構成では、姿勢制御手段による通常の姿勢制御を正常に行うことのできない異常状態において、トラクション制御手段の制御感度が感度補正部により高められる。このことで、駆動輪の空転に起因する車両の姿勢の不安定化を防止することができ、姿勢制御手段による制御が不十分であっても、これを補完して車両の走行安定性を確保することができる。
【0023】
なお、トラクション制御手段の制御感度を高めるためには、例えば、制御の介入頻度を高めて早めに制御が開始されるようにすればよく、また、制御ゲインを増大させて制御の応答性を高めるようにしてもよい。
【0024】
請求項7記載の発明では、請求項1記載の発明におけるフェールセーフ手段は、縮退制御の実行を選択したとき、姿勢制御手段による制御介入の頻度を高める構成とする。
【0025】
このことで、姿勢制御手段による通常の姿勢制御を正常に行うことのできない異常状態において、該姿勢制御手段による縮退制御の介入頻度が高められるので、車両の旋回姿勢の崩れが極く僅かなうちに実行可能な姿勢制御が開始され、これにより、車両の姿勢を安定化させて走行安定性を確保することができる。
【0026】
請求項8記載の発明では、請求項1記載の発明におけるフェールセーフ手段は、姿勢制御自体の禁止又は縮退制御の実行のいずれかを選択したとき、それぞれ、互いに異なるワーニングを実行する構成とする。
【0027】
このことで、縮退制御が実行されるときには、姿勢制御自体が禁止されるときとは異なるワーニングが行われるので、ドライバは該ワーニングに基づいて異常状態に応じた適切な運転操作を行うことができ、過度の不安感によるパニック状態に陥ることがない。
【0028】
請求項9記載の発明では、請求項1記載の発明におけるフェールセーフ手段は、姿勢制御手段による制御の実行中に、状態量検出手段を構成する複数のセンサのうちのいずれかが故障したとき、この故障したセンサ以外の他のセンサからの信号に基づいて行う姿勢制御を選択する構成とする。このことで、異常状態として具体的に、状態量検出手段を構成するセンサが故障したときには、可能な範囲で姿勢制御を継続することができる。よって、異常状態に応じた適切なフェールセーフ処理が行われる。
【0029】
請求項10記載の発明では、請求項1記載の発明におけるフェールセーフ手段は、姿勢制御手段が故障したとき、該姿勢制御手段による姿勢制御自体の禁止を選択する構成とする。このことで、異常状態として具体的に姿勢制御手段が故障したときには、該姿勢制御手段による姿勢制御自体を禁止して、誤った姿勢制御が行われることを確実に防止することができる。よって、異常状態に応じた適切なフェールセーフ処理が行われる。
【0030】
請求項11記載の発明では、請求項1記載の発明における制動手段は、車両の各車輪に設けた液圧式ブレーキに個別にブレーキ液圧を供給して、該各車輪に独立して制動力を付与可能な構成とし、また、フェールセーフ手段は、上記制動手段におけるブレーキ液のリザーバタンク内の貯溜量が所定量以下になったとき、ワーニングの実行を選択する構成とする。
【0031】
このことで、異常状態として具体的に、ブレーキ液のリザーバタンク内の貯溜量が所定量以下になったときには、姿勢制御手段による姿勢制御が殆ど正常に実行可能なので、そのまま実行される。また、ドライバは、ワーニングによりブレーキ液の減少に気がつくので、適宜、ブレーキ液を補給すればよい。つまり、極く軽微な異常状態に対応して適切なフェールセーフ処理が行われる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る車両の姿勢制御装置(Stability Control System:以下SCSという)を適用した車両を示し、1は車体、2,2,…は、前後左右の4つの車輪21FR,21FL,21RR,21RLに個別に配設された4つの液圧式ブレーキ、3は上記各ブレーキ2に圧液を供給するための加圧ユニット、4は該加圧ユニット3からの圧液を上記各ブレーキ2に分配供給する液圧ユニット(Hudraulic Unit:以下HUという)であり、これらのブレーキ2,2,…、加圧ユニット3及びHU4により制動手段が構成されている。また、5は上記加圧ユニット3及びHU4を介して上記各ブレーキ2の作動制御を行うSCSコントローラであり、6は上記各車輪21の車輪速を検出する電磁ピックアップ式の車輪速センサ、7は車両に作用している左右方向の横加速度Gy を検出する横加速度センサ、8は車両に作用しているヨーレイトψ′を検出するヨーレイトセンサ、9はステアリングの操舵角θH を検出する舵角センサである。
【0033】
さらに、10はドライバのブレーキ操作に応じた液圧を発生するマスタシリンダ、11は複数の気筒を有するエンジンである。図示しないが、このエンジン11の吸気通路には、アクチュエータにより駆動されるスロットル弁が設けられ、このスロットル弁下流の吸気通路にエンジン11の各気筒毎にインジェクタが設けられており、該スロットル弁の開度制御及びインジェクタの作動制御により、エンジン出力を制御するようになっている。また、12はエンジン11の出力回転を変速して図示しないドライブシャフト等により駆動輪側に伝達するオートマチックトランスミッション(AT)であり、13は、ドライバによるアクセル操作に応じて上記スロットル弁の開度制御、インジェクタの作動制御及び点火時期制御を行って、エンジン11の運転状態を制御するEGIコントローラである。なお、上記エンジン11の排気通路には、排気有害成分を浄化するための触媒コンバータ(図示せず)が設けられている。
【0034】
図2に示すように、上記右側前輪21FRのブレーキ2と左側後輪21RLのブレーキ2とは、第1液圧管路22aによりマスタシリンダ10に接続される一方、左側前輪21FLのブレーキ2と右側後輪21RRのブレーキ2とは、上記第1液圧管路22aとは異なる第2液圧管路22bによりマスタシリンダ10に接続されており、所謂、X配管タイプの互いに独立した2つのブレーキ系統が構成されている。そして、ドライバによるブレーキペダル14の踏み操作に応じて上記車輪21FR,21FL,…にそれぞれ制動力が付与されるようになっている。
【0035】
上記加圧ユニット3は、第1及び第2液圧管路22a,22bにそれぞれ接続された液圧ポンプ31a,31bと、これらの液圧ポンプ31a,31b及びマスタシリンダ10を断続可能なように上記第1及び第2液圧管路22a,22bにそれぞれ配設されたカットバルブ32a,32bと、これらのカットバルブ32a,32b及び上記マスタシリンダ10の間の液圧を検出する液圧センサ33とを備えている。そして、SCSコントローラ5からの信号に応じて上記カットバルブ32a,32bが閉状態にされることで、ドライバによるブレーキ操作とは無関係に、上記液圧ポンプ31a,31bから吐出される圧液がHU4を介してブレーキ2,2,…に供給される。
【0036】
また、上記HU4は、第1液圧管路22a又は第2液圧管路22bを介して加圧ユニット3から供給される圧液をブレーキ2,2,…にそれぞれ供給して増圧させる加圧バルブ41,41…と、上記各ブレーキ2をリザーバタンク42に接続し、圧液を排出させて減圧する減圧バルブ43,43…とを備えている。そして、SCSコントローラ5からの信号に応じて上記加圧バルブ41,41,…及び減圧バルブ43,43,…の開度がそれぞれ独立に増減制御されることで、上記ブレーキ2,2,…の液圧が増減されて、各車輪21FR,21FL,…に付与される制動力がそれぞれ増減変更される。
