JP3952392B2 - オレフィン系熱可塑性エラストマー、その製造方法、およびその用途 - Google Patents

オレフィン系熱可塑性エラストマー、その製造方法、およびその用途 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、オレフィン系熱可塑性エラストマー、その製造方法、およびその用途に関し、さらに詳しくは、特に自動車のウェザーストリップ、ドアトリム等のコーナー異形接続部や異形端末部を溶着成形するのに好適な射出成形用オレフィン系熱可塑性エラストマー、その製造方法、およびその用途に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
従来、接続部を有するウェザーストリップの製造は、一般的に、エチレン・プロピレン・非共役ジエン三元共重合体(EPDM)のゴム配合物からなる押出加硫成形品を裁断して、一方または双方から金型にセットし、形成されるキャビティに、このEPDMのゴム配合物と同種のゴム成形材料を注入し加硫型成形することにより行なわれている。
【0003】
他方、この型成形の材料として、エチレン・プロピレン・非共役ジエン三元共重合体(EPDM)を使用した加硫ゴムに代わって、生産性、環境対応性および軽量化の見地から、加硫工程が不要な熱可塑性エラストマー(組成物)が使用され始めている。
しかしながら、一般に加硫ゴムと熱可塑性エラストマーとは、加硫接着等ができないため、接着剤を用いて一体化がなされたりしていたが、生産性あるいは環境対応性の点で十分とは言えない。
【0004】
熱可塑性エラストマーの組成に関する技術としては、極性基含有樹脂の添加(特開平2−115249号公報、特開平8−244068号公報、特開平10−324200号公報)が挙げられるが、極性基含有樹脂の添加の場合、成形時に、成形品の金型からの離型性が悪くなったりして成形サイクルが長くなってしまう。
【0005】
その他の技術として、熱可塑性エラストマー成形前に特定のエチレン・1-オクテンコポリマーを添加するものがある(特開平9−40814号公報)。この技術は、母材破壊に非常に効果があることを本願発明者らは確認したが、非架橋のエチレン系重合体(エチレン・1-オクテンコポリマー)を添加するため成形品のゴム弾性が失われてしまう。
【0006】
さらに上記加硫ゴムの技術としては、従来の加硫ゴムの組成に加えて微結晶性のポリプロピレンを添加するものがある(特開平10−7849号公報)。しかしながら、アタクチックポリプロピレンのような微結晶のポリプロピレンを添加すると、従来の加硫ゴムのゴム弾性が悪化するだけでなく、経時後の成形品のベタツキ等が生じる場合がある。
【0007】
以上のような熱可塑性エラストマーや加硫ゴムの組成に関しての技術だけでなく、加硫ゴムを裁断した後、切断面の凹凸を付けてアンカー効果を得ようとするもの(特開平9−118133号公報)や、加硫ゴムの切断面にポリオレフィン樹脂パウダーを塗布したもの(特開平6−47816号公報)等の技術があるが、いずれも生産性が低下する割に接着性の向上は見られないという欠点がある。
【0008】
したがって、接着剤層を介さずとも加硫ゴムに対して十分な接着強度と剥離時に母材破壊(接着界面で剥離するのではなく、成形体で破壊する)を生じる成形体を形成し得るオレフィン系熱可塑性エラストマーおよびそのエラストマーを加硫ゴムに溶着させた成形体、ならびに熱可塑性エラストマーとして十分な硬度とゴム弾性を有する軽量な成形体を形成し得る、成形性、経済性に優れるオレフィン系熱可塑性エラストマーおよびそのエラストマーを加硫ゴムに溶着させた成形体の出現が望まれている。
【0009】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、接着剤層を介さずとも加硫ゴムに対して十分な接着強度と剥離時に母材破壊を生じる成形体を形成し得るオレフィン系熱可塑性エラストマーおよびそのエラストマーを加硫ゴムに溶着させた成形体、ならびに熱可塑性エラストマーとして十分な硬度とゴム弾性を有する軽量な成形体を形成し得る、成形性、経済性に優れるオレフィン系熱可塑性エラストマーおよびそのエラストマーを加硫ゴムに溶着させた成形体を提供することを目的としている。
【0010】
また、本発明は、上記のようなオレフィン系熱可塑性エラストマーの製造方法を提供することを目的としている。
【0011】
【発明の概要】
本発明に係る第1のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、海島構造のモルフォロジーを形成するオレフィン系熱可塑性エラストマーであって、ペレット表面を透過型電子顕微鏡で1万倍に拡大した写真中の全ての島相の短径と長径とを足して平均した島相の平均粒子径が2μm以下であり、ゲル分率が0.5〜15重量%であり、70℃での圧縮永久歪み(CS)が65%以下であり、かつ、示差走査型熱量計(DSC)にて測定した125℃以下の融解熱量が、全融解熱量の40%以上であることを特徴としている。
【0012】
この熱可塑性エラストマーは、オレフィン系樹脂とオレフィン系ゴムとからなり、オレフィン系ゴムが架橋されている。
本発明に係る第1のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、示差走査型熱量計(DSC)にて測定した融解時の熱量(上記全融解熱量と同じ。)が30J/g以上であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る第1のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、長径と短径との比が2以上の島相の個数が島相の総個数に対して3%以下であり、70℃での圧縮永久歪み(CS)が65%以下であることが好ましい。この70℃での圧縮永久歪みは、ゴム弾性の指標とすることができる。
本発明に係る第1のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、オレフィン系樹脂およびオレフィン系ゴムを、架橋剤の存在下に動的架橋して得られ、オレフィン系樹脂およびオレフィン系ゴムの合計量100(重量部)に対する架橋剤の添加量A(重量部)とゴム弾性の指標である70℃での圧縮永久歪みCS(%)とが、次式 A×CS < 5.0
で表わされる関係を満足していることが好ましい。
【0014】
本発明に係る第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、密度(ASTM D 1505)が0.940g/cm3 以上である高密度ポリエチレン(A)5〜50重量部と、エチレン、炭素原子数3〜20のα- オレフィンおよび必要に応じて非共役ポリエンからなるエチレン・α- オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴム(B)20〜60重量部と、ポリプロピレン(C)5〜50重量部[成分(A)、(B)および(C)の合計量は100重量部である]とを含有するブレンド物から製造され、かつ、ゲル分率が0.5〜15重量%であることを特徴としている。
【0015】
本発明に係る第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーにおいては、高密度ポリエチレン(A)の190℃でのメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238(荷重2.16kg)に準拠して測定)が10g/10分以下であることが好ましい。
本発明に係る第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、海島構造のモルフォロジーを形成するオレフィン系熱可塑性エラストマーであって、島相の平均粒子径が2μm以下であり、ゲル分率が0.5〜15重量%であり、かつ、示差走査型熱量計(DSC)にて測定した125℃以下の融解熱量が、全融解熱量の40%以上であることが望ましい。本発明に係る第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、さらに、示差走査型熱量計(DSC)にて測定した融解時の熱量が30J/g以上であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーの製造方法は、密度(ASTM D 1505)が0.940g/cm3 以上である高密度ポリエチレン(A)5〜50重量部と、エチレン、炭素原子数3〜20のα- オレフィンおよび必要に応じて非共役ポリエンからなるエチレン・α- オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴム(B)20〜60重量部と、ポリプロピレン(C)5〜50重量部[成分(A)、(B)および(C)の合計量は100重量部である]とを含有するブレンド物を、架橋剤(D)の存在下に溶融混練して、ゲル分率が0.5〜15重量%である熱可塑性エラストマーを得ることを特徴としている。
【0017】
前記架橋剤(D)としては、有機過酸化物が好ましい。
本発明に係る第1および第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、加硫ゴムの成形体への溶着用として好適に用いることができる。
第1および第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、加硫ゴムのプレス成形体への溶着試験を行なった場合に、引張剥離試験時に母材破壊が生じる熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
【0018】
本発明に係る成形体は、加硫ゴムからなる成形体に、上記の、本発明に係る第1または第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる成形体が接合してなることを特徴としている。
この成形体は、加硫ゴムからなる成形体に、上記の第1または第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーを溶着させてなることが好ましい。
【0019】
前記加硫ゴムとしては、エチレン・α- オレフィン・ポリエン共重合体ゴムが好ましい。
本発明に係る成形体は、自動車内外装材用に好適に用いられる。たとえばウェザーストリップ材に好適に用いられる。具体的には、たとえば直線的部分と接合コーナー部材とが接合されてなるウェザーストリップ材において、該直線的部分が前記加硫ゴムの成形体からなり、該コーナー部材が本発明に係る第1または第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーから形成されてなる成形体である。
【0020】
加硫ゴムからなる成形体に、上記の、本発明に係る第1または第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーを溶着させてなる成形体は、たとえばインサート成形により得られる。
本発明に係る成形体としては、前記成形体の接合部の引張剥離試験を行なった場合に、母材破壊が観察される成形体であることが好ましい。
【0021】
本発明に係る第1または第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、接着剤層を介さずとも加硫ゴムに対して十分な接着強度と剥離時に母材破壊を生じる成形体を形成することができ、また熱可塑性エラストマーとして十分な硬度とゴム弾性を有する軽量な成形体を形成することができる。
