JP5135059B2 - 車両の運動制御装置、及び車両の運動制御方法 - Google Patents

車両の運動制御装置、及び車両の運動制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、旋回時の車両の運動を制御する車両の運動制御装置、及び車両の運動制御方法に関する。
一般に、車両走行時に運転手によってステアリングホイールが操舵された場合には、転舵輪の転舵角(「タイヤ切れ角」ともいう。)がステアリングホイールの操舵角に応じた角度に調整される。そして、車両は、その転舵輪の転舵角に応じたコーナーリングフォース(車両の進行方向に直交する方向への力)を利用して旋回するようになっている。こうした車両旋回時に作用するコーナーリングフォースと転舵輪の転舵角との間には、以下に示す関係がある。すなわち、図11に示すように、転舵輪の転舵角σが比較的小さい場合には、転舵角σが増加するに連れてコーナーリングフォースFが次第に大きくなり、転舵角σが路面限界舵角σmaxになると、コーナーリングフォースFが最も大きい値になる。そして、転舵角σが路面限界舵角σmaxよりも大きくなると、転舵角σが増加するに連れてタイヤスリップ角(タイヤの向きとタイヤの進む向きとの角度差)が大きくなることもあり、コーナーリングフォースFが次第に小さくなっていく。
ところで、運転手によって操舵されたステアリングホイールの操舵角が大きい状態で車両が旋回する場合には、転舵輪の転舵角σが上記路面限界舵角σmaxよりも大きくなることがある。この場合、コーナーリングフォースFが小さくなってしまい、アンダーステア状態になるおそれがあった。そこで、車両旋回時に発生したアンダーステア状態を解消させるための運動制御装置として、例えば特許文献1に記載の運動制御装置が提案されている。
この特許文献1に記載の運動制御装置は、車両の旋回時にアンダーステア状態になった場合には、転舵輪の転舵角σを路面限界舵角σmaxまで小さくした後、転舵角σを路面限界舵角σmaxに維持させる転舵角調整制御を実行する。すなわち、コーナーリングフォースFが最大値で維持されるように、転舵輪の転舵角σが調整される。こうした転舵角調整制御の実行によってコーナーリングフォースFが大きくなると、アンダーステア状態が解消される。
ところが、特にμ値の低い路面を旋回する場合には、転舵角調整制御だけではコーナーリングフォースFを十分に大きくできず、アンダーステア状態を解消できないことがある。こうした場合、上記運動制御装置は、転舵角調整制御を実行しつつ、運転手の意志とは無関係に車両の車体速度を減速させる減速制御を実行する。この減速制御が実行されると、車両に加わる遠心力が徐々に小さくなっていく。このように車両に加わる遠心力が小さくなると、アンダーステア状態が解消されるようになっていた。
特許第3175369号公報
ところで、車両の旋回時には、転舵輪の転舵角σの変化に応じて該転舵輪に装着されるタイヤと路面との間の摩擦抵抗(以下、「路面―タイヤ間抵抗」という。)が微妙に変化する。運転の上手な上級運転手は、車両を旋回させる際には、路面―タイヤ間抵抗の微妙な変化を感じ取りつつステアリングホイールを操舵し、転舵輪の転舵角を適切に調整する。ところが、上記運動制御装置を搭載した車両では、該車両に搭載された各種センサからの入力信号に基づきアンダーステア状態であると判定した場合に、コーナーリングフォースFを最大値に維持させるために転舵角調整制御が実行される。そのため、アンダーステア状態時においては、転舵輪の転舵角σが運転手によるステアリングホイールの操舵に応じて変化せず、ステアリングホイールの操舵に追随して転舵輪の転舵角σが変化しないことに関して上級運転手に違和感を与えてしまうおそれがあった。
また、車両のアンダーステア状態を解消させるために減速制御が実行された場合、アンダーステア状態の解消直後の車体速度は、減速制御が実行されない場合に比して遅くなってしまう。そのため、アンダーステア状態の解消後における車体速度の回復が遅いという違和感を運転手に与えてしまうおそれがあった。さらに、旋回する路面の状況(路面のμ値など)によっては、上述した転舵角調整制御や減速制御を行っても、コーナーリングフォースFを大きくしたり、車両に加わる遠心力を小さくしたりするまでに時間がかかってしまい、結果として、アンダーステア状態を解消させるまでに時間がかかってしまうこともあった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両旋回時に運転手に対して違和感を与えることなく、車両旋回時のアンダーステア状態を速やかに解消させることができる車両の運動制御装置、及び車両の運動制御方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、車両の運動制御装置にかかる請求項1に記載の発明は、ステアリング(26)の操舵に応じて転舵する転舵輪(FR,FL、RR,RL)と、該転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)を調整可能な車輪速度調整機構(13、14、17)と、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を調整可能な転舵角調整機構(15)とを有する車両の旋回時における運動を制御する車両の運動制御装置(22,25,30,37)であって、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を演算する転舵角演算手段(37、S12)と、車両の旋回状態を判定する旋回状態判定手段(37、S17)と、該旋回状態判定手段(37、S17)によって車両の旋回状態がアンダーステア状態であると判定された場合に、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)の絶対値を一時的に小さくした後、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を元に戻す方向に調整させるべく前記転舵角調整機構(15)を制御し、且つ前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)を調整させるべく前記車輪速度調整機構(13、14、17)を制御するグリップ力回復制御を実行する制御手段(22,30,37、S25)と、車両のステアリング(26)の操舵量に応じた目標ヨーレート(Yst)を演算する第1ヨーレート演算手段(37、S15)と、車両の実際のヨーレート(Y)を演算する第2ヨーレート演算手段(37、S14)と、前記各ヨーレート演算手段(37、S14、S15)によって演算された各ヨーレート(Y、Yst)の差分であるヨーレート偏差(Ysub)を演算する差分演算手段(37、S20)とを備え、前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時には、前記旋回状態判定手段(37、S17)によってアンダーステア状態であると判定された時点の前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)と前記グリップ力回復制御の実行中に絶対値が最も小さくなる最小転舵角(σmin)との角度差(Δσ)が、前記差分演算手段(37、S20)によって演算されたヨーレート偏差(Ysub)が大きいほど大きくなるように前記転舵角調整機構(15)を制御することを要旨とする。
上記構成によれば、アンダーステア状態になってグリップ力回復制御が実行されると、転舵輪の転舵角の絶対値が一時的に小さくなると共に転舵輪の車輪速度が調整される。その結果、コーナーリングフォースが大きくなることにより、転舵輪に装着されるタイヤの路面に対するグリップ力が回復し、アンダーステア状態が解消される。この状態で転舵輪の転舵角が元の角度の大きさに向けて調整される結果、運転手のステアリングホイールの操舵具合に応じた旋回態様で車両が旋回する。しかも、アンダーステア状態の発生時には、車両に加わる遠心力を小さくさせるような減速制御が実行されない。そのため、アンダーステア状態の解消後には、車体速度を速やかに回復させることができる。したがって、車両旋回時に運転手に対して違和感を与えることなく、車両旋回時のアンダーステア状態を速やかに解消させることができる。
一般に、目標ヨーレートと実際のヨーレートとの差分であるヨーレート偏差が大きいほど、転舵輪の転舵角と路面限界舵角との角度差が大きいと推定される。そこで、本発明では、アンダーステア状態になった時点の転舵角とグリップ力回復制御の実行時の最小転舵角との角度差が、ヨーレート偏差が大きいほど大きくなるように、転舵角調整機構が作動する。そのため、グリップ力回復制御の実行によって、上記ヨーレート偏差の大きさに関係なくコーナーリングフォースが大きくなる瞬間を作り出すことができ、アンダーステア状態が確実に解消される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の運動制御装置において、前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時において、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)の絶対値が最も小さくなった時点では、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)が調整中であるように、前記車輪速度調整機構(13、14、17)及び転舵角調整機構(15)を制御することを要旨とする。
