JP4311612B2 - 繊維状脂肪酸塩の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば重油や軽油などの炭化水素を効率よく吸着し、固形化することができる繊維状脂肪酸塩の製造方法、および繊維状脂肪酸塩を使用する炭化水素を固形化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
石油化学工業の規模が年々拡大され、有機化合物が大量生産、大量消費されるようになったことに伴い、各種化学工場、石油化学コンビナートやタンカーの事故による河川、湖沼、海洋などの汚染、また火災や爆発事故など、人類、生物の生存を脅かす公害や事故が世界的に頻発しており、石油化学物質をはじめとする炭化水素を含む有機化合物の安全な取り扱い、輸送、備蓄、事故発生後の適切な処理が大きな問題となっている。これらの公害や、爆発、火災、漏出事故などに対する根本的な対策の1つとしては、安全に貯蔵もしくは輸送が行える装置を設計することによって、事故そのものを起こさないことであるが、次善の策として、事故が起こったときに、速やかに適切な処置を行うことが望ましい。
【0003】
化学工場、石油化学コンビナートやタンカーの事故により水面が汚染されたとき、従来は多くの場合、そのまま放置して自然に蒸発、希釈、分解されるのを待つか、界面活性剤などを大量に散布して強制的に希釈するかの、いずれかの方法が採用されてきた。しかしこれらの方法では、長期ないしは短期のいずれの視点からも環境に悪影響を及ぼすのは避けられず、いずれも満足できる方法とは言い難い。
また、オイルフェンスを用いて流出油を囲い込み、油回収船で汚染された海水と一緒に汲み上げ、密度差によって分離して海水を海に戻す方法も行われているが、効率は悪く、結果的には流出油の大半は拡散して回収不可能となり、そのまま放置されている。
その他に、海水中に生息する微生物を用いて流出油を分解する試みもなされているが、未だ実験段階で実用化には程遠い。
【0004】
このような現状を考慮すると、河川、湖沼、海上に流出した油を、できるだけそのままの形で速やかに吸着、回収する技術の開発が望まれている。しかしながら、水上、水中に広範囲に容易に拡散する油の特性を考えると、機械的、物理的な回収は極めて困難だと思われる。また、油が流出した水中で何らかの化学反応を起こさせ流出油を他の安全な物質に変えてしまうことは一見望ましい方法のようにも見えるが、広い海洋中などで未知の新たな物質を大量に生産し、分散させてしまう可能性も大きく、従って、化学反応を伴う方法は避けなければならない。
このように考えると、物理化学的な手段を用いて、流出油をそのままの形で吸着、回収する方法が最も好ましいと考えられる。
【0005】
海面に流出した油の固形化材が備えるべき条件としては、▲1▼海水中の塩分で機能が損なわれずに作用し、油とともに固形化材が容易に回収でき、回収された固形化材のリサイクル使用が可能であること、▲2▼化学的に比較的安定であること、▲3▼大量に使用されることが想定されるので、安全かつ無害な物質であり、万一、海洋への流出が発生し回収が困難となっても、それ自体が海洋に棲む生物および環境に対し悪影響を及ぼす危険が少ないこと、などが挙げられる。
更に、河川、湖沼などの淡水、硬水中に油が流出した場合には、それぞれの水に含まれるイオンの種類、濃度に影響を受けることなく、固形化材が効率よく流出油に作用して、上記海水中と同様の働きをすることが必要である。
このような物理化学的固形化材は、現在のところゲル化剤として市販されているものも含めて極めて効率が悪く、十分に実用化されているとは言い難い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような条件を満足する油類固形化材として使用しうる繊維状脂肪酸塩を脂肪酸および塩基より工業的に有利に製造する方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、河川、湖沼、もしくは海上に流出した油類を物理化学的吸着によって効率よく回収しうる方法をも提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、種々の長さのアルキル基を有する脂肪酸および塩基の水中における溶解、乳化、分散挙動について検討する過程で、脂肪酸および塩基が高温では完全に水に溶解すること、完全に溶解した後に塩化ナトリウム水溶液を高温で加えることによっても完全に溶解した状態が保たれること、完全溶解状態から攪拌、冷却することによって、均一な繊維状脂肪酸塩が析出すること、更に、このような繊維状脂肪酸塩が、効率よく重質油、軽質油などの混合油類を吸着・固形化することを見出し、このような知見に基づきさらに種々検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1) 水の存在下に脂肪酸と塩基とを反応させて得られる反応混合物を冷却し、脂肪酸塩を繊維状に析出形成させることを特徴とする繊維状脂肪酸塩の製造方法、
