JP3961284B2 - 粉体成形用樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉体成形用樹脂組成物に関し、詳しくは、耐折り皺性、耐摩耗性及びポリウレタン発泡体との接着性に優れた成形体を与える、その調製が容易な粉体成形用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のインストルメントパネル、コンソールボックス、ドアトリム、グローブボックスなどの内装部品の表皮材は、従来ほとんど軟質塩化ビニル樹脂成形品が使用されてきた。
ところが、最近は、廃品の焼却時に塩化水素を発生しない樹脂で、しかもリサイクル利用の容易なオレフィン系樹脂材料による成形品が望まれるようになっている。そのため多くのオレフィン系樹脂組成物が粉体成形用材料として提案されている(例えば、特開平5−1183号公報、特開平5−5050号公報、特開平6−170871号公報、特開平6−226763号公報、特開平7−178742号公報、特開平8−217927号公報など)。しかし、これらによると、概して成形品は、耐光性が悪く、また、従来の軟質塩化ビニル樹脂ほどの柔軟性がなく、軟化剤を添加すると成形品表面にブリードが生じてべたつくという問題があった。
【0003】
本出願人は、上記の問題点を解決すべく検討した結果、結合スチレン量が20〜50重量%で特定範囲の数平均分子量を有するスチレンとブタジエンのSBS型ブロック共重合体(S:ポリスチレンブロック、B:ポリブタジエンブロック)の水素化物(SEBS)を含む組成物が、自動車の内装材の表皮等の粉体成形材料として好適であることを見出した(特開平5−279484号公報)。さらに、上記の水素化物を用いた成形品の耐熱性を改良するためにポリプロピレン樹脂(PP)を配合する方法(特開平7−82433号公報)、さらにポリオレフィンを配合する方法(特開2000−336219公報)などが提案された。
【0004】
ところが、PPはSEBSとの相溶性が低いことから、加工性が悪く、両者が均一に混合された組成物を得ることが困難であったり、PPの高結晶性のため、スラッシュ成形における脱型の際に成形体に折り皺が生じ易いという問題があった。また、成形体を自動車のインストルメントパネルなどの内装材として使用する場合には、成形体はポリウレタン発泡体で裏打ちされた積層体として使用されるが、ポリウレタン発泡体との接着性に難があり、接着性を高める必要がある。季節によっては車内温度が高温になることもあり、成形体には室温及び高温での耐摩耗性が要求されるが、充分とはいえず改良が必要であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、製造が容易で、粉体成形における脱型時の耐折り皺性に優れ、改善された耐摩耗性ならびにポリウレタン発泡体との接着性に優れた成形体の製造が可能な粉体成形用樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく検討した結果、ポリプロピレン樹脂とオレフィン系熱可塑性エラストマーからなるポリプロピレン樹脂組成物はSEBSとの相溶性が改良され、脱型時の折れ皺も生じず、これらにポリヒドロキシ炭化水素系重合体及び変性シリコーンオイルを配合することにより、得られる粉体成形体は室温および高温での耐摩耗性にも優れ、ポリウレタン発泡体との接着性も改良されることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かくして本発明によれば、(1)(a)ポリプロピレン樹脂20〜80重量%と、(b)ポリプロピレンブロックとエチレン/プロピレンランダム共重合体ブロックとからなるプロピレン系ブロック共重合体であり、ポリプロピレンブロック成分が5〜20重量%、エチレン/プロピレンランダム共重合体ブロック成分が95〜80重量%であり、エチレン/プロピレンランダム共重合体成分は、エチレンに基づく単量体単位の割合が10〜40モル%、プロピレンに基づく単量体単位の割合が90〜60モル%であるオレフィン系熱可塑性エラストマー80〜20重量%とからなるポリプロピレン樹脂組成物20〜80重量部と、(2)芳香族系ビニル化合物−共役ジエン共重合体の水素化物80〜20重量部((1)と(2)の合計は100重量部である。)