上記構成によれば、グリップ力回復制御の実行中において転舵角の絶対値が最も小さくなった時点では、転舵輪の車輪速度の調整制御が実行されている。そのため、コーナーリングフォースを速やかに大きくできる結果、アンダーステア状態が速やかに解消される。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両の運動制御装置において、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の回転状態を推定する回転状態推定手段(37,S39)をさらに備え、前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時には、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)が、前記回転状態推定手段(37,S39)によって推定された前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の回転状態に応じて調整されるように前記車輪速度調整機構(13、14、17)を制御することを要旨とする。
上記構成によれば、グリップ力回復制御時では、転舵輪の回転状態に応じた適切な該転舵輪の車輪速度の調整制御が実行される。その結果、転舵輪に装着されるタイヤの路面に対するグリップ力が速やかに回復する。そのため、アンダーステア状態が速やかに解消される。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両の運動制御装置において、前記回転状態推定手段(37,S39)は、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の回転状態として該転舵輪(FR,FL、RR,RL)のスリップ量(SlpF)を演算すると共に、前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時において、前記回転状態推定手段(37、S19)によって演算されたスリップ量(SlpF)に基づき前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)がロック傾向にあると判定した場合には、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)が、前記旋回状態判定手段(37、S17)によってアンダーステア状態であると判定された時点の前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)よりも速くなるように前記車輪速度調整機構(13、14、17)を制御することを要旨とする。
上記構成によれば、アンダーステア状態の発生時に転舵輪がロック傾向にある場合には、転舵輪の車輪速度を速くして該転舵輪のロック傾向を解消させる。その結果、転舵輪に装着されるタイヤの路面に対するグリップ力が速やかに回復する。そのため、転舵輪がロック傾向にあることに起因したアンダーステア状態が速やかに解消される。
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の車両の運動制御装置において、前記回転状態推定手段(37,S39)は、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の回転状態として該転舵輪(FR,FL、RR,RL)のスリップ量(SlpF)を演算すると共に、前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時において、前記回転状態推定手段(37、S19)によって演算されたスリップ量(SlpF)に基づき前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)がスピン傾向にあると判定した場合には、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)が、前記旋回状態判定手段(37、S17)によってアンダーステア状態であると判定された時点の前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)よりも遅くなるように前記車輪速度調整機構(13、14、17)を制御することを要旨とする。
上記構成によれば、アンダーステア状態の発生時に転舵輪がスピン傾向(即ち、空転傾向)にある場合には、転舵輪の車輪速度を遅くして該転舵輪のスピン傾向を解消させる。その結果、転舵輪に装着されるタイヤの路面に対するグリップ力が速やかに回復する。そのため、転舵輪がスピン傾向にあることに起因したアンダーステア状態が速やかに解消される。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載の車両の運動制御装置において、前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時には、前記回転状態推定手段(37、S19)によって演算されたスリップ量(SlpF)の絶対値が大きいほど、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)の変化量(Ddwn、Dup)が多くなるように前記車輪速度調整機構(13、14、17)を制御することを要旨とする。
一般に、転舵輪のスリップ量の絶対値が大きいほど、転舵輪のロック傾向又はスピン傾向が大きい。そこで、本発明では、グリップ力回復制御時における転舵輪の車輪速度の変化量は、転舵輪のスリップ量の絶対値が大きいほど多くなるように車輪速度調整機構が作動する。したがって、転舵輪の車輪速度がスリップ量に応じて好適に調整されることにより、転舵輪に装着されるタイヤの路面に対するグリップ力を確実に回復させることが可能になる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載の車両の運動制御装置において、路面限界となる前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を路面限界舵角(σmax)として演算する限界舵角演算手段(37、S18)をさらに備え、前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時には、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を、その絶対値が一時的に前記限界舵角演算手段(37、S18)によって演算された路面限界舵角(σmax)の絶対値以下となるように調整した後、元に戻す方向に調整させるべく前記転舵角調整機構(15)を制御することを要旨とする。なお、「路面限界舵角」とは、コーナーリングフォースが最も大きくなるような転舵輪の転舵角のことを示す。
上記構成によれば、グリップ力回復制御の実行によって、転舵輪の転舵角は、その絶対値が一時的に路面限界舵角の絶対値以下となるように調整される。そのため、車両の旋回中にコーナーリングフォースが最大値近傍まで大きくなる瞬間ができ、アンダーステア状態が好適に解消される。
請求項に記載の発明は、請求項1〜請求項7のうち何れか一項に記載の車両の運動制御装置において、前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行によって前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の向きが前記旋回状態判定手段(37、S17)によってアンダーステア状態であると判定された時点の前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の向きと異なる向きになることが規制されるように前記転舵角調整機構(15)を制御することを要旨とする。
上記構成によれば、グリップ力回復制御の実行によって、転舵輪の向きが車両を旋回させたい向きと反対の向きになってしまうことが、回避される
請求項に記載の発明は、請求項〜請求項のうち何れか一項に記載の車両の運動制御装置において、路面限界となる前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を路面限界舵角(σmax)として演算する限界舵角演算手段(37、S18)と、前記ステアリング(26)の操舵角(θ)に相当する前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角を推定転舵角(σest)として演算する転舵角推定手段(37、S41)とをさらに備え、前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の終了時において、前記転舵角推定手段(37、S41)によって推定された推定転舵角(σest)の絶対値が前記限界舵角演算手段(37、S18)によって演算された路面限界舵角(σmax)の絶対値以上である場合には、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)が前記路面限界舵角(σmax)となるように前記転舵角調整機構(15)を制御することを要旨とする。
