JP5135059B2 - 車両の運動制御装置、及び車両の運動制御方法 - Google Patents
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Description
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の運動制御装置において、前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時において、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)の絶対値が最も小さくなった時点では、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)が調整中であるように、前記車輪速度調整機構(13、14、17)及び転舵角調整機構(15)を制御することを要旨とする。
以下、本発明の車両の運動制御装置、及び車両の運動制御方法を具体化した第1の実施形態を図1〜図9に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明においては、車両の進行方向(前進方向)を前方(車両前方)として説明する。また、特に説明がない限り、以下の記載における左右方向は、車両進行方向における左右方向と一致するものとする。
制動ECU37のROM35には、各種制御処理(後述するアンダーステア解消処理)、各種マップ(図3〜図5に示す各種マップ)及び各種閾値(後述する第1閾値、第2閾値など)などが予め記憶されている。また、制動ECU37のRAM36には、車両の図示しないイグニッションスイッチが「オン」である間、適宜書き換えられる各種の情報(後述する前後方向加速度、横方向加速度、操舵角、転舵角、実ヨーレート、各目標ヨーレート、車体速度、路面限界舵角、スリップ量、差分、駆動アップ量、駆動ダウン量、減算舵角量、最小転舵角など)などがそれぞれ記憶される。
まず、図3に示すマップは、車両の車体速度に対する前輪FR,FLのスリップ量SlpF(=車両の車体速度−前輪FR,FLの車輪速度)と、エンジン12で発生させる駆動力のアップ量(以下、「駆動力アップ量」という。)Dupとの関係を示すものである。具体的には、前輪FR,FLのスリップ量SlpFが「0(零)」よりも大きな値である第1閾値KSlp1以下である場合には、前輪FR,FLがロック傾向にないと判断し、駆動力アップ量Dupが設定されていない。一方、前輪FR,FLのスリップ量SlpFが第1閾値KSlp1を超えた場合には、駆動力アップ量Dupがスリップ量SlpFの大きさに比例して増加するようになっている。なお、駆動力アップ量Dupが多いほど前輪FR,FLに加わる駆動力が大きくなることから、駆動輪でもある前輪FR,FLの車輪速度が、速くなる。
ただし、Yst…第1目標ヨーレート、VS…車両の車体速度、A…スタビリティファクタ、θ…操舵角、n…ステアリングホイールのギヤ比、L…車両のホイールベース長、Ygy…第2目標ヨーレート、Gy…横方向加速度
続いて、制動ECU37は、ステップS14にて演算した実ヨーレートYがステップS15にて演算した第1目標ヨーレートYst未満であるか否かを判定する(ステップS17)。なお、実ヨーレートYが第1目標ヨーレートYst未満となる場合とは、車両がアンダーステア状態であることを示す。すなわち、ステップS17では、アンダーステア状態であるか否かが判定される。したがって、本実施形態では、制動ECU37が、旋回状態判定手段としても機能する。また、ステップS17が、旋回状態判定ステップに相当する。
なお、前輪FR,FLがスピン傾向にある場合、グリップ力回復制御が開始されてから第1経過時間t1が経過すると、前輪FR,FLに対する駆動力Dは、設定された駆動力ダウン量Ddwnだけ減少する。このように前輪FR,FLに付与される駆動力Dが減少されると、前輪FR,FLの車輪速度VWFが遅くなり、結果として、前輪FR,FLのスピン傾向が解消される。このような前輪FR,FLの車輪速度VWFの減速制御と、上述した前輪FR,FLの転舵角σの調整制御とが組み合わされることにより、前輪FR,FLがスピン傾向であることに起因したアンダーステア状態が速やかに解消される。
(1)アンダーステア状態になってグリップ力回復制御が実行されると、転舵輪である前輪FR,FLの転舵角σの絶対値が一時的に小さくなると共に、前輪FR,FLの車輪速度VWFが調整される。すると、転舵角σの絶対値を小さくしたことにより大きくなったコーナーリングフォースFが大きくなり、アンダーステア状態が解消される。この状態で前輪FR,FLの転舵角σが元の角度の大きさに向けて調整される結果、運転手のステアリングホイール26の操舵具合に応じた旋回態様で車両が旋回する。しかも、アンダーステア状態の発生時には、車両に加わる遠心力を小さくさせるような減速制御が実行されない。そのため、アンダーステア状態の解消後には、車体速度VSを速やかに回復させることができる。したがって、車両の運転手に運転に対する違和感を与えることなく、車両旋回時のアンダーステア状態を速やかに解消させることができる。
次に、本発明の第2の実施形態を図10に従って説明する。なお、第2の実施形態は、グリップ力回復制御処理の内容が第1の実施形態と多少異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
(10)グリップ力回復制御終了後の前輪FR,FLの転舵角σは、その絶対値が路面限界舵角σmaxの絶対値以下の角度になる。そのため、十分な大きさのコーナーリングフォースFを持って車両が旋回することになるため、旋回中の車両の挙動安定性を確保できる。
・各実施形態において、グリップ力回復制御を実行させる場合、前輪FR,FLの転舵角σを、車両が直進傾向を示すような角度(即ち、「0(零)度」)まで一時的に小さくした後に、元の角度に接近させるように転舵アクチュエータ28を作動させてもよい。この場合、グリップ力回復制御の実行時には、前輪FR,FLに装着されるタイヤと路面との間の前後方向摩擦力MKが最大値を示す瞬間があるため、アンダーステア状態を速やかに解消させることができる。