と、(3)1分子当りの平均水酸基数が1〜8個、数平均分子量が500〜20000で、ヨウ素価が100以下である両末端に水酸基を有するポリブタジエンの水素添加物(以下「水酸基含有炭化水素系重合体」とも云う)を(1)と(2)の合計量100重量部に対して1〜20重量部と、(4)分子内に水酸基または(メタ)アクリロイロキシ基を有するシリコーンオイル(以下「変性シリコーンオイル」とも云う)を(1)と(2)と(3)の合計100重量部に対して0.5〜10重量部とを含んでなる粉体成形用樹脂組成物が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で使用するポリプロピレン樹脂組成物(1)は、(a)ポリプロピレン樹脂20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%と、(b)オレフィン系熱可塑性エラストマー80〜20重量%、好ましくは70〜30重量%(但し、(a)と(b)の合計は100重量%である。)からなるものである。ポリプロピレン樹脂が少なすぎると耐熱性が低下し、多すぎると脱型時に折り皺が生じ易くなるので好ましくない。
【0008】
上記のポリプロピレン樹脂組成物(1)と芳香族系ビニル化合物−共役ジエン共重合体の水素化物(2)の割合は、(1)が20〜80重量部、好ましくは30〜70重量部、(2)が80〜20重量部、好ましくは70〜30重量部(但し(1)と(2)の合計は100重量部である。)である。ポリプロピレン樹脂組成物(1)が少なすぎると溶融性が低下し、多すぎると折れ皺が生じ易く、また成形品の耐傷付性が低下するので好ましくない。
【0009】
本発明で使用するポリプロピレン樹脂は、プロピレン単独重合体(結晶性)またはプロピレン50重量%以上と炭素数2〜12の他のα−オレフィンとの共重合体である。ここで、プロピレンと炭素数2〜12のα−オレフィンとの共重合体には、ランダム共重合体、交互共重合体ならびにリニアおよびラジアルのブロック共重合体が含まれる。これらのポリプロピレン樹脂は、通常、チーグラー・ナッタ系触媒などを用いて重合することにより製造される。上記α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1、オクテン−1などか挙げられる。ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと記す。)は特に限定されないが、JlS K7210によるMFR(荷重2.16kg、測定温度230℃、単位はg/10minである。)が5以上のものが好ましく、MFRが20以上のものがより好ましい。ポリプロピレン樹脂のMFRが小さすぎると、溶融性が悪くて成形品にピンホールが発生し易くなる恐れがあるので好ましくない。
【0010】
本発明で使用するオレフィン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントにポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを用い、ソフトセグメントにエチレン−プロピレンゴムなどのポリオレフィン系ゴムを用いた、通常TPOまたはTPEと呼ばれるものである。例えば、EPR(エチレン−プロピレン共重合ゴム)やEPDM(エチレン−プロピレン−非共役ジエンモノマー三元共重合ゴム)とPPやPP/PE(ポリエチレン)をブレンドしたもの、上記のブレンドをPPやPP/PEの溶融下にEPDM等を架橋させるいわゆる動的架橋によってPP等のマトリックス相中にEPDM等を分散させたもの(エラストマーアロイ)、リアクター(Reactor)TPOと称される、PPの重合に引き続きプロピレンとエチレンを共重合させて得られるエチレン/プロピレン共重合体(EPR)ブロック部分が多いプロピレン系ブロック共重合体などが挙げられる。これらはいずれも市販品があり、入手可能である。なかでもプロピレン系ブロック共重合体(リアクターTPO)が好ましく、トクヤマ(株)製P.E.R.として市販されている。
【0011】
前記プロピレン系ブロック共重合体(リアクターTPO)のエチレン/プロピレン共重合体ブロック成分(EPR成分)とポリプロピレンブロック成分(PP成分)の割合は、PP成分が5〜20重量%であり、EPR成分が95〜80重量%である。
