JP3968018B2 - 編地編成方法 - Google Patents
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Description
本発明は横編機で編地を編成する方法に関し、特に編幅の途中で給糸方向を反転させて編成する引き返し編領域の一部または全部のループを前後針ベッド間でループの掛け替えを行って寄せを行う編地編成方法に関する。
背景技術
横編機でベストやセーターの前身頃を編成する際に、編機上で衿首用開口を形成し、編成完了後の縫製作業を軽減可能なインテグラルガーメントと呼ばれる編地を編成する方法が種々考案されている。インテグラルガーメントを編成する方法の一つとして、ベストやセーターの衿首用開口の周縁のウエール数を増加させ、衿首用開口の周長を増す編成方法を本願出願人は日本特許登録第2538421号公報で開示した。日本特許登録第2538421号公報に開示される方法によりベスト101の衿首用開口の周長を増やす方法を第7図および第8図で説明する。日本特許登録第2538421号公報ではベストの前身頃101を裾ゴム102から衿首用開口103に向かって編成し、衿首用開口103の形成開始後、前身頃101を左右の前身頃101a,101bに分岐させ、前身頃101a,101bをそれぞれ引き返し編により編成する。そしてラインV以降では、左右の前身頃101a,101bをそれぞれ外側に移動させて衿首用開口103と左右の前身頃101a,101bの間に空針を形成し、空針となった針に新たにループを形成して衿首用開口103の周縁104のウエール数を増加させて周長を広げる。そしてウエール数が増やされた衿首用開口103の周縁104に続けて衿105を形成することで口径の大きな衿105を形成できる。上記編成を行うことで着用時に衿首用開口内への頭の挿通が容易な商品価値の高いベストを製造できる。
上記ベストの前身頃101の衿首用開口の周縁を広げる編成開始後の編成を第8図の編成コース図を使用して説明する。左右の前身頃部101a,101bで同じ編成が左右対称に行われるため、以下左前身頃101bにおける編成のみ説明する。第8図のコース1は第7図のラインVまでの編成が完了した時点のベスト101の右側部分を示す。前ベッドの針A〜Dが衿首用開口103で、前ベッドの針E〜Kが左前身頃101bである。コース2では前ベッドの針E〜Kに係止される左前身頃101bのループを後ベッドに移し、コース3で後ベッドを右に1ピッチラッキングして左前身頃101bのループを前ベッドに移し、前ベッドの針Eを空針とする。続いてコース4では前ベッドの針Eに給糸して新たにループを形成するとともに、前ベッドの針F〜Lに給糸する。コース5では前ベッドの針L〜Fに給糸して左前身頃101bを編成する。コース6では前ベッドの針F〜Lのループを後ベッドに移し、コース7では後ベッドを更に1ピッチ右にラッキングした後、左前身頃101bを前ベッドに移し戻す。そしてコース8では前ベッドの針Fに新たにループを形成するとともに前ベッドの針G〜Mに給糸し、コース9では前ベッドの針M〜Gに給糸して左前身頃101bを編成する。以降コース6〜9と同様の編成を繰り返し衿首用開口103の周縁104で前ベッドの針E〜Gに新たにウエールを追加してコース10の状態とした後、コース11で前ベッドの針N〜Aに給糸することで左前身頃101bにおいて衿首用開口の周縁104のウエール数を増やす編成が完了する。以降、右前身頃101aでも同様の編成を行った後、衿105を形成することで前身頃101が完成する。
