JP7466330B2 - 摺動部材、摺動部材用組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、摺動部材、摺動部材用組成物及びその製造方法に関する。
自動車用ドアのサッシュに取り付けられるウェザーストリップは、窓ガラスの外周縁部をシールすることにより、窓ガラスをしっかりと保持し、雨、風、異物等の車内への侵入を防止すると共に、窓ガラスの開閉を円滑に行わせるために使用される自動車部品である。
ウェザーストリップは熱可塑性エラストマー(TPV)を含有する摺動部材用組成物で構成されることが一般的である。その摺動性を高める観点からシリコーンオイル等のシリコーン化合物をTPVに添加して使用されることがある。例えば、特許文献1には、動的架橋型のオレフィン系熱可塑性エラストマーにシリコーン化合物が高含有量で添加された摺動材料が開示されている。
特許第5167128号公報
夏場の炎天下に曝された自動車において窓ガラスが開閉された場合、高温状態のウェザーストリップが窓ガラスによって摺動される。このような高温環境下で摺動されると、ウェザーストリップの表面の摩擦係数が上昇し、そのまま高止まりして摺動性が低下する問題がある。摺動性が低下すると、窓ガラスの開閉時に異音が発生したり、より大きな力が必要になったりする。
本発明は、高温環境下で摺動された後の摺動性の低下が低減された摺動部材と、摺動部材用組成物及びその製造方法を提供する。
[1] 高密度ポリエチレン及び架橋剤を含む原料を混錬しながら、前記高密度ポリエチレンの一部を架橋させることにより、熱可塑性エラストマーを得る動的架橋工程と、前記熱可塑性エラストマー100質量部にシリコーン化合物8~20質量部を混合して摺動部材用組成物を得る混合工程と、を含み、前記高密度ポリエチレンのメルトマスフローレートは1.0~4.5g/10分(JIS K7210、230℃、荷重10kg)であり、前記原料の総質量に対する前記高密度ポリエチレンの含有量が40~70質量%である、
摺動部材用組成物の製造方法。
[2] 前記原料はゴム成分を含み、前記原料の総質量に対する前記ゴム成分の含有量が1~30質量%である、[1]に記載の摺動部材用組成物の製造方法。
[3] 前記原料は前記高密度ポリエチレン以外のαオレフィン重合体を含み、前記原料の総質量に対して、前記αオレフィン重合体の含有量が1~30質量%である、[1]又は[2]に記載の摺動部材用組成物の製造方法。
[4] 前記原料はゴム成分および前記高密度ポリエチレン以外のαオレフィン重合体を含み、前記原料の総質量に対して、前記ゴム成分の含有量が1~5質量%であり、かつ、前記原料の総質量に対して、前記αオレフィン重合体の含有量が10~20質量%である、[1]~[3]の何れか一項に記載の摺動部材用組成物の製造方法。
[5] 前記混合工程において、ゴム成分及びαオレフィン重合体のうち少なくとも一方をさらに混合する、[1]~[4]の何れか一項に記載の摺動部材用組成物の製造方法。
[6] 前記混合工程で得た前記摺動部材用組成物中、前記高密度ポリエチレンの一部が架橋してなる架橋体は、ドメインを形成し、前記高密度ポリエチレンの残部を含むマトリックス中に分散されている、[1]~[5]の何れか一項に記載の摺動部材用組成物の製造方法。
[7] 高密度ポリエチレンを含む動的架橋型の熱可塑性エラストマーと、シリコーン化合物とを含む摺動部材用組成物であって、前記摺動部材用組成物中、前記高密度ポリエチレンの一部が架橋してなる架橋体が、ドメインを形成し、前記高密度ポリエチレンの残部を含むマトリックス中に分散されており、前記高密度ポリエチレンのメルトマスフローレートは1.0~4.5g/10分(JIS K7210、230℃、荷重10kg)であり、前記熱可塑性エラストマーの総質量に対する前記高密度ポリエチレンの含有量が、前記架橋体も含めて合計40~70質量%である、摺動部材用組成物。
[8] [7]に記載の摺動部材用組成物によって形成された摺動部材。
本発明の摺動部材にあっては、高温環境下で摺動された後の摺動性の低下が低減されている。本発明の摺動部材用組成物の製造方法によれば、前記摺動部材の形成に適した摺動部材用組成物を製造することができる。
本発明の摺動部材が備えられたウェザーストリップの模式断面図である。
≪摺動部材用組成物の製造方法≫
本発明の第一態様は、高密度ポリエチレンとシリコーン化合物を含む摺動部材用組成物の製造方法であり、下記の動的架橋工程と混合工程を含む。
動的架橋工程は、高密度ポリエチレン及び架橋剤を含む原料を混錬しながら、前記高密度ポリエチレンの一部を架橋させることにより、動的架橋型の熱可塑性エラストマー(以下、TPV(Thermo-plastic Vulcanizates )ということがある。)を得る工程である。
混合工程は、TPV100質量部にシリコーン化合物8~20質量部を混合して摺動部材用組成物を得る工程である。
以下、各工程を説明する。
<動的架橋工程>
[高密度ポリエチレン]