【0022】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー、その製造方法、およびその用途について具体的に説明する。以下、本発明に係る第1および第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーにおいて、「オレフィン系熱可塑性エラストマー」とは、オレフィン系樹脂とオレフィン系ゴムとからなる射出成形用熱可塑性エラストマーのことを指す。
【0023】
熱可塑性エラストマーとは、ゴムと類似の物理的性質、たとえば柔軟性や反発弾性を有し、通常のゴムと対照的に熱可塑性プラスチックとして加工できるものであり、このような説明は、たとえば高分子大辞典(丸善株式会社、1994年刊)においてなされている。
オレフィン系樹脂としては、特に制限はないが、たとえば第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーの項で後述するようなポリプロピレン(C)、高密度ポリエチレン(A)などを例示することができる。
【0024】
オレフィン系ゴムとしては、特に制限はないが、たとえば第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーの項で後述するようなエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体(B)などのエチレン・α- オレフィン・ポリエン共重合体、エチレン・α- オレフィン共重合体などを例示することができる。
まず、本発明に係る第1のオレフィン系熱可塑性エラストマーについて説明する。
【0025】
第1のオレフィン系熱可塑性エラストマー
本発明に係る第1のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、海島構造のモルフォロジーを形成する熱可塑性エラストマーであって、島相の平均粒子径が2μm以下であり、ゲル分率が0.5〜15重量%、好ましくは1〜13重量%、さらに好ましくは2〜11重量%であり、かつ、示差走査型熱量計(DSC)にて測定した125℃以下の融解熱量が、全融解熱量の40%以上、通常は40〜70%、好ましくは42〜68%、さらに好ましくは43〜67%である。
【0026】
海島構造とは、マトリックス中に分散した粒子が存在している相構造を指す。
島相の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡で1万倍に拡大した写真から、任意にサンプリングし、そのサンプルについて測定することができる。具体的には、電子顕微鏡写真中の全ての島相の短径と長径とを足して平均し、島相の平均粒子径とした。
【0027】
なお、上記ゲル分率の測定方法は、本発明に係る第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーの項において述べる。また、上記の125℃以下の融解熱量と全融解熱量の測定方法については、実施例の項で述べる。
本発明に係る第1のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、長径と短径との比が2以上の島相の個数が島相の総個数に対して好ましくは3%以下、より好ましくは0.1〜3%、さらに好ましくは0.2〜2.0%であり、該エラストマーのゴム弾性の指標である70℃での圧縮永久歪み(CS)が好ましくは65%以下、より好ましくは20〜65%、さらに好ましくは30〜55%である。
【0028】
また、本発明に係る第1のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、示差走査型熱量計(DSC)にて測定した融解時の熱量は、好ましくは30J/g以上、より好ましくは30〜80J/g、さらに好ましくは35〜70J/g、特に好ましくは40〜60J/gである。なお、この融解時の熱量(融解熱量)の測定方法については、実施例の項で述べる。
【0029】
さらに、本発明に係る第1のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、オレフィン系樹脂およびオレフィン系ゴムからなり、オレフィン系樹脂およびオレフィン系ゴムの合計量100(重量部)に対する架橋剤の添加量A(重量部)とゴム弾性の指標である70℃での圧縮永久歪みCS(%)とが、次式
A×CS < 5.0
で表わされる関係を満足することが好ましい。
【0030】
架橋剤の添加量Aは、オレフィン系樹脂とオレフィン系ゴムとの合計100重量部に対して、好ましくは0.01〜0.12重量部、より好ましくは0.03〜0.10重量部であることが好ましい。
なお、上記パラメーター(A×CS < 5.0)は、組成物を構成する諸成分を配合する際に添加する架橋剤(過酸化物)の量Aと、ゴム弾性の指標である圧縮永久歪み(CS)の積からなるパラメーターである。このパラメーターは、過酸化物の添加量Aが少なく、かつ圧縮永久歪み(CS)が小さい場合のみに満たされる。
【0031】
上記のような、本発明に係る第1のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、たとえば、
(1)密度(ASTM D 1505)が0.940g/cm3以上である高密度ポリエチレン(A)5〜50重量部と、
エチレン、炭素原子数3〜20のα- オレフィンおよび必要に応じて非共役ポリエンからなるエチレン・α- オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴム(B)5〜70重量部と、
ポリプロピレン(C)5〜50重量部[成分(A)、(B)および(C)の合計量は100重量部である]と
を含有するブレンド物を、架橋剤(D)の存在下に溶融混練して、ゲル分率が0.5〜15重量%である熱可塑性エラストマーを得ることを特徴とするオレフィン系熱可塑性エラストマーの製造方法により調製することができる。すなわち、本発明に係る第1のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、後述する、本発明に係る第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーの製造方法によって得ることができる。
【0032】
次に、本発明に係る第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーおよびその製造方法について説明する。
第2のオレフィン系熱可塑性エラストマー
本発明に係る第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、高密度ポリエチレン(A)と、エチレン・α- オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴム(B)と、ポリプロピレン(C)とからなるブレンド物を、架橋剤(D)の存在下に、溶融混練することにより得られる。このエラストマーは、高密度ポリエチレン(A)と共重合体ゴム(B)が部分的に架橋していると考えられる、いわゆる部分架橋型の熱可塑性エラストマー組成物である。
【0033】
〔高密度ポリエチレン(A)〕
本発明で用いられる高密度ポリエチレン(A)は、オレフィン系樹脂であり、密度(ASTM D 1505)が0.940g/cm3以上、通常は0.940〜0.970g/cm3、好ましくは0.945〜0.965g/cm3、さらに好ましくは0.950〜0.960g/cm3であることが望ましい。
【0034】
この高密度ポリエチレン(A)は、エチレン単独重合体(ポリエチレン)ないしエチレンと炭素原子数3〜20、好ましくは3〜8のα- オレフィンとからなる結晶性エチレン・α- オレフィン共重合体である。コモノマーを含む場合には、そのコモノマー含量は少量であり、全体の10モル%以下である。
高密度ポリエチレン(A)は、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃、荷重2.16kg)が、好ましくは10g/10分以下、通常0.01〜10g/10分、さらに好ましくは0.1〜7g/10分であることが望ましい。MFRが上記範囲内にある高密度ポリエチレン(A)を用いると、成形性に優れる熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【0035】
高密度ポリエチレン(A)の示差走査型熱量計(DSC)にて測定される融点(Tm)は、通常140℃以下である。
高密度ポリエチレン(A)は、高密度ポリエチレン(A)、エチレン・α- オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴム(B)およびポリプロピレン(C)の合計量100重量部に対して、5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部、さらに好ましくは15〜35重量部の割合で用いられる。高密度ポリエチレン(A)を上記割合で用いると、ゴム弾性に優れ、たとえば自動車用の熱可塑性エラストマー製ウェザーストリップ、加硫ゴム製ウェザーストリップ等の押出成形体との溶着性に優れた安価な熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
【0036】
〔エチレン・α- オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴム(B)〕
本発明で用いられるエチレン・α- オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴム(B)は、エチレンとα- オレフィンと必要に応じて非共役ポリエンとの共重合体ゴムであって、たとえばエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(B−1)、エチレン・α- オレフィン共重合体ゴム(B−2)が挙げられる。
【0037】
本発明で用いられるエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(B−1)は、エチレン、炭素原子数3〜20のα- オレフィンおよび非共役ポリエンからなるオレフィン系ゴムである。
本発明で用いられるエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(B−1)としては、DSC法により求められる結晶化度が10%未満である共重合体が望ましい。
【0038】
炭素原子数3〜20のα- オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチルデセン-1、11- メチルドデセン-1、12- エチルテトラデセン-1などが挙げられる。中でも、プロピレン、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましい。とりわけプロピレンが好ましい。
【0039】
これらのα- オレフィンは、単独で、または2種以上組合わせて用いられる。
また、非共役ポリエンとしては、具体的には、
