JP3902107B2 - ゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム組成物に関し、さらに詳しくは、補強用充填剤として、無機充填剤を含有したゴム組成物であって、加工性及び貯蔵弾性率が改良されたゴム組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゴム用補強充填剤としては、カーボンブラックが多用されている。これは、カーボンブラックが他の充填剤に比べて、高い補強性と優れた耐摩耗性を付与し得るからである。一方、近年の省エネルギーの社会的な要請に伴い、自動車の燃料消費節約を目的として、タイヤ用ゴムの低発熱化を図る場合、カーボンブラックの充填量の減量、あるいは大粒径のカーボンブラックの使用が考えられるが、いずれの場合も、補強性,耐摩耗性,湿潤路面でのグリップ性が低下するのを免れないことが知られている。他方、低発熱性と湿潤路面でのグリップ性を両立させる充填剤として、含水ケイ酸(湿式シリカ)が知られているが(例えば特許文献1〜8参照)、この湿式シリカは、その表面官能基であるシラノール基の水素結合により粒子同士が凝集する傾向にあり、ゴム中へのシリカの分散を良くするためには混練時間を長くする必要がある。また、ゴム中へのシリカの分散が不十分なためゴム組成物のムーニー粘度が高くなり、押出しなどの加工性に劣るなどの欠点を有していた。さらに、シリカ粒子の表面が酸性であることから、加硫促進剤として使用される塩基性物質を吸着し、ゴム組成物の加硫が十分に行われず、貯蔵弾性率が上がらないという欠点を有していた。
【0003】
上記欠点を改良するために、シランカップリング剤が開発されたが、依然として、シリカの分散は十分なレベルに達しておらず、特に、工業的に、良好なシリカ粒子の分散を得ることは困難であった。また、タイヤの操縦安定性に寄与する貯蔵弾性率を改良する為には、カーボン・シリカ等の補強性充填剤の配合量を増す、あるいはより小粒径物を配合する等の手法があるが、何れも未加硫ゴムの加工性の悪化は免れない。さらには、ある種の硬化性樹脂を添加する手法もあるが、発熱性が悪化するというデメリットがある。
【0004】
一方、シリカ配合ゴムの省燃費性を損なわずに操縦安定性を向上させる方法として、樹脂を添加する方法が知られているが(例えば特許文献9、特許文献10参照)、これらの樹脂とゴムとの相溶性は不十分であり、加硫ゴムの表面荒れが生じる等の問題を有している。
また、重合性不飽和結合と特定の官能基をもった化合物を添加したゴム組成物が提案されているが(例えば特許文献11)、これらの化合物では貯蔵弾性率を向上させる効果が不十分であった。
【0005】
【特許文献1】
特開平3−252431号公報
【特許文献2】
特開平6−248116号公報
【特許文献3】
特開平7−70369号公報
【特許文献4】
特開平7−188466号公報
【特許文献5】
特開平7−196850号公報
【特許文献6】
特開平8−225684号公報
【特許文献7】
特開平8−245838号公報
【特許文献8】
特開平8−337687号公報
【特許文献9】
特開2000−80205号公報
【特許文献10】
特開2000−290433号公報
【特許文献11】
特開2002−179841号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、無機充填剤の分散性に優れ、従って未加硫ゴムの粘度を上げず、加工性を損なうことなく、ゴムの表面荒れがない上、貯蔵弾性率が改良されたゴム組成物を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、(A)天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム、(B)無機充填剤、及び(C)同一分子内にゴム(A)に対する反応基Aを1個以上と無機充填剤(B)に対する吸着基Bを2個以上有する化合物又は(D)同一分子内にゴム(A)に対する反応基Aとしてマレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びソルビン酸から選ばれる不飽和カルボン酸から誘導される基Aとアミノ基とを各々1個以上有する化合物から選ばれる化合物の少なくとも1種を含むことを特徴とするゴム組成物がその目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明におけるゴム組成物は、(A)天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムを必須成分とするが、ここで、ジエン系合成ゴムとしては、例えばポリイソプレン合成ゴム(IR),ポリブタジエンゴム(BR),スチレン−ブタジエンゴム(SBR),アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR),クロロプレンゴム(CR),ブチルゴム(IIR)などが挙げられる。この(A)成分の天然ゴムやジエン系合成ゴムは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0009】