【0037】
上記SCSコントローラ5は、図3に示すように、SCSの制御を行う姿勢制御手段としての第1のCPU(Central Processing Unit )5aと、従来周知のABS(Anti-Skid Brake System)制御及びTCS(Traction Control System )制御を行う第2のCPU5bとを備えており、この第2のCPU5bのABS制御部、ブレーキ2,2,…、加圧ユニット3、HU4及び車輪速センサ6,6,…によりアンチスキッドブレーキ装置が、また、上記第2のCPU5bのTCS制御部、EGIコントローラ13、ブレーキ2,2,…、加圧ユニット3、HU4及び車輪速センサ6,6,…によりトラクション制御装置が、それぞれ構成されている。
【0038】
上記SCS制御は、後に詳述する如く、車両の旋回姿勢が所定以上崩れたとき、主として各輪毎の制動力の制御により車両にヨーモーメントを作用させて、車両の旋回姿勢を目標走行方向に向かって収束させるものである。すなわち、第1のCPU5aは、車輪速センサ6,6,…、横加速度センサ7、ヨーレイトセンサ8及び舵角センサ9からの入力信号値に基づき、車両の現在の旋回姿勢に対応する車両状態量を演算する状態量演算部51と、同様にして、制御目標値である目標状態量を演算する目標状態量演算部52と、上記車両状態量及び目標状態量の間の偏差量に基づいてSCS制御の介入判定を行う制御介入判定部53とを備えている。上記状態量演算部51及びセンサ系統、すなわち車輪速センサ6,6,…、横加速度センサ7、ヨーレイトセンサ8、舵角センサ9,液圧センサ33等により状態量検出手段が構成されている。
【0039】
また、上記第1のCPU5aは、上記制御介入判定部53による判定結果に応じて、加圧ユニット3及びHU4の作動制御により前後左右の車輪21FR,21FL,…のそれぞれに独立して制動力を付与することで、車両の重心回りにヨーモーメントを作用させるSCSブレーキ制御を行う制動力制御部54と、EGIコントローラ13によってエンジン11の出力を所定量低下させるSCSトルクダウン制御を行うエンジン制御部55とを備えている。
【0040】
なお、上記第1のCPU5aは、液圧センサ33からの入力信号に基づいてドライバのブレーキ操作が検出されたときには、このブレーキ操作に対応して上記加圧ユニット3及びHU4の作動制御を行うようになっている。
【0041】
上記ABS制御は、周知のように、各車輪21FR,21FL,…のロック傾向が強まったとき、各ブレーキ2に供給される液圧を低下させることで、ブレーキロックを阻止するものである。すなわち、第2のCPU5bは、車輪速センサ6,6,…からの入力信号に基づいて各車輪21FR,21FL,…のスリップ率を求め、スリップ率が所定の介入しきい値を越えた車輪21FR,21FL,…の減圧バルブ43,43,…を開作動させて、ブレーキ2,2,…に供給される液圧を低下させる。これにより、各車輪21FR,21FL,…のスリップ率がそれぞれ路面状況に応じた目標スリップ率に制御され、各車輪21FR,21FL,…はそれぞれ最大の制動力を発生する状態にされる。
【0042】
また、上記TCS制御は、周知のように、駆動輪である左右の前輪21FR,21FLの空転傾向が強まったとき、該左右の前輪21FR,21FLの駆動力を抑制することで空転を阻止するものである。すなわち、第2のCPU5bは、車輪速センサ6,6,…からの入力信号に基づいて左右の前輪21FR,21FLのスリップ率を求め、いずれか一方のスリップ率が所定の介入しきい値を越えたとき、加圧バルブ41,41,…を開作動させてブレーキ2,2,…に供給される液圧を増圧するTCSブレーキ制御を行うとともに、EGIコントローラ13によりエンジン11の出力を所定量低下させるTCSトルクダウン制御を行う。これにより、左右の前輪21FR,21FLのそれぞれに所要の制動力が付与されて駆動力が制限され、該前輪21FR,21FLがそれぞれ最大の駆動力を発生する状態にされる。
【0043】
さらに、上記SCSコントローラ5には、本発明の特徴部分として、上記第1のCPU5aによるSCS制御を正常に行うことのできない異常状態を検出する異常状態検出手段5cと、上記第1及び第2のCPU5a,5bとは異なるCPUにより構成され、上記異常状態検出手段5cによりSCS制御の異常状態が検出されたとき、SCS制御自体の禁止、縮退制御の実行又はワーニングのみ実行のいずれか1つを異常状態に応じて選択するフェールセーフ手段5dとが設けられている。
(基本制御)
次に、SCSコントローラ5による基本制御の手順を図4のフローチャート図に基づいて説明する。この基本制御においては、ドライバが車両に乗り込んでイグニッションキーをオン状態にすると、ステップSA1でSCSコントローラ5やEGIコントローラ13の初期設定を行って、前回の処理で記憶している演算値等をクリアする。次のステップSA2では、車輪速センサ6,6,…等の原点補正を行った後に、これらの各センサから上記SCSコントローラ5に対する信号入力を受け入れる。ステップSA3においては、これらの入力信号に基づき、上記車両の車体速、車体減速度、各輪位置での車体速等の共通車両状態量を演算する。
【0044】
続いて、ステップSA4でSCS制御の制御演算を行う。すなわち、最初のステップSA41で、車両状態量の検出値としてSCS用車体速Vscs 、車体横滑り角β、各輪の車輪スリップ率s1 〜s4 、各輪のスリップ角、各輪の垂直加重、各輪の車輪負荷率及び路面摩擦係数μを演算し、ステップSA42では、目標状態量(制御目標値)として目標ヨーレイトψ′TR及び目標横滑り角βTRを演算する。そして、ステップSA43で上記演算結果に基づいて、SCS制御への介入判定を行い、制御介入が必要と判定した場合にステップSA44に進む。このステップSA44では、制動力を付与する車輪21FR,21FL,…を選択し、この選択した各車輪21FR,21FL,…に付与する制動力量を演算するとともに、エンジン11のトルクダウン量を演算する。そして、ステップSA45で上記の演算された制動力量に基づいて加圧ユニット3、HU4及びEGIコントローラ13への制御出力量、すなわち各ブレーキ2の加圧バルブ41,41,…及び減圧バルブ43,43,…のそれぞれのバルブ開度等を演算する。
【0045】
さらに、ステップSA5でABS制御に必要な制御目標値や制御出力量の演算を行い、ステップSA6でTCS制御に必要な制御目標値や制御出力量の演算を行い、その後、ステップSA7で、このABS制御、TCS制御及び上記SCS制御の各演算結果を所定の方法により調停して、加圧ユニット3等への制御出力量を決定する。続いて、ステップSA8で、加圧ユニット3及びHU4を作動させて各加圧バルブ41及び減圧バルブ43の開度を制御することで、車輪21FR,21FL…にそれぞれ所要の制動力を付与するとともに、車両の減速による姿勢安定化を図る場合には、EGIコントローラ13によりエンジン11の出力を低下させる。最後に、ステップSA9で、後述のフェールセーフ判定及び処理を行い、しかる後にリターンする。
(SCS制御)
