JP3958867B2 - 着色ポリエステルフィルムの製造方法、着色ポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法、および缶の加工方法 - Google Patents
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Description
【本発明の属する技術分野】
本発明は、着色ポリエステルフィルムの製造方法、着色ポリエステルフィルムを被覆してなる被覆金属板の製造方法、および着色ポリエステルフィルム被覆金属板を用いた缶の加工方法に関する。より詳細には、隠蔽性に優れ、かつ金属板へのラミネートが容易な着色ポリエステルフィルムの製造方法、および下地金属の優れた隠蔽性を有し、かつ製缶性に優れた着色ポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法、さらに缶に成形加工した後の表面欠陥が少ない着色ポリエステルフィルム被覆金属板を用いた缶の加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ポリエステルフィルムのような熱可塑性樹脂からなるフィルムを金属板の両面にラミネートした材料が、絞り缶や薄肉化絞り缶などのような厳しい成形加工が施される食缶および飲料缶用途に多量に使用されている。これらの用途に用いられる缶は、コスト低減の観点からさらに加工条件を厳しくした薄肉化絞り加工やしごき加工を施して製造されるようになってきている。このような厳しい成形加工を施す場合、金属板の薄肉化にともなって樹脂フィルムも薄フィルム化する。食缶や飲料缶の外面は意匠性を高めるために一般に印刷が施されるが、樹脂フィルム被覆金属板から成形された缶においては、その印刷下地として金属板の色を隠蔽するために、白色または様々な色の顔料を含んだ樹脂フィルムを金属板にラミネートしたものが使用されている。このようなラミネート金属板に厳しい加工を施した場合、樹脂の厚さは元の厚さより大幅に薄くなり、添加した顔料の厚さ方向の絶対量が減少するため、下地の十分な隠蔽性が得られないという問題が発生する。またこのような厳しい薄肉化加工による樹脂厚さの低減を見越して顔料を予め多量に樹脂フィルム中に添加した場合には樹脂フィルムの強度が低下し、加工時に樹脂フィルムが削れたり疵付きやすくなり、さらには樹脂フィルムが割れて剥げ落ちたりする現象が発生し、隠蔽性を向上させ、なおかつ被覆した樹脂フィルムの強度を高く保つことを同時に満足させることは極めて困難である。
【0003】
また、金属板を被覆するために用いる樹脂フィルムを例えばニ軸延伸法を用いて製造する場合、顔料を多く含んだフィルムは延伸工程中にフィルムが千切れてしまうことが多く、厳しい加工を施して成形する飲料缶に要求される十分な隠蔽性を有するニ軸延伸フィルムを製造することが極めて困難になっている。一方、加熱溶融した樹脂を押出し、延伸することなくそのままフィルムとしたる未延伸フィルムの場合は、多量の顔料を含有させたフィルムを製造することは可能であるが、得られたフィルムは非常に脆く、金属板にラミネートすることは極めて困難となる。仮に金属板にラミネートしたとしても、樹脂フィルムは非常に脆いために、缶に成形する際に樹脂フィルムが削れたり、樹脂フィルムに疵が付くなど、成形欠陥が多発するという問題は解消されない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような厳しい加工が要求される缶に使用された場合も下地の金属板に対して優れた隠蔽性を有し、かつ金属板へのラミネートが容易な着色ポリエステルフィルムの製造方法、および缶に成形する際に樹脂フィルムが削れたり疵付いたり、また剥離したりすることのない製缶性に優れた着色ポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法、さらに缶に成形加工した後の表面欠陥が少ない着色ポリエステルフィルム被覆金属板を用いた缶の加工方法を提供することを課題とする。
【0005】
本発明の請求項1に記載の着色ポリエステルフィルムの製造方法は、表層、芯層及び裏層の3層からなるポリエステルフィルムの製造方法において、固有粘度(η)が0.5〜1.3のポリエステル樹脂に、粒径0.05〜2μmの着色顔料を10〜60重量%含有させて加熱溶融混練し押出機を用いて芯層用の着色顔料含有樹脂ペレットを製造し、
前記ポリエステル樹脂と同一組成で前記芯層の固有粘度よりも大きい表層及び裏層用の着色顔料非含有樹脂ペレットを製造し、前記芯層用着色顔料含有樹脂ペレットを芯層を製造するための押出機にて加熱溶融し、前記表層及び裏層用着色顔料非含有樹脂ペレットを表層及び裏層を製造するための押出機にて加熱溶融し、これらの3台の押出機を用いて共押出ダイより押出して、4〜40μm厚の芯層の両面に、0.5〜10μm厚の表層及び裏層を積層して総厚み5〜50μmの3層フィルムとすることを特徴とする。
請求項2に記載の着色ポリエステルフィルムの製造方法は、表層、芯層及び裏層の3層からなるポリエステルフィルムの製造方法において、固有粘度(η)が0.5〜1.3のポリエステル樹脂に、粒径0.05〜2μmの着色顔料を10〜60重量%含有させて加熱溶融混練し押出機を用いて芯層用の着色顔料含有樹脂ペレットを製造し、前記ポリエステル樹脂と同一組成で前記芯層の固有粘度よりも大きいポリエステル樹脂に、粒径0.05〜2μmの着色顔料を1〜30重量%でかつ前記芯層の含有量以下含有させて加熱溶融混練し押出機を用いて表層及び裏層用の着色顔料含有樹脂ペレットを製造し、前記芯層用着色顔料含有樹脂ペレットを芯層を製造するための押出機にて加熱溶融し、前記表層及び裏層用着色顔料非含有樹脂ペレットを表層及び裏層を製造するための押出機にて加熱溶融し、これらの3台の押出機を用いて共押出ダイより押出して、4〜40μm厚の芯層の両面に、0.5〜10μm厚の表層及び裏層を積層して総厚み5〜50μmの3層フィルムとすることを特徴とする。