次に、本発明のゴム組成物において、(B)成分としては、無機充填剤が用いられるが、ここで無機充填剤とは、シリカ又は下記一般式(VIII)で表される化合物をいう。
dM1 ・xSiOy・zH2 O ・・・(VIII)
ここで、式(VIII)中、M1 は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、d、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である。
尚、一般式(VIII)において、x、zがともに0である場合には、該無機化合物はアルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの金属、金属酸化物又は金属水酸化物となる。
【0010】
上記一般式(VIII)で表わされる無機充填材としては、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al2O3)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al2O3・H2O)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO3)2]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al2O3)、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩などが使用できる。また、前記一般式(VIII)中のM1がアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一つである場合が好ましい。
【0011】
一般式(VIII)で表されるこれらの無機化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの化合物はシリカと混合して使用することもできる。
本発明では上記無機充填剤のうち特にシリカが好ましい。
【0012】
また、本発明における無機充填剤は、その粒径が0.01〜10μmの粉体であることが好ましい。粒径が0.01μm未満ではグリップ力の向上が望めない割に混練作業が悪化し、10μmを超えると貯蔵弾性率が極端に低下し、耐磨耗性が悪くなるため好ましくない。また、これらの効果の観点から、粒径は0.05〜5μmの範囲がさらに好ましい。
【0013】
上記無機充填剤は、水銀圧入法で測定した比表面積が80〜300m2 /gの範囲にあるものが好ましく用いられる。この比表面積を80m2 /g〜300m2 /gとすることにより無機充填剤のゴムへの分散がよくなり、ゴム組成物の加工性,耐摩耗性が良好となる。補強性,加工性及び耐摩耗性のバランスなどの面から、より好ましい比表面積は100〜250m2 /gの範囲である。なお、この比表面積(SHg)の算出法は、細孔を円筒形と仮定し、SHg(m2 /g)=2V/r〔V=全細孔容積(m3 /g)、r=平均細孔半径(m)〕で算出する。
【0014】
本発明の組成物において、この(B)成分の無機充填剤の含有量は、前記(A)成分100質量部当たり、10〜140質量部の範囲が好ましい。この含有量を10〜140質量部とすることにより、補強性その他のゴム物性に悪影響を与えることなく本発明の目的を達成することができる。この(B)成分の含有量はさらに20〜90質量部が好ましい。
【0015】
本発明の化合物(C)としては、下記式(I)( II )又は( III )で表される化合物が挙げられる。
【0016】
【化7】
【0017】
式中、A 1 、A 2 及びA 3 はこれらのうち一つが式−(R 1 O) n −CO−CR 2 =CR 3 −R 4 で表される基であり、他は水素原子である。ここでR 1 は炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基である。またR 2 、R 3 及びR 4 はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であって、好ましくはR 2 が水素原子又はメチル基、R 3 及びR 4 が水素原子である。nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数であり、好ましくは1〜20、さらには好ましくは2〜15の数である。
【0018】
【化8】
【0019】
式中、R 5 、R 6 及びR 7 はそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、m1、m2及びm3はそれぞれオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す数で、m1+m2+m3が0〜90、好ましくは3〜60、さらに好ましくは6〜45となる数である。
【0020】
【化9】
【0021】
