JP4099840B2 - 車両のスリップ制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の旋回走行状態に対応する旋回状態量を含む複数の走行状態量の検出値に基づいて車両の挙動を制御する挙動制御手段を備えた車両のスリップ制御装置に関し、特に上記旋回状態量を検出するための旋回状態量検出手段の故障判定が終了するまでの間のフェールセーフ技術の分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の車両のスリップ制御装置として、例えば、特開平6−87421号公報に開示されるように、車両の左右両側車輪に対する制動力をそれぞれ異なる大きさに分配して車体重心回りにヨーモーメントを発生させることで、車両のヨーレイトを制御目標値に一致させて、制動時の車両の操縦安定性を高めるようにしたものが知られている。このものでは、各種センサにより車両の姿勢状態を含む走行状態を検出するようにしており、該センサの断線や短絡或いは制御装置自体の故障等が発生すると制御不能になってしまうことから、上述の如き故障が検出されたときには、挙動制御を禁止することが行われている。そして、その際制御を実行中であれば、制御中の各車輪の制動力を無制御の状態まで次第に変化させるようにして、ヨーレイトの急変による車両の挙動変化を防止しつつ挙動制御を中止するようにしている。
【0003】
また、特開平9−109855号公報には、車輪速度センサに異常が生じたときに挙動制御を実行中であれば、制御を中止する前に、異常な車輪速度センサによる検出値に依存しない代替の挙動制御を所定時間だけ行うことで、制御の中止に伴う車両の挙動変化を防止するようにしたものが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来のスリップ制御装置においては、例えばドライバによるステアリング操舵角を検出する舵角センサや車両に作用する横加速度を検出する横加速度センサ等は、車両が所定以上の旋回状態になるまでは検出値が正常か否かの正確な故障判定を行うことができないため、舵角センサや横加速度センサ等が故障していてもその故障を検出できず、故障したセンサからの出力信号に基づいて誤った挙動制御が行われてしまう虞れがある。この場合には、車両がドライバの運転操作や意志とは無関係な挙動を示すので、ドライバが著しく大きな違和感を感じるという不具合が生じるばかりでなく、さらに、上記の誤った挙動制御に起因して車両の旋回姿勢が崩れてしまう虞れもある。
【0005】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両が所定の旋回状態になって全てのサンサの故障判定が終了するまでの制御手順に工夫を凝らすことで、舵角センサや横加速度センサ等が故障していたとしても、その故障に起因する誤った挙動制御を防止することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の解決手段では、車両が所定の旋回状態になって旋回状態量検出手段の故障判定が終了するまでの間、旋回状態量をそれ以外の走行状態量に基づいて推定し、この推定値に基づいて車両の走行方向が目標走行方向に収束するように車両の挙動制御を実行するようにした。
【0007】
具体的には、請求項1記載の発明では、車両の旋回走行状態に対応する旋回状態量を含む複数の走行状態量を検出し、その検出値に基づいて、車両の走行状態量が目標走行状態量に収束するように車両の挙動を制御する挙動制御手段を備えた車両のスリップ制御装置を対象とする。そして、上記複数の走行状態量のうちの少なくともヨーレイトを検出する旋回状態量検出手段と、車両が、上記旋回状態量検出手段の故障を検出可能な所定の旋回走行状態になったとき、上記旋回状態量検出手段の正常或いは故障を判定する故障判定手段と、車両が発進後、上記所定の旋回走行状態になって、上記故障判定手段による故障判定が終了するまでの間、ヨーレイトをそれ以外の走行状態量の検出値に基づいて推定する推定手段とを備え、上記姿勢制御手段は、車両が発進後、上記所定の旋回走行状態になって、上記故障判定手段による旋回状態量検出手段の故障判定が終了するまでの間、上記推定手段により推定されたヨーレイトの推定値に基づいて車両の挙動制御を実行する構成とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明では、車両の旋回走行状態に対応する旋回状態量を含む複数の走行状態量を検出し、その検出値に基づいて、車両の走行状態量が目標走行状態量に収束するように車両の挙動を制御する挙動制御手段を備えた車両のスリップ制御装置を対象とする。そして、上記複数の走行状態量のうちの少なくとも横加速度を検出する旋回状態量検出手段と、車両が、上記旋回状態量検出手段の故障を検出可能な所定の旋回走行状態になったとき、上記旋回状態量検出手段の正常或いは故障を判定する故障判定手段と、車両が発進後、上記所定の旋回走行状態になって、上記故障判定手段による故障判定が終了するまでの間、横加速度をそれ以外の走行状態量の検出値に基づいて推定する推定手段とを備え、上記姿勢制御手段は、車両が発進後、上記所定の旋回走行状態になって、上記故障判定手段による旋回状態量検出手段の故障判定が終了するまでの間、上記推定手段により推定された横加速度の推定値に基づいて車両の挙動制御を実行する構成とする。
【0009】
上記請求項1、2の発明の構成によれば、車両が発進後、所定の旋回状態になって、ヨーレイトや横加速度を検出する旋回状態量検出手段の故障を検出可能になり、故障判定手段による故障判定が終了するまでの間、推定手段によるヨーレイトや横加速度の推定値に基づいて車両の挙動制御が実行されるので、上記旋回状態量検出手段が故障していたとしても、該故障している旋回状態量検出手段からの出力信号、即ち誤ったヨーレイトや横加速度に基づく誤った挙動制御が行われることを防止することができる。よって、誤った挙動制御によってドライバが大きな違和感を感じることがなくなり、また、誤った挙動制御に起因する車両の旋回姿勢の崩れを防止することができる。
【0010】
請求項3記載の発明では、請求項1又は2のいずれかに記載の発明において、車両の各車輪の車輪速をそれぞれ検出する車輪速センサからの出力信号に基づいて各車輪のスリップに関する値を所定以下に制御するスリップ制御手段と、故障判定手段による旋回状態量検出手段の故障判定が終了するまで、上記スリップ制御手段による制御感度を増大させるスリップ制御補正手段とを設けた。
【0011】
このことで、スリップ制御手段を設け、故障判定手段による旋回状態量検出手段の故障判定が終了するまで、上記スリップ制御手段による制御感度を増大させることで、各車輪のスリップに関する値を極めて小さく制御してロック状態や空転状態を確実に防止することができ、これにより、車両の操縦安定性を高めることができる。尚、上記スリップに関する値は例えば車輪スリップ量や車輪スリップ率とすればよい。また、上記車輪速センサの故障判定は車両の走行開始後直ちに終了するので、該車輪速センサの故障に起因して誤った車輪スリップ量制御が行われることはない。
【0012】
