JP3966395B2 - 小旋回型の作業車両 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、小旋回型のバックホー等の小型の作業車両における運転室に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明を適用しようとする作業車両の一例である小型のバックホーは、走行装置に旋回可能に搭載した旋回フレームと、この旋回フレームに搭載されるブーム、アーム、バケット等からなる作業機と、操縦装置と、運転席、エンジン及びこのエンジンにて駆動される油圧ポンプ等の油圧装置等からなっている。そしてエンジン及び油圧装置等は旋回フレームの後部に搭載されてボンネットにてカバーされており、操縦装置と運転席はエンジンより前側に載置されて運転室(キャビン)にてカバーされるようになっている。そしてこの種の作業車両としては、旋回半径を小さくするために、旋回フレームを含む旋回体の前後方向の大きさが極力小さくなるようにしている。
【0003】
従来のこの種の作業車両の運転室としては、特開平9−3974号、特開平7−189292号、実開昭57−101167号、特開平10−60946号の各公報に示されたものが知られている。
【0004】
上記従来の技術の特開平9−3974号に示されたものは、運転室の後部を、機体の後部に設けた開閉カバーに対してオーバラップさせると共に、運転室に、開閉カバーの開閉を許容すべく、運転室の上記開閉カバーと干渉する部分を、開閉カバーの開閉動作領域から退避させるようになっている。
【0005】
また、上記従来の技術の特開平7−189292号に示されたものは、ボンネットの上部に形成した開口部に支持台を臨ませると共に、この支持台に、運転室と、この運転室に設けた後部ロックの一部を構成するステーを取り付け、さらに、上記開口部と運転室本体間とを保護カバーで覆った構成となっている。そして運転室の取付縁部にシール部材を取り付けている。
【0006】
また、従来の技術の実開昭57−101167号に示されたものは、運転室の下方になるボンネット部分を着脱自在に構成し、運転室を搭載する場合に、このボンネット部分を取り除くようにしている。
【0007】
さらに、従来の技術の特開平10−60946号に示されたものは、運転室を支持するシートマウントにエンジンをカバーするボンネットと運転室の両方を支持するようになっている。そして運転室はシールゴムを介してシートマウントに接触されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の技術における運転室のいずれも、この運転室の後部はボンネットや、運転室取付台に対応する形状になっていると共に、この運転室の下側の全体が下方へ開放されている。そしてこの開放縁部がシール部材を介して上記ボンネットや、運転室取付台上に当接するようになっている。このため、運転室の後端縁の形状が複雑になると共に、強度上の問題があり、またいくらシール部材を介装してもこの運転室の後端縁における雨水に対するシール性に問題があり、運転室内への雨水の浸入を防ぐことがむずかしかった。
【0009】
また、運転室が旋回フレームに対して弾性マウントされている床部材に取り付けられるものにあっては、床部材と共に振動する運転室と旋回フレームに搭載されているボンネットとの振動系が異なってしまい。運転室とボンネットとの間のシールが困難であった。また、底壁のない大きな開口間口とした運転室は剛性強度も低いものとなり、弾性マウント構成の床部材に取り付ける運転室としては適当とはいえない。また従来の運転室は振動騒音に対する居住性に配慮されていなかった。
【0010】
本発明は上記のことにかんがみなされたもので、小旋回型の作業車両であっても、運転席床部分の開口する間口と、エンジン側の上部に位置する運転室後部に底壁を形成した運転室として、ボンネットとの間のシール部材の設置の必要をなくすと共に、運転室の強度、剛性を高め、運転室の防振マウント化を可能にした小旋回型の作業車両の運転室を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段及び作用効果】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、エンジンを門形に跨ぐ脚部の上部に支持板を設けた運転室支持台を、旋回フレームの後部側に固定すると共に、この運転室支持台の前側の旋回フレーム部分に運転席床を取付け、上記運転席床と上記運転室支持台に取り付けられる運転室を有する小旋回型の作業車両において、上記運転席床に運転席を載置するための運転席載置台を設け、上記運転席載置台が位置する運転室の後側部分の下面に、運転席床の後端部から上記運転室支持台にわたって階段状に形成した運転室底壁を設け、上記運転室底壁の階段状部に切欠きを設けると共に、上記運転席載置台を階段状部の切欠きに入れ込ませ、運転席をエンジン部分にラップする位置への取り付けを可能にし、運転室と運転席部分とを分離可能にした構成になっている。
