JP3959813B2 - 化粧シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷およびエンボスの施されたオレフィン樹脂系化粧シートに関し、木質系ボード類、無機系ボード類、金属板等の表面へ貼り合わせて化粧板として用いる化粧シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、前記の用途に用いられる化粧シートとしては塩化ビニルシートが一般的であった。しかし、塩化ビニル樹脂は焼却時の塩化水素ガス発生や酸性雨、ダイオキシン発生の要因になり、環境問題の観点から塩化ビニルの持つ柔軟性、耐摩耗性、耐薬品性、耐候性などを備えた代替樹脂シートが要求されつつある。
【0003】
そこで、塩化ビニル樹脂に替わる樹脂としてオレフィン系の熱可塑性樹脂シートの使用が考えられるが、熱や光による酸化、分解が起こりやすく、また実用上の耐候性を得るために、添加剤が必要である。
【0004】
添加剤としては酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤が不可欠で、種類としてはとくに限定されないが、酸化防止剤としてはフェノール系、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、光安定剤としてはヒンダードアミン系が一般的に用いられている。紫外線吸収剤は、主にフィルムおよび樹脂の内部においての耐脆化、光安定剤はフィルムおよび樹脂の表面の耐脆化に効果を表す。
【0005】
このうち、表面の耐脆化に効果を示すヒンダードアミン系の光安定剤は、アミン系化合物であるため、酸による攻撃があった場合には中和反応を起こし、耐候性としての効果が低下する。
【0006】
すなわち、例えば内装用として用いた場合、殺虫剤、酸性洗剤などの酸性物質によって光安定剤に何らかの影響がおよび耐候性が低下する可能性がある。また、窓枠などに用いた場合、直接さらされるわけではないが酸性をおびた雨によって耐候性が劣化する可能性がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような問題点に着目してなされたもので、特に酸性物質に曝されても耐候性が低下しない、耐候性に優れた化粧シートを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は下記手段によって解決できる。
すなわち、請求項1の発明は、
基材フィルムにインキ絵柄層、接着層を順次設け、表層にエンボスが施されたオレフィン樹脂系フィルムを積層し、さらに表面となる最外面にトップコート層を有する化粧シートにおいて、オレフィン樹脂系フィルムの樹脂に対して、アミノエーテル型光安定剤(TINUVIN123:チバスペシャルティケミカルズ(株)製)を該樹脂固形分に対して1重量部添加したことを特徴とする化粧シートである。
【0009】
請求項2の発明は、
エンボスが施された透明オレフィン樹脂系フィルムの片面にインキ絵柄層、接着層を順次設け、さらに一方の面の表面となる最外面にトップコート層を有する化粧シートにおいて、オレフィン樹脂系フィルムの樹脂に対して、アミノエーテル型光安定剤(TINUVIN123:チバスペシャルティケミカルズ(株)製)を該樹脂固形分に対して1重量部添加したことを特徴とする化粧シートである。
【0010】
請求項3の発明は、
請求項1または2記載の化粧シートにおいて、前記トップコート層にアミノエーテル型光安定剤(TINUVIN123:チバスペシャルティケミカルズ(株)製)を該樹脂固形分に対して1重量部添加したことを特徴とする化粧シートである。
【0011】
請求項4の発明は、
請求項1乃至3記載の何れかの化粧シートにおいて、オレフィン樹脂系フィルムまたはトップコート層の樹脂に対して、アミノエーテル型光安定剤(TINUVIN123:チバスペシャルティケミカルズ(株)製)が1重量部、紫外線吸収剤が0〜5重量部添加されたことを特徴とする化粧シートである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき図に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明による化粧シートの一例を示す断面図である。
裏面にプライマー層5を有する基材フィルム1のもう一方の面にインキ絵柄層2、接着剤層3を順次設け、さらにこれらの層を介して設けた、アミノエーテル型光安定剤が添加されたオレフィン系樹脂層4の表層に施されたエンボス凹部6に、後に着色した充填インキ7を埋め込み、さらに最外表面に、必要に応じてアミノエーテル型光安定剤が添加されたトップコート層8を設けた構成からなる化粧シートである。
