JP4422378B2 - 缶形成用ポリエステル樹脂被覆鋼板 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、両面に無配向のポリエステル樹脂を被覆したポリエステル樹脂被覆鋼板に関する。より詳細には、成形性、耐食性、および内容物のフレーバー性(風味の不変性)に優れた、特に飲料缶に適用する缶形成用ポリエステル樹脂被覆鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリエステル樹脂を2軸方向に延伸した配向フィルムを金属板に被覆し、絞り比や缶側壁部の減厚率を高める薄肉化絞り加工等の厳しい成形加工を用いて製缶した缶が、主に、飲料缶の用途で用いられている。この2軸配向ポリエステルフィルムを被覆金属板を薄肉化絞り加工すると、金属板表面に被覆された樹脂フィルムが、変形量の大きい加工に完全に対応できず、フィルムに微小なクラックが生じて耐食性が劣化したり、加工時にフィルムが割れて破胴し、製缶が不可能になることがあり、さらに絞り比や減厚率を高めて缶のコストダウンを図ることが極めて困難になっている。ポリエステルフィルムの2軸配向を低下もしくは無配向化させると成形加工性は向上するが、樹脂の結晶性が低下するために樹脂フィルムの水や酸素に耐する耐透過性が低下し、製缶した缶に内容物を充填して長期間経時させた場合の耐食性および内容物のフレーバー性が不良となる。
本発明は、薄肉化絞り加工のような厳しい成形加工を施してもクラックが生じたり割れたりすることがなく、加工性および耐食性に優れたポリエステル樹脂被覆金属板、およびそれを用いた内容物のフレーバー性に優れた缶を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【0003】
(1)本発明の缶形成用ポリエステル樹脂被覆鋼板は、
3層の無配向ポリエステル樹脂を鋼板の表面に被覆した着色ポリエステル樹脂被覆鋼板であって、
前記無配向ポリエステル樹脂の固有粘度が0.6〜1.4であり、
前記3層の無配向のポリエステル樹脂のうち、芯層が、上層及び下層よりも多く着色顔料を含有しており、
前記上層及び芯層の融解温度が前記下層の融解温度よりも高い、ことを特徴とする。
(2)本発明の缶形成用ポリエステル樹脂被覆鋼板は、前記(1)において、
前記3層の無配向ポリエステル樹脂を鋼板の表面に被覆した着色ポリエステル樹脂は、顔料を15〜40重量%含有していることを特徴とする。
(3)本発明の缶形成用ポリエステル樹脂被覆鋼板は、前記(1)または(2)において、
前記下層は、顔料を含まないことを特徴とする。
(4)本発明の缶形成用ポリエステル樹脂被覆鋼板は、前記(1)〜(3)のいずれかにおいて、
前記上層及び下層の厚さが、1〜15μmであり、前記芯層の厚さが3〜48μmであることを特徴とする。
(5)本発明の缶形成用ポリエステル樹脂被覆鋼板は、前記(1)〜(4)のいずれかにおいて、
前記着色顔料を含有した無配向ポリエステル樹脂を被覆した鋼板の表面と反対の表面に、
着色顔料を含有しない無配向の透明ポリエステルを2層積層し、
前記着色樹脂を含有したポリエステル樹脂を被覆した面が缶外面となるように、
前記着色顔料を含有しないポリエステル樹脂を被覆した面が缶内面となるようにすることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
本発明は、固有粘度が0.6〜1.4である無配向のポリエステル樹脂を鋼板の両面に被覆したポリエステル樹脂被覆鋼板であり、薄肉化絞り加工のような厳しい成形加工を施しても樹脂にクラックが生じたり割れたりすることがなく、優れた加工性および耐食性を示す。また本発明のポリエステル樹脂被覆鋼板を用いた缶は、内容物のフレーバー性に優れている。