上記構成によれば、グリップ力回復制御の終了後に、転舵輪の転舵角の絶対値が路面限界舵角よりも大きくなることが規制される。そのため、グリップ力回復制御終了後の旋回時に再びアンダーステア状態になってしまうことが抑制される。
一方、車両の運動制御方法にかかる請求項1に記載の発明は、車両の転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を演算させる転舵角演算ステップ(S12)と、車両の旋回状態を判定させる旋回状態判定ステップ(S17)と、該旋回状態判定ステップ(S17)にて車両の旋回状態がアンダーステア状態であると判定した場合に、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)の絶対値を一時的に小さくした後、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を元に戻す方向に調整し、且つ前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の回転状態に応じて該転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)を調整するグリップ力回復制御を実行させる回復制御ステップ(S25)と、車両のステアリング(26)の操舵量に応じた目標ヨーレート(Yst)を演算させる第1ヨーレート演算ステップ(S15)と、車両の実際のヨーレート(Y)を演算させる第2ヨーレート演算ステップ(S14)と、前記各ヨーレート演算ステップ(S14、S15)にて演算された各ヨーレート(Y、Yst)の差分であるヨーレート偏差(Ysub)を演算させる差分演算ステップ(S20)とを有し、前記回復制御ステップ(S25)における前記グリップ力回復制御の実行時には、前記旋回状態判定ステップ(S17)にてアンダーステア状態であると判定された時点の前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)と前記グリップ力回復制御の実行中に絶対値が最も小さくなる最小転舵角(σmin)との角度差(Δσ)が、前記差分演算ステップ(S20)にて演算されたヨーレート偏差(Ysub)が大きいほど大きくなるように転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を調整させることを要旨とする。
上記構成によれば、請求項1に記載の発明と同等の作用効果を得ることができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明の車両の運動制御装置、及び車両の運動制御方法を具体化した第1の実施形態を図1〜図9に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明においては、車両の進行方向(前進方向)を前方(車両前方)として説明する。また、特に説明がない限り、以下の記載における左右方向は、車両進行方向における左右方向と一致するものとする。
図1に示すように、本実施形態の車両は、複数(本実施形態では4つ)ある車輪(右前輪FR、左前輪FL、右後輪RR及び左後輪RL)のうち、前輪FR,FLが駆動輪として機能し、且つ後輪RR,RLが従動輪として機能するいわゆる前輪駆動車である。こうした車両には、運転手によるアクセルペダル11の踏込み操作量に応じた駆動力を発生可能なエンジン12を有する車輪速度調整機構としての駆動力発生装置13と、該駆動力発生装置13で発生した駆動力を前輪FR,FLに伝達する駆動力伝達装置14とを備えている。また、車両には、前輪FR,FLを転舵輪(「操舵輪」ともいう。)として転舵させるための転舵角調整機構としての前輪転舵装置15と、運転手によるブレーキペダル16の踏込み操作量に応じた制動力を各車輪FR,FL,RR,RLに付与可能な制動装置17とが設けられている。
駆動力発生装置13は、図1及び図2に示すように、エンジン12から外部に向けて延設された吸気管18と、該吸気管18内に配置され、且つその開口断面積を可変させるスロットル弁19と、吸気管18外に配置され、且つスロットル弁19の開度を調整するためのスロットル弁アクチュエータ20(例えばDCモータ)とが設けられている。また、エンジン12の吸気ポート(図示略)近傍には、燃料を噴射するインジェクタを有する燃料噴射装置21が設けられている。さらに、駆動力発生装置13には、図示しないCPU、ROM及びRAMなどを有するエンジンECU22(「エンジン用電子制御装置」ともいう。)が設けられている。このエンジンECU22には、アクセルペダル11の近傍に配置され、且つ運転手によるアクセルペダル11の踏込み量即ち、アクセル開度を検出するためのアクセル開度センサSE1が電気的に接続されている。そして、エンジンECU22は、アクセル開度センサSE1からの検出信号に基づきアクセル開度を演算し、該演算したアクセル開度などに基づきエンジン12、スロットル弁アクチュエータ20及び燃料噴射装置21を制御する。
駆動力伝達装置14は、エンジン12の出力軸に接続されたトランスミッション23と、該トランスミッション23から伝達された駆動力を適宜配分して前輪FL,FRに伝達する前輪用ディファレンシャルギヤ24とを備えている。また、駆動力伝達装置14には、図示しないCPU、ROM及びRAMなどを有するAT用ECU25(「AT用電子制御装置」ともいう。)が設けられている。このAT用ECU25は、車両の車体速度や運転手によるアクセルペダル11やブレーキペダル16の操作状況に応じて、トランスミッション23及び前輪用ディファレンシャルギヤ24を制御する。
前輪転舵装置15は、運転手によって操舵されるステアリングホイール26と、該ステアリングホイール26が固定されるステアリングシャフト27と、該ステアリングシャフト27に連結される転舵アクチュエータ28とを備えている。また、前輪転舵装置15には、転舵アクチュエータ28により車両の左右方向に移動自在なタイロッドと、該タイロッドの移動により前輪FL,FRを転舵させるリンクとを含んだリンク機構部29が設けられている。さらに、前輪転舵装置15には、図示しないCPU、ROM及びRAMなどを有する操舵ECU30(「操舵用電子制御装置」ともいう。)が設けられており、該操舵ECU30には、ステアリングホイール26の操舵角を検出するための操舵角センサSE2が電気的に接続されている。そして、操舵ECU30は、前輪FR,FLの転舵角をステアリングホイール26の操舵角に応じた角度に調整すべく転舵アクチュエータ28を制御する。
制動装置17は、図示しない液圧回路、及び該液圧回路上に配置されるポンプや各種電磁弁を有する制動アクチュエータ31を備えている。この制動アクチュエータ31には、車輪FR,FL,RR,RL毎に設けられた各ホイールシリンダ32a,32b,32c,32dに個別に連結される複数の液体流路33a,33b,33c,33dが接続されている。すなわち、制動アクチュエータ31は、そのポンプや各種電磁弁の作動によって、各液体流路33a〜33dを介してホイールシリンダ32a〜32d内に個別にブレーキ液を供給可能である。そして、各車輪FR,FL,RR,RLには、各ホイールシリンダ32a〜32d内に発生したブレーキ液圧に応じた制動力がそれぞれ付与される。
また、制動装置17には、CPU34、ROM35及びRAM36などを有する制動ECU37(「制動用電子制御装置」ともいう。)が設けられている。この制動ECU37には、ブレーキスイッチSW1と、操舵角センサSE2と、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度を検出するための車輪速度センサSE3,SE4,SE5,SE6と、車両の進行方向における加速度である前後方向加速度を検出するための前後GセンサSE7とが電気的に接続されている。また、制動ECU37には、車両の横方向加速度を検出するための横GセンサSE8と、車両のヨーレート(Yaw Rate)を検出するためのヨーレートセンサSE9とが電気的に接続されている。操舵角センサSE2、横GセンサSE8及びヨーレートセンサSE9は、左方向への旋回時に正の値に対応する検出信号を出力し、右方向への旋回時に負の値に対応する検出信号を出力する。そして、制動ECU37は、ブレーキスイッチSW1及び各種センサSE2〜SE9からの各種検出信号に基づき、制動アクチュエータ31を制御する。