式中、R 8 は、式−R 9 O−で示される基、式−(R 10 O) S −で示される基、式−CH 2 CH(OH)CH 2 O−で示される基又は式−(R 11 O−COR 12 −COO−) t R 11 O−で示される基である。ここでR 9 は炭素数2〜36のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基であって、好ましくは炭素数2〜18のアルキレン基又はフェニレン基、さらに好ましくは炭素数4〜12のアルキレン基である。またR 10 は炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜60の数であり、好ましくは2〜40、さらに好ましくは4〜30の数である。R 11 は炭素数2〜18のアルキレン基、アルケニレン基、2価の芳香族炭化水素基又は−(R 13 O) u R 13 −であり(R 13 は炭素数2〜4のアルキレン基、uはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数であり、好ましくは1〜20、さらに好ましくは2〜15の数である)、R 12 は炭素数2〜18のアルキレン基、アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基であって、好ましくは炭素数2〜12のアルキレン基又はフェニレン基、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基である。tは平均値で1〜30、好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15の数である。
【0022】
これらの化合物の中では、多塩基酸の部分エステルが好ましく、式(I)、( II )又は( III )で表される化合物から選ばれる化合物がさらに好ましい。
【0023】
式(I)で表される化合物の具体例としては、トリメリット酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)エステル、トリメリット酸モノ[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチル]エステル、トリメリット酸モノ(ω−(メタ)アクリロイルオキシポリオキシエチレン(10))エステル等のトリメリット酸モノ(ω−(メタ)アクリロイルオキシPOA(n))エステル(ここで(メタ)アクリロイルはメタクリロイル又はアクリロイルを示し、POA(n)はオキシエチレン又はオキシプロピレンが平均して1〜30モル付加したポリオキシエチレン(以下「POE」と略記することがある)又はポリオキシプロピレン(以下「POP」と略記することがある)を示す。)が挙げられる。
式(II)で表される化合物の具体例としては、POE(8)グリセリントリマレエート、POE(3)グリセリントリマレエート、POP(10)グリセリントリマレエート等のPOA(m)グリセリントリマレエート(ここでPOA(m)はオキシエチレン又はオキシプロピレンが平均して0〜90モル付加したポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンを示す。)等が挙げられる。
式(III)で表される化合物の具体例としては、グリセリンジマレエート、1,4−ブタンジオールジマレエート,1,6−ヘキサンジオールジマレエート等のアルキレンジオールのジマレエート、1,6−ヘキサンジオールジフマレート等のアルキレンジオールのジフマレート、PEG200ジマレエート,PEG600ジマレエート等のポリオキシアルキレングリコールのジマレエート(ここでPEG200、PEG600とは、それぞれ平均分子量200又は600のポリエチレングリコールを示す)、両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンマレエート、両末端にカルボキシル基を有するポリ(PEG200)マレエート等の両末端カルボン酸型ポリアルキレングリコール/マレイン酸ポリエステル、両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンアジペートマレエート、PEG600ジフマレート等のポリオキシアルキレングリコールのジフマレート、両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンフマレート、両末端にカルボキシル基を有するポリ(PEG200)フマレート等の両末端カルボン酸型ポリアルキレングリコール/フマル酸ポリエステル等が挙げられる。
【0024】
前記化合物(C)は分子量250以上であることが好ましく、さらには250〜5000の範囲であること、特には250〜3000の範囲であることが好ましい。この範囲であると引火点が高く、安全上望ましいばかりでなく、発煙が少なく作業環境上も好ましい。
尚、本発明において、(C)成分は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