【0005】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明に適用するポリエステル樹脂について説明する。ポリエステル樹脂としては、エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、1,4−シクロヘキサンジメチルテレフタレート、エチレンイソフタレート、ブチレンイソフタレート、エチレンアジペート、ブチレンアジペート、エチレンナフタレート、ブチレンナフタレートのいずれか1種類以上のエステルを含有するポリエステル樹脂であることが好ましい。ポリエステル樹脂は、これらのエステルのモノマーの1種類以上を重縮合して得られたポリエステル樹脂であるか、または、これらのポリエステル樹脂の2種類以上をブレンドしてなるポリエステル樹脂であることが好ましい。また上記以外のもので、エステル単位の酸成分として、セバシン酸、トリメリット酸などを用いたものなど、またエステル単位のアルコール成分として、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトールなどを用いたものを用いてもよい。
【0006】
本発明に用いるポリエステル樹脂は、薄肉化絞り加工のような厳しい加工を樹脂のクラック、割れ、削れ、および剥離等を生じることなく実施可能とするため、成加工形性に優れた無配向の状態で使用することを前提とするために、樹脂の固有粘度を高め、樹脂を強化させる必要がある。このため、上記のポリエステル樹脂の固有粘度を0.6〜1.4の範囲とすることが好ましく、0.8〜1.2の範囲とすることがより好ましい。固有粘度が0.6未満のポリエステル樹脂を用いた場合は樹脂の強度が極端に低下し、本発明の目的とする、薄肉化絞り加工缶に適用できない。また、内容のフレーバー性も劣り、好ましくない。一方、樹脂の固有粘度が1.4を超えると樹脂を加熱溶融させた際の溶融粘度が極端に高くなり、ポリエステル樹脂を鋼板に被覆する作業が極めて困難になる。
【0007】
また、本発明のポリエステル樹脂被覆鋼板は、缶に成形した際に缶内面側となる鋼板の少なくとも片面は、顔料を含有していない無色透明のポリエステル樹脂で被覆されていることが好ましい。この透明ポリエステル樹脂は単層樹脂であってもよいし、それぞれ特性の異なる複数の種類の樹脂からなる、少なくとも上下2層からなる多層樹脂であってもよい。単層樹脂の場合は、半結晶化時間が50秒未満の結晶性の高いポリエステル樹脂を用いると鋼板との密着性に乏しく、薄肉化深絞り加工のような厳しい加工を施すと樹脂が鋼板から剥離しやすく、また樹脂の割れや微少クラックも発生しやすく好ましくない。2層樹脂の場合は鋼板と接する下層樹脂は、融解温度がその上に設ける上層樹脂の融解温度よりも低く、好ましくは5℃以上低く、かつ半結晶化時間が50秒以上でかつ上層樹脂の半結晶化時間より長い、すなわち結晶化しにくい樹脂であることが好ましい。
【0008】
本発明で言う融解温度は、示差走査熱分析装置(DSC)を用いて樹脂を10℃/分の加熱速度で加熱した際に生じる吸熱ピークの最大深さを示す温度のことを指す。また本発明で言う半結晶化時間は、DSCを用いて樹脂を加熱溶融した後急冷して非晶質化し、再び結晶化領域の一定温度に昇温して一定時間保持して結晶化させた際の、保持開始から連続的に測定した吸熱量の曲線において一定時間経過後に出現する吸熱ピークの最低部が出現するまでの時間を半結晶化時間として定義する。
【0009】
無配向のポリエステル樹脂を被覆した鋼板に、薄肉化絞り加工のような厳しい成形加工を施して製缶した缶は、成形加工で樹脂中に生じた応力を緩和し、樹脂を結晶化させて耐食性を向上させるために熱処理が施される。熱処理温度が低い場合は結晶化が十分に進行せず、耐食性を十分に向上させることができない。熱処理温度が高い場合は脆い粗大な結晶に成長し、耐衝撃性が劣るようになる。そのため、耐食性と耐衝撃性の両方を満足させる熱処理温度は極めて狭く、温度範囲の管理が著しく困難であった。鋼板に被覆するポリエステル樹脂を、上記のように鋼板と接する下層に融解温度が低く結晶化しにくいポリエステル樹脂を用い、上層に融解温度が高く結晶化しやすいポリエステル樹脂を用いた2層樹脂とすることにより、成形加工後の缶を幅広い温度範囲で熱処理することが可能となる。
【0010】