(2) 水の存在下に脂肪酸と塩基とを反応させて得られる反応混合物に塩を加え、ついで反応混合物を冷却し、脂肪酸塩を繊維状に析出形成させることを特徴とする繊維状脂肪酸塩の製造方法、
(3) 脂肪酸と塩基との反応を攪拌下に行うことを特徴とする上記(1)または(2)記載の繊維状脂肪酸塩の製造方法、
(4) 反応混合物を冷却前に熟成させることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の繊維状脂肪酸塩の製造方法、
(5) 脂肪酸が炭素数6〜30の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸であり、1塩基酸、2塩基酸または3塩基酸であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の繊維状脂肪酸塩の製造方法、
(6) 塩基が水酸化ナトリウムであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の繊維状脂肪酸塩の製造方法、
(7) 脂肪酸と塩基との反応の反応温度が60〜300℃であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の繊維状脂肪酸塩の製造方法、
(8) 塩がボウショウ、リン酸塩、硝酸塩、食塩から選ばれる1以上であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の繊維状脂肪酸塩の製造方法、
(9) 繊維状脂肪酸塩を気体炭化水素と接触させることを特徴とする気体炭化水素の固化方法、
(10) 繊維状脂肪酸塩を液体炭化水素と接触させることを特徴とする液体炭化水素の固化方法、
(11) 繊維状脂肪酸塩を食用油又は廃油と接触させることを特徴とする油の固化方法、
に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられる脂肪酸は、炭素数が6〜30、好ましくは8〜22、特に好ましくは10〜18である飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、また遊離の脂肪酸でもよい。さらに本発明において用いられる脂肪酸は1塩基酸、2塩基酸また3塩基酸でもよく、塩基と併せて水中に完全に溶解し、所望により攪拌下に塩を加えて冷却することによって繊維状に析出することができるだけの、適度な長さのアルキル鎖長を有していることが好ましい。
【0010】
上記脂肪酸としては、より具体的には、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、カプロレイン酸、ラウロレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸などの他、ヤシ油、パーム核油、パーム油、大豆油、米糠油、豚脂、牛脂、魚油、落花生油などの動植物油脂、あるいはこれら動植物油脂の硬化油脂肪酸などが挙げられ、これらの脂肪酸は1種単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用される。
【0011】
本発明において用いられる塩基の種類としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウムなどが挙げられる。好ましくは水酸化ナトリウムが用いられる。
【0012】
上記脂肪酸は、塩基とともに攪拌下で加熱することによって水中に完全に溶解され、そのままもしくは攪拌下で塩を加えて冷却することによって、繊維状脂肪酸塩を析出することができる。
該脂肪酸および塩基を反応させる際の加熱温度は、通常約60〜300℃程度、好ましくは約100〜180℃程度であるが、脂肪酸が有しているアルキル鎖の長さによって異なる。
【0013】
本発明に係る固形化材を調製するために繊維状脂肪酸塩を析出させる際の脂肪酸/水のモル比は、好ましくは約1/10,000〜1/100程度、さらに好ましくは約1/50,000〜5/1,000程度である。また、塩基/脂肪酸のモル比は、好ましくは約0.5/1〜2/1程度、さらに好ましくは約0.8/1〜1.2/1程度である。
【0014】
脂肪酸と塩基を水中で溶解させた水溶液に、所望により攪拌しながら塩を加える。そのような塩としては、例えば食塩、ボウショウ、例えばリン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸塩、例えば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の硝酸塩などが挙げられ、これらの塩のうち1種単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いてよい。好ましくは食塩である。