上記編成に加えて左右の前身頃で編幅を狭めてゆく引き返し編を行うことで第1図のベストに形成されるような肩下がり9a,9bを形成できる。しかしながら、特許登録第2538421号公報に開示される方法では、第8図のコース3,7に示されるように左右の前身頃101a,101bを外側に移動させる毎に、左右前身頃101a,101bのループを全て前ベッドに移し戻してループを形成するため、衿首用開口103の周縁104において増やす毎に左右前身頃101a,101bを前後ベッド間で繰り返し目移ししなければならない。肩下がり9a,9bを形成するため、左右前身頃101a,101bを引き返し編すると、休止状態とされたループを前後ベッド間で繰り返し目移ししなければならず、衿首用開口103の周縁104のウエール数を大きく広げると糸切れが発生したり、ループが伸ばされる等の問題が発生する。このように、特許登録第2538421号公報に開示される方法では、肩下がりを形成する場合は目移しによる糸切れ等の問題が発生するため、十分に衿首用開口のウエール数を増やすことができなかった。
発明の開示
上記した課題を解決するため、本発明の編地編成方法は、少なくとも前後一対の針ベッドを備え、その何れか一方又は双方の針ベッドが左右摺動可能な横編機を使用し、給糸口を編幅方向の途中で反転させ、編幅の端に位置する針から順次休止状態とする編成を繰り返す引き返し編領域を形成するとともに、該引き返し編領域の一部又は全部のループを前後針ベッド間で掛け替えて側方に移動させる寄せを行う編地編成方法であって、引き返し編領域を適宜コース編成する毎に寄せを行う領域のループを対向する針ベッド上に目移しし、前後針ベッドを相対移動させた後、引き返し編の過程で休止状態としたウエールのループを寄せが完了するまでの間、引き返し編で続く編成において次コースのループ形成を行う針ベッドと反対側の針ベッド上に保持し、続く編成において次コースのループ形成を行うウエールのループのみをループ形成に先だって元の針ベッド上に移し戻す編成を繰り返すことを特徴とする。上記した発明の構成によれば、編幅の端に位置する針から順次休止状態とする編成を繰り返す引き返し編領域を形成するとともに、該引き返し編領域の一部又は全部のループを前後針ベッド間で掛け替えて側方に移動させる寄せを行って編地を編成する際に、寄せを行う領域のループを引き返し編を行う針ベッドと反対側の針ベッド上に目移しする。そして、続く引き返し編を行うため、反対側の針ベッド上から元の針ベッド上に寄せを行う領域のループを移し戻す際に、引き返し編の過程で休止状態とされたループを反対側の針ベッドに係止させたまま、次コースのループ形成を行うウエールのループのみを前ベッドに移し戻してループ形成を行う編成を全ての寄せが完了するまで繰り返す。このようにすることで、寄せを行なうために、引き返し編の過程で休止状態とされたループを前後針ベッド間で何度も目移しする必要がなくなり、糸切れが発生したりループが伸ばされる虞がなくなる。
また、本発明の編地編成方法は、少なくとも前後一対の針ベッドを備え、その何れか一方又は双方の針ベッドが左右摺動可能な横編機を使用し、身頃を裾から衿首に向かって編成する過程で、衿首用開口の形成開始後、衿首用開口を挟んで左右身頃を異なる給糸口により引き返し編により編成するとともに、左右身頃において肩先側のウエールから順次休止状態としつつ左右身頃を前後針ベッド間で掛け替えを行ってそれぞれ外側に移動させて衿首用開口と左右前身頃との間に空針を形成し、該空針に新たにループを形成して衿首用開口の周縁のウエール数を増やした後に衿を形成する編成方法であって、左右身頃を引き返し編しつつ寄せを行う編成が以下の工程を含むことを特徴とする:
(1) 左右身頃の内のいずれか一方の身頃を適宜コース引き返し編する工程
(2) 工程1で引き返しした前記一方の身頃を反対の針ベッドに係止させるとともに、衿首用開口が広がる方向に前後ベッドを相対移動させる工程
(3) 工程2で対向する針ベッドに係止させた前記一方の身頃の内、続く編成において引き返し編により引き続き編成を行うウエールのループのみを元の針ベッド上に移し戻す工程
(4) 工程1から工程3を前記一方の身頃の編成が完了するまで繰り返す工程。