上記の無着色透明のポリエステル樹脂の厚さは5〜60μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。厚さが5μm未満の場合は樹脂を鋼板に被覆する作業が著しく困難となり、また薄肉化絞り加工を施した後の樹脂層に欠陥が生じやすく、耐透過性も十分ではない。一方、厚さを増加させると耐透過性は十分となるが、60μm以上に厚くすることは経済的に不利となる。上下2層の樹脂を被覆する場合、上層の樹脂の厚さは2〜30μm、下層の樹脂の厚さは3〜58μmであることが好ましい。上層の樹脂の厚さが極端に薄い場合は内容物によっては耐透過性およびフレーバー性が十分ではなくなることがあり、一方、下層の樹脂の厚さが極端に薄い場合は加工密着性が不十分となる。上記樹脂中に、必要な特性を損なわない範囲で安定剤、酸化防止剤、シリカなどの滑剤を含有させても差し支えない。
【0011】
さらに、本発明のポリエステル樹脂被覆鋼板は、缶に成形した際に缶外面側となる鋼板の少なくとも片面は、ルチル型またはアナターゼ型の二酸化チタン、亜鉛華、グロスホワイト、沈降性硫酸パーライト、炭酸カルシウム、石膏、沈降性シリカ、エアロジル、タルク、焼成または未焼成クレイ、炭酸バリウム、アルミナホワイト、合成または天然のマイカ、合成ケイ酸ハルシウム、炭酸マグネシウムのような白色無機顔料、カーボンブラック、マグネタイトのような黒色無機顔料、ベンガラ、鉛丹のような赤色無機顔料、群青、コバルトブルーなどの青色無機顔料、黄鉛、亜鉛黄のような黄色無機顔料や、各種の色を有する有機顔料、好ましくは、白色の二酸化チタンを含有する着色ポリエステル樹脂で被覆されていることが好ましい。この着色ポリエステル樹脂は、前記の透明ポリエステル樹脂と同様に単層樹脂であってもよいし、またはそれぞれ特性の異なる複数の種類の樹脂からなる、少なくとも上層、下層およびその間に設ける芯層からなる3層樹脂のような多層樹脂であってもよい。多層樹脂の場合は、前記の透明ポリエステル樹脂と同様に、鋼板と接する下層樹脂は、融解温度がその上に設けるいずれの層の樹脂の融解温度よりも低く、好ましくは5℃以上低く、かつ半結晶化時間が50秒以上で、かつその上に設けるいずれの層の樹脂の半結晶化時間より長い、すなわち結晶化しにくい樹脂であることが好ましい。
前記着色ポリエステル樹脂が、鋼板と接する下層樹脂層と、その上に設けられた芯層樹脂と、さらにその上に設けられた上層樹脂層の3層樹脂からなる場合は、上層樹脂および芯層樹脂のいずれの融解温度とも、下層樹脂の融解温度より高く、好ましくは5℃以上高く、かつ半結晶化時間が下層樹脂の半結晶化時間より短い、すなわち結晶化しやすいことが好ましい。
【0012】
上記の着色ポリエステル樹脂の厚さは5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。厚さが10μm未満の場合は樹脂中に含有する顔料の量が少なく、下地の鋼板の色調を十分に隠蔽できない。また樹脂を鋼板に被覆する作業が著しく困難となり、さらに薄肉化絞り加工を施した後の樹脂層に欠陥が生じやすい。一方、厚さを増加させると十分な下地の隠蔽性が得られ、被覆作業性は良好となるが、50μm以上に厚くすることは経済的に不利となる。
【0013】
上記の着色ポリエステル樹脂は、15〜40重量%の顔料を含有していることが好ましい。含有量が15重量%未満の場合は下地鋼板の色調を十分に隠蔽することができない。
一方、40重量%を超えて含有させると樹脂の密着性や加工性が不良となり、缶に成形加工する際に樹脂の剥離、破断、削れが生じやすくなる。
【0014】
着色樹脂を3層樹脂とする場合は、上層および下層の樹脂の厚さは1〜15μm、芯層の樹脂の厚さは3〜48μmであることが好ましい。この3層樹脂の場合、樹脂層全体で含有する上記の量の顔料の90から100%を芯層に含有させ、上層および下層の顔料の含有量は両層で10%未満とすることが好ましい。このように、上層および下層に含有させる顔料の量を少なくすることにより、缶に成形加工する際の樹脂の剥離、破断、削れを生じにくくし、また上層に含まれる硬質の顔料粒子による成形工具の摩耗も減少させることが可能となる。また3層樹脂においては、下層の樹脂の厚さが極端に薄い場合は加工密着性が不十分となり、上層の樹脂の厚さが極端に薄い場合は成形加工性が不良となる。