・各実施形態において、ヨーレート偏差Ysubは、横方向加速度Gyに基づき演算された第2目標ヨーレートYgyと実ヨーレートYとの差分であってもよい。
・各実施形態において、ステップS31の判定処理を省略してもよい。このように構成しても、最小転舵角σminは、グリップ力回復制御開始直前の転舵角σよりも路面限界舵角σmaxに近い値になり、コーナーリングフォースFが大きくなる。そのため、アンダーステア状態の解消に貢献できる。
・各実施形態において、グリップ力回復制御は、燃料噴射装置21の1回あたりの燃料噴射量を調整して、前輪FR,FLに付与する駆動力Dを調整する制御構成であってもよい。
・各実施形態において、グリップ力回復制御は、トランスミッション23や前輪用ディファレンシャルギヤ24の作動を調整して、前輪FR,FLに付与する駆動力Dを調整する制御構成であってもよい。この場合、駆動力伝達装置14が、車輪速度調整機構として機能する。
Claims (10)
- ステアリング(26)の操舵に応じて転舵する転舵輪(FR,FL、RR,RL)と、該転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)を調整可能な車輪速度調整機構(13、14、17)と、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を調整可能な転舵角調整機構(15)とを有する車両の旋回時における運動を制御する車両の運動制御装置(22,25,30,37)であって、
前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を演算する転舵角演算手段(37、S12)と、
車両の旋回状態を判定する旋回状態判定手段(37、S17)と、
該旋回状態判定手段(37、S17)によって車両の旋回状態がアンダーステア状態であると判定された場合に、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)の絶対値を一時的に小さくした後、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を元に戻す方向に調整させるべく前記転舵角調整機構(15)を制御し、且つ前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)を調整させるべく前記車輪速度調整機構(13、14、17)を制御するグリップ力回復制御を実行する制御手段(22,30,37、S25)と、
車両のステアリング(26)の操舵量に応じた目標ヨーレート(Yst)を演算する第1ヨーレート演算手段(37、S15)と、
車両の実際のヨーレート(Y)を演算する第2ヨーレート演算手段(37、S14)と、
前記各ヨーレート演算手段(37、S14、S15)によって演算された各ヨーレート(Y、Yst)の差分であるヨーレート偏差(Ysub)を演算する差分演算手段(37、S20)とを備え、
前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時には、前記旋回状態判定手段(37、S17)によってアンダーステア状態であると判定された時点の前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)と前記グリップ力回復制御の実行中に絶対値が最も小さくなる最小転舵角(σmin)との角度差(Δσ)が、前記差分演算手段(37、S20)によって演算されたヨーレート偏差(Ysub)が大きいほど大きくなるように前記転舵角調整機構(15)を制御する車両の運動制御装置。 - 前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時において、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)の絶対値が最も小さくなった時点では、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)が調整中であるように、前記車輪速度調整機構(13、14、17)及び転舵角調整機構(15)を制御する請求項1に記載の車両の運動制御装置。
- 前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の回転状態を推定する回転状態推定手段(37,S39)をさらに備え、
前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時には、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)が、前記回転状態推定手段(37,S39)によって推定された前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の回転状態に応じて調整されるように前記車輪速度調整機構(13、14、17)を制御する請求項1又は請求項2に記載の車両の運動制御装置。 - 前記回転状態推定手段(37,S39)は、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の回転状態として該転舵輪(FR,FL、RR,RL)のスリップ量(SlpF)を演算すると共に、
前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時において、前記回転状態推定手段(37、S19)によって演算されたスリップ量(SlpF)に基づき前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)がロック傾向にあると判定した場合には、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)が、前記旋回状態判定手段(37、S17)によってアンダーステア状態であると判定された時点の前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)よりも速くなるように前記車輪速度調整機構(13、14、17)を制御する請求項3に記載の車両の運動制御装置。 - 前記回転状態推定手段(37,S39)は、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の回転状態として該転舵輪(FR,FL、RR,RL)のスリップ量(SlpF)を演算すると共に、
