JP5063922B2 - トレッド用ゴム組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、トレッド用ゴム組成物に関する。
近年、タイヤの低燃費化が強く求められており、その要求を満たすために、転がり抵抗を低減させることができるトレッドにシリカを配合することが行われている。しかし、シリカだけでは充分な補強性が得られないので、シリカと同時にシランカップリング剤の併用が行われている。また、タイヤ用には一般にアルコキシル基を含んだシランカップリング剤が使用されている。しかし、シランカップリング剤の反応は、ゴムの混練り工程では充分に完了させることができず、充分な補強性を得るために、必要以上にシランカップリング剤を配合せざるを得なかった。また、混練り中に反応しきれなかったシランカップリング剤(以後、未反応カップリング剤という)が、押出し工程において反応を起こしてアルコール(エタノールなど)を発生させ、押出した未加硫トレッド内に気泡を発生させるという工程上の問題があった。
特許文献1には、所定のゴム成分、シリカ、シランカップリング剤および所定の塩基性水溶液を所定量含有することにより、耐摩耗性、低燃費性、ウェット性能および加工性・作業性に優れたゴム組成物が開示されている。しかし、該ゴム組成物は、シランカップリング剤の反応効率を向上させることはできるが、その改善効果は充分なものではなく、気泡の発生を完全に抑制できるものではないため、いまだ改善の余地がある。
特開2000−219779号公報
本発明は、混練り時のシランカップリング剤の反応効率を高め、エタノールの発生量を抑制することで気泡の発生を抑制し、さらに、転がり抵抗特性および耐摩耗性をともに向上させることができるトレッド用ゴム組成物を提供することを目的とする。
本発明は、ゴム成分およびシリカを含有するトレッド用ゴム組成物であって、該シリカ100重量部に対して、シランカップリング剤を3〜15重量部および酸化ホウ素を含有するトレッド用ゴム組成物に関する。
酸化ホウ素の含有量が、ゴム成分100重量部に対して0.2〜5重量部であることが好ましい。
本発明は、ゴム成分および酸化ホウ素を含有し、さらに、シリカおよびシランカップリング剤を所定比率で含有することにより、混練り時のシランカップリング剤の反応効率を高め、エタノールの発生量を抑制し、転がり抵抗特性および耐摩耗性をともに向上させることができるトレッド用ゴム組成物を提供することができる。
本発明のトレッド用ゴム組成物は、ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤および酸化ホウ素を含有する。
ゴム成分としては、たとえば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などがあげられ、これらのゴム成分は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、ウェットグリップ性能および耐摩耗性を向上させられるという理由から、ジエン系ゴムが好ましく、SBRがより好ましい。
シリカとしては、湿式法または乾式法により製造されたシリカがあげられるが、とくに制限はない。
シリカのBET比表面積(BET)は45m2/g以上が好ましく、70m2/g以上がより好ましい。シリカのBETが45m2/g未満では、補強性が向上しない傾向がある。また、シリカのBETは500m2/g以下が好ましく、450m2/g以下がより好ましい。シリカのBETが500m2/gをこえると、ゴム中に分散させることが困難になる傾向がある。
シリカの含有量は、ゴム成分100重量部に対して10重量部以上が好ましく、20重量部以上がより好ましい。シリカの含有量が10重量部未満では、シリカを含有することによる転がり抵抗特性やウェットグリップ性能などの改善効果がほとんどみられない傾向がある。また、シリカの含有量は120重量部以下が好ましく、100重量部以下がより好ましい。シリカの含有量が120重量部をこえると、硬度が過度に増大し、充分なウェットグリップ性能が得られない傾向がある。
シランカップリング剤としては、従来からシリカとともに併用されるシランカップリング剤を使用することができ、具体的には、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100重量部に対して3重量部以上、好ましくは4重量部以上である。シランカップリング剤の含有量が3重量部未満では、シランカップリング剤を含有することによる補強性向上の改善効果が見られない。また、シランカップリング剤の含有量は15重量部以下、好ましくは12重量部以下である。シランカップリング剤の含有量が15重量部をこえると、硬度が増大し、ウェットグリップ性能が低下する。
酸化ホウ素としては、たとえば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素などがあげられるが、シランカップリング剤の反応効率の改善効果に優れているという理由から、三酸化二ホウ素が好ましい。
酸化ホウ素の含有量は、ゴム成分100重量部に対して0.2重量部以上が好ましく、0.5重量部以上がより好ましい。酸化ホウ素の含有量が0.2重量部未満では、シランカップリング剤の反応効率の改善効果がほとんど見られない傾向がある。また、酸化ホウ素の含有量は5重量部以下が好ましく、2.5重量部以下がより好ましい。酸化ホウ素の含有量が5重量部をこえると、シランカップリング剤の反応を促進しすぎて、シランカップリング剤同士の凝集反応が多くなってしまう傾向がある。
本発明のトレッド用ゴム組成物は、前記ゴム成分および酸化ホウ素を含有し、さらに、シリカおよびシランカップリング剤を所定比率で含有することにより、混練り中のシランカップリング剤の反応効率を高め、エタノールの発生量を抑制することで気泡の発生を抑制し、さらに、転がり抵抗特性および耐摩耗性をともに向上させることができる。
本発明のトレッド用ゴム組成物は、他に、カーボンブラックを含んでもよい。
カーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100重量部に対して5重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましい。カーボンブラックの含有量が5重量部未満では、ドライグリップ性能の改善効果が小さい傾向がある。また、カーボンブラックの含有量は100重量部以下が好ましく、80重量部以下がより好ましい。カーボンブラックの含有量が100重量部をこえると、硬くなりすぎて、かえってグリップ性能が低下する傾向がある。
