JP4733968B2 - タイヤ用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

タイヤ用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ Download PDF

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Description

本発明は、タイヤ用ゴム組成物及び該タイヤ用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関し、特にタイヤの操縦安定性を改善できることに加え、加硫生産性及び押出作業性に優れたゴム組成物に関するものである。
近年の自動車に対する低燃費化の要求にともない、転がり抵抗の小さいタイヤが求められている。これに対して、充填剤としてシリカ等の無機充填剤を使用したり、該無機充填剤とカーボンブラックを併用したゴム組成物が提案されており(特許文献1及び2参照)、かかるゴム組成物をトレッドに適用したタイヤは、転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れる上、ウェットスキッド抵抗に代表される湿潤路での操縦安定性にも優れている。しかしながら、該タイヤには、耐摩耗性が劣り、弾性率が低いためドライ操縦安定性が劣るという問題があった。
ここで、シリカ等の無機充填剤を配合したゴム組成物をタイヤのトレッドに適用した場合に、タイヤの耐摩耗性や弾性率等が低下する原因としては、トレッドのゴム成分である共役ジエン系ゴムに対する無機充填剤の親和性が充填剤として通常用いられるカーボンブラックよりも小さいため、無機充填剤の共役ジエン系ゴムへの分散性が悪く、充分な補強効果が得られないこと等が考えられる。
これに対して、共役ジエン系ゴムに対する無機充填剤の親和性を改善するために種々のシランカップリング剤が開発され、使用されているが、無機充填剤の共役ジエン系ゴムへの分散性が依然として充分ではなく、改善の余地があった。
一方、特開2003−176378号公報(特許文献3)には、同一分子内にゴム成分に対する反応基aを1個以上有し且つ無機充填剤に対する吸着基bを2個以上有する化合物を用いることで、無機充填剤の共役ジエン系ゴムへの分散性を向上させて、貯蔵弾性率を向上させたゴム組成物が開示されている。
特開2000−80205号公報 特開2002−179841号公報 特開2003−176378号公報
しかしながら、本発明者が更に研究を進めたところ、上記同一分子内にゴム成分に対する反応基aを1個以上有し且つ無機充填剤に対する吸着基bを2個以上有する化合物は、ゴム組成物の加硫速度を遅くするため、タイヤの加硫生産性を低下させることが分った。これに対して、従来手法である加硫促進剤の調整で加硫速度を維持しようとすると、ゴム組成物のスコーチ性が悪化し、押出作業性が悪化するため、加硫促進剤の調整で加硫生産性を補完することができないことが分った。
そこで、本発明の目的は、タイヤの操縦安定性を改善できることに加え、加硫生産性及び押出作業性に優れたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかるタイヤ用ゴム組成物を用いた、操縦安定性及び生産性に優れた空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、無機充填剤と、ゴム成分との相溶性及び無機充填剤との親和性に優れた特定の化合物と、ホウ酸ナトリウムとをゴム組成物に用いることで、ゴム組成物の押出作業性を悪化させることなく、ゴム組成物の加硫速度を向上させることができ、該ゴム組成物をタイヤに用いることで、タイヤの加硫生産性を大幅に改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、天然ゴム及びジエン系合成ゴムのうち少なくとも1種からなるゴム成分に、少なくとも無機充填剤を含む充填剤と、下記式(I):
HOOC−CH=CH−COO−R1−CO−CH=CH−COOH ・・・ (I)
[式中、R1は、式−R2O−で示される基{ここで、R2は炭素数2〜36のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基である}、式−(R3O)s−で示される基{ここで、R3は炭素数2〜4のアルキレン基であり;sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜60の数である}、式−CH2CH(OH)CH2O−で示される基又は式−(R4O−COR5−COO−)t4O−で示される基{ここで、R4は炭素数2〜18のアルキレン基,アルケニレン基,2価の芳香族炭化水素基又は−(R6O)u6−で示される基(ここで、R6は炭素数2〜4のアルキレン基で;uはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数である)で;R5は炭素数2〜18のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基で;tは平均値で1〜30の数である}である]で表される化合物と、ホウ酸ナトリウムとを配合してなり、
