JP3966601B2 - シリカ配合ゴム組成物及びその製造方法 - Google Patents

シリカ配合ゴム組成物及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリカとシランカップリング剤を含むゴム組成物に関し、更に詳しくは、シランカップリング剤のカップリング効率を向上せしめ加工工程におけるゴムの安定性を向上し得るシリカを配合したゴム組成物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、タイヤのトレッド部に、低燃費性とウェットグリップの両立が強く求められている。これを解決するため、トレッド用等にシリカを配合したゴム組成物の使用が急増している。
このシリカ配合のタイヤトレッド用等のゴム組成物は、上記メリットを保有しつつも、シリカ配合量の増加と共に、作業性の悪化、コストアップというデメリットが発生してくる。
【0003】
一般に、シリカは、ポリマーと相溶性が悪く、補強性に劣る上、分散が悪くなるため、ムーニー粘度値が大きくなり、押出加工性が悪くなる。この分散性改良、作業性改善のために、シランカップリング剤を用いて解決している(特開平8−259736)。
【0004】
しかしながら、シランカップリング剤のカップリング効率は小さく、それを補うため、増量して配合しているのが現状である。また、カップリング剤は、高価なため、カップリング剤の増量配合の場合は大幅なコストアップにつながるという課題がある。
【0005】
特開平8−259736号公報には、アルコキシル基含有のシランカップリング剤が開示されている。シリカとアルコキシル基含有シランカップリング剤は混練中に反応し、副生成物としてアルコールを発生するが、通常その反応が充分でなく、その後の押出加工中等でも反応が進行してアルコールが発生し、気泡、気泡が大きくなって空洞化したブリスター等が生じ、製品の寸度安定性を損なったり、ブリスターの発生を抑えるべく加工スピードの低下等を余儀なくされる。
もしこの混練時の温度を上げれば、反応はより進行するが、あまり温度を上げると、反応と同時にカップリング剤に由来する硫黄による加硫などでゲル化等の別の不具合が生じ、限界がある。
また、アルコールの発生を減らすため、カップリング剤の配合量を減らすと、シリカの分散不良による粘度アップ、補強性の低下などの不具合が生じる。
【0006】
さらに、特開平9−118784号(USP5616655)公報には、硫黄硬化性エラストマー100重量部と、微粒子状沈降シリカ10〜250重量部と、該シリカの1重量部当たり0.01から1.0重量部の特定構造の有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)と、チオ硫酸ナトリウム・5水和物〔Na223・5H2O〕10〜250重量部とからなるゴム組成物を140℃から190℃の範囲のゴム温度で1〜20分の間熱機械的に混合することを特徴とするゴム組成物の加工方法が開示されている。
【0007】
この公報に開示の技術は、本発明の近接技術を開示するものであるが、その目的がチオ硫酸ナトリウム・5水和物の添加により、シランカップリング剤のカップリング効率を向上せしめ、最終製品の性質を犠牲にすることなしに所謂ノンプロ練り工程の混合/加工時間を短縮するものであるが、この方法では、粘度の増大、スコーチ(ゴムの早期加硫)タイムの減少が著しく、実用に適さない。
【0008】
一方、特開平9−216968号公報には、ゴム成分に無機含水塩を配合した組成物、EP−A065476やEP−A208505にはホウ酸化合物を配合した組成物が開示されているが、いずれも接着性を改善するものであり、シリカ−シランカップリング剤を含まない組成物である。
【0009】
また、脂肪酸スズ等のスズ(Sn)化合物が、シリコンゴムの硬化触媒として知られているが、このようなSn化合物はシリカ−シランカップリング剤の反応を促進すると同時に、好ましくないシランカップリング剤同志の反応も促進し、そのため、ポリマー同志、シリカ同志の結合も生じ、ゴム粘度が上昇し、やはり実用に適さない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、シリカ配合ゴム組成物に用いるシランカップリング剤のカップリング効率を向上せしめ、カップリング反応による気泡、更にはブリスターの発生を防止して、ゴム製品の寸度安定性を向上させるとともに、押出し加工のスピードアップを図ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するため、鋭意検討した結果、シリカとシランカップリング剤を含むゴム組成物において、特定の化合物を特定量配合すると、シリカ−シランカップリング剤の反応効率が上がり、押出し加工中にブリスターの発生が防止できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、下記のシリカ配合ゴム組成物及びその製造方法である。
(1)硫黄加硫可能なゴム100重量部に対し、シリカ10〜100重量部、シリカに対しシランカップリング剤を3〜20重量%、シリカに対しホウ酸ナトリウム1〜20重量%配合してなるシリカ配合ゴム組成物。
(2)ホウ酸ナトリウムが四ホウ酸ナトリウムである上記(1)記載のシリカ配合ゴム組成物。
