JP3743720B2 - (水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物の油水分離方法 - Google Patents
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Description
さらに、界面活性剤の最適な選定により、環境負荷が少なく、短時間で添加効果が得られることを見い出したことにより本願発明に至った。
水又は海水を取り込み塊化した(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物を回収する第一の工程と、上記回収した(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物に界面活性剤を添加して攪拌することにより(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物を破壊する第二の工程とが含まれることを特徴とする。
界面活性剤の成分の種類及び配合割合は適宜選択して使用される。
使用する界面活性剤としては、大量の流出重油を処理することを想定して、大量生産されている市販品であり且つ安価で入手できること、及び、生態系への影響が少なく安全であること、の2点について検討し界面活性剤を選択した。選択した界面活性剤を、食品用界面活性剤又は非食品用界面活性剤の2項目に分けて以下に記述する。
本実施例においては、市販のC重油を使用した。同C重油の物性と成分の主なデータを以下に示す。密度(15℃)0.9337cm3、引火点148℃、流動点10.0℃、動粘度(50℃)176cst、絶対粘度(20℃)2000〜3000mPa・s、残留炭素分5.70(w/w)%、硫黄分0.65(w/w)%、灰分0.02(w/w)%、水分0(w/w)%、総発熱量44.290kJ/kg.また、本実施例においては石川県金沢市金沢港付近の沿岸海水を実験直前に15分間煮沸したものを使用した。
重油200cm3と海水600cm3を20℃の条件下分速約60回転で20時間撹拌することにより(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物が形成され、その絶対粘度は50000〜100000mPa・sを示し元の重油の粘度(2000〜3000mPa・s)の約50倍にも増大した。また海水吸収率は約270〜300%を示した。
前記(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物中に、重質油に対して0.5(w/v)%のソルビタンモノラウレート[Span #20, 東京化成工業株式会社製、HLB(Hydrophile-lipophile balance)=8.6]を乳濁物質の混合物中に添加した。その結果、(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物は徐々に破壊され、150分後には粘度は3000mPa・sを示し、又海水吸収率は50%以下に達した(図3)。水相の濁りは無く透明であり、油水分離は極めて良好であった。
前記(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物中に、重質油に対して0.5(w/v)%又は1%のソルビタンモノパルミテート(Span #40, 東京化成工業株式会社製、HLB=6.7)を添加し攪拌を行った。その結果、0.5%を添加した場合、粘度及び海水吸収率の低下は若干見られたが、添加300分後の時点で粘度は28000mPa・sを示し、又海水吸収率は240%であり、(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物の破壊効果は見られなかった(図4)。一方、1%を添加した場合、(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物の破壊に基づく粘度又は海水吸収率の低下が起こるまでに時間を要したが、240分後には粘度は3000mPa・sまで低下し、又海水吸収率は30%に達した(図5)。水相の濁りは無く透明であり、油水分離は良好であった。
前記(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物中に、1(w/v)%のソルビタンモノステアレート(Span #60, 東京化成工業株式会社製、HLB=4.7)を添加し攪拌を行った。その結果、(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物の破壊に基づく粘度又は海水吸収率の低下が起こるまでに時間を要したが、240分後には粘度は4000mPa・sを示し、又海水吸収率は50%であった(図6)。水相の濁りは無く透明であり、油水分離は良好であった。
前記(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物中に、0.5(w/v)%のショ糖ミリスチン酸エステル(リョートーシュガーエステルM-1695, 三菱化学フーズ株式会社製、HLB=10.7)を添加し撹拌した。その結果、添加後から粘度及び海水吸収率のゆっくりとした低下が見られ、300分後には粘度は4000mPa・sを示し、又海水吸収率は50%まで低下した(図7)。しかし、水相には濁りが認められ、界面活性剤と共に少量の重油が水相中に含まれていると考えられた。
前記(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物中に、0.5(w/v)%又は1%のショ糖ラウリン酸エステル(リョートーシュガーエステルLWA-1570, 三菱化学フーズ株式会社製、HLB=11.5)を添加し撹拌した。その結果、0.5%を添加した場合、300分後に粘度は9000mPa・sを示し、海水吸収率は75%に留まった(図8)。一方、1%を添加した場合、300分後に粘度は7000mPa・sを示し、海水吸収率は60%であった(図9)。また、どちらの場合も水相には濁りが認められ、界面活性剤と共に少量の重油が水相中に含まれていると考えられた。
前記(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物中に、1(w/v)%のデカグリセリンラウリン酸エステル(リョートーポリグリエステルL-10D, 三菱化学フーズ株式会社製、HLB=16.7)を添加し攪拌した。その結果、粘度及び海水吸収率は添加後から若干の低下を示したが、300分後において粘度は10000mPa・sを示し、海水吸収率は100%に留まった(図10)。水相には濁りが認められ、界面活性剤と共に少量の重油が水相中に含まれていると考えられた。