請求項3に記載の着色ポリエステルフィルムの製造方法は、請求項1又は2において、前記ポリエステルフィルムがエチレンテレフタレート、エチレンイソフタレート、ブチレンテレフタレート、およびビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とテレフタル酸のエステル化物より選択された少なくとも一種類以上の単位を主体とする樹脂からなることを特徴とする。
請求項4に記載の着色ポリエステルフィルムの製造方法は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記表層、芯層、および裏層の3層からなるポリエステルフィルムが未延伸フィルムであることを特徴とする。
請求項5に記載の着色ポリエステルフィルムの製造方法は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記着色顔料が二酸化チタンであることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項6に記載の着色ポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法は、請求項1〜5のいずれかに記載の着色ポリエステルフィルムの製造方法によって製造された着色ポリエステルフィルムを、金属板の少なくとも片面に積層することを特徴とする。
請求項7に記載の着色ポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法は、請求項6において、前記金属板が、ぶりき、ティンフリースチール、またはアルミニウム合金板であることを特徴とする。
請求項8に記載の缶の加工方法は、請求項6または7に記載の着色ポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法によって得られた着色ポリエステルフィルム被覆金属板を、着色ポリエステルフィルムが缶外面になるように加工することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は、表層および裏層を透明樹脂層または着色顔料を若干含有させた着色樹脂層とし、表層と裏層の間に着色顔料を多量に含有させた着色樹脂層を芯層として設けた3層からなる未延伸の着色ポリエステルフィルムであり金属板へ容易にラミネートすることが可能である。またこの未延伸の着色ポリエステルフィルムを被覆してなる金属板は、下地となる金属板の隠蔽性にすぐれ、かつ厳しい加工を施して缶に成形する際に樹脂フィルムが削れたり疵付いたり、また剥離したりすることがなく、優れた製缶性を有している。さらにこの未延伸の着色ポリエステルフィルムを被覆してなる金属板を用いて成形した缶は、成形加工後の表面欠陥が少ない。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。図1に本発明によって製造される3層からなる未延伸着色ポリエステルフィルムの断面構造を示す。本発明によって製造される3層からなる未延伸着色ポリエステルフィルムは、着色顔料を含有しないか、1〜30重量%含有するポリエステル樹脂から成る表層1と、着色顔料を10〜60重量%含有するポリエステル樹脂からなる芯層2と、および着色顔料を含有しないか、1〜30重量%含有するポリエステル樹脂からなる裏層3とからなる。これらの未延伸フィルムにおいてはフイルムの総厚さが5〜50μmであることが好ましい。
【0009】
本発明によって製造される3層からなる未延伸着色ポリエステルフフィムを構成するポリエステル樹脂としては、エチレンテレフタレート、エチレンイソフタレート、ブチレンテレフタレート、ブチレンイソフタレート、およびビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とテレフタレール酸のエステル化物などのエステル単位を有しているものの中から選択される少なくとも一種類のエステル単位を主体とするポリエステルであることが好ましい。このとき各単位は共重合されていてもよく、あるいは2種類以上の各単位のホモポリマーまたは共重合ポリマーをブレンドしたポリエステルを使用してもよい。上記以外のもので、エステル単位の酸性分としてナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、またはトリメリット酸などを用いたものなど、またアルコール成分としてプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、またはジエチレングリコールなどを用いたものを使用してもよい。さらに表層1、芯層2、および裏層3のポリエステルとして、それぞれ異なる成分を有するポリエステルを使用してもよい。また、ラミネート作業性などの観点から、これらのポリエステル樹脂の融点は200〜260℃の範囲にあることが好ましい。
【0010】
さらに、表層、芯層、および裏層の3層を構成する上記のポリエステルフィルムは、0.5〜1.3の固有粘度を有していることが好ましい。3層からなるポリエステルフィルムは、着色顔料を添加した着色フィルムとして使用されるが、フィルムを構成するポリエステル樹脂の固有粘度は着色顔料の添加工程および製膜工程で著しく低下する。ポリエステル樹脂に着色顔料を分散させるためには押出し機を用いて樹脂ペレットを加熱溶融し、これに着色顔料を添加して混練するが、水分を多量に含有していたり、または表面に多量の水分が吸着した着色顔料を用いた場合は、これらの水分によりポリエステル樹脂が加水分解して樹脂の分子量の目安となる固有粘度が低下し、得られたフィルムは脆化し強度が低く、ラミネート作業などにおいて千切れやすく、極端な場合には脆さのために砕けてしまうことがある。
【0011】