1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4- ヘキサジエン、4-メチル-1,4- ヘキサジエン、5-メチル-1,4- ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4- ヘキサジエン、7-メチル-1,6- オクタジエン、8-メチル-4- エチリデン-1,7- ノナジエン、4-エチリデン-1,7- ウンデカジエン等の鎖状非共役ジエン;
メチルテトラヒドロインデン、5-エチリデン-2- ノルボルネン、5-メチレン-2- ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2- ノルボルネン、5-ビニリデン-2- ノルボルネン、6-クロロメチル-5- イソプロペニル-2- ノルボルネン、5-ビニル-2- ノルボルネン、5-イソプロペニル-2- ノルボルネン、5-イソブテニル-2- ノルボルネン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の環状非共役ジエン;
2,3-ジイソプロピリデン-5- ノルボルネン、2-エチリデン-3- イソプロピリデン-5- ノルボルネン、2-プロペニル-2,2- ノルボルナジエン、4-エチリデン-8- メチル-1,7- ナノジエン等のトリエンなどが挙げられる。中でも、5-エチリデン-2- ノルボルネン、5-ビニル-2- ノルボルネン、シクロペンタジエン、4-エチリデン-8- メチル-1,7- ナノジエンが好ましい。
【0040】
本発明で用いられるエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(B−1)は、エチレンから誘導される構成単位含量(エチレン含量)が50モル%以上、通常50〜90モル%、好ましくは60〜85モル%であり、炭素原子数3〜20のα- オレフィンから誘導される構成単位含量(α- オレフィン含量)が50モル%以下、通常50〜10モル%、好ましくは40〜15モル%であり、非共役ポリエン含量がヨウ素価で通常0.1〜30、好ましくは0.1〜25である。ただし、エチレン含量とα- オレフィン含量の合計は100モル%とする。なお、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(B−1)の組成は、13C−NMRによる測定で求められる。
【0041】
本発明で用いられるエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体(B−1)は、その製造の際に軟化剤好ましくは鉱物油系軟化剤を配合した、いわゆる油点ゴムであってもよい。鉱物油系軟化剤としては、従来公知の鉱物油系軟化剤たとえばパラフィン系プロセスオイルなどが挙げられる。
また、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(B−1)のムーニー粘度[ML1+4(100℃)]は、通常10〜250、好ましくは30〜150である。
【0042】
上記のようなエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(B−1)は、従来公知の方法により製造することができる。
エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(B−1)は、高密度ポリエチレン(A)、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(B−1)およびポリプロピレン(C)の合計量100重量部に対して、5〜70重量部、好ましくは10〜65重量部、さらに好ましくは20〜60重量部の割合で用いられる。この共重合体ゴム(B−1)を上記範囲内の割合で用いると、自動車用熱可塑性エラストマー製ウェザ一ストリップ、加硫ゴム製ウェザーストリップ等の押出成形体との溶着性に優れ、しかも、適度な柔らかさ(硬さ)を有するコーナー部を形成することができる成形性に優れた熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【0043】
また、本発明のエチレンとα- オレフィンと必要に応じて非共役ポリエンとの共重合体ゴム(B)としては、エチレンと炭素原子数3〜20、好ましくは3〜12、さらに好ましくは3〜8のα- オレフィンとを共重合したエチレン・α- オレフィン共重合体ゴム(B−2)を用いることもできる。
このようなエチレン・α- オレフィン共重合体(B−2)としては、具体的には、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(EPR)、エチレン・1-ブテン共重合体ゴム(EBR)、エチレン・1-オクテン共重合体ゴム(EOR)などを挙げることができる。
【0044】
エチレン・α- オレフィン共重合体ゴム(B−2)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃、2.16kg荷重)は、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜30g/10分であることが望ましい。
また、エチレン・α- オレフィン共重合体ゴム(B−2)としては、DSC法により求められる結晶化度が10%未満である共重合体が望ましい。
【0045】
エチレン・α- オレフィン共重合体ゴム(B−2)を構成するα- オレフィンは、エチレン・α- オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴム(B)を構成するα- オレフィンと同じである。共重合体ゴム(B−2)は、エチレンから誘導される構成単位含量(エチレン含量)が50モル%以上、通常50〜90モル%、好ましくは60〜85モル%であり、炭素原子数3〜20のα- オレフィンから誘導される構成単位含量(α- オレフィン含量)が50モル%以下、通常50〜10モル%、好ましくは40〜15モル%である。
【0046】
エチレンとα- オレフィンと必要に応じて非共役ポリエンとの共重合体ゴム(B)は、1種以上のエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(B−1)のみからなっていてもよく、1種以上のエチレン・α- オレフィン共重合体ゴム(B−2)のみからなっていてもよく、また、(B−1)と(B−2)とを併用してもよい。その場合、(B−1)と(B−2)との比率については、特に制限はないが、たとえばエチレン・α- オレフィン共重合体ゴム(B−2)は、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(B−1)およびエチレン・α- オレフィン共重合体ゴム(B−2)の合計量100重量部に対して、50重量部以下、通常は10〜50重量部の量で用いられる。ただし、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(B−1)およびエチレン・α- オレフィン共重合体ゴム(B−2)の合計配合量は、高密度ポリエチレン(A)、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(B−1)、ポリプロピレン(C)およびエチレン・α- オレフィン共重合体ゴム(B−2)の合計量100重量部に対して、5〜70重量部、好ましくは10〜65重量部、さらに好ましくは20〜60重量部である。この共重合体ゴム(B−1)および共重合体ゴム(B−2)を上記割合で用いると、熱可塑性エラストマー製ウェザ一ストリップ、加硫ゴム製ウェザーストリップ等の押出成形体との溶着性に優れ、しかも、適度な柔らかさ(硬さ)を有するコーナー部を形成することができる成形性に優れた熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【0047】
〔ポリプロピレン(C)〕
本発明で用いられるポリプロピレン(C)は、オレフィン系樹脂であり、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレンおよび/または炭素原子数4〜20のα- オレフィンとをランダム共重合あるいはブロック共重合したプロピレン共重合体である。
【0048】
炭素原子数4〜20のα- オレフィンとしては、具体的には、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチルデセン-1、11- メチルドデセン-1、12- エチルテトラデセン-1などが挙げられる。
【0049】
プロピレンと共重合させるコモノマーとしては、エチレン、1-ブテンが好ましい。これらのα- オレフィンは、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
このプロピレン共重合体におけるプロピレンから誘導される構成単位含量(プロピレン含量)は、通常50〜90重量%であり、コモノマーから誘導される構成単位含量(コモノマー含量)は、通常50〜10重量%である。なお、プロピレン共重合体の組成は、13C−NMRによる測定で求められる。
【0050】
ポリプロピレン(C)は、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)が通常0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜80g/10分、さらに好ましくは0.3〜60g/10分であることが望ましい。
ポリプロピレン(C)のDSCにて測定される融点(Tm)は、通常170℃以下である。
【0051】
ポリプロピレン(C)は、高密度ポリエチレン(A)、エチレン・α- オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴム(B)およびポリプロピレン(C)の合計量100重量部に対して、5〜50重量部、好ましくは10〜45重量部、さらに好ましくは15〜40重量部の割合で用いられる。ポリプロピレン(C)を上記範囲内の割合で用いると、熱可塑性エラストマー製ウェザ一ストリップ、加硫ゴム製ウェザーストリップ等の押出成形体との溶着性に優れ、しかも、適度な柔らかさ(硬さ)を有するコーナー部を形成することができる成形性に優れた熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【0052】
〔架橋剤(D)〕
本発明で用いられる架橋剤(D)としては、たとえば有機過酸化物、イオウ、イオウ化合物、フェノール樹脂等のフェノール系加硫剤などが挙げられるが、中でも有機過酸化物が好ましく用いられる。
有機過酸化物としては、具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5- ジ-(tert- ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5- ジ(tert- ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert- ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert- ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4- ビス(tert- ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert- ブチルペルオキシベンゾエート、tert- ブチルペルベンゾエート、tert- ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert- ブチルクミルペルオキシドなどが挙げられる。