またさらに、上記樹脂中に、必要な特性を損なわない範囲で安定剤、酸化防止剤、シリカなどの滑剤を含有させても差し支えない。
【0015】
本発明のポリエステル樹脂被覆鋼板の基板となる鋼板としては、通常の缶用素材として広範に使用されているぶりきや電解クロム酸処理鋼板(ティンフリースチール、以下TFSで示す)などの各種表面処理鋼板、およびアルミニウム合金板を使用することができる。
表面処理鋼板としては10〜200mg/m2の皮膜量の金属クロムからなる下層と、クロム換算で1〜30mg/m2の皮膜量のクロム水和酸化物からなる上層とからなる2層皮膜を鋼板上に形成させたティンフリースチールが好ましく、本発明のポリエステル樹脂との十分な密着性を有し、さらに耐食性も兼ね備えている。ブリキとしては、鋼板表面に錫を0.1〜11.2g/m2のめっき量でめっきし、その上にクロム換算で1〜30mg/m2の皮膜量の金属クロムとクロム水和酸化物からなる2層皮膜を形成させたもの、またはクロム水和酸化物のみからなる単層皮膜を形成させたものが好ましい。いずれの場合も基板となる鋼板は缶用素材として一般的に使用されている低炭素冷延鋼板であることが好ましい。鋼板の板厚さ0.1〜0.32mmであることが好ましい。アルミニウム合金板に関しては、JISの3000系、または5000系のものが好ましく、表面に電解クロム酸処理により、0〜200mg/m2の皮膜量の金属クロムからなる下層と、クロム換算で1〜30mg/m2の皮膜量のクロム水和酸化物からなる上層とからなる2層皮膜を形成させたものか、またはリン酸クロメート処理によりクロム換算で1〜30mg/m2のクロム成分と、リン換算で0〜30mg/m2のリン成分が付着しているものが好ましい。アルミニウム合金板の板厚は0.15〜0.4mmであることが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂を鋼板に被覆する方法としては、公知のフィルム積層法、押出積層法のいずれも適用可能である。
【0016】
フィルム積層法で被覆する場合は、樹脂ペレットを樹脂の融解温度より20〜40℃高い温度で加熱溶融し、Tダイから冷却したキャストロール上にキャストし、延伸せずにコイラーに卷き取り、無配向樹脂フィルムを作製する。一方、長尺帯状の鋼板をアンコイラーから解き戻しながら樹脂の融解温度より20〜40℃高い温度で加熱し、この加熱金属板に無配向樹脂フィルムを解き戻しながら当接し、1対のラミネートロールで挟み付けて圧着した後、直ちに水中に急冷する。押出積層法で被覆する場合は、樹脂ペレットを樹脂の融解温度より20〜40℃高い温度で加熱溶融し、アンコイラーから解き戻される長尺帯状の鋼板上にTダイから直接キャストした後、直ちに水中に急冷する。
また、ポリエステル樹脂と鋼板の間に接着剤を介在させて積層してもよい。この積層方法は、フィルム積層法において鋼板のめっき層が溶解するため、鋼板の温度をあまり高温とすることができないぶりきなどを使用した場合に適用される。本発明において接着剤の種類は特に規定するものではないが、エポキシ/フェノール系接着剤、エポキシ/ユリア系接着剤、ウレタン系接着剤などの接着剤が好適に使用できる。
【0017】
(実施例)
以下、本発明を実施例にてさらに詳細に説明する。
鋼板の片面および他の片面に被覆する表1に示すポリエステル樹脂、および顔料として表2に示す含有量で白色の二酸化チタンを含有させたポリエステル樹脂(以下、白色樹脂という)を、2軸押出機を用いてそれぞれの融解温度(Tm)より30℃前後高い温度に加熱して溶解混合した後、ノズル幅1000mmのTダイ(2層および3層樹脂の場合は2層および3層の共押出が可能なTダイ)に送り込み、ダイノズルから押し出した後、フィルム幅:800mmにトリムし、無配向フィルムとして卷き取った。表1のPETはポリエチレンテレフタレートであり、PETIはエチレンテレフタレートとエチレンイソフタレート共重合ポリエステル樹脂である。また、試料番号17の透明樹脂の下層、および白色樹脂の下層に用いたポリエステル樹脂は、PETI10モル%(67wt%)とPETI25モル%(33wt%)のブレンド樹脂である。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