次に、本発明の(D)同一分子内にゴムに対する反応基Aとアミノ基とを各々1個以上有する化合物において、反応基Aはマレイン酸及びフマル酸から選ばれる不飽和カルボン酸から誘導される基であり、特にはマレイン酸から誘導される基が好ましい。
また、アミノ基は、3級のアミノ基であり、さらに詳細には脂肪族3級アミンから誘導される基である。
化合物(D)は、マレイン酸及びフマル酸から選ばれる不飽和カルボン酸のN,N−ジアルキル(アルキル基の炭素数1〜4)アミノアルキル(アルキル基の炭素数1〜22、好ましくは4〜22)エステル、上記不飽和カルボン酸のN−アルキル(アルキル基の炭素数6〜22)−N−(アルキル又はヒドロキシアルキル(アルキル基又はヒドロキシアルキル基の炭素数1〜4))アミノアルキル(アルキル基の炭素数1〜4)エステルからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、マレイン酸のN,N−ジアルキル(アルキル基の炭素数1〜4)アミノアルキル(アルキル基の炭素数1〜22、好ましくは4〜22)エステル、マレイン酸のN−アルキル(アルキル基の炭素数6〜22)−N−(アルキル又はヒドロキシアルキル(アルキル基又はヒドロキシアルキル基の炭素数1〜4))アミノアルキル(アルキル基の炭素数1〜4)エステルが好ましい。
尚、本発明において、(D)成分は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
さらに、本発明においては、(E)一般式(IV)
【化10】
で表されるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを含有していてもよい。上記一般式(IV)において、R14は水素、又はメチル基を示し、R15 はエチレン基またはプロピレン基を示す。R16 は飽和若しくは不飽和のアルキル基、アリール基または一部または2か所以上が−OH、−COOH、−(C=O)−で置換されたものであり、R16 部分の末端にカルボキシル基を持ち、かつ、式中kは0〜30の整数である。また該アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの分子量は250以上である。
上記アルキル基は直鎖状,分岐状,環状のいずれであってもよく、その例としては各種オクチル基(n−オクチル基,分岐オクチル基,シクロオクチル基など、以下同様),各種ノニル基,各種デシル基,各種ドデシル基,各種テトラデシル基,各種ヘキサデシル基,各種オクタデシル基,各種ベヘニル基,各種オクテニル基,各種デセニル基,オレイル基などが挙げられる。アリール基は、芳香環上に低級アルキル基などの置換基を有していてもよく、その例としてはフェニル基,各種トリル基,各種キシリル基,α−若しくはβ−ナフチル基,各種メチルナフチル基,各種ジメチルナフチル基などが挙げられる。
前記一般式の例としては、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−フタル酸、2−アクロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
尚、本発明において、(E)成分は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明の(C)成分、(D)成分及び(E)成分は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜10質量部添加することが好ましく、0.5〜6質量部の範囲が更に好ましい。
【0028】
また、本発明のゴム組成物は、さらに(F)脂肪族アミンを含有することが好ましい。ここで、脂肪族アミンとしては、脂肪族3級アミンが好ましく、式(VIII)で表されるアミンが更に好ましい。
【0029】
【化11】
【0030】
式中、R17は炭素数4〜24のアルキル基、好ましくは8〜22のアルキル基、R18及びR19は、それぞれ炭素数1〜8のアルキル基、好ましくは1〜2のアルキル基を示す。
尚、(C)(D)又は(E)成分と(F)成分の比率(C)/(F)、(D)/(F)又は(E)/(F)(質量比)は0.1〜10の範囲が好ましく、特に0.2〜5の範囲が好ましい。さらに、(F)成分は(A)ゴム100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、さらには0.5〜6質量部の範囲が好ましい。
【0031】
本発明のゴム組成物においては、本発明の効果をさらに向上させるために、所望により、(G)シランカップリング剤を含有させることが望ましい。このシランカップリング剤としては、従来公知のシランカップリング剤の中から任意のものを用いることができるが、特に一般式(V)
AaB3−aSi−X−Sb−X−SiAaB3−a ・・・(V)
(式中、AはCcH2c+1O(cは1〜3の整数)又は塩素原子、Bは炭素数1〜3のアルキル基、Xは炭素数1〜9の飽和または不飽和アルキレン基あるいは炭素数7〜15のアリーレン基、aは1〜3の整数、bは1以上の整数で分布を有することもある。但し、aが1のときは2つのBは同じであっても異なっていてもよく、aが2又は3のときは2つ又は3つのAは同じであっても異なっていてもよい。)で表される化合物、一般式(VI)