上記した発明の構成によれば、身頃を裾から衿首に向かって編成する過程で、衿首用開口の形成開始後、衿首用開口を挟んで左右身頃を異なる給糸口により引き返し編により編成する。そして引き返し編の過程で左右身頃において肩先側のウエールから順次休止状態としつつ左右身頃を前後針ベッド間で掛け替え、左右身頃をそれぞれ外側に移動させて衿首用開口と左右前身頃との間に空針を形成する。この衿首用開口の周縁のウエール数を増やす編成と並行して左右身頃で引き返し編を行って肩下がりを形成する。左右身頃を外側に移動させる編成と肩下がりの形成を並行して行う過程で、左右前身頃を外側に移動させる際にループ形成を行う針ベッドと反対側の針ベッドに目移しし、身頃が衿首用開口から離れる方向に前後ベッドを相対移動させる。そして左右身頃を続くループ編成を行うために元の針ベッドに目移しする際に、引き返し編の過程で休止状態とされたループを反対側の針ベッドに残したまま、次コースのループ形成を行うウエールのループのみをも毎針ベッドに移し戻す編成を繰り返す。このようにすることで、肩下がりを形成するための引き返し編により休止状態とされたループを何度も前後ベッド間で目移しする必要がなくなり、糸切れが発生したりループが伸ばされる虞がなくなる。したがって、左右身頃を外側にどれだけでも移動させることができるので、肩下がりを形成しても自由に衿首用開口のウエール数を増加させることができる。
また、本発明の編地編成方法は、少なくとも前後一対の針ベッドを備え、その何れか一方又は双方の針ベッドが左右摺動可能な横編機を使用し、身頃を挟んでその両側で左右の袖を編成し、脇から肩にかけ左右の袖を身頃側に移動させ、袖の側端ループと身頃の側端ループを重ね、重ね目に次コースのループを形成する編成を繰り返して袖と身頃が接合されたニットウエアを編成する過程で、袖と身頃の境界部に位置する適宜数のウエールで引き返し編を行いつつ袖と身頃を接合する引き返し編領域を身頃と左右それぞれの袖の接合部に形成した後、袖と身頃に対し給糸しつつ袖および身頃のそれぞれで減らしを行ってパラシュート柄を形成する編成方法であって、引き返し編領域を形成する編成が以下の工程を含むことを特徴とする:
(1) 左右何れか一方の引き返し編領域において、身頃と一方の袖の境界部で身頃及び袖の双方を含む適宜数のウエールで引き返し編する工程
(2) 工程1で引き返し編した袖を身頃と反対の針ベッドに係止させるとともに、袖が身頃に近づく方向に前後ベッドを相対移動させる工程
(3) 工程2で対向する針ベッドに係止させた袖の内、続く編成において引き返し編により引き続き次コースのループ形成を行うウエールのループのみ身頃と同じ針ベッド上に移し戻して袖と身頃の側端ループ同士を重ね袖と身頃を接合する工程
(4) 工程1から工程3を前記一方の袖と身頃の境界部に形成される引き返し編領域の形成が完了するまで繰り返す工程。
上記した発明の構成によれば、身頃を挟んでその両側で左右の袖を編成し、脇から肩にかけ左右の袖を身頃側に移動させ、袖の側端ループと身頃の側端ループを重ね、重ね目に次コースのループを形成する編成を繰り返して袖と身頃が接合されたニットウエアを編成する。その過程で、袖と身頃の境界部に位置する適宜数のウエールで引き返し編を行いつつ袖と身頃を接合する引き返し編領域を身頃と左右それぞれの袖の接合部に形成する。引き返し編領域を編成しつつ袖を身頃側に移動させて袖と身頃を接合する際に、引き返し編領域内の袖のループを反対側の針ベッドに目移しし、袖が身頃に近づく方向に前後ベッドを相対移動させる。そして袖を身頃と同じ元の針ベッドに移し戻す際に、引き返し編の過程で休止状態とされたウエールのループを身頃と反対側の針ベッド上に残したまま、続く引き返し編で引き続きループ形成を行うウエールのループのみを身頃と同じ針ベッド上に移し戻し袖と身頃を接合する。このように引き返し編領域を編成する過程で休止状態とされたループを前後ベッド間で何度も目移しすることなく袖を身頃側に寄せて接合することができる。そして引き返し編領域に続いてパラシュート柄を形成することで、径が均一に揃ったパラシュート柄を形成でき、パラシュート柄部で編地が突っ張ったり、弛みが発生する虞がなくなる。またパラシュート柄部に色柄模様を形成した場合には変形が防ぐことができる。