次に、SCS制御の詳細について図5及び図6に基づいて説明する。なお、ステップSA5のABS制御及びステップSA6のTCS制御の内容については周知であるので、その詳細な説明は省略する。
【0046】
図5は、図4に示すフローのステップSA41における車体速Vscs 、車体横滑り角β、各輪の垂直荷重、各輪のスリップ率s1 〜s4 、各輪のスリップ角、各輪の車輪負荷率及び路面摩擦係数μの演算手順と、ステップSA42における目標横滑り角βTR及び目標ヨーレイトψ′TRの演算手順とを示す。すなわち、ステップSB2では、車輪21FRの車輪速v1 、車輪21FLの車輪速v2 、車輪21RRの車輪速v3 、車輪21RLの車輪速v4 、車両の横加速度Gy 、車両のヨーレイトψ′及びステアリングの操舵角θH の各入力を受け入れる。ステップSB4では、上記車輪速v1 ,v2 ,…に基づいて車体速Vscs を演算し、ステップSB6では、上記車輪速v1 ,v2 ,…と横加速度Gy とに基づいて各輪の垂直加重を演算する。また、ステップSB8では、上記車体速Vscs 、車輪速v1 ,v2 ,…、横加速度Gy 、ヨーレイトψ′及び操舵角θH に基づいて車体横滑り角βを演算する。
【0047】
上記ステップSB8に続くステップSB10では、上記車輪速v1 ,v2 ,…、車体速Vscs 、車体横滑り角β、ヨーレイトψ′及び操舵角θH に基づいて車輪21FRのスリップ率s1 、車輪21FLのスリップ率s2 、車輪21RRのスリップ率s3 、車輪21RLのスリップ率s4 及びこれら各輪のスリップ角を演算する。続いて、ステップSB12では、上記各輪の垂直加重、スリップ率s1 ,s2 ,…及びスリップ角に基づいて、車輪21FR,21FL,…のそれぞれについて、タイヤ23,23,…の発揮し得る全グリップ力に対する現在のグリップ力の割合である車輪負荷率を演算する。そして、ステップSB14では、該車輪負荷率と横加速度Gy とに基づいて路面摩擦係数μを演算し、ステップSB16では、該路面摩擦係数μ、車体速Vscs 及び操舵角θH に基づいて目標ヨーレイトψ′TR及び目標横滑り角βTRをそれぞれ演算する。
【0048】
なお、上記各ステップSB4〜SB16における演算はそれぞれ周知の数学的手法により行われる。
【0049】
図6は、図4に示すフローのステップSA43におけるSCS制御介入判定以降のSCS制御の手順を示し、ステップSB18で、ヨーレイトψ′と目標ヨーレイトψ′TRとの間のヨーレイト偏差量(|ψ′TR−ψ′|)、及び、車体横滑り角βと目標横滑り角βTRとの間の横滑り角偏差量(|βTR−β|)を、それぞれ後述のヨーレイト制御の介入判定のために予め設定された介入判定しきい値K1 及びK2 と比較する。そして、この判定が、上記ヨーレイト偏差量が介入判定しきい値K1 以上であるか、又は上記横滑り角偏差量が介入判定しきい値K2 以上である場合には、目標走行方向に対する車両の旋回姿勢のずれが大きくなりつつあり、SCS制御介入が必要であると判定してステップSB20に進む。一方、上記ヨーレイト偏差量が介入判定しきい値K1 よりも小さい値であり、かつ横滑り角偏差量が介入判定しきい値K2 よりも小さい値である場合には、SCS制御介入の必要なしと判定してリターンする。
【0050】
続くステップSB20では、横滑り角偏差量(|βTR−β|)を、後述の横滑り角制御への切換えの判定のために予め設定された設定量としての切換判定しきい値K3 (K3 >K2 )と比較する。そして、上記横滑り角偏差量(|βTR−β|)が切換判定しきい値K3 よりも小さい場合には、ステップSB22に進んで目標ヨーレイトψ′TRをSCS制御目標値として設定した後、ステップSB24に進み、ヨーレイト偏差量(|ψ′TR−ψ′|)と制御ゲインG1 とを乗算してSCS制御量ψ′amt を演算する。
【0051】
ψ′amt = G1 ×|ψ′TR−ψ′|
つまり、車両の旋回姿勢の変化が比較的小さく安定した状態にあると判定される間は、車両のヨーレイトψ′がドライバの運転操作に対応する目標ヨーレイトψ′TRに収束するよう、比較的小さくかつ上記ヨーレイト偏差量(|ψ′TR−ψ′|)に比例するヨーモーメントを車両に作用させるようにすることで、その車両の旋回姿勢をドライバの運転操作に追従するように滑らかに変更させるヨーレイト制御を行うようにする。
【0052】
一方、上記ステップSB20で、横滑り角偏差量(|βTR−β|)が切換判定しきい値K3 以上である場合には、ステップSB26に進んで目標横滑り角βTRをSCS制御目標値として設定した後、ステップSB28に進み、横滑り角偏差量(|βTR−β|)と制御ゲインG2 とを乗算してSCS制御量βamt を演算する。
【0053】
βamt = G2 ×|βTR−β|
つまり、車両の旋回姿勢が崩れかかっていると判定されたときには、車体横滑り角βが目標横滑り角βTRに収束するよう、比較的大きくかつ上記横滑り角偏差量(|βTR−β|)に比例するヨーモーメントを車両に作用させるようにすることで、その車両の旋回姿勢を迅速に修正する横滑り角制御を行うようにする。
【0054】
そして、上記ステップSB24又はステップSB28に続くステップSB30において、後述する図7及び図8に示すサブルーチンに移行して、SCS制御が正常に実行できる状態であるか否かのフェールセーフ判定及び処理を行う。続くステップSB32では、上記SCS制御、ABS制御及びTCS制御の各演算結果を所定の方式により調停する。この調停の概要について説明すると、SCS制御を行おうとする際にABS制御が行われている場合には、そのABS制御の制御量をSCS制御量ψ′amt 又はβamt に基づいて補正することにより、ABS制御を優先しつつSCS制御を行うようにする。また、SCS制御を行おうとする際にTCS制御が行われている場合には、そのTCS制御のための加圧ユニット3及びHU4の作動を中止してエンジン11のトルクダウン制御のみを行うようにして、SCS制御を実行する。
【0055】
続いて、ステップSB34において、SCS制御量ψ′amt 又はβamt に基づき、SCS制御のために制動力を付与する車輪21FR,21FL,…を選択するとともに、これらの選択された車輪21FR,21FL,…にそれぞれ付与する制動力量を演算する。この車輪の選択及び制動力量の演算について概説すれば、ヨーレイト制御において車両のヨーレイトψ′を右回りに増加させる場合、及び、横滑り角制御において車両の旋回姿勢を右側寄りに修正しようとする場合には、右側前輪21FRもしくは右側前後輪21FR,21RRに対し、上記SCS制御量ψ′amt 又はβamt に対応する制動力を付与して、車両に右回りのヨーモーメントを作用させる。反対に、車両のヨーレイトψ′を左回りに増加させる場合、及び、車両の旋回姿勢を左側寄りに修正しようとする場合には、左側前輪21FLもしくは左側前後輪21FL,21RLに対し、上記SCS制御量ψ′amt 又はβamt に対応する制動力を付与して、車両に左回りのヨーモーメントを作用させる。
【0056】
そして、上記ステップSB34に続くステップSB36において、ステップSB34で選択された車輪21FR,21FL,…に対しそれぞれ所要の制動力を付与するための加圧ユニット3及びHU4への制御出力量(ブレーキ制御量)、すなわち、HU4の加圧バルブ41,41,…及び減圧バルブ43,43,…のそれぞれのバルブ開度等を演算する。