図4に0.8の固有粘度を有するポリエチレンテレフタレートに着色顔料の一種である二酸化チタンを添加して溶融混練を行った場合、およびさらにその二酸化チタンを添加混練したポリエチレンテレフタレートを押出し機を用いてフィルムに製膜した場合の固有粘度の変化を示す。ポリエチレンテレフタレート中に含有される二酸化チタン濃度が高いほど固有粘度の低下が激しく、さらに製膜工程を経ることにより固有粘度はさらに低下する。このように、隠蔽性を増加させるために着色顔料を樹脂中に多量に含有させると、着色顔料の添加による効果に加えて、樹脂の固有粘度の低下によりフィルム強度が著しく低下する。このように強度が低下したフィルムは千切れやすく、ラミネート作業が著しく困難となる。また仮にこのような低強度のフィルムを金属板にラミネートして缶に成形加工しても、フィルムが削れたり、疵付ついたり、さらにはフィルムに割れが生じて剥離したりするため、缶用途に適用することができない。
【0012】
本発明においてはフィルム強度を缶用途に適用可能な程度に維持するために、着色顔料を含有させたポリエステル樹脂の固有粘度を高くすることにより、ラミネート作業時のフィルム切れを防止するとともに、この樹脂を被覆した金属板の加工性を向上させ、金属板に被覆したフィルムの製缶加工時のフィルムの削れや疵付き、あるいはフィルム割れによる剥離を防止している。このため、上記のようにポリエステル樹脂の固有粘度は表層、芯層、および裏層のいずれも0.5〜1.3以上であることが好ましい。固有粘度が0.5未満のポリエステルフィルムを用いた場合は、上記のように着色剤を添加してフィルムに製膜すると著しく脆化し、フィルム強度が極端に低下するので、本発明の目的とする缶用途に適さない。
【0013】
フィルムの固有粘度を上げる方法としては、着色顔料を混練するポリエステル樹脂の固有粘度を高くする、ポリエステル樹脂中への着色顔料の混練分散を可能な限り低温で実施する、または着色顔料を混練する前にポリエステル樹脂を十分に乾燥させておく、などの方法を適用することが有効であり、これらの方法を用いることにより、着色顔料を含有させたポリエステルフィルムの固有粘度を高めることが可能である。しかし、1.3を超える固有粘度を有する着色ポリエステルフィルムを製造するためには、さらに高い固有粘度を有するポリエステル樹脂を使用し、より低温で着色顔料を混練し、押出し可能とするために装置のトルク上限をさらに上昇させ、使用する樹脂ペレットと顔料を十分に乾燥させるためにさらに大がかりな乾燥設備が必要となるために、コストが高くなるので好ましくない。
【0014】
また本発明では表層、芯層、および裏層の3層のいずれのポリエステルフィルムの固有粘度を0.5〜1.3とすることを特徴とするが、3層フィルムを製造する上で、各層の固有粘度をそれぞれ管理することが困難である場合は、3層フィルムを1層のフィルムとみなし、3層全体の平均固有粘度を0.5〜1.3となるように管理しても、本発明の目的とする特性が得られるので差し支えない。
【0015】
前述したように、着色ポリエステルフィルムの強度は、着色顔料の添加量とフィルムの固有粘度に左右され、着色顔料の量が少ないほど、およびフィルムを構成する樹脂の固有粘度が高いほど脆さが改善され、高強度となる。さらに、本発明においてはフィルムの強度を増すために、図1に示すように着色ポリエステルフィルムを3層構造としている。ラミネート作業などにおいて、着色ポリエステルフィルムは特に表層部分を起点として千切れやすい。このため、3層の着色ポリエステルフィルムの表層の強度を高めて千切れ難くすることにより、芯層が脆弱であっても全体としてのフィルムの強度を保つことが可能となり、千切れ難いフィルムとすることが可能である。したがって、芯層を構成するフィルムに着色顔料を多く含有させそのために樹脂の固有粘度が下がったとしても、表層および裏層として高強度の切れ難いフィルム、すなわち着色顔料の含有量を少なくした固有粘度の高いフィルムを用いて3層構造の着色ポリエステルフィルムとすることにより、ラミネート作業などにおいて千切れ難いフィルムとすることが可能となる。
【0016】
以上の点に鑑みて、本発明においては芯層を構成するフィルムの着色顔料含有量を10〜60重量%とし、かつフィルムの固有粘度を0.5以上にすることにより、若干脆弱ではあるが隠蔽性に優れた層とする。また、表層および裏層を構成するフィルムの着色顔料含有量を含有させないか、1〜30重量%含有させて、かつフィルムの固有粘度を0.5以上として強靱な層とすることにより、3層フィルム全体の強度を高めることが可能となる。このように、3層構造を有する着色ポリエステルフィルムにおいては、芯層よりも表層および裏層の方が強靱となるように、各層を構成するフィルム中の着色顔料の含有量は芯層よりも表層および裏層において少なくするか、または各層を構成するフィルムの固有粘度は芯層よりも表層および裏層において高めておくことが好ましい。
【0017】
3層構造を有する着色ポリエステルフィルムの全体の隠蔽性に関しては、優れた隠蔽性を保持するためには芯層のフィルムの着色顔料含有量を10重量%以上とする必要があり、これを芯層の着色顔料含有量の下限とする。一方着色顔料含有量の上限を60重量%としているのは、これ以上着色顔料を含有させるとフイルムの脆さを改善するのが困難となるためである。表層および裏層のフィルムの着色顔料含有量の上限を30重量%としているのは、先ほど述べた理由により3層フイルム全体としての強度を高く保持するためであり、着色顔料含有量は0〜10重量%の範囲とすることがより好ましい。
【0018】
3層の着色ポリエステルフィルムの総厚みは5〜50μmの範囲であることが好ましく、総厚みを5μm未満に薄くすると金属板の表面粗度の影響を受けるようになり、缶に成形加工する際に金属面が露出しやすくなる。一方、総厚みが50μmを超えて厚くすると経済的に好ましくなくなる。このため総厚みは10〜30μmの範囲にあることがより好ましい。また表層、芯層、および裏層のそれぞれのフィルムの厚みは、隠蔽性を向上させるために芯層のフィルム厚みを4〜40μmの範囲とし、表層および裏層のフィルム厚みを0.5〜10μmの範囲とすることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明においてはフィルムの巻形状を向上させるために表層および裏層を構成するフィルム中にシリカなどの滑材を含有させても差し支えない。
