JP3953742B2 - 気体炭化水素の固定化材とその使用及び炭化水素の固形化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体炭化水素を効率よく固定化する気体炭化水素固定化材とその製造方法、及び気体炭化水素を前記固定化材を用いて固定化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
石油化学工業、天然ガス工業の規模が年々拡大され、有機化合物が大量生産、大量消費されるようになったことに伴い、各種化学工場、石油化学コンビナートやタンカー、トラック輸送、パイプライン等の事故による大規模な火災、爆発事故など、人類、生物の生存をも脅かす公害や事故が世界的に頻発しており、石油化学物質をはじめとする有機化合物、とりわけ気体炭化水素の安全な取り扱い、輸送、備蓄時の適切な処理が大きな問題となっている。これらの爆発、火災、漏出事故に対する根本的な対策の1つは、各種化学工場、石油化学コンビナートや輸送、貯蔵設備で取り扱う、大量の気体炭化水素、それらの混合物を、安全な固形状に変化させ、必要に応じて、元の気体状態に戻すことである。安全で取扱が容易な固形状にすることによって、多くの事故を未然に防ぎ、且つ、巨大で、多くの危険性を有する貯蔵施設、パイプライン、運搬形態、冷凍、保温施設等を、大幅に変更することが可能になるものと思われる。
【0003】
このような諸点を考慮すると、各種化学工場、石油化学コンビナートや輸送、貯蔵施設で取り扱われている多種多様な気体炭化水素、混合ガスを容易に固定化して安全な固形形態に変化させ、必要に応じて元の気体炭化水素に戻す方法の開発が望まれる。何らかの化学反応を起こさせ、気体炭化水素を他の安全な物質に変えてしまうことは、何ら解決にはならず、化学反応を伴う方法は避けなければならない。
このように考えると、物理化学的な手段を用いて、そのままの形で固形化する方法が、最も好ましいと考えられる。
【0004】
気体炭化水素の固定化材が備えるべき条件としては、▲1▼工場内の反応装置を傷めることなく、容易に、低温で、気体炭化水素を固定して固形化することが出来、また、固形化された複合体から、容易に元の気体炭化水素を回収でき、更に、回収された固定化材のリサイクル使用が可能であること、▲2▼化学的に比較的安定であること、▲3▼大量に使用されることが想定されるので、安全かつ無害な物質であり、万一、反応装置外への流出が発生し回収が困難となっても、それ自体が環境中に棲む生物及び環境に対し悪影響を及ぼす危険が少ないこと、などが挙げられる。
このような物理化学的吸着材は、未だに実用化されておらず、実験段階でも殆ど提案されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明は、上記のような条件を満足する気体炭化水素固定化材を提供することを目的とする。また、本発明はこの気体炭化水素固定化材の製造方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、気体炭化水素類を物理化学的方法によって効率よく固形化しうる方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、種々の長さのアルキル基を有する脂肪族カルボン酸系化合物の水中における溶解、乳化、分散挙動について検討する過程で、これらのカルボン酸系化合物が高温では完全に水に溶解すること、完全に溶解した後に塩化ナトリウム水溶液を高温で加えることによっても完全に溶解した状態が保たれること、完全溶解状態から撹拌、徐冷することによって、初めて、カルボン酸系化合物は微細、均一な繊維状で集合した結晶体となって析出すること、更に、このような繊維状集合結晶体が、特に効率よく各種気体炭化水素を吸着・固形化することを見出した。本発明はこの知見に基づき検討を重ね、なされたものである。
【0007】
すなわち本発明は、
(1)純水中に脂肪族カルボン酸金属塩を完全に溶解させた後、撹拌、徐冷することによって析出形成させた繊維状集合結晶体よりなる、常温(20℃)、常圧(0.1MPa)で気体である炭化水素の固定化材、
(2)純水中に脂肪族カルボン酸金属塩を完全に溶解させた後、塩化ナトリウム水溶液を加え、撹拌、徐冷することによって析出形成させた繊維状集合結晶体よりなる、常温(20℃)、常圧(0.1MPa)で気体である炭化水素の固定化材、
(3)(1)又は(2)項記載の繊維状集合結晶体よりなる固定化材を用いて、常温(20℃)、常圧(0.1MPa)で気体である炭化水素を固定化することを特徴とする気体炭化水素の固形化方法、