また、EPR成分はエチレンとプロピレンのランダム共重合体からなり、通常、エチレンに基づく単量体単位の割合が10〜40モル%、好ましくは15〜35モル%である。さらに、プロピレン系ブロック共重合体の分子量は、135℃、テトラリン溶媒中で測定した極限粘度として6〜30dl/gであり、好ましくは10〜20dl/gである。プロピレン系ブロック共重合体の極限粘度が6dl/g未満では、弾性変形後の回復性が損なわれ、30dl/gを超えると溶融時の流動性が低下し、樹脂組成物の成形が著しく困難となる。
【0012】
本発明で使用する芳香族系ビニル化合物−共役ジエン共重合体の水素化物は、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族系ビニル化合物の少なくとも1種と、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどの共役ジエンの少なくとも1種をランダムあるいはブロック共重合させて得られるランダム共重合体またはブロック共重合体の共役ジエン単位を水素化して得られるものである。なかでも好ましいのは、水素化ブロック共重合体である。
【0013】
上記のランダム共重合体としてはスチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ブロック共重合体としてはABA型のリニアおよびラジアルブロック共重合体(Aはポリスチレンブロック、Bはポリブタジエンブロックまたはポリイソプレンブロック)が好ましいものとして挙げられる。上記の水素化されたブロック共重合体は、SEBS、SEPS(S:ポリスチレン、E:ポリエチレン、B:ポリブチレン、P:ポリプロピレン)と通常呼ばれている。これらの水素化物は、通常、重合体鎖中の不飽和二重結合の80モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上が水素化されたものである。
芳香族系ビニル化合物−共役ジエン共重合体の水素化物中の芳香族系ビニル化合物単位の含有量(以下では結合芳香族系ビニル量ということがある。)は、通常、5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である。結合芳香族系ビニル量が少なすぎると粉体成形の際にブロッキングが生じ易いので好ましくない。多すぎると成形品の硬度が増大するので好ましくない。
【0014】
本発明の粉体成形用樹脂組成物には、上記の重合体成分(1)と(2)にさらに、(3)水酸基含有炭化水素系重合体と、(4)変性シリコーンオイルが配合される。
本発明で使用する水酸基含有炭化水素系重合体は、分子内に1分子当りの平均水酸基数(以下「水酸基数」という。)が1〜8個の水酸基を有し、数平均分子量が500〜20000の範囲、好ましくは1000〜15000の範囲であり、分子中に含まれる二重結合がヨウ素価で100以下の重合体である。
【0015】
このような水酸基含有炭化水素系重合体の製造方法は、特に制限されず、例えば、、各種ビニルモノマー、ジエン系モノマーをラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の重合法で重合し、末端を水酸基化した上で、必要に応じて公知の手法で水素添加する方法が挙げられる。その他の方法としては、イソブチレン−ジエン系モノマー共重合体、あるいはオレフィン(たとえばエチレン、プロピレンなど)−非共役ジエン(又は共役ジエン)共重合体を酸化分解した後、還元する方法などが挙げられる。なかでも、水酸基含有ジエン系重合体の水素添加物が好ましく、例えばポリブタジエンポリオールの二重結合を水素添加した物が好ましい。
【0016】
前記水酸基含有ジエン系重合体は、共役ジエンまたは、共役ジエンとビニルモノマーを公知の方法、例えば、ラジカル重合、アニオン重合等によって得ることができる。ラジカル重合による場合、過酸化水素を重合開始剤として重合すれば、直接、生成重合体末端に水酸基を有する共役ジエン系ポリマーまたはコポリマーが得られる。アニオン重合による場合、先ずアニオン重合触媒を用いて末端に、例えば、アルカリ金属が結合したリビングポリマーを重合し、次いでリビングポリマーとモノエポキシ化合物、ホルムアルデヒドなどを反応させた後、加水分解することにより末端に水酸基を有するポリマーを得ることができる。原料の共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられるが、なかでも1,3−ブタジエンが好ましい。共重合成分としては、スチレン、アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等のビニルモノマーが挙げられる。共重合成分の使用量は総モノマー量の30重量%以下が好ましい。