請求項4記載の発明では、請求項3記載の発明におけるスリップ制御補正手段は、故障判定手段による旋回状態量検出手段の故障判定が終了するまで、スリップ制御手段の制御開始しきい値を小さくするものとする。このことで、スリップ制御手段の制御開始しきい値を小さくすることで、車輪のスリップ量が僅かなうちに早めに制御が開始されて制御の頻度が高まり、よって、制御感度を増大させることができる。
【0013】
請求項5記載の発明では、請求項3記載の発明におけるスリップ制御補正手段は、故障判定手段による旋回状態量検出手段の故障判定が終了するまで、スリップ制御手段の制御ゲインを大きくするものとする。このことで、スリップ制御手段の制御ゲインを大きくすることで、制御の応答性を高めて制御感度を増大させることができる。
【0014】
請求項6記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、さらに、故障判定手段による旋回状態量検出手段の故障判定が終了するまで、挙動制御手段による車両の挙動制御の制御量を抑制する挙動制御補正手段を設けた。このことで、推定手段による旋回状態量の推定値に基づいて車両の挙動制御が行われる間、該挙動制御の制御量が抑制されて控え目な挙動制御となるので、上記推定手段による推定値と実際の旋回状態量との間の推定誤差に起因して上記挙動制御が不十分なものになっても、ドライバの感じる違和感は大きなものにはならない。
【0015】
請求項7記載の発明では、請求項1、2又は6のいずれか1つに記載の発明において、故障判定手段による故障判定が終了するまで、挙動制御手段による車両の挙動制御の制御開始しきい値を小さく補正する挙動制御補正手段を設けた。このことで、車両の挙動制御の制御開始しきい値が小さくされて、車両の旋回姿勢の崩れが極く僅かなうちに早めに挙動制御が実行されるようになるので、推定手段による推定値と実際の旋回状態量との間の推定誤差に起因して上記挙動制御が不十分なものになっても、車両の操縦安定性を確保することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る車両のスリップ制御装置を適用した車両を示し、1は車体、2,2,…は、前後左右の4つの車輪21FR,21FL,21RR,21RLに個別に配設された4つの液圧式ブレーキ、3は上記各ブレーキ2に圧液を供給するための加圧ユニット、4は該加圧ユニット3からの圧液を上記各ブレーキ2に分配供給する液圧ユニット(Hudraulic Unit:以下HUという)である。また、5は車両の操縦安定性を高めるように各車輪のスリップ状態及び車両の挙動を制御するメインコントローラであり、6は上記各車輪21の車輪速を検出する電磁ピックアップ式の車輪速センサ、7は車両に作用している左右方向の横加速度(旋回状態量)Gy を検出する横加速度センサ、8は車両に作用しているヨーレイト(旋回状態量)ψ′を検出するヨーレイトセンサ、9はステアリングの操舵角(旋回状態量)θH を検出する舵角センサである。上記横加速度センサ7、ヨーレイトセンサ8及び舵角センサ9によりそれぞれ旋回状態量検出手段が構成されている。
【0017】
さらに、10はドライバのブレーキ操作に応じたブレーキ液圧(マスタシリンダ圧)を発生するマスタシリンダ、11は複数の気筒を有するエンジンである。図示しないが、このエンジン11の吸気通路には、アクチュエータにより駆動されるスロットル弁が設けられ、このスロットル弁下流の吸気通路にエンジン11の各気筒毎にインジェクタが設けられており、該スロットル弁の開度制御及びインジェクタの作動制御により、エンジン出力を制御するようになっている。また、12はエンジン11の出力回転を変速して図示しないドライブシャフト等により駆動輪側に伝達するオートマチックトランスミッション(AT)であり、13は、ドライバによるアクセル操作に応じて上記スロットル弁の開度制御、インジェクタの作動制御及び点火時期制御を行って、エンジン11の運転状態を制御するEGIコントローラである。
【0018】
尚、上記車両には、図示しないが前後方向に作用している加速度を検出する前後加速度センサが設けられている。
【0019】
図2に示すように、上記右側前輪21FRのブレーキ2と左側後輪21RLのブレーキ2とは、第1液圧管路22aによりマスタシリンダ10に接続される一方、左側前輪21FLのブレーキ2と右側後輪21RRのブレーキ2とは、上記第1液圧管路22aとは異なる第2液圧管路22bによりマスタシリンダ10に接続されており、所謂、X配管タイプの互いに独立した2つのブレーキ系統が構成されている。そして、ドライバによるブレーキペダル14の踏み操作に応じて上記車輪21FR,21FL,…にそれぞれ制動力が付与されるようになっている。
【0020】
上記加圧ユニット3は、第1及び第2液圧管路22a,22bにそれぞれ接続された液圧ポンプ31a,31bと、これらの液圧ポンプ31a,31b及びマスタシリンダ10を断続可能なように上記第1及び第2液圧管路22a,22bにそれぞれ配設されたカットバルブ32a,32bと、これらのカットバルブ32a,32bよりもマスタシリンダ10側の液圧を検出する液圧センサ(マスタシリンダ圧センサ)33とを備えている。そして、SCSコントローラ5からの信号に応じて上記カットバルブ32a,32bが閉状態にされることで、ドライバによるブレーキ操作とは無関係に、上記液圧ポンプ31a,31bから吐出される圧液がHU4を介してブレーキ2,2,…に供給される。
【0021】
また、上記HU4は、第1液圧管路22a又は第2液圧管路22bを介して加圧ユニット3から供給される圧液を各ブレーキ2のホイールシリンダ(図示せず)に個別に供給して増圧させる加圧バルブ41,41…と、上記各ブレーキ2をリザーバタンク42に接続し、圧液を排出させて減圧する減圧バルブ43,43…とを備えている。そして、SCSコントローラ5からの信号に応じて上記加圧バルブ41,41,…及び減圧バルブ43,43,…の開度がそれぞれ独立に増減制御されることで、上記ブレーキ2,2,…のホイールシリンダ圧が増減されて、各車輪21FR,21FL,…に付与される制動力がそれぞれ制御される。
【0022】
上記メインコントローラ5は、図3に示すように、周知のABS(Anti-Skid Brake System)制御及びTCS(Traction Control System )制御を行うスリップ制御手段としての第1のCPU(Central Processing Unit )5aを備えている。上記ABS制御は、各車輪21FR,21FL,…のロック傾向が強まったとき、各ブレーキ2に供給される液圧を低下させることで、ブレーキロックを阻止するものであり、また、上記TCS制御は、駆動輪である左右の前輪21FR,21FLの空転傾向が強まったとき、該左右の前輪21FR,21FLの駆動力を抑制することで空転を阻止するものである。
【0023】
また、上記メインコントローラ5は、後に詳述するSCS(Stability Control System)制御を行う挙動制御手段としての第2のCPU5bを備えており、このSCS制御は、車両の旋回姿勢が所定以上崩れたとき各輪毎の制動力の制御により車両にヨーモーメントを作用させるとともに、エンジン出力を低下させて、その旋回姿勢が目標走行方向に向かって収束するように車両の挙動を制御するものである。
【0024】