発明を実施するための最良の形態
本発明の編地編成方法を図面と共に説明する。以下の説明では前後一対の針ベッドを備え、その前後何れか一方又は双方の針ベッドが左右摺動可能で、前後それぞれの針ベッドの針溝内に装着した編針間で目移し可能な二枚ベッド横編機を編成に使用する場合を説明する。
<第一実施例>
本発明の第一実施例を第1図および第2図で衿首用開口1の周縁のウエール数が増やされるとともに肩下がりが形成された第1図のベストの前身頃2を編成する場合を例に説明する。第1図はベストの前身頃2を示し、第2図は肩下がり9a,9bの形成開始後の編成を示す編成コース図である。
ベストの前身頃2は裾ゴム3から衿首用開口1に向かって矢印Z方向に編成され、衿首用開口1の形成を開始するラインL以降においては、衿首用開口1の右側の右前身頃2aと左側の左前身頃2bに分岐して編成する。右前身頃2aと左前身頃2bは衿首用開口1の周縁4と身頃2の側端をそれぞれ給糸口の進行方向反転箇所として引き返し編する。衿首用開口上部のラインMとラインNの間では、肩先側のウエールから順に編成から外して休止状態とする引き返し編を行なって編幅を徐々に狭めるとともに、右前身頃2aおよび左前身頃2bを外側に移動させる寄せを行って衿首用開口1と左右の前身頃2a,2b間に位置する針を空針とし、この空針に新たにループを形成して衿首用開口1の周縁4のウエール数を増やす編成と、引き返し編により右前身頃2aと左前身頃2bを編成する。上記した編成を繰り返し衿首用開口の周縁4のウエール数を増やした後、衿首用開口1の周縁4に続いて衿5を形成することで、衿首用開口1の周縁4のウエール数が増やされるとともに肩下がり9a,9bが形成された前身頃2を編成する。
以下、編成コース第2図を使用して説明する。なお、本実施例では説明を容易にするため実際の編成で使用するより少数の針を使用する。また、引き返し編により衿首用開口1を形成する方法は既に公知であるため、衿首用開口1の周縁4のウエール数を増やす編成を開始する箇所から説明する。
右前身頃2aと左前身頃2bでは同じ編成を左右対称に行い、一方の前身頃部(例えば右前身頃2a)を最後まで編成した後に他方の前身頃(例えば左前身頃2b)を編成する。第2図のコース1では前ベッドの針A〜Dに衿首用開口1の周縁4となるループが係止され、前ベッドの針E〜Kに左前身頃2bが係止される。衿首用開口1の周縁4のループは、左右前身頃部2a,2bを引き返し編する間、休止状態とされる。コース2では左前身頃2bを対向する後ベッドに目移し、コース3では後ベッドを右に1ピッチラッキングした後、続く引き返し編成において次コースのループ形成を行わない左前身頃2bの側端ウエールのループ11を除いたループを前ベッドに移し戻して前ベッドの針Eを空針とする。コース4では給糸口12により前ベッドの針Eに給糸して衿首用開口1の周縁4に新たなループ13を形成するとともに前ベッドの針F〜Jに給糸して左前身頃2bをを編成する。そしてコース5では給糸口12を反転させた後、反転箇所で孔が開くのを防止するため針Kでタック14を行うとともに、前ベッドの針J〜Fに給糸する。コース6では前ベッドに係止される左前身頃2bの全てのループを後ベッドに目移しし、コース7では後ベッドを更に右に1ピッチラッキングした後、続く引き返し編成で次コースのループ形成を行わない針Mおよび針Jのウエールのループ11,14を除く左前身頃2bのループを前ベッドに移し、前ベッドの針Fを空針とする。コース8では前ベッドの針Fに新たにループ15を形成した後、前ベッドの針G〜Jに給糸する。コース9では給糸口12を反転させた後、前ベッドの針Kでタック16を行うとともに前ベッドの針J〜Gに給糸する。以降コース6〜コース9に示される編成と同様の編成を、対象となる針を変えながら繰り返し行った後、コース10の編成により後ベッドに預けた状態のループ11,14,18を前ベッドへ移し戻す。そしてコース11で前ベッドの針N〜Aに給糸し、以上の編成により左前身頃2bにおける編成が完了する。