【0053】
中でも、臭気性、スコーチ安定性の点で2,5-ジメチル-2,5- ジ(tert- ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5- ジ(tert- ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert- ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert- ブチルペルオキシ)-3,3,5- トリメチルシクロヘキサンおよびn-ブチル-4,4- ビス(tert- ブチルペルオキシ)バレレートが好ましく、中でも1,3-ビス(tert- ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが最も好ましい。
【0054】
この有機過酸化物は、高密度ポリエチレン(A)、エチレン・α- オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴム(B)およびポリプロピレン(C)の合計量100重量部に対して、0.01〜0.12重量部、好ましくは約0.03〜0.10重量部の割合で用いられる。有機過酸化物を上記割合で用いると、共重合体ゴム(B)が架橋している熱可塑性エラストマー組成物が得られ、耐熱性、引張特性、弾性回復性、反撥弾性等のゴム的性質および強度が十分な成形体が得られる。また、この組成物は成形性に優れている。
【0055】
本発明においては、前記有機過酸化物による架橋処理に際し、硫黄、p-キノンジオキシム、p,p'- ジベンゾイルキノンジオキシム、N-メチル-N,4- ジニトロソアニリン、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン-N,N'-m-フェニレンジマレイミド等の架橋助剤、あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エレチングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラートまたはビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマーを配合することができる。このような化合物により、均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。特に、本発明においては、ジビニルベンゼンを用いると、取扱い易さ、前記被処理物の主成分たる高密度ポリエチレン(A)、共重合体ゴム(B)およびポリプロピレン(C)への相溶性が良好であり、かつ有機ペルオキシド可溶化作用を有し、有機過酸化物の分散助剤として働くため、熱処理による架橋効果が均質で、流動性と物性とのバランスのとれた組成物が得られるため最も好ましい。
【0056】
本発明においては、このような架橋助剤もしくは多官能性ビニルモノマーの配合量は、高密度ポリエチレン(A)、エチレン・α- オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴム(B)およびポリプロピレン(C)の合計量100重量%に対して、通常、0.01〜0.4重量%、特に0.03〜0.2重量%の範囲が好ましく、この範囲内で架橋助剤もしくは多官能性ビニルモノマーを配合することにより、流動性に優れ、かつ、組成物を加工成形する際の熱履歴により物性の変化をもたらさない組成物が得られる。
【0057】
〔その他の成分〕
本発明に係る第2のオレフィン系熱可塑性エラストマー中に、必要に応じて、スリップ剤、充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、着色剤等の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
上記スリップ剤としては、たとえば脂肪酸アミド、シリコーンオイル、グリセリン、ワックス、パラフィン系オイルなどが挙げられる。
【0058】
充填剤としては、従来公知の充填剤、具体的には、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、ケイソウ土、シリカ、アルミナ、グラファイト、ガラス繊維などが挙げられる。
[第2のオレフィン系熱可塑性エラストマー]
本発明に係る第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、高密度ポリエチレン(A)、エチレン・α- オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴム(B)およびポリプロピレン(C)を上述した特定割合で混合した後、上述した特定量の架橋剤(D)の存在下に、動的に熱処理することにより調製することができる。この混合の際に、前記添加剤たとえばスリップ剤、酸化防止剤を配合することができる。
【0059】
ここに、「動的に熱処理する」とは、溶融状態で混練することをいう(以下、同じ。)。
本発明における動的な熱処理は、非開放型の装置中で行なうことが好ましく、また窒素、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。
その混練温度は、通常150〜280℃、好ましくは170〜240℃である。混練時間は、通常1〜20分間、好ましくは3〜10分間である。また、加えられる剪断力は、剪断速度として10〜100,000sec-1、好ましくは100〜50,000sec-1である。
【0060】
混練装置としては、ミキシングロール、インテンシブミキサー(たとえばバンバリーミキサー、ニーダー)、一軸または二軸押出機等を用い得るが、非開放型の装置が好ましい。
本発明によれば、上述した動的な熱処理によって、共重合体ゴム(B)が架橋した状態の熱可塑性エラストマー組成物が得られる。この熱可塑性エラストマーは、高密度ポリエチレン(A)と共重合体ゴム(B)が架橋されていると考えられ、本発明においては、下記の方法で測定したゲル分率が15重量%以下、通常は0.5〜15重量%、好ましくは1〜13重量%、さらに好ましくは2〜11重量%の範囲内にある。
[ゲル分率の測定法]
試料として熱可塑性エラストマー組成物のペレットを約100mg秤量し、325メッシュのスクリーンに包んで、密閉容器中にてこのペレットに対して充分な量である30mlのp−キシレンに、140℃で24時間浸漬する。
【0061】
次に、この試料を濾紙上に取り出し、80℃にて2時間以上恒量になるまで乾燥する。ゲル分率は、次式で表わされる。
Figure 0003952392
上記のようにして得られる、本発明に係る第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)は、通常0.01〜1000g/10分、好ましくは0.05〜500g/10分、さらに好ましくは0.1〜100g/10分である。メルトフローレートが上記範囲内にある熱可塑性エラストマーは、成形性に優れている。
【0062】
このような第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、通常、海島構造のモルフォロジーを有しており、高密度ポリエチレン(A)およびエチレン・α- オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴム(B)の相が島相となり、ポリプロピレン(C)相が海となる海島構造であることが好ましい。
上記のようにして得られる、本発明に係る第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、前記した、本発明に係る第1のオレフィン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
【0063】
すなわち、第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、海島構造で、島相の平均粒子径が2μm以下であり、ゲル分率が0.5〜15重量%であり、かつ、示差走査型熱量計(DSC)にて測定した125℃以下の融解熱量が、全融解熱量の40%以上であることが好ましい。
また、第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、長径と短径との比が2以上の島相の個数が島相の総個数に対して好ましくは3%以下、より好ましくは0.1〜3%であり、ゴム弾性の指標である70℃での圧縮永久歪み(CS)が好ましくは65%以下、より好ましくは20〜65%である。
【0064】
さらに、第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、示差走査型熱量計(DSC)にて測定した融解時の熱量が30J/g以上、通常は30〜80J/gであることが好ましい。
さらにまた、第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、オレフィン系樹脂およびオレフィン系ゴムの合計量100(重量部)に対する架橋剤の添加量A(重量部)とゴム弾性の指標である70℃での圧縮永久歪みCS(%)とが、次式
A×CS < 5.0
で表わされる関係を満足することが好ましい。
【0065】
本発明に係る第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、加硫ゴムのプレス成形体への溶着試験を行なった場合に、引張剥離試験時に母材破壊が生じるような熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
ここで、加硫ゴムのプレス成形体(シート)との溶着物の引張剥離試験方法について説明する。
(加硫ゴムの調製)
上記加硫ゴムは、原料ゴム100重量部、カーボンブラック170重量部、軟化剤95重量部、亜鉛華5重量部、ステアリン酸1重量部、活性剤1重量部、酸化カルシウム50重量部、イオウ5重量部、2-メルカプトベンゾチアゾール15重量部、ジベンゾチアジルジスルフィド5重量部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛20重量部、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛5重量部、エチレン尿素10重量部およびジチオジモルホリン5重量部の配合で、ゴム配合物を調製する。
【0066】
ここで、本発明の熱可塑性エラストマーについて、加硫ゴムとの溶着後、引張剥離試験を行なうに当たっては、加硫ゴムの原料ゴムとして、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2- ノルボルネンランダム共重合体ゴム(エチレン含量=65〜70モル%、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]=2.5〜3.0dl/g、ヨウ素価=10〜15g/100g)を用いる。
(プレスでの成形法)
150tonプレスを用いて前述のゴム配合物を170℃、10分間加熱して加硫成形し、縦12cm、横14.7cm、厚さ2mmの平板を製造する。このようにして加硫ゴムプレスシートを得る。