【0013】
図2は、本発明による化粧シートの他の例を示した断面図である。
片面にインキ絵柄層2、接着層3を順次設けたアミノエーテル型光安定剤が添加された透明オレフィン樹脂系フィルム4の表層に施されたエンボス凹部6に、後に着色した充填インキ7を埋め込み、さらに最外表面に、必要に応じてアミノエーテル型光安定剤が添加されたトップコート層8を設けた構成からなる化粧シートである。
【0014】
基材フィルムに用いられる樹脂は、オレフィン系、エチレンビニルアルコール(EVA)系、ポリエチレンフタレート(PET)およびこれらの変成樹脂が挙げられる。また、化粧シートとしての隠蔽性を確保するために、無機顔料などにより任意に着色を行う必要がある。さらに、耐候性向上のために酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤が適宜加えられるが、使用するフィルムの種類に応じて、これらの添加剤の種類、添加量を選択すれば良く、特に限定されるものではない。
【0015】
絵柄層のインキおよび接着剤は、その凝集力および汎用性からポリエステルポリオールを主成分としたウレタン系樹脂が最適である。インキの凝集力を向上させるために、イソシアネートを添加するのが効果的である。
【0016】
オレフィン樹脂系フィルム層に用いられる樹脂は、ポリプロピレンのホモポリマー、ランダム重合ポリマー、ブロック重合ポリマーなどが挙げられる。 軟質成分として低密度ポリエチレン、α−オレフィン、エチレン−プロピレン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムなどを5〜30%添加した樹脂が最適である。
これらの添加によって、化粧シートを合板・中質繊維板(以下MDF)等の木質材料に接着後、Vカット加工の際に白化することもなく、表面の耐傷性も向上する。
【0017】
従来、化粧シートの耐候性を改良向上するために、光安定剤は、-NH または-NR (R :アルキル基)の構造をもつヒンダードアミン系が良く用いられる。
しかし、従来のヒンダードアミン系では構造上ニトロオキサイドラジカル生成上時間がかかるものがあり、オレフィン樹脂中に過酸化物ラジカルを捕獲できない場合があった。また、酸性の物質またはその雰囲気においては、中和反応として働くためにその効果が低下する場合があった。
【0018】
本発明の化粧シートの耐候性を向上改良する目的で、オレフィン樹脂系フィルム層にアミノエーテル型光安定剤添加する。
アミノエーテル型光安定剤は、酸素、紫外線などにより酸化され、ニトロオキサイドラジカルを生成し、オレフィン系樹脂中に生成したアルキルラジカルを捕獲し、アミノエーテル(-NOR)の構造をとり、さらにアルキルラジカルおよび過酸化物ラジカルを捕獲することで、その役割を果たし耐候性を保持する。
アミノエーテル型光安定剤の添加量は、オレフィン樹脂系フィルム層の樹脂に対して0.01〜5重量部添加するが、0.1〜2重量部の範囲の添加量が望ましい。
【0019】
さらに、本発明の化粧シートの耐候性を向上改良する目的で、必要に応じて、アミノエーテル型光安定剤と紫外線吸収剤を併用することもできる。
使用する紫外線吸収剤は、特に限定されるものではないが、アミノエーテル型光安定剤と紫外線吸収剤の組み合わせによって効果は様々である。紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シュウ酸アニリド系およびシアノアクリレート系の紫外線吸収剤等が挙げられる。ただし、後述のトップコートとの密着性も考慮し、さらにブリードしにくいもの、耐熱性の高いものを選ぶ必要がある。
紫外線吸収剤の添加量は、オレフィン樹脂系フィルム層の樹脂に対して0〜5重量部添加する。使用されるオレフィン系樹脂の種類、紫外線吸収剤の種類に応じて適宜上記の添加量の範囲内で変更できる。
【0020】
シート表面へのエンボスの付与は、エンボス版を用いた熱圧による方法があるが、オレフィン系のシートはその熱安定性から塩化ビニル樹脂シートと比較してその加工温度範囲が狭く、エンボスの再現性が悪い。
【0021】
エンボス付与には、オレフィン樹脂系フィルム層にエンボスを施すことによってインキ層の絵柄との複合による意匠性の向上が可能である。
