JP3968856B2 - 傘地 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、折れ目透けの発生しないポリエステル傘地およびその傘地を用いてなる傘に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルマルチフィラメント糸を用いた織物からなる傘地は、その素材の特性を生かして、天然繊維やスパン糸使いの織物に比べて、乾湿状態間の寸法安定性に優れ、繊維内部に水分を保持しにくく、乾きやすく、また、強度が高く、破れにくいという特徴を有している。
【0003】
そのため、防水性に富み、軽く、コンパクトで丈夫な傘として、生糸使いのタフタおよび加工糸使いのポンジーは共に、一般傘市場に広く定着している。
【0004】
しかし、生糸を使用した織物からなる傘地を折り畳み傘にした場合、繰り返して屈曲される折れ目部分においてタテ・ヨコ糸間の交錯点にズレを生じ、防水性を付与するための樹脂膜が破壊され、いわゆる透けが発生するということがあった。
【0005】
この折れ目部分のタテ・ヨコ糸間の交錯点のズレを改善するため、極細糸を高密度に織る方法なども取られているが、折れ目部分の透け(「折れ目透け」ともいう)の程度は軽減されるが完全に解消するまでには達していない。
【0006】
一方、収縮差のある混繊糸や、捲縮加工されたポリエステルマルチフィラメント加工糸を使用するポンジーは、折れ目部分のタテ糸−ヨコ糸間にズレの生じないことが知られている。
【0007】
しかし、このようにして得られた織物はいずれも、構成する糸のふくらみによって、地厚で嵩高でふかついたものとなる。また、織物表面が凹凸になるので滑りが低下し、光沢もなく、水切れが悪く、高級感のない傘地となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来のポリエステルマルチフィラメント生糸を用いた織物からなる傘地の折れ目透け欠点を解消し、傘地表面の平滑性、防水性、薄地・軽量、柔らかさ、光沢を兼ね備えた傘地およびその傘地を用いてなる傘を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するため、次の構成を有する。
【0010】
すなわち、仮撚数が17700〜28300/D 1/2 (T/m)であるポリエステルマルチフィラメント捲縮加工糸からなる織物の少なくとも片面に樹脂層を有する基布からなり、該織物のタテ糸およびヨコ糸のクリンプ率の和が2.2〜3.1%であることを特徴とする傘地である。
【0011】
また、本発明の傘は前記傘地を用いてなるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の傘地は、ポリエステルマルチフィラメント捲縮加工糸からなる織物を用いる。かかる織物において、タテ糸およびヨコ糸のクリンプ率の和が2.2〜3.1%であることが重要である。
【0013】
ここでクリンプ率とは、織物の状態でのタテ糸およびヨコ糸の一定の長さに対して、織物を分解し、織クリンプが完全に伸び、繊維自身の伸長が起こる直前まで伸長したときの、タテ糸およびヨコ糸各々の長さの形態伸び率をいい、ポリエステル加工糸織物は、タテ糸およびヨコ糸のクリンプ率の和が大きい程、地厚で凹凸も大きくなる。 具体的には次の方法によって求められるものである。
【0014】
織物のタテ糸およびヨコ糸に、織物を分解することなく20cmの印を入れる。次に、印を付けたタテ糸およびヨコ糸を織物から分解し、定速引張り伸長試験機(インストロン引張り試験機)によって伸長し、100mg/荷重時の伸び(△L(cm))を読み、次式により算出する。
クリンプ率(%)=100×△L/20
こうして求められるタテ糸およびヨコ糸のクリンプ率の和が2.3に満たない場合、その織物は、表面が平滑で薄地・軽量にはなるが、織物を構成する繊維間の自由度がなく、折れ目ができた場合には、容易に折れ目透けが発生する。
【0015】
また、タテ糸およびヨコ糸のクリンプ率の和が3.1を越える場合、その織物は地厚で嵩高でふかついたものとなる。
本発明において用いる織物を構成するポリエステルマルチフィラメント捲縮加工糸は、紡速2600〜3500m/分で溶融紡糸した未延伸糸を、120〜150℃で乾熱処理した後、延伸倍率1.6〜2.0倍で延伸仮撚加工することで得ることができる。
【0016】
仮撚り数としては、17700〜28300/D1/2(T/m)の範囲であることが好ましい。また、捲縮加工糸の沸騰水収縮率が5〜12%、180℃における乾熱収縮率が3〜8%、伸縮復元率(嵩高性)が32〜38であることが好ましい。
【0017】
また、本発明において用いる織物の嵩高度は、ふかつき感を有することなく折り目透けを防ぐ観点から1.7〜3.2cm3/gであることが好ましい。ここでいう嵩高度とは、織物の単位重さ当りの体積を表したものであり、織物のふかつきの程度を表す。
【0018】
具体的には次の方法によって求めることができるものである。
【0019】
3cm×3cmの試験布を2cm2のプレッサーフートを用い、240g/cm2の荷重をかけ、10秒後の厚さ(△mm)を読み取る。これとは別に25cm×25cmの試験布を採取し、重さをはかり16倍して目付(g/m2)を求め、次式により算出する。
【0020】
嵩高度(cm3/g)=1000×厚さ(△mm)/目付(g/m2)
また、本発明において用いる織物のタテ方向とヨコ方向の滑り摩擦係数の和は、光沢を損なわずに高級感を備えるために1.4以下であることが好ましい。
【0021】
ここでいう滑り摩擦係数とは、300g/cmの張力をかけて固定した試料aの上に、摩擦面が5cm×7cm、重量100gの摩擦子bに、精練上がりの綿布(金巾3号)を取り付け、5cm/分の速度で試料の上を滑らせた時の摩擦抵抗力を求め、次式により摩擦係数(μ)を算出したものである。
【0022】
μ=A/M
(M:摩擦子の重量(g)、Aは滑り摩擦抵抗力(g)の平均値)
次に、本発明の傘地の製造方法の一例を示す。
【0023】