【0057】
続くステップSB38では、車両の減速による姿勢の安定化のために必要なトルクダウン量に対応する制御出力量(エンジン制御量)を演算する。すなわち、エンジン11のSCSトルクダウン制御では、EGIコントローラ13により、スロットル弁のアクチュエータを作動させて、ドライバのアクセル操作に関係なくスロットル弁開度を絞るとともに、燃料カット又は気筒カットを行って、エンジン11の出力トルクを低下させる。上記燃料カットとは、エンジン11の全気筒の燃料噴射を瞬間的に停止させることであり、また、気筒カットとは、いくつかの気筒の燃料噴射を停止させることである。
【0058】
そして、上記ステップSB38で、車両を減速させて旋回姿勢を安定化させるためのEGIコントローラ13への所要の制御出力量を演算した後、この演算結果及び上記ステップSB36の演算結果に基づいて、ステップSB40で上記加圧ユニット3、HU4及びEGIコントローラ13に出力してSCS制御を実行し、しかる後にリターンする。
(液圧ポンプ駆動用モータの回転数制御)
次に、SCS制御及びTCS制御におけるブレーキ制御の際に、ブレーキ2,2,…に供給する液圧を発生する液圧ポンプ33の作動音が、ドライバにとって耳障りな不快な騒音にならないように、該液圧ポンプ33の作動状態を車両の走行状態に応じて変更させるための、液圧ポンプ駆動用モータの回転数制御について説明する。
【0059】
まず、上記制御用モータの回転数をドライバの運転操作に対応付けて変化させるようにする。例えば、低速運転中でありながらドライバが大きなアクセル操作をしているか又は急激なアクセル操作をしている場合、ドライバにはアクセルを踏み込んで車両の旋回姿勢を安定化させる意志があると考えられるので、これに対応してブレーキ2,2,…に大きな液圧を供給できるように、モータ回転数を高めて油圧ポンプ33の吐出液量を増大させる。一方、高速運転中やドライバのアクセル操作量が小さい場合には、モータ回転数を低くして油圧ポンプ33の作動音の低減を図る。そして、それ以外の場合には、上記制御用モータをそれらの中間の回転数で運転させる。
【0060】
また、上記制御用モータの回転数をSCS制御の開始から終了までの間で変化させるようにする。例えば、制御介入直後は、車両の旋回姿勢の崩れが最も大きく、ブレーキ2,2,…に大きな液圧を供給する必要があると考えられるので、モータ回転数を高回転寄りに変化させ、その後、上記制御用モータを中間回転数で運転させ、制御終了直前にモータ回転数を低回転寄りに変化させる。
【0061】
さらに、上記制御用モータの回転数を路面状態に応じて変化させるようにする。例えば、車輪速センサ6,6,…により検出される左右の車輪速v1 ,v2 ,…の偏差等に基づいてスプリット路を走行していることが判定されたときには、このスプリット路では車両の旋回姿勢が崩れやすいことから、ブレーキ2,2,…に大きな液圧を供給する必要があると考えられるので、モータ回転数を高回転寄りに変化させる。
【0062】
さらにまた、上記制御用モータの回転数を、ギアポジションに対応付けて、例えばギアポジションが高くなるにつれてモータ回転数が低くなるように変化させるようにしてもよい。
(フェールセーフ判定及び処理)
次に、本発明の特徴部分として、上記図6のステップSB30におけるフェールセーフ判定及び処理について、図7及び図8に基づいて詳細に説明する。
【0063】
まず、図7のステップSC1では、例えばエンジン水温に基づいてエンジン11の冷間状態であるか否かを判定し、冷間状態でないNOであればステップSC6に進む一方、冷間状態であるYESであればステップSC2に進んで、SCSトルクダウン制御における燃料カット及び気筒カットを禁止する。このことで、冷間状態のエンジン11の燃焼状態が不安定になることを回避して、エンジンストールを防止することができる。また、燃焼状態の不安定化に起因する排気温度の異常上昇を防止することができるので、触媒の損傷を防止することができる。
【0064】
その際、SCSトルクダウン制御におけるスロットル制御は禁止せず、上述の不具合を招かないように細やかなトルクダウン制御を実行するようにしてもよいが、エンスト等を確実に防止するためには、上記スロットル制御も併せて禁止することが好ましい。
【0065】
続くステップSC3では、SCS制御介入のしきい値K1 ,K2 ,K3 を減少補正してSCS制御が介入し易くさせる。同時に、車両の左側の車輪21FL,21RLに付与する制動力量と右側の車輪21FR,21RRに付与する制動力量との偏差が小さくなるように液圧を制御することで、車両の旋回姿勢の修正よりも減速を重視した制御を行う。これにより、SCS制御の介入頻度を高めて、車両の旋回姿勢の崩れが極く僅かなうちに、実行可能なSCS制御を早めに介入させることができる。また、車速を低下させることができるので、エンジン11のトルクダウン制御を十分に行うことができなくても、これを補完して車両の走行安定性を高めることができる。
【0066】
そして、ステップSC4で、トルクダウン制御が十分に行えない状態になっていることをドライバに知らしめるための縮退ワーニングとして、例えば警告表示灯を点滅させる。このように、SCS制御が全て実行できない場合の後述の故障ワーニング(例えば警告表示灯の点灯)とは異なるワーニングが行なわれることで、ドライバは、故障の程度を把握して異常状態に応じた適切な運転操作を行うことができ、過度の不安感によるパニック状態に陥ることがない。続いて、ステップSC5で、TCS制御及びABS制御の介入しきい値を減少補正して制御の介入頻度が高くなるようにして、しかる後にリターンする。このように、TCS制御及びABS制御の介入頻度が高められることで、制動時の車体姿勢の不安定化や駆動輪の空転に起因する車体姿勢の不安定化を確実に防止することができ、第1のCPU5aによるSCS制御が十分に行ない得ない状態でも、これを補完して、車両の走行安定性を確保することができる。
【0067】
なお、上記TCS制御及びABS制御の介入しきい値の減少補正により制御の介入頻度を高める他に、TCS制御及びABS制御の制御ゲインを増大させて制御の応答性を向上させるようにしてもよく、また、それらを両方ともに行ってもよい。ただし、上記TCS制御においても、エンストの防止や触媒の保護のために、トルクダウン制御における燃料カットや気筒カットは禁止する。
【0068】
また、エンストを確実に防止することを優先するのであれば、上記TCS制御は全て禁止するようにしてもよく、或いは、上記SCS制御及びTCS制御を両方ともに全て禁止するようにしてもよい。
【0069】
一方、上記ステップSC1でエンジン11が冷間状態でないと判定されて進んだステップSC6では、エンジン11の連続運転時間が所定時間以上であるか否かを判定し、該所定時間以上でないNOと判定されればステップSC8に進む一方、所定時間以上のYESであればステップSC7に進んで、SCS制御のトルクダウン制御を予め設定した所定時間だけ禁止した後、上記ステップSC3に進んで、上述のステップSC3〜SC5の制御を行う。すなわち、エンジン11の連続運転時間が長くなって排気温度が高くなっていると考えられるときには、トルクダウン制御を禁止することで、このトルクダウン制御に起因する排気温度の上昇を防止して、触媒の保護を図るようにしている。