(4)純水中に脂肪族カルボン酸金属塩を完全に溶解させた後、撹拌、徐冷することによって繊維状集合結晶体として析出させることを特徴とする常温(20℃)、常圧(0.1MPa)で気体である炭化水素の固定化材の製造方法、及び
(5)純水中に脂肪族カルボン酸金属塩を完全に溶解させた後、塩化ナトリウム水溶液を加え、撹拌、徐冷することによって繊維状集合結晶体として析出させることを特徴とする常温(20℃)、常圧(0.1MPa)で気体である炭化水素の固定化材の製造方法
を提供するものである。
本発明に用いられる繊維状集合結晶体とは微細な1本の繊維状結晶が無数に集合したものであり、繊維状結晶の1本の太さは好ましくは1μm以下、長さは好ましくは50〜1000μm、より好ましくは100〜500μmである。また、1本の繊維状結晶は、更に細い多数の繊維状結晶より構成されている。
また、本発明でいう気体炭化水素とは常温(20℃)、常圧(0.1MPa)で気体のものをいう。
なお、本発明の気体炭化水素固定化材として作用する繊維状集合体からなる結晶体は、脂肪族カルボン酸金属塩を純水中で加熱溶解し、もしくは、更に塩化ナトリウム水溶液を加えた後、撹拌、徐冷することによって形成される。この集合結晶体は、通常室温以下で長期間安定に繊維状集合結晶体の分散状態を維持するものである。また、本発明において、固形化とは、上記繊維状集合結晶体と複合体を形成して固形状になることをいう。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において用いる固定化材の製造に用いる脂肪族カルボン酸金属塩(以下、カルボン酸金属塩ということがある)は、好ましくは直鎖状のアルキル鎖を有するカルボン酸の金属塩である。カルボン酸金属塩の炭素数は、好ましくは8〜22、特に好ましくは10〜18である。金属の種類は、好ましくはナトリウム、カリウム、である。即ち、加熱によって純水中に完全に溶解し、且つ、そのままもしくは塩化ナトリウム水溶液を加えて撹拌、徐冷することによって繊維状に析出することが出来るだけの、適度な長さのアルキル鎖長を有していることが必要である。
直鎖のアルキル基を有するカルボン酸ナトリウムの場合、炭素数が8〜10の場合には、加える塩化ナトリウムの濃度を濃くし、或いは、室温以下で冷却することが必要となることもある。炭素数が19以上の場合には、完全溶解のために100℃以上に温度を上げたり、塩化ナトリウム濃度を低くする等の工夫が必要となる。
直鎖のアルキル基を有するカルボン酸カリウムの場合もこれに準ずる。
カルボン酸金属塩として、具体的には例えば、オクタン酸ナトリウム、ノナン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム、ウンデカン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、トリデカン酸ナトリウム、テトラデカン酸ナトリウム、ペンタデカン酸ナトリウム、ヘキサデカン酸ナトリウム、ヘプタデカン酸ナトリウム、オクタデカン酸ナトリウム、テトラデカン酸カリウム、ヘキサデカン酸カリウム、オクタデカン酸カリウムなどがあげられる。
脂肪族カルボン酸ナトリウムは、古くから、石鹸として用いられ、その安全性は証明されているものである。脂肪族カルボン酸カリウムも、薬用石鹸として広く用いられ、やはり安全性が証明されている。更に、ナトリウム、カリウムは、本来、海水中に大量に含まれ、万一海洋中に流出、残存しても、環境に悪影響を与えるものではない。また、河川、湖沼中にも種々の濃度で含まれており、既に含まれている程度の濃度であれば、万一流出、残存しても、環境に悪影響を与えるものではない。
【0009】
上記で用いる塩化ナトリウム水溶液は、純水に種々の量の塩化ナトリウム結晶を溶解させて作られる。僅かに水に溶けている低濃度から、溶解度の上限まで、一般に何れの濃度でも有効であるが、肝腎なことは、カルボン酸金属塩との組み合わせによって、繊維状の集合体として結晶体が析出するのに必要な濃度以上であり、且つ、析出した繊維状集合結晶体が、気体炭化水素と反応することである。また、必ずしも純粋の塩化ナトリウムである必要はなく、海水や天然水の構成成分であって、人間やその他の生物に無害な金属塩で、溶解したカルボン酸塩を析出させるだけの濃度を有していればよい。
【0010】