鋼板として下記に示す表面処理を施した長尺帯状の2種類の鋼板を用意した。
1)TFS
板厚:0.18mm
板幅:800mm
金属クロム量:150mg/m2
クロム水和酸化物量:(クロムとして)18mg/m2
2)ぶりき
板厚:0.18mm
板幅:800mm
錫めっき量:0.2g/m2
クロム水和酸化物量:(クロムとして)7mg/m2
上記のいずれかの鋼板の片面および他の片面に、表1に示すいずれかのポリエステル樹脂、および表2に示すいずれかの白色樹脂の無配向フィルムを、公知の積層装置を用いて積層した。1対のラミネートロールと接触する直前の金属板の温度は、TFSの場合はポリエステル樹脂のTmより約30℃高い温度、ぶりきの場合は200℃とした。ぶりきに積層する場合は、事前にポリエステル樹脂および白色樹脂の無配向フィルムの片面に厚さ:1.0μmのエポキシ/フェノール系接着剤を塗布し乾燥固化し、塗布面がぶりき面と接するようにして積層した。150m/分の積層速度で積層した後、直ちに水中に急冷し、次いで乾燥した。
【0021】
このようにして、片面にポリエステル樹脂、他の片面に白色樹脂を積層したポリエステル樹脂被覆鋼板を作成した。上記のようにして得られたポリエステル樹脂被覆鋼板を、下記のように薄肉化絞り加工法を用いて有底円筒状の缶に成形加工した。
ポリエステル樹脂被覆鋼板を直径:160mmのブランクに打ち抜いた後、白色樹脂被覆面が缶の外面となるようにして、缶底径:100mmの絞り缶とした。次いで再絞り加工により、缶底径:80mmの再絞り缶とした。さらにこの再絞り缶を複合加工により、ストレッチ加工と同時にしごき加工を行い、缶底径:65mmの絞りしごき缶とした。この複合加工は、缶の上端部となる再絞り加工部としごき加工部の間隔は20mm、再絞りダイスの肩アールは板厚の1.5倍、再絞りダイスとポンチのクリアランスは板厚の1.0倍、しごき加工部のクリアランスは元板厚の50%となる条件で実施した。次いで公知の方法で缶上部をトリミングし、ネックイン加工、フランジ加工を施した。
次に、ポリエステル樹脂、およびポリエステル樹脂被覆鋼板の評価方法を説明する。
【0022】
(樹脂層の厚さ)
無配向フィルムをエポキシ系包埋樹脂に埋め込み、5μmの厚さにスライスし、断面を顕微鏡観察して測定した。
(固有粘度(IV値))
ポリエステル樹脂をフェノール/テトラクロロエタンの1:1混合溶液に溶解させた後、30℃の恒温浴槽中でウベローデ粘度計により比粘度を測定し、固有粘度を求めた。
(成形性)
薄肉化絞り加工法を用いて成形加工した缶を肉眼観察し、下記の基準で成形性を評価した。
◎ : 微小クラックやフィルム割れは認められない。
○ : 実用上問題とならない程度のわずかな微小クラックが認められる。
△ : 実用上問題となる程度のクラックおよびフィルム割れが認められる。
× : 成形加工時に破胴する。
(耐食性)
薄肉化絞り加工法を用いて成形加工した缶の缶上部をトリミングし、ネックイン加工、フランジ加工を施した後、水を充填し、缶と同一のポリエステル樹脂被覆鋼板から作成した蓋を卷き締めて密封し、130℃で30分間加熱蒸気中で殺菌処理し、37℃で1カ月間経時させた後開封し、缶内部の錆の発生状況を肉眼観察し、下記の基準で耐食性性を評価した。
◎ : 錆の発生は認められない。
○ : 実用上問題とならない程度のわずかな錆が認められる。
△ : 実用上問題となる程度の錆が認められる。
× : 表面にかなりの錆が認められる。
(下地隠蔽性)
薄肉化絞り加工法を用いて成形加工した缶胴部の外面の色調(白さ)と、二酸化チタンを40重量%含有するポリエステル樹脂の無配向フィルムの色調(白さ)を肉眼で比較観察し、下記の基準で缶胴部外面の下地鋼板の隠蔽性を評価した。