本工程で使用する高密度ポリエチレン(HDPE)は、特定のメルトマスフローレート(MFR)を有する。前記MFRは、1.0~4.5g/10分が好ましく、2.0~4.0g/10分がより好ましく、3.0~4.0g/10分がさらに好ましい。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して、230℃、荷重10kgの条件で測定された値である。
HDPEのMFRが上記範囲であると、摺動性に優れた摺動部材用組成物が得られる。
HDPEの密度は、JIS K6922-1:2018に準拠して23℃±2℃の条件下で測定され、954kg/mよりも大きく、960kg/mよりも大きいことが好ましい。
前記MFRを有する好ましいHDPEとしては、例えば、三井化学社製の商品名:リュブマー(グレード:L5000)、密度966kg/m(測定法:ASTM D1505)、MFR=3.8g/10分(測定法:JIS K 7210、230℃、試験荷重10kg)が挙げられる。
動的架橋に用いる前記原料の総質量に対する、前記範囲のMFRを有するHDPEの含有量(配合量)は、40~70質量%が好ましく、50~70質量%がより好ましく、60~70質量%がさらに好ましい。ここで、前記総質量は、前記原料に含まれる樹脂と架橋剤の合計質量である。
前記範囲のMFRを有するHDPEの配合量が上記範囲であると、摺動性に優れた摺動部材用組成物が得られる。また、前記配合量が上記範囲であると、前記原料に含まれるHDPEの一部が架橋してなる架橋体が、ドメインを形成し、HDPEの残部を含むマトリックス中に分散された、動的架橋型のTPVが容易に得られる。
動的架橋に用いる前記原料に配合する前記範囲のMFRを有するHDPEは、1種類のみでもよいし、2種類以上でもよい。また、前記範囲のMFRを有しないHDPEを前記原料にさらに添加しても構わない。
[架橋剤]
前記原料に配合する架橋剤は、HDPEの一部を架橋して架橋体を形成できるものであれば特に制限されない。例えば、有機過酸化物、ヒドロシリル化剤(及びヒドロシリル化触媒)、フェノール樹脂硬化剤、イオウ、含イオウ化合物、有機多価アミン、金属酸化物等が挙げられる。なかでも、有機過酸化物を用いることが好ましい。有機過酸化物は、HDPEのメチル基やメチレン基等の炭化水素部分からの水素引き抜きに基づくラジカル架橋を起すことができるため、高粘度の架橋体を形成することができる。
有機化酸化物を用いて架橋体を形成する場合、ヒドロシリル基(Si-H)を含むオルガノシロキサン(ヒドロシリル化剤)を併用することが好ましい。これによって架橋効率が向上するとともに、熱処理を伴う動的架橋における「樹脂焼け」が防止される。
有機過酸化物としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が好適である。
具体的には、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-3-メチルベンゾエイト、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサンが挙げられる。
ヒドロシリル化剤としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンアルキルメチルポリシロキサン等の水素化ケイ素化合物が挙げられる。また、ヒドロシリル化触媒としては、例えば、ヘキサクロロ白金酸、塩化白金、酸化白金、白金錯体等の白金含有触媒が挙げられる。
フェノール樹脂硬化剤としては、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、メチロール化アルキルフェノール樹脂、及び臭化アルキルフェノール樹脂などのハロゲン化フェノール樹脂が挙げられる。一般に、非ハロゲン化フェノール樹脂の場合、触媒として塩化第二スズなどのハロゲンドナー、及び酸化亜鉛などのハロゲン化水素除去剤とともに用いる。ハロゲン化フェノール樹脂の場合は、必要であれば、ハロゲン化水素除去剤とともに用いる。
前記原料の総質量に対する、前記架橋剤の含有量(配合量)は、1~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましく、10~15質量%がさらに好ましい。ここで、前記総質量は、前記原料に含まれる樹脂と架橋剤の合計質量である。
前記配合量が上記範囲であると、摺動性に優れた摺動部材用組成物が得られる。また、前記配合量が上記範囲であると、前記原料に含まれるHDPEの一部が架橋してなる架橋体が、ドメインを形成し、HDPEの残部を含むマトリックス中に分散された、動的架橋型のTPVが容易に得られる。
前記原料に配合する前記架橋剤は、1種類のみでもよいし、2種類以上でもよい。
[ゴム成分]
動的架橋に用いる前記原料には、ゴム成分がさらに含まれることが好ましい。ゴム成分は、動的架橋によりHDPEとともに前記架橋体を形成し得る。ゴム成分を配合すると、より摺動性に優れた摺動部材用組成物が得られる。