【0012】
この発明によれば、運転室底壁にてエンジン室と運転室の内側に配置される運転席が隔離される。これにより、エンジン室と運転室とを隔離する隔壁部分が、運転室側に取り付け置換されることになり、旋回体の前後方向の長さをより短くすることができ、作業車両の旋回体の旋回半径を小さくできる。
【0013】
また、運転室側にエンジンを隔離する運転室底壁を設けたことにより、エンジンボンネットにラップする運転室の後部を切欠きする必要がなくなり、運転室の強度、剛性を向上できた。
【0014】
さらに、運転室の後端縁部が運転室底壁にて閉じられ、この閉じられた部分で運転室支持台に取り付けられることになり、運転室がエンジンボンネットとラップする部分にシール部材を設置する必要がなく、運転室への雨水の浸入を確実に防止できる。その上、この発明によれば運転席床に取り付ける運転席載置台に対して、運転室底壁に切欠きを設けるだけで対応でき、この運転室を用いる場合の運転席載置台と、運転室を用いない場合の運転席載置台とを共通にすることができ、部品コストの低減を図ることができる。
【0015】
そしてさらに、この発明によれば、運転室と運転席載置台とが分離されており、これにより、振動特性が異なるこの運転室と運転席載置台双方の振動連結がなくなり、運転室の弾性支持化に何等の影響を及ぼすことがないようにすることができる。
【0016】
また、上記目的を達成するための請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明において、運転席床を旋回フレームに防振部材を介して支持し、上記運転席床に運転室の前側部分を固着し、運転室の後端部を運転室支持台に防振部材を介して取り付けた構成になっている。
【0017】
この発明によれば、運転室は旋回フレームに対して弾性支持されて防振マウント化を図ることができ、これにより運転室の振動騒音の発生を防止でき、居住性のよい運転室とすることができた。
【0018】
また、上記目的を達成させるための請求項3に記載の発明は、上記請求項1,2に記載のいずれか1項の発明において、運転席床の前部を旋回フレームに防振支持する防振部材と、運転室の後端部を運転室支持台に防振支持する防振部材のそれぞれを、被支持体の上下を弾性体にて挾持し、両弾性体及び被支持体を貫通するボルトにて旋回フレーム及び運転室支持台側に固定する構成にし、運転席床の後部を旋回フレームに防振支持する防振部材を、被支持体の下側のみに弾性体を当接して、運転席床の後部を拘束しないようにした構成とした。
【0019】
この発明によれば、運転室の運転室底壁と運転席床との連結部が上下方向に自由状態で弾性支持され、これにより、運転室の運転室底壁の運転席床との連結部に無理な振動減衰力が作用されることがなくなり、この部分での破損を防止できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明を実施しようとする作業車両の一例である小型のバックホーを示すものである。このバックホーは履帯式の走行装置1上に旋回フレーム2が旋回可能に搭載されており、この旋回フレーム2の前端部に、ブーム3、アーム4、バケット5及びこれらを起伏作動する各油圧シリンダ6,7,8等からなる作業機9がスイングブラケット10を介して左右方向にスイング可能に設けられている。
【0021】
そして上記旋回フレーム2上には操縦装置11、運転席12、エンジン13等が搭載されている。エンジン13はクランク軸を車体幅方向に向けて旋回フレーム2の後部の一画に搭載されていて、これの後側部が上下方向に開閉可能にしたボンネット14にてカバーされている。15は旋回フレーム2の後端部に取り付けられるカウンタウエイトである。そして上記操縦装置11及び運転席12は運転室16にてカバーされている。
【0022】
旋回フレーム2の後部には、エンジン13の横方向を跨いで立設した脚部17,17の上端に支持板18aを固着した運転室支持台18が設けてある。そしてこの運転室支持台18にはボンネット14の固定部分が取り付けられており、ボンネット14はこの固定部分に対して上下方向に開閉可能に連結されている。