本発明の固定化材の製造方法においては、上記カルボン酸金属塩を先ず完全に純水中に溶解させること、次いで、必要に応じて、金属イオンを含有する水溶液を加えて完全に混合すること、次いで、混合しながら徐冷することによって、水溶液中に繊維状集合体として結晶を析出させることが特に重要である。この繊維状集合体としての結晶を用いることによって、気体炭化水素を極めて効率よく吸着、固形化し、そのようにして生成した複合体を塊として回収することが可能となる。これは、カルボン酸金属塩の繊維状集合体としての結晶が、表面積が大きいため、気体炭化水素を効率的に吸着し、この気体炭化水素吸着体が互いにファンデルワールス力によって引き合って結合して成長し最終的には球状の固形状物となるためであると考えられる。
【0011】
本発明方法において繊維状集合結晶体を形成させて気体炭化水素固形化材を製造する実施態様は、以下の通りである。
▲1▼カルボン酸金属塩を純水中に加えて加熱、完全に溶解後、激しく撹拌しながら徐々に室温まで冷却させる方法
▲2▼カルボン酸金属塩を純水中に加えて加熱、完全に溶解後、予め加熱して置いた塩化ナトリウム水溶液を加え、激しく撹拌しながら徐々に室温まで冷却させる方法
▲3▼上記▲2▼の方法の、塩化ナトリウム水溶液の変わりに、種々の金属塩水溶液を用いる方法
▲4▼上記▲2▼もしくは▲3▼の方法の、室温まで冷却させた後、更に0℃付近に長時間保って、繊維状集合体からなる結晶体を析出させる方法
などがある。また、
▲5▼上記▲1▼〜▲4▼の方法を用いて、複数の種類のカルボン酸塩の混合繊維状集合物の結晶体を析出させる方法
等がある。
【0012】
固定化材を調製するために繊維状集合結晶体を析出させる際のカルボン酸金属塩/水のモル比は、好ましくは0.1/1000〜10/1000、さらに好ましくは0.5/1000〜2/1000である。また、繊維状集合結晶体析出時の塩化ナトリウム/水のモル比は、好ましくは0/1000〜加熱時の飽和濃度である。
【0013】
この場合先ず純水中にカルボン酸塩を完全に溶解させるために加熱を行う。加熱温度は、用いるカルボン酸金属塩の種類により異なるが、例えばペンタデカン酸ナトリウムからオクタデカン酸ナトリウムの場合には、90℃〜99℃で30分程度加熱する。炭素鎖長の短いカルボン酸塩の場合には、更に低温の加熱でもよい。炭素鎖長の長いカルボン酸塩の場合には、耐圧容器を用いて100℃以上に加熱することが必要な場合もある。いずれの場合にも加熱することによってカルボン酸金属塩が完全に溶解した後、激しく撹拌するか、もしくは、加熱した塩化ナトリウム水溶液もしくは各種金属塩水溶液を加えた後、激しく撹拌する。室温に低下するまで激しい撹拌を継続する。
上記のようにすることで、極めて微細な繊維状集合結晶体を析出させることができる。
形成された繊維状集合結晶体は、遠心分離等の通常の手段で、あるいは繊維状集合結晶体を金属塩水溶液中からすくいあげることによっても、NaCl水溶液等と分離できるが、通常は水中に分散したままの状態で使用する。この繊維状集合結晶体は形成された後は極めて安定であり、長期間室温に保持しても、或いは高温下でも、通常、安定に保持される。例えばペンタデカン酸ナトリウムより得られた繊維状集合結晶体の場合には、通常マイナス100℃〜プラス60℃程度までは極めて安定である。
【0014】
上記の固定化材は、例えば気体炭化水素を導入して緩やかに振蕩するだけで、選択的に気体炭化水素を吸着する。繊維状集合結晶体に対して気体炭化水素の割合が多すぎない範囲では、実質的に気体炭化水素を全て吸着し、水上に浮遊する。気体炭化水素を吸着した後の複合体は、気体炭化水素の割合が小さいときには微粒子状複合体として、気体炭化水素の重量比が繊維状集合結晶体の数倍に達してからは、全体として球状の塊として水上に浮遊する。このものは容易に水中からすくいあげることができる。
本発明の固定化材が吸着、固形化しうる気体炭化水素としては、n-ブタン、イソブタン、1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン、1,3−ブタジエン、プロパン、プロピレン、などがあげられる。
また、本発明で、気体炭化水素の吸着、固形化を助けるために液体炭化水素を若干添加してもよい。用いられる液体炭化水素としては、n-ペンタンからn-ヘキサデカンまでの、室温で液体の総てのn-パラフィン、分岐状パラフィン、オレフィン、シクロヘキサン等の脂環式パラフィン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、軽油、灯油、流動パラフィン等の混合炭化水素が挙げられるが、固定化後の取扱、分解、回収のし易さ等を考慮すれば、不安定なオレフィン、混合炭化水素を敢えて用いる必要はなく、比較的単純で安定な構造の、パラフィン系炭化水素、脂環式パラフィン、芳香族炭化水素を用いればよい。