【0015】
本発明の繊維状脂肪酸塩の製造方法においては、上記脂肪酸と塩基を先ず攪拌下で完全に純水中に溶解させ、次いで必要に応じて攪拌下に塩を含有する水溶液を加えて完全に混合し、冷却することによって水溶液中に繊維状脂肪酸塩を析出させることが特に好ましい。この繊維状脂肪酸塩を用いることによって、流出油類を極めて効率よく吸着し、炭化水素を巨視的な塊として回収することが可能となる。また、反応混合物を所望により冷却する前に約1時間程度熟成させてもよい。
【0016】
本発明の方法により形成された繊維状脂肪酸塩は、例えば重油等の油類で汚染された海水中に投入するだけで、繊維状脂肪酸塩は油類と接触して選択的に重油を吸着する。繊維状脂肪酸塩に対して重油の割合が過剰でない範囲では、実質的に重油を全て吸着し、浄化された海水上に浮遊する。重油を吸着した後の繊維状脂肪酸塩は、重油の割合が小さいときには微粒子状集合体として、重油の重量比が繊維状脂肪酸塩の数倍に達してからは、全体として堅い強固な球状塊(あるいは玉子状の)として海上に浮遊する。これは固形状を保ち、網や熊手などを用いる通常の手段で、海水中からすくいあげることによって海水と分離できる。
【0017】
本発明の繊維状脂肪酸塩からなる固形化材が吸着、回収しうる油類としては、A重油、C重油、原油、流動パラフィン、軽油、灯油などの混合油、精製された各種炭化水素、ハロゲン化炭化水素、即ちn−パラフィン類、オレフィン類、分岐状パラフィン類、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、芳香族炭化水素類などが挙げられる。回収しようとする油類の種類にもよるが、通常、本発明の繊維状脂肪酸塩1gに対して約10g〜100g程度の油類を吸着させることができる。本発明の繊維状脂肪酸塩に油類を吸着させるには、好ましくは1分以上、油類と繊維状脂肪酸塩を接触させればよく、緩やかに振蕩するのがさらに好ましい。
【0018】
油類を吸着した後の固形化物(固形状集合体)は、流出水から分離、回収後、水を加え、加熱することによって、繊維状脂肪酸塩と回収した油類の各成分に分離することができる。繊維状脂肪酸塩は分離して水の側に移行し、油類は、水から相分離でき、回収することができる。また、大半の繊維状脂肪酸塩は、再び油類吸収材として使用しうる繊維状脂肪酸塩を製造するのに用いることができ、繰り返し使用することができる。脂肪酸塩と油類の分離のための加熱は、通常80℃以上とするのが好ましい。
【0019】
本発明の繊維状脂肪酸塩からなる固形化材は、例えば、流出油事故の発生した海洋、河川および沼湖などの現場において、流出油に直接散布すればよい。散布量は、流出油の種類や現場の状況および上記の窒素源の種類や濃度などによって左右され、特に限定されないが、通常は流出油に対して約1〜30重量%程度、好ましくは約5〜20重量%程度である。
【0020】
また、本発明の固形化材は、食用油のみならず食用油の廃油、機械油、機械油の廃油にも適用することができる。そのような油としては特に限定されず、例えば食用油としては、大豆油、綿実サラダ油、菜種白絞油、コーン白絞油、サフラワーサラダ油、パーム油、ひまわり油、米油、ごま油、オリーブ油などが挙げられる。本発明の固形化材の量は固形化しようとする食用油の種類にもよるが、通常、本発明の固形化材1部に対し約15〜100部程度の油類を吸着させることができる。本発明の固形化材に食用油類を吸着させるには、好ましくは1分以上、室温あるいは室温〜−20℃の範囲において、食用油類と固形化材を接触させればよく、緩やかに振蕩するのがさらに好ましい。
【0021】
食用油類を固形化した後の固形化物(固形状集合体)は、元の食用油の性質、風味を損なわない程度の温度で、緩やかに加熱することによって、繊維状脂肪酸塩と回収した食用油類の各成分に分離することができる。分離する方法は、上述した方法と同様である。
【0022】
また、本発明の固形化材は、気体炭化水素を回収するためにも適用することができる。本発明の固形化材は、例えば気体炭化水素を導入して緩やかに振蕩するだけで、選択的に気体炭化水素を吸着する。繊維状脂肪酸塩に対して気体炭化水素の割合が過剰でない範囲では、実質的に気体炭化水素を全て吸着し、水上に浮遊する。気体炭化水素を吸着した後の複合体は、気体炭化水素の割合が小さいときには微粒子状複合体として、気体炭化水素の重量比が繊維状脂肪酸塩の数倍に達してからは、全体として球状の塊として水上に浮遊する。これは容易に水中からすくいあげることができる。
【0023】
本発明の固形化材が吸着、固形化しうる気体炭化水素としては、例えばn−ブタン、イソブタン、1−ブテン、シスー2−ブテン、トランス−2−ブテン、1,3−ブタジエン、プロパン、プロピレンなどが挙げられる。