前記ゴム成分としては、例えば、共役ジエンを重合してなるオレフィン系ポリマー、共役ジエン重合体や共役ジエンの共重合体の不飽和結合を一部残した水添化物、αオレフィンと共役ジエンの共重合体、αオレフィンと非共役ジエンの共重合体、ジシクロペンタジエン系重合体等が挙げられる。
具体的には、例えば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、スチレン・ブタジエン・スチレンゴム(SBS)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム、スチレン・イソプレンゴム(SIR)、スチレン・イソプレンブロック共重合体(SIS)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(イソブチレン・イソプレンゴム)(IIR)、1,2-ポリブタジエン、及びこれらの水添化物等が挙げられる。
また、水添化されたゴム成分として、例えば、スチレン・ブタジエン・ブチレン・スチレン共重合体(SBBS)、スチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、水添スチレン・ブタジエンゴム(HSBR)、スチレン・エチレン/プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン・(エチレン・エチレン/プロピレン)・スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン・エチレン・ブチレン・エチレンブロック共重合体(SEBC)、エチレン結晶・(エチレン・ブチレン)・エチレン結晶共重合体(CEBC)等が挙げられる。
前記ゴム成分のなかでも、EPDM、EPM等のαオレフィンをモノマー単位として有するエラストマーが好ましい。
前記原料の総質量に対する、前記ゴム成分の含有量(配合量)は、1~30質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましく、1~12質量%がさらに好ましく、1~8質量%が特に好ましく、1~5質量%が最も好ましい。ここで、前記総質量は、前記原料に含まれる樹脂(ゴム成分を含む)と架橋剤の合計質量である。
前記配合量が上記範囲であると、より摺動性に優れた摺動部材用組成物が得られる。また、前記配合量が上記範囲であると、前記原料に含まれるHDPEの一部が架橋してなる架橋体が、ドメインを形成し、HDPEの残部を含むマトリックス中に分散された、動的架橋型のTPVが容易に得られる。前記ゴム成分は架橋体に含まれてもよいし、マトリックスに含まれてもよい。
前記原料に配合する前記ゴム成分は、1種類のみでもよいし、2種類以上でもよい。
[αオレフィン重合体]
動的架橋に用いる前記原料には、前記高密度ポリエチレン以外のαオレフィン重合体をさらに含むことが好ましい。αオレフィン重合体は、動的架橋によりHDPEとともに前記架橋体を形成し得る。αオレフィン重合体を配合すると、より摺動性に優れた摺動部材用組成物が得られる。
前記αオレフィン重合体は、プロピレンホモポリマー、エチレンホモポリマー等のαオレフィンの単独重合体であってもよいし、αオレフィン以外の他のモノマーとの共重合体を用いてもよい。ここで、前記他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、不飽和カルボン酸、ビニルエステル、スチレン等が挙げられる。
前記αオレフィン重合体のなかでも、摺動部材用組成物の成形性が向上することから、プロピレンホモポリマーが好ましい。
前記原料の総質量に対する、前記αオレフィン重合体の含有量(配合量)は、10~30質量%が好ましく、13~25質量%がより好ましく、15~20質量%がさらに好ましい。ここで、前記総質量は、前記原料に含まれる樹脂と架橋剤の合計質量である。
前記配合量が上記範囲であると、より成形性に優れた摺動部材用組成物が得られる。また、前記配合量が上記範囲であると、前記原料に含まれるHDPEの一部が架橋してなる架橋体が、ドメインを形成し、HDPEの残部を含むマトリックス中に分散された、動的架橋型のTPVが容易に得られる。前記αオレフィン重合体は架橋体に含まれてもよいし、マトリックスに含まれてもよい。
前記原料に配合する前記αオレフィン重合体は、1種類のみでもよいし、2種類以上でもよい。
[動的架橋工程におけるゴム成分とαオレフィン重合体の特に好適な配合比]
前記原料はゴム成分および前記高密度ポリエチレン以外のαオレフィン重合体を含み、前記原料の総質量に対して、前記ゴム成分の含有量が1~5質量%であり、かつ、前記原料の総質量に対して、前記αオレフィン重合体の含有量が10~20質量%であることが特に好ましい。ここで、前記総質量は、前記原料に含まれる樹脂と架橋剤の合計質量である。
上記組み合わせの範囲であると、摺動性と成形性がより一層優れた摺動部材用組成物が得られる。