◎ : 樹脂フィルムの色調と殆ど同一の色調を示す。
○ : 実用上問題とならない程度にわずかに色調の差(白さの低下)が認められる。
△ : 実用上問題となる程度の色調の差(白さの低下)が認められる。
× : 色調にかなりの差(白さの低下)が認められる。
(フレーバー性)
薄肉化絞り加工法を用いて成形加工した缶の缶上部をトリミングし、ネックイン加工、フランジ加工を施した後、内容物としてコーヒー飲料を充填し、缶と同一のポリエステル樹脂被覆鋼板から作成した蓋を卷き締めて密封し、加熱蒸気(130℃)中で30分間加熱して殺菌処理を施した。次いで、37℃で3週間経時させた後開封し、50人のパネラーにより内容物の経時前後のフレーバーの変化の程度を調査し、経時前後のフレーバーの差が無い、と判定したパネラーの数を基準としてフレーバー性を評価した。
◎ : ≧40
○ : ≧35
△ : <35、≧30
× : <30
これらの評価結果を表3に示す。
【0023】
【表3】
表3に示すように、本発明のポリエステル樹脂被覆鋼板は、いずれも成形加工性に優れ、かつ良好な耐食性、色調およびフレーバー性を示すが、缶内面となる側において、上層のポリエステル樹脂が下層のポリエステル樹脂の融解温度よりも高い融解温度を有する2層の樹脂で鋼板を被覆し、缶外面となる側において、上層と芯層が下層のポリエステル樹脂の融解温度よりも高い融解温度を有し、かつ上層と下層の白色顔料含有量を芯層の白色顔料含有量より少なくさせた3層の樹脂で金属板を被覆することにより、加工性、色調、耐食性およびフレーバー性が優れたものになる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、固有粘度が0.6〜1.4のポリエステル樹脂からなり、かつ鋼板の缶内面となる側を、上層のポリエステル樹脂が下層のポリエステル樹脂の融解温度よりも高い融解温度を有する2層の樹脂で金属板を被覆し、缶外面となる側を、上層と芯層が下層のポリエステル樹脂の融解温度よりも高い融解温度を有し、かつ上層と下層の白色顔料含有量を芯層の白色顔料含有量より少なくさせた3層の樹脂で被覆した鋼板であり、薄肉化絞り加工のような厳しい成形加工を施しても樹脂にクラックが生じたり割れたりすることがなく、優れた加工性および耐食性を示す。また缶外面において優れた白さの色調を示す。
さらに、本発明のポリエステル樹脂被覆鋼板を用いた缶は、内容物のフレーバー性に優れている。
Claims (5)
- 3層の無配向ポリエステル樹脂を鋼板の表面に被覆した着色ポリエステル樹脂被覆鋼板であって、
前記無配向ポリエステル樹脂の固有粘度が0.6〜1.4であり、
前記3層の無配向のポリエステル樹脂のうち、芯層が、上層及び下層よりも多く着色顔料を含有しており、
前記上層及び芯層の融解温度が前記下層の融解温度よりも高い、ことを特徴とする缶形成用ポリエステル樹脂被覆鋼板。 - 前記3層の無配向ポリエステル樹脂を鋼板の表面に被覆した着色ポリエステル樹脂は、顔料を15〜40重量%含有していることを特徴とする請求項1に記載の缶形成用ポリエステル樹脂被覆鋼板。
- 前記下層は、顔料を含まないことを特徴とする請求項1または2に記載の缶形成用ポリエステル樹脂被覆鋼板。
- 前記上層及び下層の厚さが、1〜15μmであり、前記芯層の厚さが3〜48μmであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の缶形成用ポリエステル樹脂被覆鋼板。
- 前記着色顔料を含有した無配向ポリエステル樹脂を被覆した鋼板の表面と反対の表面に、着色顔料を含有しない無配向の透明ポリエステルを2層積層し、
前記着色樹脂を含有したポリエステル樹脂を被覆した面が缶外面となるように、
前記着色顔料を含有しないポリエステル樹脂を被覆した面が缶内面となるようにすることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の缶形成用ポリエステル樹脂被覆鋼板。
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