なお、駆動力発生装置13、駆動力伝達装置14、前輪転舵装置15及び制動装置17に搭載される各ECU22,25,30,37同士は、図2に示すように、各種情報及び各種制御指令を送受信できるようにバス38を介してそれぞれ接続されている。そのため、例えば車両の旋回時にアンダーステア状態になった場合、駆動力発生装置13、駆動力伝達装置14、前輪転舵装置15及び制動装置17は、該アンダーステア状態を解消させるために連動してそれぞれ作動する。すなわち、制動ECU37は、各種センサSE2〜SE9からの各種検出信号に基づきアンダーステア状態であると判定した場合、駆動力発生装置13、駆動力伝達装置14、前輪転舵装置15を作動させるための制御指令を他のECU22,25,30に送信する。そして、他のECU22,25,30は、制動ECU37からの制御指令に基づき、駆動力発生装置13、駆動力伝達装置14及び前輪転舵装置15をそれぞれ作動させる。その結果、アンダーステア状態が解消される。したがって、本実施形態では、各ECU22,25,30,37により、旋回する車両の運動を制御する運動制御装置が構成される。
次に、各ECU22,25,30,37のうちメインのECUとして機能する制動ECU37について詳述する。
制動ECU37のROM35には、各種制御処理(後述するアンダーステア解消処理)、各種マップ(図3〜図5に示す各種マップ)及び各種閾値(後述する第1閾値、第2閾値など)などが予め記憶されている。また、制動ECU37のRAM36には、車両の図示しないイグニッションスイッチが「オン」である間、適宜書き換えられる各種の情報(後述する前後方向加速度、横方向加速度、操舵角、転舵角、実ヨーレート、各目標ヨーレート、車体速度、路面限界舵角、スリップ量、差分、駆動アップ量、駆動ダウン量、減算舵角量、最小転舵角など)などがそれぞれ記憶される。
次に、ROM35に予め記憶される各種マップについて図3〜図5に基づき説明する。
まず、図3に示すマップは、車両の車体速度に対する前輪FR,FLのスリップ量SlpF(=車両の車体速度−前輪FR,FLの車輪速度)と、エンジン12で発生させる駆動力のアップ量(以下、「駆動力アップ量」という。)Dupとの関係を示すものである。具体的には、前輪FR,FLのスリップ量SlpFが「0(零)」よりも大きな値である第1閾値KSlp1以下である場合には、前輪FR,FLがロック傾向にないと判断し、駆動力アップ量Dupが設定されていない。一方、前輪FR,FLのスリップ量SlpFが第1閾値KSlp1を超えた場合には、駆動力アップ量Dupがスリップ量SlpFの大きさに比例して増加するようになっている。なお、駆動力アップ量Dupが多いほど前輪FR,FLに加わる駆動力が大きくなることから、駆動輪でもある前輪FR,FLの車輪速度が、速くなる。
次に、図4に示すマップは、前輪FR,FLのスリップ量SlpFと、エンジン12で発生させる駆動力のダウン量(以下、「駆動力ダウン量」という。)Ddwnとの関係を示すものである。具体的には、前輪FR,FLのスリップ量SlpFが「0(零)」よりも小さい値である第2閾値KSlp1以上である場合には、前輪FR,FLがスピン傾向、即ち空転傾向にないと判断し、駆動力ダウン量Ddwnが設定されていない。一方、前輪FR,FLのスリップ量SlpFが第2閾値KSlp2未満になった場合には、駆動力ダウン量Ddwnがスリップ量SlpFの大きさに比例して増加するようになっている。なお、駆動力ダウン量Ddwnが多いほど該前輪FR,FLに加わる駆動力が小さくなることから、前輪FR,FLの車輪速度が、遅くなる。
最後に、図5に示すマップは、ステアリングホイール26の操舵角に基づき演算される第1目標ヨーレートYst及び車両の実際のヨーレート(以下、「実ヨーレート」という。)Yの差分であるヨーレート偏差Ysubと、転舵輪である前輪FR,FLの角度差としての減算舵角量Δσとの関係を示すものである。図5に示されるように、ヨーレート偏差Ysubが大きくなるほどアンダーステア傾向が大きくなるため、減算舵角量Δσが大きな値に設定される。
次に、本実施形態の制動ECU37が実行する各種制御処理のうち、車両の旋回時に発生したアンダーステア状態を解消させるためのアンダーステア解消処理ルーチンについて図6に示すフローチャート、図8に示すタイミングチャート及び図9に示すグラフに基づき説明する。なお、図8は、車両が左方向に旋回する際に、前輪FRがロック傾向になったことに起因してアンダーステア状態になった場合のタイミングチャートである。
さて、制動ECU37は、予め設定された所定周期毎(本実施形態では10msec.(ミリ秒)毎)にアンダーステア解消処理ルーチンを実行する。このアンダーステア解消処理ルーチンにおいて、制動ECU37は、前後GセンサSE7からの検出信号に基づき車両の前後方向加速度Gxを演算し(ステップS10)、横GセンサSE8からの検出信号に基づき車両の横方向加速度Gyを演算する(ステップS11)。続いて、制動ECU37は、操舵角センサSE2からの検出信号に基づきステアリングホイール26の操舵角θ(図8参照)を演算し、該操舵角θに基づき前輪FR,FLの転舵角σを演算する(ステップS12)。ステアリングホイール26の操舵角θが演算されると、前輪FR,FLの転舵角σが操舵ECU30によって該操舵角θに応じた角度となるように転舵アクチュエータ28が作動する。すなわち、操舵角θと転舵角σとの間には比例関係がある。そこで、制動ECU37は、演算した操舵角θに予め設定されたゲイン(後述するステアリングホイール26のギヤ比n)を乗算することにより転舵角σを設定する。したがって、本実施形態では、制動ECU37が、転舵角演算手段として機能する。また、ステップS12が、転舵角演算ステップに相当する。
そして、制動ECU37は、各車輪速度センサSE3〜SE6からの各検出信号に基づき、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度を演算し、該各車輪速度のうち少なくとも1つの車輪速度を用いて車両の車体速度VS(即ち、推定車体速度)を演算する(ステップS13)。続いて、制動ECU37は、ヨーレートセンサSE9からの検出信号に基づき車両の実ヨーレートYを演算する(ステップS14)。この点で、本実施形態では、制動ECU37が、第2ヨーレート演算手段としても機能する。続いて、制動ECU37は、ステップS12にて前輪FR,FLの転舵角σを演算する際に用いたステアリングホイール26の操舵角θを以下に示す関係式(式1)に代入し、第1目標ヨーレートYstを演算する(ステップS15)。この点で、本実施形態では、制動ECU37が、第1ヨーレート演算手段としても機能する。そして、制動ECU37は、ステップS11にて演算した横方向加速度Gyを以下に示す関係式(式2)に代入し、第2目標ヨーレートYgyを演算する(ステップS16)。
Figure 0005135059

ただし、Yst…第1目標ヨーレート、VS…車両の車体速度、A…スタビリティファクタ、θ…操舵角、n…ステアリングホイールのギヤ比、L…車両のホイールベース長、Ygy…第2目標ヨーレート、Gy…横方向加速度
続いて、制動ECU37は、ステップS14にて演算した実ヨーレートYがステップS15にて演算した第1目標ヨーレートYst未満であるか否かを判定する(ステップS17)。なお、実ヨーレートYが第1目標ヨーレートYst未満となる場合とは、車両がアンダーステア状態であることを示す。すなわち、ステップS17では、アンダーステア状態であるか否かが判定される。したがって、本実施形態では、制動ECU37が、旋回状態判定手段としても機能する。また、ステップS17が、旋回状態判定ステップに相当する。
ステップS17の判定結果が否定判定(Y≧Yst)である場合、制動ECU37は、アンダーステア解消処理ルーチンを一旦終了する。すなわち、図8のタイミングチャートに示すように、車両の旋回が開始してステアリングホイール26の操舵角θの絶対値が比較的小さい場合には、前輪FR,FLの転舵角σも小さいと共に、前輪FR,FLのスリップ量SlpFは、「0(零)」に近い値になる。そのため、図9(a)(b)に示すように、前輪FR,FLに装着されるタイヤと路面との間の前後方向摩擦力MKが比較的大きな値になると共に、コーナーリングフォースF(車両の進行方向に直交する方向への力)も比較的大きな値になる。その結果、転舵輪である前輪FR,FLが横滑りすることなく、即ちアンダーステア状態になることなく、車両が旋回する。
図6のフローチャートに戻り、ステップS17の判定結果が肯定判定(Y<Yst)である場合、制動ECU37は、アンダーステア状態であると判断し、コーナーリングフォースFが最も大きくなる転舵角を路面限界舵角σmaxとして演算する(ステップS18)。前輪FR,FLの転舵角σが路面限界舵角σmaxとなる場合には、ステップS15,S16にてそれぞれ演算した各目標ヨーレートYst,Ygyが同一値になる。そこで、上記関係式(式1)(式2)を用いて、各目標ヨーレートYst,Ygyが同一値である場合の操舵角θが演算され、該操舵角θに対応する転舵角が路面限界舵角σmaxとなる。したがって、本実施形態では、制動ECU37が、限界舵角演算手段としても機能する。
続いて、制動ECU37は、前輪FR,FLのスリップ量SlpFを演算する(ステップS19)。スリップ量SlpFは、車両の車体速度VSから前輪FR,FLの車輪速度VWF(図8参照)を減算することにより導かれる。したがって、本実施形態では、制動ECU37が、前輪FR,FLの回転状態としてスリップ量SlpFを演算する回転状態推定手段としても機能する。そして、制動ECU37は、ステップS15にて演算した第1目標ヨーレートYstとステップS14にて演算した実ヨーレートYとの差分であるヨーレート偏差Ysubを演算する(ステップS20)。この点で、本実施形態では、制動ECU37が、差分演算手段としても機能する。