上記編成を行うことで左前身頃2bに肩下がり9bが形成されるとともに、衿首用開口1の周縁4のウエール数がコース1の状態から3ウエール増やされる。この後、右前身頃2aで同様の編成を行い、衿首用開口1の周縁4に続けて衿5を形成することで前身頃2が完成する。
上記したように本実施例では、左前身頃2bの引き返し編と並行して左前身頃2bを外側に移動させる寄せを行い、衿首用開口1の周縁4と左前身頃2bの間の位置する針を空針とし、この空針に新たにループ13,15,17を形成することで衿首用開口1の周縁4のウエール数を増やす。そして、左前身頃2bを外側に移動させた後、次の左前身頃2bで続く引き返し編を行うため前ベッドに移し戻す際に、引き返し編の過程で休止状態とされた左前身頃2bのループ11,14,18を後ベッド上に残し、引き続く編成において次コースのループ形成を行うウエールのループのみ前ベッド上に移し戻すので、休止状態とされたループ11,14,18を前後針ベッド間で何度も目移しする必要がない。なお上記実施例では説明の便宜上3ウエールのみ増やす場合を説明したが、実際には糸切れ等の問題の発生を憂慮することなく衿首用開口1の周縁4のウエール数を自由に増やすことができる。
<第二実施例>
次に本発明の第二実施例を第3図〜第5図を使用して説明する。第二実施例は第3図のセーターの前部分となるセーター用編地21の脇より上方の肩周りに、隣接するループ同士を重ね合わせた接合ラインが衿首用開口を中心として放射状に広がる通称パラシュート柄と呼ばれる柄が形成されたセーターを編成する実施例である。第二実施例では異なる領域で編成したセーター21の身頃と左右の袖の接合を脇から開始する。パラシュート柄の形成に先立って袖22,23と身頃24の接合箇所で引き返し編により袖と身頃にまたがる引き返し編領域O,P,Q,Rを形成し、続いてパラシュート柄を形成することで均一な径で放射状に広がるパラシュート柄を形成する。
第4図はセーター用編地21を横編機上で編成する状態で示した図である。セーター用編地21は前身頃24と右袖22,左袖23が脇25a,25bから肩かけて接合ライン29a,29bに沿って接合されてなる。前身頃頃24は裾ゴム28から、右袖22および左袖23は袖口30a,30bから肩に向かい矢印Z方向に編成される。前身頃24と左右の袖22,23の編成が前身頃24と左右の袖22,23の接合を開始するラインSまで完了した後、左右の袖22,23をそれぞれ前身頃24側に移動させ、左右の袖22,23の側端ループと前身頃24の側端ループと重ねて給糸する編成を繰り返して前身頃24と左右の袖22,23を共通の給糸口により全体を一つの編地として編成することで左右の袖22,23を前身頃24に接合するとともに減らしを行う。
続いて、ラインTまで編成完了後、前身頃24と右袖22のA−B−C−Dで囲まれる右引き返し編領域と、前身頃24と左袖23のa−b−c−dで囲まれる左引き返し編領域を順に編成する。各引き返し編領域では、最初の編幅A−B−Cおよびa−b−cから左右の側端側のウエールから順次休止状態として前身頃24と左右の袖22,23の接合ライン29a,29bで最も編成コース数が多くなるように編成する。引き返し編が完了した後のラインU以降では、I−D−C−c−D−iに亘って給糸し前身頃24と左右の袖22,23を共通の給糸口により編成するとともに、接合ライン箇所で左右の袖22,23を前身頃24側に移動させて接合する編成と、前身頃24および左右の袖22,23の減らしライン31〜42の複数箇所で減らし編成を最終的に編幅がH−G−g−hに成るまで繰り返す。
以下、編成コース第5図を使用して説明する。前身頃24および左右の袖22,23の編成開始からラインSに至る編成は公知であるためラインT以降の編成を説明する。また、ラインY−Yの右側と左側で同じ編成を左右対称に行うため以下の説明では前身頃24と左袖23の接合部の編成のみ説明する。