また、本発明で、気体炭化水素の吸着、固形化を助けるために液体炭化水素を若干添加してもよい。用いられる液体炭化水素としては、n−ペンタンからn−ヘキサデカンまでの、室温で液体の全てのn−パラフィン、分岐状パラフィン、オレフィン、シクロヘキサンなどの脂環式パラフィン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、軽油、灯油、流動パラフィンなどの混合炭化水素が挙げられるが、固形化後の取り扱い、分解、回収のし易さなどを考慮すれば、不安定なオレフィン、混合炭化水素を敢えて用いる必要はなく、比較的単純で安定な構造の、パラフィン系炭化水素、脂環式パラフィン、芳香族炭化水素を用いればよい。
【0024】
固形化しようとする気体炭化水素の種類にもよるが、気体炭化水素単独の場合には、通常、本発明の繊維状脂肪酸塩1部に対し約1〜100部の気体炭化水素を吸着させることができる。また、液体炭化水素を併用する場合には、固形化された気体炭化水素が遥かに安定になるので、通常、本発明の繊維状脂肪酸塩1部に対し約5〜20部の気体炭化水素を吸着させることができる。
本発明の繊維状脂肪酸塩に気体炭化水素を吸着し、固形化させるには、好ましくは1分以上、気体炭化水素と繊維状脂肪酸塩を接触させればよく、緩やかに振蕩するのがさらに好ましい。
【0025】
気体炭化水素のみを固形化した後の固形状集合体は、一般に、固形状集合体の蒸気圧が、大気圧よりもほんの少し高いので、密閉容器に保存することが好ましい。従って、元の気体炭化水素を得るためには、常温で、大気圧下に開放し、通常の方法で気体炭化水素を回収すればよい。気体炭化水素と液体炭化水素を一緒に固形化した後の固形状集合体は、一般に、固形状集合体の蒸気圧が大気圧よりも低いので、密閉容器に保存することは必ずしも必要ではないが、より確実に安全を確保するためには、やはり、簡易な密閉容器に保存することが望ましい。
従って、この場合には、元の気体炭化水素を得るためには、約40〜60℃程度に加熱して、気体炭化水素を大気圧下に開放し、通常の方法で回収すればよい。
【0026】
【実施例】
〔実施例1〕
水1800g(100mol)を攪拌機付き反応缶に仕込み、ステアリン酸14.2g(0.05mol)加えて、95℃以上に加温した。10%水酸化ナトリウム溶液20gを60分間かけて添加した。1時間熟成して、硫酸ナトリウム(無水塩)を14.2g(0.1mol)添加して60分間攪拌をした。その後、ゆっくりと冷却しながら、結晶を析出させた。晶析時間は20時間以上かけて、10℃から20℃まで冷却し、繊維状ステアリン酸ナトリウムを得た。
この溶液200gを攪拌しながら、C重油を徐々に加えると58gのC重油を固形化できた。繊維状カルボン酸ナトリウム塩に対して約35倍重量であった。
又同様にして、トルエン58g、クロロホルム58g、四塩化炭素36gを固形化できた。
【0027】
〔実施例2〕
水1800g(100mol)を攪拌機付き反応缶に仕込み、パルミチン酸12.8g(0.05mol)を加えて、95℃以上に加温した。10%水酸化ナトリウム溶液20gを60分間かけて添加した。1時間熟成して、塩化ナトリウムを5.85g(0.1mol)添加して60分間攪拌をした。その後、ゆっくりと冷却しながら、結晶を析出させた。晶析時間は20時間以上かけて、10℃から20℃まで冷却し、繊維状パルミチン酸ナトリウムを得た。
この溶液200gを攪拌しながら、C重油を徐々に加えると60gのC重油を固形化できた。繊維状カルボン酸ナトリウム塩に対して約40倍重量であった。又同様にトルエンを70g(約50倍量)固形化できた。
【0028】
〔実施例3〕
水1800g(100mol)を攪拌機付き反応缶に仕込み、ラウリン酸20g(0.1mol)を加えて、95℃以上に加温した。10%水酸化ナトリウム溶液40gを60分間かけて添加した。1時間熟成して、硫酸ナトリウム(無水塩)を71g(0.5mol)添加して60分間攪拌をした。その後、ゆっくりと冷却しながら、結晶を析出させた。晶析時間は20時間以上かけて、10℃から20℃まで冷却し、繊維状ラウリン酸ナトリウムを得た。
この溶液200gを攪拌しながら、C重油を徐々に加えると80gのC重油を固形化できた。繊維状カルボン酸ナトリウム塩に対して約35倍重量であった。又同様にトルエンを80g(約35倍量)固形化できた。
【0029】
〔実施例4〕
水1800g(100mol)を攪拌機付き反応缶に仕込み、エイコサン酸(炭素数20の脂肪酸)3.2g(0.01mol)を加えて、130℃以上に加温した。10%水酸化ナトリウム溶液4gを60分間かけて添加した。1時間熟成して、硫酸ナトリウム(無水塩)を14.2g(0.1mol)添加して60分間攪拌をした。その後、ゆっくりと冷却しながら、結晶を析出させた。晶析時間は20時間以上かけて、10℃から20℃まで冷却し、繊維状エイコサン酸ナトリウムを得た。