続いて、制動ECU37は、ステップS19にて演算したスリップ量SlpFが予め設定された第1閾値KSlp1を超えたか否かを判定する(ステップS21)。この第1閾値KSlp1は、前輪FR,FLがロック傾向にあるか否かを判断するための判断値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。ステップS21の判定結果が肯定判定(SlpF>KSlp1)である場合、制動ECU37は、前輪FR,FLがロック傾向にあると判断し、ステップS19にて演算したスリップ量SlpFに対応する大きさの駆動力アップ量Dupを図3に示すマップを用いて設定する。また、制動ECU37は、ステップS20にて演算したヨーレート偏差Ysubに対応する大きさの減算舵角量Δσを図5に示すマップを用いて設定する(ステップS22)。そして、制動ECU37は、その処理を後述するステップS25に移行する。
一方、ステップS21の判定結果が否定判定(SlpF≦KSlp1)である場合、制動ECU37は、ステップS19にて演算したスリップ量SlpFが予め設定された第2閾値KSlp2未満であるか否かを判定する(ステップS23)。この第2閾値KSlp2は、前輪FR,FLがスピン傾向にあるか否かを判断するための判断値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。ステップS23の判定結果が否定判定(SlpF≧KSlp2)である場合、制動ECU37は、アンダーステア解消処理ルーチンを一旦終了する。一方、ステップS23の判定結果が肯定判定(SlpF<KSlp2)である場合、制動ECU37は、前輪FR,FLがスピン傾向にあると判断し、ステップS19にて演算したスリップ量SlpFに対応する大きさの駆動力ダウン量Ddwnを図4に示すマップを用いて設定する。また、制動ECU37は、ステップS20にて演算したヨーレート偏差Ysubに対応する大きさの減算舵角量Δσを図5に示すマップを用いて設定する(ステップS24)。そして、制動ECU37は、その処理を次のステップS25に移行する。
ステップS25において、制動ECU37は、アンダーステア状態を解消させるためのグリップ力回復制御処理(図7にて詳述する。)を実行する。このグリップ力回復制御とは、予め設定された所定時間T(0.5〜2sec.(秒))の間実行される制御であって、前輪FR,FLの転舵角σの絶対値を一時的に小さくした後、該転舵角σを元の角度の方向に調整し、且つスリップ量SlpFに応じて前輪FR,FLの車輪速度VWFを調整する制御である。こうしたグリップ力回復制御が実行されると、前輪FR,FLに装着されたタイヤの路面に対するグリップ力が回復すると共にコーナーリングフォースFが大きくなり、アンダーステア状態が解消される。したがって、本実施形態では、制動ECU37、操舵ECU30及びエンジンECU22により、制御手段が構成される。また、ステップS25が、回復制御ステップに相当する。こうしたグリップ力回復制御の終了後、制動ECU37は、アンダーステア解消処理ルーチンを一旦終了する。
次に、上記ステップS25のグリップ力回復制御処理(グリップ力回復制御処理ルーチン)について図7に示すフローチャート及び図8に示すタイミングチャートに基づき説明する。
さて、グリップ力回復制御処理ルーチンにおいて、制動ECU37は、上記ステップS12にて演算した前輪FR,FLの現時点の転舵角σから上記ステップS22又はステップS24にて設定した減算舵角量Δσを減算し、該減算結果を最小転舵角σminとする(ステップS30)。続いて、制動ECU37は、ステップS30にて演算した最小転舵角σminの絶対値が上記ステップS18にて演算した路面限界舵角σmaxの絶対値未満であるか否かを判定する(ステップS31)。すなわち、図9(a)に示すように、前輪FR,FLの転舵角σの絶対値が小さくならないと、前後方向摩擦力MKが大きくならず、アンダーステア状態の解消に時間がかかってしまう。そのため、ステップS31の判定結果が否定判定(σminの絶対値≧σmaxの絶対値)である場合、制動ECU37は、最小転舵角σminを路面限界舵角σmaxに設定し(ステップS32)、その処理を後述するステップS35に移行する。
一方、ステップS31の判定結果が肯定判定(σminの絶対値<σmaxの絶対値)である場合、制動ECU37は、上記ステップS12にて演算した前輪FR,FLの現時点の転舵角σとステップS30にて演算した最小転舵角σminとの正負の符号が同一であるか否かを判定する(ステップS33)。すなわち、ステップS33では、左方向(又は右方向)への旋回時にグリップ力回復制御が実行されることにより、前輪FR,FLの向きが右方向(又は左方向)に旋回するための向きになるタイミングがないか否かが判定される。ステップS33の判定結果が否定判定である場合、制動ECU37は、最小転舵角σminの符号が現時点の転舵角σの符号と異なると判断し、最小転舵角σminを「0(零)」に設定し(ステップS34)、その処理を後述するステップS35に移行する。一方、ステップS33の判定結果が肯定判定である場合、制動ECU37は、最小転舵角σminの符号が現時点の転舵角σの符号と同一であると判断し、その処理を次のステップS35に移行する。
ステップS35において、制動ECU37は、設定した最小転舵角σminに関する舵角情報及び転舵アクチュエータ28の作動を促す旨の制御指令を操舵ECU30に送信する。続いて、制動ECU37は、ステップS22又はステップS24にて設定した駆動力アップ量Dup又は駆動力ダウン量Ddwnに関する駆動力情報及び上記アクセル開度の変更を促す旨の制御指令をエンジンECU22に送信する(ステップS36)。
そして、上記舵角情報及び制御指令を受信した操舵ECU30は、図8のタイミングチャートに示すように前輪FR,FLの転舵角σを変化させるべく、転舵アクチュエータ28を制御する。また、上記駆動力情報及び制御指令を受信したエンジンECU22は、図8のタイミングチャートに示すように前輪FR,FLに対する駆動力Dを変化させるべく、アクセル開度を調整してエンジン12を制御する。
すなわち、グリップ力回復制御が開始されると、前輪FR,FLの転舵角σは、上記最小転舵角σminに向けて速やかに小さくなる。また、グリップ力回復制御が開始されてから第1経過時間t1を経過すると、ロック傾向にある前輪FR,FLに対する駆動力Dが増加し始める。そして、グリップ力回復制御が開始されてから第2経過時間t2(即ち、所定時間Tの半分程度の時間)を経過するまでには、前輪FR,FLに対する駆動力Dは、グリップ力回復制御開始前に比して駆動力アップ量Dupだけ増加している。すると、ロック傾向にあった前輪FR,FLは、エンジン12側から伝達される駆動力Dの増加に伴い、それぞれの車輪速度VWFが速くなり、結果として、前輪FR,FLのロック傾向が解消される。すなわち、前輪FR,FLのスリップ量SlpFは「0(零)」に近づく。
また、グリップ力回復制御が開始されてから第2経過時間t2を経過すると、前輪FR,FLの転舵角σが最小転舵角σminになり、前後方向摩擦力MKが大きくなる(図9(a)参照)。そのため、車両のコーナーリングフォースFが十分に大きくなり、アンダーステア状態が解消される。この際、操舵ECU30からは、前輪FR,FLの転舵角σが最小転舵角σminになった旨の情報が制動ECU37に送信される。
その後、前輪FR,FLの転舵角σは、グリップ力回復制御の開始時点の転舵角σに向けて大きくなる。このように転舵角σが元の角度に戻る状況で、グリップ力回復制御が開始されてから第3経過時間t3(>t2)が経過すると、前輪FR,FLに対する駆動力Dの減少が開始される。そして、前輪FR,FLに対する駆動力Dは、グリップ力回復制御開始前の駆動力Dで維持される。このようにアンダーステア状態が解消されてから前輪FR,FLの転舵角σが再び大きくなるため、該前輪FR,FLの路面に対するグリップ力が十分に回復した状態で車両が旋回することになる。そのため、車両は、運転手によるステアリングホイール26の操舵状況に応じた方向に向けて旋回することになる。
そして、グリップ力回復制御が終了すると、制動ECU37は、グリップ力回復制御処理ルーチンを終了する。
なお、前輪FR,FLがスピン傾向にある場合、グリップ力回復制御が開始されてから第1経過時間t1が経過すると、前輪FR,FLに対する駆動力Dは、設定された駆動力ダウン量Ddwnだけ減少する。このように前輪FR,FLに付与される駆動力Dが減少されると、前輪FR,FLの車輪速度VWFが遅くなり、結果として、前輪FR,FLのスピン傾向が解消される。このような前輪FR,FLの車輪速度VWFの減速制御と、上述した前輪FR,FLの転舵角σの調整制御とが組み合わされることにより、前輪FR,FLがスピン傾向であることに起因したアンダーステア状態が速やかに解消される。