【0020】
着色ポリエステルフィルムに使用する着色顔料に関しては、さまざまなものが使用可能である。白色顔料としてはルチル型またはアナターゼ型の二酸化チタン、亜鉛華、グロスホワイト、パーライト、沈降性硫酸パーライト、炭酸カルシウム、石膏、沈降性シリカ、エアロジル、タルク、焼成あるいは未焼性クレイ、炭酸バリウム、アルミナホワイト、合成あるいは天然のマイカ、合成ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどが使用可能であが、ルチル型またはアナターゼ型の二酸化チタンを用いることが特に好ましい。また、黒色顔料としてカーボンブラック、マグネタイトなど、赤色顔料としてベンガラ、鉛丹など、青色顔料として群青、コバルト青など、さらに黄色顔料として黄鉛、亜鉛黄など、いずれも着色ポリエステルフィルムの着色顔料として適用可能である。
【0021】
これらの顔料の粒径は、一般に0.05〜2μmの範囲にあることが好ましく、粒径が0.05μm未満の小径となると、体積当たりの表面積が大きくなり水分の吸着が多くなり、樹脂の固有粘度の低下を増大させたり、また着色顔料粒子同士の凝集が生じやすくなる。また逆に粒径が2μmを超えた大径となると、ラミネート作業などにおいてフィルムが千切れやすくなり、またフィルム被覆金属板を缶に成形加工する際にフィルムの削れなども発生しやすくなる。このため顔料の粒径は0.1〜0.5μmの範囲であることがより好ましい。
【0022】
次に、着色ポリエステルフィルムを被覆してなる被覆金属板について説明する。図2および3に、表層1、芯層2、および裏層3の3層からなる未延伸着色ポリエステルフィルム6を金属板5の片面に積層し、他の片面に未延伸無着色のクリアポリエステルフイルム7をラミネートした例を示す。いずれの場合も3層からなる未延伸着色ポリエステルフィルムの裏層3が金属板5と接するようにラミネートするが、図3に示すように、裏層3と金属板5の間に接着剤4を介在させてラミネートしてもよい。このラミネート方法は、樹脂フィルムを加熱した金属板に接触させて接着する加熱接着法を用いて樹脂フィルムを金属板にラミネートする場合に、金属板としてめっき層が溶融するために金属板の温度をそれほど上げることができないぶきり板などを使用した場合のラミネート方法として適用される。本発明においては接着剤の成分は特に規定するものではないが、エポキシ/フェノール系接着剤、エポキシ/ユリア系接着剤、ウレタン系接着剤などの接着剤が好適に使用できる。また、着色ポリエステルフィルム被覆金属板は、上記のように金属板の片面に本発明の3層の着色ポリエステルフィルム6を被覆し、他の片面に樹脂フィルム7を設けなくてもよいし、あるいは他の片面に本発明以外の樹脂フィルム、例えばニ軸配向ポリエステルフィルム、本発明以外の未延伸ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリオレフィンフィルムなどの樹脂フィルムを同時に、もしくは片面ずつラミネートしてもよいし、各種の樹脂塗料を塗装してもよい。
【0023】
また、本発明において、着色ポリエステルフィルム被覆金属板は、未延伸の着色ポリエステルフィルムを金属板にラミネートすることを特徴とするが、ラミネート方法としては前述した加熱接着法を用いてラミネートすることにこだわるものではなく、フィルムの形態を取らずに、押出し装置から溶融した樹脂を直接金属板に押し出して被覆する方法を用いても差し支えない。
【0024】
本発明において、着色ポリエステルフィルム被覆金属板の下地となる金属板としては、通常の缶用素材として広範に使用されているぶりきや電解クロム酸処理鋼板(ティンフリースチール)などの各種表面処理鋼板、およびアルミニウム合金板を使用することができる。表面処理鋼板としては10〜200mg/m2 の皮膜量の金属クロムからなる下層と、クロム換算で1〜30mg/m2 の皮膜量のクロム水和酸化物からなる上層とからなる2層皮膜を、鋼板上に形成させたティンフリースチールが好ましく、着色ポリエステルフィルムとの十分な密着性を有し、さらに耐食性も兼ね備えている。ぶりきとしては鋼板表面に錫を0.1〜11.2g/m2 のめっき量でめっきし、その上層にクロム換算で1〜30mg/m2 の金属クロムとクロム水和酸化物とからなる2層皮膜を形成させたもの、またはクロム水和酸化物のみからなる単層皮膜を形成させたものが好ましい。いずれの場合も基板となる鋼板は缶用途に一般的に使用されている低炭素冷延鋼板であることが好ましい。鋼板の厚みは0.1〜0.32mmであることが好ましい。アルミニウム合金板に関してはJISの3000系もしくは5000系のものが好ましく、表面に電解クロム酸処理により0〜200mg/m2 の金属クロムの下層と、クロム換算で1〜30mg/m2 のクロム水和酸化物の上層とからなる2層皮膜を形成させたものか、またはリン酸クロメート処理によりクロム換算で1〜30mg/m2 のクロム成分と、リン換算で0〜30mg/m2 のリン成分が付着しているものが好ましい。アルミニウム合金板の板厚は0.15〜0.4mmであることが好ましい。
【0025】
本発明において、着色ポリエステルフィルム被覆金属板を用いた缶は、着色ポリエステルフィルムを被覆した側が、缶に成形加工される際に缶外面側となるように加工される。この加工法には、1段または複数段の絞り加工、または絞りおよび再絞り加工後さらなる再絞りとしごき加工を同時に行う複合加工などが採用される。例えば、缶胴と缶底を一体で成形する2ピース缶に成形加工する場合には、缶胴の壁部にフィルムの削れや疵付きを生じたり、フィルムが剥離することなく成形することが可能である。さらに、缶胴部が元板厚よりもかなり薄くなるように伸展加工されてフィルム自体も薄くなっても、下地の金属板を十分に隠蔽した2ピース缶を得ることが出来る。
【0026】