AaB3−aSi−X−Y ・・・(VI)
(式中、A、B、X、aは上記と同じ、Yはメルカプト基,ビニル基,アミノ基,グリシドキシ基又はエポキシ基)で表される化合物、及び一般式(VII)
AaB3−aSi−X−Sb−Z ・・・(VII)
(式中、A、B、X、a、bは上記と同じ、Zはベンゾチアゾリル基,N,N−ジメチルチオカルバモイル基又はメタクリロイル基、炭素数1〜15の飽和又は不飽和の炭化水素基)で表される化合物の中から選ばれた少なくとも一種を用いるのが好ましい。
【0032】
前記一般式(V) で表されるシランカップリング剤の例としては、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド,ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド,ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド,ビス(3−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド,ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド,ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド,ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィドなどが、一般式(VI) で表されるシランカップリング剤の例としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン,3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン,ビニルトリエトキシシラン,ビニルトリメトキシシラン,3−アミノプロピルトリエトキシシラン,3−アミノプロピルトリメトキシシラン,3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン,Y−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,Y−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどが、一般式(VII)で表されるシランカップリング剤の例としては、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルカルバモイルテトラスルフィド,3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド,3−トリメトキシシリルプロピルメタクリロイルモノスルフィド,3−トリエトキシシリルプロピルn−オクチルジスルフィドなどが、それぞれ挙げられる。
【0033】
本発明においては、この所望により用いられる(G)成分のシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、組成物中のその含有量は、前記(B)成分に対して1〜20質量%の範囲で選ばれる。この含有量が1質量%未満ではシランカップリング剤を配合した効果が十分に発揮されないおそれがあり、一方、20質量%を超えるとその量の割には効果の向上がみられず、むしろ経済的に不利となる。配合効果及び経済性などを考慮すると、この(G)成分のシランカップリング剤の好ましい含有量は3〜15質量%の範囲である。
【0034】
本発明における(C)、(D)及び(E)の化合物の添加方法は、特に限定されず、ゴム成分に通常の混練機、例えばバンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー等を用いて、添加混合することができる。
【0035】
また、本発明のゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種配合剤、例えばカーボンブラック,加硫剤,加硫促進剤,老化防止剤,スコーチ防止剤,軟化剤,亜鉛華,ステアリン酸などを含有させることができる。そして、本発明のゴム組成物はタイヤのトレッドゴムやトレッドベースゴムに好適に用いられる。尚、空気入りタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて、上記のように各種薬品を含有させた本発明のゴム組成物が未加硫の段階で、例えばトレッド用部材に押出し加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
【0036】
尚、上記添加剤中、カーボンブラックの場合にその添加量は、ゴム100質量部に対し、0〜80質量部、好ましくは0〜40質量部の範囲である。カーボンブラックは、製造方法により、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック及びサーマルブラック等に分類されるが、いずれのものも用いることができる。