さらに、上記メインコントローラ5には、車輪速センサ6,6,…、横加速度センサ7、ヨーレイトセンサ8、舵角センサ9、液圧センサ33、及び前後加速度センサの出力異常等の故障を判定する故障判定部5cと、上記車輪速センサ6,6,…により検出される車輪速v1 ,v2 ,…に基づいて車両の旋回状態量すなわち横加速度Gy 、ヨーレイトψ′及びステアリング操舵角θH を推定演算する推定演算部5dとが設けられ、また、車両が所定の旋回状態になって上記故障判定部5cによる各センサの故障判定が終了するまでの間、第1のCPU5aによるABS制御及びTCS制御の制御感度を増大させるとともに、上記第2のCPU5bによるSCS制御の制御量を抑制するスリップ制御補正手段及び挙動制御補正手段としての制御補正部5eが設けられている。そして、上記第2のCPU5bは、上記故障判定部5cによる各センサの故障判定が終了するまでの間、上記推定演算部5eによる推定演算値に基づいてSCS制御を実行するようになっている。
(基本制御)
まず、メインコントローラ5による基本制御の手順を図4に示すフローチャート図に基づいて説明する。この基本制御においては、ドライバが車両に乗り込んでイグニッションキーをオン状態にすると、ステップSA1でメインコントローラ5やEGIコントローラ13の初期設定を行って、前回の処理で記憶している演算値等をクリアする。次のステップSA2では、車輪速センサ6,6,…等の原点補正を行った後に、これらの各センサから上記メインコントローラ5に対する信号入力を受け入れる。ステップSA3においては、これらの入力信号に基づき、上記車両の車体速、車体減速度、各輪位置での車体速等の共通車両状態量を演算する。
【0025】
続いて、ステップSA4、SA5及びSA6で、後に詳述する如くそれぞれSCS制御の制御演算、ABS制御の制御演算及びTCS制御の制御演算を行い、その後、ステップSA7でこれらの3つの制御の各演算結果を所定の方法により調停して、加圧ユニット3、HU4及びEGIコントローラ13への制御出力量を決定する。そして、ステップSA8で上記加圧ユニット3等へ制御出力して、車輪21FR,21FL…にそれぞれ所要の制動力を付与するとともに、車両の減速による挙動安定化を図る場合には、EGIコントローラ13によりエンジン11の出力を低下させ、ステップSA9でフェールセーフ判定及び処理を行った後にリターンする。
(SCS制御)
次に、SCS制御の詳細について図5及び図6に基づいて説明する。
【0026】
図5に示すフローチャートのステップSB2においては、車輪21FRの車輪速v1 、車輪21FLの車輪速v2 、車輪21RRの車輪速v3 、車輪21RLの車輪速v4 からの各信号を受け入れるとともに、後述の故障判定フラグFerr の値に対応して、各センサの故障判定が終了していて全てのセンサが正常であれば(Ferr =0)、車両の横加速度Gy 、車両のヨーレイトψ′及びステアリングの操舵角θH からの各信号を受け入れる。一方、各センサの故障判定が終了していない間は(Ferr =1)、上記各センサからの入力値に代えて後述の如く推定演算部5dにより推定演算される推定演算値の入力を受け入れる。続いて、ステップSB4では、上記車輪速v1 ,v2 ,…に基づいて車体速Vscs を演算し、ステップSB6では、上記車輪速v1 ,v2 ,…と横加速度Gy とに基づいて各輪の垂直加重を演算する。また、ステップSB8では、上記車体速Vscs 、車輪速v1 ,v2 ,…、横加速度Gy 、ヨーレイトψ′及び操舵角θH に基づいて車体横滑り角βを演算する。
【0027】
上記ステップSB8に続くステップSB10では、上記車輪速v1 ,v2 ,…、車体速Vscs 、車体横滑り角β、ヨーレイトψ′及び操舵角θH に基づいて車輪21FRのスリップ率s1 、車輪21FLのスリップ率s2 、車輪21RRのスリップ率s3 、車輪21RLのスリップ率s4 及びこれら各輪のスリップ角を演算する。続いて、ステップSB12では、上記各輪の垂直加重、スリップ率s1 ,s2 ,…及びスリップ角に基づいて、車輪21FR,21FL,…のそれぞれについて、タイヤ23,23,…の発揮し得る全グリップ力に対する現在のグリップ力の割合である車輪負荷率を演算する。そして、ステップSB14では、車輪負荷率と横加速度Gy とに基づいて路面摩擦係数μscs を演算し、ステップSB16では、路面摩擦係数μscs 、車体速Vscs 及び操舵角θH に基づいて目標ヨーレイトψ′TR及び目標横滑り角βTRをそれぞれ演算する。
【0028】
尚、上記各ステップSB4〜SB16における演算はそれぞれ第2のCPU5bにより周知の数学的手法に基づいて行われる。
【0029】
続いて、図6に示すフローチャートのステップSB18では、ヨーレイトψ′と目標ヨーレイトψ′TRとの間のヨーレイト偏差量(|ψ′TR−ψ′|)、及び、車体横滑り角βと目標横滑り角βTRとの間の横滑り角偏差量(|βTR−β|)を、それぞれ後述のヨーレイト制御の介入判定のために予め設定された介入判定しきい値(制御開始しきい値)Δψ′ST及びΔβST1 と比較する。そして、上記ヨーレイト偏差量(|ψ′TR−ψ′|)が介入判定しきい値Δψ′ST以上であるか、又は上記横滑り角偏差量(|βTR−β|)が介入判定しきい値ΔβST1 以上である場合には、目標走行方向に対する車両の旋回姿勢のずれが大きくなりつつあり、SCS制御介入が必要であると判定してステップSB20に進む。一方、上記ヨーレイト偏差量が介入判定しきい値Δψ′STよりも小さい値であり、かつ横滑り角偏差量が介入判定しきい値ΔβST1 よりも小さい値である場合には、SCS制御介入の必要なしと判定してリターンする。
【0030】
続くステップSB20では、横滑り角偏差量(|βTR−β|)を、後述の横滑り角制御への切換えの判定のために予め設定された切換判定しきい値(制御開始しきい値)ΔβST2 (ΔβST2 >ΔβST1 )と比較する。そして、上記横滑り角偏差量(|βTR−β|)が切換判定しきい値ΔβST2 よりも小さい場合には、ステップSB22に進んで、目標ヨーレイトψ′TRをSCS制御目標値として設定した後、ステップSB24に進み、ヨーレイト偏差量(|ψ′TR−ψ′|)に予め設定された制御ゲインG1 を乗算してSCS制御量ψ′amt を演算する。
【0031】
ψ′amt = G1 ×|ψ′TR−ψ′|
つまり、車両の旋回姿勢の変化が比較的小さく安定した状態にあると判定される間は、車両のヨーレイトψ′がドライバの運転操作に対応する目標ヨーレイトψ′TRに収束するよう、上記ヨーレイト偏差量(|ψ′TR−ψ′|)に比例する比較的小さなヨーモーメントを車両に作用させるようにすることで、その車両の挙動をドライバの運転操作に追従するように滑らかに変更させるヨーレイト制御を行うようにする。
【0032】
一方、上記ステップSB20で横滑り角偏差量(|βTR−β|)が切換判定しきい値ΔβST2 以上である場合には、ステップSB26に進んで目標横滑り角βTRをSCS制御目標値として設定した後、ステップSB28に進み、横滑り角偏差量(|βTR−β|)に予め設定された制御ゲインG2 を乗算してSCS制御量βamt を演算する。
【0033】
βamt = G2 ×|βTR−β|
つまり、車両の旋回姿勢が崩れかかっていると判定されたときには、車体横滑り角βが目標横滑り角βTRに収束するよう、上記横滑り角偏差量(|βTR−β|)に比例する比較的大きなヨーモーメントを車両に作用させるようにすることで、その車両の旋回姿勢を迅速に修正する横滑り角制御を行うようにする。