前記充填剤の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して5〜120質量部であり、
前記式(I)で表される化合物の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、
前記ホウ酸ナトリウムの配合量が、上記式(I)で表される化合物に対し5〜80質量%であることを特徴とする。
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、前記ホウ酸ナトリウムの配合量は、上記式(I)で表される化合物に対し20〜50質量%であることが好ましい。この場合、押出作業性を良好に維持しつつ、加硫生産性を向上させることができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物の好適例においては、前記充填剤の30質量%以上が前記無機充填剤である。
本発明のタイヤ用ゴム組成物の他の好適例においては、前記ゴム成分が35〜50%の結合スチレン量のスチレン・ブタジエン共重合体ゴムを30〜100質量%含む。ここで、前記ゴム成分の平均結合スチレン量が26.5%以上であることが更に好ましい。
本発明において上記無機充填剤とは、シリカ又は下記式(II):
wM・xSiOy・zH2O ・・・ (II)
[式中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり;w、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である]で表される無機化合物をいう。ここで、上記シリカは、窒素吸着比表面積(N2SA)が180〜270m2/gであることが特に好ましい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、前記無機充填剤に対して、更にシランカップリング剤を1〜20質量%の割合で含むことが好ましい。ここで、該シランカップリング剤が下記式(III):
c3-cSi−X−Sd−X−SiAc3-c ・・・ (III)
[式中、AはCe2e+1O(eは1〜3の整数)又は塩素原子で;Bは炭素数1〜3のアルキル基で;Xは炭素数1〜9の飽和または不飽和アルキレン基あるいは炭素数7〜15のアリーレン基で;cは1〜3の整数で;dは1以上の整数で分布を有することもあり;但し、cが1のとき、2つのBは同一でも異なってもよく、cが2又は3のとき、2つ又は3つのAは同一でも異なってもよい]で表される化合物であることが更に好ましい。
また、本発明の空気入りタイヤは、上記タイヤ用ゴム組成物をいずれかのタイヤ部材に用いたことを特徴とする。ここで、前記タイヤ部材としては、トレッドが好ましい。更に、本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤとして好適である。
本発明によれば、無機充填剤及び上記式(I)の化合物に加え、ホウ酸ナトリウムを配合することで、タイヤの操縦安定性を改善できることに加え、加硫生産性及び押出作業性に優れたタイヤ用ゴム組成物を提供することができる。また、かかるタイヤ用ゴム組成物を用いた、操縦安定性及び生産性に優れた空気入りタイヤを提供することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のタイヤ用ゴム組成物は、天然ゴム及びジエン系合成ゴムのうち少なくとも1種からなるゴム成分に、少なくとも無機充填剤を含む充填剤と、上記式(I)で表される化合物と、ホウ酸ナトリウムとを配合してなることを特徴とする。本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シリカ等の無機充填剤を含むため、ウェット操縦安定性が良好で、且つ転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れる。また、式(I)の化合物は、カルボキシル基とオキシカルボニル基が結合した炭素−炭素二重結合を2つ以上有するため、ゴム成分との相溶性に優れ、また、カルボキシル基を2つ有するため、無機充填剤との親和性にも優れる。そのため、ゴム成分に、無機充填剤と共に式(I)の化合物を配合することにより、無機充填剤のゴム成分への分散性が改善され、ゴム組成物を大幅に高弾性化することができ、その結果、該ゴム組成物を用いたタイヤのドライ操縦安定性を向上させることができる。更に、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、式(I)の化合物に加え、ホウ酸ナトリウムを含むことで、押し出しにおいて焦けが発生することなく、加硫速度が向上している。そのため、該ゴム組成物は、押出作業性に優れ、また、該ゴム組成物を用いたタイヤは、加硫生産性に優れる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物のゴム成分としては、天然ゴム(NR)及びジエン系合成ゴムが挙げられ、ここで、ジエン系合成ゴムとしては、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)及びブチルゴム(IIR)等が挙げられる。これらゴム成分は一種単独で使用してもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。また、上記ゴム成分は、結合スチレン量が35〜50%のスチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を30〜100質量%含有することが好ましく、該ゴム成分の平均結合スチレン量が26.5%以上であることが更に好ましい。ゴム成分の平均結合スチレン量が26.5%以上であれば、ウェット操縦安定性及び低燃費性を損なうことなく、ドライ操縦安定性を大幅に向上させることができる。これは、上記式(I)の化合物、結合スチレン量が35%以上スチレン・ブタジエン共重合体及び無機充填剤を使用した場合に、三者の親和性が高くなり、高弾性化と低燃費性悪化の抑制(転がり抵抗増大の抑制)とを両立できるためである。