【0017】
前記水酸基含有ジエン系重合体は、ニッケル、コバルト、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウ等の水素化触媒を単独であるいは担体に担持して、常法により、水素加圧下において水素添加される。その際、成形体とポリウレタン発泡体との充分な密着性、耐候性を得るために、水酸基含有ジエン系重合体中に含まれる二重結合は、ヨウ素価が100以下、好ましくは50以下、さらに好ましくは20以下となるように水素添加される。
【0018】
上記の水酸基含有炭化水素系重合体は、市販品(三菱化学社製ポリテール(低分子量ポリオレフィン系ポリオール))があり、入手可能である。
水酸基含有炭化水素系重合体は、前記の重合体成分(1)と(2)の合計100重量部に対して1〜20重量部、好ましくは2〜10重量部の割合で使用される。使用量が少なすぎると成形体とポリウレタン発泡体との接着性が不充分となり、多すぎると水酸基含有炭化水素系重合体の分子量によっては成形体表面にブリードする恐れがある。
【0019】
また、本発明においては、水酸基含有炭化水素系重合体とともに、成形体とポリウレタン発泡体との接着性を高めるために、該発泡体形成原料液中のイソシアネート化合物との反応を促進させる触媒として、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジステアレートなどの有機錫化合物、テトラアルキルエチレンジアミン、N,N′−ジアルキルベンジルアミンなどの第3級アミン化合物、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛などの脂肪酸塩、アルカリ金属のカルボン酸塩などを使用することが好ましい。これらの触媒の使用量は、本発明の樹脂組成物100重量部当り0.01〜5重量部程度である。
【0020】
本発明で使用する変性シリコーンオイルは、ポリシロキサンに官能基を導入したシリコーンオイルであり、官能基を側鎖、両末端、側鎖と両末端の両方及び片末端に導入したものの4種に大別される。官能基としては、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、エポキシ基、不飽和結合((メタ)アクリロイロキシ基、ビニル基など)のいずれか1種又は2種が導入される。分子量はオリゴマーから数万程度であり、種々の変性シリコーンオイルが市販されている。代表的な変性シリコーンオイルの化学構造を一般式(1)〜(4)に示すが、これらに限定されるものではない。好ましい官能基は水酸基、(メタ)アクリロイロキシ基である。変性シリコーンオイルの分子量は、とくに限定されないが、通常1,000〜30,000程度である。
【0021】
【0022】
変性シリコーンオイルは、前記の重合体成分(1)と(2)と、水酸基含有炭化水素系重合体(3)との合計100重量部に対して、0.5〜10重量部、好ましくは1〜5重量部の割合で使用される。変性シリコーンオイルの使用割合が少なすぎると成形体の耐摩耗性は改良されず、多すぎると成形体表面にブリードし、ポリウレタン発泡体との接着性を低下させる恐れがある。
【0023】
本発明の樹脂組成物には、所望により各種添加剤を配合することができる。配合剤としては、例えば、成形時の離型性向上および貯蔵時のブロッキング防止のために、バリウムステアレート、カルシウムステアレート、マグネシウムステアレート、亜鉛ステアレート、アルミニウムステアレートなどの金属石鹸類、多価アルコールの脂肪酸エステル類を必要により添加することができる。その他の添加剤として、公知の各種安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料などを添加することができる。また、公知の可塑剤もべたついたり、成形性を損なわない範囲で添加することができる。
【0024】