【0034】
そして、上記ステップSB24又はステップSB28に続くステップSB30では、各センサやHU4等のフェールセーフ判定及び処理を行い、続くステップSB32では、上記SCS制御、ABS制御及びTCS制御の各演算結果を所定の方式により調停する。この調停の概要について説明すると、SCS制御を行おうとする際にABS制御が行われている場合には、そのABS制御の制御量をSCS制御量ψ′amt 又はβamt に基づいて補正することにより、ABS制御を優先しつつSCS制御を行うようにする。また、SCS制御を行おうとする際にTCS制御が行われている場合には、そのTCS制御のための加圧ユニット3及びHU4の作動を中止してエンジン11の出力トルク低下の制御のみを行うようにして、SCS制御を実行する。
【0035】
続いて、ステップSB34において、SCS制御量ψ′amt 又はβamt に基づき、SCS制御のために制動力を付与する車輪21FR,21FL,…を選択するとともに、これらの選択された車輪21FR,21FL,…にそれぞれ付与する制動力量を演算する。この車輪の選択及び制動力量の演算について概説すれば、ヨーレイト制御において車両のヨーレイトψ′を右回りに増加させる場合、及び、横滑り角制御において車両の旋回姿勢を右側寄りに修正しようとする場合には、右側前輪21FRもしくは右側前後輪21FR,21RRに対し、上記SCS制御量ψ′amt 又はβamt に対応する制動力を付与して、車両に右回りのヨーモーメントを作用させる。反対に、車両のヨーレイトψ′を左回りに増加させる場合、及び、車両の旋回姿勢を左側寄りに修正しようとする場合には、左側前輪21FLもしくは左側前後輪21FL,21RLに対し、上記SCS制御量ψ′amt 又はβamt に対応する制動力を付与して、車両に左回りのヨーモーメントを作用させる。
【0036】
そして、上記ステップSB34に続くステップSB36において、ステップSB34で選択された車輪21FR,21FL,…に対しそれぞれ所要の制動力を付与するための各ブレーキ2へのブレーキ制御量(ホイールシリンダ圧)を演算し、さらにこれに対応するHU4の加圧バルブ41,41,…及び減圧バルブ43,43,…のそれぞれのバルブ開度等を演算する。
【0037】
続くステップSB38では、車両の減速による挙動の安定化のために必要なエンジン出力の低下量に対応するエンジン制御量を演算する。すなわち、エンジン11の出力トルク低下の制御では、EGIコントローラ13により、スロットル弁のアクチュエータを作動させて、ドライバのアクセル操作に関係なくスロットル弁開度を絞るとともに、燃料カット又は気筒カットを行って、エンジン11の出力トルクを低下させる。上記燃料カットとは、エンジン11の全気筒の燃料噴射を瞬間的に停止させることであり、また、気筒カットとは、いくつかの気筒の燃料噴射を同様に停止させることである。
【0038】
そして、ステップSB40で、上記ステップSB36及びステップ38での演算結果に基づいて加圧ユニット3、HU4及びEGIコントローラ13に制御出力してSCS制御を実行し、しかる後にリターンする。
【0039】
このようにして、前後左右の車輪21FR,21FL,…のそれぞれに独立して制動力を付与するSCSブレーキ制御により、車両の重心回りにヨーモーメントを作用させるとともに、エンジン11の出力を所定量低下させるSCSトルクダウン制御により車体速を低下させて、車両の走行方向が目標走行方向に収束するように車両の挙動を制御するようにしている。
(ABS制御)
次に、ABS制御の詳細について図7に示すフローチャート図に基づいて説明すると、ステップSC1では、ブレーキペダル14に付設された図示しないブレーキオンオフセンサからの出力信号に基づいて、ドライバによるブレーキ操作の有無を判定し、ブレーキ操作がなされていないNOと判定されればステップSC2に進んで、ドライバによるブレーキ操作の有無を表すブレーキフラグFbrake の値をFbrake =0としてリターンする。一方、ブレーキ操作がなされているYESと判定されればステップSC3に進み、各輪21FR,21FL,…の車輪速v1 ,v2 ,…、車体速及びマスタシリンダ圧から推定演算される路面摩擦係数μABS に基づいて、車輪スリップ率s1 ,s2 ,…の制御目標値である目標スリップ率sTRと、ABS制御の開始しきい値sSTとをそれぞれ演算する。
【0040】
続いて、ステップSC4では、後述の故障判定フラグFerr の値に対応して、上記開始しきい値sSTを補正する。すなわち、各センサの故障判定が終了していない間は(Ferr =1)、開始しきい値sSTの値を小さく補正して、車輪スリップ率s1 ,s2 ,…が僅かなうちにABS制御が開始されるようにする。
【0041】
ステップSC5以降の制御は各車輪21FR,21FL,…毎に個別に行われる。すなわち、まずステップSC5では、各輪の車輪スリップ率s1 ,s2 ,…を個別に開始しきい値sSTと比較して、車輪スリップ率s1 ,s2 ,…が開始しきい値sST以下のNOであればステップSC6に進む一方、車輪スリップ率s1 ,s2 ,…が開始しきい値sSTよりも大きいYESであれば、ステップSC7に進んでブレーキフラグFbrake =1とし、ステップSC8に進む。また、上記ステップSC6では、ブレーキフラグFbrake の値を判定し、Fbrake =1でブレーキ操作中のYESであればステップSC8に進む一方、Fbrake =0でブレーキ操作中でないNOであればリターンする。つまり、ABS制御は、一旦開始されるとドライバのブレーキ操作が中止されか、或いは角輪の車輪スリップ率s1 ,s2 ,…がそれぞれ目標スリップ率sTRになるまで継続される。
【0042】
続いて、ステップSC8及びSC9では、ABS制御を実行する各車輪21FR,21FL,…への制動力を制御するためのブレーキ制御量B(ホイールシリンダ圧)を演算する。すなわち、ステップSC8では、ベース制御量Bbaseを、各車輪21FR,21FL,…の車輪スリップ率s1 ,s2 ,…及び目標スリップ率sTRの間の偏差量と、該車輪スリップ率s1 ,s2 ,…の変化量とに応じてマップから読み込む。このマップはメインコントローラ5のメモリに電子的に格納されたもので、各車輪21FR,21FL,…の車輪スリップ率s1 ,s2 ,…及び目標スリップ率sTRの間の偏差量が大きいほどホイールシリンダ圧が小さくなるように、また、上記車輪スリップ率s1 ,s2 ,…の減少変化量が大きいほどホイールシリンダ圧が小さくなる一方、車輪スリップ率s1 ,s2 ,…の増大変化量が大きいほどホイールシリンダ圧が大きくなるように設定されている。
【0043】
続くステップSC9では、上記ベース制御量Bbaseに予め設定された制御ゲインk1 を乗算してブレーキ制御量Bを演算する。その際、上記ステップSC4と同様に、後述の故障判定フラグFerr の値に対応して制御ゲインk1 を補正する。すなわち、各センサの故障判定が終了していなければ(Ferr =1)、制御ゲインk1 の値を大きく補正してブレーキ制御量Bを大きくさせることで、ABS制御の応答性を高めるようにする。
【0044】