固定化しようとする気体炭化水素の種類にもよるが、気体炭化水素単独の場合には、通常、本発明の繊維状集合結晶体1gに対し10gから20gの気体炭化水素を吸着させることができる。また、液体炭化水素を併用する場合には、固定化された気体炭化水素が遙かに安定になるので、通常、本発明の繊維状集合結晶体1gに対し10gから30gの気体炭化水素を吸着させることができる。
本発明の繊維状集合結晶体に気体炭化水素を吸着し、固定化させるには、好ましくは1分以上、気体炭化水素と繊維状集合結晶体を接触させればよく、緩やかに振蕩するするのがさらに好ましい。
【0015】
気体炭化水素のみを固定化した後の固形状複合体は、一般に、固形状複合体の蒸気圧が、大気圧よりもほんの少し高いので、密閉容器に保存することが必要である。従って、元の気体炭化水素を得るためには、常温で、大気圧下に開放し、通常の方法で気体炭化水素を回収すればよい。気体炭化水素と液体炭化水素を一緒に固定化した後の固形状複合体は、一般に、固形状複合体の蒸気圧が、大気圧よりも低いので、密閉容器に保存することは必ずしも必要でないが、より確実に安全を確保するためには、やはり、簡易な密閉容器に保存することが望ましい。従って、この場合には、元の気体炭化水素を得るためには、40〜60℃程度に加熱して、気体炭化水素を大気圧下に開放し、通常の方法で回収すればよい。何れにしろ、カルボン酸金属塩と気体炭化水素、液体炭化水素(併用している場合)の各成分に容易に分離することができる。カルボン酸金属塩は分離して水の側に移行する。
【0016】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
実施例1
高純度(99%以上)のペンタデカン酸ナトリウム132mg(0.0005モル)、純水4.5ml(0.25モル)を秤量してガラス容器に入れ、密閉し、95℃に加熱してペンタデカン酸ナトリウムを完全に溶解した。別途、塩化ナトリウム58.5mg(0.010モル)を純水4.5ml(0.25モル)に完全に溶解した水溶液を95℃に加熱しておく。両液を95℃で混合し、直ちに混合液を激しく撹拌する。室温に冷却するまで、20分程度撹拌を継続することによって、極めて微細且つ均一な繊維状集合結晶体が全液にわたって析出する。一昼夜室温で放置することによって、繊維状集合結晶体は更に安定なものになり、微細な結晶状態を保ったままお互いに引きつけ合って、水面上に集まろうとするため、下部がほんの少しだけ、無色透明の水溶液になる。図1にこのようにして調製したペンタデカン酸ナトリウムの繊維状集合結晶体の顕微鏡写真(倍率40倍)を示す。
この繊維状集合結晶体の分散液を、氷、塩化ナトリウム混合寒剤を用いて−10〜−20℃程度に冷却後、n-ブタン2gを加えて、密栓後、室温に戻しながら、緩やかに振蕩すると、n-ブタンは直ちに繊維状集合結晶体に吸着され、全体として白い、球状の複合体となり、同時に、繊維状集合結晶体が分散していた塩化ナトリウム水溶液が分離する。分離した塩化ナトリウム水溶液にはペンタデカン酸ナトリウムもn-ブタンも含まれておらず、全くの無色透明である。また、球状複合体の方にも、水は殆ど含まれていない。
ここで出来た、n-ブタンを含む球状複合体の蒸気圧は、大気圧よりも僅かに高いので、蓋を開けることによって複合体は沸騰し始め、沸騰は、ブタンがなくなるまで継続する。
【0017】
実施例2
ペンタデカン酸ナトリウムに代えてヘキサデカン酸ナトリウム139mg(0.0005モル)を用いた以外は実施例1と全く同様にしたところ、全く同様にして均一の繊維状集合結晶体が出来た。これにn-ブタン1.5gを添加し、緩やかに振蕩したところ、安定な、球状の複合体となり、分離した塩化ナトリウム水溶液も無色透明であった。
【0018】
実施例3
実施例1の塩化ナトリウム水溶液に変えて、濃度の異なる2種類の塩化ナトリウム水溶液を用いたところ、n-ブタン添加量が重量比で10〜15倍まで、同様の結果が得られた。
【0019】
実施例4
実施例1のペンタデカン酸ナトリウムに代えて、0.0005モルのウンデカン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、トリデカン酸ナトリウム、テトラデカン酸ナトリウム、ヘプタデカン酸ナトリウム、オクタデカン酸ナトリウムをそれぞれ用いたところ、n-ブタンが、それぞれのカルボン酸ナトリウムに対して、重量比で10倍〜30倍まで、安定な複合体が得られ、無色透明の塩化ナトリウム水溶液の上に浮遊した。