(プレス品の接着法)
コーナー部材との接着直前に、縦2.5cmとなるようにカッターで切断し、カッター切断面に対して熱可塑性エラストマーが接着するよう金型にセットする。その後、射出温度230℃、金型温度50℃にてコーナー部材を熱可塑性エラストマーと溶融接着させ、剥離状態観察用の試験片を得る。
(剥離状態の観察)
上記のようにして得られた試験片の接合部を幅2cmの短冊状に打ち抜いて、引張速度200mm/分で引張剥離試験を行ない、試験後の断面を目視にて観察し、母材破壊か界面剥離かを観察する。
【0067】
成形体
本発明に係る成形体は、加硫ゴムからなる成形体に、前記の、本発明に係る第1または第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーを接合、好ましくは溶着させてなる複合成形体である。
このような複合成形体は、たとえば、あらかじめ加硫ゴムからなる成形体と、熱可塑性エラストマーからなる成形体とを準備しておき、界面を加熱して溶融させてから接触することにより製造することもできるが、あらかじめ準備された加硫ゴムからなる成形体と、溶融した熱可塑性エラストマーを接触させて、固化させるなどの方法が好ましい。たとえば加硫ゴムからなる成形体を金型にセットし、その後、熱可塑性エラストマーの溶融物を射出して固化することにより溶融接着(溶着)させる方法などが挙げられる。本発明ではインサート成形が特に好ましい。
【0068】
本発明においては、以上のような加硫ゴムからなる成形体と、本発明に係る熱可塑性エラストマーからなる成形体との接合部を形成する工程に加えて、該接合部を含む成形体を80℃以上の温度で加熱処理する工程を実施することが好ましい。
加熱処理については、通常80℃以上の温度であれば特に制限はないが、好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上、上限については特に制限はないが、通常130℃以下である。ここで温度は、雰囲気の温度のことをさす。
【0069】
また、加熱処理時間については、特に限定しないが、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、さらに好ましくは10時間以上、上限については通常24時間以下である。
また熱処理に際しては、加熱ヒーター、オーブンなどの加熱装置を適宜用いることができる。
【0070】
上記のような方法によって、接着強度に優れた複合成形体を得ることができる。
この成形体を形成する加硫ゴムとしては、エチレン・α- オレフィン・ポリエン共重合体ゴムが熱可塑性エラストマー組成物との溶着性の面から好ましい。このような共重合体ゴムとして、前記したエチレン・α- オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴム(B)が好ましく用いられる。
【0071】
なお、ここでいう加硫ゴムとは、イオウを用いて架橋したもののみならず、他の架橋剤で架橋したものも含まれる。
本発明に係る第1〜第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、車両の内外装材として用いられる加硫ゴム成形物(好ましくはポリオレフィン系加硫ゴム成形物)に溶着するコーナー部、たとえば自動車用ウェザーストリップのコーナー部分(コーナー材)に好適に用いられる。具体的には、ポリオレフィン系加硫ゴムの押出成形物を裁断し、得られた裁断押出物同士を異なる方向から接続するコーナー部分の成形において、上述した本発明に係る第1〜第2のオレフィン系熱可塑性エラストマー(組成物)を融点以上の温度で射出成形して、加硫ゴムの押出成形品と接触させて溶着させることにより、ウェザーストリップを得ることができる。
【0072】
本発明に係る第1〜第2の熱可塑性エラストマーからなるコーナー部成形体を有するウェザーストリップについて図1に基づいてより具体的に説明する。
図1は、自動車のウェザーストリップ(グラスランチャンネル)およびその成形方法を説明する模式斜視図である。
図1の(A)に示すように、ウェザーストリップは、加硫ゴム製の裁断押出成形物1、2と、この裁断押出成形物1、2を異なる方向から接続する際に形成される接合コーナー部材3とで構成されている。この裁断押出成形物1、2は、加硫ゴムをチャンネル状に押出成形した後、所定の長さに裁断したものである。この裁断押出成形物1、2は長手方向の形状が直線形状をしている。また、ここでいう「接合コーナー部材」とは、裁断押出成形物同士を異なる方向から接続する際に形成される熱可塑性エラストマー製の部分をいう。
【0073】
このようなウェザーストリップは、次のようにして調製することができる。
まず、射出成形用金型4を予め所定の温度に加熱しておく。次に、図1の(B)に示すように、この金型4に加硫ゴムからなる裁断押出成形物1、2を挿入する。
次いで、図示していないが、加熱室内(スクリュー内)で融点以上の温度で溶融された本発明に係る第1〜第3のオレフィン系熱可塑性エラストマーを、金型4のキャビティとコアの間にできる空間部に注入し、裁断押出成形物1、2の端面に、融点以上の温度で溶融させた本発明に係る第1〜第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーを溶着させた後、この熱可塑性エラストマーを冷却し、図1の(A)に示すようなコーナー部材3を有するウェザーストリップを得る。
【0074】
上記の裁断押出成形物1、2の調製に用いられる加硫ゴムとしては、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムが主成分であるのが好ましく、エチレン・α- オレフィン非共役ポリエン共重合体ゴムにおける炭素原子数3〜20のα- オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1- ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチルデセン-1、11- メチルドデセン-1、12- エチルテトラデセン-1などが挙げられる。これらのα- オレフィンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらのα- オレフィンのうち、炭素原子数3〜8のα- オレフィン、たとえばプロピレン、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセン、1-オクテンが特に好ましい。
【0075】
エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは、耐熱老化性、強度特性、ゴム弾性、耐寒性および加工性に優れた加硫ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られるという点で、(a)エチレンから導かれる単位と(b)炭素原子数3〜20のα- オレフィンから導かれる単位とを、50/50〜90/10[(a)/(b)]のモル比で含有していることが好ましい。このモル比はより好ましくは65/35〜90/10、さらに好ましくは65/35〜85/15、特に好ましくは65/35〜80/20である。
【0076】
また、非共役ポリエンとしては、具体的には、
1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4- ヘキサジエン、4-メチル-1,4- ヘキサジエン、5-メチル-1,4- ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4- ヘキサジエン、7-メチル-1,6- オクタジエン、8-メチル-4- エチリデン-1,7- ノナジエン、4-エチリデン-1,7- ウンデカジエン等の鎖状非共役ジエン;
メチルテトラヒドロインデン、5-エチリデン-2- ノルボルネン、5-メチレン-2- ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2- ノルボルネン、5-ビニリデン-2- ノルボルネン、6-クロロメチル-5- イソプロペニル-2- ノルボルネン、5-ビニル-2- ノルボルネン、5-イソプロペニル-2- ノルボルネン、5-イソブテニル-2- ノルボルネン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の環状非共役ジエン;
2,3-ジイソプロピリデン-5- ノルボルネン、2-エチリデン-3- イソプロピリデン-5- ノルボルネン、2-プロペニル-2,2- ノルボルナジエン、4-エチリデン-8- メチル-1,7- ナノジエン等のトリエンなどが挙げられる。中でも、5-エチリデン-2- ノルボルネン、5-ビニル-2- ノルボルネン、シクロペンタジエン、4-エチリデン-8- メチル-1,7- ナノジエンが好ましい。
【0077】
これらの非共役ポリエンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムのヨウ素価は、架橋効率の高いゴム組成物が得られ、耐圧縮永久歪み性に優れる加硫ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られ、かつ、コスト的に有利である点で、1〜40であることが好ましく、1〜30であることが更に好ましい。
【0078】
エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムの135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、強度特性、耐圧縮永久歪み性および加工性に優れた加硫ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られるという点で、2.0〜4.5dl/gであることが好ましく、2.2〜4.0dl/gあることが更に好ましい。これらのエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは、単独で用いてもよく、また2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0079】
加硫ゴム中には、十分な機械強度を有する押出成形加硫ゴム成形体を得るために、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム100重量部に対して、カーボンブラックを30〜300重量部の割合で用いるのが好ましい。
カーボンブラックとしては、SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックは、機械的強度および製品肌の良好な加硫ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られるという点で、窒素吸着比表面積が10〜100m2/gであることが好ましい。
【0080】
加硫ゴム中には、意図する加硫物の用途に応じて、老化防止剤、加工助剤、発泡剤、発泡助剤、着色剤、分散剤、難燃剤等の従来公知の配合剤が配合される。
また、加硫ゴム中には補強剤として無機充填剤を用途に応じて適宜用いることができるが、通常、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム100重量部に対して最大100重量部である。
【0081】