(3)シランカップリング剤がアルコキシル基を有するシランカップリング剤である上記(1)又は(2)記載のシリカ配合ゴム組成物。
(4)アルコキシル基がエトキシ基である上記(3)記載のシリカ配合ゴム組成物。
(5)シランカップリング剤がビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドである上記(1)〜(4)のシリカ配合ゴム組成物。
(6)▲1▼硫黄加硫可能なゴム、
▲2▼ゴム100重量部に対し、10〜100重量部のシリカ、
▲3▼シリカに対し3〜20重量%のシランカップリング剤
▲4▼シリカに対し1〜20重量%のホウ酸ナトリウム
を混合する工程を有するシリカ配合ゴム組成物の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明のゴム組成物は、シリカとシランカップリング剤を含むゴム組成物において、天然ゴム及び/又は合成ゴムからなるゴム成分100重量部、シリか10〜100重量部、シリカに対してホウ酸ナトリウムを1〜20%、好ましくは2〜10%配合してなることを特徴とするものである。
【0014】
本発明に用いられるゴム成分としては、天然ゴム(NR)又は合成ゴムを単独又はこれらをブレンドして使用することができる。合成ゴムとしては、例えば、合成ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム、ハロゲン化ブチル等が挙げられる。
【0015】
本発明において使用するシリカとしては、例えば、沈降法による合成シリカが用いられる。具体的には、日本シリカ工業(株)製のニップロールAQ、ドイツデグサ社製のULTRASIL VN3、BV3370GR、ローヌ・プーラン社製のRP1165NP、Zeosil 165GR、Zeosil 175NP、PPG社製のHisil 233、Hisil 200、Hisil 255等(いずれも商品名)が挙げられるが、特に限定されるものではない。
シリカの配合量は、ゴム成分100重量部に対して、10〜100重量部である。シリカの配合量が10重量部未満では、低燃費性とウェットグリップの両立が十分にできず、100重量部を超えると粘度が上昇しすぎて好ましくない。
【0016】
本発明において使用するアルコキシル基を含有するシランカップリング剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等が挙げられる。
特に、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドが分散性と補強性のバランスがよく好ましい。
【0017】
シランカップリング剤の配合量は、シリカ重量に対し3〜20重量%、好ましくは、7〜15重量%である。シランカップリング剤の配合量が3重量%未満では、カップリング効果が小さく、シリカの分散不良、補強性の低下が生じ、20重量%を超えると、ポリマーのゲル化が増大して好ましくない。
【0018】
本発明においては、シリカとアルコキシル基含有のシランカップリング剤の反応を促進せしめるため、ホウ酸ナトリウムを配合するが、ホウ酸ナトリウムとしては、例えば、オルトホウ酸ナトリウム(Na3BO3)、二ホウ酸ナトリウム(Na425)、メタホウ酸ナトリウム(NaBO2)、四ホウ酸ナトリウム(Na247)、五ホウ酸ナトリウム(Na41017)、八ホウ酸ナトリウム(Na2813)がある。
特に四ホウ酸ナトリウムが好ましい。四ホウ酸ナトリウムは別名ホウ砂、ボラックスとも呼ばれているものであるが、10水和物、5水和物、無水物があり、いずれを使用しても効果がある。
四ホウ酸ナトリウムは、シリカ−カップリング剤の反応効率を上げるが、その他の未加硫物性(粘度、スコーチタイム)、加硫物性にはほとんど影響しない。
【0019】
ホウ酸ナトリウムの配合量は、シリカに対し、1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%である。ホウ酸ナトリウムが1重量%未満では十分な効果が発揮されず、20重量%を超えて配合しても、それにみあう効果は望めない。
【0020】
ゴムの混練りは、通常用いられるインターナルミキサーやロールを用いて実施される。インターナルミキサーを用いる場合、通常、充填剤を混合するステージ(ノンプロ練り)と加硫剤を混合するステージ(プロ練り)の2ステージ以上に分けて混練りされる。ホウ酸ナトリウムは、シリカと同一ステージで混合されることが望ましいが、限定されるものではない。
混練り温度は特に規定されないが、本発明の目的であるシリカ−シランカップリング剤の反応促進のためには、140℃以上が好ましく、180℃以下がよい。
【0021】
なお、本発明のゴム組成物においては、上記のゴム成分、シリカ、シランカップリング剤、ホウ酸ナトリウム以外に、必要に応じて、補強充填材(カーボンブラック)、軟化剤、老化防止剤、樹脂、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等の通常ゴム工業で使用される薬品類等を適宜配合することができる。
【0022】
本発明のゴム組成物は、特にタイヤのトレッド部等の用途に好適なものとなるが、その他、通常のゴム組成物の全ての用途、例えば、コンベアベルト、ホース等に適用できるものである。
【0023】
【実施例】
以下に、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