前記原料に配合する前記ゴム成分は、1種類のみでもよいし、2種類以上でもよい。
前記原料に配合する前記αオレフィン重合体は、1種類のみでもよいし、2種類以上でもよい。
[動的架橋の方法]
本工程における動的架橋の方法は、前記HDPE及び架橋剤と、任意に配合可能な前記ゴム成分及び前記αオレフィン重合体の少なくとも一方とを原料として、これらを混錬しながら前記HDPEの一部を架橋させられる方法であれば特に制限されず、公知のTPVを作製する動的架橋の方法を採用することができる。例えば、前記原料を二軸押出機で混錬しながら、必要に応じて加熱して、動的架橋させることができる。動的架橋により形成された架橋型TPVは、例えばペレットの形態で得ることができる。
動的架橋の程度は、前記原料中の前記架橋剤の配合量によって制御することができる。架橋剤の配合量が前述の好適な範囲であれば、前記HDPEの一部が架橋体を形成し、残部がマトリックスを構成し、前記架橋体からなるドメインが前記マトリックス中に分散されたいわゆる動的架橋型のTPVを容易に得ることができる。
動的架橋の程度は、次の混合工程で得られた摺動部材用組成物について、熱キシレン還流による残分比率を測定することにより評価することができる。前記残分比率は、主として、前記摺動部材用組成物中の架橋体含有量や架橋度を反映している。つまり、前記残分比率が大きいほど、架橋体含有量が多く、架橋度が高いことを意味する。
前記残分比率は、前記摺動部材用組成物の総質量に対して、30~80質量%であることが好ましい。この範囲であると、より摺動性に優れた摺動部材用組成物が得られる。
[熱キシレン還流による残分比率の測定方法]
摺動部材用組成物のサンプル約3gを秤量して正確な重量(W1)を得る。そのサンプルを円筒形ろ紙に入れ、ソックスレー抽出器にセットし、キシレンで6時間還流抽出を行う。抽出後、サンプルの入ったろ紙を取り出し、120℃のホットプレート上に5時間置いてキシレンを充分蒸発させ、放冷した後にサンプルの正確な重量(W2)を測定する。蒸発のための加熱時間は、キシレンが蒸発しサンプル重量が十分安定するような時間が確保されるように適宜調整される。例えば、加熱時間が5時間である場合、5時間加熱した時と、更に5時間(計10時間)加熱した時の「熱キシレン還流による残分比率%」の変化率が+5%~-8%の範囲であれば、5時間の加熱時間が適切であると判断される。変化率が大きい場合は、1回目に5時間加熱した時と比較して変化率が+5%~-8%の範囲になるように、加熱時間を延長する。熱キシレンに不溶なフィラー等の無機成分の重量をW3とすると、「熱キシレン還流による残分比率」は100×(W2-W3)/W1で求められる。
<混合工程>
[シリコーン化合物]
本工程で用いるシリコーン化合物としては、シリコーンオイル、シリコーンガム(ゴム)、シリコーン系共重合体等が挙げられる。
シリコーンオイル又はシリコーンガム(ゴム)としては、ジメチルシリコーン、ジフェニルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、及び5mol%以下のビニル基を有するそれらのシリコーン、ハイドロジェンポリシロキサン、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、フッ素変性、ポリエーテル変性、アミノ変性、アルコール変性、エポキシ変性、カルボキシ変性等の変性シリコーンオイルが挙げられる。なかでも、ビニル基含有量が1mol%未満で、数平均分子量が102~108の鎖状ジメチルポリシロキサン(ジメチルシリコーンオイル/ガム)、鎖状メチルハイドロジェンポリシロキサン、アルキレン基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルシリコーンオイルやガムが、摺動性能の持続性や耐候性の点で優れているため好ましい。
前記シリコーン系共重合体は、上述のシリコーンオイル又はシリコーンガム(ゴム)と他の樹脂を共重合させたものである。シリコーン系共重合体としては、例えば、シリコーン-アクリル共重合体「シャリーヌ」(日信化学社製、商品名)、シリコーン-アクリル共重合体「X-22-8171」(信越化学工業社製、商品名)、ビニル基の含有量が0~1mol%含有のジメチル・ビニルポリシロキサンと、不飽和基の含有量が0~5重量%のEPDM、SBS、SISとの部分架橋物が挙げられる。また、これらを樹脂でマスターバッチ化したペレットである「X-22-2101」、「X-22-2147」(信越化学工業社製、商品名)、「BY27-001S」(東レ・ダウコーニング社製、商品名)や、樹脂と部分グラフト重合したペレットである「BY27-201」(東レ・ダウコーニング社製、商品名)なども挙げられる。