最後に、ステップSC10で、上記の演算したブレーキ制御量Bに基づいてHU4への制御出力を実行し、加圧バルブ41,41,…及び減圧バルブ43,43,…をそれぞれ開閉作動させて、ブレーキ2,2,…のホイールシリンダ圧を増減させることで、車輪21FR,21FL,…への制動力をそれぞれ制御する。これにより、車輪21FR,21FL,…の車輪スリップ率s1 ,s2 ,…がそれぞれ路面状況に応じた最適の目標スリップ率sTRにになるように制御されて、各車輪21FR,21FL,…は最大の制動力を発生するようになる。
(TCS制御)
次に、TCS制御の詳細について図8に示すフローチャートに基づいて説明すると、ステップSD1では、ドライバによるアクセル操作によりエンジン11のスロットル弁が開状態とされているか否かを判定し、スロットル弁が開状態になっていないNOと判定されればステップSD2に進んで、ドライバによるアクセル操作の有無を表すアクセルフラグFacc の値をFacc =0としてリターンする。一方、アクセル操作がなされているYESと判定されればステップSD3に進み、駆動輪である左右の前輪21FR,21FLの車輪速度v1 ,v2 、車体速度及びエンジン出力から推定演算される路面摩擦係数μTCS に基づいて、車輪スリップ率s1 ,s2 ,…の制御目標値である目標スリップ率sTRと、TCS制御の開始しきい値sSTとをそれぞれ演算する。
【0045】
続いて、ステップSD4では、後述の故障判定フラグFerr の値に対応して開始しきい値sSTを補正する。すなわち、各センサの故障判定が終了していない間は(Ferr =1)、開始しきい値sSTの値を小さく補正して、車輪スリップ率s1 ,s2 ,…が僅かなうちにTCS制御が開始されるようにする。
【0046】
ステップSD5では、左右の前輪21FR,21FLの車輪スリップ率s1 ,s2 を個別に開始しきい値sSTと比較して、車輪スリップ率s1 ,s2 が両方ともに開始しきい値sST以下のNOであればステップSD6に進む一方、車輪スリップ率s1 ,s2 のいずれかが開始しきい値sSTよりも大きいYESであれば、ステップSD7に進んでアクセルフラグFacc =1とし、ステップSD8に進む。また、上記ステップSD6では、アクセルフラグFacc の値を判定して、Facc =1でアクセル操作中であればステップSD8に進む一方、Facc =0でアクセル操作中でなければリターンする。つまり、TCS制御もABS制御と同様、一旦開始されるとドライバのアクセル操作が中止されか、或いは左右の前輪21FR,21FLの車輪スリップ率s1 ,s2 が両方ともに目標スリップ率sTRになるまで継続される。
【0047】
続いて、ステップSD8、SD9及びSD10では、左右の前輪21FR,21FLへの駆動力をそれぞれ制御するためのブレーキ制御量B(ホイールシリンダ圧)及びエンジン11の出力トルク低下の制御量(エンジン制御量)Eを演算する。すなわち、ステップSD8では、ブレーキ制御量Bのベース制御量Bbaseを、左右の前輪21FR,21FLのそれぞれについて、車輪スリップ率s1 ,s2 及び目標スリップ率sTRの間の偏差量と、該車輪スリップ率s1 ,s2 ,…の変化量とに応じてマップから読み取る。このマップはメインコントローラ5のメモリに電子的に格納されたもので、上記車輪スリップ率s1 ,s2 と目標スリップ率sTRとの偏差量が大きいほどホイールシリンダ圧が大きくなるように、また、上記車輪スリップ率s1 ,s2 ,…の減少変化量が大きいほどホイールシリンダ圧が小さくなる一方、車輪スリップ率s1 ,s2 ,…の増大変化量が大きいほどホイールシリンダ圧が大きくなるように設定されている。
【0048】
続くステップSD9では、上記ステップSD8と同様に、EGIコントローラ13によるエンジン制御量Eのベース制御量Ebaseを求める。このエンジンベース制御量Ebaseは、ブレーキ制御量Bのベース制御量Bbaseと同様にメインコントローラ5のメモリに格納されたマップから読み込むもので、このマップにおいては、上記車輪スリップ率s1 ,s2 と目標スリップ率sTRとの偏差量が大きいほど出力トルクの低下量が大きくなるように、また、上記車輪スリップ率s1 ,s2 ,…の減少変化量が大きいほど出力トルクの低下量が小さくなる一方、車輪スリップ率s1 ,s2 ,…の増大変化量が大きいほど出力トルクの低下量が大きくなるように設定されている。
【0049】
そして、ステップSD10では、上記SD8及びSD9で求めたブレーキベース制御量Bbase及びエンジンベース制御量Ebaseにそれぞれ予め設定された制御ゲインk1 ,k2 を乗算して、ブレーキ制御量B及びエンジン制御量Eを演算する。その際、上記ステップSD4と同様に、後述の故障判定フラグFerr の値に対応して制御ゲインk1 ,k2 を補正する。すなわち、各センサの故障判定が終了していなければ(Ferr =1)、制御ゲインk1 ,k2 の値を大きく補正してブレーキ制御量B及びエンジン制御量Eを大きくさせることで、TCS制御の応答性を高めるようにする。
【0050】
最後に、ステップSD11で、上記の演算したブレーキ制御量Bに基づいて、加圧ユニット3、HU4及びEGIコントローラ13への制御出力を実行し、左右の前輪21FR,21FLに付設された加圧バルブ41,41及び減圧バルブ43,43をそれぞれ開閉作動させて、ブレーキ2,2のホイールシリンダ圧を増減させることで、上記左右の前輪21FR,21FLの制動力をそれぞれ制御する。同時に、上記の演算したエンジン制御量Eに基づきEGIコントローラ13によりスロットル弁のアクチュエータを作動させてスロットル弁開度を絞るとともに、燃料カット又は気筒カットを行って、エンジン11の出力トルクを低下させる。これにより、左右の前輪21FR,21FLのそれぞれへの駆動力が制御され、該前輪21FR,21FLは最大の駆動力を発生するようになる。
(各センサの故障判定及び旋回状態量の推定演算)
次に、本発明の特徴部分として、フェールセーフ判定及び処理における車輪速センサ6,6,…、横加速度センサ7、ヨーレイトセンサ8、舵角センサ9等の故障判定部5cによる故障判定の手順、及び推定演算部5dによる旋回状態量の推定演算の内容について、図9、図10及び図11に基づいて説明する。
【0051】
図9に示すフローチャート図のステップSE1では、まず、車輪速センサ6,6,…の故障判定を行う。これは、車体速Vscs が所定値以上であるのに、4輪のうちのいずれか1輪又は2輪の特定の車輪21FR,21FL,…の車輪速v1 ,v2 ,…が、予め設定した所定時間以上継続して上記車体速Vscs よりも低い場合に、該特定の車輪21FR,21FL,…の車輪速センサ6,6,…が故障していると判定する。従って、車両の発進後直ちに判定結果が確定するので、上述のSCS制御やABS制御が開始されるような状態になるるまでに必ず故障判定が終了していると考えられる。尚、TCS制御は車輪速センサ6,6,…の故障判定終了までは禁止するようにする。そして、ステップSE1で車輪速センサ6,6,…が故障していないNOと判定されれば、ステップSE2に進んで車輪速センサ6,6,…の正常確定をメモリに記憶する一方、故障しているYESと判定されれば、ステップSE3に進んで車輪速センサ6,6,…の異常確定をメモリに記憶する。
【0052】