【0023】
旋回フレーム2の前部の一画に運転席床19が防振装置を介して取り付けられている。この防振装置は、前側の左右2個所に配置された前側の左と右の防振部材20a,20bと、後側の左右2個所に配置された後側の左と右の防振部材21a,21bとからなっている。そして前側の左と右の防振部材20a,20bは、図4と図5に示すようになっており、また後側防振部材21a,21bは図6に示すようになっている。
【0024】
前側の左と右の防振部材20a,20bは同一構成になっていて、運転席床19を上下の弾性体22a,22bにて挾持する構成になっている。23は挾持固着するボルト、24は挾持高さを設定するブッシュである。そして前側の左の防振部材20aは旋回フレーム2の基板2aより立設された支持柱25の先端に固着されたブラケット25aに固着されており、右の防振部材20bは旋回フレーム2の上板2bに固着されている。
【0025】
後側の左と右の防振部材21a,21bは同一構成になっていて、運転席床19を弾性体26にて上下方向に自由状態で支持するようになっている。そしてこの弾性体26はボルト27にて旋回フレーム2に固着されたブラケット28に固着されている。
【0026】
運転席床19の後部に運転席載置台29が取り付けてあり、この運転席載置台29上に運転席12が前後方向に位置調節可能に載置されるようになっている。
【0027】
運転室16は上記したように操縦装置11と運転席12をカバーするものであるが、この運転室16は、これの前部が上記運転席床19にボルト30にて固着され、後端部が上記運転室支持台18に後端側の左と右の防振部材31a,31bを介して取り付けられている。
【0028】
運転室16の側面形状の上部は、運転席床19の前端部からエンジン13の上部にわたる大きさになっている。そして下面形状の前側部分は、運転席床19に対向する前部分と左右部分とが運転席床19に固着されるコ字状のフランジとなって下方へ開放されている。
【0029】
また運転室16の後側部分の下面には、運転席床19の後端部から上記運転室支持台18にわたる運転室底壁32が一体状に取り付けてある。
【0030】
この運転室底壁32は横置きされたエンジン13の横側方の形状に沿う階段状に形成されていて、エンジン13の頭上からこれの側方をカバーし、運転席12側との間を隔離するようになっている。そしてこの運転室底壁32のエンジン部分とラップする階段面部が運転席12の一部載置領域となっている。このため、この運転室底壁32の階段面部より下側は、運転席載置台29と干渉するので、この部分に運転席載置台29の上下方向の投影形状にした切欠き34が設けてある。
【0031】
運転室底壁32の下端部は運転席床19の後端部に載置され、ボルト35にて固着されるようになっている。
【0032】
運転室16の後端部は上記したように運転室支持台18に後端側の左と右の防振部材31a,31bを介して取り付けられるが、この部分は図7に示すようになっている。すなわち、運転室底壁32の上端部に設けた載置部32aが運転室支持台18上に対向されており、この運転室支持台18に後端側の左と右の防振部材31a,31bを介して取り付けられる。そして、この後端側の各防振部材31a,31bは上記載置部32aを上下に挾持する弾性体36a,36bと、これを取付るボルト37と、弾性体36a,36bの挾持高さを設定するブッシュ38とからなっている。
【0033】
上記した各防振部材を構成する各弾性体はゴム部材、弾性を有する合成樹脂等、所定の強度と弾性を有する材料が用いられる。
【0034】
上記構成において、運転席床19は、これの前部が防振部材20a,20bにて上下方向に拘束された状態で、上下方向に弾性支持され、後部が防振部材21a,21bにて下方へのみ弾性支持されて旋回フレーム2に搭載される。
【0035】
運転室16は、運転席載置台29から運転席12を取り外した状態にした運転席床19上に上方から垂直状に降下して組立てる。このとき、運転室底壁32の切欠き34内に運転席載置台29が入り込んでこれと干渉しない。この状態で、運転室16の前側部分のフランジ部が運転席床19の縁部に載置され、この部分をボルト30にて運転席床19に固着する。また運転室底壁32の下端部はボルト35にて運転席床19に固着される。
【0036】
一方運転室16の後端部の載置部32aは防振部材31a,31bにて運転室支持台18に上下方向に拘束された状態で上下方向に弾性支持される。
【0037】