本工程で用いるシリコーン化合物としては、シリコーンオイルと、シリコーンガムと、シリコーンを40重量%以上含むシリコーン共重合体とからなる群より選ばれる粘度10mPa・s以上のものが好ましい。このようなシリコーン化合物を用いることにより、摺動耐久性が向上する。また、成形時や使用時のシリコーン化合物のふき出しがなく外観が良くなる傾向にある。前記シリコーン化合物の粘度は10~1011mPa・sであることが好ましく、102~107mPa・sであることがより好ましい。
10mPa・s以上の粘度を有する、シリコーンオイル、シリコーンガム及びシリコーン共重合体としては、分子量に換算して100~2000000程度、好ましくは4000~1500000程度のものが適用できる。
好適な粘度を呈するシリコーン化合物は、1種類のシリコーン化合物のみを含んでいてもよいし、2種類以上のシリコーン化合物を含んでいてもよい。
前記シリコーン化合物のなかでも、摺動部材用組成物の摺動性がより向上することから、分子量1000~150000のシリコーンオイルが好ましい。
混合工程で混合するTPV100質量部に対する、前記シリコーン化合物の配合量は、8~20質量部が好ましく、10~18質量部がより好ましく、12~16質量部がさらに好ましい。
前記配合量が上記範囲の下限値以上であると、より摺動性に優れた摺動部材用組成物が得られる。
前記配合量が上記範囲の上限値以下であると、摺動部材用組成物におけるシリコーン化合物のブリードアウトを抑制することができる。
前記TPVに配合する前記シリコーン化合物は、1種類のみでもよいし、2種類以上でもよい。
[αオレフィン重合体]
混合工程において、前記TPVには、αオレフィン重合体をさらに添加して混合してもよい。
前記αオレフィン重合体は、プロピレンホモポリマー、エチレンホモポリマー等のαオレフィンの単独重合体であってもよいし、αオレフィン以外の他のモノマーとの共重合体を用いてもよい。ここで、前記他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、不飽和カルボン酸、ビニルエステル、スチレン等が挙げられる。
前記αオレフィン重合体のなかでも、摺動部材用組成物の成形性が向上することから、プロピレンホモポリマーが好ましい。
混合工程で混合するTPV100質量部に対する、前記αオレフィン重合体の配合量は、10~50質量部が好ましく、20~45質量部がより好ましく、30~40質量部がさらに好ましい。
前記配合量が上記範囲であると、より成形性に優れた摺動部材用組成物が得られる。
前記TPVに配合する前記αオレフィン重合体は、1種類のみでもよいし、2種類以上でもよい。
[ゴム成分]
混合工程において、前記TPVには、ゴム成分をさらに添加して混合してもよい。
本工程で使用し得るゴム成分としては、動的架橋工程で使用し得るゴム成分として例示したものが挙げられる。
ゴム成分を配合すると、より可撓性に優れ、組み付けが容易な摺動部材を製造することができる。
前記ゴム成分のなかでも、エチレン-プロピレン-ジエンゴムが好ましい。
混合工程で混合するTPV100質量部に対する、前記ゴム成分の配合量は、1~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、1~6質量部がさらに好ましい。
前記配合量が上記範囲であると、可撓性と成形性に優れた摺動部材用組成物が得られる。
前記TPVに配合する前記ゴム成分は、1種類のみでもよいし、2種類以上でもよい。
[その他の添加剤]
混合工程で混合する前記TPVには、その他の添加成分を含有させることができる。その他の添加剤としては、例えば、顔料、シリカ、カーボンブラック等の補強剤、酸化防止剤、耐候性向上剤、熱可塑性樹脂、エラストマー、防徽剤、抗菌剤、難燃剤、パラフィン系等の軟化剤、滑剤、フッ素系等の潤滑剤等が挙げられる。これらの混錬を容易にする観点から、シリコーン化合物と同時に混練することが好ましい。
混合工程で混合するTPV100質量部に対する、その他の添加剤の配合量は、製造する摺動部材用組成物の摺動性に対する影響を勘案しながら、例えば0.1~5質量部で配合することができる。
[混合の方法]
混合工程において、前記TPVと前記シリコーン化合物と任意成分の添加剤とを混合する方法は特に制限されず、樹脂組成物を混錬する一般的な方法を採用できる。例えば、2軸押出機、1軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の混錬機が挙げられる。混合により形成された摺動部材用組成物は、例えばペレットの形態で得ることができる。
[摺動部材用組成物の構造]
以上で説明した製造方法により得た摺動部材用組成物中、動的架橋により形成された前記高密度ポリエチレンの一部が架橋してなる架橋体は、ドメインを形成し、前記高密度ポリエチレンの残部を含むマトリックス中に分散されている。マトリックスと架橋体の間には両者の物性の違いから微小な間隙が生じる。この間隙にシリコーン化合物が充填されるので、前記架橋体がマトリックス中に分散していることにより、前記シリコーン化合物も同様にマトリックス中に分散し、ブリードアウトが抑制されるとともに、摺動部材用組成物の表面に分散して露出したシリコーン化合物が、摺動部材用組成物の摺動性を向上させる。また、マトリックスと架橋体の両方に前記MFRを有するHDPEが含まれるため、摺動部材用組成物の摺動性がより一層向上しており、高温環境下で摺動された後の摺動性の低下が低減されている。