第5図のコース1において前身頃24のループを白丸で、左袖23のループを黒丸で示す。前身頃24および左袖23の引き返し編領域a−b−cのループが枠で囲んで示される。引き返し編領域Rのa−b間のループが前ベッドの針I〜Fに係止され、引き返し編領域Pのb−c間のループが針E〜Bに係止されている。コース2では給糸口50により左前袖23と前身頃24の境界部に位置する前ベッドの針I〜Cに給糸し、前ベッドの針Bを休止状態とする。コース3では左袖23を後ベッドに目移しする。そしてコース4で後ベッドを左に1ピッチラッキングした後、続くコース5〜6で引き続いて次コースのループ形成を行う針F〜Iのループのみを前ベッドに移し、引き返し編領域P・Rを編成する間、新たなループの形成を行わない後ベッドの針J・Kのループ52,53を後ベッド上に保持する。そして前身頃24と左袖23の側端ループ54,55を重ねて左袖23と前身頃24を接合する。コース5では給糸口50により孔空き防止のため前ベッドの針Mでタック56を行うとともに、前ベッドの針C〜Gに給糸し前ベッドの針Hを休止状態とする。続いてコース6では給糸口50を反転させ前ベッドの針Hでタック57を行うとともに前ベッドの針G〜Dに給糸し、前ベッドの針Cを休止状態とする。コース7では前ベッドの針E〜Hの左袖23のループを後ベッドに移しする。そしてコース8で後ベッドを更に左に1ピッチラッキングした後、続く編成コースで次コースのループ形成を行う前身頃のループを前ベッドに目移しし、前身頃24と左袖23の側端ループ58,59を重ねて左袖23と前身頃24を接合する。コース9では休止状態とした前ベッドの針Cで孔空き防止のタック60を行うとともに、前ベッドの針D・Eに給糸し、コース10では前ベッドの針Fで孔空き防止のタック61を行うとともに前ベッドの針D・Eに給糸する。コース11では左引き返し編領域P・Rの編成を完了し、後ベッド上に保持していた左袖23のループを全て前ベッド上に移す。そしてコース12では給糸口50を反転させた後、前ベッドの針Cから前身頃24および右袖22に給糸する。以降、右引き返し編領域O・Qにおいて上記編成と同様の編成を左右対称に行い、左右両方の引き返し編領域の編成完了後、前身頃24および左右の袖22,23を共通の給糸口で給糸し、左右の袖22,23を前身頃24側に移動させて接合する。これと並行して前身頃24および左右の袖22,23の複数箇所でそれぞれ減らしライン31〜42の外側に位置するループをラインY−Y側に移動させ、隣接するループ同士を重ね合わせる減らしを行って肩周りにパラシュート柄を形成する。
上記したように第二実施例では、引き返し編領域を編成する間、新たなループの形成を行わない袖23のループ52,53,57を前後ベッド間で何度も目移しする必要がなく、糸切れが発生したり、ループが伸ばされる等の問題が発生しない。従来の編成方法では引き返し編領域O・P・Q・Rを形成せずにパラシュート部を形成していたため、必要とされる編地長が異なるH−I間とG−B間が同じループ数で形成されていた。したがって、一番長い編地長が必要とされる接合ライン29a,29b箇所が突っ張り着心地を損ねたり、パラシュート柄部分に色柄模様を形成した場合には変形するなどの問題があった。それに対し本実施例では、必要とされる編地長に対しループ数が不足する部分で引き返し編を行って不足分を補った後にパラシュート柄を形成するので、接合ライン箇所が突っ張ったり柄が変形するなどの問題が発生しない。