【0070】
その際、トルクダウン制御を禁止する前に制御量を徐々に小さくさせていくようにすれば、ドライバの違和感を低減させることができ、また、制御禁止に伴う車両の姿勢変化が抑制される。さらに、特に、エンジン回転数が所定回転数以上の高回転状態では、TCS制御やSCS制御におけるブレーキ制御だけを行ったときにブレーキ2,2,…にかかる負担が過大になることが考えられるので、この場合には、トルクダウン制御を禁止するときに、併せてブレーキ制御も禁止するようにしてもよい。
【0071】
上記ステップSC6でエンジン11の連続運転時間が所定時間以上でないと判定されたときのステップSC8では、今度はブレーキ2,2,…の連続使用時間が所定時間以上であるか否かを判定する。そして、該所定時間以上でないNOと判定されれば、図8のステップSC11に進む一方、所定時間以上のYESと判定されればステップSC9に進み、SCS制御のブレーキ制御を予め設定した所定時間だけ禁止することで、ブレーキ2,2,…のフェードの発生を予防する。続くステップSC10では、SCS制御の介入頻度を高めることで、ブレーキ制御が行えない間、トルクダウン制御が早めに行われるようにし、続いて、上記ステップSC4及びステップSC5に進む。
【0072】
上記図8のステップSC11では、SCS制御の実行中であるか否かを判定し、制御実行中でないNOであればステップSC26に進む。一方、制御実行中のYESであればステップSC12に進み、エンジン系統、すなわちエンジン11又は該エンジン11とEGIコントローラ13との間の通信系統の故障判定を行う。この判定は、例えばEGIコントローラ13にエンジン11側から入力されるフィードバック信号等に基づいて、所定時間以上フィードバック信号が入力されないときや、正常な制御が行われている状態では入力され得ないような信号入力があったときに、故障発生と判定する。そして、故障でないNOと判定されればステップSC17に進む一方、故障があるYESと判定されればステップSC13に進んで、上記EGIコントローラ13によるエンジン制御、すなわちSCS制御及びTCS制御におけるトルクダウン制御を禁止する。
【0073】
その際、トルクダウン制御の制御量を徐々に小さくさせていってその後制御を禁止するようにすれば、ドライバの違和感を低減させることができ、しかも、制御禁止に伴う車両の急な姿勢変化を抑制することができる。
【0074】
なお、この実施形態では、エンジン11又は通信系統の故障時にSCS制御及びTCS制御におけるトルクダウン制御を禁止するようにしているが、TCS制御については全て禁止するようにしてもよく、特に、エンジン回転数が所定回転数以上の高回転状態にあるときには、ブレーキ2,2,…にかかる負担が過大になることを防止するために、SCS制御及びTCS制御におけるトルクダウン制御の禁止と共にSCSブレーキ制御も禁止するようにしてもよい。
【0075】
そして、上記ステップSC13に続くステップSC14〜SC16では、上述のステップSC3〜SC5と同様の制御を行い、SCS制御の介入頻度を高め、かつ車両の減速を重視した制御を行うとともに、TCS制御及びABS制御の介入頻度を高めることで、SCSトルクダウン制御が行えないときであっても、これを補完して走行安定性を確保することができる。ここで、上記ステップSC16では、TCS制御及びABS制御の介入しきい値の減少補正により制御の介入頻度を高めるようにしているが、この他、TCS制御及びABS制御の制御ゲインを増大させて制御の応答性を向上させるようにしてもよく、また、それらを両方ともに行うようにしてもよい。
【0076】
一方、上記ステップSC12で、エンジン系統、すなわちエンジン11又は該エンジン11とEGIコントローラ13との間の通信系統に故障がないNOと判定されれば、ステップSC17に進み、このステップSC17で、ブレーキ系統、すなわちブレーキ2,2,…、加圧ユニット3又はHU4の故障を判定する。この判定は、例えばSCSコントローラ5に加圧ユニット3又はHU4側から入力されるフィードバック信号等に基づいて、上述のエンジン系統の場合と同様に実行する。そして、故障がないNOと判定されればステップSC20に進む一方、故障があるYESと判定されればステップSC18に進んで、SCS制御及びTCS制御におけるブレーキ制御を禁止する。その際、例えば4つのブレーキ2,2,…のうちの1つが故障したような場合には、残りの3つのブレーキ2,2,…により可能な範囲でのブレーキ制御を行いながら、その制御量を徐々に小さくしていき、その後、ブレーキ制御を禁止する。
【0077】
そして、続くステップSC19で、SCS制御の介入頻度を高めることで、トルクダウン制御により車速を低下させるようにし、続いて上述のステップSC15及びステップSC16に進んで、TCS制御及びABS制御の介入頻度を高める。これにより、ブレーキ制御が行えないときであっても、車両の走行安定性を確保できる。
【0078】
なお、ブレーキ系統に異常があると判定された場合、上述の如く可能な範囲でのブレーキ制御を継続するのではなく、異常判定と同時に直ちにブレーキ制御を禁止するようにしてもよい。
【0079】
一方、上記ステップSC17でブレーキ系統に故障がないNOと判定されて進むステップSC20では、センサ系統、すなわち車輪速センサ6,6,…、横加速度センサ7、ヨーレイトセンサ8、舵角センサ9、液圧センサ33等の故障を判定する。この判定は、上記各センサから入力される信号等に基づいて、上述のエンジン系統やブレーキ系統の場合と同様に行う他、異なるセンサによる検出値を互いに比較すること等により行う。
【0080】
そして、上記ステップSC20でいずれかのセンサが故障しているYESと判定されれば、ステップSC21に進んで、後述の如く故障しているセンサの種類に応じて疑似信号等に基づく縮退制御を行い、続いて上述のステップSC15及びステップSC16に進む。一方、全てのセンサが正常であるNOと判定されれば、ステップSC22に進んで、第1のCPU5aの故障判定を行い、例えば第1のCPU5aが暴走しているような故障判定時のYESには、ステップSC29に進んでSCS制御を直ちに全て中止する一方、上記第1のCPU5aが故障していないNOであれば、ステップSC23に進む。
【0081】
このステップSC23では、SCS制御が所定時間を越えて長時間に亘って連続して実行されているか否かを判定し、長時間連続していないNOであれば、ステップSC24に進んで通常のSCS制御を実行する一方、長時間連続しているYESであれば、ステップSC25に進んで、ドライバに警報を与えるための警報ワーニングとして、例えば警報ブザーを鳴らし、しかる後リターンする。上記警報ワーニングにより、ドライバがSCS制御に頼った不十分な運転操作に慣れてしまうことを防止することができる。また、上記ステップSC23では、例えばリザーバタンク内のブレーキ液の貯溜量が所定量以下になっているか否かの判定を行い、所定量よりも多いNOであれば上記ステップSC24に進む一方、所定量以下のYESであれば上記ステップSC25に進む。
【0082】