【0037】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、各例で得られたゴム組成物の物性は、以下に示す方法により測定した。
(1)動的粘弾性
アイティー計測制御(株)製DVA−200を用いて行ない、測定はJIS K7198に基づき、試験片は長さ2.0mm×幅5mm×厚さ約2mmのものを用い、試験温度−80℃〜100℃、歪率2%、周波数50Hz、昇温速度5℃/分で行った。60℃における貯蔵弾性率(E’)の値を、対象物(比較例1,5,9及び13)と対比した指数として第1表〜第4表に示した。貯蔵弾性率(E’)の指数が大きいほどゴム物性として良好であることを示す。
【0038】
(2)表面荒れ評価
テストピース(縦200mm×幅150mm×厚さ約2mm)の表面状態を肉眼で観察し、下記基準で評価した。尚、表面荒れがないことは、貯蔵弾性率向上剤とゴムとの相溶性あるいは充填剤の分散性が優れていることを示す。
○;全くキズ、凹みが見られない。
△;キズ、凹みが若干見られる。
×;キズ、凹みがかなり見られる。
【0039】
(3)ムーニー粘度
JIS K6300−1994に基づき、125℃にてムーニー粘度〔ML1+4 〕を測定し、比較例1、5、9及び13をそれぞれ100として指数表示した。数値が小さいほど加工性が良好である。
【0040】
実施例1〜11及び比較例1〜5
第1表に示す各成分を、第1表に示す配合割合で混合して、ゴム組成物を調製した。調製にはバンバリーミキサー及びロールミキサーを用いた。加硫は温度165℃で行い、加硫時間はキュラストT90値(分)×1.5倍で規定した。
これらのゴム組成物それぞれにおいて、加硫ゴム物性の指標として、動的粘弾性測定試験、ムーニー粘度及び表面荒れの評価を行った。その結果を第1表に示す。尚、動的粘弾性測定試験、ムーニー粘度においては、比較例1を基準として指数表示した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
*1:ジェイエスアール(株)製
*2:東海カーボン(株)製 シースト300
*3:日本シリカ工業(株)製 ニップシールAQ(SHg=140m2 /g:ニップシールVN3を顆粒にしたもの)
*4:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
*5:POE(n)はオキシエチレンがnモル付加したポリオキシエチレンを示し、POP(n)はオキシプロピレンがnモル付加したポリオキシプロピレンを示す。
*6:式(III)において、R8が−(R11O−COR12−COO−)tR11O−で示される基であり、R11がブチレン基、R12が−CH=CH−、t=4の化合物である。
*7:式(III)において、R8が−(R11O−COR12−COO−)tR11O−で示される基であり、R11が−(R13O)uR13−(R13がエチレン基、u=3.5)であり、R12が−CH=CH−、t=4の化合物である。
*8:式(III)において、R8が−(R11O−COR12−COO−)tR11O−で示される基であり、R11がブチレン基、R12がブチレン基、t=4の化合物である。
*9:ビスマレイミドトリアジン樹脂、三菱ガス化学(株)製、BT−2680を粉砕して使用
*10:N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド
*11:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−フェニレンジアミン
【0045】
実施例12〜20及び比較例6〜10
第2表に示す各成分を、第2表に示す配合割合で混合して、ゴム組成物を調製した。ゴムの調製方法及び加硫方法は実施例1と同様にした。
これらのゴム組成物それぞれにおいて、加硫ゴム物性の指標として、動的粘弾性測定試験、ムーニー粘度及び表面荒れの評価を行った。その結果を第2表に示す。尚、動的粘弾性測定試験、ムーニー粘度においては、比較例6を基準として指数表示した。
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
実施例21〜23及び比較例11〜15
第3表に示す各成分を、第3表に示す配合割合で混合して、ゴム組成物を調製した。ゴムの調製方法及び加硫方法は実施例1と同様にした。
これらのゴム組成物それぞれにおいて、加硫ゴム物性の指標として、動的粘弾性測定試験、ムーニー粘度及び表面荒れの評価を行った。その結果を第3表に示す。尚、動的粘弾性測定試験、ムーニー粘度においては、比較例11を基準として指数表示した。
【0050】
【表7】
【0051】
【表8】
【0052】
実施例24、比較例16
第4表に示す各成分を、第4表に示す配合割合で混合して、ゴム組成物を調製した。ゴムの調製方法及び加硫方法は実施例1と同様にした。
これらのゴム組成物それぞれにおいて、動的粘弾性測定試験、ムーニー粘度及び表面荒れの評価を行った。その結果を第4表に示す。尚、動的粘弾性測定試験及びムーニー粘度は、比較例16を基準として指数表示した。