前記(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物中に、0.1(w/v)%のポリエチレングリコールモノラウレート(Polyethylene glycol monododecyl ether n-25, 東京化成工業株式会社製、HLB=15.0)を添加し攪拌した。その結果、添加直後から(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物の破壊に基づく粘度及び海水吸収率の低下を示し、120分後には粘度及び海水吸収率は一定となった。300分後において粘度は4000mPa・sを示し、海水吸収率は40%まで低下した(図11)。しかし、水相の濁りが認められ、界面活性剤と共に少量の重油が水相中に含まれていると考えられた。
前述したように、重油と海水をビーカーに入れ、撹拌を開始して1時間後に、形成した(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物中に、2(w/v)%のラウリル硫酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製、HLB=39)を添加し更に攪拌した。その結果、4.5時間後において粘度は12000mPa・sを示し、海水吸収率は80%に低下した(図12)。ラウリル硫酸ナトリウムは陰イオン性界面活性剤の中では最も安全性の高いもので、経口用医療カプセルの原料として利用されている。この実験条件下では、粘度と海水吸収率の低下能力は十分発揮されていないが、分離された水相は全く濁りが無く透明であった。従って、他の適当な食品用非イオン性界面活性剤に加えて利用すれば相乗効果が期待できる。
前記(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物中に、ソルビタンモノラウレートは0.5%、且つポリエチレングリコールモノラウレートは0.05%を添加し攪拌した。その結果、ポリエチレングリコールモノラウレート単独を用いた場合よりも更に迅速に粘度及び海水吸収率の低下が確認され、添加30分後には粘度及び海水吸収率低下はプラトーに達した。添加60分後の粘度は2500mPa・sを示し、又海水吸収率は30%にまで低下した(図13)。明らかにソルビタンモノラウレート単独添加の場合に比べて、このように少量のポリエチレングリコールモノラウレートを同時添加した場合には両者の長所が発揮され、粘度及び海水吸収率の低下速度が著しく改善された。さらに油水分離は良好で水相の濁りはほとんど無く、実用上、きわめて利用価値が高いことが示された。
前記(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物中に、デカグリセリンラウリン酸エステルは1%、且つポリエチレングリコールモノラウレートは0.05%を添加し攪拌した。その結果、デカグリセリンラウリン酸エステル単独を用いた場合よりも更に迅速に粘度及び海水吸収率の低下は緩慢なものであり、添加300分後の粘度は30000mPa・sを示し、又海水吸収率は160%に留まった(図14)。水相の濁りは、他の界面活性剤添加例の中でも最も強く確認された。これは、HLB値が共に15.0以上の大きい値を示す(親水性が高い)界面活性剤を同時に添加した場合、界面活性剤が水相に移行し充分な油水分離効果を発揮できなかった結果であると考えられる。
11 タンク
13 界面活性剤
14 プロペラ付き撹拌棒
15 排出口
16 コック
17 油相
18 仕切り板
19 排出口
20 コック
21 水相
22 監視窓
50 粗分離槽
51 タンク
52 排出口
53 コック
54 (水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物
55 排出口
56 コック
57 水相
58 仕切り板
59 仕切り板
60 仕切り板
61 油を除去された水相
101 海面から回収した(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物と、水の混合物
Claims (3)
- 水又は海水を取り込み塊化した(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物を回収する第一の工程と、
上記回収した(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物に界面活性剤を添加して攪拌することにより(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物を破壊する第二の工程とが含まれ、
界面活性剤は、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノステアレート、あるいはソルビタンモノオレートのいずれかを成分として含有するもの、もしくはそれらの混合物であることを特徴とする(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物の油水分離方法。 - 水又は海水を取り込み塊化した(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物を回収する第一の工程と、
上記回収した(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物に界面活性剤を添加して攪拌することにより(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物を破壊する第二の工程とが含まれ、
界面活性剤は、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノミリステート、あるいはラウリル硫酸ナトリウムのいずれかを成分として含有するもの、もしくはそれらの混合物であることを特徴とする(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物の油水分離方法。 - 水又は海水を取り込み塊化した(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物を回収する第一の工程と、
上記回収した(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物に界面活性剤を添加して攪拌することにより(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物を破壊する第二の工程とが含まれ、
前記界面活性剤は、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノステアレート、あるいはソルビタンモノオレートのいずれかを成分として含有するもの、もしくはそれらの混合物から選んだ少なくとも1つ以上の界面活性剤に、
ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノミリステートあるいはラウリル硫酸ナトリウムのいずれかを成分として含有するもの、もしくはそれらの混合物から選んだ少なくとも1つ以上の界面活性剤を混合したものであることを特徴とする(水/重質油型乳濁物質)及び(重質油/水型乳濁物質)の混合物の油水分離方法。
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