無機充填剤としては、具体的には、シリカ、軟質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレーなどが挙げられる。
加硫ゴム中に配合される軟化剤としては、通常ゴムに使用される軟化剤を用いることができる。具体的には、
プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;
コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;
ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、椰子油等の脂肪油系軟化剤;
トール油;
サブ、(ファクチス);
蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;
リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸および脂肪酸塩;
ナフテン酸;
パイン油、ロジンまたはその誘導体;
テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質;
ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系軟化剤;
マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、末端変性ポリイソプレン、水添末端変性ポリイソプレン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油などが挙げられる。中でも、石油系軟化剤、特にプロセスオイルが好ましく用いられる。これらの軟化剤の配合量は、加硫物の用途により適宜選択される。
【0082】
加硫ゴムの加硫に用いる加硫剤としては、イオウおよびイオウ化合物が挙げられる。
イオウとしては、具体的には、粉末イオウ、沈降イオウ、コロイドイオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウなどが挙げられる。
イオウ化合物としては、具体的には、塩化イオウ、二塩化イオウ、高分子多硫化物などが挙げられる。また、加硫温度で活性イオウを放出して加硫するイオウ化合物、たとえばモルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレンなども使用することができる。
【0083】
これらの中では、イオウが好ましい。
イオウまたはイオウ化合物は、前記共重合体ゴム100重量部に対して、通常0.1〜10重量部の割合で用いられる。
また、加硫剤としてイオウまたはイオウ化合物を使用するときは、加硫促進剤を併用することが好ましい。加硫促進剤としては、具体的には、
N-シクロヘキシル-2- ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N-オキシジエチレン-2- ベンゾチアゾールスルフェンアミド(OBS)、N-t-ブチル-2- ベンゾチアゾールスルフェンアミド(BBS)、N,N-ジイソプロピル-2- ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系化合物;
2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4- モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系化合物;
ジフェニルグアニジン(DPG)、トリフェニルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン(DOTG)、オルソトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレート等のグアニジン系化合物;
アセトアルデヒド- アニリン縮合物、ブチルアルデヒド- アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン(H)、アセトアルデヒドアンモニア等のアルデヒドアミンまたはアルデヒド- アンモニア系化合物;
2-メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系化合物;
チオカルバニリド、ジエチルチオウレア(EUR)、ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジオルソトリルチオウレア等のチオウレア系化合物;
テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(TRA)等のチウラム系化合物;
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオカルバミン酸塩;
ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のキサントゲン酸塩;
亜鉛華(酸化亜鉛)等の化合物が挙げられる。
【0084】
これらの加硫促進剤は、前記共重合体ゴム100重量部に対して、通常0.1〜20重量部の割合で用いられる。
加硫ゴムにおいて使用する老化防止剤としては、たとえばアミン系、ヒンダードフェノール系またはイオウ系老化防止剤等が挙げられるが、これらの老化防止剤は、本発明の目的を損なわない範囲で用いられる。
【0085】
アミン系老化防止剤としては、ジフェニルアミン類、フェニレンジアミン類等が挙げられる。
イオウ系老化防止剤としては、通常ゴムに使用されるイオウ系老化防止剤が用いられる。
加工助剤としては、通常のゴムの加工に使用される加工助剤を使用することができる。具体的には、リノール酸、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸の塩;前記高級脂肪酸のエステル類などが挙げられる。
【0086】
このような加工助剤は、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム100重量部に対して、通常10重量部以下の量で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
発泡剤としては、具体的には、重炭酸ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N'- ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AZBN)、アゾビスシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド(BSH)、トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、p,p'- オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホルニルアジド等のアジド化合物が挙げられる。
【0087】
また、加硫ゴムの成分中に、公知の他のゴムや樹脂をブレンドして用いることができる。
このような他のゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)等のイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等の共役ジエン系ゴムを挙げることができる。
【0088】
他の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、1,2-ポリブタジエン、ポリブテンなどを挙げることができる。
[ゴム組成物およびその加硫ゴム成形体の調製]
加硫ゴム成形体の調製の際に用いられるゴム組成物は、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)類により、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム、カーボンブラック、ゴム補強剤、無機充填剤、軟化剤等の添加剤を80〜170℃の温度で2〜20分間混練した後、イオウをオープンロールのようなロール類、あるいはニーダーを使用して、必要に応じて加硫促進剤、加硫助剤、発泡剤、発泡助剤を追加混合し、ロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。
【0089】
上記のようにして調製された押出成形用ゴム組成物は、押出成形機により意図する形状とし、成形と同時に、または成形物を加硫槽内に導入し、140〜300℃の温度で1〜20分間加熱することにより、加硫することができる。
加硫の工程は、通常連続的に実施される。加硫槽における加熱方法としては、熱空気、ガラスビーズ流動床、溶融塩槽(LCM)、PCM(Powder CuringMediumまたはPowder Curing Method)、UHF(極超短波電磁波)、スチーム等の加熱手段を用いることができる。
【0090】
なお、ここではウェザーストリップを例にとって説明したが、本発明に係る第1〜第2のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、加硫ゴム成形体に融着成形体を形成する場合はもちろん、ドアトリム等の表皮部を融着表皮層で形成する場合にも適用することが可能である。
【0091】
【発明の効果】
本発明によれば、接着剤層を介さずとも加硫ゴム(母材)に対して十分な接着強度と剥離時に母材破壊を生じる(すなわち、接着界面で剥離するのではなく、成形体で破壊する)成形体を形成し得る熱可塑性エラストマー組成物およびその組成物を加硫ゴムに溶着させた成形体、ならびに熱可塑性エラストマーとして十分な硬度とゴム弾性を有する成形体を形成し得る、成形性、経済性に優れる熱可塑性エラストマー組成物、その製造方法およびその組成物を加硫ゴムに溶着させた成形体を提供することができる。
【0092】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものではない。
なお、実施例1〜8および比較例1〜3で用いた高密度ポリエチレンおよびポリプロピレンの融点(Tm)、実施例1〜8および比較例1〜3で得られた熱可塑性エラストマー(TPE)組成物の融解熱量、メルトフローレート(MFR)、実施例1〜8および比較例1〜3で得られた熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体の引張剥離強度およびその剥離時の破壊形態、硬度、引張強度、伸び、圧縮永久歪み(CS)、成形性の測定ないし評価は、次の方法に従って行なった。また、海島構造の観察は、下記の方法従って行なった。
(1)高密度ポリエチレンおよびポリプロピレンの融点(Tm)、TPE組成物の融解熱量
ペレットを230℃にて10分アニーリングした後、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、30℃まで10℃/分の速度で降温した後1分間保持し、10℃/分の速度での昇温し、吸収熱量が最大の温度を融点(Tm)とし、測定曲線とベースラインの間の面積とから融解熱量(全融解熱量)を求めた。
(2)TPE組成物の125℃以下の融解熱量
(1)で得られた各温度での融解熱量測定温度曲線より125℃以下の融解熱量を求めた。
(3)メルトフローレート(MFR)