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)アンダーステア状態になってグリップ力回復制御が実行されると、転舵輪である前輪FR,FLの転舵角σの絶対値が一時的に小さくなると共に、前輪FR,FLの車輪速度VWFが調整される。すると、転舵角σの絶対値を小さくしたことにより大きくなったコーナーリングフォースFが大きくなり、アンダーステア状態が解消される。この状態で前輪FR,FLの転舵角σが元の角度の大きさに向けて調整される結果、運転手のステアリングホイール26の操舵具合に応じた旋回態様で車両が旋回する。しかも、アンダーステア状態の発生時には、車両に加わる遠心力を小さくさせるような減速制御が実行されない。そのため、アンダーステア状態の解消後には、車体速度VSを速やかに回復させることができる。したがって、車両の運転手に運転に対する違和感を与えることなく、車両旋回時のアンダーステア状態を速やかに解消させることができる。
(2)ここで、車両の運転の上手な上級運転手は、車両旋回時にアンダーステア状態になった場合、ステアリングホイール26を操舵して、前輪FR,FLの転舵角σを一時的に「0(零)度」近傍の角度まで小さくさせ、その後、前輪FR,FLの転舵角σを元の転舵角に戻させる。また、上級運転手は、上記ステアリングホイール26の操舵と同時に、アクセルペダル11の踏込み操作を行い、前輪FR,FLに対する駆動力Dの調整を行わせる。すなわち、上級運転手は、本実施形態のグリップ力回復制御を本人の意志で行うことができる。しかしながら、このような操作を自身で行うことが可能な運転手は、ごく僅かである。そこで、本実施形態では、ごく僅かの上級運転手にしかできないことが自動制御で達成される。そのため、上級運転手以外の他の運転手が車両を運転する際にも、アンダーステア状態になった場合には、上記グリップ力回復制御が自動的に行われることにより、アンダーステア状態を速やかに解消させることができる。
(3)グリップ力回復制御の実行中において前輪FR,FLの転舵角σが最小転舵角σminになった時点(図8における第2経過時間t2のタイミング)では、前輪FR,FLの回転状態に応じた車輪速度VWFの調整制御が実行されている。そのため、前輪FR,FLのスリップ量SlpFが「0(零)」に近づく結果、コーナーリングフォースFを速やかに大きくできる。したがって、アンダーステア状態の速やかな解消に貢献できる。
(4)アンダーステア状態の発生時に前輪FR,FLがロック傾向にある場合には、前輪FR,FLの車輪速度VWFを速くして該前輪FR,FLのロック傾向を解消させる。すなわち、本実施形態のグリップ力回復制御中では、車両の車体速度VS自体が速くなるほど、前輪FR,FLに対する駆動力Dが大きくなるわけではない。その結果、前輪FR,FLに装着されるタイヤの路面に対するグリップ力が回復する。そのため、前輪FR,FLがロック傾向にあることに起因したアンダーステア状態を解消できる。
(5)一方、アンダーステア状態の発生時に前輪FR,FLがスピン傾向にある場合には、前輪FR,FLの車輪速度VWFを遅くして該前輪FR,FLのスピン傾向を解消させる。すなわち、本実施形態のグリップ力回復制御中では、車両の車体速度VS自体が遅くなるほど、前輪FR,FLに対する駆動力Dが小さくなるわけではない。その結果、前輪FR,FLに装着されるタイヤの路面に対するグリップ力が回復する。そのため、前輪FR,FLがスピン傾向にあることに起因したアンダーステア状態を解消できる。
(6)一般に、前輪FR,FLのスリップ量SlpFの絶対値が大きいほど、前輪FR,FLのロック傾向又はスピン傾向が大きい。そこで、本実施形態では、グリップ力回復制御時における前輪FR,FLに対する駆動力Dの変化量である駆動力アップ量Dupや駆動力ダウン量Ddwn(即ち、前輪FR,FLの車輪速度VWFの変化量)は、前輪FR,FLのスリップ量SlpFの絶対値が大きいほど大きな値に設定される。したがって、前輪FL,FLの車輪速度VWFがスリップ量SlpFに応じて好適に調整されることにより、前輪FR,FLに装着されるタイヤの路面に対するグリップ力を確実に回復させることができる。
(7)グリップ力回復制御の実行によって、転舵輪の転舵角は、その絶対値が一時的に路面限界舵角σmaxの絶対値以下となるように調整される。そのため、コーナーリングフォースFを最大値近傍まで大きくすることができ、アンダーステア状態の解消に貢献できる。
(8)第1目標ヨーレートYstと実ヨーレートYとの差分であるヨーレート偏差Ysubが大きいほど、前輪FR,FLの転舵角σと路面限界舵角σmaxとの角度差が大きいと推定される。そこで、本実施形態では、減算舵角量Δσは、ヨーレート偏差Ysubが大きいほど大きな値に設定される。そのため、グリップ力回復制御の実行によって、ヨーレート偏差Ysubの大きさに関係なくコーナーリングフォースFを大きくすることができ、アンダーステア状態を好適に解消できる。
(9)ステップS30にて演算した最小転舵角σminとグリップ力回復制御実行前の前輪FR,FLの転舵角σの符号が異なっている場合、最小転舵角σminは、「0(零)」に設定される。そのため、グリップ力回復制御の実行によって、前輪FR,FLの向きが、車両を旋回させたい向きとは反対の向きになってしまうことを規制できる。したがって、旋回時の車両の挙動の安定性を維持できる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図10に従って説明する。なお、第2の実施形態は、グリップ力回復制御処理の内容が第1の実施形態と多少異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
さて、本実施形態のグリップ力回復制御処理ルーチンでは、上記ステップS30〜S36の各処理が実行されると、制動ECU37は、前輪FR,FLの転舵角σが最小転舵角σminになった旨の情報を操舵ECU30から受信したか否かを判定する(ステップS40)。この判定結果が否定判定である場合、制動ECU37は、ステップS40の判定結果が肯定判定になるまで該判定処理を繰り返し実行する。一方、ステップS40の判定結果が肯定判定になった場合、制動ECU37は、上記情報を受信したと判断し、操舵角センサSE2からの検出信号に基づき現時点のステアリングホイール26の操舵角θを演算し、該操舵角θに基づき上記グリップ力回復制御終了時点の推定転舵角σestを推定する(ステップS41)。したがって、本実施形態では、転舵角推定手段としても機能する。
続いて、制動ECU37は、上記各関係式(式1)(式2)を利用し、現時点の路面限界舵角σmaxを演算する(ステップS42)。そして、制動ECU37は、ステップS41にて推定した推定転舵角σestの絶対値がステップS42にて演算した路面限界舵角σmaxの絶対値以上であるか否かを判定する(ステップS43)。この判定結果が肯定判定(σestの絶対値≧σmaxの絶対値)である場合、制動ECU37は、制御終了時転舵角σendをステップS42にて演算した路面限界舵角σmaxに設定し(ステップS44)、その処理を後述するステップS46に移行する。一方、ステップS43の判定結果が否定判定(σestの絶対値<σmaxの絶対値)である場合、制動ECU37は、制御終了時転舵角σendをステップS41にて推定した推定転舵角σestに設定し(ステップS45)、その処理を次のステップS46に移行する。
ステップS46において、制動ECU37は、制御終了時転舵角σendに関する転舵角情報を操舵ECU30に送信する。そして、上記転舵角情報を受信した操舵ECU30は、グリップ力回復制御の終了時点の前輪FR,FLの転舵角σが制御終了時転舵角σendとなるように、転舵アクチュエータ28を制御する。
すなわち、グリップ力回復制御終了後において、車両は、その前輪FR,FLの転舵角σの絶対値が路面限界舵角σmaxの絶対値よりも小さい値に維持された状態で旋回することになる。そのため、グリップ力回復制御終了後も、コーナーリングフォースFが大きい状態で車両が旋回することになるため、グリップ力回復制御の実行によってアンダーステア状態が解消された後に、再びアンダーステア状態になってしまうことが抑制される。したがって、旋回する車両の走行軌跡を運転手の所望する走行軌跡に近づけることができる。なお、車両の旋回が終了したと判定された場合、前輪FR,FLの転舵角σは、ステアリングホイール26の操舵角θに応じた角度に設定されるようになる。
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態の効果(1)〜(9)に加えて以下に示す効果を得ることができる。
(10)グリップ力回復制御終了後の前輪FR,FLの転舵角σは、その絶対値が路面限界舵角σmaxの絶対値以下の角度になる。そのため、十分な大きさのコーナーリングフォースFを持って車両が旋回することになるため、旋回中の車両の挙動安定性を確保できる。
なお、各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・各実施形態において、グリップ力回復制御を実行させる場合、前輪FR,FLの転舵角σを、車両が直進傾向を示すような角度(即ち、「0(零)度」)まで一時的に小さくした後に、元の角度に接近させるように転舵アクチュエータ28を作動させてもよい。この場合、グリップ力回復制御の実行時には、前輪FR,FLに装着されるタイヤと路面との間の前後方向摩擦力MKが最大値を示す瞬間があるため、アンダーステア状態を速やかに解消させることができる。
・各実施形態において、ステップS33の判定処理を省略してもよい。