さらに、本発明の趣旨が損なわれない範囲で、上記の重合体成分以外の重合体を併用することもできる。このような重合体としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、エチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA樹脂)、ノルボルネン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブタジエン樹脂などが挙げられる。さらに、スチレンなどの芳香族系ビニル化合物とエチレン、プロピレンなどのα−オレフィンを特開平3−7705号公報、特開平7−70223号公報や特開平10−168112号公報などに記載の方法で共重合させて得られる芳香族系ビニル化合物−α−オレフィン共重合体などが挙げられる。これらの他の重合体の使用量は、本発明の樹脂組成物中40重量%以下、好ましくは30重量%以下の範囲である。
【0025】
本発明の粉体成形用樹脂組成物は、前記の各成分が前記の割合で含まれている限り、製造方法は特に限定されるものではない。また、使用する各重合体成分の形態や形状なども特に制限されない。製造方法としては、例えば、全重合体成分を一括して混合機に投入して混合し、次いで水酸基含有炭化水素系重合体及び変性シリコーンオイルと混合する方法、先ずポリプロピレン樹脂組成物を、ロール、一軸あるいは二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等の通常の混合機を用いて調製し、これと芳香族系ビニル化合物−共役ジエン共重合体の水素化物とを上記と同様にして混合し、さらに残りの成分と混合して製造する方法などが挙げられる。
【0026】
本発明の粉体成形用樹脂組成物は、粉末状で使用される。樹脂組成物を粉末にするには、ターボミル、ローラミル、ボールミル、遠心力粉砕機、パルベライザーなどの従来公知の粉砕機を用いて粉砕することにより、粉体流動性に優れた粉末状樹脂組成物を調整することができる。粉末の粒径は、通常、50〜500μm、好ましくは100〜300μmの範囲である。この平均粒径が小さすぎると粉砕工程の効率が悪い上に貯蔵時に凝集しやすく、逆に大きすぎると、成形品のキメが荒くなり、厚さの薄い成形品の場合にはピンホールが発生し易くなるので好ましくない。
【0027】
このような粉末状の本発明の粉体成形用樹脂組成物は、粉体スラッシュ成形、流動浸漬成形または粉体回転成形などの種々の粉体成形方法に適用でき、特にインストルメントパネル、ヘッドレスト、コンソールボックス、ドアトリム、アームレストなどの自動車内装品の表層用の粉体成形材料として好適に使用することができる。
【0028】
【実施例】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、部数および%は特に断りのない限り重量基準である。また、試験方法は下記のとおりである。
【0029】
(1)耐折り皺性
粉体成形用樹脂組成物粉体を用いてスラッシュ成形し、シート状成形品(厚さは約1mm)を折曲げ皺が残らないようにして金型から離型し、15×50mmの試験片を切り取る。この試験片を23℃の室内で180度折り曲げ、その状態で水平面に置き、1kgの分銅を10秒間載せた後取り除き、充分に形状が回復した後に水平面と折り曲げシートとの角度を測定する。同様にして65℃において実施する。数値が小さい程、耐折り曲げ性は良好である。
【0030】
(2)耐摩耗性
(1)と同様にして切り取った30×80mmの試験片を、それが往復移動可能なテーブル上に載置し、幅20mmの鋼製摩擦子(金巾3号を4枚重ねて被覆したもの)を試験片上にのせ、これに2.5kgfの荷重を掛け、試験片の表面を60サイクル/分の速さで5往復させ、その時の試験片の表面の白化度合いを観察した。結果の表示は以下のとおりである。
◎:白化しない
○:わずかに白化する
×:白化する
【0031】
(3)耐熱性
(1)と同様にして切り取った150×100mmの試験片を、120℃のオーブンに100時間放置する。その後取り出した試験片を室温で1時間放置し、表面のべとつきの程度を触手にて評価した。結果の表示は以下のとおりである。
○:表面がべたつかない
×:表面がべたつく
【0032】
(4)発泡ポリウレタン層との接着性