【実施例】
以下、実施例にて本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
エチレンテレフタレート90%とエチレンイソフタレート10%からなる固有粘度1.0のポリエステル樹脂と、真空乾燥したルチル型二酸化チタン(粒径0.12μm)からなる白色顔料を、ニ軸押出機を用いて樹脂中における含有量が10重量%、20重量%、30重量%、40重量%および60重量%となるように250℃の温度でそれぞれ加熱溶融混練し、次いで樹脂を押出し、大きさ3mmのペレットを作成した。さらにこれらの二酸化チタンを含有した樹脂ペレットと、上記と同一組成の二酸化チタンを含有していないポリエステル樹脂ペレットを、3台のニ軸押出機と幅1.5mの3層フィルムを共押出しできるダイを兼ね備えた装置を用い、それぞれの押出機にて表層、芯層および裏層となる二酸化チタン含有量の異なる樹脂を加熱溶融した後、共押出ダイより押出して3層フィルムを作成した。3層フィルムの総厚みが17μmとなるように各押出機の吐出量と引き取り速度を調整するとともに、表層が2μm、芯層が13μm、裏層が2μmの3層構造となるように各押出機の押出し量を調整し、4種類(試料番号1〜4)の3層フィルムを作成した。押出機およびダイの温度は250℃とした。
【0027】
(実施例2)
エチレンテレフタレート90%とビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とテレフタル酸のエステル化物10%からなる固有粘度1.2の共重合ポリエステル樹脂80%と固有粘度1.4のポリブチレンテレフタレートホモポリマー20%からなるブレンド樹脂と、真空乾燥した実施例1と同様のルチル型二酸化チタンからなる白色顔料を、ニ軸押出機を用いて樹脂中における含有量が20重量%、30重量%、40重量%および60重量%となるように240℃の温度でそれぞれ加熱溶融混練し、次いで樹脂を押出し、大きさ3mmのペレットを作成した。実施例6、8および9においては上記の二酸化チタンを含有した樹脂ペレットを表層、芯層、および裏層となるように、実施例5および7においては上記の二酸化チタンを含有した樹脂ペレットを芯層に用い、表層と裏層には二酸化チタンを混練していない実施例1で使用したエチレンテレフタレート90%とエチレンイソフタレート10%からなる固有粘度1.0のポリエステル樹脂を使用した。これらの樹脂ペレットを実施例1に用いた押出機と3層フィルムを共押出できるダイを備えた装置を用いて3層フィルムを作成した。押出機の温度およびダイの温度は250℃とした。このとき3層フィルムの総厚みが17μmとなるように各押出機の吐出量と引き取り速度を調整するとともに、表層が2μm、芯層が13μm、裏層が2μmの3層構造となるように各押出機の押出量を調整し、5種類(試料番号5〜9)の3層フィルムを作成した。押出機およびダイの温度は250℃とした。
【0028】
(実施例3)
実施例1と同様の方法で作成したエチレンテレフタレート90%とエチレンイソフタレート10%からなる固有粘度1.0の樹脂に二酸化チタンを30重量%含有させた樹脂を芯層に用い、表層および裏層には実施例2と同様の方法で作成したエチレンテレフタレート90%とビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とテレフタル酸のエステル化物10%からなる固有粘度1.2の共重合樹脂80%と固有粘度1.4のポリブチレンテレフタレートホモポリマー20%からなるブレンド樹脂に二酸化チタン30重量%添加した樹脂を用い、実施例1に用いた押出機と3層フィルムを共押出できるダイを備えた装置を用いて3層フィルムを作成した。3層フィルムの総厚みが17μmとなるように各押出機の吐出量と引き取り速度を調整するとともに、表層が2μm、芯層が13μm、裏層が2μmの3層構造となるように各押出機の押出量を調整し、試料番号10の3層フィルムを作成した。押出機およびダイの温度は250℃とした。
【0029】
続いて比較例を示す。
(比較例1)
エチレンテレフタレート90%とエチレンイソフタレート10%からなる固有粘度0.8のポリエステル樹脂と、80℃で1時間以上加熱して乾燥した実施例1と同様のルチル型二酸化チタンからなる白色顔料を、ニ軸押出機を用いて樹脂中における含有量が5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%および60重量%とになるように270℃の温度でそれぞれ加熱溶融混練し、次いで樹脂を押出し、大きさ3mmのペレットを作成した。さらにこれらの二酸化チタンを含有した樹脂ペレットと、上記と同一組成の二酸化チタンを含有していないポリエステル樹脂ペレットを、3台のニ軸押出機と幅1.5mの3層フィルムを共押出しできるダイを兼ね備えた装置を用い、それぞれの押出機にて表層、芯層および裏層となる二酸化チタン含有量の異なる樹脂を加熱溶融した後、共押出ダイスより押出して3層フィルムを作成した。3層フィルムの総厚みが17μmとなるように各押出機の吐出量と引き取り速度を調整するとともに、表層が2μm、芯層が13μm、裏層が2μmの3層構造となるように各押出機の押出し量を調整し、6種類(試料番号11〜16)の3層フィルムを作成した。押出機およびダイの温度は270℃とした。以上のようにして作成した16種類の未延伸フィルムの二酸化チタンの含有量および各層の固有粘度の測定値を一覧にして表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
次に、本発明の着色ポリエステルフィルムを被覆した被覆金属板の実施例および比較例を示す。
(実施例4)