【0053】
【表9】
【0054】
*12:ジェイエスアール(株)製
*13:天然ゴム
*14:東海カーボン(株)製 シーストKH
*15:日本シリカ工業(株)社製,ニップシールAQ(SHg=140m2 /g)
*16:ジベンゾチアジルジスルフィド
*17:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
*18:6C〔N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン
【0055】
尚、本願発明のゴム組成物をサイズ205/60R15の乗用車用タイヤのトレッドに用いることにより、タイヤの操縦安定性が向上することを確認した。
【0056】
【発明の効果】
本発明におけるゴム組成物は、無機充填剤の分散性に優れ、従って未加硫ゴムの粘度を上げず、加工性を損なうことなく、ゴムの表面荒れがない上、貯蔵弾性率が改良されている。また、このゴム組成物を空気入りタイヤのトレッド等に用いた場合、操縦安定性の向上がみられる。
Claims (12)
- (A)天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム、(B)無機充填剤及び以下の化学式(I)〜( III )のいずれかで表される化合物(C)を含むゴム組成物。
- (A)天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム、(B)無機充填剤及び(D)マレイン酸及びフマル酸から選ばれる不飽和カルボン酸のN,N−ジアルキル(アルキル基の炭素数1〜4)アミノアルキル(アルキル基の炭素数1〜22)エステル、該不飽和カルボン酸のN−アルキル(アルキル基の炭素数6〜22)−N−(アルキル又はヒドロキシアルキル(アルキル基又はヒドロキシアルキル基の炭素数1〜4))アミノアルキル(アルキル基の炭素数1〜4)エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とするゴム組成物。
- (A)成分100質量部当たり、(B)成分10〜140質量部を含む請求項1又は2に記載のゴム組成物。
- (A)成分100質量部当たり、(C)又は(D)成分0.1〜10質量部を含む請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
- 前記(B)無機充填剤がシリカである請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
- さらに(F)脂肪族アミン、を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
- (F)脂肪族アミンが、脂肪族3級アミンであることを特徴とする請求項6に記載のゴム組成物。
- さらに、(G)シランカップリング剤を(B)成分に対して1〜20質量%の割合で含む請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物。
- (G)シランカップリング剤が、一般式(V)
AaB3-aSi−X−Sb−X−SiAaB3-a ・・・(V)
(式中、AはCcH2c+1O(cは1〜3の整数)又は塩素原子、Bは炭素数1〜3のアルキル基、Xは炭素数1〜9の飽和または不飽和アルキレン基あるいは炭素数7〜15のアリーレン基、aは1〜3の整数、bは1以上の整数で分布を有することもある。但し、aが1のときは2つのBは同じであっても異なっていてもよく、aが2又は3のときは2つ又は3つのAは同じであっても異なっていてもよい。)で表される化合物、一般式(VI)
AaB3-aSi−X−Y ・・・(VI)
(式中、A、B、X、aは前記と同様、Yはメルカプト基,ビニル基,アミノ基,グリシドキシ基又はエポキシ基)で表される化合物、及び一般式(VII)
AaB3-aSi−X−Sb−Z ・・・(VII)
(式中、A、B、X、a、bは前記と同様、Zはベンゾチアゾリル基,N,N−ジメチルチオカルバモイル基又はメタクリロイル基、炭素数1〜15の飽和又は不飽和の炭化水素基)で表される化合物の中から選ばれた少なくとも一種である請求項8記載のゴム組成物。 - マレイン酸及びフマル酸から選ばれる不飽和カルボン酸のN,N−ジアルキル(アルキル基の炭素数1〜4)アミノアルキル(アルキル基の炭素数1〜22)エステル、該不飽和カルボン酸のN−アルキル(アルキル基の炭素数6〜22)−N−(アルキル又はヒドロキシアルキル(アルキル基又はヒドロキシアルキル基の炭素数1〜4))アミノアルキル(アルキル基の炭素数1〜4)エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である化合物を有効成分とする無機充填剤配合ゴム用添加剤。
- 以下の化学式(I)〜(III)のいずれかで表される化合物(C)からなる無機充填剤配合ゴム用添加剤。
- さらに脂肪族アミンを含む請求項11に記載の無機充填剤配合ゴム用添加剤。
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