前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時において、前記回転状態推定手段(37、S19)によって演算されたスリップ量(SlpF)に基づき前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)がスピン傾向にあると判定した場合には、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)が、前記旋回状態判定手段(37、S17)によってアンダーステア状態であると判定された時点の前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)よりも遅くなるように前記車輪速度調整機構(13、14、17)を制御する請求項3に記載の車両の運動制御装置。 - 前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時には、前記回転状態推定手段(37、S19)によって演算されたスリップ量(SlpF)の絶対値が大きいほど、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)の変化量(Ddwn、Dup)が多くなるように前記車輪速度調整機構(13、14、17)を制御する請求項4又は請求項5に記載の車両の運動制御装置。
- 路面限界となる前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を路面限界舵角(σmax)として演算する限界舵角演算手段(37、S18)をさらに備え、
前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行時には、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を、その絶対値が一時的に前記限界舵角演算手段(37、S18)によって演算された路面限界舵角(σmax)の絶対値以下となるように調整した後、元に戻す方向に調整させるべく前記転舵角調整機構(15)を制御する請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載の車両の運動制御装置。 - 前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の実行によって前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の向きが前記旋回状態判定手段(37、S17)によってアンダーステア状態であると判定された時点の前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の向きと異なる向きになることが規制されるように前記転舵角調整機構(15)を制御する請求項1〜請求項7のうち何れか一項に記載の車両の運動制御装置。
- 路面限界となる前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を路面限界舵角(σmax)として演算する限界舵角演算手段(37、S18)と、
前記ステアリング(26)の操舵角(θ)に相当する前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角を推定転舵角(σest)として演算する転舵角推定手段(37、S41)とをさらに備え、
前記制御手段(22,30,37、S25)は、前記グリップ力回復制御の終了時において、前記転舵角推定手段(37、S41)によって推定された推定転舵角(σest)の絶対値が前記限界舵角演算手段(37、S18)によって演算された路面限界舵角(σmax)の絶対値以上である場合には、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)が前記路面限界舵角(σmax)となるように前記転舵角調整機構(15)を制御する請求項1〜請求項8のうち何れか一項に記載の車両の運動制御装置。 - 車両の転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を演算させる転舵角演算ステップ(S12)と、
車両の旋回状態を判定させる旋回状態判定ステップ(S17)と、
該旋回状態判定ステップ(S17)にて車両の旋回状態がアンダーステア状態であると判定した場合に、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)の絶対値を一時的に小さくした後、前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を元に戻す方向に調整し、且つ前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の回転状態に応じて該転舵輪(FR,FL、RR,RL)の車輪速度(VWF)を調整するグリップ力回復制御を実行させる回復制御ステップ(S25)と、
車両のステアリング(26)の操舵量に応じた目標ヨーレート(Yst)を演算させる第1ヨーレート演算ステップ(S15)と、
車両の実際のヨーレート(Y)を演算させる第2ヨーレート演算ステップ(S14)と、
前記各ヨーレート演算ステップ(S14、S15)にて演算された各ヨーレート(Y、Yst)の差分であるヨーレート偏差(Ysub)を演算させる差分演算ステップ(S20)とを有し、
前記回復制御ステップ(S25)における前記グリップ力回復制御の実行時には、前記旋回状態判定ステップ(S17)にてアンダーステア状態であると判定された時点の前記転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)と前記グリップ力回復制御の実行中に絶対値が最も小さくなる最小転舵角(σmin)との角度差(Δσ)が、前記差分演算ステップ(S20)にて演算されたヨーレート偏差(Ysub)が大きいほど大きくなるように転舵輪(FR,FL、RR,RL)の転舵角(σ)を調整させる車両の運動制御方法。
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