上述したようにして得たポリエステル捲縮加工糸をタテ糸およびヨコ糸に用い、通常の製織方法により平織物を製織する。得られた織物は、通常のポリエステル加工糸織物と同様に、リラックス・精練加工、中間ヒートセット加工、染色加工、仕上セット加工の各工程を通り、コーティング前の織物とする。次に、この織物の少なくとも片面に樹脂層を設ける。樹脂層は、ローラーコーティングなどの通常のコーティング方法により設けることができる。使用する樹脂は、アクリル系、シリコン系など傘地としての撥水、耐水性能を付与するものであれば、何ら限定するものではない。なお、この間撥水加工などの樹脂加工を行ってもよい。
【0024】
【実施例】
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。
【0025】
実施例1
紡速2970m/分で紡糸したポリエステルフィラメント未延伸糸(85デニール/36フィラメント)を130度で乾熱処理をしながら、延伸倍率1.64倍で延伸し、その後3500T/mの仮ヨリ数で加工して50デニール/36フィラメントの加工糸を得た。この加工糸をタテ糸およびヨコ糸に使用し、タテ密度:123本/インチ、ヨコ密度:95本/インチの平織物を製織した。
【0026】
次いで、この平織物に通常のリラックス・精練加工、ヒートセット加工、染色加工をした後、アクリル樹脂コーティングを施し、さらに撥水剤を塗布した後150度×15secの乾熱処理を行い、傘地を得た。
【0027】
得られた傘地は、ふかつきのない平滑なもので、撥水加工後は撥水性能に優れ、高級感のある光沢を有していた。また、この傘地を用いて折り畳み傘を作り、半年間使用したが折れ目透けの発生がなかった。
【0028】
比較例1
紡速2700m/分で紡糸したポリエステルフィラメント未延伸糸(85デニール/36フィラメント)を210℃で乾熱処理を行いながら、延伸倍率1.8倍で延伸した後、3900T/mの仮ヨリ数で加工して50デニール/36フィラメントの加工糸を得た。このポリエステルフィラメント加工糸をタテ糸およびヨコ糸に使用して、タテ密度:124本/インチ、ヨコ密度:96本/インチの平織物を製織した。
【0029】
次いで、この平織物に通常のリラックス・精練加工、ヒートセット加工、染色加工をした後、アクリル樹脂コーティングを施し、さらに撥水剤を塗布した後130度×20secの乾熱処理を行い、傘地を得た。
【0030】
得られた傘地は、地厚でふかつきが強く、織物表面もざらついたものであった。そのため、撥水加工を施しても撥水性能が上がらず、また光沢もなく、高級感に欠けるものであった。なお、この傘地を用いて折り畳み傘を作成し、約半年間使用したが折れ目透けは発生しなかった。
【0031】
比較例2
タテ糸に50デニール/18フィラメントのポリエステルフィラメント延伸糸、ヨコ糸に75デニール/36フィラメントのポリエステルフィラメント延伸糸を用い、タテ密度:105本/インチ、ヨコ密度:79本/インチで平織物を製織した。
【0032】
次いで、この平織物に通常のリラックス・精練加工、ヒートセット加工、染色加工をした後、アクリル樹脂コーティングを施し、さらに撥水剤を塗布した後150度×15secの乾熱処理を行い、傘地を得た。
【0033】
この傘地を用いて折り畳み傘を作成し、約半年間使用したところ間もなく折れ目透けが発生し、使用半年後にはその状態が悪化し、部分的に雨漏りがするまでに至った。また、傘を使用した時には、折れ目透けの部分から光が漏れ、見た目にも不快感を与えるものであった。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、従来のポリエステルマルチフィラメント生糸使い織物傘地の折れ目透け欠点を解消し、なおかつ、傘地の要求特性である、傘地表面の平滑性、防水性、薄地・軽量、柔らかさ、光沢を兼ね備えた傘地および傘を得ることができる。
Claims (4)
- 仮撚数が17700〜28300/D 1/2 (T/m)であるポリエステルマルチフィラメント捲縮加工糸からなる織物の少なくとも片面に樹脂層を有する基布からなり、該織物のタテ糸およびヨコ糸のクリンプ率の和が2.2〜3.1%であることを特徴とする傘地。
- 前記織物の嵩高度が1.7〜3.2cm3/gであることを特徴とする請求項1に記載の傘地。
- 前記織物のタテ方向とヨコ方向の滑り摩擦係数の和が1.4以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の傘地。
- 請求項1〜3いずれかに記載の傘地を用いてなる傘。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP06090098A JP3968856B2 (ja) | 1998-03-12 | 1998-03-12 | 傘地 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP06090098A JP3968856B2 (ja) | 1998-03-12 | 1998-03-12 | 傘地 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH11253217A JPH11253217A (ja) | 1999-09-21 |
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Family
ID=13155703
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP06090098A Expired - Lifetime JP3968856B2 (ja) | 1998-03-12 | 1998-03-12 | 傘地 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3968856B2 (ja) |
-
1998
- 1998-03-12 JP JP06090098A patent/JP3968856B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH11253217A (ja) | 1999-09-21 |
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