運転室底壁32の切欠き34と運転席載置台29との入り込む部には特に図示しないが断熱、防音等の作用を有するシール部材を介在させて、両者間の隙間を閉じる。
【0038】
上記のようにして運転席16が運転席床19と運転室支持台18に取り付けられる。そしてその後、運転席12や操縦装置11等の内装物を取り付ける。
【0039】
このように取り付けられた運転室16の前部は運転席床19を介して防振部材20a,20b,21a,21bにて旋回フレーム2に弾性支持される。また後端部は他の防振部材31a,31bにて運転室支持台18に弾性支持される。このとき、運転席床19と運転室底壁32との連結部である運転席床19の後端部を支持する防振部材21a,21bは、運転席床19を拘束マウントされないで上下方向に自由状態となっている。これにより運転室16が振動したときに、この部分に無理な振動減衰力が作用されない。
【0040】
運転室16の運転室底壁32はエンジン13と運転室16の内側に配置される運転席12とを隔離する隔壁の作用をする。また、運転室16の後端縁部は運転室底壁32にて閉じられ、この閉じられた部分で運転室支持台18に取付けられる。さらに運転室底壁32の階段部分に運転席12の一部がエンジン室側にラップした状態で運転席12が配置される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用しようとする小型のバックホーを概略的に示す側面図である。
【図2】本発明の要部を破断して示す側面図である。
【図3】本発明の要部を示す分解斜視図である。
【図4】防振部材を示す断面図である。
【図5】防振部材を示す断面図である。
【図6】防振部材を示す断面図である。
【図7】防振部材を示す断面図である。
【符号の説明】
1…走行装置
2…旋回フレーム
3…ブーム
4…アーム
5…バケット
6,7,8…油圧シリンダ
9…作業機
10…スイングブラケット
11…操縦装置
12…運転席
13…エンジン
14…ボンネット
15…カウンタウエイト
16…運転室
17…脚部
18…運転室支持台
18a…支持板
19…運転席床
20a,20b,21a,21b,31a,31b…防振部材
22a,22b,26,36a,36b…弾性体
23,27,30,37…ボルト
24,38…ブッシュ
25…支持柱
25a,28…ブラケット
29…運転席載置台
32…運転室底壁
32a…載置部。
Claims (3)
- エンジン(13)を門形に跨ぐ脚部(17)の上部に支持板(18a)を設けた運転室支持台(18)を、旋回フレーム(2)の後部側に固定すると共に、この運転室支持台(18)の前側の旋回フレーム(2)部分に運転席床(19)を取付け、上記運転席床(19)と上記運転室支持台(18)に取り付けられる運転室(16)を有する小旋回型の作業車両において、
上記運転席床(19)に運転席(12)を載置するための運転席載置台(29)を設け、
上記運転席載置台(29)が位置する運転室(16)の後側部分の下面に、運転席床(19)の後端部から上記運転室支持台(18)にわたって階段状に形成した運転室底壁(32)を設け、
上記運転室底壁(32)の階段状部に切欠き(34)を設けると共に、上記運転席載置台(29)を階段状部の切欠き(34)に入れ込ませ、運転席(12)をエンジン部分にラップする位置への取り付けを可能にし、
運転室(16)と運転席部分とを分離可能にしたことを特徴とする小旋回型の作業車両。 - 運転席床(19)を旋回フレーム(2)に防振部材(20a,20b,21a,21b)を介して支持し、上記運転席床(19)に運転室(16)の前側部分を固着し、運転室(16)の後端部を運転室支持台(18)に防振部材(31a,31b)を介して取り付けたことを特徴とする請求項1記載の小旋回型の作業車両。
- 運転席床(19)の前部を旋回フレーム(2)に防振支持する防振部材(20a,20b)と、運転室(16)の後端部を運転室支持台(18)に防振支持する防振部材(31a,31b)のそれぞれを、被支持体の上下を弾性体にて挾持し、両弾性体及び被支持体を貫通するボルトにて旋回フレーム(2)及び運転室支持台(18)側に固定する構成にし、
運転席床(19)の後部を旋回フレーム(2)に防振支持する防振部材(21a,21b)を、被支持体の下側のみに弾性体を当接して、運転席床(19)の後部を拘束しないようにした構成としたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項記載の小旋回型の作業車両。
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