このように、上記ステップSC11でSCS制御の実行中であるYESと判定された場合には、続くステップSC12,SC17,SC20においてそれぞれシステムの故障が判定されたとき(各ステップでYES)、その故障個所等に応じて、それぞれ異なるフェールセーフ処理を実行する一方、上記ステップSC11でSCS制御の実行中でないNOと判定されたときには、ステップSC26に進む。
【0083】
このステップSC26では、SCS制御において演算される車体速Vscs を予め設定された所定車速と比較し、ここで、車体速Vscs が上記所定車速以上であって車両が高速走行状態であるYESと判定されれば、上記ステップSC12に進む一方、車体速Vscs が上記所定車速よりも低く高速走行状態でないNOと判定されれば、ステップSC27に進む。ステップSC27では、SCS制御において演算される路面摩擦係数μを予め設定された所定値と比較して、車両の走行路面が上記諸定置以下の路面摩擦係数μを有する低μ路面であるか否かを判定し、判定がYESであれば上記ステップSC12に進む一方、路面摩擦係数μが上記所定値よりも大きく、車両が低μ路面を走行していないNOと判定されれば、ステップSC28に進む。
【0084】
このステップSC28では、上記ステップSC12、ステップSC17、ステップSC20及びステップSC22と同様に、エンジン系統、ブレーキ系統、センサ系統及び第1のCPU5aの故障判定を行い、全て正常であるNOと判定されればステップSC32に進んで通常のSCS制御を行い、しかる後リターンする。一方、上記ステップSC28においていずれかに故障があるYESと判定されれば、ステップSC29に進んで全てのSCS制御を禁止してステップSC30に進み、SCS制御が行えない状態になっていることをドライバに知らしめるための故障ワーニングとして、例えば警告表示灯を点灯させる。
【0085】
つまり、上記ステップSC11,SC26,SC27の制御の流れにより、SCS制御の実行中でない場合であって、車両が所定の高速走行状態にあるか又は所定の低μ路面を走行していて旋回姿勢が大きく崩れ易いと考えられるときに、可能な範囲でのSCS制御(縮退制御)を実行可能とする一方、それ以外のときには、直ちにSCS制御を禁止して、車両の旋回姿勢をドライバの運転操作に委ねるようにしている。
【0086】
上記ステップSC30に続くステップSC31では、ステップSC5と同様に、TCS制御及びABS制御の介入しきい値を減少補正して、制御の介入頻度を高め、しかる後に制御終了のエンドとなる。このことで、TCS制御及びABS制御の介入頻度が高められるので、SCS制御が禁止されていても、制動時の車両の姿勢の不安定化や駆動輪21FR,21FLの空転に起因する車両の姿勢の不安定化を防止することができる。つまり、SCS制御が不十分であっても、これを補完して車両の走行安定性を確保することができる。
【0087】
なお、上記ステップSC31では、TCS制御及びABS制御の介入しきい値の減少補正により制御の介入頻度を高める他に、TCS制御及びABS制御の制御ゲインを増大させて制御の応答性を向上させるようにしてもよく、また、それらを両方ともに行ってもよい。
【0088】
上記図8のフローチャートにおいて、ステップSC12,SC17,SC20,SC22,SC23及びSC28が異常状態判定手段5cに対応している。また、ステップSC11以降のフェールセーフ手段5dによる各処理のうち、ステップSC16及びSC31が感度補正部56に対応している。
(センサ系統のフェールセーフ処理)
次に、図8のステップSC20及びステップSC21における、センサ系統すなわち、車輪速センサ6,6,…、横加速度センサ7、ヨーレイトセンサ8、舵角センサ9、液圧センサ33等のフェールセーフ判定及び処理についてそれぞれ説明する。
(舵角センサ)
舵角センサ9の故障判定は、例えば、従動輪である左右の後輪21RR,21RLの間の車輪速の偏差量と舵角センサ9の出力値とを比較することで行われる。従って、車両が旋回走行するまでは判定することができないので、この間、SCS制御を禁止して、TCS制御及びABS制御のみを実行する。或いは、ヨーレイトψ′、横加速度Gy 又は車輪速v1 〜v4 に基づいて操舵角を推定演算し、この演算された疑似操舵角に基づいて代替制御を実行してもよい。
【0089】
そして、舵角センサ9の故障判定がなされて、正常であることが確定した場合、直ちにSCS制御が行われると、車両の走行状態によっては、SCS制御に起因して旋回姿勢が崩れることも考えられるので、以下のような対応を行う。すなわち、TCS制御が行われておらずかつSCS制御の必要がないような安定した走行状態では、直ちにSCS制御の禁止を解除する。
【0090】
また、TCS制御が行われておらずかつSCS制御の制御介入条件が満たされている場合には、まず、上述の如くヨーレイトψ′、横加速度Gy 又は車輪速v1 〜v4 に基づいて推定演算した疑似操舵角に基づいて代替制御を実行し、この代替制御が終了した後に、通常のSCS制御を実行する。或いは、まず、SCS制御を禁止しておいて、SCS制御の制御介入条件が満たされないようになってから、制御介入を許可するようにしてもよく、この他、イグニッションオフで車両の運転終了となるまでSCS制御を禁止するようにしてもよい。
【0091】
これに対し、舵角センサ9の故障判定が成されて、故障であることが確定した場合には、SCS制御又はTCS制御の実行中であれば、それらの制御を保持しながら制御量を徐々に小さくさせていって、その後、制御を禁止すればよく、或いは、SCS制御、ABS制御及びTCS制御を直ちに全て禁止するようにしてもよい。
(ヨーレイトセンサ)
ヨーレイトセンサ8の故障判定は、例えば、該ヨーレイトセンサ8による検出値を、舵角センサ9による検出値や横加速度センサ7による検出値を基準として行われ、或いは、舵角センサ9の異常判定の場合と同様に、従動輪である左右の後輪21RR,21RLの間の車輪速の偏差量を基準として行われる。従って、上記舵角センサ9と同様、車両が旋回走行するまでは判定することができないので、この間、SCS制御を禁止して、TCS制御及びABS制御のみを実行する。或いは、操舵角θH 、横加速度Gy 又は車輪速v1 〜v4 に基づいてヨーレイトを推定演算し、この演算された疑似ヨーレイトに基づいて代替制御を実行してもよい。
【0092】
そして、ヨーレイトセンサ8の故障判定がなされて、正常であることが確定した場合、上述の舵角センサ9の場合と同様の対応を行う。すなわち、TCS制御が行われておらずかつ車両の旋回姿勢が安定していてSCS制御の必要がないような走行状態では、直ちにSCS制御の禁止を解除する。
【0093】
また、TCS制御が行われておらずかつSCS制御の制御介入条件が満たされている場合には、まず、上述の如く操舵角θH 、横加速度Gy 又は車輪速v1 〜v4 に基づいて推定演算した疑似ヨーレイトに基づいて代替制御を実行し、この代替制御が終了した後に、通常のSCS制御を実行する。或いは、まず、SCS制御を禁止しておいて、SCS制御の制御介入条件が満たされないようになってから、制御介入を許可するようにしてもよく、この他、イグニッションオフで車両の運転終了となるまでSCS制御を禁止するようにしてもよい。
【0094】
これに対し、ヨーレイトセンサ8の故障判定がなされて、故障であることが確定した場合には、SCS制御又はTCS制御の実行中であれば、それらの制御を保持しながら制御量を徐々に小さくさせていって、その後、制御を禁止すればよく、或いは、SCS制御、ABS制御及びTCS制御を直ちに全て禁止するようにしてもよい。