≪摺動部材用組成物≫
本発明の第二態様は、高密度ポリエチレンを含む動的架橋型の熱可塑性エラストマー(TPV)と、シリコーン化合物とを含む摺動部材用組成物であって、前記摺動部材用組成物中、前記高密度ポリエチレンの一部が架橋してなる架橋体が、ドメインを形成し、前記高密度ポリエチレンの残部を含むマトリックス中に分散されており、前記高密度ポリエチレンのメルトマスフローレートは1.0~4.5g/10分(JIS K7210、230℃、荷重10kg)であり、前記熱可塑性エラストマーの総質量に対する前記高密度ポリエチレンの含有量が、前記架橋体も含めて合計40~70質量%である。
前記熱可塑性エラストマーは、前記摺動部材用組成物から前記シリコーン化合物を除いた樹脂組成物の総体であり、前記ゴム成分、前記αオレフィン重合体を含んでいてもよい。
本態様の摺動部材用組成物は、第一態様の製造方法により製造することができる。
本発明に係る摺動部材用組成物は、後述する方法で測定された、比重、硬度、引張強度、伸び、MFR、静摩擦係数、動摩擦係数物性が次の範囲にあることが好ましい。各物性のうち少なくとも1つが次の範囲にあると、高温環境下で摺動された後の摺動性の低下がより抑制される。
前記比重は、0.90~0.95が好ましい。
前記硬度は、50~60が好ましく、50~55がより好ましい。
前記引張強度は、14.0~16.0Paが好ましい。
前記伸びは、60~120%が好ましく、70~100%がより好ましい。
前記MFRは、1~10g/10分が好ましく、2~5g/10分がより好ましく、3~5g/10分がさらに好ましく、4~5g/10分が特に好ましい。
前記静摩擦係数のうち、加熱環境下で摺動する前の静摩擦係数は、0.30未満が好ましく、0.20~0.29がより好ましく、0.25~0.28がさらに好ましい。
前記静摩擦係数のうち、加熱環境下で摺動した後の静摩擦係数は、0.50未満が好ましく、0.20~0.40がより好ましく、0.25~0.35がさらに好ましい。
前記動摩擦係数のうち、加熱環境下で摺動する前の動摩擦係数は、0.20未満が好ましく、0.05~0.18がより好ましく、0.10~0.15がさらに好ましい。
前記動摩擦係数のうち、加熱環境下で摺動した後の動摩擦係数は、0.20未満が好ましく、0.10~0.18がより好ましく、0.12~0.16がさらに好ましい。
本発明に係る摺動部材用組成物が押出機から押し出されたものである場合、その押し出し方向と平行な断面における様相は次の通りであることが好ましい。各様相のうち少なくとも1つが次の範囲にあると、高温環境下で摺動された後の摺動性の低下がより抑制される。
前記断面において、前記マトリックス及び前記ドメインから構成される分散相のうち面積比で80%は、0.1~200μmの分散径(最大長さ)を有することが好ましく、1~100μmの分散径を有することがより好ましい。
前記断面において、前記マトリックス中に分散された前記ドメインの平均粒径は、0.5~150μmであることが好ましい。
前記断面における分散相は、前記断面のX線像をケイ素元素濃度、酸素元素濃度又は炭素元素濃度に基づいてマッピングしたとき、シリコーン化合物が凝集した領域を除いた領域とみなせる。このX線像を画像処理することにより、分散径(最大長さ)を測定することができる。分散相は、主にドメインの粒子径が反映された分散径を有する。
なお、上記マッピングにおいて、ケイ素元素濃度又は酸素元素濃度が一定値未満の領域は、シリコーン化合物以外の領域、すなわちドメインとマトリックスとが互いに混合した分散相とみなすことができる。あるいは、炭素元素濃度が高い領域を、シリコーン化合物が含まれない分散相とみなすこともできる。シリコーン化合物は架橋体に溶け込まない性質を利用して、上記マッピングから分散相の領域を測定することができる。
前記断面におけるドメインの平均粒径は、その断面の電子顕微鏡写真を撮影し、画像処理により各ドメインの粒径を算出し全体の平均を計算すればよい。ここで、ドメインの粒径は、観測したドメインの面積から真円に換算して求めた直径とする。
≪摺動部材≫
本発明の第三態様は、第一態様又は第二態様の摺動部材用組成物によって形成された摺動部材である。
摺動部材を適用した一例として、図1に示すウェザーストリップ10が挙げられる。ウェザーストリップ10は、ウェザーストリップ本体部20と、上述した摺動部材用組成物からなる摺動部材30とから構成される。ウェザーストリップ本体部20は、基底部20aと両側の側壁部20bと、両側壁部20bの先端から内部に延びるリップ部20cからなり、摺動部材30は、窓ガラス18と摺接するリップ部20cの摺接部及び窓ガラス18の外周縁端面と摺接する基底部20aの表面を被覆するように形成されている。