板厚0.18mm、幅1mのティンフリースチール(金属クロム量:120mg/m2 、クロム水和酸化物量:クロムとして15mg/m2 )の両面に、図5に示すラミネート装置を用い、熱融着により表2に示す樹脂フィルムをラミネートした。一対のラミネートロール8に入る前のティンフリースチール(金属板5)の温度は260℃とした。さらにティンフリースチールの片面(図では左側)にラミネートする樹脂フィルム9として、実施例に示した試料番号1〜10の未延伸着色フィルムを、またティンフリースチールの他の片面(図では右側)にラミネートする樹脂フィルム9’として、厚み25μmのエチレンテレフタレート90%とエチレンイソフタレート10%からなる固有粘度1.0の樹脂を二軸延伸してなるフィルムをそれぞれ1mにスリットして使用した。ラミネート速度は150m/minとするとともに、それぞれのフィルムには100Nの張力を負荷した。このようにして試料番号17〜26で示す着色ポリエステルフィルム被覆ティンフリースチールを作成した。
【0032】
(実施例5)
板厚0.18mm、幅1mのぶりき(錫量:0.2g/m2 、 クロム水和酸化物量:クロムとして 5mg/m2 )の両面に、図5に示すラミネート装置を用い、熱融着により表2に示す樹脂フィルムをラミネートした。一対のラミネートロール8に入る前のぶりき(金属板5)の温度は200℃とした。さらにぶりきの片面(図では左側)にラミネートする樹脂フィルム9として実施例に示した試料番号7および9で作成した未延伸着色フィルムを、またぶりきの他の片面(図では右側)にラミネートする樹脂フィルム9’として実施例4と同様の二軸延伸フィルムをそれぞれ1mにスリットするとともに、両方のフィルムに厚み1.0μmのエポキシフェノール系接着剤を予めぶりき面と接する片側にそれぞれ塗布乾燥しておき、ぶりき面と接着剤塗布面が接するようにラミネートした。ラミネート速度は150m/minとし、それぞれのフィルムには100Nの張力を負荷した。このようにして試料番号27〜28で示す着色ポリエステルフィルム被覆ぶりきを作成した。
【0033】
(実施例6)
板厚0.26mm、幅1mの両面をりん酸クロメート処理したアルミニウム合金板(JIS 5052 H39)の両面に、図5に示すラミネート装置を用い、熱融着により表2に示す樹脂フィルムをラミネートした。一対のラミネートロール8に入る前のアルミニウム合金板(金属板5)の温度は260℃とした。さらにアルミニウム合金板の片面(図では左側)にラミネートする樹脂フィルム9として実施例に示した試料番号7および9で作成した未延伸着色フィルムを、またアルミニウム合金板の他の片面(図では右側)にラミネートする樹脂フィルム9’として実施例4と同様の二軸延伸フィルムをそれぞれ1mにスリットして使用した。ラミネート速度は150m/minとし、それぞれのフィルムには100Nの張力を負荷した。このようにして試料番号29〜30で示す着色ポリエステルフィルム被覆アルミニウム合金板を作成した。
【0034】
(比較例2)
実施例4と同様のティンフリースチールの両面に、図5に示すラミネート装置を用い、熱融着により表2に示す樹脂フィルムをラミネートした。一対のラミネートロール8に入る前のティンフリースチール(金属板5)の温度は260℃とした。さらにティンフリースチールの片面(図では左側)にラミネートする樹脂フィルム9として比較例に示した試料番号11〜15で作成した未延伸着色フィルムを、またティンフリースチールの他の片面(図では右側)にラミネートする樹脂フィルム9’として、厚み25μmのエチレンテレフタレート90%とエチレンイソフタレート10%からなる固有粘度0.8の樹脂を二軸延伸してなるフィルムをそれぞれ1mにスリットして使用した。ラミネート速度は150m/minとするとともに、それぞれのフィルムには100Nの張力を負荷した。このようにして試料番号31〜35で示す着色ポリエステルフィルム被覆ティンフリースチールを作成した。
【0035】
(比較例3)
実施例5と同様のぶりきの両面に、図5に示すラミネート装置を用い、熱融着により両面に表2に示す樹脂フィルムをラミネートした。一対のラミネートロール8に入る前のぶりき(金属板5)の温度を200℃とした。さらにぶりきの片面(図では左側)にラミネートする樹脂フィルム9として比較例に示した試料番号12および14で作成した未延伸着色フィルムを、またぶりきの他の片面(図では右側)にラミネートする樹脂フィルム9’として比較例2と同様の二軸延伸フィルムをそれぞれ1mにスリットするとともに、両方のフィルムに厚み1.0μmのエポキシフェノール系接着剤を予めぶりき面と接する片側にそれぞれ塗布乾燥しておき、ぶりき面と接着剤塗布面が接するようにラミネートした。ラミネート速度は150m/minとし、それぞれのフィルムには100Nの張力を負荷した。このようにして試料番号36〜37で示す着色ポリエステルフィルム被覆ぶりきを作成した。
【0036】
(比較例4)
比較例3と同様の両面をりん酸クロメート処理したアルミニウム板の両面に、図5に示す装置を用い、熱融着により表2に示す樹脂フイルムをラミネートした。一対のラミネートロール8に入る前のアルミニウム合金板(金属板5)の温度は260℃とした。さらにアルミニウム合金板の片面(図では左側)にラミネートする樹脂フィルム9として比較例に示した試料番号12および14で作成した未延伸着色フィルムを、またアルミニウム合金板の他の片面(図では右側)にラミネートする樹脂フィルム9’として比較例2と同様の二軸延伸フィルムをそれぞれ1mにスリットして使用した。ラミネート速度は150m/minとし、それぞれのフィルムには100Nの張力を負荷した。このようにして試料番号38〜39で示す着色ポリエステルフィルム被覆アルミニウム合金板を作成した。
【0037】
上記のようにして作成した着色ポリエステルフィルム、および着色ポリエステルフィルム被覆金属板の特性を、以下に示す評価方法を用いて評価した。
【0038】
(3層フイルムの表層、芯層、および裏層の厚み)
上記のようにして作成した着色ポリエステルフィルムをエポキシ系樹脂に埋め込み、5μmの厚みにスライスし、断面を光学顕微鏡を用いて観察し、厚みを測定した。
(二酸化チタン含有量)
上記のようにして作成した着色ポリエステルフィルムを切り出して重量を測定した後、るつぼに入れて600℃で1時間加熱焼成し、残留した灰分の重量を測定し、焼成前後の重量比を以てフィルム中に含有する二酸化チタン含有量(重量%)とした。