・各実施形態において、ヨーレート偏差Ysubは、横方向加速度Gyに基づき演算された第2目標ヨーレートYgyと実ヨーレートYとの差分であってもよい。
・各実施形態において、減算舵角量Δσは、ヨーレート偏差Ysubの大きさに関係なく、予め設定された一定値であってもよい。
・各実施形態において、ステップS31の判定処理を省略してもよい。このように構成しても、最小転舵角σminは、グリップ力回復制御開始直前の転舵角σよりも路面限界舵角σmaxに近い値になり、コーナーリングフォースFが大きくなる。そのため、アンダーステア状態の解消に貢献できる。
・各実施形態において、駆動力アップ量Dup及び駆動力ダウン量Ddwnは、前輪FR,FLのスリップ量SlpFの大きさに関係なく、予め設定された所定量であってもよい。
・各実施形態において、グリップ力回復制御は、前輪FR,FLの車輪速度VWFの調整制御が開始されてから、前輪FR,FLの転舵角σの調整が開始されるような制御構成であってもよい。この場合であっても、前輪FR,FLの転舵角σが最小転舵角σminになった時点では、前輪FR,FLの車輪速度VWFを調整する調整制御が実行中であるため、アンダーステア状態の速やかな解消に貢献できる。
・各実施形態において、ステップS23が否定判定である場合には、前輪FR,FLの転舵角σのみを調整するようなグリップ力回復制御を実行してもよい。
・各実施形態において、グリップ力回復制御は、燃料噴射装置21の1回あたりの燃料噴射量を調整して、前輪FR,FLに付与する駆動力Dを調整する制御構成であってもよい。
また、グリップ力回復制御は、燃料噴射装置21の燃料噴射タイミングを変更して、前輪FR,FLに付与する駆動力Dを調整する制御構成であってもよい。
・各実施形態において、グリップ力回復制御は、トランスミッション23や前輪用ディファレンシャルギヤ24の作動を調整して、前輪FR,FLに付与する駆動力Dを調整する制御構成であってもよい。この場合、駆動力伝達装置14が、車輪速度調整機構として機能する。
また、車両が四輪駆動車である場合、車両には、各車輪FR,FL,RR,RLに配分する駆動力を調整する駆動力配分装置が設けられている。こうした車両におけるグリップ力回復制御では、前輪FR,FLに配分される駆動力Dを調整して、前輪FR,FLに付与する駆動力を調整してもよい。この場合、駆動力配分装置が、車輪速度調整機構として機能する。
・各実施形態において、グリップ力回復制御は、スピン傾向にある前輪FR,FLに対して制動装置17の作動によって制動力を付与して、前輪FR,FLの車輪速度VWFを遅くさせるようにしてもよい。この場合、制動装置17も、車輪速度調整機構として機能する。
また、車両の旋回中に車輪FR,FL,RR,RLに制動力が付与される場合において、アンダーステア状態になったときには、前輪FR,FLがロック傾向にある可能性がある。こうした場合に実行されるグリップ力回復制御では、ロック傾向にある前輪FR,FLに付与される制動力が小さくなるように制動装置17を作動させて、前輪FR,FLの車輪速度VWFを速くさせてもよい。
・各実施形態において、グリップ力回復制御は、前輪FR,FLの転舵角σを最小転舵角σminに所定時間だけ維持させてから、転舵角σを元の角度に戻すようにしてもよい。
・各実施形態において、旋回時にステアリングホイール26の操舵に応じて後輪RR,RLも転舵する車両でのグリップ力回復制御では、前輪FR,FLの転舵角σを調整するだけではなく、後輪RR,RLの転舵角も調整してもよい。
・各実施形態において、上記ステップS19では、前輪FR,FLのスリップ率を演算してもよい。このスリップ率は、スリップ量SlpFを車体速度VSで除算した値である。
・各実施形態において、グリップ力回復制御は、該グリップ力回復制御の実行中に、車両を直進させるための角度に転舵角σを調整させる意志があることを運転手によるステアリングホイール26の操舵具合から検出された場合には、終了するような制御構成であってもよい。すなわち、前輪FR,FLの転舵角σを、ステアリングホイール26の操舵角θに対応した角度に速やかに変更させると共に、前輪FR,FLの車輪速度VWFを、運転手によるアクセルペダル11の踏込み操作量などに応じた速度に速やかに変更させることが望ましい。
・各実施形態において、グリップ力回復制御処理ルーチンを、制動ECU37以外の他のECU22,25,30にて実行させてもよい。また、各ECU22,25,30,37を統括的に制御するECUを別途設け、該ECUにグリップ力回復制御処理ルーチンを実行させてもよい。
第1の実施形態における車両の概略構成を示すブロック図。 第1の実施形態における電気的構成を模式的に示すブロック図。 前輪のスリップ量と駆動力アップ量との関係を示すマップ。 前輪のスリップ量と駆動力ダウン量との関係を示すマップ。 ヨーレート偏差と減算舵角量との関係を示すマップ。 アンダーステア解消処理ルーチンを示すフローチャート。 第1の実施形態におけるグリップ力回復制御処理ルーチンを示すフローチャート。 ステアリングホイールの操舵角、前輪のスリップ量、前輪の転舵角、前輪に対する駆動力及び前輪の回転速度の変化を示すタイミングチャート。 (a)は前輪の転舵角と前輪の前後方向摩擦力との関係を示すグラフ、(b)は前輪のスリップ量とコーナーリングフォースとの関係を示すグラフ。 第2の実施形態におけるグリップ力回復制御処理ルーチンの一部を示すフローチャート。 前輪の転舵角とコーナーリングフォースとの関係を示すグラフ。
符号の説明
13…車輪速度調整機構としての駆動力発生装置、14…車輪速度調整機構としての駆動力伝達装置、15…転舵角調整機構としての前輪転舵装置、17…車輪速度調整機構としての制動装置、22,25,30,37…運動制御装置、転舵角演算手段、旋回状態判定手段、制御手段、回転状態推定手段、限界舵角演算手段、第1ヨーレート演算手段、第2ヨーレート演算手段、差分演算手段、転舵角推定手段としてのECU、26…ステアリングホイール、Ddwn…変化量としての駆動力ダウン量、Dup…変化量としての駆動力アップ量、FR,FL…転舵輪としての前輪、RR,RL…転舵輪としての後輪、SlpF…スリップ量、VWF…車輪速度、Y…実ヨーレート、Yst…第1目標ヨーレート、Ysub…ヨーレート偏差、θ…操舵角、σ…転舵角、σest…推定転舵角、σmax…路面限界舵角、σmin…最小転舵角、Δσ…角度差としての減算舵角量。

Claims (10)

  1. ステアリング(26)の操舵に応じて転舵する転舵輪(FR,FL、RR,RL)と、該転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)を調整可能な車輪速度調整機構(13、14、17)と、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を調整可能な転舵角調整機構(15)とを有する車両の旋回時における運動を制御する車両の運動制御装置(22,25,30,37)であって、
    前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を演算する転舵角演算手段(37、S12)と、
    車両の旋回状態を判定する旋回状態判定手段(37、S17)と、
    該旋回状態判定手段(37、S17)によって車両の旋回状態がアンダーステア状態であると判定された場合に、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)の絶対値を一時的に小さくした後、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を元に戻す方向に調整させるべく前記転舵角調整機構(15)を制御し、且つ前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)を調整させるべく前記車輪速度調整機構(13、14、17)を制御するグリップ力回復制御を実行する制御手段(22,30,37、S25)と
    車両のステアリング(26)の操舵量に応じた目標ヨーレート(Yst)を演算する第1ヨーレート演算手段(37、S15)と、
    車両の実際のヨーレート(Y)を演算する第2ヨーレート演算手段(37、S14)と、
    前記各ヨーレート演算手段(37、S14、S15)によって演算された各ヨーレート(Y、Yst)の差分であるヨーレート偏差(Ysub)を演算する差分演算手段(37、S20)とを備え
    前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時には、前記旋回状態判定手段(37、S17)によってアンダーステア状態であると判定された時点の前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)と前記グリップ力回復制御の実行中に絶対値が最も小さくなる最小転舵角(σmin)との角度差(Δσ)が、前記差分演算手段(37、S20)によって演算されたヨーレート偏差(Ysub)が大きいほど大きくなるように前記転舵角調整機構(15)を制御する車両の運動制御装置。