ウェザーストリップ10にあっては、本発明の摺動部材用組成物からなる摺動部材を使用しているため、シリコーン化合物のブリードが低減されており、高温環境下で摺動された後の摺動性の低下が低減されている。このため、水に濡れた状態においても安定した低摺動抵抗を維持し、異音の発生も抑制されている。
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
表1~2に記載の原材料の詳細は次の通りである。
「2200J」:プライムポリマー社製、高密度ポリエチレン、商品名:ハイゼックス(グレード:2200J)、密度964kg/m(測定法:JIS K 7112)、MFR=20g/10分(測定法:JIS K 7210、190℃、試験荷重10kg)
「520MB」:プライムポリマー社製、高密度ポリエチレン、商品名:ハイゼックス(グレード:520MB)、密度962kg/m(測定法:JIS K 7112)、MFR=5.1g/10分(測定法:JIS K 7210、230℃、試験荷重10kg)
「L5000」:三井化学社製、高密度ポリエチレン、商品名:リュブマー(グレード:L5000)、密度966kg/m(測定法:ASTM D1505)、MFR=3.8g/10分(測定法:JIS K 7210、230℃、試験荷重10kg)
「3092PM」:三井化学社製、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、商品名:三井EPT(グレード:3092PM)
「MA3H」:日本ポリプロ社製、ポリプロピレンホモポリマー、商品名:ノバテックPP(グレード:MA3H)
「25B-10S」:日油社製、有機過酸化物(架橋剤)、商品名:パーヘキサ(グレード:25B-10S)
「KF96(1)」:信越化学社製、シリコーンオイル、動的粘度1,000Pa・s、分子量24,000(グレード:KF96)
「KF96(2)」:信越化学社製、シリコーンオイル、動的粘度10,000Pa・s、分子量60,000(グレード:KF96)
「KF96(3)」:信越化学社製、シリコーンオイル、動的粘度100,000Pa・s、分子量100,000(グレード:KF96)
「E203GV」:プライムポリマー社製、ポリプロピレンホモポリマー、商品名:プライムポリプロE-203GV(グレード:E203GV)
「1300B」:JSR社製、オレフィン系熱可塑性エラストマー、商品名:エクセリンク(グレード:1300B)
<摺動部材用組成物の作製>
表1~2の「材料1」に記載の量(質量部)で、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、及びポリプロピレンホモポリマー(PP)をバンバリーミキサーで混錬し、ルーダーを通してペレットを作製した。続いて上記ペレットと表1~2の「材料1」に記載の量(質量部)の架橋剤を二軸押出機に投入し、混錬しながら架橋させる動的架橋を行い、TPVペレットを得た。
上記TPVペレットと、表1~2の「材料2」に記載の量(質量部)のPPとエラストマーを二軸押出機に投入して混錬しながら、二軸押出機の中間部から定量ポンプを使って、表1~2の「材料2」に記載の量(質量部)のシリコーンオイルを注入して混錬し、摺動部材用組成物のペレットを作製した。
なお、表中の空欄は、その材料を添加していないことを示す。
得られた摺動部材用組成物の断面を電子顕微鏡で観察したところ、架橋体がドメインを形成し、マトリックス中に分散されたいわゆる動的架橋型の分散相を呈していた。
<摺動部材用組成物の物性>
上記で作製した摺動部材用組成物について、比重、硬度、引張強度(単位:Pa)、伸び(単位:%)、MFR(単位:g/10分)をそれぞれ下記のJIS規格に準拠して測定した。その結果を表3~4に示す。
・比重; JIS 7112:1999 B法
・硬度; JIS K 6253
・引張強度; JIS K 6251
・伸び; JIS K 6251
・MFR; JIS K 7210、230℃、試験荷重10kg
Figure 0007466330000001
Figure 0007466330000002
<二層成形品の作製>
平板状の二層成形ダイスに2台の押出機を接続し、一方からベース用材料となる市販のオレフィン系TPVを、もう一方から上記で作製した摺動部材用組成物を吐出させて、ベースとその上に積層された摺動部材層からなる二層成形品を得た。
二層成形品のベース層の厚みは約2mm、摺動部材層の厚みは170±70μmとした。
<摺動試験>
二層成形品を試料として、摺動部材層をコートした部分が可橈するように、治具で固定した。これを摺動試験機に固定し、試料に17Nの荷重を掛けて、モータを駆動させながらガラス板(長さ50mm)を水平運動させて(平均150mm/秒)、二層成形品の摺動部材層をガラス板で5,000回摺動した後、その静摩擦係数と動摩擦係数を新東科学社製HEIDON摩擦摩耗試験機にて測定した。25℃の常温環境下で摺動した後に25℃で測定した結果と、80℃の加熱環境下で60分静置し、試料が80℃に達してから摺動し、その後に25℃に冷ましてから測定した結果を表3~4に示す。