(固有粘度)
フェノール/テトラクロロエタンの1:1混合溶液に、樹脂の濃度が0.5g/lとなるように樹脂フイルムを100℃で1時間加熱して溶解させた後、30℃の恒温浴槽中でウベローデ粘度計にて溶液の落下時間を測定した。固有粘度はその測定時間を基に、下記の式から求めた。
固有粘度[η]=[{1+4×0.33×(τ/τ0ー1)}1/2 −1]/(2×0.33×C)
ここでτ :樹脂溶解溶液の落下時間 (秒)
τ0:フェノール/テトラクロロエタン混合溶液の落下時間 (秒)
C :樹脂溶解溶液の樹脂濃度 (%)
である。
【0039】
(着色ポリエステルフィルムの各層の固有粘度および二酸化チタン含有量)
3台のニ軸押出機を有する製膜装置を用いて共押出ダイスから表層、芯層、および裏層となる溶融樹脂を共押出して3層フィルムを押出製膜した後、3台のニ軸押出機のうち2台を停止させ、他の1台のニ軸押出機のみを駆動させた状態で10分経過させた後、ダイからでてきた1層のみの樹脂を採取した。この1層のみの樹脂の固有粘度および灰分を上記のようにして測定し、駆動させた押出機が形成している層の固有粘度および二酸化チタン含有量とした。
(着色ポリエステルフィルムの強度)
着色ポリエステルフィルムを幅5mm、長さ60mmの大きさの試片に切り出し、チャック間距離が20mmとなるように試片の両端をチャックで固定し、室温にて引張速度200mm/minで試片を引張試験して破断伸びを求めた。この操作を10回繰り返して実施し、着色ポリエステルフィルムの強度を次に示す基準で評価した。
◎:10回の引張り試験全てにおいて30%を超える破断伸びを示した。
○:5〜9回の引張り試験において30%を超える破断伸びを示した。
△:1〜4回の引張り試験において30%を超える破断伸びを示した。
×:10回の引張り試験全てにおいて30%以下の破断伸びを示した。
【0040】
(着色ポリエステルフィルムのラミネート性)
実施例1〜6および比較例1〜4に示した方法を用いて着色ポリエステルフィルムを各種の金属板に10000m連続的にラミネートした際のフィルム切れの発生状況により、以下の基準で着色ポリエステルフィルムのラミネート性を評価した。
◎:フィルム切れ発生せず。
○:フィルムが切れ掛かった箇所が数カ所発生した。
△:フィルム切れが数〜10回発生した。
×:フィルム切れが頻繁に発生した。
【0041】
(着色ポリエステルフィルム被覆金属板の缶としての成形加工性)
実施例の試料番号17〜30、比較例の試料番号31〜39の着色ポリエステルフィルム被覆金属板を、直径160mmのブランクに打ち抜いた後、本発明の着色ポリエステルフイルムを被覆した側が缶外面側となるようにして、缶底径100mmの絞り缶とした。ついで再絞り加工により缶底径80mmの再絞り缶とした。さらにこの再絞り缶をストレッチ加工と同時にしごき加工を行う複合加工により、缶底径65mmの絞りしごき缶とした。この複合加工において、缶の上端部となる再絞り加工部としごき加工部間の間隔は20mm、再絞りダイスの肩アールは板厚の1.5倍、再絞りダイスとポンチのクリアランスは板厚の1.0倍、しごき加工部のクリアランスは元板厚の50%となるように加工条件を設定した。次いで得られた絞りしごき缶を公知の方法で缶上部をトリミングし、さらにネックイン加工およびフランジ加工を施した。このようにして得られた缶体100缶の缶壁における樹脂フィルム層の削れおよび疵付きの発生状況により、以下の基準で着色ポリエステルフィルム被覆金属板の缶としての成形加工性を評価した。
◎:削れや疵付きの発生は認められない。
○:一部の缶に削れや疵付きの発生が認められるが、実用上問題なし。
△:一部の缶に実用上問題となる削れや疵付きが認められる。
×:かなりの数の缶に著しい削れや疵付き、およびフィルム割れが認められる。
【0042】
(着色ポリエステルフィルム被覆金属板における下地金属板の隠蔽性)
着色ポリエステルフィルム被覆金属板に上記の成形加工を施して缶に成形加工した後、得られた缶の缶壁部の底から50mmの位置におけるフィルムの、CIE 1976(L*,a*,b*)色空間の定義による白さを表すL値を、MINOLTA社製CM−3500d色差計を用いて測定した。さらに測定した白さを表すL値に基づいて以下の基準で隠蔽性を評価した。
◎:L値:85≧、 優れた隠蔽性を示す。
○:L値:80〜85、 良好な隠蔽性を示す。
△:L値:75〜80、 隠蔽性がやや劣る。
×:L値:75≦、 隠蔽性が劣る。
このようにして得られた着色ポリエステルフィルム、および着色ポリエステルフィルム被覆金属板の特性の評価結果を表1および2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
表1および2に示すように、実施例に示した本発明の着色ポリエステルフィルムである試料番号1〜10のフィルムは、表層、芯層、および裏層の全てのフィルムにおいて0.5以上の固有粘度を有しており、また3層フィルム全体としての固有粘度も0.5以上の値を示した。このため、フィルム強度についても良好な評価結果が得られた。さらにこれらのフィルムを金属板に連続的にラミネートした場合も殆どフィルム切れが発生せず、良好なラミネート性を示した。一方、比較例である試料番号1、3、4、5および6のフィルムにおいては固有粘度が0.5を下回る層があり、3層フィルム全体としての固有粘度も0.5を下回っていた。このため脆いフィルムとなり、強度も低くかった。さらに連続ラミネート作業においてフィルム切れが多発した。比較例の試料番号2のフィルムは二酸化チタン含有量が少ないためにフィルム強度が比較的高く、連続ラミネート作業も支障なく実施可能であったが、後述する隠蔽性は本発明のフィルムに比べ、非常に劣っている。
【0045】