各実施例、比較例で調製したゴム組成物につき、下記測定方法により各種物性を評価した。
【0024】
(1)ブリスターの発生
約10mmの厚さの練り生地を120℃のオーブン中に15分間静置し、ブリスターの発生を目視により評価した。ブリスターの発生が無い場合が良い。
【0025】
(2)加熱減量
ゴムのオーブン投入前後の減量(重量)を測定した。この値が小さいほど、混練中に、シリカとシランカップリング剤の反応が進行し、混練り後の加工工程でアルコールの発生が少なく、好ましい。
【0026】
(3)ムーニー粘度、スコーチタイム
ムーニー粘度、スコーチタイムをJIS−K6301に準拠し、130℃で測定した。ムーニー粘度は値が小さいほど押出し加工性に優れ、押出しスピードが上がる。
スコーチタイムは値が大きいほどスコーチ現象を防止し、スコーチ安定性に優れる。
【0027】
(4) 引張り強力、300%弾性率
160℃、15分間加硫した厚さ2mmのゴムシートを作製し、JIS−K6301に準拠し、測定した。
引張り強力は、値が大きいほど補強性に優れる。
300%弾性率は、値が大きいほど補強性に優れる。
【0028】
〔実施例1〜4、比較例1〕
表1に示す配合割合にてゴム組成物を調製し、各種物性を評価した。結果を表1に示す。
なお、ゴム練りは、2.7リットルバンバリーミキサーを用い、第1ステージで、ポリマー、オイルフィラー、シランカップリング剤、老化防止剤、ステアリン酸、ホウ酸ナトリウムを混練りし、第2ステージで、亜鉛華、加硫促進剤、硫黄を混練りした。混練り条件は、
第1ステージは練り時間1分、150℃に達した時点で落下する、
第2ステージは練り時間3分以内、110℃に達した時点で落下する。
【0029】
【表1】
Figure 0003966601
【0030】
表1からわかるように、四ホウ酸ナトリウム10水和物を配合したゴム組成物は、ブリスターの発生が抑制される。またその時、加熱減量も小さく、ガス(主にエタノールと推定)の発生が減っていることもわかる。ムーニー粘度は、比較例に対し、若干上昇、スコーチタイムは若干小さくなるが、実際の加工上問題となるレベルではない。
引張り強力、300%弾性率は、ほぼ比較例と同一であり、ホウ酸ナトリウムは、ゴム補強性になんら悪影響を与えないことがわかる。
また、四ホウ酸ナトリウム5水和物も、四ホウ酸ナトリウム10水和物と同じ傾向を示し、いずれも、ゴム物性に悪影響を与えず、シリカ−シランカップリング剤の反応を促進していることがわかる。
【0031】
〔実施例5〜7、比較例2〜4〕
表2に示す配合割合にて、ゴム組成物を調製し、各種物性を評価した。結果を表2に示すが、従来技術として、チオ硫酸ナトリウム5水和物(比較例3)、ジラウリン酸スズ(比較例4)との比較も行った。
なお、混練り方法は、表1に示す例と同一の方法を用いた。
【0032】
【表2】
Figure 0003966601
【0033】
表2に示したように、ホウ酸ナトリウムを配合したゴム組成物は、ゴム物性に大きな影響を与えることなく、ブリスターの発生を抑制し、加熱減量を小さくし、シリカ−シランカップリング剤の反応を促進していることがわかる。
これに対し、チオ硫酸ナトリウム5水和物を配合した比較例3では、スコーチタイムの著しい減少が起り、ジラウリン酸スズを配合した比較例4では、ムーニー粘度の上昇が起り、いずれも、押出し加工性が悪化し、ゴム組成物として不適であることがわかる。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、シリカ、シランカップリング剤、ホウ酸ナトリウムを配合したゴム組成物は、混練中のシリカ−シランカップリング剤の反応が促進され、その後の加工工程中でのガスの発生が少なく、押出工程のブリスターの発生を抑制する。このため、押出し製品の寸度安定性が向上し、押出し加工スピードを向上させることができる。また、ホウ酸ナトリウムは、ムーニー粘度、スコーチタイム等の加工性、引張り強力、弾性率等の補強性にも悪影響を与えず、工業的にも非常に有用な方法である。

Claims (6)

  1. 硫黄加硫可能なゴム100重量部に対しシリカ10〜100重量部、シリカに対しシランカップリング剤を3〜20重量%、シリカに対しホウ酸ナトリウム1〜20重量%配合してなるシリカ配合ゴム組成物。
  2. ホウ酸ナトリウムが四ホウ酸ナトリウムである請求項1記載のシリカ配合ゴム組成物。
  3. シランカップリング剤がアルコキシル基を有するシランカップリング剤である請求項1又は2記載のシリカ配合ゴム組成物。
  4. アルコキシル基がエトキシ基である請求項3記載のシリカ配合ゴム組成物。
  5. シランカップリング剤がビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドである請求項1〜4のいずれかに記載のシリカ配合ゴム組成物。
  6. (1)硫黄加硫可能なゴム、
    (2)ゴム100重量部に対し、10〜100重量部のシリカ、
    (3)シリカに対し3〜20重量%のシランカップリング剤
    (4)シリカに対し1〜20重量%のホウ酸ナトリウム
    を混合する工程を有するシリカ配合ゴム組成物の製造方法。
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