続いて、ステップSE4では、車輪速v1 ,v2 ,…の変化率から車両の所定以上の減速状態を判定する。すなわち、各車輪21FR,21FL,…の車輪速v1 ,v2 ,…の変化率が小さく、ドライバのブレーキ操作が行われていないNOと判定されたときは、図10に示すフローチャートのステップSF1に進む一方、各車輪21FR,21FL,…の車輪速v1 ,v2 ,…が急速に減少していて、ドライバのブレーキ操作によって車両が所定の減速状態になっているYESと判定されたときには、ステップSE5に進む。
【0053】
上記ステップSE5では、前後加速度センサにより検出された前後加速度が、車輪速v1 ,v2 ,…の変化率から推定される所定範囲内の値になっているか否かを判定する。つまり、車両に作用している前後加速度が車両の制動による減速に対応するような大きな値になっているか否かにより前後加速度センサの故障判定を行って、所定範囲内のYESならばステップSE6に進んで前後加速度センサの正常確定をメモリに記憶する一方、所定範囲内にないNOと判定されれば、ステップSE7に進んで前後加速度センサの異常確定をメモリに記憶する。
【0054】
続いて、ステップSE8では、液圧センサ33により検出されるマスタシリンダ10のブレーキ液圧が、車輪速v1 ,v2 ,…の変化率から推定される所定範囲内の値になっているか否かを判定する。つまり、マスタシリンダ10に発生している液圧が車両の制動による減速に対応するような大きな値になっているか否かにより液圧センサ33の故障判定を行い、所定範囲内のYESならばステップSE9に進んで液圧センサ33の正常確定をメモリに記憶する一方、所定範囲内にないNOと判定されれば、ステップSE10に進んで液圧センサ33の異常確定をメモリに記憶する。
【0055】
上記図9のフローに続いて、図10に示すフローチャート図のステップSF1では、従動輪である左右の後輪21RR,21RLの車輪速v3 ,v4 の間の偏差量(|v3 −v4 |)が、予め設定した所定値以上であるか否かを判定し、この偏差量が所定値よりも小さいNOであれば、車両が所定の旋回状態になっていないので、横加速度センサ7、ヨーレイトセンサ8及び舵角センサ9の故障判定ができないと判定してステップSF2に進み、故障判定フラグFerr の値をFerr =1として、しかる後にリターンする。
【0056】
この故障判定フラグFerr =1のときには、後述のステップSF3、ステップSF12、SF13及び図11のステップSG5、SG6においてそれぞれ示すような推定演算により、ステアリング操舵角、横加速度及びヨーモーメントが推定演算され、その推定演算値が第2のCPU5bに入力されて、これらの推定演算値に基づいて上述のSCS制御が実行される。また、該SCS制御における制御ゲインG1 ,G2 が予め設定された所定の割合だけ減少補正され、SCS制御量ψ′amt ,βamt が小さく抑制される。同時に、上記故障判定フラグFerr =1のときには、上述の如く、ABS制御及びTCS制御において、それぞれ制御の開始しきい値sSTが小さく補正されるとともに、制御ゲインk1 ,k2 が大きく補正され、これにより、上記ABS制御及びTCS制御の制御感度が増大される。
【0057】
一方、上記ステップSF1において、左右の車輪速偏差量(|v3 −v4 |)が所定値以上のYESであれば、車両が所定以上の旋回状態になっていると判定して、ステップSF3に進む。このステップSF3では、舵角センサ9による検出値(操舵角)θH が、上記車輪速偏差量(|v3 −v4 |)から推定される所定範囲内の値になっているか否かを判定する。すなわち、左右の後輪21RR,21RLの車輪速偏差量(|v3 −v4 |)と操舵角θH との間には、車両の旋回半径をRとして以下の関係式が成立するので、まず、この式を用いた推定演算によりステアリング操舵角の推定値を演算し、次に、舵角センサ9による検出値θH が該推定値近傍の所定範囲内の値になっているか否かを判定する。
【0058】
1/R = |v3 −v4 |×m1 ・・・(式1)
R = WB/tan(θH /m2 )+TD/2 ・・・(式2)
但し、
WB:車両のホイールベース
TD:車両の後輪トレッド
m1 ,m2 :操舵機構等の車両諸元によって定まる定数
そして、舵角センサ9による検出値θH が上記所定範囲内の値でないNOであれば、ステップSF11に進んで舵角センサ9の異常確定をメモリに記憶する一方、上記舵角センサ9による検出値θH が上記所定範囲内の値のYESであれば、ステップSF4に進んで舵角センサ9の正常確定をメモリに記憶する。
【0059】
続いて、ステップSF5では、ヨーレイトセンサ8による検出値(ヨーレイト)ψ′が上記舵角センサ9の検出値θH 及び車体速Vscs から推定される所定範囲内の値になっているか否かを判定して、所定範囲内のYESならばステップSF6に進んでヨーレイトセンサ8の正常確定をメモリに記憶する一方、所定範囲内にないNOと判定されれば、ステップSF7に進んでヨーレイトセンサ8の異常確定をメモリに記憶する。
【0060】
続いて、ステップSF8において、上記ステップSF5におけるヨーレイトセンサ8の故障判定と同様に、横加速度センサ7による検出値(横加速度)Gy が、舵角センサ9の検出値θH 及び車体速Vscs から推定される所定範囲内の値になっているか否かを判定して、所定範囲内のYESならばステップSF9で正常確定をメモリに記憶する一方、所定範囲内にないNOならばステップSF10で異常確定をメモリに記憶し、しかる後、図11に示すフローチャートのステップSG10に進む。
【0061】
つまり、舵角センサ9が正常確定すれば、上述のステップSF5〜SF10のフローの如く、舵角センサ9による検出値θH を基準としてヨーレイトセンサ8及び横加速度センサ7の故障判定を行う。
【0062】
これに対し、上記ステップSF3で舵角センサ9が故障していると判定され、該異常確定をステップSF11でメモリに記憶した後、ステップSF12では、上記(式1)に基づいて車両の旋回半径Rを演算し、続くステップSF13で、上記の演算した旋回半径R及び車体速Vscs に基づいて、車両に作用している横加速度を推定演算する。
【0063】
横加速度の推定演算値 =(V/3.6)2/(9.8×R)
そして、ステップSF14では、横加速度センサ7による検出値Gy が上記の横加速度の推定演算値近傍の所定範囲内の値になっているか否かを判定する。そして、所定範囲内のYESならばステップSF15に進んで、横加速度センサ7の正常確定をメモリに記憶し、しかる後、図11に示すフローチャートのステップSG1に進む一方、所定範囲内にないNOならばステップSF16で異常確定をメモリに記憶し、しかる後、図11に示すフローチャートのステップSG5に進む。
【0064】
図11に示すフローチャートのステップSG1では、横加速度センサ7による検出値Gy 及び車体速Vscs に基づいて、車両に作用しているヨーレイトを推定演算する。
【0065】
ヨーレイトの推定演算値 =Gy /Vscs −Vscs
そして、続くステップSG2で、ヨーレイトセンサ8による検出値ψ′が上記ヨーレイトの推定演算値近傍の所定範囲内の値であるか否かを判定して、所定範囲内のYESならばステップSG3に進んで、ヨーレイトセンサ8の正常確定をメモリに記憶する一方、所定範囲内にないNOならばステップSG4に進んで、ヨーレイトセンサ8の異常確定をメモリに記憶し、その後ステップSG10に進む。