オレフィン系樹脂を押出機を用いて溶融押出した後に、エンボス冷却ロールにて加圧・冷却することでエンボスが再現よく付与される。このときに、エンボスシートをまきとり、後加工で印刷済みのオレフィン系樹脂シートとドライラミ法によって接着することも可能であり、また押出と同時に印刷オレフィン系樹脂シートと接着することも可能である。
【0022】
化粧シートの意匠性を向上させるために、エンボス凹部にはウレタン系のインキ7を充填することも可能である。また、トップコート層を設けることも可能である。トップコート層はアクリルポリオールを主成分とし、イソシアネートを添加したウレタン系樹脂がシート表面硬度の向上に適している。
【0023】
イソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4'- ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等があげられる。耐候性上色変化が少ないヘキサメチレンジイソシアネートが望ましいが、特に限定されるものではない。
【0024】
本発明の化粧シートの耐候性を向上改良する目的で、トップコート層にアミノエーテル型光安定剤添加する。さらに、必要に応じて、アミノエーテル型光安定剤と紫外線吸収剤を併用することもできる。
アミノエーテル型光安定剤および紫外線吸収剤の添加量は、オレフィン樹脂系フィルム層の樹脂に対して添加する場合と同様、アミノエーテル型光安定剤は、トップコート層の樹脂に対して0.01〜5重量部添加するが、0.3〜5重量部の範囲の添加量が望ましい。また、紫外線吸収剤はトップコート層の樹脂に対して0〜5重量部添加する。使用するトップコート層の樹脂の種類、紫外線吸収剤の種類に応じて適宜上記の添加量の範囲内で変更できる。
樹脂からブリードしやすいものは硬化が経時によって著しく変化する可能性があり(すなわち、時間とともに耐候性が低下し)、注意が必要である。
【0025】
プライマー層は、木質材料と接着するための接着剤によって適宜選択すればよいが、汎用性・グラビア塗工適性・熱安定性などから2液型ウレタン系樹脂が好適である。ポリオレフィン系樹脂、EVA系樹脂、PETは、コロナ処理・薬剤処理といった表面処理を行わないと、接着剤を塗布しても十分な接着力を塩化ビニル樹脂ほど得ることができない。さらに、表面処理後、上記プライマー層を適宜設けることで、より接着剤の密着性およびその安定性が向上する。
【0026】
【実施例】
以下実施例によって本発明を詳細に説明する。
<実施例1>
オレフィン系フィルムとして厚さ100μm のPE系樹脂着色シート(理研ビニル工業(株)製)表面に、印刷層としてウレタン系インキ(ラミスターインキ:東洋インキ製造(株)製)で木目柄を施して設け、接着剤層としてウレタン系接着剤
(タケネートA3210:武田薬品工業(株)製)を塗布した後、別に作製しておいたエンボスつきのオレフィン系樹脂からなるフィルムを貼り合わせて化粧シートとした。
この化粧シートのエンボス面に表面処理を施した後、トップコート樹脂としてウレタン系樹脂(URV238ワニス:東洋インキ製造(株)製)に、硬化剤(UR150Bワニス:東洋インキ製造(株)を10重量部添加したものに、耐候性処方剤としてベンゾフェノン系紫外線吸収剤(TINUVIN326:チバスペシャルティケミカルズ(株)製)を樹脂固形分に対して0.5部、アミノエーテル型光安定剤(TINUVIN123:チバスペシャルティケミカルズ(株)製)を樹脂固形分に対して1重量部添加したものを用いて、5g/m2 の塗布量でグラビアコートした。 また、一方では上記の耐候性処方剤のうち、光安定剤をヒンダードアミン系(TINUVIN622:チバスペシャルチケミカルズ(株)製)を樹脂固形分に対して1重量部添加したもので、5g/m2 の塗布量でグラビアコートした。
さらに、対照用として、耐候性処方剤のうち紫外線吸収剤のみ上記の量だけ配合したもの、また耐候性処方剤を全く添加しないものも同時にテストした。
以上のサンプルに対して、市販の酸性殺虫剤を噴霧乾燥させた後、耐候性試験機であるメタルウェザ試験機において、ブラックパネル温度83℃で150h照射後、接着剤を介したフィルムの状態を目視し、かつ接着剤を介してラミネートしたシートの層間剥離強度を測定した。
結果を表1に示す
【0027】
【表1】
【0028】
上記の耐候性試験の結果では、化粧シートのトップコート層およびエンボスフィルム層の状態の脆化が少なく、優れた耐候性を示すのは、アミノエーテル型光安定剤を配合したものであった。また、副次的な結果ではあるが、光安定剤と紫外線吸収剤を併用することで、効果が向上することが明らかであった。
【0029】
<実施例2>