熱可塑性エラストマー組成物のメルトフローレートは、ASTM D 1238−65Tに準拠して230℃、2.16kg荷重で測定した。
(4)引張剥離強度および剥離時の破壊形態
後述する参考例で得られた加硫ゴムプレスシート(縦12cm×横14.7cm×厚み2mmの平板)を被接着材としてカッターにて切断して縦2.5cm×14.7cm×厚み2mmとし、被接着材として得られた加硫ゴム成形物を射出成形用金型に両面テープにて付着させた。
【0093】
そして、100Ton射出成形機にて、この加硫ゴム成形物の切断面に溶着用熱可塑性エラストマー組成物がその射出段階にて加硫ゴム成形物の切断面と溶融接着するように成形した。
このようにして溶融接着させた成形品を幅2cmの短冊状に打ち抜いて200mm/分の引張速度で剥離試験を行ない、その時の引張剥離強度(接着剥離強度)を測定すると同時に、その剥離試験時の剥離状態を目視判定した。
(5)硬度
硬度は、JIS K6301に準拠して、ショアーA硬度を測定した。
(測定条件)プレス成形機によりシートを作製し、A型測定器を用い、押針接触後直ちに目盛りを読み取った。
(6)引張強度および伸び
JIS K6301に準拠して、引張試験を下記の条件で行ない、破断時の引張強度と伸びを測定した。
(試験条件)プレス成形機によりシートを作製し、JIS3号試験片を打ち抜き引張速度200mm/分の条件で行なった。
(7)圧縮永久歪み
圧縮永久歪み(CS)は、JIS K6301に準拠して、下記の条件で測定した。
(測定条件)縦型射出成形機にて直径29.0mm、厚さ12.7mmの円柱状の成形品を製造し、70℃の温度条件にてスペーサーにより25%厚み方向に圧縮し、22時間経時して解放後の厚さを測定して圧縮永久歪みを計算した。
(8)海島構造の観察
オレフィン系熱可塑性エラストマーのペレット表面を包埋するように、ルテニウム染色を行なった後、凍結超薄切片を作製し、カーボン蒸着後、透過型電子顕微鏡(TEM)(JEM−2000FX、日本電子(株)製)により観察した。
【0094】
【参考例】
(加硫ゴムプレスシートの調製)
原料ゴムとしてエチレン・プロピレン・5-エチリデン-2- ノルボルネン共重合体ゴム(エチレン含量=68モル%、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]=2.8dl/g、ヨウ素価=12)100重量部と、FEF級カーボンブラック[旭カーボン(株)製、商品名 旭#60G]170重量部と、軟化剤[出光興産(株)製、商品名 ダイアナプロセスオイルTM PS−430]95重量部と、ステアリン酸1重量部と、亜鉛華1号5重量部と、活性剤[ライオン(株)製、商品名 アーカード2HT−F]1重量部とを、容積1.7リットルのバンバリーミキサー[(株)神戸製鋼所製、BB−2形ミキサー]で混練した。
【0095】
混練方法は、まず原料ゴムを1分素練りし、次いで、カーボンブラック、軟化剤、ステアリン酸、亜鉛華1号、活性剤を入れ2分間混練した。その後、ラムを上昇させ掃除を行ない、更に2分間混練しゴム配合物(I)1390重量部を得た。この混練は充填率75%で行ない、更に同様の手順により、2バッチ混練し、合計4170重量部を得た。
【0096】
得られたゴム配合物(I)から3670重量部を秤量し、14インチオープンロール(日本ロール(株)製)(前ロールの表面温度60℃、後ロールの表面温度60℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)に巻き付けて、そのゴム配合物(I)に、イオウ5重量部、2-メルカプトベンゾチアゾール[三新化学工業(株)製、商品名 サンセラーM]15重量部、ジベンゾチアジルジスルフィド[三新化学工業(株)製、商品名 サンセラーDM)5重量部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛[三新化学工業(株)製、商品名 サンセラーBZ]20重量部、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛[三新化学工業(株)製、商品名 サンセラーPZ]5重量部、エチレンチオ尿素[三新化学工業(株)製、商品名 サンセラー22C]10重量部、ジチオジモルホリン[三新化学工業(株)製、商品名 サンフェルR]5重量部、および酸化カルシウム[井上石灰工業(株)製、商品名 ベスタPP]50重量部を添加し、14インチオープンロール(日本ロール(株)製、ロール温度60℃)で7分間混練し、ゴム配合物(II)を得た。
【0097】
以下、このゴム配合物(II)を用い、前述のようにして加硫ゴムプレスシートを得た。なお、このとき150tonプレスを用いた。
【0098】
【実施例1】
高密度ポリエチレン[密度(ASTM D 1505):0.956g/cm3、MFR(ASTM D 1238,190℃、2.16kg荷重):6g/10分、融点(Tm):127℃;以下、HDPE−1と略す。]15重量部と、
ゴム成分として油展エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2- ノルボルネン共重合体ゴム[エチレン含量:78モル%、プロピレン含量:22モル%、ヨウ素価:13、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]74、油展量:ゴム100重量部に対してパラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製、商品名 PW−380)を40重量部;以下、EPTと略す。]47重量部と、
ポリプロピレンとしてプロピレン・エチレン・1-ブテン三元共重合体[MFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重):7.0g/10分、融点(Tm):136℃;以下、PP−1と略す。)38重量部と、
酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤[日本チバガイギー(株)製、商品名 イルガノックス1010]0.1重量部と、
耐候剤としてジアゾ系耐候安定剤[日本チバガイギー(株)製、商品名 チヌビン326]0.1重量部と、
スリップ剤[ライオン(株)製、商品名 アーモスリップCP]0.3重量部と、
架橋剤として有機過酸化物[日本油脂(株)製、商品名 パーヘキサ25B]0.08重量部と、
架橋助剤としてジビニルベンゼン(DVB)0.04重量部と
をヘンシェルミキサーで充分混合し、押出機[品番 TEM−50、東芝機械(株)製、L/D=40、シリンダー温度:C1〜C2 120℃、C3〜C4 140℃、C5〜C6 180℃、C7〜C8 200℃、C9〜C12 220℃、ダイス温度:210℃、スクリュー回転数:200rpm、押出量:40kg/h)にてパラフィン系プロセスオイル[出光興産(株)製、商品名 PW−380]20重量部をシリンダーに注入しながら造粒を行ない、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0099】
得られた熱可塑性エラストマー組成物は、透過型電子顕微鏡(TEM)によれば、EPT相とHDPE−1相とが島で、PP−1相が海であることが観察された。島相の平均粒子径が2μm以下であり、長径と短径との比が2以上の島相の個数が島相の総個数に対して0.5%であった。また、この組成物は、ゲル分率が7重量%であり、融解時の熱量(全融解熱量)が45J/gであり、125℃以下の融解熱量の全融解熱量に占める割合が58%であった。
【0100】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
そして、100ton射出成形機にて、前記加硫ゴムプレスシートの切断面にこの熱可塑性エラストマー組成物が、その射出成形段階にて溶融接着するように成形した。得られた成形品について下記の引張剥離試験を行なった。
<成形品の引張剥離試験>
前記加硫ゴムの項で説明したような加硫ゴムの成形体と、上記熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体が接合している成形体、たとえばウェザーストリップのような接合部を有するような成形体について、接合部を挟む2個所を把持して引張速度200mm/分で引張試験を行ない、試験後の断面を観察し、母材破壊か界面剥離かを確認した。
【0101】
その結果を第1表に示す。
【0102】
【実施例2】
実施例1において、HDPE―1の代わりに、密度(ASTM D 1505)が0.954g/cm3、MFR(ASTM D 1238,190℃、2.16kg荷重)が0.8g/10分、融点(Tm)が131℃である高密度ポリエチレン(以下、HDPE−2と略す。)を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0103】
得られた熱可塑性エラストマー組成物は、海島構造であり、島相の平均粒子径が2μm以下であり、長径と短径との比が2以上の島相の個数が島相の総個数に対して1.3%であった。また、この組成物は、ゲル分率が8重量%であり、融解時の熱量が45J/gであり、125℃以下の融解熱量の全融解熱量に占める割合が57%であった。
【0104】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
その結果を第1表に示す。
【0105】
【実施例3】
実施例1において、HDPE―1の代わりに、密度(ASTM D 1505)が0.965g/cm3、MFR(ASTM D 1238,190℃、2.16kg荷重)が13g/10分、融点(Tm)が131℃である高密度ポリエチレン(以下、HDPE−3と略す。)を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0106】
得られた熱可塑性エラストマー組成物は、海島構造であり、島相の平均粒子径が2μm以下であり、長径と短径との比が2以上の島相の個数が島相の総個数に対して0.3%であった。また、この組成物は、ゲル分率が7重量%であり、融解時の熱量が45J/gであり、125℃以下の融解熱量の全融解熱量に占める割合が58%であった。
【0107】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
その結果を第1表に示す。
【0108】
【実施例4】
実施例1において、PP−1の代わりに、プロピレン・エチレン二元共重合体[MFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重):21g/10分、融点(Tm):145℃](以下、PP−2と略す。)を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0109】
得られた熱可塑性エラストマー組成物は、海島構造であり、島相の平均粒子径が2μm以下であり、長径と短径との比が2以上の島相の個数が島相の総個数に対して0.6%であった。また、この組成物は、ゲル分率が9重量%であり、融解時の熱量が48J/gであり、125℃以下の融解熱量の全融解熱量に占める割合が61%であった。
【0110】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
その結果を第1表に示す。
【0111】
【実施例5】