  2. 前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時において、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)の絶対値が最も小さくなった時点では、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)が調整中であるように、前記車輪速度調整機構(13、14、17)及び転舵角調整機構(15)を制御する請求項1に記載の車両の運動制御装置。
  3. 前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の回転状態を推定する回転状態推定手段(37,S39)をさらに備え、
    前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時には、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)が、前記回転状態推定手段(37,S39)によって推定された前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の回転状態に応じて調整されるように前記車輪速度調整機構(13、14、17)を制御する請求項1又は請求項2に記載の車両の運動制御装置。
  4. 前記回転状態推定手段(37,S39)は、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の回転状態として該転舵輪(FR,FL、RR,RL)のスリップ量(SlpF)を演算すると共に、
    前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時において、前記回転状態推定手段(37、S19)によって演算されたスリップ量(SlpF)に基づき前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)がロック傾向にあると判定した場合には、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)が、前記旋回状態判定手段(37、S17)によってアンダーステア状態であると判定された時点の前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)よりも速くなるように前記車輪速度調整機構(13、14、17)を制御する請求項3に記載の車両の運動制御装置。
  5. 前記回転状態推定手段(37,S39)は、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の回転状態として該転舵輪(FR,FL、RR,RL)のスリップ量(SlpF)を演算すると共に、
    前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時において、前記回転状態推定手段(37、S19)によって演算されたスリップ量(SlpF)に基づき前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)がスピン傾向にあると判定した場合には、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)が、前記旋回状態判定手段(37、S17)によってアンダーステア状態であると判定された時点の前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)よりも遅くなるように前記車輪速度調整機構(13、14、17)を制御する請求項3に記載の車両の運動制御装置。
  6. 前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時には、前記回転状態推定手段(37、S19)によって演算されたスリップ量(SlpF)の絶対値が大きいほど、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)の変化量(Ddwn、Dup)が多くなるように前記車輪速度調整機構(13、14、17)を制御する請求項4又は請求項5に記載の車両の運動制御装置。
  7. 路面限界となる前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を路面限界舵角(σmax)として演算する限界舵角演算手段(37、S18)をさらに備え、
    前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時には、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を、その絶対値が一時的に前記限界舵角演算手段(37、S18)によって演算された路面限界舵角(σmax)の絶対値以下となるように調整した後、元に戻す方向に調整させるべく前記転舵角調整機構(15)を制御する請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載の車両の運動制御装置。
  8. 前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行によって前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の向きが前記旋回状態判定手段(37、S17)によってアンダーステア状態であると判定された時点の前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の向きと異なる向きになることが規制されるように前記転舵角調整機構(15)を制御する請求項1〜請求項7のうち何れか一項に記載の車両の運動制御装置。
  9. 路面限界となる前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を路面限界舵角(σmax)として演算する限界舵角演算手段(37、S18)と、
    前記ステアリング(26)の操舵角(θ)に相当する前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角を推定転舵角(σest)として演算する転舵角推定手段(37、S41)とをさらに備え、
    前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の終了時において、前記転舵角推定手段(37、S41)によって推定された推定転舵角(σest)の絶対値が前記限界舵角演算手段(37、S18)によって演算された路面限界舵角(σmax)の絶対値以上である場合には、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)が前記路面限界舵角(σmax)となるように前記転舵角調整機構(15)を制御する請求項〜請求項のうち何れか一項に記載の車両の運動制御装置。
  10. 車両の転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を演算させる転舵角演算ステップ(S12)と、
    車両の旋回状態を判定させる旋回状態判定ステップ(S17)と、
    該旋回状態判定ステップ(S17)にて車両の旋回状態がアンダーステア状態であると判定した場合に、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)の絶対値を一時的に小さくした後、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を元に戻す方向に調整し、且つ前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の回転状態に応じて該転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)を調整するグリップ力回復制御を実行させる回復制御ステップ(S25)と
    車両のステアリング(26)の操舵量に応じた目標ヨーレート(Yst)を演算させる第1ヨーレート演算ステップ(S15)と、
    車両の実際のヨーレート(Y)を演算させる第2ヨーレート演算ステップ(S14)と、
    前記各ヨーレート演算ステップ(S14、S15)にて演算された各ヨーレート(Y、Yst)の差分であるヨーレート偏差(Ysub)を演算させる差分演算ステップ(S20)とを有し、
    前記回復制御ステップ(S25)における前記グリップ力回復制御の実行時には、前記旋回状態判定ステップ(S17)にてアンダーステア状態であると判定された時点の前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)と前記グリップ力回復制御の実行中に絶対値が最も小さくなる最小転舵角(σmin)との角度差(Δσ)が、前記差分演算ステップ(S20)にて演算されたヨーレート偏差(Ysub)が大きいほど大きくなるように転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を調整させる車両の運動制御方法。
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