12μm PETフィルム(E5102:東洋紡績(株)製)を表面処理した後、ウレタン系インキ(ラミスター:東洋インキ製造(株)製)で絵柄を施した。一方、オレフィン系樹脂(ジェイアロマー:日本ポリオレフィン(株)製)に、光安定剤および紫外線吸収剤を下記表2のように添加して、押出によって100μm で製膜し、エンボス付与を行っった。
両者をウレタン系接着剤(AD502:東洋モートン(株)製)でドライラミネートしてから耐候性試験機であるサンシャインウェザオメータでブラックパネル温度63℃で1000h照射した。このとき、試験機中の水分はPH5.5〜6.3であった。
結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
上記の耐候性試験の結果では、アミノエーテル型HALSであるTINUVIN123が良好であることが明らかであった。また、紫外線吸収剤の効果との併用が望ましいことが明らかであった。
【0032】
<実施例3>
熱可塑性オレフィン系樹脂(ジェイアロマー:日本ポリオレフィン(株)製)に対して、下記の耐候性処方で配合を行い、樹脂を押出して200μm のシート成形を行った。
得られたシートに対して実施例2と同様の配合でシート成形・耐候性テストを行い、シートの破断強度を測定した。
【0033】
【表3】
【0034】
上記の表3に示した耐候性試験結果からも、アミノエーテル型HALSを用いるのが良好であることが明らかであった。
【0035】
【発明の効果】
本発明は、既に詳細に説明したように、基材フィルムにインキ絵柄層、接着層を順次設け、表層にエンボスが施されたオレフィン樹脂系フィルムを積層し、さらに表面となる最外面にトップコート層を有した化粧シートまたエンボスが施された透明オレフィン樹脂系フィルムの片面にインキ絵柄層、接着層を順次設け、さらに一方の面の表面となる最外面にトップコート層を有した化粧シートにおいて、オレフィン樹脂系フィルムの樹脂に対して、アミノエーテル型光安定剤を0.01〜5重量部、また必要に応じて、紫外線吸収剤を0〜5重量部併用添加することによって、従来技術では得られない酸性物質に曝されても耐候性が低下しない、耐候性に優れた化粧シートを提供することができた。
さらに、本発明の化粧シートを構成するトップコート層の樹脂に対しても同様に、アミノエーテル型光安定剤を0.01〜5重量部、また必要に応じて、紫外線吸収剤を0〜5重量部併用添加することによって、一層、耐候性に優れ、実用に供することのできる化粧シートを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧シートの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の化粧シートの他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基材フィルム
2 インキ絵柄層
3 接着層
4 オレフィン樹脂系フィルム層
5 プライマー層
6 エンボス凹部
7 充填インキ
8 トップコート層
Claims (4)
- 基材フィルムにインキ絵柄層、接着層を順次設け、表層にエンボスが施されたオレフィン樹脂系フィルムを積層し、さらに表面となる最外面にトップコート層を有する化粧シートにおいて、オレフィン樹脂系フィルムの樹脂に対して、アミノエーテル型光安定剤(TINUVIN123:チバスペシャルティケミカルズ(株)製)を該樹脂固形分に対して1重量部添加したことを特徴とする化粧シート。
- エンボスが施された透明オレフィン樹脂系フィルムの片面にインキ絵柄層、接着層を順次設け、さらに一方の面の表面となる最外面にトップコート層を有する化粧シートにおいて、オレフィン樹脂系フィルムの樹脂に対して、アミノエーテル型光安定剤(TINUVIN123:チバスペシャルティケミカルズ(株)製)を該樹脂固形分に対して1重量部添加したことを特徴とする化粧シート。
- 請求項1または2記載の化粧シートにおいて、前記トップコート層にアミノエーテル型光安定剤(TINUVIN123:チバスペシャルティケミカルズ(株)製)を該樹脂固形分に対して1重量部添加したことを特徴とする化粧シート。
- 請求項1乃至3記載の何れかの化粧シートにおいて、オレフィン樹脂系フィルムまたはトップコート層の樹脂に対して、アミノエーテル型光安定剤(TINUVIN123:チバスペシャルティケミカルズ(株)製)が1重量部、紫外線吸収剤が0〜5重量部添加されたことを特徴とする化粧シート。
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