【0066】
つまり、舵角センサ9が異常確定していて、かつ横加速度センサ7が正常確定していれば、上述のステップSG1〜SG4のフローの如く、横加速度センサ7による検出値Gy を基準としてヨーレイトセンサ8の故障判定を行う。
【0067】
これに対し、上記図10のステップSF13で横加速度センサ7が故障していると判定され、該異常確定をステップSF15でメモリに記憶した後に進んだ図11のステップSG5では、上記(式1)及び(式2)により、左右の車輪速偏差量(|v3 −v4 |)に基づいてステアリング操舵角を推定演算し、続くステップSG6では、このステアリング操舵角の推定演算値θHest及び車体速Vscs に基づいて、ヨーレイトを推定演算する。
【0068】
ヨーレイトの推定演算値=θHest×Vscs ×{(1−kVscs2)WB}
そして、続くステップSG7では、ヨーレイトセンサ8による検出値ψ′が上記ヨーレイトの推定演算値近傍の所定範囲内の値であるか否かを判定して、所定範囲内のYESならばステップSG8に進んで、ヨーレイトセンサ8の正常確定をメモリに記憶する一方、所定範囲内にないNOならばステップSG9に進んで、ヨーレイトセンサ8の異常確定をメモリに記憶し、その後、ステップSG10に進む。
【0069】
つまり、舵角センサ9及び横加速度センサ7が両方共に異常確定していれば、車輪速センサ6,6,…の検出値v1 ,v2 ,…に基づいて求められる左右の車輪速偏差量(|v3 −v4 |)を基準として、ヨーレイトセンサ8の故障判定を行うようにしている。
【0070】
最後にステップSG10では、図9のステップSE6,SE7,SE9,SE10、図10のステップSF4,SF6,SF7,SF9,SF10,SF15SF16、図11のステップSG3,SG4,SG8,SG9の各ステップでメモリに記憶した各センサの故障判定結果に基づいて、全てのセンサが正常であるか否かを判定する。そして、全てのセンサについて正常確定していれば、ステップSG11に進んで故障判定フラグFerr の値をFerr =0として、しかる後にリターンする。この故障判定フラグFerr =0とすることで、上述の如き推定演算値に基づくSCS制御が制御終了と同時に中止され、正常に作動している全てのセンサからの出力信号に基づいて通常のSCS制御が実行されるようになる。また、ABS制御及びTCS制御の制御感度の増大はそれらの制御終了まで継続され、このことで、センサ故障判定の終了と同時にABS制御及びTCS制御の制御量が急変することが防止される。
【0071】
一方、上記ステップSG10において、いずれかのセンサが故障していて異常確定していれば、ステップSG12に進んで、センサの故障により正常なSCS制御が実行できないことを表すワーニングとして例えば警告表示灯を点灯させてドライバの注意を喚起し、しかる後にリターンする。その際、故障判定フラグFerr =1とされたままになるので、上述の如き推定演算値に基づくSCS制御とABS制御及びTCS制御の制御感度の増大とがイグニッションオフまで継続される。
【0072】
尚、上記車輪速センサ6,6,…、横加速度センサ7,ヨーレイトセンサ8、舵角センサ9,液圧センサ33、及び前後加速度センサの他に、ブレーキオンオフセンサ等の断線等による故障のみを判定すればよいものについては、イグニッションオンと同時にメインコントローラ5へのパルス入力の有無に基づいて故障判定が行われる。
【0073】
上述の如く、この実施形態に係る車両のスリップ制御装置によれば、メインコントローラ5に設けられた故障判定部5cによる全てのセンサの故障判定が終了するまでは、車輪速センサ6,6,…からの出力信号及び推定演算部5dによる横加速度、ヨーレイト及びステアリング舵角の推定演算値に基づいて車両の挙動制御が行われる。このため、例えば舵角センサ9が故障していたとしても、該故障している舵角センサ9による検出値θH に基づいた誤った挙動制御を防止することができ、これにより、ドライバが大きな違和感を感じることを防止することができ、また、誤った挙動制御に起因する車両の旋回姿勢の崩れを防止することができる。
【0074】
また、上記故障判定部5cによる故障判定が終了するまでは、制御補正部5eによりSCS制御の制御量ψ′amt ,βamt が小さく抑制されて控え目なSCS制御となるので、推定演算部5dによる推定演算値と実際の旋回状態量との間の推定誤差に起因してSCS制御が不十分なものになっても、ドライバの感じる違和感を低減することができる。
【0075】
さらに、上記故障判定部5cによる故障判定が終了するまでは、制御補正部5eによりABS制御及びTCS制御の制御開始しきい値sSTを小さくしかつ制御ゲインk1 ,k2 を大きくして、ABS制御及びTCS制御の制御感度を増大させるようにしたので、車体姿勢の崩れが僅かなうちに各車輪21FR,21FL,…のロック状態や空転状態を確実に防止することができ、これにより、推定演算部5dにおける推定誤差に起因してSCS制御が不十分なものになっても、車両の操縦安定性を確保することができる。
(他の実施形態)
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、車両の直進時及び旋回時のいずれの場合も同様のTCS制御を実行するようにしているが、これに限らず、例えば、車両の旋回時に、制御の開始しきい値sST及び制御目標値sTRを直進時よりも小さくさせて、車両の旋回姿勢をより安定寄りに制御するTCS旋回制御を実行するようにしてもよい。
【0076】
そして、このようにした場合、例えば舵角センサ9の故障判定終了前には、車輪速センサ6,6,…による検出値に基づいて(式1)及び(式2)によりステアリング舵角を推定演算し、この推定演算値に基づいて上記TCS旋回制御を実行するようにしてもよく、或いは、ヨーレイトセンサ8又は横加速度センサ7による検出値に基づいて上記TCS旋回制御を実行するようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、故障判定部5cによる各センサの故障判定が終了するまで、SCS制御の制御量ψ′amt ,βamt を小さく抑制するようにしているが、この他、上記SCS制御の介入判定しきい値Δψ′ST,ΔβST1 ,ΔβST2 を小さく補正して、車両の旋回姿勢の崩れが極く僅かなうちに早めにSCS制御が実行されるようにすることで、車両の操縦安定性を確保するようにしてもよい。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1、2に記載の発明における車両のスリップ制御装置によれば、車両が所定の旋回状態になって故障判定手段による旋回状態量検出手段の故障判定が終了するまでの間、推定手段による旋回状態量の推定値に基づいて車両の挙動制御を行うようにしたので、誤った挙動制御によってドライバが大きな違和感を感じることを防止することができ、また、誤った挙動制御に起因する車両の旋回姿勢の崩れを防止することができる。
【0079】
請求項3記載の発明では、故障判定手段による故障判定が終了するまでの間、スリップ制御手段による制御感度を増大させることで、車両の各車輪のロック状態や空転状態を確実に防止して操縦安定性を高めることができる。