【0020】
実施例5
実施例1のペンタデカン酸ナトリウムに代えて、0.0005モルのデカン酸ナトリウムを用いたところ、塩化ナトリウム水溶液を加え、撹拌し、室温に放置しても、繊維状集合結晶体は全く析出しなかった。そこで当該混合液を4℃で一日保ったところ、同様な繊維状集合結晶体が析出し、析出後は、室温でも長時間安定であった。図2にこのようにして調製したペンタデカン酸ナトリウムの繊維状集合結晶体の顕微鏡写真(倍率100倍)を示す。この繊維状集合結晶体分散液に、実施例1と同様にn-ブタンを加えたところ、デカン酸ナトリウムに対して、20倍のn-ブタンの固定ができ、球状複合体を得ることが出来た。
【0021】
実施例6
実施例1、3、4のn-ブタンに代えて、イソブタン、1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン、1,3−ブタジエン、プロパン、プロピレン、を用いたところ、それぞれ、ペンタデカン酸ナトリウムに対して10〜30倍の重量比まで、固定され、球状複合体を得ることが出来た。残された水溶液は、無色透明又はほんの少し白濁した状態であった。またこれらの複合体の場合には、常温で大気圧下に開放することによって、容易に元のそれぞれの炭化水素成分を回収することが出来た。
【0022】
実施例7
実施例1〜6の各場合のそれぞれについて、気体炭化水素とともに、液体炭化水素としてn-ヘプタンまたはn-テトラデカンを、繊維状集合結晶体の5〜20倍の重量加えたところ、気体炭化水素の重量が、繊維状集合結晶体に対して10〜30倍の重量まで固定化され、堅い球状の複合体を得ることが出来た。残された水溶液は、無色透明又はほんの少し白濁した状態であった。またこれらの複合体の場合には、常温で大気圧下に開放することによっても安定に存在することが出来た。従って、繊維状集合結晶体(実際には、液体炭化水素を僅かに含有する蜂の巣状或いは軽石状の多孔質複合体)、液体炭化水素、気体炭化水素、水溶液、の各成分に分離するには、40〜60℃程度に加熱することが必要である。
【0023】
【発明の効果】
本発明の、気体炭化水素の固定化材は、主としてC3〜C4の炭化水素類を選択的に効率よく吸着、固形化させることができる。本発明の繊維状集合結晶体は気体炭化水素を吸着、固定することによって固形状複合体を形成し、したがって安定に簡単な容器中に保持することが容易である。本発明の固定化材は極めて安全な脂肪族カルボン酸金属塩と金属塩水溶液のみから構成されているので、固定化材自体による自然環境の汚染や爆発、火災事故等も防止できる。また、本発明に用いられる繊維状集合結晶体は室温において長期間安定に繊維状集合結晶体の分散状態を維持するため取扱いが容易で、気体炭化水素と液体炭化水素の両方を固定化した場合にも、簡単な加熱によりカルボン酸金属塩と気体炭化水素と液体炭化水素に分離することができ、さらにカルボン酸金属塩は、繰り返し、気体炭化水素の固形化に再利用できる。
本発明の固形化方法は、気体炭化水素の安全な取扱に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた繊維状集合結晶体の顕微鏡写真である。
【図2】実施例5で得られた繊維状集合結晶体の顕微鏡写真である。
Claims (5)
- 純水中に脂肪族カルボン酸金属塩を完全に溶解させた後、撹拌、徐冷することによって析出形成させた繊維状集合結晶体よりなる、常温(20℃)、常圧(0.1MPa)で気体である炭化水素の固定化材。
- 純水中に脂肪族カルボン酸金属塩を完全に溶解させた後、塩化ナトリウム水溶液を加え、撹拌、徐冷することによって析出形成させた繊維状集合結晶体よりなる、常温(20℃)、常圧(0.1MPa)で気体である炭化水素の固定化材。
- 請求項1又は2記載の繊維状集合結晶体よりなる固定化材を用いて、常温(20℃)、常圧(0.1MPa)で気体である炭化水素を固定化することを特徴とする気体炭化水素の固形化方法。
- 純水中に脂肪族カルボン酸金属塩を完全に溶解させた後、撹拌、徐冷することによって繊維状集合結晶体として析出させることを特徴とする常温(20℃)、常圧(0.1MPa)で気体である炭化水素の固定化材の製造方法。
- 純水中に脂肪族カルボン酸金属塩を完全に溶解させた後、塩化ナトリウム水溶液を加え、撹拌、徐冷することによって繊維状集合結晶体として析出させることを特徴とする常温(20℃)、常圧(0.1MPa)で気体である炭化水素の固定化材の製造方法。
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