本発明のタイヤ用ゴム組成物の充填剤は、少なくとも無機充填剤を含むことを要し、該無機充填剤を30質量%以上含むことが好ましく、該充填剤としては、無機充填剤の他、カーボンブラック等が挙げられる。無機充填剤を含むゴム組成物を用いたタイヤは、転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れ、また、ウェット操縦安定性が優れている。ここで、上記無機充填剤は、シリカ又は上記式(II)で表される無機化合物である。式(II)中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり;w、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数及び0〜10の整数である。なお、式(II)において、x、zがともに0である場合、該無機化合物は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの金属、金属酸化物又は金属水酸化物となる。
上記式(II)で表わされる無機化合物としては、γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al23);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al23・H2O);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3];炭酸アルミニウム[Al2(CO3)3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が使用できる。また、前記式(II)中のMがアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一つである場合が好ましい。式(II)で表されるこれらの無機化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの無機化合物はシリカと混合して使用することもできる。
上記無機充填剤は、その粒径が0.01〜10μmの粉体であることが好ましい。粒径が0.01μm未満ではグリップ力の向上が望めない割に混練作業が悪化し、10μmを超えると貯蔵弾性率が極端に低下し、耐摩耗性が悪くなるため好ましくない。また、これらの効果の観点から、粒径は0.05〜5μmの範囲が更に好ましい。
上記無機充填剤としては、水銀圧入法で測定した比表面積が80〜300m2/gの範囲にあるものが好ましく用いられる。この比表面積を80m2/g〜300m2/gとすることにより無機充填剤のゴム成分への分散がよくなり、ゴム組成物の加工性、耐摩耗性が良好となる。補強性、加工性及び耐摩耗性のバランス等の面から、より好ましい比表面積は100〜250m2/gの範囲である。なお、この比表面積(SHg)の算出法は、細孔を円筒形と仮定し、SHg(m2/g)=2V/r〔V=全細孔容積(m3/g)、r=平均細孔半径(m)〕で算出する。
上記無機充填剤の中でも、シリカが好ましく、窒素吸着比表面積(N2SA)が180〜270m2/gであるシリカが特に好ましい。シリカのN2SAが180m2/g未満では、タイヤのヒステリシスロス向上による耐チッピング性の改良効果が小さく、270m2/gを超えると、ゴム組成物の粘度が上昇して混練時の作業性が著しく悪化してしまう。
上記充填剤の配合量は前記ゴム成分100質量部に対し5〜120質量部であり、30〜100質量部であることが好ましく、40〜100質量部であることがより好ましい
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、更にシランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤を配合することにより、タイヤの耐摩耗性を更に向上させることができ、tanδが更に低下する。ここで、上記ゴム組成物は、シランカップリング剤を前記無機充填剤に対し1〜20質量%の割合で含むことが好ましく、3〜15質量%の割合で含むことが更に好ましい。シランカップリング剤の含有量が、無機充填剤に対し1質量%未満では、シランカップリング剤を配合した効果が充分に発揮されないことがあり、20質量%を超えると、効果が更に向上せず、コスト増につながる。