実施例1において、EPT47重量部の代わりに、EPT32重量部およびエチレン・プロピレン共重合体ゴム[MFR(ASTM D 1238,190℃、2.16kg荷重):0.7g/10分、エチレン含量:81モル%;以下、EPR−1と略す。]15重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0112】
得られた熱可塑性エラストマー組成物は、海島構造であり、島相の平均粒子径が2μm以下であり、長径と短径との比が2以上の島相の個数が島相の総個数に対して0.4%であった。また、この組成物は、ゲル分率が7重量%であり、融解時の熱量が46J/gであり、125℃以下の融解熱量の全融解熱量に占める割合が59%であった。
【0113】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
その結果を第1表に示す。
【0114】
【実施例6】
実施例1において、EPTおよびPP−1の配合量をそれぞれ52重量部、33重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
得られた熱可塑性エラストマー組成物は、海島構造であり、島相の平均粒子径が2μm以下であり、長径と短径との比が2以上の島相の個数が島相の総個数に対して1.5%であった。また、この組成物は、ゲル分率が10重量%であり、融解時の熱量が42J/gであり、125℃以下の融解熱量の全融解熱量に占める割合が63%であった。
【0115】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
その結果を第1表に示す。
【0116】
【実施例7】
実施例1において、EPTおよびPP−1の配合量をそれぞれ27重量部、33重量部に変更し、さらにエチレン・1-オクテン共重合体ゴム[MFR(ASTM D 1238,190℃、2.16kg荷重):1g/10分、エチレン含量:87モル%;以下、EORと略す。]25重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0117】
得られた熱可塑性エラストマー組成物は、海島構造であり、島相の平均粒子径が2μm以下であり、長径と短径との比が2以上の島相の個数が島相の総個数に対して1.3%であった。また、この組成物は、ゲル分率が9重量%であり、融解時の熱量が42J/gであり、DSCにて測定した125℃以下の融解熱量の全融解熱量に占める割合が65%であった。
【0118】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
その結果を第1表に示す。
【0119】
【実施例8】
実施例1において、EPT、HDPE−1およびPP−1の配合量をそれぞれ52重量部、20重量部、28重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
得られた熱可塑性エラストマー組成物は、海島構造であり、島相の平均粒子径が2μm以下であり、長径と短径との比が2以上の島相の個数が島相の総個数に対して1.7%であった。また、この組成物は、ゲル分率が10重量%であり、融解時の熱量が50J/gであり、125℃以下の融解熱量の全融解熱量に占める割合が71%であった。
【0120】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
その結果を第1表に示す。
【0121】
【実施例9】
前記参考例で調製したゴム配合物(II)をロールからリボン状に切り出した。
このリボン状のゴム配合物(II)を押出機ヘッド温度80℃の押出機にて、縦2mm×横25mmの図1の断面形状の異型ノズルを用いて、2.5m/分の速度で押出成形を行ない、マイクロ波加硫槽(UHF)と熱空気加硫槽(HAV)が直列につながれた成形ラインを用いて、加硫を行ない、加硫ゴム成形体(III)を得た。
【0122】
この際、UHFの温度は200℃とし、押出材料の表面温度がUHF出口で190℃となるように出力を調整した。30mのHAV加硫槽を用い、その槽内温度は250℃に設定した。両加硫槽での合計滞留時間は5分であった。
そして、70ton縦型射出成形機を用いて、予め成形した上記加硫ゴム押出成形物を20cm間隔で切断し、図1の符号4のような金型に、切断面に熱可塑性エラストマー組成物を溶着させることができるようにセットした。その後、射出温度230℃、金型温度50℃にて実施例1で得られた熱可塑性エラストマー組成物と溶融接着させた。その剥離試験の結果、母材破壊が観察された。
【0123】
【比較例1】
実施例1において、EPTおよびHDPE−1の配合量をそれぞれ62重量部、0重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物は、海島構造であり、島相の平均粒子径が2μm以下であり、長径と短径との比が2以上の島相の個数が島相の総個数に対して1.5%であった。また、この組成物は、ゲル分率が4重量%であり、融解時の熱量が18J/gであり、125℃以下の融解熱量の全融解熱量に占める割合が35%であった。
【0124】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
その結果を第1表に示す。
【0125】
【比較例2】
実施例1において、架橋剤(商品名 パーヘキサ25B)および架橋助剤(ジビニルベンゼン)の配合量をそれぞれ0.16重量部、0.08重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物は、海島構造であり、島相の平均粒子径が2μm以下であり、長径と短径との比が2以上の島相の個数が島相の総個数に対して5%であった。また、この組成物は、ゲル分率が37重量%であり、融解時の熱量が43J/gであり、125℃以下の融解熱量の全融解熱量に占める割合が58%であった。
【0126】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
その結果を第1表に示す。
【0127】
【比較例3】
実施例1において、架橋剤(商品名 パーヘキサ25B)および架橋助剤(ジビニルベンゼン)の配合量をそれぞれ0.24重量部、0.12重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物は、海島構造であり、島相の平均粒子径が2μm以下であり、長径と短径との比が2以上の島相の個数が島相の総個数に対して7%であった。また、この組成物は、ゲル分率が47重量%であり、融解時の熱量が42J/gであり、125℃以下の融解熱量の全融解熱量に占める割合が58%であった。
【0128】
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、得られた成形体について前記方法に従って評価した。
その結果を第1表に示す。
【0129】
【比較例4】
比較例1のサンプルについて、実施例9と同様に成形体を製造し、引張剥離試験を行なった。その結果、母材破壊は見られず、界面剥離であった。
なお、第1表中に組成成分として記載していない成分について、実施例1〜8および比較例1〜3におけるスリップ剤の配合量は0.3重量部、酸化防止剤と耐候安定剤の配合量は、それぞれ0.1重量部、パラフィン系プロセスオイルの配合量は20重量部である。
【0130】
第1表中の(*):長径と短径との比が2以上の島相の個数を、島相の総個数で除して求めた百分率。
【0131】
【表1】
Figure 0003952392
【0132】
【表2】
Figure 0003952392

【図面の簡単な説明】
【図1】図1の(A)は、コーナー部材が本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物から形成されている自動車用ウェザーストリップの1例を示す模式斜視図であり、図1の(B)は、そのウェザーストリップのコーナー部材の形成方法を説明するための模式斜視図である。
【符号の説明】
1,2・・・ 裁断押出成形物
3・・・・・・ 接合コーナー部材
4・・・・・・ 射出成形用金型

Claims (8)

  1. 密度(ASTM D 1505)が0.940g/cm3 以上である高密度ポリエチレン(A)5〜50重量部と、
    エチレン、炭素原子数3〜20のα- オレフィンおよび必要に応じて非共役ポリエンからなるエチレン・α- オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴム(B)20〜60重量部と、
    ポリプロピレン(C)5〜50重量部[成分(A)、(B)および(C)の合計量は100重量部である]と
    を含有するブレンド物から製造され、かつ、ゲル分率が0.5〜15重量%であることを特徴とする射出成形用オレフィン系熱可塑性エラストマー。
  2. 前記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、
    海島構造のモルフォロジーを形成するオレフィン系熱可塑性エラストマーであって、
    オレフィン系熱可塑性エラストマーのペレット表面を包埋するように、ルテニウム染色を行なった後、凍結超薄切片を作製し、カーボン蒸着後、透過型電子顕微鏡(TEM)により1万倍に拡大して観察した写真中の全ての島相の短径と長径とを足して平均した島相の平均粒子径が2μm以下であり、
    ゲル分率が0.5〜15重量%であり、
    70℃での永久圧縮歪み(JIS K6301に準拠)(CS)が65%以下であり、かつ、
    示差走査型熱量計(DSC)にて測定した125℃以下の融解熱量が、全融解熱量の40%以上であることを特徴とする請求項に記載の射出成形用オレフィン系熱可塑性エラストマー。
  3. 前記熱可塑性エラストマーが、示差走査型熱量計(DSC)にて測定した融解時の熱量が30J/g以上であることを特徴とする請求項に記載の射出成形用オレフィン系熱可塑性エラストマー。
  4. 密度(ASTM D 1505)が0.940g/cm3 以上である高密度ポリエチレン(A)5〜50重量部と、
    エチレン、炭素原子数3〜20のα- オレフィンおよび必要に応じて非共役ポリエンからなるエチレン・α- オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴム(B)20〜60重量部と、
    ポリプロピレン(C)5〜50重量部[成分(A)、(B)および(C)の合計量は100重量部である]と
    を含有するブレンド物を、架橋剤(D)の存在下に溶融混練して、ゲル分率が0.5〜15重量%である熱可塑性エラストマーを得ることを特徴とする射出成形用オレフィン系熱可塑性エラストマーの製造方法。
  5. 加硫ゴムからなる成形体と、請求項1〜のいずれかに記載の射出成形用熱可塑性エラストマーからなる成形体が接合してなることを特徴とする成形体。
  6. 前記成形体が自動車内外装材用であることを特徴とする請求項に記載の成形体。
  7. 前記自動車内外装材が、ウェザーストリップ材であることを特徴とする請求項に記載の成形体。
  8. 直線的部分と接合コーナー部材とが接合されてなるウェザーストリップ材において、該直線的部分が前記加硫ゴムの成形体からなり、該コーナー部材が請求項1〜のいずれかに記載の射出成形用熱可塑性エラストマーから形成されてなることを特徴とする請求項に記載の成形体。
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