この溶液200gを攪拌しながら、C重油を徐々に加えると13gのC重油を固形化できた。繊維状カルボン酸ナトリウム塩に対して約35倍重量であった。又同様にトルエンを11g(約30倍量)固形化できた。
【0030】
〔実施例5〕
水1800g(100mol)を攪拌機付き反応缶に仕込み、ベヘン酸(炭素数22の脂肪酸)3.4g(0.01mol)を加えて、150℃以上に加湿した。10%水酸化ナトリウム溶液4gを60分間かけて添加した。1時間熟成して、硫酸ナトリウム(無水塩)を14.2g(0.1mol)添加して60分間攪拌をした。その後、ゆっくりと冷却しながら、結晶を析出させた。晶析時間は20時間以上かけて、10℃から20℃まで冷却し、繊維状ベヘン酸ナトリウムを得た。
この溶液200gを攪拌しながら、灯油を徐々に加えると16gのC重油を固形化できた。繊維状カルボン酸ナトリウム塩に対して約40倍重量であった。又同様にガソリンを12g(約30倍量)固形化できた。
【0031】
[実施例6]
実施例1で得られた長繊維状ステアリン酸ナトリウムを濾過し、乾燥して白色の結晶(水分3.5%)16gを得た。この乾燥物5gを長さ30cm、内径6mmのカラムに詰めて、トルエンの飽和ガス(トルエン濃度約2500ppm)を流量15ml/minでカラムを通過させて、トルエンを吸着させた。排気ガスの中の濃度をガスクロで分析すると0ppmであった。49.5g(乾燥物の9.5倍重量)のトルエンが吸着された。
同様にヘキサン濃度300ppmガスを流量15ml/minでカラムを通過させ、ヘキサンを吸着させた。31.5g(乾燥物の6.3倍重量)のヘキサンが吸着された。
同様にブタンガスの500ppmのガスを流量15ml/minでカラムを通過させて、30g(乾燥物の6倍重量)のブタンが吸着された。
【0032】
【発明の効果】
本発明の繊維状脂肪酸塩は、油類吸収材として使用することができ、例えば河川、湖沼、海水中または海水上で油類と接触させ、油類を選択的に効率よく吸着させることができる。
本発明の繊維状脂肪酸塩は油類を吸着することによって固形状を保ち(通常はボール状または玉子状となる)、かつ、水面に浮上するので吸着後に海水中から回収することが容易であり、さらに極めて安全な脂肪酸塩から構成されているので、油類固形化材自体による自然水の汚染も防止できる。
【0033】
また、本発明の繊維状脂肪酸塩は水中でも室温において長期間安定に繊維状脂肪酸塩の分散状態を維持するため、取り扱いが容易で、水中から集めた、油類を吸収した脂肪酸塩を加熱することにより脂肪酸塩と油類に分離することができ、流出油を元の状態で回収することが可能であり、さらに脂肪酸塩は、繊維状脂肪酸塩の製造に再利用できる。
このような繊維状脂肪酸塩を用いた本発明の流出油類の回収方法は、流出油事故の処理に好適である。
また、上記のように本発明の繊維状脂肪酸塩を食用油、機械油又はそれらの廃油、特に食用廃油に接触させると食用油は速やかに固化するから、当該繊維状脂肪酸塩は食用油の固形化剤に有用である。
Claims (7)
- 水の存在下に、炭素数8〜22の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸である1塩基酸の脂肪酸と塩基とを反応させて得られる反応混合物に塩を加え、ついで反応混合物を冷却し、脂肪酸塩を繊維状に析出形成させることにより製造した繊維状脂肪酸塩の油類回収のための使用。
- 脂肪酸と塩基との反応を攪拌下に行うことを特徴とする請求項1記載の使用。
- 反応混合物を冷却前に熟成させることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維状脂肪酸塩の使用。
- 塩基が水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
- 脂肪酸と塩基との反応の反応温度が60〜300℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
- 塩がボウショウ、リン酸塩、硝酸塩、食塩から選ばれる1以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
- 水の存在下に、炭素数8〜22の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸である1塩基酸の脂肪酸と塩基とを反応させて得られる反応混合物に塩を加え、ついで反応混合物を冷却し、脂肪酸塩を繊維状に析出形成させ、形成した繊維状脂肪酸塩を油類と接触させ、繊維状脂肪酸塩に油類を吸着させ、油類を吸着した繊維状脂肪酸塩を回収することを特徴とする油類回収方法。
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