上記シランカップリング剤としては、従来公知のシランカップリング剤の中から任意のものを用いることができるが、その中でも、上記式(III)で表される化合物の中から選ばれた少なくとも一種を用いるのが好ましい。ここで、上記式(III)で表される化合物としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド,ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド,ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド,ビス(3-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド,ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド,ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド,ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド等が挙げられ、市販品を用いることができる。これらシランカップリング剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記式(I)で表される化合物を含有することを要する。ここで、該式(I)の化合物の配合量は、前記ゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部の範囲であり、0.5〜10質量部の範囲が好ましく、1〜5質量部の範囲がより好ましい。式(I)の化合物の配合量が0.5質量部未満では、ゴム組成物の弾性率を向上させる効果が小さく、タイヤのドライ操縦安定性及び耐摩耗性を充分に向上させることができず、20質量部を超えると、著しく弾性率が向上し、またコスト高となる。
式(I)中、R1は、式−R2O−で示される基、式−(R3O)s−で示される基、式−CH2CH(OH)CH2O−で示される基又は式−(R4O−COR5−COO−)t4O−で示される基である。ここで、R2は、炭素数2〜36のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基であって、好ましくは炭素数2〜18のアルキレン基又はフェニレン基、さらに好ましくは炭素数4〜12のアルキレン基である。また、R3は、炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜60の数であり、好ましくは2〜40、更に好ましくは4〜30の数である。R4は、炭素数2〜18のアルキレン基、アルケニレン基、2価の芳香族炭化水素基又は−(R6O)u6−で示される基である(ここで、R6は炭素数2〜4のアルキレン基で;uはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数であり、好ましくは1〜20、さらに好ましくは2〜15の数である)。R5は、炭素数2〜18のアルキレン基、アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基であって、好ましくは炭素数2〜12のアルキレン基又はフェニレン基、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基である。tは平均値で1〜30、好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15の数である。
式(I)で表される化合物の具体例としては、グリセリンジマレエート、1,4-ブタンジオールジマレエート、1,6-ヘキサンジオールジマレエート等のアルキレンジオールのジマレエート;1,6-ヘキサンジオールジフマレート等のアルキレンジオールのジフマレート;PEG200ジマレエート,PEG600ジマレエート等のポリオキシアルキレングリコールのジマレエート(ここでPEG200、PEG600とは、それぞれ平均分子量200又は600のポリエチレングリコールを示す);両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンマレエート、両末端にカルボキシル基を有するポリ(PEG200)マレエート等の両末端カルボン酸型ポリアルキレングリコール/マレイン酸ポリエステル;両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンアジペートマレエート、PEG600ジフマレート等のポリオキシアルキレングリコールのジフマレート;両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンフマレート、両末端にカルボキシル基を有するポリ(PEG200)フマレート等の両末端カルボン酸型ポリアルキレングリコール/フマル酸ポリエステル等が挙げられる。