なお、上記実施例では前身頃24と前袖部22,23を接合する場合を説明したが、前身頃と後身頃が前後に重なりその両端で連続する筒状の編地として編成するとともに、左右の袖を前袖と後袖が両端で連続する筒状の編地として編成してもよい。この場合には、右前袖を前身頃側に移動させる後ベッドのラッキング方向と、左後袖を前身頃側に移動させるラッキング方向が共通するので、右前袖と前身頃、左後袖と後身頃の引き返し編部の編成と接合を並行して行い、同様に左前袖を前身頃側に移動させる後ベッドのラッキング方向と、右後袖を後身頃側に移動させるラッキング方向が共通するので左前袖と前身頃、右後袖と後身頃の引き返し部の接合を並行して行えばよい。また、一方向へのラッキングピッチの上限を越えて袖を身頃側に寄せる場合には、袖のループを全て一旦片側の針ベッド上に係止させた状態で針ベッドを反対側にラッキングする振り戻しを行えばよい。この場合でも目移し回数を著しく減らすことができる。
<第三実施例>
次に本発明の第三実施例を第6図で説明する。第三実施例はパラシュート柄が均一な径で放射状に広がる編地を編成する実施例である。第6−a図は第三実施例により編成される編地61の正面図であり、第6−b図は編地61の平面図であり、第6−c図は編地61を編機上で編成される状態で示した図である。編地61は編出し箇所62から矢印Z方向に向かって筒状に編成され、編地61の横方向が針ベッドの長手方向となる状態で前側編地部61aと後側編地部61bが両端で連続する筒状の編地として編成される。編成がラインJまで達すると、右側引き返し編領域63a,63bと、左側引き返し編領域64a,64bにおいてそれぞれ給糸口を両矢印65,66方向に給糸口を編幅の側端で反転させ、前ベッドと後ベッドに対しU字状に給糸して引き返し編する。左右両方の引き返し編領域63a,63b,64a,64bの編成完了後、ラインKから再度編幅の全域に環状に給糸するとともに、適宜コース編成する毎に接合ライン67箇所で接合ラインの外側に位置するループを編地中心線W−W方向に向けて移動させ、隣接するループ同士を重ね合わせる寄せを並行して行う編成を繰り返してパラシュート柄を形成する。このようにして形成された編地61は、不足する編地長を引き返し編により補った後にパラシュート柄を形成するためにパラシュート部の径が均一なまま保たれる。したがってパラシュート柄部が突っ張ったり弛んだりすることなく、またパラシュート部に色柄模様を形成した場合でも変形することなく商品価値の高い編地を編成できる。なお、上記第三実施例では筒編地を編成する場合を説明したが、筒編地に限らず平面状の編地の編成にも実施可能である。また、上記実施例では左右の引き返し編領域をそれぞれ前後両針ベッド上で分割して形成したが、例えば右側引き返し編領域を前ベッドで、左側引き返し編領域を後ベッドというようにそれぞれの引き返し編領域を前後何れか一方の針ベッド上で編成してもよい。
上記実施例では二枚ベッド横編機を使用したが、前後一対の下部針ベッド上に目移し針やトランスファージャック等の目移し部材が下部針ベッドと同ピッチで配置される上部補助ベッドを備えた四枚ベッド横編機でも実施可能である。さらに本発明は給糸口を編幅方向の途中で反転させ、編幅の外側に位置する針から順次休止状態とする編成を繰り返す引き返し編領域を形成するとともに、該引き返し編領域の一部又は全部のループを前後針ベッド間で掛け替えて側方に移動させる寄せを行う領域を含む編地の編成に利用でき、上記した形状の編地の編成に限られない。
産業上の利用可能性
ベストやセーターの衿首用開口に前下がりを形成したり、隣接するループ同士を重ね合わせた接合ラインが衿首用開口を中心として放射状に広がる通称パラシュート柄等、編幅の途中で給糸方向を反転させて編成する引き返し編領域の一部または全部のループを前後針ベッド間でループの掛け替えを行って寄せを行う編成を糸切れやループが伸ばされる等の問題を発生させることなく編成できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は第一実施例により形成されるベストの前身頃を示す図である。第2図は第一実施例を示す編成コース図である。第3図は第二実施例により形成されるセーター用編地を示す図である。第4図は第二実施例におけるセーター用編地を横編機上で編成する状態で示した図である。第5図は第二実施例を示す編成コース図である。第6−a図は第三実施例により形成される編地の正面図であり、第6−b図は編地の平面図であり、第6−c図は編地が編機上で編成される状態で示した図である。第7図は従来技術により形成されるセーターの前部分を示す図である。第8図は従来技術を示す編成コース図である。