また表2に示すように、実施例である試料番号17〜30の本発明の着色ポリエステルフィルム被覆金属板は、缶に成形加工した際に缶壁部のフィルムに削れや疵付きが殆ど生じず良好な加工性を示し、また優れた隠蔽性を示した。これに対して、比較例の試料番号31〜39の着色ポリエステルフィルム被覆金属板については、加工性と隠蔽性の両方を同時に満足するものは無かった。このように、本発明の着色ポリエステルフィルムは強度が高くラミネート作業性に優れ、さらに優れた隠蔽性を示す。また本発明の着色ポリエステルフィルム被覆金属板は加工性および下地金属の隠蔽性に優れており、缶壁部を薄肉化する厳しい加工を施して缶に成形してもフィルムに削れや疵付きが殆ど生じず、良好な加工性を示し、また優れた隠蔽性を示す。
【0046】
【発明の効果】
本発明の着色ポリエステルフィルムは、3層フィルムの芯層に10〜60重量%の着色顔料を添加し、表層および裏層に0〜30重量%の着色顔料を添加させ、かつ各層のフィルムが0.5〜1.3の固有粘度を有するか、または3層フィルムが全体として0.5〜1.3の固有粘度を有するようにしたものであり、隠蔽性、およびラミネート作業性に優れている。また本発明の着色ポリエステルフィルム被覆金属板は、缶に成形加工する際に缶壁部の樹脂に削れや疵付きを生じることなく良好な加工性を示し、成形後の缶の下地金属の隠蔽性においても優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の着色ポリエステルフィルムの断面構造を示す模式図である。
【図2】本発明の着色ポリエステルフィルム被覆金属板の1例の断面構造を示す模式図である。
【図3】本発明の着色ポリエステルフィルム被覆金属板の他の1例の断面構造を示す模式図である。
【図4】ポリエステル樹脂に混練した二酸化チタンの量とポリエステル樹脂の固有粘度の関係を示す図である。
【図5】ラミネート金属板の製造装置の概略図である。
【符号の説明】
1・・・表層
2・・・芯層
3・・・裏層
4・・・接着剤層
5・・・金属板
6・・・着色ポリエステルフィルム
7・・・樹脂フィルム
8・・・ラミネートロール
9・・・樹脂フィルム
9’・・・脂フィルム
10・・・加熱ロール
11・・・デフレクターロール
12・・・クエンチ部
Claims (8)
- 表層、芯層及び裏層の3層からなるポリエステルフィルムの製造方法において、
固有粘度(η)が0.5〜1.3のポリエステル樹脂に、粒径0.05〜2μmの着色顔料を10〜60重量%含有させて加熱溶融混練し押出機を用いて芯層用の着色顔料含有樹脂ペレットを製造し、
前記ポリエステル樹脂と同一組成で前記芯層の固有粘度よりも大きい表層及び裏層用の着色顔料非含有樹脂ペレットを製造し、
前記芯層用着色顔料含有樹脂ペレットを芯層を製造するための押出機にて加熱溶融し、
前記表層及び裏層用着色顔料非含有樹脂ペレットを表層及び裏層を製造するための押出機にて加熱溶融し、
これらの3台の押出機を用いて共押出ダイより押出して、
4〜40μm厚の芯層の両面に、
0.5〜10μm厚の表層及び裏層を積層して総厚み5〜50μmの3層フィルムとすることを特徴とする着色ポリエステルフィルムの製造方法。 - 表層、芯層及び裏層の3層からなるポリエステルフィルムの製造方法において、
固有粘度(η)が0.5〜1.3のポリエステル樹脂に、粒径0.05〜2μmの着色顔料を10〜60重量%含有させて加熱溶融混練し押出機を用いて芯層用の着色顔料含有樹脂ペレットを製造し、
前記ポリエステル樹脂と同一組成で前記芯層の固有粘度よりも大きいポリエステル樹脂に、
粒径0.05〜2μmの着色顔料を1〜30重量%でかつ前記芯層の含有量以下含有させて加熱溶融混練し押出機を用いて表層及び裏層用の着色顔料含有樹脂ペレットを製造し、
前記芯層用着色顔料含有樹脂ペレットを芯層を製造するための押出機にて加熱溶融し、
前記表層及び裏層用着色顔料非含有樹脂ペレットを表層及び裏層を製造するための押出機にて加熱溶融し、
これらの3台の押出機を用いて共押出ダイより押出して、
4〜40μm厚の芯層の両面に、
0.5〜10μm厚の表層及び裏層を積層して総厚み5〜50μmの3層フィルムとすることを特徴とする着色ポリエステルフィルムの製造方法。 - 前記ポリエステルフィルムがエチレンテレフタレート、エチレンイソフタレート、ブチレンテレフタレート、およびビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とテレフタル酸のエステル化物より選択された少なくとも一種類以上の単位を主体とする樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の着色ポリエステルフィルムの製造方法。
- 前記表層、芯層、および裏層の3層からなるポリエステルフィルムが未延伸フィルムである請求項1〜3のいずれかに記載の着色ポリエステルフィルムの製造方法。
- 前記着色顔料が二酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の着色ポリエステルフィルムの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の着色ポリエステルフィルムの製造方法によって製造された着色ポリエステルフィルムを、金属板の少なくとも片面に積層することを特徴とする着色ポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法。
- 前記金属板が、ぶりき、ティンフリースチール、またはアルミニウム合金板であることを特徴とする請求項6に記載の着色ポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法。
- 請求項6または7に記載の着色ポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法によって得られた着色ポリエステルフィルム被覆金属板を、着色ポリエステルフィルムが缶外面になるように加工することを特徴とする缶の加工方法。
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