上記式(I)の化合物は、分子量250以上であることが好ましく、更には250〜5000の範囲であること、特には250〜3000の範囲であることが好ましい。この範囲であると引火点が高く、安全上望ましいばかりでなく、発煙が少なく作業環境上も好ましい。なお、上記式(I)の化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、更にホウ酸ナトリウムを含有することを要する。該ホウ酸ナトリウムとしては、例えば、オルトホウ酸ナトリウム(Na3BO3)、二ホウ酸ナトリウム(Na425)、メタホウ酸ナトリウム(NaBO2)、四ホウ酸ナトリウム(Na247)、五ホウ酸ナトリウム(Na41017)、八ホウ酸ナトリウム(Na2813)が挙げられる。これらの中でも、四ホウ酸ナトリウムが好ましい。該四ホウ酸ナトリウムは、ホウ砂、ボラックスとも称され、10水和物、5水和物、無水物があり、いずれを使用しても効果がある。本発明のタイヤ用ゴム組成物における上記ホウ酸ナトリウムの配合量は、上記式(I)の化合物に対し5〜80質量%の範囲であり、20〜50質量%の範囲が好ましい。上記式(I)の化合物に対するホウ酸ナトリウムの使用量が5質量%未満では、加硫生産性を向上させる効果が小さく、一方、80質量%を超えると、押出における焦け性が悪化し、押出作業性が低下する。
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、上記ゴム成分、充填剤、シランカップリング剤、式(I)の化合物、ホウ酸ナトリウムの他に、ゴム業界で通常使用される配合剤、例えば、軟化剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等を目的に応じて適宜配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。なお、上記ゴム組成物は、ゴム成分に、無機充填剤、式(I)の化合物及びホウ酸ナトリウムと共に、必要に応じて適宜選択した各種配合剤を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
本発明の空気入りタイヤは、上述のようにタイヤの操縦安定性を向上させることが可能なタイヤ用ゴム組成物をタイヤ部材に適用してなるため、乗用車用タイヤとして好適である。なお、本発明のタイヤは、従来公知の構造で、特に限定はなく、通常の方法で製造できる。また、本発明の空気入りタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
表1に示す配合処方のゴム組成物を調製し、下記の方法で、ムーニー粘度、スコーチ性、加硫速度を評価した。結果を表1に示す。
(1)ムーニー粘度及びスコーチ性
JIS K6300−1に準拠して、ムーニー粘度計を用いて、130℃におけるムーニー粘度ML1+4(130℃)、及び130℃におけるムーニースコーチタイム(t5)を測定し、比較例1のゴム組成物のムーニー粘度及びムーニースコーチタイムを100としてそれぞれ指数表示した。ムーニー粘度については、指数値が小さい程、ムーニー粘度が低いことを示し、ムーニースコーチタイムについては、指数値が大きい程、スコーチが起こり難く、良好であることを示す。また、これらの結果から、ゴム組成物の押出作業性を評価した。表1中、○は良好であることを、△はやや悪化したことを、×は悪化したことを示す。
(2)加硫速度
JIS K6300−2に準拠して、レオメーターを用いて、160℃における各ゴム組成物の加硫特性を試験した。具体的には、トルクの最大値をFmaxとし、最小値をFminとした場合の{(Fmax−Fmin)×0.9+Fmin}のトルクに達するまでの時間(T0.9)を求め、比較例1のゴム組成物のT0.9を100として指数表示した。指数値が小さい程、加硫速度が速く、良好であることを示す。また、この結果から、ゴム組成物の加硫生産性を評価した。表1中、○は良好であることを、○〜△は極僅かに悪化したことを、△はやや悪化したことを、×は悪化したことを示す。
次に、上記ゴム組成物をトレッドに用い、通常の加硫条件で加硫して、サイズ195/60R15の乗用車用タイヤ(内圧196kPa)を試作し、下記に示す方法でドライ操縦安定性を評価した。結果を表1に示す。
(3)ドライ操縦安定性
乾燥した路面のテストコースにて実車走行を行い、駆動性、制動性、ハンドル応答性、操縦時の制御性を総合評価し、良好な場合を○とし、不良な場合を×とした。
Figure 0004733968
*1 Amerypol Synpol製, SBR#1721, [結合スチレン量=40%, ゴム成分100質量部に対し37.5質量部のアロマ系オイルで油展].
*2 昭和キャボット製, ショウブラックN234, N2SA=123m2/g.
*3 日本シリカ工業製, ニップシールAQ, N2SA=212m2/g.
*4 N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン, 大内新興化学(株)製, ノクラック6C.
*5 N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド, 大内新興化学工業(株)製, ノクセラーCZ.
*6 1,3-ジフェニルグアニジン, 大内新興化学工業(株)製, ノクセラーD−P.
*7 ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド, デグッサ製, Si69.
*8 ポリPEG200マレートポリエステル, [式(I)において、R1が−(R4O−COR5−COO−)t4O−で示される基であり;R4が−(R6O)u6−(R6がエチレン基, u=3.5)で;R5が−CH=CH−で;t=4の化合物].
*9 四ホウ酸ナトリウム・10水和物.