(横加速度センサ又は液圧センサ)
横加速度センサ7の故障判定は、例えば、舵角センサ9による検出値を基準として行われ、上記ヨーレイトセンサ8や舵角センサ9と同様、車両が旋回走行するまでは判定することができない。また、液圧センサ33の故障判定は、例えば、車両の制動時に、体速Vscs の微分演算により算出される車両の前後加速度を基準として行われ、或いは、前後加速度センサが搭載されていれば、該前後加速度センサによる検出値を基準として行われるが、ドライバのブレーキ操作による車両の制動があるまでは判定することができない。
【0095】
そこで、上記横加速度センサ7及び液圧センサ33についても、上記操舵角センサ9やヨーレイトセンサ8と同様に、故障判定が確定するまでの間は、SCS制御を禁止して、TCS制御及びABS制御を実行する。或いは、車両の横加速度Gy やブレーキ液圧を、それぞれ、操舵角θH 、ヨーレイトψ′、車輪速v1 〜v4 又は車体速Vscs に基づいて推定演算し、この推定演算値に基づいて代替制御を実行してもよい。
【0096】
また、故障判定がなされた場合は、正常確定及び故障確定のいずれの場合でも、それぞれ上記舵角センサ9やヨーレイトセンサ8の場合と同様のフェールセーフ処理を行う。
(車輪速センサ)
車輪速センサ6〜6の故障判定は、例えば、4輪のうちの1輪又は2輪の特定の車輪21FR,21FL,…の車輪速v1 ,v2 ,…が、所定時間以上継続して車体速よりも低い場合に、該特定の車輪FR,21FL,…の車輪速センサ6,6,…が異常と判定する。従って、車両の発進直後を除けば、直ちに判定結果が確定するので、通常、SCS制御やABS制御が実行されるようになるるまでには、必ず故障判定が終了していると考えられる。
【0097】
そこで、車両の発進直後の判定確定前はTCS制御を禁止し、正常判定が確定したときは、TCS制御の介入条件が満たされないようになってから、TCS制御の介入を許可する一方、故障判定が確定したときには、直ちにSCS制御及びABS制御も禁止する。但し、SCS制御又はTCS制御の実行中に車輪速センサ6,6,…が壊れて異常判定がなされた場合には、それらの制御を保持しながら制御量を徐々に小さくさせていって、しかる後に制御禁止とする。
【0098】
また、ノイズ印加による車輪速センサ6,6,…の異常判定がなされた場合には、この車輪速センサ6,6,…を制御対象から外し、さらに、SCS制御における車体速Vscs の演算からも除外するようにしてもよい。なお、ノイズ印加による車輪速センサ6,6,…の異常判定がなされた場合には、SCS制御、ABS制御及びTCS制御を全て禁止するようにしてもよく、或いは、駆動輪である前輪21FR又は21FLの異常判定がなされた場合にのみ、上記全ての制御を禁止するようにしてもよい。
【0099】
ここで、4輪のうちのいずれか1つの車輪21FR,21FL,…にテンパータイヤが装着されている場合は、その車輪21FR,21FL,…の車輪速が常に他の3輪よりも高くなるので、上述のノイズ印加による異常判定がなされた場合と同様にフェールセーフ処理を行うようにする。また、テンパータイヤが装着されていることを判定して、この車輪21FR,21FL,…の車輪速センサ6,6,…から入力される車輪速v1 ,v2 ,…を補正してSCS制御を実行するようにしてもよいが、この場合には、TCS制御の誤作動を避けるために、TCSブレーキ制御を、ドライバによるアクセル操作量が所定以上であるときに限定するか、或いは、上記テンパータイヤ装着輪の車輪速が所定以上の増加したときに限定するようにする。この他、テンパータイヤ装着輪が4輪のうちのいずれであるかによって制御内容を変更することもできる。
【0100】
その他、パーキングスイッチの異常判定がなされた場合には、SCS制御を全て禁止する。但し、例えば、パーキングスイッチがオン状態になっているにもかかわらず、車両が所定時間以上高速走行しているような場合には、単なるスイッチの故障と考えられるので、通常通りのSCS制御を実行するようにしてもよい。
【0101】
上述の如く、この実施形態に係る車両の姿勢制御装置によれば、SCS制御を正常に行うことのできない異常時に、フェールセーフ手段5dにより、3つのフェールセーフ形態のうちのいずれか1つが異常状態に応じて選択される。すなわち、SCS制御の実行中に、エンジン系統11,13又はブレーキ系統2,2,…,3,4が故障したときには、故障した方の系統の制御が禁止されて誤った姿勢制御が防止されるとともに、個所していない方の系統によるSCS制御(縮退制御)実行される。また、センサ系統6,6,…,7,8,9,33が故障したときには、故障したセンサを除いた他のセンサからの入力や疑似信号等に基づいて代替の制御(縮退制御)が実行されるので、実行可能な範囲でSCS制御を継続することができる。
【0102】
また、第1のCPU5aが故障したとき、もしくは、SCS制御の実行中でないときに上記エンジン系統11,13、ブレーキ系統2,2,…,3,4又はセンサ系統6,6,…,7,8,9,33のうちのいずれかが故障したときには、SCS制御自体を禁止することで、誤った姿勢制御が行われることを確実に防止することができる。
【0103】
さらに、リザーバタンク内のブレーキ液の貯溜量が所定量以下になったとき、ドライバに警報を与えるための警報ワーニングを実行する一方、SCS制御はそのまま実行する。このことで、ドライバはブレーキ液の減少に気がついて適宜ブレーキ液を補給することができる。
【0104】
このように、フェールセーフ手段5dにより異常状態に応じて適切なフェールセーフ形態が選択されることで、異常時の車両の走行安定性を従来までと比べて向上させることができる。
【0105】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、車両の直進時及び旋回時のいずれの場合も同様のTCS制御を実行するようにしているが、これに限らず、例えば、車両の旋回時に、制御の開始しきい値及び制御目標値を直進時よりも小さくさせて、車両の旋回姿勢をより安定寄りに制御するTCS旋回制御を実行するようにしてもよい。
【0106】
そして、このようにした場合のセンサ系統のフェールセーフ処理としては、例えば、舵角センサ9の故障時には、ヨーレイトセンサ8又は横加速度センサ7による検出値に基づいて上記TCS旋回制御を実行すればよく、この他、ヨーレイトセンサ8の故障時には、舵角センサ9又は横加速度センサ7による検出値に基づいて、また、横加速度センサ7の故障時には、舵角センサ9又はヨーレイトセンサ8による検出値に基づいて、上記TCS旋回制御を実行すればよい。
【0107】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明における車両の姿勢制御装置によれば、姿勢制御手段による車両の姿勢制御を正常に行うことのできない異常状態が、異常状態検出手段により検出されたとき、フェールセーフ手段により、上記異常状態に応じた適切なフェールセーフ形態が選択されることで、異常時における車両の走行安定性を従来よりも向上させることができる。
【0108】