本発明のトレッド用ゴム組成物には、前記ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤および三酸化ホウ素以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、たとえば、アロマオイルなどの軟化剤、各種老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄などの加硫剤、各種加硫促進剤などを必要に応じて適宜配合することができる。
本発明のトレッド用ゴム組成物を用いたタイヤは、通常の方法により製造される。すなわち、必要に応じて、前記配合剤を配合した本発明のトレッド用ゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのトレッドの形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
実施例にもとづいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
つぎに、実施例および比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
スチレンブタジエンゴム(SBR):日本ゼオン(株)製のSBR NS210
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラックI(N220)
シリカ:デグッサ社製のウルトラジルVN3(BET:175m2/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
三酸化二ホウ素:試薬
四ホウ酸カリウム4水和物:和光純薬工業(株)製
アロマオイル:(株)ジャパンエナジー製のX140
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日本油脂(株)製
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製
硫黄:鶴見化学工業(株)製
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3−ジフェニルグアニジン)
実施例1〜5および比較例1〜3
表1の配合処方にしたがい、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で3分間混練りし、混練り物1を得た(工程1)。続いて、一旦排出した後、バンバリーミキサーを用いて、工程1で得られた混練り物1に老化防止剤、ステアリン酸および酸化亜鉛を添加し、130℃の条件下で2分間混練りし、混練り物2を得た(工程2)。次に、オープンロールを用いて、工程2で得られた混練り物2に硫黄および加硫促進剤を添加し、60℃の条件下で4分間混練りして未加硫ゴムシートを得た(工程3)。さらに、工程3で得られた未加硫ゴムシートを170℃の条件下で20分間プレス加硫して実施例1〜5および比較例1〜3の加硫ゴムシートを作製した。
(未反応カップリング剤量)
前記未加硫ゴムシートを細かく切り、エタノールを用いて24時間抽出試験をおこなった。そして、抽出液中に抽出された未反応のシランカップリング剤量をガスクロマトグラフで測定し、シランカップリング剤の全配合量に対する未反応のシランカップリング剤量の重量比(重量%)を算出した。該重量比が小さいほど、未反応のシランカップリング剤量が少なく優れていることを示す。
(エタノール発生量)
前記未加硫ゴムシートから試験片を作成し、ヘッドスペースガスクロマトグラフを用いて、150℃の条件下で10分間加熱して揮発成分(エタノール)を追い出し、そのときのエタノール発生量を測定し、比較例1のエタノール発生指数を100とし、下記計算式により、各配合のエタノール発生量を指数表示した。なお、エタノール発生指数が小さいほど、エタノールの発生量が少なく、気泡が発生しないため、良好であることを示す。
(エタノール発生指数)=(各配合のエタノール発生量)
÷(比較例1のエタノール発生量)×100
(粘弾性試験)
作製した加硫ゴムシートを用い、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータで周波数10Hz、初期歪10%、動歪2%の条件で、70℃における加硫ゴムシートの損失正接(tanδ)の測定を行い、比較例1の転がり抵抗指数を100とし、下記計算式により、各配合のtanδを指数表示した。なお、転がり抵抗指数が大きいほど、転がり抵抗が低減され、優れていることを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)
÷(各配合のtanδ)×100
(耐摩耗性)
ランボーン摩耗試験機を用いて、荷重2.5kgfで、スリップ率40%および試験時間3分間の条件下でランボーン摩耗量を測定した。さらに、測定したランボーン摩耗量から容積損失量を計算し、比較例1のランボーン摩耗指数を100とし、下記計算式により、各配合の容積損失量を指数表示した。なお、ランボーン摩耗指数が大きいほど、耐摩耗性に優れていることを示す。
(ランボーン摩耗指数)=(比較例1の容積損失量)
÷(各配合の容積損失量)×100
上記試験の評価結果を表1に示す。
Figure 0005063922
比較例1は、三酸化ホウ素を配合しておらず、未反応カップリング剤量が多く、エタノールの発生を抑制できないため気泡の発生を抑制できず、転がり抵抗特性および耐摩耗性ともに不充分な従来のトレッド用ゴム組成物である。
実施例1〜5では、三酸化ホウ素を配合することにより、三酸化ホウ素を配合しない比較例1と比較し、未反応カップリング剤量が減少し、エタノールの発生を抑制することで気泡の発生を抑制し、転がり抵抗指数およびランボーン摩耗指数がともに向上している。
また、三酸化ホウ素が5重量部以上配合されている比較例3では、耐摩耗性および転がり抵抗特性が低下している。

Claims (2)

  1. ゴム成分およびシリカを含有するトレッド用ゴム組成物であって、
    該シリカ100重量部に対して、
    シランカップリング剤を3〜15重量部および
    ゴム成分100重量部に対して、
    酸化ホウ素を0.2〜5重量部含有するトレッド用ゴム組成物。
  2. 酸化ホウ素の含有量が、ゴム成分100重量部に対して0.52.5重量部である請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。
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