表1から、化合物(Z)を配合したゴム組成物をトレッドに適用することで、タイヤのドライ操縦安定性が向上することが分る。しかしながら、化合物(Z)を配合し、ホウ酸ナトリウムを配合しなかったゴム組成物は、加硫速度が遅く、加硫生産性が悪かった。なお、比較例3のゴム組成物は、比較例2のゴム組成物に比べ、加硫促進剤CZを減量し且つ加硫促進剤DPGを増量して加硫速度の向上を図ったが、この場合、ムーニースコーチタイムが非常に短くなり、スコーチが発生しやすく、押出作業性が悪化した。
一方、化合物(Z)及びホウ酸ナトリウムを配合した実施例1〜3のゴム組成物は、加硫速度が速く、加硫生産性が高い上、ムーニースコーチタイムも十分に長く、押出作業性の悪化が抑制されていた。なお、比較例のゴム組成物は、化合物(Z)に対するホウ酸ナトリウムの配合量が多すぎるため、加硫速度が高いものの、ムーニースコーチタイムが短く、押出作業性が悪かった。

Claims (13)

  1. 天然ゴム及びジエン系合成ゴムのうち少なくとも1種からなるゴム成分に、少なくとも無機充填剤を含む充填剤と、下記式(I):
    HOOC−CH=CH−COO−R1−CO−CH=CH−COOH ・・・ (I)
    [式中、R1は、式−R2O−で示される基{ここで、R2は炭素数2〜36のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基である}、式−(R3O)s−で示される基{ここで、R3は炭素数2〜4のアルキレン基であり;sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜60の数である}、式−CH2CH(OH)CH2O−で示される基又は式−(R4O−COR5−COO−)t4O−で示される基{ここで、R4は炭素数2〜18のアルキレン基,アルケニレン基,2価の芳香族炭化水素基又は−(R6O)u6−で示される基(ここで、R6は炭素数2〜4のアルキレン基で;uはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数である)で;R5は炭素数2〜18のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基で;tは平均値で1〜30の数である}である]で表される化合物と、ホウ酸ナトリウムとを配合してなり、
    前記充填剤の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して5〜120質量部であり、
    前記式(I)で表される化合物の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、
    前記ホウ酸ナトリウムの配合量が、上記式(I)で表される化合物に対し5〜80質量%であ
    タイヤ用ゴム組成物。
  2. 前記ホウ酸ナトリウムの配合量が上記式(I)で表される化合物に対し20〜50質量%であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  3. 前記充填剤の30質量%以上が前記無機充填剤であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  4. 前記ゴム成分が35〜50%の結合スチレン量のスチレン・ブタジエン共重合体ゴムを30〜100質量%含むことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  5. 前記ゴム成分の平均結合スチレン量が26.5%以上であることを特徴とする請求項4に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  6. 前記無機充填剤がシリカであることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  7. 前記シリカは、窒素吸着比表面積(N2SA)が180〜270 m2/gであることを特徴とする請求項6に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  8. 前記無機充填剤が下記式(II):
    wM・xSiOy・zH2O ・・・ (II)
    [式中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり;w、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である]で表される無機化合物であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  9. 前記無機充填剤に対して、更にシランカップリング剤を1〜20質量%の割合で含むことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  10. 前記シランカップリング剤が下記式(III):
    c3-cSi−X−Sd−X−SiAc3-c ・・・ (III)
    [式中、AはCe2e+1O(eは1〜3の整数)又は塩素原子で;Bは炭素数1〜3のアルキル基で;Xは炭素数1〜9の飽和または不飽和アルキレン基あるいは炭素数7〜15のアリーレン基で;cは1〜3の整数で;dは1以上の整数で分布を有することもあり;但し、cが1のとき、2つのBは同一でも異なってもよく、cが2又は3のとき、2つ又は3つのAは同一でも異なってもよい]で表される化合物であることを特徴とする請求項9に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をタイヤ部材に用いた空気入りタイヤ。
  12. 前記空気入りタイヤが乗用車用タイヤであることを特徴とする請求項11に記載の空気入りタイヤ。
  13. 前記タイヤ部材がトレッドであることを特徴とする請求項11に記載の空気入りタイヤ。
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