【0080】
請求項4記載の発明では、スリップ制御手段の制御開始しきい値を小さくすることで、制御の頻度を高めて制御感度を増大させることができる。
【0081】
請求項5記載の発明では、スリップ制御手段の制御ゲインを大きくすることで、制御の応答性を高めて制御感度を増大させることができる。
【0082】
請求項6記載の発明によれば、故障判定手段による故障判定が終了するまでの間、挙動制御を控えめなものとすることで、推定手段による旋回状態量の推定誤差に起因して挙動制御が不十分なものになっても、ドライバの感じる違和感を低減させることができる。
【0083】
請求項7記載の発明によれば、故障判定手段による故障判定が終了するまでの間、挙動制御手段による車両の挙動制御を旋回姿勢の崩れが極く僅かなうちに早めに実行させることができ、これにより、車両の操縦安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のスリップ制御装置を適用した車両を示す概略構成図である。
【図2】 ブレーキの液圧系統を示す構成図である。
【図3】 メインコントローラの構成を示す機能ブロック図である。
【図4】 基本制御の概要を示すフローチャート図である。
【図5】 SCS制御の前半の制御手順を示すフローチャート図である。
【図6】 SCS制御の後半の制御手順を示すフローチャート図である。
【図7】 ABS制御の手順を示すフローチャート図である。
【図8】 TCS制御の手順を示すフローチャート図である。
【図9】 車輪速センサ、前後加速度センサ及び液圧センサの故障判定の制御手順を示すフローチャート図である。
【図10】 舵角センサ、横加速度センサ及びヨーレイトセンサの故障判定の前半の制御手順を示すフローチャート図である。
【図11】 上記図10の故障判定及び推定演算の後半の制御手順を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
5a 第1のCPU(スリップ制御手段)
5b 第2のCPU(挙動制御手段)
5c 故障判定部(故障判定手段)
5d 推定演算部(推定手段)
5e 制御補正部(スリップ制御補正手段、挙動制御補正手段)
6,6,6,6 車輪速センサ
7 横加速度センサ(旋回状態量検出手段)
8 ヨーレイトセンサ(旋回状態量検出手段)
9 舵角センサ(旋回状態量検出手段)
21FR,21FL,21RR,21RL 車輪
sST 制御開始しきい値(スリップ制御手段の制御開始しきい値)k1 ,k2 制御ゲイン(スリップ制御手段の制御ゲイン)
θH ステアリング操舵角
ψ′amt ,βamt SCS制御量(挙動制御手段の制御量)
Claims (7)
- 車両の旋回走行状態に対応する旋回状態量を含む複数の走行状態量を検出し、その検出値に基づいて、車両の走行状態量が目標走行状態量に収束するように車両の挙動を制御する挙動制御手段を備えた車両のスリップ制御装置において、
上記複数の走行状態量のうちの少なくともヨーレイトを検出する旋回状態量検出手段と、
車両が、上記旋回状態量検出手段の故障を検出可能な所定の旋回走行状態になったとき、上記旋回状態量検出手段の正常或いは故障を判定する故障判定手段と、
車両が発進後、上記所定の旋回走行状態になって、上記故障判定手段による故障判定が終了するまでの間、ヨーレイトをそれ以外の走行状態量の検出値に基づいて推定する推定手段と、を備え、
上記姿勢制御手段は、車両が発進後、上記所定の旋回走行状態になって、上記故障判定手段による旋回状態量検出手段の故障判定が終了するまでの間、上記推定手段により推定されたヨーレイトの推定値に基づいて車両の挙動制御を実行するように構成されている
ことを特徴とする車両のスリップ制御装置。 - 車両の旋回走行状態に対応する旋回状態量を含む複数の走行状態量を検出し、その検出値に基づいて、車両の走行状態量が目標走行状態量に収束するように車両の挙動を制御する挙動制御手段を備えた車両のスリップ制御装置において、
上記複数の走行状態量のうちの少なくとも横加速度を検出する旋回状態量検出手段と、
車両が、上記旋回状態量検出手段の故障を検出可能な所定の旋回走行状態になったとき、上記旋回状態量検出手段の正常或いは故障を判定する故障判定手段と、
車両が発進後、上記所定の旋回走行状態になって、上記故障判定手段による故障判定が終了するまでの間、横加速度をそれ以外の走行状態量の検出値に基づいて推定する推定手段と、を備え、
上記姿勢制御手段は、車両が発進後、上記所定の旋回走行状態になって、上記故障判定手段による旋回状態量検出手段の故障判定が終了するまでの間、上記推定手段により推定された横加速度の推定値に基づいて車両の挙動制御を実行するように構成されている
ことを特徴とする車両のスリップ制御装置。 - 請求項1又は2のいずれかにおいて、
車両の各車輪の車輪速をそれぞれ検出する車輪速センサからの出力信号に基づいて、各車輪のスリップに関する値を所定以下に制御するスリップ制御手段と、
故障判定手段による旋回状態量検出手段の故障判定が終了するまで、上記スリップ制御手段による制御感度を増大させるスリップ制御補正手段とを設けたことを特徴とする車両のスリップ制御装置。 - 請求項3において、
スリップ制御補正手段は、故障判定手段による旋回状態量検出手段の故障判定が終了するまで、スリップ制御手段の制御開始しきい値を小さくするものであることを特徴とする車両のスリップ制御装置。 - 請求項3において、
スリップ制御補正手段は、故障判定手段による旋回状態量検出手段の故障判定が終了するまで、スリップ制御手段の制御ゲインを大きくするものであることを特徴とする車両のスリップ制御装置。 - 車両の旋回走行状態に対応する旋回状態量を含む複数の走行状態量を検出し、その検出値に基づいて、車両の走行状態量が目標走行状態量に収束するように車両の挙動を制御する挙動制御手段を備えた車両のスリップ制御装置において、
上記複数の走行状態量のうちの少なくともヨーレイトを検出する旋回状態量検出手段と、
車両が、上記旋回状態量検出手段の故障を検出可能な所定の旋回走行状態になったとき 、上記旋回状態量検出手段の正常或いは故障を判定する故障判定手段と、
車両が上記所定の旋回走行状態になって、上記故障判定手段による故障判定が終了するまでの間、ヨーレイトをそれ以外の走行状態量の検出値に基づいて推定する推定手段と、を備え、
上記姿勢制御手段は、車両が発進後、上記所定の旋回走行状態になって、上記故障判定手段による旋回状態量検出手段の故障判定が終了するまでの間、上記推定手段により推定されたヨーレイトの推定値に基づいて車両の挙動制御を実行するように構成されており、
さらに、上記故障判定手段による旋回状態量検出手段の故障判定が終了するまで、上記挙動制御手段による車両の挙動制御の制御量を抑制する挙動制御補正手段が設けられている
ことを特徴とする車両のスリップ制御装置。 - 請求項1、2又は6のいずれかにおいて、
故障判定手段による旋回状態量検出手段の故障判定が終了するまで、挙動制御手段による車両の挙動制御の制御開始しきい値を小さく補正する挙動制御補正手段を設けたことを特徴とする車両のスリップ制御装置。
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