(1)と同様にして切り取った145×200mmの試験片を147(縦)×217(横)×10(深さ)mmの金型に入れ、発泡ポリウレタン形成液(官能基数2.7のポリメリックMDI(4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート)16g、ポリエーテルポリオール(3官能性、水酸基価50)(トリエチレンジアミン1.0%、水1.6%を含む)31.4gの混合物)を注ぎ、金型を密閉する。金型を常温で10分放置した後、金型からポリウレタン発泡層が積層した試験片を取り出し、試験片を発泡層から剥し、凝集破壊した発泡層の面積を測り、試験片の全面積に占める割合を求める。この割合が大きいほど接着性は良好である。
○:90〜100%
△:80%〜90%未満
×:80%未満
【0033】
実施例1〜6、比較例1〜6
表1に示す種類および量の各重合体成分を二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35B)により混練し、ペレット化した後、ターボミルにて粉砕し、粉末状の各粉体成形用樹脂組成物を得た。得られた各粉末状樹脂組成物を用い、スラッシュ成形による溶融性の試験をするとともに、得られたシートを用いて耐折り皺性、耐摩耗性、耐熱性を評価した。結果を表1および表2に示す。
【0034】
【0035】
(注)(1)サンアロマー社製 PM940M(MFR30)
(2) 同 上 サンアタック(アタクチックPP)
(3)トクヤマ社製 P.E.R.M142E(リアクターTPO)
(4)旭化成社製 タフテックH1221(結合スチレン量12%)
(5)三菱化学社製 ポリテールH(水酸基価37〜53、ヨウ素価5 以下)
(6)三菱化学社製 ポリテールHA(水酸基価41〜55、ヨウ素価5以下)
(7)GE東芝シリコーン社製 XF−42−B0970(水酸基変性シリコーンオイル)
(8)チッソ社製 サイラプレーンFM−0721
【0036】
表1からPP樹脂組成物とSEBSとの混合物にポリヒドロキシ炭化水素重合体および変性シリコーンオイルを配合した場合(実施例1〜6)は、折曲げ角度が小さいことから耐折り皺性が良好であり、耐摩耗性、耐熱性およびポリウレタン発泡体との接着性が良好であることが分かる。
これに対して、水酸基含有炭化水素系重合体および変性シリコーンオイルを配合しない場合(比較例1)は、ポリウレタン発泡体との接着性が改善されないばかりか、耐摩耗性も不良である。変性シリコーンオイルが配合されていない場合(比較例2、4)は、耐摩耗性が不良である。さらに、水酸基含有炭化水素系重合体を配合しない場合(比較例3、5)は、ポリウレタン発泡体との接着性が改良されないことが分かる。また、オレフィン系エラストマーを混合しない場合(比較例6)は、折曲げ角度が大きく、耐折れ皺性は改良されず、耐摩耗性とポリウレタン発泡体との接着性も不良である。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、製造が容易で、耐折り皺性、耐熱性、耐摩耗性などに優れた粉体成形品が得られる粉体成形用樹脂組成物が提供される。
Claims (2)
- (1)(a)ポリプロピレン樹脂20〜80重量%と、(b)ポリプロピレンブロックとエチレン/プロピレンランダム共重合体ブロックとからなるプロピレン系ブロック共重合体であり、ポリプロピレンブロック成分が5〜20重量%、エチレン/プロピレンランダム共重合体ブロック成分が95〜80重量%であり、エチレン/プロピレンランダム共重合体成分は、エチレンに基づく単量体単位の割合が10〜40モル%、プロピレンに基づく単量体単位の割合が90〜60モル%であるオレフィン系熱可塑性エラストマー80〜20重量%とからなるポリプロピレン樹脂組成物20〜80重量部と、(2)芳香族系ビニル化合物−共役ジエン共重合体の水素化物80〜20重量部((1)と(2)の合計は100重量部である。)と、(3)1分子当りの平均水酸基数が1〜8個、数平均分子量が500〜20000で、ヨウ素価が100以下である両末端に水酸基を有するポリブタジエンの水素添加物を(1)と(2)の合計量100重量部に対して1〜20重量部と、(4)分子内に水酸基または(メタ)アクリロイロキシ基を有するシリコーンオイルを(1)と(2)と(3)の合計100重量部に対して0.5〜10重量部とを含んでなる粉体成形用樹脂組成物。
- 芳香族系ビニル化合物と共役ジエンとの共重合体の水素化物が、芳香族系ビニル化合物と共役ジエンとのブロック共重合体の水素化物である請求項1に記載の粉体成形用樹脂組成物。
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