Figure 0007466330000003
Figure 0007466330000004
以上の通り、本発明に係る摺動部材用組成物は、高温環境下で摺動する前の摺動性が優れるだけでなく、高温環境下で摺動した後にも摺動性の劣化が低減されている。また、比重、硬度、引張強度、伸び、MFRも比較例と比べて遜色なく、車の窓ガラスと摺接するウェザーストリップの用途にも好適である。
一方、比較例の摺動部材用組成物は、高温環境下で摺動する前の摺動性が劣り、高温環境下で摺動した後の摺動性の劣化が著しい。
10…ウェザーストリップ、20…ウェザーストリップ本体部、30…摺動部材
18…窓ガラス

Claims (5)

  1. 高密度ポリエチレン及び架橋剤を含む原料を混錬しながら、前記高密度ポリエチレンの一部を架橋させることにより、熱可塑性エラストマーを得る動的架橋工程と、
    前記熱可塑性エラストマー100質量部にシリコーン化合物8~20質量部を混合して摺動部材用組成物を得る混合工程と、を含み、
    前記高密度ポリエチレンのメルトマスフローレートは1.0~4.5g/10分(JIS K7210、230℃、荷重10kg)であり、
    前記原料の総質量に対する前記高密度ポリエチレンの含有量が50~70質量%であり、
    前記原料はゴム成分を含み、
    前記原料の総質量に対する前記ゴム成分の含有量が1~20質量%であり、
    前記原料は前記高密度ポリエチレン及び前記ゴム成分以外のαオレフィン重合体を含み、
    前記原料の総質量に対する前記αオレフィン重合体の含有量が1~20質量%であり、
    前記原料の総質量に対する前記架橋剤の含有量が10~15質量%である、
    摺動部材用組成物の製造方法。
  2. 記原料の総質量に対して、前記ゴム成分の含有量が1~5質量%であり、かつ、
    前記原料の総質量に対して、前記αオレフィン重合体の含有量が10~20質量%である、請求項1記載の摺動部材用組成物の製造方法。
  3. 前記混合工程で得た前記摺動部材用組成物中、前記高密度ポリエチレンの一部が架橋してなる架橋体は、ドメインを形成し、前記高密度ポリエチレンの残部を含むマトリックス中に分散されている、請求項1又は2に記載の摺動部材用組成物の製造方法。
  4. 高密度ポリエチレンを含む動的架橋型の熱可塑性エラストマーと、シリコーン化合物とを含む摺動部材用組成物であって、
    前記摺動部材用組成物中、前記高密度ポリエチレンの一部が架橋してなる架橋体が、ドメインを形成し、前記高密度ポリエチレンの残部を含むマトリックス中に分散されており、
    前記高密度ポリエチレンのメルトマスフローレートは1.0~4.5g/10分(JIS K7210、230℃、荷重10kg)であり、
    前記熱可塑性エラストマーの総質量に対する前記高密度ポリエチレンの含有量が、前記架橋体も含めて合計40~70質量%であり、
    下記二層成形品を試料として、下記条件の摺動試験で測定される静摩擦係数及び動摩擦係数について、
    加熱環境下で摺動する前の静摩擦係数Aが、0.30未満であり、
    加熱環境下で摺動した後の静摩擦係数Bが、0.50未満であり、
    加熱環境下で摺動する前の動摩擦係数Cが、0.20未満であり、
    加熱環境下で摺動した後の動摩擦係数Dが、0.20未満である、摺動部材用組成物。
    <二層成形品の作製>
    平板状の二層成形ダイスに2台の押出機を接続し、一方からベース用材料となるオレフィン系TPVを、もう一方から前記摺動部材用組成物を吐出させて、ベースとその上に積層された摺動部材層からなる二層成形品を得る。
    二層成形品のベース層の厚みは約2mm、摺動部材層の厚みは170±70μmとする。
    <摺動試験>
    前記二層成形品を試料として、前記摺動部材層をコートした部分が可橈するように、治具で固定する。これを摺動試験機に固定し、試料に17Nの荷重を掛けて、モータを駆動させながらガラス板(長さ50mm)を水平運動させて(平均150mm/秒)、前記二層成形品の前記摺動部材層を前記ガラス板で5,000回摺動した後、その静摩擦係数と動摩擦係数を摩擦摩耗試験機にて測定する。
    前記静摩擦係数Aおよび前記動摩擦係数Cは、25℃の常温環境下で摺動した後に25℃で測定した結果とする。
    前記静摩擦係数Bおよび前記動摩擦係数Dは、80℃の加熱環境下で60分静置し、前記試料が80℃に達してから摺動し、その後に25℃に冷ましてから測定した結果とする。
  5. 請求項に記載の摺動部材用組成物によって形成された摺動部材。
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