Claims (3)
- 少なくとも前後一対の針ベッドを備え、その何れか一方又は双方の針ベッドが左右摺動可能な横編機を使用し、給糸口を編幅方向の途中で反転させ、編幅の端に位置する針から順次休止状態とする編成を繰り返す引き返し編領域を形成するとともに、該引き返し編領域の一部又は全部のループを前後針ベッド間で掛け替えて側方に移動させる寄せを行う編地編成方法であって、
引き返し編領域を適宜コース編成する毎に寄せを行う領域のループを対向する針ベッド上に目移しし、前後針ベッドを相対移動させた後、引き返し編の過程で休止状態としたウエールのループを寄せが完了するまでの間、引き返し編で続く編成において次コースのループ形成を行う針ベッドと反対側の針ベッド上に保持し、続く編成において次コースのループ形成を行うウエールのループのみをループ形成に先だって元の針ベッド上に移し戻す編成を繰り返すことを特徴とする編地編成方法。 - 少なくとも前後一対の針ベッドを備え、その何れか一方又は双方の針ベッドが左右摺動可能な横編機を使用し、身頃を裾から衿首に向かって編成する過程で、衿首用開口の形成開始後、衿首用開口を挟んで左右身頃を異なる給糸口により引き返し編により編成するとともに、左右身頃において肩先側のウエールから順次休止状態としつつ左右身頃を前後針ベッド間で掛け替えを行ってそれぞれ外側に移動させて衿首用開口と左右前身頃との間に空針を形成し、該空針に新たにループを形成して衿首用開口の周縁のウエール数を増やした後に衿を形成する編成方法であって、左右身頃を引き返し編しつつ寄せを行う編成が以下の工程を含むことを特徴とする編地編成方法:
(1) 左右身頃の内のいずれか一方の身頃を適宜コース引き返し編する工程
(2) 工程1で引き返しした前記一方の身頃を反対の針ベッドに係止させるとともに、衿首用開口が広がる方向に前後ベッドを相対移動させる工程
(3) 工程2で対向する針ベッドに係止させた前記一方の身頃の内、続く編成において引き返し編により引き続き編成を行うウエールのループのみを元の針ベッド上に移し戻す工程
(4) 工程1から工程3を前記一方の身頃の編成が完了するまで繰り返す工程 - 少なくとも前後一対の針ベッドを備え、その何れか一方又は双方の針ベッドが左右摺動可能な横編機を使用し、身頃を挟んでその両側で左右の袖を編成し、脇から肩にかけ左右の袖を身頃側に移動させ、袖の側端ループと身頃の側端ループを重ね、重ね目に次コースのループを形成する編成を繰り返して袖と身頃が接合されたニットウエアを編成する過程で、袖と身頃の境界部に位置する適宜数のウエールで引き返し編を行いつつ袖と身頃を接合する引き返し編領域を身頃と左右それぞれの袖の接合部に形成した後、袖と身頃に対し給糸しつつ袖および身頃のそれぞれで減らしを行ってパラシュート柄を形成する編成方法であって、引き返し編領域を形成する編成が以下の工程を含むことを特徴とする編地編成方法:
(1) 左右何れか一方の引き返し編領域において、身頃と一方の袖の境界部で身頃及び袖の双方を含む適宜数のウエールで引き返し編する工程
(2) 工程1で引き返し編した袖を身頃と反対の針ベッドに係止させるとともに、袖が身頃に近づく方向に前後ベッドを相対移動させる工程
(3) 工程2で対向する針ベッドに係止させた袖の内、続く編成において引き返し編により引き続き次コースのループ形成を行うウエールのループのみ身頃と同じ針ベッド上に移し戻して袖と身頃の側端ループ同士を重ね袖と身頃を接合する工程
(4) 工程1から工程3を前記一方の袖と身頃の境界部に形成される引き返し編領域の形成が完了するまで繰り返す工程
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