すなわち、制動手段の制御及びエンジン出力の制御のうちのいずれか一方を禁止することで、制動手段又はエンジン出力の誤制御に起因する車体姿勢の崩れを防止することができる一方、異常時にも実行可能な範囲で姿勢制御を行うことができる。
【0109】
請求項3記載の発明によれば、エンジンの運転状態が所定の高回転域にある場合には、エンジン出力の制御を禁止するときに制動手段の作動制御を併せて禁止することで、ブレーキに過大な負担がかかることを防止することができる。
【0110】
請求項4記載の発明によれば、旋回姿勢の修正よりも制動を重視した姿勢制御を行うことで、通常の姿勢制御を正常に行うことができなくても、車速の低下によって車両の旋回姿勢の安定化が図られる。
【0111】
請求項5記載の発明によれば、アンチスキッドブレーキ手段の制御感度を高めることで、制動時の車両の姿勢の不安定化を防止して、車両の走行安定性を確保することができる。
【0112】
請求項6記載の発明によれば、トラクション制御手段の制御感度を高めることで、駆動輪の空転に起因する車両の姿勢の不安定化を防止して、車両の走行安定性を確保することができる。
【0113】
請求項7記載の発明によれば、異常状態において姿勢制御手段による縮退制御の介入頻度を高めることで、車両の旋回姿勢の崩れが極く僅かなうちに修正するようにして、車両の走行安定性を確保することができる。
【0114】
請求項8記載の発明によれば、ドライバが異常状態に応じた適切な運転操作を行うことができ、過度の不安感によるパニック状態に陥ることもない。
【0115】
請求項9、請求項10及び請求項11記載の発明によれば、それぞれ異常状態の内容が具体化されて、それらの異常状態に応じた適切なフェールセーフ処理が行われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の姿勢制御装置を適用した車両を示す概略構成図である。
【図2】 ブレーキの液圧系統を示す構成図である。
【図3】 SCSコントローラの構成を示す機能ブロック図である。
【図4】 基本制御の概要を示すフローチャート図である。
【図5】 状態量及び目標状態量の演算手順を示すフローチャート図である。
【図6】 制御介入判定以降のSCS制御手順を示すフローチャート図である。
【図7】 フェールセーフ判定及び処理の前半の制御手順を示すフローチャート図である。
【図8】 フェールセーフ判定及び処理の後半の制御手順を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
2,2,2,2 ブレーキ(制動手段)
3 加圧ユニット(制動手段)
4 ハイドロリックユニット(制動手段)
5a 第1のCPU(姿勢制御手段)
5c 異常状態検出手段
5d フェールセーフ手段
6,6,6,6 車輪速センサ(状態量検出手段)
7 横加速度センダ(状態量検出手段)
8 ヨーレイトセンサ(状態量検出手段)
9 舵角センサ(状態量検出手段)
11 エンジン
21FR,21FL,21RR,21RL 車輪
51 状態量演算部(状態量検出手段)
56 感度補正部
Claims (11)
- 車両の前後左右の各車輪に独立して制動力を付与可能な制動手段と、
上記車両の旋回姿勢に対応する車両状態量を検出する状態量検出手段と、
上記状態量検出手段により検出された検出値を、車両の走行状態に応じて設定される姿勢制御目標値と比較して、その偏差量が所定値以上に大きくなったとき、上記制動手段の作動により上記各車輪に制動力を分配して付与するとともに、エンジン出力を低下させて、車両の旋回姿勢を制御する姿勢制御手段とを備えた車両の姿勢制御装置において、
上記制動手段又はエンジン系統の少なくとも一方が故障して上記姿勢制御手段による姿勢制御を正常に行うことのできない異常状態を、検出する異常状態検出手段と、
上記の異常状態が上記異常状態検出手段により検出されたとき、姿勢制御手段による姿勢制御自体の禁止、又は姿勢制御手段による縮退制御の実行のいずれか一方を異常状態に応じて選択するフェールセーフ手段とを設け、
このフェールセーフ手段を、上記姿勢制御手段による制御の実行中に上記制動手段又はエンジン系統のいずれか一方のみが故障したときには、その故障した方の制御を禁止する一方、他方の制御は車両の走行状態に依らず禁止しない、という縮退制御を選択するように構成した
ことを特徴とする車両の姿勢制御装置。 - 請求項1において、
フェールセーフ手段は、姿勢制御手段による制御の実行中でないときに、制動手段又はエンジン系統の少なくとも一方が故障すれば、車両が所定の高速走行状態にあるか又は所定の低μ路面を走行しているとき以外は、姿勢制御自体の禁止を選択するものであることを特徴とする車両の姿勢制御装置。 - 請求項1において、
フェールセーフ手段は、姿勢制御手段による縮退制御を選択してエンジン出力の制御を禁止するとき、エンジンが所定の高回転状態にある場合には、上記姿勢制御手段による制動手段の作動制御を併せて禁止するように構成されていることを特徴とする車両の姿勢制御装置。 - 請求項1において、
フェールセーフ手段により選択される縮退制御は、各車輪に分配して付与される制動力の左右の車輪間の偏差量を、通常時の姿勢制御に比べて小さくさせるものであることを特徴とする車両の姿勢制御装置。 - 請求項1において、
車両の各車輪への制動力を制御して該各車輪のブレーキロックを阻止するアンチスキッドブレーキ手段を備えており、
フェールセーフ手段は、異常状態検出手段による異常検出時に上記アンチスキッドブレーキ手段の制御感度を高める感度補正部を備えている
ことを特徴とする車両の姿勢制御装置。 - 請求項1において、
車両の駆動輪への駆動力を制御して該駆動輪の空転を阻止するトラクション制御手段を備えており、
フェールセーフ手段は、異常状態検出手段による異常検出時に上記トラクション制御手段の制御感度を高める感度補正部を備えている
ことを特徴とする車両の姿勢制御装置。 - 請求項1において、
フェールセーフ手段は、縮退制御の実行を選択したとき、姿勢制御手段による制御介入の頻度を高めるように構成されていることを特徴とする車両の姿勢制御装置。 - 請求項1において、
フェールセーフ手段は、姿勢制御自体の禁止又は縮退制御の実行のいずれかを選択したとき、それぞれ、互いに異なるワーニングを実行するように構成されていることを特徴とする車両の姿勢制御装置。 - 請求項1において、
フェールセーフ手段は、姿勢制御手段による制御の実行中に、状態量検出手段を構成する複数のセンサのうちのいずれかが故障したとき、この故障したセンサ以外の他のセンサからの信号に基づいて行う姿勢制御を選択するように構成されていることを特徴とする車両の姿勢制御装置。 - 請求項1において、
フェールセーフ手段は、姿勢制御手段が故障したとき、該姿勢制御手段による姿勢制御自体の禁止を選択するように構成されていることを特徴とする車両の姿勢制御装置。 - 請求項1において、
制動手段は、車両の各車輪に設けた液圧式ブレーキに個別にブレーキ液圧を供給して、車輪に独立して制動力を付与可能に構成されており、
フェールセーフ手段は、上記制動手段におけるブレーキ液のリザーバタンク内の貯溜量が所定量以下になったとき、ワーニングの実行を選択するように構成されていることを特徴とする車両の姿勢制御装置。
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